説明

導電シートの製造方法、導電シート及びプログラム

【課題】パターンに起因するノイズ粒状感を低減することで観察対象物の視認性を大幅に向上可能であり、断裁後にも安定した通電性能を有する導電シートの製造方法、導電シート及びプログラムを提供する。
【解決手段】メッシュパターンMの模様を表す出力用画像データImgOutは、出力用画像データImgOutのスペクトルSpcと人間の標準視覚応答特性(VTF)との畳み込み積分において、出力用画像データImgOutに応じたナイキスト周波数Unyqの1/4倍周波数以上であり、且つ、1/2倍周波数以下である空間周波数帯域での各積分値NP(Ux,Uy)が、積分値NP(0,0)よりも大きい特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体上にメッシュ状の線材が形成された導電シートの製造方法、導電シート、及び該導電シートの製造の用に供されるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、基体上にメッシュ状の線材が形成された導電シートが開発されている。この導電シートは、電極や発熱シートとして使用可能である。例えば、タッチパネル用電極、無機EL素子、有機EL素子又は太陽電池の電極のみならず、車両のデフロスタ(霜取り装置)や電磁波シールド材にも適用してもよい。
【0003】
上記した各種物品の使用者にとって、その用途の性質上、メッシュパターンの模様は、観察対象物の視認性を妨げる粒状ノイズに相当する場合がある。そこで、同一の又は異なるメッシュ形状を規則的又は不規則的に配置することで、粒状ノイズを抑止し、観察対象物の視認性を向上させるための技術が種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、図27Aに示すように、円の一部を切り欠いた円弧状の導電性を有する線材2が格子状に繰り返し配置されるとともに、前記円弧状の線材2の端部は、隣接する円弧状の線材2の中央部近傍に接続されるメッシュ層4が設けられている乗用移動体用窓及びそのパターンPT1の平面視形状が開示されている。これにより、視認性のみならず、電磁波のシールド性及び耐破損性を向上できる旨が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、図27Bに示すように、基板上に一面に塗布して放置しておくと、自然に基板上に網目状の構造を形成する溶液、すなわち自己組織化する金属微粒子溶液を用いて製造した透明導電性基板及びそのパターンPT2の平面視形状が開示されている。これにより、モアレ現象が発生しない不規則な網目状の構造が得られる旨が記載されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、図27Cに示すように、電磁波シールド層6が海島構造の海領域の構造を有し、電磁波シールド層6で囲まれた開口部からなる島領域8の形状が相互に異なっている光透過性電磁波シールド材及びそのパターンPT3の平面視形状が開示されている。これにより、モアレの発生がなく、光透過性及び電磁波シールド性が向上する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−137455号公報([0029])
【特許文献2】特開2009−16700号公報([0022]〜[0024])
【特許文献3】特開2009−302439号公報([0011]〜[0015])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び2に開示されたパターンPT1、PT2では、粒状ノイズをさらに低減し、視認性を改善するにはパターンの構造上の問題がある。
【0009】
例えば、特許文献1のメッシュ状のパターンPT1は、円弧状の線材2を格子状に繰り返し配置しているので、線材2の周期性がきわめて高い。すなわち、パターンPT1のパワースペクトルを算出すると、線材2の配置間隔の逆数に相当する空間周波数帯域に鋭いピークを有すると予測される。ここで、パターンPT1の視認性をさらに改善するためには、前記円弧のサイズ(径)を小さくしなければならない。
【0010】
また、特許文献2のメッシュ状のパターンPT2は、メッシュの形状やサイズが不揃いであるため、不規則性がきわめて高い。すなわち、パターンPT2のパワースペクトルを算出すると、空間周波数帯域によらず略一定の値である(ホワイトノイズ特性に近い)と予測される。ここで、ここで、パターンPT2の視認性をさらに改善するためには、自己組織化のサイズを小さくしなければならない。
【0011】
そうすると、特許文献1に開示された乗用移動体用窓や、特許文献2に開示された透明導電性基板のいずれも、視認性をさらに改善するためには、光透過率や生産性が低下するという不都合があった。
【0012】
さらに、特許文献3に開示されたパターンPT3は、メッシュ形状を構成していないので、この断裁面の配線形状にばらつきが生じる。そうすると、パターンPT3を例えば電極として用いる場合に、安定した通電性能を得られないという不都合があった。
【0013】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、パターンに起因するノイズ粒状感を低減することで観察対象物の視認性を大幅に向上可能であり、断裁後にも安定した通電性能を有する導電シートの製造方法、導電シート及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る導電シートの製造方法は、メッシュパターンの模様を表す画像データを作成する作成ステップと、作成された前記画像データに基づいて基体上に線材を出力形成し、前記メッシュパターンを有する導電シートを製造する出力ステップと、を備え、前記画像データは、該画像データのパワースペクトルと人間の標準視覚応答特性との畳み込み積分において、該画像データに応じたナイキスト周波数の1/4倍周波数以上であり、且つ、1/2倍周波数以下である空間周波数帯域での各積分値が、零空間周波数での積分値よりも大きい特性を有することを特徴とする。
【0015】
画像データのパワースペクトルと人間の標準視覚応答特性との畳み込み積分において、該画像データに応じたナイキスト周波数の1/4倍周波数以上であり、且つ、1/2倍周波数以下である空間周波数帯域での各積分値が、零空間周波数での積分値よりも大きい特性を有するので、低空間周波数帯域側と比べて高空間周波数帯域側のノイズ量が相対的に大きくなっている。人間の視覚は、低空間周波数帯域での応答特性は高いが、中〜高空間周波数帯域において応答特性が急激に低下する性質を有するので、人間にとって視覚的に感じられるノイズ感が減少する。これにより、導電シートが有するパターンに起因するノイズ粒状感が低減されるので、観察対象物の視認性が大幅に向上する。また、多角形状のメッシュを複数備えているので、断裁後における各配線の断面形状も略一定であり、安定した通電性能を有する。
【0016】
本発明に係る導電シートの製造方法は、メッシュパターンと、該メッシュパターンの模様とは異なる模様を有する構造パターンとを重畳させて得られる重畳画像データの評価結果に基づいて、前記メッシュパターンの模様を表す画像データを作成する作成ステップと、作成された前記画像データに基づいて基体上に線材を出力形成し、前記メッシュパターンを有する導電シートを製造する出力ステップと、を備え、前記重畳画像データは、該重畳画像データのパワースペクトルと人間の標準視覚応答特性との畳み込み積分において、該重畳画像データに応じたナイキスト周波数の1/4倍周波数以上であり、且つ、1/2倍周波数以下である空間周波数帯域での各積分値が、零空間周波数での積分値よりも大きい特性を有することを特徴とする。
【0017】
構造パターンを重畳させて画像データを作成することで、前記構造パターンの模様を考慮に入れたメッシュ形状の最適化が可能である。つまり、実際の使用態様での観察でノイズ粒状感が低減され、観察対象物の視認性が大幅に向上する。導電シートの実際の使用態様が既知である場合、特に効果的である。
【0018】
また、前記構造パターンは、ブラックマトリクスであることが好ましい。
【0019】
さらに、前記メッシュパターンの模様が形成される所定の二次元画像領域を、周期的に配列された幾何パターンである第1画像領域と、残余の画像領域である第2画像領域とに分割する分割ステップをさらに備え、前記作成ステップでは、分割された前記第1画像領域に応じた第1画像データと、分割された前記第2画像領域に応じた第2画像データとを作成し、前記出力ステップでは、作成された前記第1及び第2画像データに基づいて前記線材を出力形成することで、前記基体上において前記メッシュパターンの模様を合成することが好ましい。これにより、例えばタッチパネル用途のように、複数の導電シートを積層する構成を採る場合であってもノイズ干渉(モアレ)の発生を防止できる。
【0020】
さらに、前記画像データは、複数のカラーチャンネルを有しており、前記積分値は、前記カラーチャンネル毎の重み付け総和であることが好ましい。
【0021】
さらに、所定の二次元画像領域の中から複数の位置を選択する選択ステップを備え、前記作成ステップでは、選択された前記複数の位置に基づいて前記画像データを作成することが好ましい。
【0022】
さらに、前記人間の標準視覚応答特性は、観察距離300mmでのドゥーリー・ショー関数であることが好ましい。
【0023】
本発明に係る導電シートは、上記した製造方法のいずれかを用いて製造されたことを特徴とする。
【0024】
本発明に係る導電シートは、基体上にメッシュ状の線材が形成された導電シートであって、平面視でのパワースペクトルと人間の標準視覚応答特性との畳み込み積分において、前記線材の平均線幅に相当する空間周波数の1/4倍周波数以上であり、且つ、1/2倍周波数以下である空間周波数帯域での各積分値が、零空間周波数での積分値よりも大きい特性を有することを特徴とする。
【0025】
本発明に係る導電シートは、基体上にメッシュ状の線材が形成された導電シートであって、前記導電シート上に前記メッシュ状とは異なる模様を有する構造パターンを重畳した状態下、平面視でのパワースペクトルと人間の標準視覚応答特性との畳み込み積分において、前記線材の平均線幅に相当する空間周波数の1/4倍周波数以上であり、且つ、1/2倍周波数以下である空間周波数帯域での各積分値が、零空間周波数での積分値よりも大きい特性を有することを特徴とする。
【0026】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、メッシュパターンの視認性に関わる視認情報を入力する入力部、前記入力部により入力された前記視認情報に基づいて、前記メッシュパターンの模様を表す画像データを所定の空間周波数条件を満たすように作成する画像データ作成部として機能させ、前記所定の空間周波数条件は、前記画像データのパワースペクトルと人間の標準視覚応答特性との畳み込み積分において、該画像データに応じたナイキスト周波数の1/4倍周波数以上であり、且つ、1/2倍周波数以下である空間周波数帯域での各積分値が、零空間周波数での積分値よりも大きくなる条件であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る導電シートの製造方法、導電シート及びプログラムによれば、基体上に線材を出力形成するための画像データは、該画像データのパワースペクトルと人間の標準視覚応答特性との畳み込み積分において、該画像データに応じたナイキスト周波数の1/4倍周波数以上であり、且つ、1/2倍周波数以下である空間周波数帯域での各積分値が、零空間周波数での積分値よりも大きい特性を有するので、低空間周波数帯域側と比べて高空間周波数帯域側のノイズ量が相対的に大きくなっている。人間の視覚は、低空間周波数帯域での応答特性は高いが、中〜高空間周波数帯域において応答特性が急激に低下する性質を有するので、人間にとって視覚的に感じられるノイズ感が減少する。これにより、導電シートが有するパターンに起因するノイズ粒状感が低減されるので、観察対象物の視認性が大幅に向上する。また、多角形状のメッシュを複数備えているので、断裁後における各配線の断面形状も略一定であり、安定した通電性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施の形態に係る導電シートを製造するための製造装置の概略構成ブロック図である。
【図2】図2Aは、図1に示す導電シートの一部拡大平面図である。図2Bは、図1に示す導電シートをタッチパネルに適用した場合の一構成例を示す概略分解斜視図である。
【図3】図2Aに示す導電シートの概略断面図である。
【図4】図1に示すメッシュ模様評価部及びデータ更新指示部の詳細機能ブロック図である。
【図5】画像データ作成条件の設定画面を示す図である。
【図6】図1の製造装置の動作説明に供されるフローチャートである。
【図7】図7Aは、メッシュパターンの模様を表す画像データを可視化した概略説明図である。図7Bは、図7Aに示す画像データに対してFFTを施して得られる二次元パワースペクトルの分布図である。図7Cは、図7Bに示す二次元パワースペクトル分布のVIIC−VIIC線に沿う断面図である。
【図8】Dooley−Shaw関数(観察距離300mm)のグラフである。
【図9】二次元パワースペクトルと、高空間周波数側にシフトさせたVTFとの位置関係を表す概略説明図である。
【図10】出力用画像データの作成方法を説明するフローチャートである。
【図11】シード点の配置密度と全体透過率との関係の一例を表すグラフである。
【図12】図12A及び図12Bは、ボロノイ図を用いて、8つの点をそれぞれ囲繞する8つの領域を画定した結果の説明図である。
【図13】図13A及び図13Bは、ドロネー三角形分割法を用いて、8つの点をそれぞれ頂点とする8つの三角形状領域を画定した結果の説明図である。
【図14】図14Aは、画像データにおける画素アドレスの定義を表す説明図である。図14Bは、画像データにおける画素値の定義を表す説明図である。
【図15】図15Aは、シード点の初期位置の模式図である。図15Bは、図15Aのシード点を基準とするボロノイ図である。
【図16】図10に示すステップS26の詳細フローチャートである。
【図17】図17Aは、画像領域内の第1シード点、第2シード点及び候補点の位置関係を表す説明図である。図17Bは、第2シード点と候補点とを交換してシード点の位置を更新した結果の説明図である。
【図18】最適化されたメッシュパターンの模様を表す出力用画像データを可視化した概略説明図である。
【図19】図18に示す出力用画像データのスペクトルに対して、人間の標準視覚応答特性を畳み込んだ結果を表すグラフである。
【図20】図20Aは、第1画像データを可視化した概略説明図である。図20Bは、第2画像データを可視化した概略説明図である。
【図21】図20Aに示す二次元画像領域の部分拡大図である。
【図22】本実施の形態の変形例における画像データ作成条件の設定画面を示す図である。
【図23】本実施の形態の変形例における出力用画像データの作成方法を説明するフローチャートである。
【図24】図23に示すステップS27Aの詳細フローチャートである。
【図25】ブラックマトリクスを重畳する状態下で最適化されたメッシュパターンの模様を表す出力用画像データを可視化した概略説明図である。
【図26】導電シートの他の例の概略断面図である。
【図27】図27A〜図27Cは、比較例に係るパターンの拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本実施の形態に係る導電シートの製造方法についてそれを実施する製造装置との関係において好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
図1は、本実施の形態に係る導電シート14を製造するための製造装置10の概略構成ブロック図である。
【0031】
製造装置10は、メッシュパターンMの模様を表す画像データImg(出力用画像データImgOutを含む。)を作成する画像処理装置12と、該画像処理装置12により作成された前記出力用画像データImgOutに基づいて製造工程下の導電シート14に光16を照射して露光する露光部18と、前記画像データImgを作成するための各種条件(メッシュパターンMや後述する構造パターンの視認情報を含む。)を画像処理装置12に入力する入力部20と、該入力部20による入力作業を補助するGUI画像や、記憶された出力用画像データImgOut等を表示する表示部22とを基本的に備える。
【0032】
画像処理装置12は、画像データImg、出力用画像データImgOut、候補点SPの位置データSPd、及びシード点SDの位置データSDdを記憶する記憶部24と、擬似乱数を発生して乱数値を生成する乱数発生部26と、該乱数発生部26により生成された前記乱数値を用いて、所定の二次元画像領域の中からシード点SDの初期位置を選択する初期位置選択部28と、前記乱数値を用いて前記二次元画像領域の中から候補点SPの位置(シード点SDの位置を除く。)を決定する更新候補位置決定部30と、出力用画像データImgOutを第1画像データImgO1と第2画像データImgO2とに分割する画像分割部32と、第1画像データImgO1及び第2画像データImgO2をそれぞれ露光部18の制御信号(露光データ)に変換する露光データ変換部34と、表示部22に各種画像を表示する制御を行う表示制御部36とを備える。
【0033】
なお、シード点SDは、更新対象でない第1シード点SDNと、更新対象である第2シード点SDSとからなる。換言すれば、シード点SDの位置データSDdは、第1シード点SDNの位置データSDNdと、第2シード点SDSの位置データSDSdとから構成されている。
【0034】
画像処理装置12は、入力部20から入力された視認情報(詳細は後述する。)に基づいてメッシュパターンMや構造パターンに応じた画像情報を推定する画像情報推定部38と、該画像情報推定部38から供給された前記画像情報及び記憶部24から供給されたシード点SDの位置に基づいてメッシュパターンMや構造パターンに応じた模様を表す画像データImgを作成する画像データ作成部40と、該画像データ作成部40により作成された画像データImgに基づいてメッシュ状の模様を評価するための評価値EVPを算出するメッシュ模様評価部42と、該メッシュ模様評価部42により算出された評価値EVPに基づいてシード点SDや評価値EVP等のデータの更新/非更新を指示するデータ更新指示部44とをさらに備える。
【0035】
なお、CPU等で構成される図示しない制御部は、この画像処理に関するすべての制御を行う。すなわち、製造装置10内部の各構成要素の制御(例えば、記憶部24のデータ読出し・書込み)のみならず、表示制御部36を介して表示部22に表示制御信号を送信する制御や、入力部20を介して入力情報を取得する制御等も含まれる。
【0036】
図1の導電シート14は、図2Aに示すように、複数の導電部50と複数の開口部52とを有している。複数の導電部50は、複数の金属細線54が互いに交叉したメッシュパターンM(メッシュ状の配線)を形成している。すなわち、1つの開口部52と、該1つの開口部52を囲む少なくとも2つの導電部50の組み合わせ形状がメッシュ形状となっている。このメッシュ形状は開口部52毎に異なっており、それぞれ不規則(すなわち非周期的)に配列されている。以下、導電部50を構成する材料を「線材」という場合がある。
【0037】
図3に示すように、導電シート14は、第1導電シート14aと第2導電シート14bとが積層して構成されている。第1導電シート14aは、第1透明基体56a(基体)と、該第1透明基体56a上に形成された複数の第1導電部50a及び複数の第1開口部52aを備える。また、第2導電シート14bは、第2透明基体56b(基体)と、該第2透明基体56b上に形成された複数の第2導電部50b及び複数の第2開口部52bを備える。第1導電シート14aと第2導電シート14bとを積層することで、複数の第1導電部50aと複数の第2導電部50bとが重畳して複数の導電部50が形成されるともに、複数の第1開口部52aと複数の第2開口部52bとが重畳して複数の開口部52が形成される。これにより、導電シート14の平面視での模様として、ランダムなメッシュパターンMが形成される。
【0038】
導電シート14は、タッチパネルの電極、電磁波シールドの他、無機EL素子、有機EL素子又は太陽電池の電極として使用可能な導電シートである。この導電シート14をタッチパネルの電極として使用する場合の概略分解斜視図を図2Bに示す。導電シート14の一面側(本図手前側)にはフィルタ部材60が、他面側(本図奥側)には保護層61がそれぞれ重畳して配置されている。フィルタ部材60は、複数の赤色フィルタ62rと、複数の緑色フィルタ62gと、複数の青色フィルタ62bと、ブラックマトリクス64(構造パターン)とを備える。以下、ブラックマトリクス64を構成する材料を「パターン材」という場合がある。
【0039】
フィルタ部材60の上下方向には、赤色フィルタ62r(緑色フィルタ62g、あるいは青色フィルタ62b)がそれぞれ並設されている。また、フィルタ部材60の左右方向には、赤色フィルタ62r、緑色フィルタ62g、青色フィルタ62b、赤色フィルタ62r…の順番で周期的に配設されている。すなわち、1つの赤色フィルタ62r、1つの緑色フィルタ62g、1つの青色フィルタ62bが配置された平面領域が、赤色光、緑色光又は青色光の組み合わせにより、任意の色の表示が自在である単位画素66を構成している。
【0040】
ブラックマトリクス64は、外部からの反射光や、図示しないバックライトからの透過光が、隣接する単位画素66同士で混合することを防止するための遮光材の機能を有する。ブラックマトリクス64は、左右方向に延在する遮光材68hと、上下方向に延在する遮光材68vとからなる。これらの遮光材68h、68vは、矩形状の格子を形成しており、単位画素66を構成する一組のカラーフィルタ(すなわち、赤色フィルタ62r、緑色フィルタ62g及び青色フィルタ62b)をそれぞれ囲繞する。
【0041】
タッチ位置の検出方式としては、自己容量方式や相互容量方式を好ましく採用することができる。これらの公知の検出方法を採用することで、保護層61の上面に同時に2つの指先を接触又は近接させても、各タッチ位置を検出することが可能となる。なお、投影型静電容量方式の検出回路に関する先行技術文献として、米国特許第4,582,955号明細書、米国特許第4,686,332号明細書、米国特許第4,733,222号明細書、米国特許第5,374,787号明細書、米国特許第5,543,588号明細書、米国特許第7,030,860号明細書、米国公開特許2004/0155871号明細書等がある。
【0042】
図4は、図1に示すメッシュ模様評価部42及びデータ更新指示部44の詳細機能ブロック図である。
【0043】
メッシュ模様評価部42は、画像データ作成部40から供給された画像データImgに高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformation;以下、FFTという。)を施して二次元スペクトルデータ(以下、単に「スペクトルSpc」という。)を取得するFFT演算部100と、該FFT演算部100から供給されたスペクトルSpcと人間の標準視覚応答特性との畳み込み演算を施して新たなスペクトルSpccを得る畳み込み演算部102と、該畳み込み演算部102から供給された新たなスペクトルSpccに基づいて評価値EVPを算出する評価値算出部104とを備える。
【0044】
データ更新指示部44は、メッシュ模様評価部42による評価回数を計上するカウンタ108と、後述する擬似焼きなまし法で用いる擬似温度Tの値を管理する擬似温度管理部110と、メッシュ模様評価部42から供給された評価値EVP及び擬似温度管理部110から供給された擬似温度Tに基づいてシード点SDの更新確率を算出する更新確率算出部112と、該更新確率算出部112から供給された前記更新確率に基づいてシード点SDの位置データSDd等の更新/非更新を判定する位置更新判定部114と、擬似温度管理部110からの通知に応じて1つの画像データImgを出力用画像データImgOutとして決定する出力用画像データ決定部116とを備える。
【0045】
図5は、画像データ作成条件を設定するための第1設定画面を示す図である。
【0046】
設定画面120は、上方から順番に、左側のプルダウンメニュー122と、左側の表示欄124と、右側のプルダウンメニュー126と、右側の表示欄128と、7個のテキストボックス130、132、134、136、138、140、142と、[中止]、[設定]と表示されたボタン144、146とを備える。
【0047】
プルダウンメニュー122、126の左方部には、「種類」なる文字列が表示されている。入力部20(例えば、マウス)の所定の操作により、プルダウンメニュー122、126の下方部に図示しない選択欄が併せて表示され、その中の項目を選択自在である。
【0048】
表示欄124は、5つの欄148a、148b、148c、148d、148eから構成されており、これらの左方部には、「光透過率」、「光反射率」、「色値L」、「色値a」及び「色値b」なる文字列がそれぞれ表示されている。
【0049】
表示欄128は、表示欄124と同様に、5つの欄150a、150b、150c、150d、150eから構成されており、これらの左方部には、「光透過率」、「光反射率」、「色値L」、「色値a」及び「色値b」なる文字列がそれぞれ表示されている。
【0050】
テキストボックス130の左方部には「全体透過率」と表示され、その右方部には「%」と表示されている。テキストボックス132の左方部には「膜厚」と表示され、その右方部には「μm」と表示されている。テキストボックス134の左方部には「配線の幅」と表示され、その右方部には「μm」と表示されている。テキストボックス136の左方部には「配線の厚さ」と表示され、その右方部には「μm」と表示されている。テキストボックス138の左方部には「パターンサイズH」と表示され、その右方部には「mm」と表示されている。テキストボックス140の左方部には「パターンサイズV」と表示され、その右方部には「mm」と表示されている。テキストボックス142の左方部には「画像解像度」と表示され、その右方部には「dpi」と表示されている。
【0051】
なお、7個のテキストボックス130、132、134、136、138、140、142のいずれにも、入力部20(例えば、キーボード)の所定の操作により算用数字の入力が自在である。
【0052】
本実施の形態に係る製造装置10は以上のように構成され、上述した各画像処理機能は、基本ソフトウェア(オペレーティングシステム)上で動作する、例えば記憶部24に記憶された応用ソフトウェア(プログラム)を用いて実現することができる。
【0053】
続いて、製造装置10の動作について、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0054】
先ず、メッシュパターンMの模様を表す画像データImg(出力用画像データImgOutを含む。)を作成する際に必要な各種条件を入力する(ステップS1)。
【0055】
作業者は、表示部22に表示された設定画面120(図5参照)を介して、適切な数値等を入力する。これにより、メッシュパターンMの視認性に関わる視認情報を入力することができる。ここで、メッシュパターンMの視認情報とは、メッシュパターンMの形状や光学濃度に寄与する各種情報であり、線材(金属細線54)の視認情報や、基体(第1透明基体56a、第2透明基体56b)の視認情報が含まれる。線材の視認情報として、例えば、該線材の種類、色値、光透過率、若しくは光反射率、又は金属細線54の断面形状若しくは太さの少なくとも1つが含まれる。基体の視認情報として、例えば、該基体の種類、色値、光透過率、光反射率又は膜厚の少なくとも1つが含まれる。
【0056】
作業者は、製造しようとする導電シート14に関して、プルダウンメニュー122を用いて線材の種類を1つ選択する。図5の例では、「銀(Ag)」が選択されている。線材の種類を1つ選択すると、表示欄124が即時に更新され、該線材の物性に応じた既知の数値が新たに表示される。欄148a、148b、148c、148d、148eには、100μmの厚さを有する銀の光透過率(単位:%)、光反射率(単位:%)、色値L、色値a、色値b(CIELAB)がそれぞれ表示される。
【0057】
また、作業者は、製造しようとする導電シート14に関して、プルダウンメニュー126を用いて膜材(第1透明基体56a、第2透明基体56b)の種類を1つ選択する。図5の例では、「PETフイルム」が選択されている。膜材の種類を1つ選択すると、表示欄128が即時に更新され、該膜材の物性に応じた既知の数値が新たに表示される。欄150a、150b、150c、150d、150eには、1mmの厚さを有するPETフイルムの光透過率(単位:%)、光反射率(単位:%)、色値L、色値a、色値b(CIELAB)がそれぞれ表示される。
【0058】
なお、プルダウンメニュー122、126の図示しない「マニュアル入力」の項目を選択することで、表示欄124、128から各物性値を直接入力できるようにしてもよい。
【0059】
さらに、作業者は、製造しようとする導電シート14に関して、テキストボックス130等を用いてメッシュパターンMの各種条件をそれぞれ入力する。
【0060】
テキストボックス130、132、134、136の入力値は、全体の光透過率(単位:%)、基体の膜厚(第1透明基体56aと第2透明基体56bとの膜厚の総和)(単位:μm)、金属細線54の線幅(単位:μm)、金属細線54の厚さ(単位:μm)にそれぞれ対応する。
【0061】
テキストボックス138、140、142の入力値は、メッシュパターンMの横サイズ、メッシュパターンMの縦サイズ、出力用画像データImgOutの画像解像度(画素サイズ)に相当する。
【0062】
作業者は、設定画面120の入力作業を完了した後、[設定]ボタン146をクリックする。
【0063】
作業者による[設定]ボタン146のクリック動作に応じて、画像情報推定部38は、メッシュパターンMに応じた画像情報を推定する。この画像情報は、画像データImg(出力用画像データImgOutを含む。)を作成する際に参照される。
【0064】
例えば、メッシュパターンMの縦サイズ(テキストボックス138の入力値)と出力用画像データImgOutの画像解像度(テキストボックス142の入力値)とに基づいて、出力用画像データImgOutの横方向の画素数を算出できるし、配線の幅(テキストボックス134の入力値)と前記画像解像度とに基づいて金属細線54の線幅に相当する画素数を算出できる。
【0065】
また、線材の光透過率(欄148aの表示値)と配線の厚さ(テキストボックス136の入力値)とに基づいて金属細線54単体の光透過率を推定できる。これに加えて、膜材の光透過率(欄150aの表示値)と膜厚(テキストボックス132の入力値)とに基づいて、第1透明基体56a、第2透明基体56b上に金属細線54を積層した状態での光透過率を推定できる。
【0066】
さらに、線材の光透過率(欄148aの表示)と、膜材の光透過率(欄150aの表示)と、全体透過率(テキストボックス130の入力値)と、配線の幅(テキストボックス134の入力値)とに基づいて、開口部52の個数を推定するとともに、シード点SDの個数を推定できる。なお、開口部52の領域を決定するアルゴリズムに応じて、シード点SDの個数を推定するようにしてもよい。
【0067】
次いで、メッシュパターンMを形成するための出力用画像データImgOutを作成する(ステップS2)。
【0068】
出力用画像データImgOutの作成方法の説明に先立って、画像データImgの評価方法について始めに説明する。本実施の形態では、人間の標準視覚応答特性を考慮した粒状ノイズ特性に基づいて評価を行う。
【0069】
図7Aは、メッシュパターンMの模様を表す画像データImgを可視化した概略説明図である。以下、この画像データImgを例に挙げて説明する。
【0070】
先ずは、図7Aに示す画像データImgに対して高速フーリエ変換(以下、FFTという。)を施す。これにより、メッシュパターンMの形状について、部分的形状ではなく、全体の傾向(空間周波数分布)として把握できる。
【0071】
図7Bは、図7Aの画像データImgに対してFFTを施して得られるスペクトルSpcの分布図である。ここで、当該分布図の横軸はX軸方向に対する空間周波数を示し、その縦軸はY軸方向に対する空間周波数を示す。また、空間周波数帯域毎の表示濃度が薄いほど強度レベル(スペクトルの値)が小さくなり、表示濃度が濃いほど強度レベルが大きくなっている。本図の例では、このスペクトルSpcの分布は、等方的であるとともに環状のピークを2個有している。
【0072】
図7Cは、図7Bに示すスペクトルSpcの分布のVIIC−VIIC線に沿った断面図である。スペクトルSpcは等方的であるので、図7Cはあらゆる角度方向に対する動径方向分布に相当する。本図から諒解されるように、低空間周波数帯域及び高空間周波数帯域での強度レベルが小さくなり、中間の空間周波数帯域のみ強度レベルが高くなるいわゆるバンドパス型の特性を有する。すなわち、図7Aに示す画像データImgは、画像工学分野の技術用語によれば、「グリーンノイズ」の特性を有する模様を表すものといえる。
【0073】
図8は、人間の標準視覚応答特性の一例を表すグラフである。
【0074】
本実施の形態では、人間の標準視覚応答特性として、観察距離300mmでのドゥーリー・ショー(Dooley−Shaw)関数を用いている。Dooley−Shaw関数は、VTF(Visual Transfer Function)の一種であり、人間の標準視覚応答特性を模した代表的な関数である。具体的には、輝度のコントラスト比特性の2乗値に相当する。なお、グラフの横軸は空間周波数(単位:cycle/mm)であり、縦軸はVTFの値(単位は無次元)である。
【0075】
観察距離を300mmとすると、0〜1.0cycle/mmの範囲ではVTFの値は一定(1に等しい。)であり、空間周波数が高くなるにつれて次第にVTFの値が減少する傾向がある。すなわち、この関数は、中〜高空間周波数帯域を遮断するローパスフィルタとして機能する。
【0076】
なお、実際の人間の標準視覚応答特性は、0cycle/mm近傍で1より小さい値になっており、いわゆるバンドパスフィルタの特性を有する。しかし、本実施の形態において、図8に例示するように、極めて低い空間周波数帯域であってもVTFの値を1にすることで、後述する評価値EVPへの寄与度を高くしている。これにより、メッシュパターンMの繰り返し配置に起因する周期性を抑制する効果が得られる。
【0077】
なお、画像データImgの空間対称性に鑑みれば、VTFは、空間周波数の対称性{VTF(U)=VTF(−U)}を有する。しかし、本実施の形態では、負方向の空間周波数特性に関して考慮しない点に留意する。すなわち、VTF(−U)=0(Uは正値)であるとする。また、スペクトルSpcについても同様とする。
【0078】
本実施の形態において、ノイズ強度NP(Ux,Uy)は、スペクトルSpcの値F(Ux,Uy)を用いて、次の(1)式で定義される。
【0079】
【数1】

【0080】
換言すれば、ノイズ強度NP(Ux,Uy)は、スペクトルSpcと人間の標準視覚応答特性(VTF)との畳み込み積分(Ux、Uyの関数)に相当する。例えば、ナイキスト周波数Unyqを超えた空間周波数帯域については、常に、F(Ux,Uy)=0として計算する。以下、ノイズ強度NP(Ux,Uy)のことを、新たなスペクトルSpccと称する場合がある。
【0081】
図9は、スペクトルSpcと、高空間周波数側にシフトされたVTFとの位置関係を表す概略説明図である。ここで、VTFのシフト量は、(1)式でのU=(Ux+Uy1/2(単位はCycle/mm)に対応する。破線で示すVTF0、VTF1、VTF2、及びVTF3は、シフト量がそれぞれ0、Unyq/4、Unyq/2、及び3・Unyq/4であるVTFに相当する。
【0082】
そして、評価値EVPは、次の(2)式で定義される。
【0083】
【数2】

【0084】
なお、Aj(j=1〜3)は、予め決定された任意の係数(非負の実数)である。また、Θ(x)は、x>0の場合はΘ(x)=1であり、x≦0の場合はΘ(x)=0であるステップ関数である。さらに、Unyqは、画像データImgのナイキスト周波数である。例えば、画像データImgの解像度が1750dpi(dot per inch)の場合、Unyq=34.4Cycle/mmに相当する。さらに、φは、Ux−Uy平面上での角度パラメータ(0≦φ≦2π)である。
【0085】
(2)式から諒解されるように、ナイキスト周波数Unyqの1/4倍空間周波数よりも高い空間周波数帯域での各ノイズ強度NP(Ux,Uy)が、零空間周波数でのノイズ強度NP(0,0)よりも大きい場合、右辺の値は0になる。この条件(所定の空間周波数条件)を満たす場合、評価値EVPが最小になる。評価値EVPが低いほど、メッシュパターンMの模様が有するスペクトルSpcは、低空間周波数領域で抑制される。すなわち、メッシュパターンMの模様が有する粒状ノイズ特性は、高空間周波数帯域側にノイズ強度NP(Ux,Uy)が偏在するいわゆるブルーノイズに近づく。これにより、通常観察下での人間の視覚にとって粒状感が目立たないメッシュパターンMを得ることができる。
【0086】
なお、メッシュパターンMを決定するための目標レベル(許容範囲)や評価関数に応じて、評価値EVPの算出式を種々変更し得ることはいうまでもない。
【0087】
以下、上記した評価値EVPに基づいて出力用画像データImgOutを決定する具体的方法について説明する。例えば、模様が異なる画像データImgの作成と、評価値EVPによる評価とを順次繰り返す方法を用いることができる。かかる場合、出力用画像データImgOutを決定する最適化問題として、構成的アルゴリズムや逐次改善アルゴリズム等の種々の探索アルゴリズムを用いることができる。
【0088】
本実施の形態では、擬似焼きなまし法(Simulated Annealing;以下、SA法という。)によるメッシュパターンMの最適化方法について、図10のフローチャート及び図1の機能ブロック図を主に参照しながら説明する。なお、SA法は、高温状態で鉄を叩くことで頑健な鉄を得る「焼きなまし法」を模した確率的探索アルゴリズムである。
【0089】
先ず、初期位置選択部28は、シード点SDの初期位置を選択する(ステップS21)。
【0090】
初期位置の選択に先立って、乱数発生部26は、擬似乱数の発生アルゴリズムを用いて乱数値を発生する。ここで、擬似乱数の発生アルゴリズムとして、メルセンヌ・ツイスタ(Mersenne Twister)、SFMT(SIMD−oriented Fast Mersenne Twister)やXorshift法等の種々のアルゴリズムを用いてもよい。そして、初期位置選択部28は、乱数発生部26から供給された乱数値を用いて、シード点SDの初期位置をランダムに決定する。ここで、初期位置選択部28は、シード点SDの初期位置を画像データImg上の画素のアドレスとして選択し、シード点SDが互いに重複しない位置にそれぞれ設定する。
【0091】
なお、初期位置選択部28は、画像情報推定部38から供給される画像データImgの縦方向・横方向の画素数に基づいて、二次元画像領域の範囲を予め決定しておく。また、初期位置選択部28は、シード点SDの個数を画像情報推定部38から予め取得し、その個数を決定しておく。
【0092】
図11は、シード点SDの配置密度と、メッシュパターンMの全体透過率との関係の一例を表すグラフである。本図は、配置密度が高くなるにしたがって、配線の被覆面積が増加し、その結果、メッシュパターンMの全体透過率が低下することを示している。
【0093】
このグラフ特性は、膜材の光透過率(図5の欄150aの表示)、配線の幅(図5のテキストボックス134の入力値)及び領域決定アルゴリズム(例えば、ボロノイ図)に応じて変化する。よって、配線の幅等の各パラメータに応じた特性データを、関数やテーブル等の種々のデータ形式で、記憶部24に予め記憶してもよい。
【0094】
また、シード点SDの配置密度とメッシュパターンMの電気抵抗値との対応を予め取得しておき、該電気抵抗値の指定値に基づいてシード点SDの個数を決定するようにしてもよい。電気抵抗値は、導電部50の通電性を表す1つのパラメータであり、メッシュパターンMの設計に不可欠だからである。
【0095】
なお、初期位置選択部28は、乱数値を用いることなくシード点SDの初期位置を選択してもよい。例えば、図示しないスキャナや記憶装置を含む外部装置から取得したデータを参照しながら、初期位置を決定することができる。このデータは、例えば、所定の2値画像データであってもよく、具体的には印刷用の網点データであってもよい。
【0096】
次いで、画像データ作成部40は、初期データとしての画像データImgInitを作成する(ステップS22)。画像データ作成部40は、記憶部24から供給されたシード点SDの個数や位置データSDd、並びに画像情報推定部38から供給された画像情報に基づいて、メッシュパターンMの模様を表す画像データImgInit(初期データ)を作成する。
【0097】
複数のシード点SDからメッシュ状の模様を決定するアルゴリズムは、種々の方法を採り得る。以下、図12A〜図13Bを参照しながら詳細に説明する。
【0098】
図12Aに示すように、例えば、正方形状の二次元画像領域200内に8つの点P〜Pを無作為に選択したとする。
【0099】
図12Bは、ボロノイ図を用いて8つの点P〜Pをそれぞれ囲繞する8つの領域V〜Vを画定した結果を示す説明図である。なお、距離関数としてユークリッド距離を用いた。本図から諒解されるように、領域V(i=1〜8)内の任意の点において、点Pが最も近接する点であることを示している。
【0100】
また、ドロネー三角形分割法を用いて、図13A(図12Aと同図)の点P〜Pをそれぞれ頂点とする8つの三角形状の領域を画定した結果を図13Bに示す。
【0101】
ドロネー三角形分割法とは、点P〜Pのうち、隣接する点同士を繋いで三角形状の領域を画定する方法である。この方法によっても、点P〜Pの個数と同数の領域V〜Vを決定することができる。
【0102】
ところで、画像データImg(初期画像データImgInitを含む。)を作成する前に、画素のアドレス及び画素値の定義を予め決定しておく。
【0103】
図14Aは、画像データImgにおける画素アドレスの定義を表す説明図である。例えば、画素サイズが10μmであり、画像データの縦横の画素数はそれぞれ8192個とする。後述するFFTの演算処理の便宜のため、2の冪乗(例えば、2の13乗)となるように設けている。このとき、画像データImgの画像領域全体は、約82mm四方の矩形領域に対応する。
【0104】
図14Bは、画像データImgにおける画素値の定義を表す説明図である。例えば、1画素当たりの階調数を8ビット(256階調)とする。光学濃度0を画素値0(最小値)と対応させ、光学濃度4.5を画素値255(最大値)と対応させておく。その中間の画素値1〜254では、光学濃度に対して線形関係となるように値を定めておく。ここで、光学濃度とは、透過濃度のみならず、反射濃度であってもよいことはいうまでもなく、導電シート14の使用態様等に応じて適宜選択できる。また、光学濃度の他に、三刺激値XYZや色値RGB、L等であっても、上記と同様にして各画素値を定義することができる。
【0105】
このようにして、画像データ作成部40は、画像データImgのデータ定義と、画像情報推定部38で推定された画像情報(ステップS1の説明を参照)に基づいて、メッシュパターンMの模様を表す初期の画像データImgInitを作成する(ステップS22)。画像データ作成部40は、シード点SDの初期位置(図15A参照)を基準とするボロノイ図を用いて、図15Bに示すメッシュパターンMの初期状態を決定する。なお、画像の端部については、上下方向、左右方向に繰り返し配列されるように適切な処理を行う。例えば、画像の左端(又は右端)近傍のシード点SDについては、画像の右端(又は左端)近傍のシード点SDとの間で領域Vを得るようにする。同様に、画像の上端(又は下端)近傍のシード点SDについては、画像の下端(上端)近傍のシード点SDとの間で領域Vを得るようにする。
【0106】
以下、画像データImg(画像データImgInitを含む。)は、光学濃度OD、色値L、色値a、色値bの4チャンネルの各データを備える画像データであるとする。
【0107】
次いで、メッシュ模様評価部42は、評価値EVPInitを算出する(ステップS23)。なお、SA法において、評価値EVPは、対価関数(Cost Function)としての役割を担う。
【0108】
具体的には、図4に示すFFT演算部100は、画像データImgInitに対してFFTを施す。そして、畳み込み演算部102は、FFT演算部100から供給されたスペクトルSpcに対して人間の標準視覚応答特性(図8参照)を畳み込み、新たなスペクトルSpccを算出する。そして、評価値算出部104は、畳み込み演算部102から供給された新たなスペクトルSpccに基づいて評価値EVPを算出する。
【0109】
画像データImgのうち、色値L、色値a、色値bの各チャンネルに対して、上述した評価値EVP(L)、EVP(a)、EVP(b)をそれぞれ算出する{(2)式を参照}。そして、所定の重み係数を用いて積和演算することで、評価値EVPを得る。
【0110】
なお、色値L、色値a、色値bの代わりに光学濃度ODを用いてもよい。評価値EVPに関しては、観察態様の種別、具体的には、補助光源は透過光が支配的であるか、反射光が支配的であるか、あるいは透過光・反射光の混合光であるかに応じて、人間の視感度により適合した演算手法を適宜選択することができる。
【0111】
また、メッシュパターンMを決定するための目標レベル(許容範囲)や評価関数に応じて、評価値EVPの算出式を種々変更し得ることはいうまでもない。
【0112】
このようにして、メッシュ模様評価部42は、評価値EVPInitを算出する(ステップS23)。
【0113】
次いで、記憶部24は、ステップS22で作成された画像データImgInitと、ステップS23で算出された評価値EVPInitとを一時的に記憶する(ステップS24)。あわせて、擬似温度Tに初期値nΔT(nは自然数、ΔTは正の実数である。)を代入する。
【0114】
次いで、カウンタ108は、変数Kを初期化する(ステップS25)。すなわち、Kに0を代入する。
【0115】
次いで、シード点SDの一部(第2シード点SDS)を候補点SPに置き換えた状態で、画像データImgTempを作成し、評価値EVPTempを算出した後に、シード点SDの「更新」又は「非更新」を判断する(ステップS26)。このステップS26について、図1、図4の機能ブロック図及び図16のフローチャートを参照しながら、更に詳細に説明する。
【0116】
先ず、更新候補位置決定部30は、所定の二次元画像領域200から候補点SPを抽出し、決定する(ステップS261)。更新候補位置決定部30は、例えば、乱数発生部26から供給された乱数値を用いて、シード点SDのいずれの位置とも重複しない位置を決定する。なお、候補点SPの個数は1つであっても複数であってもよい。図17Aに示す例では、現在のシード点SDが8個(点P〜P)に対して、候補点SPは2個(点Qと点Q)である。
【0117】
次いで、シード点SDの一部と候補点SPとを無作為に交換する(ステップS262)。更新候補位置決定部30は、各候補点SPと交換(あるいは更新)される各シード点SDを無作為に対応付けておく。図17Aでは、点Pと点Qとが対応付けられ、点Pと点Qとが対応付けられたとする。図17Bに示すように、点Pと点Qとが交換されるとともに、点Pと点Qとが交換される。ここで、交換(あるいは更新)対象でない点P、点P〜Pを第1シード点SDNといい、交換(あるいは更新)対象である点P及び点Pを第2シード点SDSという。
【0118】
次いで、画像データ作成部40は、交換された新たなシード点SD(図17B参照)を用いて、画像データImgTempを作成する(ステップS263)。このとき、ステップS22(図10参照)の場合と同一の方法を用いるので、説明を割愛する。
【0119】
次いで、メッシュ模様評価部42は、画像データImgTempに基づいて、評価値EVPTempを算出する(ステップS264)。このとき、ステップS23(図10参照)の場合と同一の方法を用いるので、説明を割愛する。
【0120】
次いで、更新確率算出部112は、シード点SDの位置の更新確率Probを算出する(ステップS265)。ここで、「位置の更新」とは、ステップS262で暫定的に交換して得たシード点SD(すなわち、第1シード点SDN及び候補点SP)を新たなシード点SDとして決定することをいう。
【0121】
具体的には、メトロポリス基準に従って、シード点SDを更新する確率又は更新しない確率をそれぞれ算出する。更新確率Probは、次の(3)式で与えられる。
【0122】
【数3】

【0123】
ここで、Tは擬似温度を表し、絶対温度(T=0)に近づくに従って、シード点SDの更新則が確率論的から決定論的に変化する。
【0124】
次いで、位置更新判定部114は、更新確率算出部112により算出された更新確率Probに従って、シード点SDの位置を更新するか否かについて判断する(ステップ266)。例えば、乱数発生部26から供給された乱数値を用いて、確率的に判断してもよい。
【0125】
シード点SDを更新する場合は「更新」の旨を、更新しない場合は「非更新」の旨を記憶部24側にそれぞれ指示する(ステップS267、S268)。
【0126】
このようにして、ステップS26が完了する。
【0127】
図10に戻って、「更新」又は「非更新」のいずれか一方の指示に従って、シード点SDを更新するか否かが判定される(ステップS27)。シード点SDを更新しない場合は、ステップS28を行うことなく、次のステップS29に進む。
【0128】
一方、シード点SDを更新する場合は、記憶部24は、現在記憶している画像データImgに対し、ステップS263(図16参照)で求めた画像データImgTempを上書き更新する(ステップS28)。また、記憶部24は、現在記憶している評価値EVPに対し、ステップS264(図16参照)で求めた評価値EVPTempを上書き更新する(ステップS28)。さらに、記憶部24は、現在記憶している第2シード点SDSの位置データSDSdに対し、ステップS261(図16参照)で求めた候補点SPの位置データSPdを上書き更新する(ステップS28)。その後、次のステップS29に進む。
【0129】
次いで、カウンタ108は、現時点でのKの値を1だけ加算する(ステップS29)。
【0130】
次いで、カウンタ108は、現時点でのKの値と予め定められたKmaxの値との大小関係を比較する(ステップS30)。Kの値の方が小さい場合はステップS26まで戻り、以下ステップS26〜S30を繰り返す。なお、この最適化演算における収束性を十分確保するため、例えば、Kmax=10000と定めることができる。
【0131】
それ以外の場合は、擬似温度管理部110は、擬似温度TをΔTだけ減算し(ステップS31)、次のステップS32に進む。なお、擬似温度Tの変化量は、ΔTの減算のみならず、定数δ(0<δ<1)の乗算であってもよい。この場合は、(3)式に示す更新確率Prob(下段)が一定値だけ減算される。
【0132】
次いで、擬似温度管理部110は、現時点での擬似温度Tが0に等しいか否かを判定する(ステップS32)。Tが0と等しくない場合はステップS25に戻って、以下ステップS25〜S32を繰り返す。
【0133】
一方、Tが0に等しい場合は、擬似温度管理部110は、出力用画像データ決定部116に対し、SA法によるメッシュ模様の評価が終了した旨を通知する。そして、記憶部24は、ステップS28で最後に更新された画像データImgの内容を出力用画像データImgOutに上書き更新する(ステップS33)。
【0134】
このようにして、ステップS2を終了する。なお、この出力用画像データImgOutは、その後、露光データ変換部34側に供給され、露光部18の制御信号に変換される画像データである。
【0135】
そして、作業者が目視確認するために、得られた出力用画像データImgOutを表示部22に表示させ、メッシュパターンMを擬似的に可視化してもよい。以下、出力画像データImgOutを実際に可視化した結果の一例を説明する。
【0136】
図18は、最適化された出力用画像データImgOutを用いて、導電シート14の模様を表すメッシュパターンM1を可視化した概略説明図である。
【0137】
図19は、図18に示す出力用画像データImgOutのスペクトルSpcに対して、人間の標準視覚応答特性(図8参照)を畳み込んだ結果を表すグラフである。本グラフの横軸は、ナイキスト周波数Unyqを基準(100%)とした場合の空間周波数のシフト量(単位:%)である。本グラフの縦軸は、零空間周波数におけるノイズ強度NP(0,0)を基準とした場合の、Ux軸方向に沿ったノイズ強度NP(Ux,0)である。
【0138】
本図に示すように、ノイズ強度NP(Ux,0)は、Ux=0.25・Unyq周辺をピークとし、空間周波数が高くなるにつれて単調に減少する特性を有している。空間周波数の範囲が0.25・Unyq≦Ux≦0.5・Unyqである場合、NP(Ux,Uy)>NP(0,0)の関係を常に満たしている。なお、ノイズ強度NP(Ux,Uy)において、Ux軸に限らず、空間周波数U=(Ux+Uy1/2の動径方向で同様の関係が得られた。
【0139】
図6に戻って、露光部18は、メッシュパターンMの露光処理を行い(ステップS3)、その後、現像処理を行う(ステップS4)。
【0140】
作業者は、未露光の第1シート(第1導電シート14a)を所定の位置にセットする。そして、露光開始の指示操作に応じて、画像分割部32(図1参照)は、記憶部24から取得した出力用画像データImgOutを2つの画像データに分割する。ここでは、第1導電シート14aを形成するための第1画像データImgO1について、図20A及び図21を参照しながら説明する。
【0141】
図20Aは、第1画像データImgO1を可視化した概略説明図である。図21は、図20Aに示す二次元画像領域210の部分拡大図である。説明の便宜上、第1画像データImgO1を右回りに45度だけ回転させた状態で表記している。
【0142】
第1画像データImgO1が表す二次元画像領域210上には、略同サイズの第1基本格子212が交互に且つ周期的に配置された市松模様状の第1画像領域R1(ハッチングを付した領域)が形成されている。第1基本格子212は、それぞれ略正方形状(菱形状)を有している。矢印X方向に隣接する各第1基本格子212の間には、相互に接続する第1接続部214が形成されている。一方、前記第1基本格子212と、矢印Y方向に隣接する各第1基本格子212の間には、所定の幅の隙間216が形成されている。すなわち、各第1基本格子212は、矢印X方向に対してのみ相互に連結されている。これにより、第1画像データImgO1に応じた第1導電シート14aに関し、複数の第1導電部50a(図2A及び図3参照)を構成する各第1基本格子212は、矢印X方向に対してのみ相互に電気的に接続される。二次元画像領域210のうち第1画像領域R1を除外した残余の領域(余白の領域)は、その対応位置に第1導電部50a(同参照)が形成されない露光データに設定する。
【0143】
なお、第1基本格子212の一辺の長さは、実寸で3〜10mmに相当する画素数であることが好ましい。さらに、実寸で4〜6mmに相当する画素数であることが一層好ましい。
【0144】
図1に戻って、画像分割部32は、第1画像データImgO1を露光データ変換部34に供給する。露光データ変換部34は、画像分割部32から取得した第1画像データImgO1を、露光部18の出力特性に応じた露光データに変換する。そして、露光部18は、前記第1シートに向けて光16を照射することで、露光処理を行う。
【0145】
次いで、作業者は、露光済みの第1シート(第1導電シート14a)に換えて未露光の第2シート(第2導電シート14b)をセットする。そして、露光開始の指示操作に応じて、画像分割部32(図1参照)は、記憶部24から取得した出力用画像データImgOutを2つの画像データに分割する。ここでは、第2導電シート14bを形成するための第2画像データImgO2について、図20Bを参照しながら説明する。
【0146】
図20Bは、第2画像データImgO2を可視化した概略説明図である。説明の便宜上、第2画像データImgO2を右回りに45度だけ回転させた状態で表記している。
【0147】
第2画像データImgO2が表す二次元画像領域220上には、略同サイズの第2基本格子222が交互に配置された市松模様状の第2画像領域R2(ハッチングを付した領域)が形成されている。略正方形状(菱形状)の第2基本格子222は、第1基本格子212と同じ形状をそれぞれ有する。
【0148】
矢印Y方向に隣接する各第2基本格子222の間には、相互に接続する第2接続部224が形成されている。一方、矢印X方向に隣接する各第2基本格子222の間には、所定の幅の隙間226が形成されている。すなわち、各第2基本格子222は、矢印Y方向に対してのみ相互に連結されている。これにより、第2画像データImgO2に応じた第2導電シート14bに関し、複数の第2導電部50b(図2A及び図3参照)を構成する各第2基本格子222は、矢印Y方向に対してのみ相互に電気的に接続される。二次元画像領域220のうち第2画像領域R2を除外した残余の領域(余白の領域)は、その対応位置に第2導電部50b(同参照)が形成されない露光データに設定する。
【0149】
図20A及び図20Bに示すように、二次元画像領域210及び220を破線で示した矩形領域で重ね合わせた場合、第1画像領域R1及び第2画像領域R2が互い違いの配置関係になるような、換言すれば、各第1基本格子212及び各第2基本格子222が相互に重複しない位置関係下にある。
【0150】
このように、メッシュパターンMの模様を合成することにより、例えばタッチパネル用途のように、複数の導電シート14a、14bを積層する構成を採る場合であっても、ノイズ干渉(モアレ)の発生を防止できる。
【0151】
なお、接続部214(図20A参照)及び接続部224(図20B参照)の一部領域が重複しているが、その面積(二次元画像領域210、220に対する面積比)を微小にすることで、視覚的な悪影響を無くすることができる。
【0152】
図1に戻って、露光データ変換部34は、画像分割部32から取得した第2画像データImgO2を、露光部18の出力特性に応じた露光データに変換する。そして、露光部18は、前記第2シートに向けて光16を照射することで、露光処理を行う。
【0153】
続いて、第1導電シート14aや第2導電シート14bを製造する具体的方法について説明する。
【0154】
例えば、第1透明基体56a上及び第2透明基体56b上に感光性ハロゲン化銀塩を含有する乳剤層を有する感光材料を露光し、現像処理を施すことによって、露光部及び未露光部にそれぞれ金属銀部及び光透過性部を形成して第1導電部50a及び第2導電部50bを形成するようにしてもよい。なお、さらに金属銀部に物理現像及び/又はめっき処理を施すことによって金属銀部に導電性金属を担持させるようにしてもよい。
【0155】
あるいは、第1透明基体56a及び第2透明基体56b上に形成された銅箔上のフォトレジスト膜を露光、現像処理してレジストパターンを形成し、レジストパターンから露出する銅箔をエッチングすることによって、第1導電部50a及び第2導電部50bを形成するようにしてもよい。
【0156】
あるいは、第1透明基体56a及び第2透明基体56b上に金属微粒子を含むペーストを印刷し、ペーストに金属めっきを行うことによって、第1導電部50a及び第2導電部50bを形成するようにしてもよい。
【0157】
第1透明基体56a及び第2透明基体56b上に、第1導電部50a及び第2導電部50bをスクリーン印刷版又はグラビア印刷版によって印刷形成するようにしてもよい。
【0158】
第1透明基体56a及び第2透明基体56b上に、第1導電部50a及び第2導電部50bをインクジェットにより形成するようにしてもよい。
【0159】
次に、本実施の形態に係る第1導電シート14a及び第2導電シート14bにおいて、特に好ましい態様であるハロゲン化銀写真感光材料を用いる方法を中心にして述べる。
【0160】
本実施の形態に係る第1導電シート14a及び第2導電シート14bの製造方法は、感光材料と現像処理の形態によって、次の3通りの形態が含まれる。
【0161】
(1) 物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を化学現像又は熱現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる態様。
【0162】
(2) 物理現像核をハロゲン化銀乳剤層中に含む感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を溶解物理現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる態様。
【0163】
(3) 物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料と、物理現像核を含む非感光性層を有する受像シートを重ね合わせて拡散転写現像して金属銀部を非感光性受像シート上に形成させる態様。
【0164】
上記(1)の態様は、一体型黒白現像タイプであり、感光材料上に光透過性導電膜等の透光性導電性膜が形成される。得られる現像銀は化学現像銀又は熱現像銀であり、高比表面のフィラメントである点で後続するめっき又は物理現像過程で活性が高い。
【0165】
上記(2)の態様は、露光部では、物理現像核近縁のハロゲン化銀粒子が溶解されて現像核上に沈積することによって感光材料上に光透過性導電性膜等の透光性導電性膜が形成される。これも一体型黒白現像タイプである。現像作用が、物理現像核上への析出であるので高活性であるが、現像銀は比表面の小さい球形である。
【0166】
上記(3)の態様は、未露光部においてハロゲン化銀粒子が溶解されて拡散して受像シート上の現像核上に沈積することによって受像シート上に光透過性導電性膜等の透光性導電性膜が形成される。いわゆるセパレートタイプであって、受像シートを感光材料から剥離して用いる態様である。
【0167】
いずれの態様もネガ型現像処理及び反転現像処理のいずれの現像を選択することもできる(拡散転写方式の場合は、感光材料としてオートポジ型感光材料を用いることによってネガ型現像処理が可能となる)。
【0168】
ここでいう化学現像、熱現像、溶解物理現像、拡散転写現像は、当業界で通常用いられている用語どおりの意味であり、写真化学の一般教科書、例えば菊地真一著「写真化学」(共立出版社、1955年刊行)、C.E.K.Mees編「The Theory of Photographic Processes, 4th ed.」(Mcmillan社、1977年刊行)に解説されている。本件は液処理に係る発明であるが、その他の現像方式として熱現像方式を適用する技術も参考にすることができる。例えば、特開2004−184693号、同2004−334077号、同2005−010752号の各公報、特願2004−244080号、同2004−085655号の各明細書に記載された技術を適用することができる。
【0169】
ここで、本実施の形態に係る第1導電シート14a及び第2導電シート14bの各層の構成について、以下に詳細に説明する。
【0170】
[第1透明基体56a、第2透明基体56b]
第1透明基体56a及び第2透明基体56bとしては、プラスチックフイルム、プラスチック板、ガラス板等を挙げることができる。
【0171】
上記プラスチックフイルム及びプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVA等のポリオレフィン類;ビニル系樹脂;その他、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。
【0172】
第1透明基体56a及び第2透明基体56bとしては、PET(融点:258℃)、PEN(融点:269℃)、PE(融点:135℃)、PP(融点:163℃)、ポリスチレン(融点:230℃)、ポリ塩化ビニル(融点:180℃)、ポリ塩化ビニリデン(融点:212℃)やTAC(融点:290℃)等の融点が約290℃以下であるプラスチックフイルム、又はプラスチック板が好ましく、特に、光透過性や加工性等の観点から、PETが好ましい。第1導電シート14a及び第2導電シート14bのような導電シートは透明性が要求されるため、第1透明基体56a及び第2透明基体56bの透明度は高いことが好ましい。
【0173】
[銀塩乳剤層]
第1導電シート14a及び第2導電シート14bの導電層{第1基本格子212、第1接続部214、第2基本格子222、第2接続部224等の導電部(図20A及び図20B参照)}となる銀塩乳剤層は、銀塩とバインダーの他、溶媒や染料等の添加剤を含有する。
【0174】
本実施の形態に用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀等の無機銀塩及び酢酸銀等の有機銀塩が挙げられる。本実施の形態においては、光センサーとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましい。
【0175】
銀塩乳剤層の塗布銀量(銀塩の塗布量)は、銀に換算して1〜30g/mが好ましく、1〜25g/mがより好ましく、5〜20g/mがさらに好ましい。この塗布銀量を上記範囲とすることで、第1導電シート14aと第2導電シート14bとを積層した場合に所望の表面抵抗を得ることができる。
【0176】
本実施の形態に用いられるバインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
【0177】
本実施の形態の銀塩乳剤層中に含有されるバインダーの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。銀塩乳剤層中のバインダーの含有量は、銀/バインダー体積比で1/4以上が好ましく、1/2以上がより好ましい。銀/バインダー体積比は、100/1以下が好ましく、50/1以下がより好ましい。また、銀/バインダー体積比は1/1〜4/1であることがさらに好ましい。1/1〜3/1であることが最も好ましい。銀塩乳剤層中の銀/バインダー体積比をこの範囲にすることで、塗布銀量を調整した場合でも抵抗値のばらつきを抑制し、均一な表面抵抗を有する導電シート14を得ることができる。なお、銀/バインダー体積比は、原料のハロゲン化銀量/バインダー量(重量比)を銀量/バインダー量(重量比)に変換し、さらに、銀量/バインダー量(重量比)を銀量/バインダー量(体積比)に変換することで求めることができる。
【0178】
<溶媒>
銀塩乳剤層の形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0179】
本実施の形態の銀塩乳剤層に用いられる溶媒の含有量は、銀塩乳剤層に含まれる銀塩、バインダー等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であり、50〜80質量%の範囲であることが好ましい。
【0180】
<その他の添加剤>
本実施の形態に用いられる各種添加剤に関しては、特に制限は無く、公知のものを好ましく用いることができる。
【0181】
[その他の層構成]
銀塩乳剤層の上に図示しない保護層を設けてもよい。本実施の形態において「保護層」とは、ゼラチンや高分子ポリマーといったバインダーからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために感光性を有する銀塩乳剤層上に形成される。その厚みは0.5μm以下が好ましい。保護層の塗布方法及び形成方法は特に限定されず、公知の塗布方法及び形成方法を適宜選択することができる。また、銀塩乳剤層よりも下に、例えば下塗り層を設けることもできる。
【0182】
次に、第1導電シート14a及び第2導電シート14bの作製方法の各工程について説明する。
【0183】
[露光]
本実施の形態では、第1導電部50a及び第2導電部50bを印刷方式によって施す場合を含むが、印刷方式以外は、第1導電部50a及び第2導電部50bを露光と現像等によって形成する。すなわち、第1透明基体56a及び第2透明基体56b上に設けられた銀塩含有層を有する感光材料又はフォトリソグラフィ用フォトポリマーを塗工した感光材料への露光を行う。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線等の光、X線等の放射線等が挙げられる。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。
【0184】
[現像処理]
本実施の形態では、乳剤層を露光した後、さらに現像処理が行われる。現像処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもでき、市販品では、例えば、富士フイルム社処方のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトール、KODAK社処方のC−41、E−6、RA−4、D−19、D−72等の現像液、又はそのキットに含まれる現像液を用いることができる。また、リス現像液を用いることもできる。
【0185】
本発明における現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含むことができる。本発明における定着処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
【0186】
上記定着工程における定着温度は、約20℃〜約50℃が好ましく、さらに好ましくは25〜45℃である。また、定着時間は5秒〜1分が好ましく、さらに好ましくは7秒〜50秒である。定着液の補充量は、感光材料の処理量に対して600ml/m以下が好ましく、500ml/m以下がさらに好ましく、300ml/m以下が特に好ましい。
【0187】
現像、定着処理を施した感光材料は、水洗処理や安定化処理を施されるのが好ましい。上記水洗処理又は安定化処理においては、水洗水量は通常感光材料1m当り、20リットル以下で行われ、3リットル以下の補充量(0も含む、すなわちため水水洗)で行うこともできる。
【0188】
現像処理後の露光部に含まれる金属銀の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得ることができるため好ましい。
【0189】
本実施の形態における現像処理後の階調は、特に限定されるものではないが、4.0を超えることが好ましい。現像処理後の階調が4.0を超えると、光透過性部の透光性を高く保ったまま、導電性金属部の導電性を高めることができる。階調を4.0以上にする手段としては、例えば、前述のロジウムイオン、イリジウムイオンのドープが挙げられる。
【0190】
以上の工程を経て導電シートは得られるが、得られた導電シートの表面抵抗は0.1〜100オーム/sq.の範囲にあることが好ましく、1〜10オーム/sq.の範囲にあることがより好ましい。また、現像処理後の導電シートに対しては、さらにカレンダー処理を行ってもよく、カレンダー処理により所望の表面抵抗に調整することができる。
【0191】
[物理現像及びめっき処理]
本実施の形態では、前記露光及び現像処理により形成された金属銀部の導電性を向上させる目的で、前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させるための物理現像及び/又はめっき処理を行ってもよい。本発明では物理現像又はめっき処理のいずれか一方のみで導電性金属粒子を金属銀部に担持させてもよく、物理現像とめっき処理とを組み合わせて導電性金属粒子を金属銀部に担持させてもよい。なお、金属銀部に物理現像及び/又はめっき処理を施したものを含めて「導電性金属部」と称する。
【0192】
本実施の形態における「物理現像」とは、金属や金属化合物の核上に、銀イオン等の金属イオンを還元剤で還元して金属粒子を析出させることをいう。この物理現象は、インスタントB&Wフイルム、インスタントスライドフイルムや、印刷版製造等に利用されており、本発明ではその技術を用いることができる。また、物理現像は、露光後の現像処理と同時に行っても、現像処理後に別途行ってもよい。
【0193】
本実施の形態において、めっき処理は、無電解めっき(化学還元めっきや置換めっき)、電解めっき、又は無電解めっきと電解めっきの両方を用いることができる。本実施の形態における無電解めっきは、公知の無電解めっき技術を用いることができ、例えば、プリント配線板等で用いられている無電解めっき技術を用いることができ、無電解めっきは無電解銅めっきであることが好ましい。
【0194】
[酸化処理]
本実施の形態では、現像処理後の金属銀部、並びに、物理現像及び/又はめっき処理によって形成された導電性金属部には、酸化処理を施すことが好ましい。酸化処理を行うことにより、例えば、光透過性部に金属が僅かに沈着していた場合に、該金属を除去し、光透過性部の透過性をほぼ100%にすることができる。
【0195】
[導電性金属部]
本実施の形態の導電性金属部の線幅(第1導電部50a及び第2導電部50bの線幅)は、下限は1μm以上、3μm以上、4μm以上、もしくは5μm以上が好ましく、上限は15μm、10μm以下、9μm以下、8μm以下が好ましい。線幅が上記下限値未満の場合には、導電性が不十分となるためタッチパネルに使用した場合に、検出感度が不十分となる。他方、上記上限値を越えると導電性金属部に起因するモアレが顕著になったり、タッチパネルに使用した際に視認性が悪くなったりする。なお、上記範囲にあることで、導電性金属部のモアレが改善され、視認性が特によくなる。また、導電性金属部は、アース接続等の目的においては、線幅は200μmより広い部分を有していてもよい。
【0196】
本実施の形態における導電性金属部は、可視光透過率の点から開口率(透過率)は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが最も好ましい。開口率とは、第1基本格子212、第1接続部214、第2基本格子222、第2接続部224等(図20A及び図20B参照)の導電部を除いた透光性部分が全体に占める割合であり、例えば、線幅15μm、ピッチ300μmの正方形の格子状の開口率は、90%である。
【0197】
[光透過性部]
本実施の形態における「光透過性部」とは、第1導電シート14a及び第2導電シート14bのうち導電性金属部以外の透光性を有する部分(開口部52)を意味する。光透過性部における透過率は、前述のとおり、第1透明基体56a及び第2透明基体56bの光吸収及び反射の寄与を除いた380〜780nmの波長領域における透過率の最小値で示される透過率が90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上であり、さらにより好ましくは98%以上であり、最も好ましくは99%以上である。
【0198】
露光方法に関しては、ガラスマスクを介した方法やレーザー描画によるパターン露光方式が好ましい。
【0199】
[第1導電シート14a及び第2導電シート14b]
本実施の形態に係る第1導電シート14a及び第2導電シート14bにおける第1透明基体56a及び第2透明基体56bの厚さは、5〜350μmであることが好ましく、30〜150μmであることがさらに好ましい。5〜350μmの範囲であれば所望の可視光の透過率が得られ、且つ、取り扱いも容易である。
【0200】
第1透明基体56a及び第2透明基体56b上に設けられる金属銀部の厚さは、第1透明基体56a及び第2透明基体56b上に塗布される銀塩含有層用塗料の塗布厚みに応じて適宜決定することができる。金属銀部の厚さは、0.001mm〜0.2mmから選択可能であるが、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、0.01〜9μmであることがさらに好ましく、0.05〜5μmであることが最も好ましい。また、金属銀部はパターン状であることが好ましい。金属銀部は1層でもよく、2層以上の重層構成であってもよい。金属銀部がパターン状であり、且つ、2層以上の重層構成である場合、異なる波長に感光できるように、異なる感色性を付与することができる。これにより、露光波長を変えて露光すると、各層において異なるパターンを形成することができる。
【0201】
導電性金属部の厚さは、タッチパネルの用途としては、薄いほど表示パネルの視野角が広がるため好ましく、視認性の向上の点でも薄膜化が要求される。このような観点から、導電性金属部に担持された導電性金属からなる層の厚さは、9μm未満であることが好ましく、0.1μm以上5μm未満であることがより好ましく、0.1μm以上3μm未満であることがさらに好ましい。
【0202】
本実施の形態では、上述した銀塩含有層の塗布厚みをコントロールすることにより所望の厚さの金属銀部を形成し、さらに物理現像及び/又はめっき処理により導電性金属粒子からなる層の厚みを自在にコントロールできるため、5μm未満、好ましくは3μm未満の厚みを有する第1導電シート14a及び第2導電シート14bであっても容易に形成することができる。
【0203】
なお、本実施の形態に係る第1導電シート14aや第2導電シート14bの製造方法では、めっき等の工程は必ずしも行う必要はない。本実施の形態に係る第1導電シート14aや第2導電シート14bの製造方法では銀塩乳剤層の塗布銀量、銀/バインダー体積比を調整することで所望の表面抵抗を得ることができるからである。なお、必要に応じてカレンダー処理等を行ってもよい。
【0204】
(現像処理後の硬膜処理)
銀塩乳剤層に対して現像処理を行った後に、硬膜剤に浸漬して硬膜処理を行うことが好ましい。硬膜剤としては、例えば、グルタルアルデヒド、アジポアルデヒド、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン等のジアルデヒド類及びほう酸等の特開平2−141279号公報に記載のものを挙げることができる。
【0205】
[積層導電シート]
積層導電シートには、反射防止層やハードコート層などの機能層を付与してもよい。
【0206】
なお、本発明は、下記表1及び表2に記載の公開公報及び国際公開パンフレットの技術と適宜組み合わせて使用することができる。「特開」、「号公報」、「号パンフレット」等の表記は省略する。
【0207】
【表1】

【0208】
【表2】

【実施例】
【0209】
以下に、本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0210】
(ハロゲン化銀感光材料)
水媒体中のAg150gに対してゼラチン10.0gを含む、球相当径平均0.1μmの沃臭塩化銀粒子(I=0.2モル%、Br=40モル%)を含有する乳剤を調製した。
【0211】
また、この乳剤中にはKRhBr及びKIrClを濃度が10−7(モル/モル銀)になるように添加し、臭化銀粒子にRhイオンとIrイオンをドープした。この乳剤にNaPdClを添加し、さらに塩化金酸とチオ硫酸ナトリウムを用いて金硫黄増感を行った後、ゼラチン硬膜剤と共に、銀の塗布量が10g/mとなるように第1透明基体56a及び第2透明基体56b(ここでは、共にポリエチレンテレフタレート(PET))上に塗布した。この際、Ag/ゼラチン体積比は2/1とした。
【0212】
幅30cmのPET支持体に25cmの幅で20m分塗布を行ない、塗布の中央部24cmを残すように両端を3cmずつ切り落としてロール状のハロゲン化銀感光材料を得た。
【0213】
(露光パターンの作成)
本実施の形態で説明したSA法(図11等参照)を用いて、不規則に配置された配線からなるメッシュパターンM(図2A参照)を表す出力用画像データImgOutを作成した。
【0214】
メッシュパターンMの設定条件は、全体透過率93%、基体厚さ(第1及び第2透明基体56a、56bの総和)を40μm、金属細線54の幅を20μm、金属細線54の厚さを10μmとした。パターンサイズを縦横とも5mm、画像解像度を3500dpi(dot per inch)とした。シード点SDの初期位置はメルセンヌ・ツイスタを用いてランダムに決定し、ボロノイ図を用いて多角形状の各メッシュ領域を画定した。評価値EVPは画像データImgの色値L、色値a、色値bに基づいて算出した。そして、同一の出力画像データImgOutを上下方向及び左右方向に並べて配置することで、周期的な露光パターンを形成した。その結果、メッシュパターンM1(図18参照)の模様を表す出力用画像データImgOutが得られた。
【0215】
そして、図20A及び図20Bに示すように、出力用画像データImgOutの分割処理を行った。第1基本格子212及び第2基本格子222の一辺の長さを5.4mmとし、第1接続部214及び第2接続部224の幅を0.4mmとした。なお、隙間216、226はいずれも0.4mmとした。
【0216】
(露光)
露光のパターンは、第1導電シート14aについては図20Aに示すパターンで、第2導電シート14bについては図20Bに示すパターンで、A4サイズ(210mm×297mm)の第1透明基体56a及び第2透明基体56bに行った。露光は上記パターンのフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光した。
【0217】
(現像処理)
・現像液1L処方
ハイドロキノン 20 g
亜硫酸ナトリウム 50 g
炭酸カリウム 40 g
エチレンジアミン・四酢酸 2 g
臭化カリウム 3 g
ポリエチレングリコール2000 1 g
水酸化カリウム 4 g
pH 10.3に調整
・定着液1L処方
チオ硫酸アンモニウム液(75%) 300 ml
亜硫酸アンモニウム・1水塩 25 g
1,3−ジアミノプロパン・四酢酸 8 g
酢酸 5 g
アンモニア水(27%) 1 g
pH 6.2に調整
【0218】
上記処理剤を用いて露光済み感材を、富士フイルム社製自動現像機 FG−710PTSを用いて処理条件:現像35℃ 30秒、定着34℃ 23秒、水洗 流水(5L/分)の20秒処理で行った。
【0219】
以下、メッシュパターンM1を有する導電シート14を第1サンプルという。第1サンプルのうち、20箇所の金属細線54を無作為に抽出し、その線幅をそれぞれ測定した。その結果、金属細線54の線幅の平均値(平均線幅)は19.7μmであった。すなわち、平均線幅に相当する空間周波数は、25.4Cy/mm{=1/(2×19.7×10−3)}であった。
【0220】
[評価]
(表面抵抗測定)
表面抵抗率の均一性を評価するために、導電シート14の表面抵抗率をダイアインスツルメンツ社製ロレスターGP(型番MCP−T610)直列4探針プローブ(ASP)にて任意の10箇所測定した値の平均値である。
【0221】
(ノイズ感の評価)
市販のカラー液晶ディスプレイ(画面サイズ4.7型、640×480ドット)を使用する。第1サンプルを貼付したタッチパネルを前記液晶ディスプレイに組み込み、液晶パネルの裏面から補助光としてのLEDランプを点灯させ、表示画面を観察し、ノイズ感の目視評価を行った。ノイズ感の視認性は液晶パネルの正面側から観察距離300mmで行った。
【0222】
[結果]
10枚の第1サンプルのいずれについてもノイズ感は顕在化せず、表面抵抗率も透明電極として十分に実用化できるレベルであり、透光性も良好であった。また、実測値に基づいて畳み込み積分のグラフを作成したところ、図19と同様の結果が得られることも確認した。
【0223】
以上のように、出力用画像データImgOutは、出力用画像データImgOutのスペクトルSpcと人間の標準視覚応答特性(VTF)との畳み込み積分において、出力用画像データImgOutに応じたナイキスト周波数Unyqの1/4倍周波数以上であり、且つ、1/2倍周波数以下である空間周波数帯域での各積分値NP(Ux,Uy)が、積分値NP(0,0)よりも大きい特性を有するようにしたので、低空間周波数帯域側と比べて高空間周波数帯域側のノイズ量が相対的に大きくなっている。人間の視覚は、低空間周波数帯域での応答特性は高いが、中〜高空間周波数帯域において応答特性が急激に低下する性質を有するので、人間にとって視覚的に感じられるノイズ感が減少する。これにより、導電シート14が有するパターンに起因するノイズ粒状感が低減されるので、観察対象物の視認性が大幅に向上する。また、多角形状のメッシュを複数備えているので、断裁後における各配線の断面形状も略一定であり、安定した通電性能を有する。
【0224】
また、導電シート14の平面視でのスペクトルSpcとVTFとの畳み込み積分において、導電部50の平均線幅に相当する空間周波数の1/4倍周波数以上であり、且つ、1/2倍周波数以下である空間周波数帯域での各積分値NP(Ux,Uy)が、積分値NP(0,0)よりも大きい特性を有するように構成しても、同様の作用効果が得られる。
【0225】
続いて、上記した本実施の形態の変形例について、図22〜図25を参照しながら説明する。なお、図1〜図5の構成は、本実施の形態と同様であるので、その説明を割愛する。本変形例では、ブラックマトリクス64の模様をも考慮してメッシュパターンMを最適化する点が、本実施の形態と異なる。
【0226】
図22は、本実施の形態の変形例における重畳画像データImg’の作成条件の設定画面を示す図である。なお、重畳画像データImg’には、後述するImgInit’(初期データ)やImgTemp’(中間データ)が含まれる。
【0227】
設定画面160は、上方から順番に、2個のラジオボタン162a、162bと、6個のテキストボックス164、166、168、170、172、174と、マトリクス状の画像176と、[戻る]、[中止]、[設定]と表示されたボタン178、180、182とを備える。
【0228】
ラジオボタン162a、162bの右方部には、「あり」、「なし」なる文字列がそれぞれ表示されている。そして、ラジオボタン162aの左方には、「マトリクスの有無」なる文字列が表示されている。
【0229】
テキストボックス164、166、168、170、172、174の左方部には、「重畳位置の平均サンプル数」、「濃度」、「寸法」、「a」、「b」、「c」及び「d」なる文字列がそれぞれ表示されている。また、テキストボックス164、166、168、170、172、174の右方部には、「回」、「D」、「μm」、「μm」、「μm」及び「μm」なる文字列がそれぞれ表示されている。ここで、テキストボックス164、166、168、170、172、174のいずれにも、入力部20(例えば、キーボード)の所定の操作により算用数字の入力が自在である。
【0230】
マトリクス状の画像176は、ブラックマトリクス64(図2B参照)の形状を模した画像であり、4個の開口部184及び窓枠186が設けられている。
【0231】
続いて、本変形例における製造装置10の動作について、図6、図23及び図24のフローチャートを参照しながら説明する。
【0232】
図6のフローチャートにおいて、本変形例での動作は、本実施の形態と基本的には同様である。ここで、各種条件の入力(ステップS1)の際、メッシュパターンMの視認性に関わる視認情報のみならず、ブラックマトリクス64に関する視認情報をさらに入力する。
【0233】
作業者は、表示部22に表示された設定画面160(図22参照)を介して、適切な数値等を入力する。これにより、ブラックマトリクス64の視認性に関わる視認情報を入力することができる。ここで、ブラックマトリクス64の視認情報とは、ブラックマトリクス64の形状や光学濃度に寄与する各種情報であり、パターン材の視認情報が含まれる。パターン材の視認情報として、例えば、該パターン材の種類、色値、光透過率若しくは光反射率、又は前記パターン構造の配設位置、単位形状若しくは単位サイズの少なくとも1つが含まれる。
【0234】
作業者は、重畳しようとするブラックマトリクス64に関して、テキストボックス164等を用いてブラックマトリクス64の各種条件をそれぞれ入力する。
【0235】
ラジオボタン162a、162bの入力は、メッシュパターンMにブラックマトリクス64を重畳した模様を表す出力用画像データImgOutを作成するか否かに対応する。「あり」(ラジオボタン162a)の場合はブラックマトリクス64を重畳し、「なし」(ラジオボタン162b)の場合はブラックマトリクス64を重畳しない。
【0236】
テキストボックス164の入力値は、ブラックマトリクス64の配置位置をランダムに決定し、画像データImgの作成・評価を行う試行回数に相当する。例えば、この値を5回と設定した場合、メッシュパターンMとブラックマトリクス64との位置関係をランダムに定めた5つの重畳画像データImg’を作成し、評価値EVPの平均値をそれぞれ用いて、メッシュの模様の評価を行う。
【0237】
テキストボックス166、168、170、172の入力値は、ブラックマトリクス64の光学濃度(単位:D)、単位画素66の横サイズ(単位:μm)、単位画素66の縦サイズ(単位:μm)、遮光材68hの幅(単位:μm)、遮光材68vの幅(単位:μm)にそれぞれ対応する。
【0238】
さらに、ブラックマトリクス64の光学濃度(テキストボックス166)と、単位画素66の横サイズ(テキストボックス168)と、単位画素66の縦サイズ(テキストボックス170)と、遮光材68hの幅(テキストボックス172)と、遮光材68vの幅(テキストボックス174)とに基づいて、ブラックマトリクス64を重畳した場合のメッシュパターンMの模様(形状・光学濃度)を推定できる。
【0239】
図23は、本実施の形態の変形例における出力用画像データImgOutの作成方法を説明するフローチャートである。本図は、図10と比べて、重畳画像データImgInit’を作成するステップ(ステップS23A)を備える点が異なる。なお、ステップS21A、S22A、S24A〜S26A及びS28A〜S34Aは、図10のステップS21、S22、S23〜S25及びS27〜S33にそれぞれ対応する。よって、これらの各ステップでの動作説明を省略する。
【0240】
ステップS23Aにおいて、画像データ作成部40は、ステップS22Aで作成された画像データImgInitと、画像情報推定部38で推定された画像情報(ステップS1の説明を参照)に基づいて、重畳画像データImgInit’を作成する。なお、この重畳画像データImgInit’は、メッシュパターンMに構造パターンとしてのブラックマトリクス64を重畳した模様を表す画像データである。
【0241】
画像データImgInitの画素値のデータ定義が透過濃度である場合は、ブラックマトリクス64の配置位置に対応する各画素の透過濃度(図22のテキストボックス166の入力値)を加算して、重畳画像データImgInit’を作成できる。また、画像データImgInitの画素値のデータ定義が反射濃度である場合は、ブラックマトリクス64の配置位置に対応する各画素の反射濃度(同テキストボックス166の入力値)に置換して、重畳画像データImgInit’を作成できる。
【0242】
ステップS27Aにおいて、シード点SDの一部(第2シード点SDS)を候補点SPに置き換えた状態で、画像データImgTempを作成し、評価値EVPTempを算出した後に、シード点SDの「更新」又は「非更新」を判断する。
【0243】
図24の本変形例におけるフローチャートは、図16と比べて、重畳画像データImgTemp’を作成するステップ(ステップS274A)を備える点が異なる。なお、ステップS271A〜S273A及びS275A〜S279Aは、図16のステップS261〜S263及びS264〜S268にそれぞれ対応する。
【0244】
ステップS274Aにおいて、画像データ作成部40は、ステップS273Aで作成された画像データImgTempと、画像情報推定部38で推定された画像情報(ステップS1の説明を参照)とに基づいて、重畳画像データImgTemp’を作成する。このとき、ステップS23A(図23参照)の場合と同一の方法を用いるので、説明を割愛する。
【0245】
図25は、ブラックマトリクス64を重畳する条件下で最適化された出力用画像データImgOutを用いて、導電シート14の模様を表すメッシュパターンM2を可視化した概略説明図である。
【0246】
図20及び図25から諒解されるように、メッシュパターンM2の模様(各開口部52)は、メッシュパターンM1の模様と比べて、総じて横長の形状を有している。その根拠は以下のように推測される。
【0247】
例えば、図2Bに示すブラックマトリクス64の単位画素66の形状を正方形と仮定する。赤色フィルタ62r、緑色フィルタ62g、青色フィルタ62bが左右方向に配設されることで、単位画素66が1/3の領域に区画され、高空間周波数成分のノイズ粒状度が増加する。一方、上下方向には、遮光材68hの配設周期に相当する空間周波数成分のみ存在し、それ以外の空間周波数成分がないため、この配設周期の視認性を低減するようにメッシュパターンM2の模様が決定される。すなわち、左右方向に延在する各配線は、その間隔がなるべく狭くなるように、且つ、各遮光材68hの間に規則的に配置されるように決定される。
【0248】
このように、ブラックマトリクス64(構造パターン)を重畳させて画像データImg(出力用画像データImgOutを含む。)を作成することで、ブラックマトリクス64の模様を考慮に入れたメッシュ形状の最適化が可能である。つまり、実際の使用態様での観察でノイズ粒状感が低減され、観察対象物の視認性が大幅に向上する。導電シート14の実際の使用態様が既知である場合、特に効果的である。
【0249】
なお、導電シート14の実際の使用態様が未知である場合、構造パターンの存在を考慮しない条件下、メッシュパターンM1の模様を最適化することで、後に重畳される構造パターンの種類にかかわらず、観察対象物の視認性が向上する効果がある。構造パターンを重畳しない場合は尚更である。
【0250】
ところで、上記した実施例と同様の方法を用いて、メッシュパターンM2を有する導電シート14(以下、第2サンプルという。)を作製した。なお、上記(露光パターンの作成)工程において、ブラックマトリクス64の設定条件は、光学濃度を4.5D、単位画素66の縦サイズ、横サイズをともに200μm、遮光材68vの幅、遮光材68vの幅をともに20μmとした。
【0251】
すなわち、設定画面160(図22参照)上でラジオボタン162aを選択し、「マトリクスの有無」を「あり」に設定した上で、出力用画像データImgOutを作成した。その結果、メッシュパターンM2(図25参照)の模様を表す出力用画像データImgOutが得られた。
【0252】
上記(ノイズ感の評価)によれば、第2サンプルは、第1サンプルよりもノイズ感が一層目立たないことを確認した。さらに、液晶パネルの代わりに透明板を用いて、上記LEDランプ越しに光を観察して、同様の目視評価を行ったところ、第1サンプルは、第2サンプルよりもノイズ感が一層目立たないことを確認した。すなわち、導電シート14の視認態様(例えば、赤色フィルタ62r等のカラーフィルタやブラックマトリクス64の有無)に応じて、メッシュパターンMの模様が最適化されていることが諒解される。
【0253】
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0254】
例えば、パターン材はブラックマトリクスに限られず、種々の用途に応じた種々の構造パターンの形状に対して本発明が適用できることはいうまでもない。
【0255】
また、図26に示すように、第1透明基体56aの一主面に第1導電部50aを形成し、第1透明基体56aの他主面に第2導電部50bを形成するようにしてもよい。この場合、第2透明基体56bが存在せず、第2導電部50b上に、第1透明基体56aが積層され、第1透明基体56a上に第1導電部50aが積層された形態となる。また、第1導電シート14aと第2導電シート14bとはその間に他の層が存在してもよく、第1導電部50aと第2導電部50bとが絶縁状態であれば、それらが対向して配置されてもよい。
【0256】
さらに、導電シート14は、タッチパネル用電極のみならず、無機EL素子、有機EL素子又は太陽電池の電極や、透明発熱体や電磁波シールド材にも適用してもよい。例えば、この導電シート14を車両のデフロスタ(霜取り装置)に適用する場合は、導電シート14の対向する端部に図示しない第1及び第2電極を形成し、第1電極から第2電極に電流を流す。これにより、透明発熱体が発熱し、透明発熱体に接する又は透明発熱体を組み込んだ加熱対象物(例えば、建物の窓ガラス、車両用の窓ガラス、車両用灯具の前面カバー等)が加熱される。その結果、加熱対象物に付着していた雪等が取り除かれることになる。
【符号の説明】
【0257】
10…製造装置 12…画像処理装置
14…導電シート 16…光
18…露光部 20…入力部
24…記憶部 28…初期位置選択部
30…更新候補位置決定部 32…画像分割部
34…露光データ変換部 38…画像情報推定部
40…画像データ作成部 42…メッシュ模様評価部
44…データ更新指示部 50…導電部
52…開口部 54…金属細線
56a…第1透明基体 56b…第2透明基体
60…フィルタ部材 64…ブラックマトリクス
100…FFT演算部 102…畳み込み演算部
104…評価値算出部 116…出力用画像データ決定部
120、160…設定画面 200、210、220…二次元画像領域
212…第1基本格子 214…第1接続部
216、226…隙間 222…第2基本格子
224…第2接続部
Img、ImgInit、ImgTemp…画像データ
Img’、ImgInit’、ImgTemp’…重畳画像データ
ImgO1…第1画像データ ImgO2…第2画像データ
ImgOut…出力用画像データ M、M1、M2…メッシュパターン
PT1〜PT3…パターン SD…シード点
SDd、SDNd、SDSd、SPd…位置データ
SDN…第1シード点 SDS…第2シード点
SP…候補点 Spc…スペクトル
Spcc…新たなスペクトル Unyq…ナイキスト周波数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッシュパターンの模様を表す画像データを作成する作成ステップと、
作成された前記画像データに基づいて基体上に線材を出力形成し、前記メッシュパターンを有する導電シートを製造する出力ステップと、を備え、
前記画像データは、該画像データのパワースペクトルと人間の標準視覚応答特性との畳み込み積分において、該画像データに応じたナイキスト周波数の1/4倍周波数以上であり、且つ、1/2倍周波数以下である空間周波数帯域での各積分値が、零空間周波数での積分値よりも大きい特性を有する
ことを特徴とする導電シートの製造方法。
【請求項2】
メッシュパターンと、該メッシュパターンの模様とは異なる模様を有する構造パターンとを重畳させて得られる重畳画像データの評価結果に基づいて、前記メッシュパターンの模様を表す画像データを作成する作成ステップと、
作成された前記画像データに基づいて基体上に線材を出力形成し、前記メッシュパターンを有する導電シートを製造する出力ステップと、を備え、
前記重畳画像データは、該重畳画像データのパワースペクトルと人間の標準視覚応答特性との畳み込み積分において、該重畳画像データに応じたナイキスト周波数の1/4倍周波数以上であり、且つ、1/2倍周波数以下である空間周波数帯域での各積分値が、零空間周波数での積分値よりも大きい特性を有する
ことを特徴とする導電シートの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の製造方法において、
前記構造パターンは、ブラックマトリクスであることを特徴とする導電シートの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法において、
前記メッシュパターンの模様が形成される所定の二次元画像領域を、周期的に配列された幾何パターンである第1画像領域と、残余の画像領域である第2画像領域とに分割する分割ステップをさらに備え、
前記作成ステップでは、分割された前記第1画像領域に応じた第1画像データと、分割された前記第2画像領域に応じた第2画像データとを作成し、
前記出力ステップでは、作成された前記第1及び第2画像データに基づいて前記線材を出力形成することで、前記基体上において前記メッシュパターンの模様を合成する
ことを特徴とする導電シートの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法において、
前記画像データは、複数のカラーチャンネルを有しており、
前記積分値は、前記カラーチャンネル毎の重み付け総和である
ことを特徴とする導電シートの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法において、
所定の二次元画像領域の中から複数の位置を選択する選択ステップを備え、
前記作成ステップでは、選択された前記複数の位置に基づいて前記画像データを作成する
ことを特徴とする導電シートの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法において、
前記人間の標準視覚応答特性は、観察距離300mmでのドゥーリー・ショー関数であることを特徴とする導電シートの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする導電シート。
【請求項9】
基体上にメッシュ状の線材が形成された導電シートであって、
平面視でのパワースペクトルと人間の標準視覚応答特性との畳み込み積分において、前記線材の平均線幅に相当する空間周波数の1/4倍周波数以上であり、且つ、1/2倍周波数以下である空間周波数帯域での各積分値が、零空間周波数での積分値よりも大きい特性を有することを特徴とする導電シート。
【請求項10】
基体上にメッシュ状の線材が形成された導電シートであって、
前記導電シート上に前記メッシュ状とは異なる模様を有する構造パターンを重畳した状態下、平面視でのパワースペクトルと人間の標準視覚応答特性との畳み込み積分において、前記線材の平均線幅に相当する空間周波数の1/4倍周波数以上であり、且つ、1/2倍周波数以下である空間周波数帯域での各積分値が、零空間周波数での積分値よりも大きい特性を有することを特徴とする導電シート。
【請求項11】
コンピュータを、
メッシュパターンの視認性に関わる視認情報を入力する入力部、
前記入力部により入力された前記視認情報に基づいて、前記メッシュパターンの模様を表す画像データを所定の空間周波数条件を満たすように作成する画像データ作成部
として機能させ、
前記所定の空間周波数条件は、前記画像データのパワースペクトルと人間の標準視覚応答特性との畳み込み積分において、該画像データに応じたナイキスト周波数の1/4倍周波数以上であり、且つ、1/2倍周波数以下である空間周波数帯域での各積分値が、零空間周波数での積分値よりも大きくなる条件である
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−119163(P2012−119163A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267951(P2010−267951)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】