説明

導電パターン、その形成方法、プリント配線板及びその製造方法

【課題】製造適性に優れ、密着性及び導電性の高く、かつ、導電パターン同士が乾燥前に融合することのない導電パターンを提供する。
【解決手段】基材上に、厚み方向において前記基材に最も遠い側から前記基材に最も近い側に向かって金属から樹脂に連続的に組成が変化する組成傾斜膜を有する、導電パターンの形成方法であって、
金属を含有するインク組成物とポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物の少なくとも2種のインク組成物をインクジェット法により前記基材上に吐出して前記組成傾斜膜を作成する、導電パターンの形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット方式の技術を用い、製造適性に優れ、密着性及び導電性が高く、かつ、描画した導電パターン同士が乾燥前に変化することのない導電パターン形成方法、該形成方法を使用してなるプリント配線板の製造方法及び該製造方法により製造されたプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
電気部材を構成するための材料として、金、銀、銅、白金、アルミニウム、パラジウム、ニッケル等の金属材料は古くから利用されている。中でも銅又は銀材料は低価格で汎用性が高く、良好な電気伝導性を有する材料であることから、現在においても、プリント配線板の回路形成部材、各種電気的接点部材、コンデンサー等の外部電極部材などの電気的導通を確保するための材料として幅広く用いられている。
一方で、近年、フレキシブルなディスプレイ等、電子デバイスの小型化、薄型化が進んでいる。
このようなデバイスに適用する部材の小型化、薄型化も一層求められており、例えば、金属等の導電材料を印刷によりパターニングして、フレキシブルな基材(樹脂等)上に配線を直接形成することが注目されている。そうすることにより、連続ロール−to−ロール生産が可能となり、大幅な生産性向上とコストダウンが実現し、また、平滑面以外の表面に対しパターニングができたり、可変パターンを任意に印刷可能になったりすることから、デザインの自由度が増し、更に極少量からの生産が実現すると考えられる。
【0003】
上記のような印刷によるパターニングを達成するための手段として、特許文献1には、低温成膜可能で、各種印刷用途に適応できる金属ナノ粒子分散物が提案されている。
また、特許文献2には、銅粒子が凝集することにより、銅ペーストにより形成したプリント基板等の性能が低下することを防止することを目的とした、表面を保護した金属ナノ粒子分散物が提案されている。
さらに、特許文献3には、金属ナノ粒子(主として銀、銅)を含有するインクジェットインクを調製し、当該インクジェットインクをプリンタに装填し基材面に直接印刷することにより、導電パターンを形成する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4414145号公報
【特許文献2】特許第4242176号公報
【特許文献3】特開2004−247667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、有機材料であるフレキシブルな基材(樹脂等)上に金属をパターニングした場合は十分な密着性を付与することが難しく、実用上大きな壁となっている。更に、インクが基材に吸収され難く、描画パターンがインク溶媒の乾燥までに変化し、ジャギー(パターンの輪郭がギザギザになるなど歪む)やバルジ(液だまり)が発生し、そのため、パターン同士が融合したり、線描画ができない等の課題が存在する。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、製造適性に優れ、密着性及び導電性が高く、かつ、描画した導電パターンが乾燥前に変化することのない導電パターン形成方法、該形成方法を使用してなるプリント配線板の製造方法及び該製造方法により製造されたプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、下記の手段によって達成された。
【0008】
[1]
基材上に、厚み方向において前記基材に最も遠い側から前記基材に最も近い側に向かって金属から樹脂に連続的に組成が変化する組成傾斜膜を有する、導電パターンの形成方法であって、
金属を含有するインク組成物とポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物の少なくとも2種のインク組成物をインクジェット法により前記基材上に吐出して前記組成傾斜膜を作成する、導電パターンの形成方法。
[2]
前記少なくとも2種のインク組成物として、少なくとも、金属を含有するインク組成物とポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物を用い、
前記インクジェット法が、少なくとも第1のインクジェットヘッドと第2のインクジェットヘッドを用いるものであり、
前記金属を含有するインク組成物を含む第1のインクを、第1のインクジェットヘッドに供給する工程と、
前記ポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物を含む第2のインクを、第2のインクジェットヘッドに供給する工程と、
前記第1のインクジェットヘッドから吐出される第1のインクの量と前記第2のインクジェットヘッドから吐出される第2のインクの量との比率を決定する制御工程と、
前記決定された比率に従って、前記第1のインクジェットヘッド及び前記第2のインクジェットヘッドの少なくとも一方から前記第1のインク又は前記第2のインクを吐出させて1つの層を形成する形成工程と、
前記形成工程を繰り返して前記基材上に前記層を複数層積層して前記組成傾斜膜を得る積層工程と、
を備え、
前記制御工程において、前記複数層の厚み方向において前記基材に近い層から遠い層に向かって、前記第1のインクの比率が大きくなり、かつ前記第2のインクの比率が小さくなるように前記比率を決定する、[1]に記載の導電パターンの形成方法。
[3]
前記ポリマー又はオリゴマーとしてウレタンポリマー又はオリゴマーを含有する、[2]に記載の導電パターンの形成方法。
[4]
前記ウレタンポリマー又はオリゴマーが、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する、[3]に記載の導電パターンの形成方法。
【0009】
【化1】

【0010】
(上記一般式中、R〜Rはそれぞれ独立して、アルキレン基、アリーレン基又はビアリーレン基を表し、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。)
【0011】
[5]
前記基材が合成樹脂製の基材である、[2]〜[4]のいずれか一項に記載の導電パターンの形成方法。
[6]
前記形成工程において、前記第1及び第2のインクジェットヘッドから吐出する液滴のインク量が0.3〜100pLである、[2]〜[5]のいずれか一項に記載の導電パターンの形成方法。
[7]
前記形成工程において、前記第1及び第2のインクジェットヘッドから吐出する液滴の液滴径が1〜300μmである、[2]〜[6]のいずれか一項に記載の導電パターンの形成方法。
[8]
前記少なくとも2種のインク組成物として、少なくとも、金属を含有するインク組成物とポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物を用い、
前記インクジェット法が、複数のインクジェットヘッドを用いるものであり、
前記金属を含有するインク組成物を含む第1のインクと前記ポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物を含む第2のインクとが混合された混合インクであって、それぞれ異なる比率で混合された複数の混合インクを前記複数のインクジェットヘッドそれぞれのインクジェットヘッドに供給する工程と、
前記複数のインクジェットヘッドから1つのインクジェットヘッドを順に選択する選択工程であって、前記第2のインクの比率の高い混合インクが供給されるインクジェットヘッドから順に選択する選択工程と、
前記選択されたインクジェットヘッドから混合インクを吐出させて1つの層を形成する形成工程と、
前記形成工程を繰り返して前記基材上に前記層を複数層積層して前記組成傾斜膜を得る積層工程と、
を備える、[1]に記載の導電パターンの形成方法。
[9]
前記ポリマー又はオリゴマーとしてウレタンポリマー又はオリゴマーを含有する、[8]に記載の導電パターンの形成方法。
[10]
前記ウレタンポリマー又はオリゴマーが、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する、[9]に記載の導電パターンの形成方法。
【0012】
【化2】

【0013】
(上記一般式中、R〜Rはそれぞれ独立して、アルキレン基、アリーレン基又はビアリーレン基を表し、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。)
【0014】
[11]
前記基材が合成樹脂製の基材である、[8]〜[10]のいずれか一項に記載の導電パターンの形成方法。
[12]
前記形成工程において、前記第1及び第2のインクジェットヘッドから吐出する液滴のインク量が0.5〜150pLである、[8]〜[11]のいずれか一項に記載の導電パターンの形成方法。
[13]
前記形成工程において、前記第1及び第2のインクジェットヘッドから吐出する液滴の液滴径が2〜450μmである、[8]〜[12]のいずれか一項に記載の導電パターンの形成方法。
[14]
前記金属の平均粒子径が5〜1000nmである、[1]〜[13]のいずれか一項に記載の導電パターンの形成方法。
[15]
前記金属は金、銀、銅、白金、アルミニウム、パラジウム、及びニッケルからなる群から選択される少なくとも1つを含む粒子、又は、前記群から選択される2つ以上の金属を含む合金の粒子である、[1]〜[14]のいずれか一項に記載の導電パターンの形成方法。
[16]
前記ポリマー及びオリゴマーを含有するインク組成物に、沸点が60℃〜300℃の溶媒が更に含有されている、[1]〜[15]いずれか一項に記載の導電パターンの形成方法。
[17]
[1]〜[16]のいずれか一項に記載の導電パターンの形成方法を使用してなる、プリント配線板の製造方法。
[18]
[17]に記載の製造方法により製造された、プリント配線板。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製造適性に優れ、密着性及び導電性が高く、かつ、描画した導電パターンが乾燥前に変化することのない導電パターン形成方法、該形成方法を使用してなるプリント配線板の製造方法及び該製造方法により製造されたプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】組成傾斜膜を備える導電パターンの模式図
【図2】組成傾斜膜を備える導電パターンの模式図
【図3】組成傾斜膜作成装置の全体構成図
【図4】組成傾斜膜作成装置の描画部の概略図
【図5】描画混合法による組成傾斜膜作成を説明するための図
【図6】描画混合法の他の実施形態を説明するための図
【図7】インク混合法の実施形態に係る組成傾斜膜作成装置の全体構成図
【図8】インク混合法による組成傾斜膜作成を説明するための図
【図9】描画混合法における各インクの着弾位置を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、基材上に、厚み方向において前記基材に最も遠い側から前記基材に最も近い側に向かって金属から樹脂に連続的に組成が変化する組成傾斜膜のパターンを有する、導電パターンの形成方法であって、
金属を含有するインク組成物とポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物の少なくとも2種のインク組成物をインクジェット法により前記基材上に吐出して前記組成傾斜膜を作成する、導電パターンの形成方法に関する。
【0018】
[組成傾斜膜]
図1に、本発明に係る方法で形成される導電パターンの組成傾斜膜の断面を模式的に示す。
本発明に係る導電パターン1は、基材2上に組成傾斜膜3からなるパターンを有する。組成傾斜膜3は、その厚み方向において基材2に最も遠い側Aから基材2に最も近い側Bに向かって(即ち、図1中の矢印の方向に)、金属から樹脂に連続的に組成が変化している。
ここで、「厚み方向」とは組成傾斜膜3の「膜厚方向」を意味する。「厚み方向において金属から樹脂に連続的に組成が変化する」とは、厚み方向に組成傾斜膜をある厚み(例えば、0.1〜5μm)の領域毎に区切り、各領域での樹脂と金属の総質量に対する樹脂の質量が占める割合(以下、「樹脂の含有率」という)をみたときに、隣接する領域間の樹脂の含有率の差が50%以下、好ましくは30%以下であることを意味する。隣接する領域間の樹脂の含有率の差が50%より大きくなると、樹脂の含有率の変化が段階的となってしまい、高い密着性及び導電性を得ることができない。なお、ある2つの隣接する領域間の樹脂の含有率の差が0%であってもよい。
組成傾斜膜3の基材に最も遠い側Aにおける樹脂の含有率(例えば、Aから厚み0.1〜5μmまでの領域における樹脂の含有率)は、高い導電性を得る観点から、0〜50%であることが好ましく、0〜30%であることがより好ましく、実質的に0%(0〜0.2%)であることが更に好ましい。また、基材に最も近い側Bにおける樹脂の含有率(例えば、Bから厚み0.1〜5μmまでの領域における樹脂の含有率)は、高い密着性を得る観点から、50〜100%であることが好ましく、70〜100%であることがより好ましく、実質的に100%(99〜100%)であることが更に好ましい。
各領域における樹脂の含有率は、例えば、XPSの深さ方向プロファイルにより求めることができる。
【0019】
組成傾斜膜3の構成は、上記のように樹脂の含有率の連続的変化があれば、特に限定されないが、図2に示すような樹脂の含有率の異なる複数の層が積層した構成を好ましい例として挙げられる。
図2に示す導電膜1aは、基材2上に組成傾斜膜3を有し、該組成傾斜膜3は、樹脂の含有率の異なる複数の層3−1、3−2、3−3、3−4、3−5を有する。層3−1、3−2、3−3、3−4、3−5は、基材2に最も遠いA側の層3−5から基材2に最も近いB側の層3−1に向かって(即ち、図2中の矢印の方向に)、樹脂の含有率が0%〜100%の範囲内で連続的に大きくなっている。
良好な密着性及び導電性を得る上で、層3−1、3−2、3−3、3−4、3−5のうち、隣り合う2層の樹脂の含有率の差は50%以下であり、好ましくは30%以下である。また、基材2に最も遠いA側の層3−5の樹脂の含有率は0%〜20%であることが好ましく、0%〜15%であることがより好ましい。基材2に最も近いB側の層3−1の樹脂の含有率は80%〜100%であることが好ましく、85%〜100%であることがより好ましい。
図2では、層3−1、3−2、3−3、3−4、3−5の5層を積層して組成傾斜膜3を作成しているが、積層する層の数は特に限定されない。好ましくは3〜10層であり、より好ましくは3〜7層である。また、各層の厚みは0.1μm〜5μmが好ましく、0.3μm〜3μmがより好ましい。各層の厚みは実質的に等しい(厚みの誤差が±0.5μmの範囲)ことが好ましい。
なお、層間の界面が明確でない場合には、組成傾斜膜3の厚み方向において厚み0.1μm〜5μmで区切った領域を「層」とみなしてもよい。
各領域における樹脂の含有率は、例えば、XPSの深さ方向プロファイルにより求めることができる。
【0020】
(膜厚)
本発明における組成傾斜膜の膜厚は、1μm以上が好ましく、1μm〜20μmがより好ましく、3μm〜10μmが更に好ましい。この範囲であれば、導電性が良好な導電パターンを得ることができる。また、この範囲は、当該導電パターンを使用してなるデバイス等の性能、商品価値を損なわないという観点からも好ましい範囲である。
【0021】
本発明では、金属を含有するインク組成物とポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物の少なくとも2種のインク組成物をインクジェット法により基材上に吐出して組成傾斜膜を作成する。
以下、本発明で使用するインクについて説明する。
【0022】
(インク組成物)
本発明で使用するインク組成物は、金属を含有するインク組成物と、ポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物とに大別される。インク組成物は、金属、ポリマー又はオリゴマー以外に、溶媒、バインダー成分、その他の添加剤を含んでもよい。
当該インク組成物は単独でインクとして使用してもよく、2種以上のインク組成物を混合しインクとして使用してもよい。
【0023】
(インク)
本発明で使用するインクとして、金属を含有するインク組成物を含むインクと、ポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物を含むインクとを、それぞれ独立した2種以上のインクとして使用してもよいし、金属を含有するインク組成物を含むインクと、ポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物を含むインクとを、混合してなる混合インクとして使用してもよい。
該インクは、金属、ポリマー又はオリゴマー以外に、溶媒、バインダー成分、その他の添加剤を含んでもよい。
【0024】
(金属)
本発明で使用するインク組成物が含有する金属としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、パラジウム、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム及びこれらの混合物又は合金を用いることができる。金、銀、銅、白金、アルミニウム、パラジウム、ニッケル及びこれらの混合物又は合金を用いることが好ましい。低価格で汎用性が高く、良好な電気伝導性を有する点から、銅又は銀を用いることが更に好ましく、銅を用いることが最も好ましい。
インク中における金属の含有量は、該インクがインクジェット法に使用可能な範囲であれば特に制限されるものではないが、インクジェット適性の点から、5〜70質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることが更に好ましく、20〜40質量%であることが特に好ましい。
金属は、インクジェット適合性及び安定性の観点から、該金属又は該金属を含む合金の粒子としてインクに含まれることが好ましく、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、パラジウム、ニッケル及びこれらの混合物又は合金からなる粒子が挙げられる。該粒子の平均粒径は、該粒子を含むインクがインクジェット法で使用可能な範囲であれば特に制限されるものではないが、導電パターンの製造適性やインクジェット適性の点から、5nm〜1000nmであることが好ましく、5nm〜500nmであることがより好ましく、5nm〜200nmであることが更に好ましい。
【0025】
(ポリマー又はオリゴマー)
本発明で使用するインク組成物が含有するポリマー又はオリゴマーとしては、該インクがインクジェット法に使用可能な範囲であれば特に制限されるものではないが、例えば、ウレタン、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレート等のポリマー又はオリゴマー若しくはこれらの混合物を用いることができる。
【0026】
上記ポリマー又はオリゴマーとしては、ウレタンのポリマー(以下、「ウレタンポリマー」又は「ポリウレタン」ともいう。)又はウレタンのオリゴマー(以下、「ウレタンオリゴマー」ともいう。)を用いることが好ましく、ウレタンオリゴマーを用いることがより好ましい。
【0027】
本発明におけるウレタンオリゴマーで表されるオリゴマーとは、限定的ではないが、例えば、分子量1,000〜5,000の重合体のことをいう。ウレタンポリマーで表されるポリマーとは、例えば、分子量5,000以上の重合体のことをいい、好ましくは分子量5,000〜10,000の化合物のことをいう。
【0028】
ウレタンポリマー又はオリゴマーを使用することが好ましい理由として、ウレタンポリマー又はオリゴマーは基材との密着性が良好なことに加え、ウレタン結合と金属粒子との配位相互作用により傾斜膜内の凝集力が向上することにより、強固な膜が形成されていることが推察される。
【0029】
インク中におけるウレタンポリマー又はオリゴマーの含有量は、インクの全質量に対して、10質量%以上含有することが好ましい。インク中におけるウレタンポリマー又はオリゴマーのより好ましい含有量としては、30質量%以上80質量%以下であり、更に好ましくは、30質量%以上70質量%以下の範囲内であり、特に好ましくは、40質量%以上60質量%以下の範囲内である。
【0030】
本発明のウレタンポリマー又はオリゴマーは、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマー又はオリゴマーを使用することが更に好ましい。
【0031】
【化3】

【0032】
上記一般式で表される繰り返し単位において、R〜Rはそれぞれ独立して、アルキレン基、アリーレン基又はビアリーレン基を表し、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
【0033】
上記アルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましい。
上記アリーレン基としては、フェニレン基又はナフチレン基が好ましい。
上記ビアリーレン基としては、ビフェニレン基又はビナフチレン基が好ましい。
上記アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。
上記アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が好ましい。
上記へテロアリール基としては、ピリジル基が好ましい。
【0034】
上記一般式(1)で表されるウレタンポリマー又はオリゴマーとしては、UN−1225(根上工業製)、CN962、CN965(Sartomer製)等を好ましく使用することができる。
【0035】
(溶媒)
本発明に係るインク組成物は、金属、ポリマー又はオリゴマーと溶媒とを混合して調製する。
溶媒としては、水、有機溶媒から適宜選択して用いることができ、沸点が50℃以上の液体であることが好ましく、沸点が60℃〜300℃の範囲の有機溶媒であることがより好ましい。
溶媒は、インク組成物中の固形分濃度が1〜70質量%となる割合で用いることが好ましい。更には、5〜60質量%が好ましい。この範囲において、得られるインクは作業性良好な粘度の範囲となる。
【0036】
溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、ニトリル類、アミド類、エーテル類、エーテルエステル類、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。具体的には、具体的には、アルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、クレゾール等)、ケトン(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等)、エステル(例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、乳酸エチル等)、脂肪族炭化水素(例えばヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例えばメチレンクロライド、メチルクロロホルム等)、芳香族炭化水素(例えばトルエン、キシレン等)、アミド(例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン等)、エーテル(例えばジオキサン、テトラハイドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等)、エーテルアルコール(例えば1−メトキシ−2−プロパノール、エチルセルソルブ、メチルカルビノール等)、フルオロアルコール類(例えば、特開平8−143709号公報 段落番号[0020]、同11−60807号公報 段落番号[0037]等に記載の化合物)が挙げられる。
これらの溶媒は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して使用することができる。好ましい溶媒としては、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、イソプロパノール、ブタノールが挙げられる。
【0037】
(添加剤)
本発明に係るインク組成物には、上記金属、ポリマー又はオリゴマーの他、錯化剤、表面張力調整剤、防汚剤、耐水性付与剤、耐薬品性付与剤等の他の添加剤を含むことができる。
金属を含むインクには、錯化剤及び分散剤を用いることが好ましい。錯化剤としては、酢酸及びクエン酸等のカルボン酸類や、アセチルアセトン等のジケトン類、トリエタノールアミン等のアミン類等が挙げられる。また、分散剤としては、ステアリルアミン、ラウリルアミン等のアミン類等が挙げられる。
【0038】
(インク物性)
本発明に係るインクの粘度は、成膜時の均一性、インクジェット吐出時の安定性、インクの保存安定性の観点から、5〜40cPが好ましく、5〜30cPがより好ましく、8〜20cPが更に好ましい。
また、インクの表面張力は、成膜時の均一性、インクジェット吐出時の安定性、インクの保存安定性の観点から、10〜40mN/mが好ましく、15〜35mN/mがより好ましく、20〜30mN/mが更に好ましい。
【0039】
(基材)
次に、本発明の方法により形成される導電パターンを構成する基材について説明する。
本発明における基材としては特に制限されるものでく、有機、無機又は金属製のあらゆる基材を用いることができる。
一方、本発明の方法をプリント配線板の製造方法に使用する際には、軽量で柔軟性があり、かつ、安価である合成樹脂製の基材を用いることが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンテレフタレート製等の基材を用いることが好ましく、低価格で汎用性が高いことから、ポリエチレンテレフタレート製の基材を用いることが特に好ましい。
基材の厚さは通常25μm〜1000μm程度のものを用いることができるが、好ましくは25μm〜250μmであり、30μm〜90μmであることがより好ましい。
基材の幅は任意のものを使うことができるが、ハンドリング、得率、生産性の点から通常は1000mm以下のものが用いられ、800mm以下であることが好ましく、600mm以下であることが更に好ましい。透明支持体はロール形態の長尺で取り扱うことができ、通常200m以内、好ましくは100m以内のものである。
基材の表面は平滑であることが好ましく、平均粗さRaの値が1μm以下であることが好ましく、0.8μm以下であることが好ましく、0.7μm以下であることが更に好ましい。
【0040】
(インクジェット法による組成傾斜膜の作成)
以下、本発明のインクジェット法による組成傾斜膜の作成について説明する。
本発明においては、金属を含有するインク組成物を含むインクと、ポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物を含むインクとをそれぞれ独立した2種以上のインクとしてをインクジェット法により基材上に吐出するか、金属を含有するインク組成物を含むインクと、ポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物を含むインクとを混合してなる混合インクをインクジェット法により基材上に吐出する。
【0041】
インクジェット法としては、インクジェットプリンターにより画像記録を行う方法であれば、インクジェットの記録方式に制限はなく、公知の方式、例えば静電誘引力を利用してインク組成物を吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインク組成物に照射して放射圧を利用してインク組成物を吐出させる音響インクジェット方式、及びインク組成物を加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等に用いられる。
インクの液滴の制御は主にプリントヘッドにより行われる。例えばサーマルインクジェット方式の場合、プリントヘッドの構造で打滴量を制御することが可能である。すなわち、インク室、加熱部、ノズルの大きさを変えることにより、所望のサイズで打滴することができる。またサーマルインクジェット方式であっても、加熱部やノズルの大きさが異なる複数のプリントヘッドを持たせることで、複数サイズの打滴を実現することも可能である。ピエゾ素子を用いたドロップオンデマンド方式の場合、サーマルインクジェット方式と同様にプリントヘッドの構造上打滴量を変えることも可能であるが、ピエゾ素子を駆動する駆動信号の波形を制御することによっても、同じ構造のプリントヘッドで複数のサイズの打滴を行うことができる。
【0042】
インクの基材上への吐出方法(描画方法)としては、金属を含有するインク組成物を含むインクとポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物を含むインクとを別々のインクジェットヘッドに供給し、両者の吐出量の比率を調節しながら、同時に吐出させて基材上で混合させる描画混合法が挙げられる。また、それとは別の方法としては、予めインクを含有するインク組成物を含むインクとポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物を含むインクとを混合させた混合インクで両者の比率が異なるものを複数種類調製したものをインクジェットヘッドに供給し、ヘッドを順番に選択して、金属を含有するインク組成物を含むインクと、ポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物を含むインクとの比率が異なる混合インクを順次吐出させて描画する混合インク法が挙げられる。
【0043】
(インクの調製)
後述する描画混合法に用いられる、金属を含有するインク組成物を含むインクと、ポリマーを又はオリゴマーを含有するインク組成物を含むインクの調製について説明する。
前記インクは、各材料を混合することで調製することができる。各材料を混合する際には攪拌機により攪拌してもよい。攪拌時間は特に限定されないが、通常30分〜60分であり、30分〜40分が好ましい。また混合する際の温度は、通常10℃〜40℃であり、20℃〜35℃が好ましい。
後述するインク混合法においては、上述のように調製したインクを混合して用いることができる。
【0044】
〜描画混合法〜
本発明の方法としては、基材上に、厚み方向において前記基材に最も遠い側から前記基材に最も近い側に向かって金属から樹脂に連続的に組成が変化する組成傾斜膜を有する、導電パターンの形成方法であって、
金属を含有するインク組成物とポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物の少なくとも2種のインク組成物をインクジェット法により前記基材上に吐出して前記組成傾斜膜を作成する、導電パターンの形成方法において、
前記少なくとも2種のインク組成物として、少なくとも、金属を含有するインク組成物とポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物を用い、
前記インクジェット法が、少なくとも第1のインクジェットヘッドと第2のインクジェットヘッドを用いるものであり、
前記金属を含有するインク組成物を含む第1のインクを、第1のインクジェットヘッドに供給する工程と、
前記ポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物を含む第2のインクを、第2のインクジェットヘッドに供給する工程と、
前記第1のインクジェットヘッドから吐出される第1のインクの量と前記第2のインクジェットヘッドから吐出される第2のインクの量との比率を決定する制御工程と、
前記決定された比率に従って、前記第1のインクジェットヘッド及び前記第2のインクジェットヘッドの少なくとも一方から前記第1のインク又は前記第2のインクを吐出させて1つの層を形成する形成工程と、
前記形成工程を繰り返して前記基材上に前記層を複数層積層して前記組成傾斜膜を得る積層工程と、
を備え、
前記制御工程において、前記複数層の厚み方向において前記基材に近い層から遠い層に向かって、前記第1のインクの比率が大きくなり、かつ前記第2のインクの比率が小さくなるように前記比率を決定する方法が好ましい。
【0045】
上記描画法によれば、第1のインクジェットヘッドから吐出される第1のインクの吐出量と第2のインクジェットヘッドから吐出される第2のインクの吐出量との比率を決定し、決定された比率にしたがってインクを吐出させて1つの層を形成する工程を繰り返して基材上に複数の層を積層し、この複数の層が上層にいくほど前記第1のインクの吐出量の比率が大きい層であって前記第2のインクの吐出量の比率が小さい層となるようにすることで、インクジェット方式の技術を用いて組成傾斜膜を製造することができる。
【0046】
〜描画混合法による実施形態〜
図3は、描画混合法に係る組成傾斜膜作成装置100の全体構成図であり、図4は、組成傾斜膜作成装置100の描画部10の概略図である。これらの図に示すように、組成傾斜膜作成装置100は、描画部10を含んで構成され、描画部10は、フラットベッドタイプのインクジェット描画装置が用いられている。詳細には、描画部10は、基材である基材が載置されるステージ30、ステージ30に載置された基材を吸着保持するための吸着チャンバー40、基材20に向けて各インクを吐出するインクジェットヘッド50A(以下、インクジェットヘッド1)及びインクジェットヘッド50B(以下、インクジェットヘッド2)を含み構成されている。
【0047】
ステージ30は、基材20の直径よりも広い幅寸法を有しており、図示しない移動機構により水平方向に自在に移動可能に構成されている。移動機構としては、例えばラックアンドピニオン機構、ボールネジ機構等を用いることができる。ステージ制御部43(図4では不図示)は、移動機構を制御することにより、ステージ30を所望の位置に移動させることができる。
【0048】
また、ステージ30の基材保持面には多数の吸引穴31が形成されている。ステージ30下面には吸着チャンバー40が設けられており、この吸着チャンバー40がポンプ41(図4では不図示)で真空吸引されることによって、ステージ30上の基材20が吸着保持される。また、ステージ30はヒータ42(図4では不図示)を備え、ヒータ42によりステージ30に吸着保持された基材20を加熱することが可能である。
【0049】
インクジェットヘッド1及び2は、インクタンク60A(以下、インクタンク1)及びインクタンク60B(以下、インクタンク2)から供給されるインクを透明支持体20の所望の位置に対して吐出するものであり、ここではピエゾ方式のアクチュエータを持つヘッドを用いている。インクジェットヘッド1と2とは、図示しない固定手段により、それぞれができるだけ近づけて配置されて固定されている。
【0050】
インクタンク1及び2からインクジェットヘッド1及び2に供給されるインクを、それぞれインク1、インク2とする。本発明においては、金属を含有するインク組成物を含むインク(以下、「金属インク」ともいう。)をインク1とし、ポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物を含むインク(以下、「樹脂インク」ともいう。)をインク2とする。
【0051】
〔描画混合法による組成傾斜膜の作成〕
このように構成された導電パターン作製装置100を用いた組成傾斜膜の作成について、図5を用いて説明する。
【0052】
まず、窒素雰囲気中に置かれた描画部10のステージ30上に、基材20を載置する。基材20は、裏面がステージ30に接するように載置される。そして、吸着チャンバー40により、基材20のステージ30への吸着及び加熱を行う。ここでは、基材20を70℃に加熱することが好ましい。
【0053】
次に、吸着・加熱された基材20上に、インクジェットヘッド2から供給されるインク(インク2)を1層若しくは数層分積層して24−1を形成する。このインク2の積層は、図5(a)に示すように、移動機構によりステージ30を移動させながら(図では左方向に移動)、インクジェットヘッド2によりインク2を吐出する。ここでは、インクジェットヘッド1からはインクの吐出を行わない。
【0054】
このように形成したインク2の層24−1を、インク2中の溶媒成分を完全には蒸発しない程度に乾燥(半乾燥)させることが好ましい。具体的には、通常に乾燥させるとき(全乾燥)に与えるエネルギーよりも少ないエネルギーで乾燥を行う。
本発明においては、上記のとおり、前記形成工程において吐出された層を半乾燥させる工程を有することが好ましく、半乾燥させるためには、例えば、インク吐出終了後、40〜120℃の環境温度に一定時間保持することが好ましく、50〜100℃の環境温度に一定時間保持することが好ましい。該保持する時間としては、10〜120秒が好ましく、20〜90秒がより好ましい。
【0055】
次に、半乾燥状態となったインク2の層24−1の上に、インク1とインク2との混合層24−2を形成する。この混合層24−2の形成は、図5(b)に示すように、ステージ30を移動させながら、インクジェットヘッド1によりインク1を吐出し、同時にインクジェットヘッド2によりインク2を吐出して行う。このとき、インク1の吐出量とインク2の吐出量を、所望の比率に調整する。ここでは、インク2の吐出量が75%、インク1の吐出量が25%となるように、インクジェットヘッド1と2の各ノズルの吐出量を調整して吐出している。なお、本明細書におけるインクの「吐出量」とは、各層を形成するために吐出されるインクの全量を意味する。一方、後述する、インクジェットヘッドより吐出されるインク滴の「液滴量」は1つのインク液滴の量である。
【0056】
なお、インクジェットヘッド1及び2からのインクの吐出量の比率の調整は、描画のドットピッチ密度によって調整してもよい。例えば、インクジェットヘッド1と2の各ノズルの吐出量を一定としたまま、インクを吐出するノズルの数をインクジェットヘッド1と2とを75:25となるように制御することにより、吐出量の比率の調整を行うことも可能である。
【0057】
インク吐出後、図5(c)に示すように、それぞれの吐出量で吐出されたインク1とインク2とを拡散混合することにより、混合層24−2が積層される。インク1の層24−1は半乾燥状態となっているため、その上に形成された混合層24−2のインクの溶媒はインク1の層24−1に受容されて、極端にぬれ広がることがない。即ち、ヒータ42による加熱温度は、インクの蒸発のしやすさにより調整する必要がある。溶媒の種類によっては、前述した70℃より低い温度、例えば基板の温度を50℃程度にして描画してもよい。
すなわち、前記形成工程において、吐出された前記第1のインクと前記第2のインクを拡散混合させる工程を有することが好ましい。拡散混合させる方法としては、加熱による対流を利用する方法や超音波を利用する方法などが挙げられる。
【0058】
また、2つのインクジェットヘッドはできるだけ近づけて配置されており、一方のインクだけが乾燥して両インクの層内での混合が不十分になることが防止されている。なお、2つのインクを同時に吐出する際、インクジェットヘッド1から吐出されるインク1の液滴とインクジェットヘッド2から吐出されるインク2の液滴とを、飛翔中に空中で衝突させ、混合させてから着弾するようにしてもよい。
【0059】
更に、詳細は後述するが、2つのインクジェットヘッドはそれぞれの幅を対象基材の幅(短い方)よりも大きく構成し、1回の走査で1つの層を形成することが好ましい。これにより、インク1とインク2とが混ざりやすくなる。
【0060】
また、インクの混合を促進するために、ステージ30を制御して基材20を超音波処理してもよい。このとき、超音波による節が発生しにくくなるように、超音波の周波数をスイープさせたり、基材20の位置を変更しながら行うことが好ましい。
【0061】
このように形成した混合層24−2を、インク2の層24−1と同様に半乾燥状態にすると、混合層24−2は量の比率が25:75で、インク2に含まれるポリマー又はオリゴマーとインク1に含まれる金属とが混合して積み重なっている状態となる。
【0062】
次に、混合層24−2の上に混合層24−3を形成する。この混合層24−3の形成についても、図5(d)に示すように、ステージ30を移動させながら、インクジェットヘッド1とインクジェットヘッド2とにより同時にインクを吐出する。ここでは、インク1、インク2をともに50%の吐出量の比率で吐出している。
【0063】
混合層24−2についても半乾燥状態となっているため、その上に形成された混合層24−3のインクの溶媒は、混合層24−2に受容される。インク吐出後、図5(e)に示すように、2つのインクを拡散混合することにより、混合層24−3が積層される。
【0064】
更に、混合層24−3についてもインク2の層24−1と同様に半乾燥させる。混合層24−3は量の比率が50:50で、インク2に含まれるポリマー又はオリゴマーとインク1に含まれる金属とが混合して積み重なっている状態となる。
【0065】
このように、インク1とインク2の吐出量の比率を段階的に(傾斜するように)変更しながら各混合層を形成し、最後にインク1の吐出量が100%の層を形成する。
【0066】
全ての層の形成終了後、各層の拡散が進み、段階的に形成した層が連続的になる。その結果、図1に示すように、組成成分比が膜厚方向において、B側からA側にかけてインク2が100%からインク1が100%となる組成傾斜膜3が作成される。
【0067】
このように、下の層を半乾燥状態として上の層を形成することにより、その上下の層において、拡散がある程度進むようにしておく。このとき、上下の層の界面が無くなり、完全に混合して上下層の区別が無くなるような状態とはならないようにすることが好ましい。
【0068】
なお、各層の形成が終わったあとに、組成傾斜膜の機能していない領域にダミーパターンを積層し、レーザを用いた光学式変位センサ等によりダミーパターンの高さを測定してもよい。乾燥が進んでおらず、溶媒が残っている状態では、膜厚が高くなることから、ダミーパターンの高さにより乾燥状態を検出することができる。
【0069】
以上説明したように、インクジェットヘッドを用いて組成傾斜膜を作成することができる。また、本実施形態の描画混合法によれば、形成する層の数にかかわらず、インクの種類とインクジェットヘッドの個数が少なくて済むという利点がある。インク1とインク2との混合層は、それぞれのインクの混合比率が段階的に傾斜されるように形成されれば、何層積層してもよい。
【0070】
また、各層の形成工程において、第1のインクジェットヘッド及び第2のインクジェットヘッドから吐出するインク滴の液滴の量は膜厚制御及び細線形成性の観点から、0.3〜100pLとすることが好ましく、0.5〜80pLがより好ましく、0.7〜70pLが更に好ましい。
各層の形成工程において、第1のインクジェットヘッド及び第2のインクジェットヘッドから吐出するインク滴の液滴径は膜厚制御及び細線形成性の観点から、1〜300μmとすることが好ましく、5〜250μmがより好ましく、10〜200μmが更に好ましい。
更に、各層の形成工程において、第1のインクと第2のインクのうち吐出量の比率が小さい方のインクについて、インクジェットヘッドから吐出するインク滴の液適量及び液滴径の少なくとも一方を前記比率が大きなインクより小さくすることが好ましい。例えば、前記比率が小さなインクのインク滴が0.3〜60pLであり、前記比率が大きなインクのインク滴が1〜100pLであることが好ましい。これにより、拡散混合する時間を短くしたり、混合の均一性を向上することができる。
なお、インク滴の「液滴径」とは、液滴直径の長さを意味し、インクジェット吐出時の飛翔状態写真から測定することができる。
【0071】
本実施形態では、B側からA側にかけてインク2が100%からインク1が100%となる組成傾斜膜3を作成したが、B側又はA側においてインク2又はインク1が100%となるよう製膜する必要性は必ずしもなく、組成傾斜膜3が得られる範囲のものであれば、B側又はA側におけるインク2又はインク1の比率を任意に変更することができる。
上記B側又はA側にけるインク2又はインク1の比率は、得ようとする組成傾斜膜の密着性や導電性等の特性により、適宜調節することが可能である。
【0072】
また、本実施形態では、インクジェットヘッド1とインクジェットヘッド2とにおいて同時にインクを吐出して各層を形成したが、順に吐出してもよい。
【0073】
例えば、混合層24−2を形成する場合に、図6(a)に示すように、まずインクジェットヘッド2によりインク2層24−1の上の全面にインク2を吐出する。次に、図6(b)に示すように、インクジェットヘッド1によりインク1を全面に吐出する。その後、図6(c)に示すように、それぞれのインクを拡散混合することで、同様に混合層24−2を形成することができる。
【0074】
このように、それぞれのインクを順に吐出して1つの層を形成する場合であって、2つのインクの吐出量に差がある場合、即ち2つのインクの吐出量の比率が50%ずつでない場合は、吐出量の多い方のインクを先に吐出するように構成してもよい。特に、先に吐出するインクの乾燥が激しい場合等は、量が少ないほど乾燥が早まるため、多い方のインクを先に吐出することが好ましい。これにより、2種類のインクの混合をスムーズに進ませることができる。
【0075】
更にこの場合、後から吐出することになる吐出量の少ない方のインクについては、小さい液滴(液適量が少ない又は液滴径が小さい)によってドットピッチ密度を高くして吐出してもよい。これにより、拡散混合する時間を短くすることができる。
【0076】
また、先に吐出したインクを着弾させた位置に、後から吐出するインクを重ねて着弾させるようにしてもよい。特に間歇打ちを行ってドットとドットが離れている場合に、同じ位置に乾燥させる前に着弾させると、それぞれのインクの混合がしやすくなる。
【0077】
例えば、混合層24−2を形成する際に、1回目の走査でインクジェットヘッド2によりインク2を間歇打ちにより吐出したとする。図9(a)は、インク1層24−1上に着弾したインク2(24−2−B−1)を示す。
【0078】
次に、2回目の走査でインクジェットヘッド1によりインク1を間歇打ちにより吐出する。このとき、インクジェットヘッド1は、図9(b)に示すように、吐出されたインク1(24−2−A−1)が、1回目の走査で着弾されているインク2(24−2−B−1)と同じ位置に重ねて着弾するように吐出する。
【0079】
更に、3回目の走査でインクジェットヘッド2によりインク2が間歇打ちされる。図9(c)は、インク2(24−2−B−1)の間に着弾されたインク2(24−2−B−2)を示す。
【0080】
その後、4回目の走査では、インクジェットヘッド1により、インク1がインク2(24−2−B−2)と同じ着弾位置に重ねて着弾されるように吐出される。図9(d)に示すように、吐出されたインク1(24−2−A−2)が、2回目の走査で着弾されているインク2(24−2−B−2)と同じ位置に重ねて着弾するように吐出する。
【0081】
以後同様に、インク1の層24−1の全面にインクを吐出し、その後拡散混合させる。
このように吐出することにより、混合層24−2を形成する際の拡散混合の時間を短縮することができる。
【0082】
また、一方のインクの乾燥が速い場合は、そのインクを後から吐出するようにしてもよい。
【0083】
また、本実施形態では、インク1とインク2の2つの純インクを用いて各混合層を形成したが、これらを混合したインクを併用してもよい。例えば、2つの純インクと、インク1とインク2との混合比率が50:50の混合インクとの3種類のインクを同時に用いて混合層を形成することが考えられる。混合インクの分だけインクジェットヘッドの数が増加するが、混合インクは予め2つの純インクが十分混合されているため、インク吐出後の拡散混合に要する時間を短縮することができる。
【0084】
〜インク混合法〜
本発明の方法としては、基材上に、厚み方向において前記基材に最も遠い側から前記基材に最も近い側に向かって金属から樹脂に連続的に組成が変化する組成傾斜膜を有する、導電パターンの形成方法であって、
金属を含有するインク組成物とポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物の少なくとも2種のインク組成物をインクジェット法により前記基材上に吐出して前記組成傾斜膜を作成する、導電パターンの形成方法において、
前記少なくとも2種のインク組成物として、少なくとも、金属を含有するインク組成物とポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物を用い、
前記インクジェット法が、複数のインクジェットヘッドを用いるものであり、
前記金属を含有するインク組成物を含む第1のインクと前記ポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物を含む第2のインクとが混合された混合インクであって、それぞれ異なる比率で混合された複数の混合インクを前記複数のインクジェットヘッドそれぞれのインクジェットヘッドに供給する工程と、
前記複数のインクジェットヘッドから1つのインクジェットヘッドを順に選択する選択工程であって、前記第2のインクの比率の高い混合インクが供給されるインクジェットヘッドから順に選択する選択工程と、
前記選択されたインクジェットヘッドから混合インクを吐出させて1つの層を形成する形成工程と、
前記形成工程を繰り返して前記基材上に前記層を複数層積層して前記組成傾斜膜を得る積層工程とを備える方法が好ましい。
【0085】
上記方法によれば、第1のインクと第2のインクとが混合された混合インクであって、それぞれ異なる比率で混合された複数の混合インクをそれぞれのインクジェットヘッドに供給し、第1のインクの比率の低い混合インクが供給されるインクジェットヘッドから順に混合インクを吐出させて各層を形成し、基材上に複数の層を積層するようにしたので、インクジェット方式の技術を用いて組成傾斜膜を製造することができる。
【0086】
〜インク混合法による実施形態〜
【0087】
図7は、第2の実施形態に係る組成傾斜膜作成装置101の全体構成図である。同図に示すように、本実施形態に係る組成傾斜膜作成装置101は描画部11を備え、描画部11は、5種類のインクを貯蔵するインクタンク60−1〜60−5と、各インクタンクからインクが供給されるインクジェットヘッド50−1〜50−5を備えている。各インクジェットヘッド50−1〜50−5は、各インクタンク60−1〜60−5から供給されるインクを基材20に対して吐出する。
【0088】
各インクタンク60−1〜60−5から各インクジェットヘッド50−1〜50−5に供給されるインクは、インク1とインク2との混合比率がそれぞれ0:100、25:75、50:50、75:25、100:0となっている。即ち、インクタンク60−1からはインク2の純インクが、インクタンク60−5からはインク1の純インクが、60−2〜60−4からはインク1とインク2とが所定の比率で混合された混合インクが供給される。
【0089】
〔インク混合法による組成傾斜膜の作成〕
描画混合法による実施形態と同様に、ステージ30上に基材20を載置し、吸着及び加熱を行う。
【0090】
次に、吸着・過熱された基材上に、インク2を1層若しくは数層分積層してインク2の層28−1を形成する。このインク2の積層は、図8(a)に示すように、移動機構によりステージ30を移動させながら(図では左方向に移動)、インクジェットヘッド50−1により基材に対してインクタンク60−1から供給されるインク(インク1とインク2との混合比率が0:100のインク)を吐出する。このとき、その他のインクジェットヘッド50−2〜50−5からはインクの吐出を行わない。
【0091】
したがって、このように形成されたインク2の層28−1は、図5に示すインク2の層24−1と同様の層となる。ここで、インク2中の溶媒が蒸発する程度に乾燥(半乾燥)させると、インク1に含まれる金属が積み重なっている状態となる。
インク混合法においても、前記形成工程において吐出された層を半乾燥させる工程を有することが好ましく、半乾燥させるためには、例えば、インク吐出終了後、40〜120℃の環境温度に一定時間保持することが好ましく、50〜100℃の環境温度に一定時間保持することが好ましい。該保持する時間としては、10〜120秒が好ましく、20〜90秒がより好ましい。
【0092】
次に、インク2の層28−1の上に、インクジェットヘッド50−2によりインクタンク60−2から供給される混合インク(インク1とインク2との混合比率が25:75の混合インク)を吐出して、混合層28−2を形成する。
【0093】
混合層28−2の形成は、図8(b)に示すように、ステージ30を移動させながら、インクジェットヘッド50−2により混合インクを吐出する。描画混合法による実施形態と同様に、インク2の層28−1が半乾燥状態であるため、その上に形成された混合層28−2のインクの溶媒がインク2の層28−1に受容されて、極端にぬれ広がることがない。したがって、加熱温度はインクの蒸発のしやすさにより調整する必要がある。
【0094】
この混合層28−2についても半乾燥させることで、混合層28−2は、インク1に含まれる金属及び、インク2に含まれるポリマー又はオリゴマーが積み重なっている状態となる。
【0095】
更に、混合層28−2の上に、インクジェットヘッド50−3(図8には不図示)によりインクタンク60−3から供給される混合インク(インク1とインク2との混合比率が50:50の混合インク)を吐出して、混合層28−3を形成する。
【0096】
混合層28−2が半乾燥状態であるため、その上に形成された混合層28−3のインクの溶媒は、混合層28−2に受容される。更に、混合層28−3についても半乾燥させる。
【0097】
このように、各混合インクをインク2の混合比率が多い順(インク1の混合比率が少ない順)に吐出して各混合層(28−2〜28−4)を積層し、最後にインクジェットヘッド50−5によりインクタンク60−5から供給されるインク1(インク1とインク2との混合比率が100:0のインク)を吐出して、インク1が100%の層28−5(インク1の層)を形成する(図8(c))。
【0098】
全ての層を形成終了後、図1に示すようなインク2が100%からインク1が100%の組成成分比を有する組成傾斜膜3が作成される。
【0099】
また、各層の形成工程において、インクジェットヘッドから吐出するインク滴の液滴の量は安定吐出の観点から、0.5〜150pLとすることが好ましく、0.7〜130pLがより好ましく、1〜100pLが更に好ましい。
各層の形成工程において、インクジェットヘッドから吐出するインク滴の液滴径は良好な膜形成性の観点から、2〜450μmとすることが好ましく、5〜350μmがより好ましく、10〜250μmが更に好ましい。
【0100】
以上説明したように、混合インクを用いて、組成傾斜膜を作成することができる。本実施形態のインク混合法によれば、インクの段階で充分に混合されているため、導電性傾斜の変化の精度が高い組成傾斜膜を作成することができる。また、描画混合法による実施形態と比較すると、2種類の機能性インクを拡散混合する時間が不要となるため、プロセス時間が短くて済むという利点がある。
【0101】
本実施形態では、インク1とインク2との混合層を3層形成したが、層の数はこれに限定されるものではなく、それぞれのインクの混合比率が傾斜されるように積層できれば何層でもよい。なお、形成する層の数だけインクタンクとインクジェットヘッドを用意する必要がある。
【0102】
さらに、本実施形態では、インク2が100%からインク1が100%の組成成分比を有する組成傾斜膜3を作成したが、インク2が100%又はインク1が100%の組成成分比を採用する必要性は必ずしもなく、組成傾斜膜3が得られる範囲のものであれば、上記組成成分比を任意に変更することができる。
上記組成成分比は、得ようとする組成傾斜膜の密着性や導電性等の特性により適宜調節することが可能である。
【0103】
〔導電パターン及びプリント配線板〕
本発明に係る導電パターンの線幅は特に制限されるものではないが、1μm以上、200μm以下であることが好ましく、2μm以上、150μm以下であることがより好ましい。線幅が1μm以上、200μm以下であると、低抵抗の導電パターンを比較的容易に形成することができる。
導電パターンの体積抵抗率は、1×10−2Ω・m以下であることが好ましく、1×10−3Ω・m以下であることがより好ましく、1×10−4Ω・m以下であることが更に好ましい。体積抵抗率は低いほど好ましいが、現実的な下限値としては、1×10−4Ω・m以上である。
本発明に係る導電パターンの形成方法は、プリント配線板の製造方法に好ましく適用することができる。
当該製造方法にて製造されたプリント配線板は、製造適性に優れ、密着性及び導電性が高く、かつ、導電パターン同士の融合がないため、小型化、薄型化されたデバイスに対しても十分に適用することができる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによっていささかも限定して解釈されるものではない。
【0105】
<実施例1>
(金属インクの作成)
〜金属インクA1〜
銅ナノ粒子MD50(平均粒子径50nm、石原産業製) 10g
ラウリルアミン(東京化成(株)製) 3g
シクロヘキサノン(和光純薬(株)製) 27g
【0106】
上記素材及び60gのジルコニアビーズを200mlのポリ容器に投入及び密封し、ペイントシェイカー分散機(東洋精機(株)製)にて30分間分散させ、その後、2μmのフィルターにて濾過し、金属インクA1を作成した。
【0107】
(樹脂インクの作成)
〜樹脂インクB1〜
ウレタンオリゴマーUN−1225(根上工業(株)製) 50g
シクロヘキサノン(和光純薬(株)製) 450g
【0108】
上記素材を2Lの容器へ投入し、シルバーソン高速攪拌機にて液温40℃以下を保ち、20分攪拌した。その後、2μmのフィルターにて濾過し、樹脂インクB1を作成した。
【0109】
(導電パターンの形成)
透明PET基材(膜厚150μm、富士フイルム製)上に、下記インクジェット描画法Aにより、厚さ10μmの組成傾斜膜からなる導電パターン(線幅100μm)を形成し、該導電パターンの基材との密着性、導電性、パターン形成を評価した。
【0110】
〜インクジェット描画法A〜
図3に示すようなインクタンク1、インクタンク2に金属インクA1、樹脂インクB1をそれぞれ充填した。インクジェットヘッド1、インクジェットヘッド2に供給されるインクは、それぞれ金属インクA1、樹脂インクB1である。
はじめに、インクジェットヘッド2からの吐出されるインク滴の液適量を10pL、液滴径が30μmとなるように制御し、窒素ガス雰囲気中でインクジェットヘッド2から樹脂インクB1を吐出させた。ここで、インクジェットヘッド1からは金属インクA1を吐出させないで(即ち、インクジェットヘッド2から吐出するインクの吐出量とインクジェットヘッド1から吐出するインクの吐出量の比(質量%)が100:0)としてインク層1を形成し、80℃30秒間乾燥し、半乾燥させた。
続いて、インクジェットヘッド2から吐出するインクの吐出量と、インクジェットヘッド1から吐出するインクの吐出量の比(質量%)を75:25(インク層2)、50:50(インク層3)、25:75(インク層4)、0:100(インク層5)と変化させて積層と半乾燥を繰り返し、最終的に全乾燥(110℃60秒間)させ、組成傾斜膜からなる導電パターンを形成した。
ここで、インク層2形成時のインクジェットヘッド1から吐出させる金属インクA1のインク滴の液適量は5pL、液滴径を20μmとし、インクジェットヘッド2から吐出させる樹脂インクB1のインク滴の液適量は10pL、液滴径を30μmとした。インク層3形成時には、金属インクA1のインク滴の液適量は10pL、液滴径を30μmとし、樹脂インクB1のインク滴の液適量は10pL、液滴径を30μmとした。インク層4形成時には、金属インクA1のインク滴の液適量は10pL、液滴径を30μmとし、樹脂インクB1のインク滴の液適量は5pL、液滴径を20μmとした。インク層5形成時には、金属インクA1のインク滴の液適量は10pL、液滴径を30μmとした。また、全乾燥後のインク層1〜5の膜厚はそれぞれ2μmとなるようにした。
【0111】
(導電パターンの評価)
<密着性>
作成した導電膜に対し、クロスハッチテスト(EN ISO2409)を実施した。評価基準については、ISO2409に準拠し、結果は0〜5点の点数評価で示した。
【0112】
<導電性>
作成した導電膜を、Loresta MP MCP−T350(三菱化学(株)製)にて体積抵抗率を測定し、結果は下記基準にて評価した。
4:体積抵抗率:1×10−5Ω・m以下
3:体積抵抗率:1×10−5Ω・mより大きく1×10−4Ω・m以下
2:体積抵抗率:1×10−4Ω・mより大きく1×10−2Ω・m以下
1:体積抵抗率:1×10−2Ω・mより大きい
【0113】
<パターン形状>
インクジェットにより、透明PET基材(膜厚150μm、富士フイルム製)基材上に線幅100μmの組成傾斜膜からなる導電パターンを描画し、描画した直線の直線性を目視評価して、下記評価基準の限度見本により評価を実施した。
4:線の両幅が直線であり、100μm±5μm以内の線幅を再現
3:線の両幅にジグザグが残る、線幅は100μm±10μm以内の線幅を再現
2:線の両幅にジグザグが顕著、線幅は100μm±20μm以内の線幅を再現
1:線の両幅にジグザグが顕著、かつ線幅は不均一で、部分的にバルジが発生
【0114】
実施例1で形成した導電パターンの評価結果を、下記表1に示す。
【0115】
<実施例2>
実施例1で用いた金属インクA1と樹脂インクB1とを混合したインクG1(混合比(質量%)A1:B1=25:75)、G2(混合比(質量%)A1:B1=50:50)、G3(混合比(質量%)A1:B1=75:25)を作成し、A1及びB1を含めた5種のインクをそれぞれ計5個のプリントヘッドを用い、透明PET基材(膜厚150μm、富士フイルム製)上にB1(最下層)、G1、G2、G3、A1(最上層)の順にて、下記のインクジェット描画法Bにより膜厚が10μmの組成傾斜膜(線幅100μm)からなる導電パターンを形成した。本導電パターンが形成された透明PET基材を用い、組成傾斜膜と基材との密着性、導電性、パターン形状を評価した。結果を下記表1に示す。
【0116】
〜インクジェット描画法B〜
図7に示すインクタンク60−1〜60−5にインクB1、G1、G2、G3、A1をそれぞれ充填した。インクジェットヘッド50−1〜50−5に供給されるインクは、それぞれインクB1、G1、G2、G3、A1である。
はじめにインクジェットヘッド50−1よりインクB1を、インクジェットヘッドから吐出されるインク滴の液滴量を10pL、液滴径が30μmとなるように制御しながら、窒素ガス雰囲気中で吐出させた。
このように形成したインクB1層を、80℃30秒間乾燥し、半乾燥させた。
次に、インクジェットヘッド50−2から同様にインクG1を吐出し、インクG1層を積層、半乾燥させた。これを、インクG2、G3、A1についても繰り返し、積層と半乾燥を繰り返し、最終的に全乾燥(110℃60秒間)させることで組成傾斜膜を作成した。
なお、全乾燥後のインク層B1、G1、G2、G3、A1の膜厚はそれぞれ2μmとなるようにした。
【0117】
<実施例3〜11>
金属インク及び樹脂インクが含有する金属及びポリマー又はオリゴマーを下記表1に記載のものに置き換え、その他は実施例1と同様の方法で、膜厚が10μmの組成傾斜膜(線幅100μm)からなる導電パターンを形成し、基材との密着性、導電性、パターン形状を評価した。結果を下記表1に示す。
【0118】
<比較例1>
実施例1で用いた金属インクA1のみを用いて、透明PET基材(膜厚150μm、富士フイルム製)上に、1層のみから構成される膜厚が10μmの導電パターン(線幅100μm)をインクジェット描画により形成し、基材との密着性、導電性、パターン形状を評価した。結果を下記表1に示す。
【0119】
<比較例2>
実施例1で用いた金属インクA1及び樹脂インクB1をあらかじめ混合し(混合比(質量比)=1:1)、良く攪拌して得られた混合インクE1を用いて、透明PET基材(膜厚150μm、富士フイルム製)上に、1層のみから構成される膜厚が10μmの導電パターン(線幅100μm)をインクジェット描画により形成し、基材との密着性、導電性、パターン形状を評価した。結果を下記表1に示す。
【0120】
【表1】

【0121】
実施例1〜11は基材との密着性、導電性、パターン形状が良好であり、各種インクジェット法A(描画混合法)及びB(インク混合法)により形成した傾斜機能構造を有す導電パターンが実用上も有効であることが示され、2種のインクジェット法での効果の差は無く、どちらの方法でも十分な機能を有す導電パターン形成が可能である。
また、異なる樹脂を含有するインク間での性能の差異について検討すると、密着性に関しては、ウレタン樹脂を含有するインクを使用した場合の方がその他の樹脂を含有するインクを使用した場合よりも良好な性能を示した。本現象は、ウレタン樹脂の基材との密着性が良好なことに加え、ウレタン結合と金属粒子との配位相互作用により傾斜膜内の凝集力が向上し強固な膜が形成されていることに起因すると考えられる。
【0122】
一方、比較例1のように、金属を含有するインクのみを用いて導電パターンを形成した場合、金属膜と樹脂基材との密着性が発現せず、導電パターンは容易に剥離する。
また、比較例2のように、金属インクと樹脂インクを混合し、組成傾斜のない単一層の導電パターンを形成した場合、十分な基材への密着、高い導電性、良好なパターンを示さなかった。当該導電パターンは有機物と金属の混合物により形成されているため、有機物の絶縁性が原因で十分な導通が阻害されるのみでなく、インクとして基材への濡れ広がり性が制御されていないため、バルジ等の発生が顕著になったと考えられる。
【符号の説明】
【0123】
1 導電性パターン
2 基材
3 組成傾斜膜
10 描画部
100 組成傾斜膜作成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、厚み方向において前記基材に最も遠い側から前記基材に最も近い側に向かって金属から樹脂に連続的に組成が変化する組成傾斜膜を有する、導電パターンの形成方法であって、
金属を含有するインク組成物とポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物の少なくとも2種のインク組成物をインクジェット法により前記基材上に吐出して前記組成傾斜膜を作成する、導電パターンの形成方法。
【請求項2】
前記少なくとも2種のインク組成物として、少なくとも、金属を含有するインク組成物とポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物を用い、
前記インクジェット法が、少なくとも第1のインクジェットヘッドと第2のインクジェットヘッドを用いるものであり、
前記金属を含有するインク組成物を含む第1のインクを、第1のインクジェットヘッドに供給する工程と、
前記ポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物を含む第2のインクを、第2のインクジェットヘッドに供給する工程と、
前記第1のインクジェットヘッドから吐出される第1のインクの量と前記第2のインクジェットヘッドから吐出される第2のインクの量との比率を決定する制御工程と、
前記決定された比率に従って、前記第1のインクジェットヘッド及び前記第2のインクジェットヘッドの少なくとも一方から前記第1のインク又は前記第2のインクを吐出させて1つの層を形成する形成工程と、
前記形成工程を繰り返して前記基材上に前記層を複数層積層して前記組成傾斜膜を得る積層工程と、
を備え、
前記制御工程において、前記複数層の厚み方向において前記基材に近い層から遠い層に向かって、前記第1のインクの比率が大きくなり、かつ前記第2のインクの比率が小さくなるように前記比率を決定する、請求項1に記載の導電パターンの形成方法。
【請求項3】
前記ポリマー又はオリゴマーとしてウレタンポリマー又はオリゴマーを含有する、請求項2に記載の導電パターンの形成方法。
【請求項4】
前記ウレタンポリマー又はオリゴマーが、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する、請求項3に記載の導電パターンの形成方法。
【化1】


(上記一般式中、R〜Rはそれぞれ独立して、アルキレン基、アリーレン基又はビアリーレン基を表し、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。)
【請求項5】
前記基材が合成樹脂製の基材である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の導電パターンの形成方法。
【請求項6】
前記形成工程において、前記第1及び第2のインクジェットヘッドから吐出する液滴のインク量が0.3〜100pLである、請求項2〜5のいずれか一項に記載の導電パターンの形成方法。
【請求項7】
前記形成工程において、前記第1及び第2のインクジェットヘッドから吐出する液滴の液滴径が1〜300μmである、請求項2〜6のいずれか一項に記載の導電パターンの形成方法。
【請求項8】
前記少なくとも2種のインク組成物として、少なくとも、金属を含有するインク組成物とポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物を用い、
前記インクジェット法が、複数のインクジェットヘッドを用いるものであり、
前記金属を含有するインク組成物を含む第1のインクと前記ポリマー又はオリゴマーを含有するインク組成物を含む第2のインクとが混合された混合インクであって、それぞれ異なる比率で混合された複数の混合インクを前記複数のインクジェットヘッドそれぞれのインクジェットヘッドに供給する工程と、
前記複数のインクジェットヘッドから1つのインクジェットヘッドを順に選択する選択工程であって、前記第2のインクの比率の高い混合インクが供給されるインクジェットヘッドから順に選択する選択工程と、
前記選択されたインクジェットヘッドから混合インクを吐出させて1つの層を形成する形成工程と、
前記形成工程を繰り返して前記基材上に前記層を複数層積層して前記組成傾斜膜を得る積層工程と、
を備える、請求項1に記載の導電パターンの形成方法。
【請求項9】
前記ポリマー又はオリゴマーとしてウレタンポリマー又はオリゴマーを含有する、請求項8に記載の導電パターンの形成方法。
【請求項10】
前記ウレタンポリマー又はオリゴマーが、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する、請求項9に記載の導電パターンの形成方法。
【化2】


(上記一般式中、R〜Rはそれぞれ独立して、アルキレン基、アリーレン基又はビアリーレン基を表し、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。)
【請求項11】
前記基材が合成樹脂製の基材である、請求項8〜10のいずれか一項に記載の導電パターンの形成方法。
【請求項12】
前記形成工程において、前記第1及び第2のインクジェットヘッドから吐出する液滴のインク量が0.5〜150pLである、請求項8〜11のいずれか一項に記載の導電パターンの形成方法。
【請求項13】
前記形成工程において、前記第1及び第2のインクジェットヘッドから吐出する液滴の液滴径が2〜450μmである、請求項8〜12のいずれか一項に記載の導電パターンの形成方法。
【請求項14】
前記金属の平均粒子径が5〜1000nmである、請求項1〜13いずれか一項に記載の導電パターンの形成方法。
【請求項15】
前記金属は金、銀、銅、白金、アルミニウム、パラジウム、及びニッケルからなる群から選択される少なくとも1つを含む粒子、又は、前記群から選択される2つ以上の金属を含む合金の粒子である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の導電パターンの形成方法。
【請求項16】
前記ポリマー及びオリゴマーを含有するインク組成物に、沸点が60℃〜300℃の溶媒が更に含有されている、請求項1〜15いずれか一項に記載の導電パターンの形成方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の導電パターンの形成方法を使用してなる、プリント配線板の製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の製造方法により製造された、プリント配線板。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−42098(P2013−42098A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179998(P2011−179998)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】