説明

導電パターン形成装置

【課題】
導電パターン形成装置において、膜面が平坦で、かつ内部に空隙が少ない導電パターンを得られるようにすることである。
【解決手段】
形成された導電粒子からなる導電パターン前駆体を焼成し導体化する工程の前に、該導電パターン前駆体における膜面の平坦化、および膜中空隙の低減を達成し、得られる導電パターンの高周波信号減衰や高抵抗化を防ぐための平坦化、および空隙低減手段を具備した導電パターン形成手段を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粒子を所望の位置にパターニングするパターン形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高価なマスクと多段工程を有するフォトリソグラフ方式の代替技術として、スクリーン印刷法,ディスペンサ,インクジェット印刷,電子写真印刷などの工程簡便な印刷プロセスによる導電パターン形成方式が注目されている。
【0003】
いずれのプロセスも導電性粒子を溶媒中に分散した導電性粒子分散溶液や樹脂中に導電性粒子を内添したトナーを利用し、版やスクリーンを使った間接塗布,ノズル走査による直接塗布、または静電吸着によりパターニングを行う。そしてこれを、加熱焼成することで微粒子同士を融着させて導体化し配線を得る。
【0004】
上記の各種印刷プロセスのなかで、静電気力を利用して絶縁基板上に所望の導電パターンを形成する電子写真方式は、大量生産や大面積パターン形成に対応可能であるだけでなく、多品種少量生産に有利な導電パターンの変更も容易であるため、他のプロセスと比較して有利な点が多い。
【0005】
なかでも特に、特許文献1に示すような導電性粒子を溶媒中に分散した導電性粒子分散溶液を現像剤として用いる液体現像方式は、液中に微粒子を分散することで飛散を防止可能であり、より小粒径の導電性粒子を扱えるため、パターンの高解像度化および導電性粒子の融着導体化時の焼成温度低減に有利な方式である。
【0006】
ここで、形成するパターンは導電性を有した配線であり、画像形成目的のパターンに比べてその要求項目は増える。たとえば、従来の電子写真方式では、主にテキスト,イラスト,写真などの可視像パターンの形成が対象であったため、得られるパターンに求められるのは、所望の位置にパターニングされ、所望の発色を実現する画像濃度を有した画像パターンを形成することであった。
【0007】
一方、導電パターン形成の場合は、パターンの位置や、パターンの厚さだけでなく、パターンの表面性状は平滑であることが求められる。これは、高周波電気信号導通時の減衰低減のために不可欠である。また、配線内部はパターンを構成する材料により空隙なく密度が高い状態である必要がある。これは、導体パターンを構成するナノ粒子間の距離を狭めて低抵抗化を実現するために必要であり、また、配線の機械的強度確保のためにも必要である。
【0008】
【特許文献1】特開2006−278801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、目的基板上に転写したパターンを、そのまま焼成をしているため、得られる導電パターン表面性状は荒い状態である。したがって、高周波信号が導通する際に信号の減衰が起きると考えられる。
【0010】
また、現像,転写時に使用した溶媒のうち乾燥しきれていないものがパターン中に残存している可能性がある。これは、導体パターン中への空隙発生や、金属粒子が導体化する際に表面に残存する分散剤を焼成するのに必要な酸素と結合してしまい、焼成導体化効率を低下させる要因となることが懸念される。すなわち、パターンの高抵抗化やパターンの機械強度低下を招く要因となる。
【0011】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、電子写真による導電パターン形成において、導電パターン中を高周波信号が導通する際に減衰が無く、かつ低抵抗な導電パターンを形成するための方法、およびそれを用いた導電パターン形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の導電パターン形成装置は、誘電薄膜体上に静電気力により形成された後に目的となる基板上に転写し形成された、導電粒子が集まった状態の導電パターン前駆体を、焼成プロセスにより加熱導体化する前に、平坦化および空隙低減する手段を具備することを特徴とする。
【0013】
平坦化および空隙低減する手段の一例としては、パターンを上面から加圧する加圧プロセスを設けることが挙げられる。本手段を用いることにより、パターン前駆体表面の不均一な膜面を平坦化することができ、その状態で加熱焼成することで膜面平滑性が向上した配線を得ることができる。これにより、高周波電気信号を導体パターンに通じた場合に、膜表面が荒いことで発生することが知られている高周波電気信号減衰を低減することができる。
【0014】
また、現像または転写後の導電パターン前駆体は静電気力により集まった状態であるため、粒子間に空隙が多く存在していることが懸念される。さらにこの空隙には、現像または、転写時に付与される溶媒の残存分が残り、このまま焼成すると、導体化後のパターン中にも空隙が残存し、配線の導体の低効率が低下する。
【0015】
本手段によると、焼成前の導電パターン前躯体中に存在する空隙の減少および溶媒押し出しが促進され、焼成時の導体化効率が向上し、より低抵抗な導体パターンが得られると考えられる。また、空隙の減少はパターンの機械的強度向上にも寄与するものと考えられる。
【0016】
また、このとき、提案する平坦化および空隙低減手段は、粒子が導体化し固着する前の導電粒子が凝集した状態のパターンに対し実施する必要があるため、平坦化および空隙低減手段は焼成導体化手段の前に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、膜面を平坦化して高周波信号が導通する際の減衰を低減した導電パターンを形成でき、パターン中空隙を低減することで、低抵抗で機械的強度の高い導電パターンを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態として、電子写真方式を用いた導電パターン形成装置を例に、図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、本発明における電子写真法による導電パターン形成方法を適用した装置を模式的に示したものである。本装置は主に、帯電装置1,誘電性薄膜体10,露光装置3,導電性粒子分散溶液6,現像装置5,溶媒除去装置12,転写液塗布装置13,静電転写装置15,対象基板16,焼成手段21、さらに平坦化および空隙低減手段27により構成される。
【0020】
本実施例では、静電潜像2の形成手段として、感光性を有する誘電性薄膜体10を表面に設けたドラム状またはベルト上の感光体11を使用している。
【0021】
本装置では、この誘電性薄膜体10の周囲に設けた帯電装置1(コロトロン帯電器又は、ローラ接触帯電器又は、ブラシ接触帯電器のいずれを用いてもよい。)により、その表面を一様に帯電する。尚、このとき誘電性薄膜体10の表面に与える電荷は、正電荷および負電荷のどちらによるものでも構わない。
【0022】
本装置は、帯電装置1で一様帯電された静電潜像2に、パソコンなどの画像情報処理装置からの画像信号に応じてレーザ光を走査する露光装置3を備えている。この露光装置3により、任意の部分に光を照射し、目的の潜像パターン4を形成する。
【0023】
本装置は、感光体11上に形成された潜像パターン4に導電性粒子分散溶液6を接触して供給することで、導電パターン前駆体7を現像形成する現像装置5を備えている。
【0024】
この現像装置5は、導電性粒子分散溶液6を貯蔵するタンク(図示せず)と、誘電性薄膜体10上の潜像パターン4に導電性粒子分散溶液6を供給する供給手段を具備している。供給手段としては、ロール状の感光体11の表面に導電性粒子分散溶液6による液膜を形成し、ロール状の感光体11を回転させて、感光体11近傍に該導電性粒子分散溶液6を供給して接触させるロール供給型、または、スリット状の導電性粒子分散溶液6吐出口から誘電性薄膜体10上の潜像パターン4に導電性粒子分散溶液6を吐出するスリット型、若しくは導電性粒子分散溶液6を貯めた溶液中に潜像パターン4を形成した誘電性薄膜体10を浸すディップ型などが挙げられる。いずれの現像装置の構成においても、供給される導電性粒子分散溶液6を貯蔵する図示しない液貯蔵タンクが具備され、その貯蔵タンクには導電性粒子分散溶液6の濃度を検出する濃度センサ(図示せず)を設けて、潜像パターン4に供給する導電性粒子分散溶液6の導電性粒子の濃度を一定にするよう使用する。
【0025】
図1においては図示しないが、本装置としては、高濃度な導電性粒子分散溶液6、または導電性粒子24を貯蔵するタンク、および導電性粒子分散溶液6から粒子成分を除いた無極性溶媒22のみを貯蔵するタンクも用意することが望ましい。
【0026】
これらは、印字経過と共に変化する液貯蔵タンク内の導電性粒子分散溶液6濃度を一定に保つために、濃度センサからの導電性粒子分散溶液6の濃度情報に基づいて濃度調整手段(図示せず)により制御されながら、ポンプ(図示せず)により導電性粒子分散溶液6中に添加される。
【0027】
このときいずれのタンクにも、沈降防止,全領域濃度均一化のために攪拌手段が具備されている。攪拌手段としては、超音波照射手段,液中内を機械的に攪拌するための攪拌羽根等を使用する攪拌手段,貯蔵タンク自体を加振することで攪拌する加振手段などを用いることができる。
【0028】
パターン厚さやパターン解像度の向上を目的とし、現像領域に電圧を印加することができるよう、現像装置5における導電性粒子分散溶液6と供給ロールまたは、スリット状分散剤供給口面に、導電性粒子24の現像時に誘電性薄膜体10との間に、電圧を印加できる構成である必要がある。
【0029】
導電性粒子分散溶液6の詳細を図2に示す。導電性粒子分散溶液6は表面にイオン性有機分子23が吸着した粒径100nm以下の導電性粒子24を無極性溶媒22中に分散させてなる。
【0030】
イオン性有機分子23としては、高分子の場合は、ポリスチレン,ポリ−p−クロルスチレン,ポリビニルトルエン,スチレン−p−クロルスチレン共重合体,スチレン−ビニルトルエン共重合体等のスチレンおよびその置換体の単独重合体およびそれらの共重合体,スチレン−アクリル酸メチル共重合体,スチレン−アクリル酸エチル共重合体,スチレン−アクリル酸−n−ブチル共重合体等のスチレンとアクリル酸エステルとの共重合体,スチレン−メタクリル酸メチル共重合体,スチレン−メタクリル酸エチル共重合体,スチレン−メタクリル酸−n−ブチル共重合体等のスチレンとメタクリル酸エステルとの共重合体,スチレンとアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの多元共重合体,スチレン−アクリロニトリル共重合体,スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体,スチレン−ブタジエン共重合体,スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレンと他のビニル系モノマーとのスチレン系共重合体,ポリメチルメタクリレート,ポリブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル樹脂ポリアクリル酸メチル,ポリアクリル酸エチル,ポリアクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル樹脂,ポリエステル樹脂,エポキシ樹脂,シクロオレフィン共重合体など、以上に挙げた高分子樹脂単独または混合した高分子樹脂に、カルボン酸基やアミノ酸基などのイオン性を付与できる官能基が付いたものが挙げられる。
【0031】
低分子量の有機分子の場合は、シュウ酸,マロン酸,コハク酸,アジピン酸,グルタル酸,2,4−ジエチルグルタル酸,2,4−ジエチルグルタル酸,ピメリン酸,アゼライン酸,セバシン酸,シクロヘキサンジカルボン酸,マレイン酸,フマル酸,ジグリコール酸などのジカルボン酸や、カプリル酸,ラウリル酸,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,アラキン酸,ベヘニン酸,リノール酸,オレイン酸,リノレン酸などの脂肪酸や、乳酸,ヒドロキシピバリン酸,ジメチロールプロピオン酸,クエン酸,リンゴ酸,グリセリン酸などのヒドロキシカルボン酸、などの脂肪族カルボン酸による脂肪族カルボン酸イオンと、Ag,Cu,Au,Pd,Pt,Ni,W,Mo,Crなどの無機イオンとからなる脂肪族カルボン酸無機塩などが挙げられる。
【0032】
導電パターン前駆体7を導体化するには、導電性粒子24周りの有機成分を加熱して焼き飛ばす必要がある。なお、高分子成分よりも低分子成分の方が焼成に必要な熱エネルギーが低い。
【0033】
従って、導電パターン形成用の対象基板16として、耐熱温度が低いポリイミドなどの樹脂性の基板を用いる場合は、焼成温度が低い低分子有機分子を用いた方が良い。また、低分子有機分子を用いると、導体化したパターンの高抵抗化を招く導電パターン17中の残存有機分子比率が高分子有機分子を用いた場合に比べ低くなる。
【0034】
以上の観点から、導電性粒子24周りの有機分子成分は、低分子量の有機分子であることが好ましい。
【0035】
導電性粒子24の粒径は低温融着を可能にし、導電パターン17が高解像度となるように、100nm以下である必要がある。ただし、200度以下の温度で加熱して導電性粒子24を融着し導電パターン前駆体7を導体化させるためには導電性粒子24の粒径を10nm以下とする。100nm以下の線幅の導電パターン17が必要な時は、導電性粒子24の粒径を5nm以下にする。
【0036】
導電性粒子24には、AgまたはCu,Au,Pd,Pt,Ni,W,Mo,Cr等の単体金属、またはこれらの金属の酸化物、これらの金属の合金を用いる。導電体が必要な時は、体積抵抗率の低いAgまたはCuを用いる。なお、上記金属か、又はその酸化物、又はその合金を複数混合して用いることもできる。
【0037】
無極性溶媒22には、脂肪族炭化水素系溶媒を用いる。脂肪族炭化水素系溶媒としては、イソパラフィン系または石油ナフサ系,アイソパー(エクソンケミカル社製),IPソルベント(出光石油社製),ソルトール(フィリップス石油社製)、その他の炭化水素系溶媒を用いることができる。
【0038】
本実施例における電子写真方式による導電パターン形成装置では、誘電性薄膜体10上に現像された導電パターン前駆体7を、対象となる対象基板16上に転写する静電転写装置15を有する。
【0039】
静電転写装置15は対象基板16の被転写層を介して背面から電圧を与え、静電力により誘電性薄膜体10上に現像された導電パターン前駆体7を対象基板16上に転写する静電転写方式を採用している。
【0040】
ここで、誘電性薄膜体10上に現像された導電パターン前駆体7は、パターンを保持した状態で転写するために、現像あるいは洗浄後に一度パターン状に残存した無極性溶媒22を、溶媒除去装置12により除去し、更に転写時に必要な溶媒である転写液14が転写液塗布装置13で再び塗布されたうえで、転写をおこなう構成である。
【0041】
本実施例では、導電パターン前駆体7を対象基板16上に静電気力により転写する静電転写方式を採用している。転写の対象基板16の背面より電圧を印加することで、誘電性薄膜体10上のパターンは静電的にひきつけられて対象基板16上に転写される。
【0042】
このとき、後述する導電パターン前駆体の膜面平坦性および空隙低減を容易にするため、パターンを破壊しない範囲で付与される転写電圧は大きく、また、付与される転写液14は可能な範囲で揮発性が高く容易に除去できるものであることが好ましい。
【0043】
本実施例における転写の対象としては、導電パターン17が形成される対象基板16上に直接転写する方法、あるいは一次的に導電パターン前駆体7を導電パターン保持基板(中間転写体)に保持し、その後、転写された導電パターン前駆体7を更に対象基板16上に転写する方法がある。
【0044】
直接目的の対象基板16上に転写する方法の場合、対象基板16は100〜250℃の加熱に対し耐性を有し、さらに対象基板16背面からの転写バイアス印加に対応するために、厚さ1mm以下のシート状の部材であることが好ましい。対象基板16を構成する部材の例としては、ポリイミドからなる樹脂シートやセラミックグリーンシートなどが挙げられる。
【0045】
本実施例の導電パターン形成装置において、対象基板16に転写された導電パターン前駆体7は、平坦化および空隙低減手段27により、導電パターン前駆体7の膜面性状を平坦化し、また膜中に残存する空隙(または残存溶媒)28を低減するため、図4に示す平坦化および空隙低減手段27が具備される。該手段による導電パターン前駆体7の平坦化および空隙低減手段27は、その後の焼成手段21を経ることで得られる導電パターン17の高周波信号減衰の防止、および残存空隙および溶媒28による高抵抗化の防止の実現に寄与する。
【0046】
平坦化および空隙低減手段27は、対象基板16上に転写された導電パターン前駆体7に対して機能する。このとき、平坦化および空隙低減手段27は、加熱溶解し固着することで導体化する焼成手段21の前に、具備されている必要がある。
【0047】
これは、導電パターン前駆体7の平坦化や空隙低減は導電パターン前駆体の導電性粒子24自体の移動により達成する必要があるため、導電性粒子24を焼成により固着導体化し導電パターン17を形成した後では、導電性粒子24が動くことが出来なくなり、上記目的を達成できなくなるためである。
【0048】
尚、対象基板16上に転写された直後の導電パターン前駆体7は、転写のために塗布された転写液14が残存しているため、対象基板16上に残存する転写液14を除去する残存転写液除去手段20により十分に残存転写液14が除去された後に平坦化および空隙低減を実施できる形態であることが好ましい。
【0049】
残存転写液除去手段20としては、気流付与により転写液14をパターン外に排除する方法,転写液14を対象基板16加熱や高温雰囲気に暴露し揮発させ除去する方法,負圧により転写液14を除去する方法,導電パターン前駆体7が形成される対象基板16表面にあらかじめ微細な凹溝形状を付与し毛細管現象によりパターン外に転写液14を除去する方法などが挙げられる。本手段は、導電パターン前駆体7中の空隙残存の原因となるパターン中残存液の除去にも効果的である。
【0050】
以下、平坦化および空隙低減手段27の実例を挙げる。平坦化および空隙低減手段27としては、導電パターン前駆体7に対し、パターン上面または下面から加圧力を付与する形態が挙げられる。
【0051】
加圧力の付与により、導電パターン前駆体7膜面は平坦化されると同時にパターン中の導電性粒子24が最密充填構成に移行し空隙28の低減が図れる。このとき、空隙28中に残存した液体も導電パターン前駆体7外に押し出されるため、導電パターン前駆体7の焼成による導体化時の加熱効率および酸素付与効率も上昇するためより低温焼成で低抵抗な導電パターン17を形成するのに有利に働く。加圧手段の形態としては、プレス式,ローラ式,ブレード部材の押し当てなどが挙げられるが、対象となる導電パターン前駆体7に均一に加圧できる方法で有れば特に限定はされない。また、平坦化および空隙低減の効率を上げるために、上記加圧手段は二つ以上設けられ、一つの導電パターン前駆体7に対し複数回作用する形態であっても良い。
【0052】
ここで、導電パターン17の連続製造による高生産対応、および導電パターン前駆体7破壊の低減を考慮すると該加圧手段としてはローラ式であることが好ましい。また、該加圧手段のいずれの形態においても、対象基板16を挟んで反対側の面には、基材の変形を防ぐため加圧支持体が具備されていることが好ましい。
【0053】
加圧対象となるパターンが形成されている対象基板16がポリイミドシート,PETシート,PENシート,セラミックグリーンシート前駆体,紙などの柔軟媒体である場合は、加圧手段における導電パターン前駆体7と接触する加圧面は剛直な部材からなることが好ましい。加圧対象となる導電パターン前駆体7が形成されている基板が金属,セラミック,ガラスなどの剛直部材である場合は、加圧部材がゴム,樹脂,弾性部材からなることが好ましい。
【0054】
加圧手段における加圧部材の導電パターン前駆体7との接触面には導電パターン前駆体7を構成する導電性粒子24の帯電極性と同極の電場を付与できる構成であることが好ましい。
【0055】
本形態によると、加圧面から導電パターン前駆体7中の導電性粒子24に対し静電的斥力を付与することになり、膜面平坦化および膜中空隙28低減のための加圧力の助力として作用する。これにより、必要加圧力を低減でき、過加圧によるパターン破壊を回避できる。また、導電性粒子24の加圧手段における加圧面への付着を低減にも寄与する。
【0056】
加圧手段により負荷される加圧力は、現像装置5及び静電転写装置15により形成された導電パターン前駆体7状態に応じて加圧力を調整する構成であっても良い。上記を達成する場合は、導電パターン前駆体7を検知できるパターン状態検知手段を具備する。検知対象となる導電パターン前駆体7は、対象基板16上に転写された後の導電パターン前駆体7、および誘電性薄膜体10上に現像された転写前の導電パターン前駆体7のいずれかもしくはその両方であっても良い。
【0057】
さらに、最終的に形成された導電パターン17の高周波信号減衰特性や体積抵抗率を評価する評価手段を後述する焼成手段21の後に設け、それにより得られる導電パターン17特性情報に基づいて、加圧力を変化させる構成であっても良い。
【0058】
平坦化および空隙低減手段27の他の手段としては、導電パターン前駆体7を真空または負圧環境に保持し膜中液体除去することにより導電性粒子24間空隙を低減する構成,導電パターン前駆体7に付与する加圧力として加圧部材ではなく空圧を付与する構成、対象基板16背面または上面に超音波を付与し導電性粒子24を最密充填構成に移行する方法,導電パターン前駆体7を保持する対象基板16をらせん状に搬送し導電パターン前駆体7から対象基板16上に対して遠心力を発生・付与しパターン中の導電性粒子24を対象基板16に押し付ける方法,導電パターン前駆体7膜面の凹部分にインクジェット,ディスペンサ,粉体吹付けを付与・充填し膜面を平坦化させる方法,転写液14よりも揮発性の高い易揮発液体により残存する転写液14を洗浄、あるいは膜中に残存する転写液14を置換し液体の自然揮発に伴う導電性粒子24間の凝集を促進する方法などが挙げられる。
【0059】
また、上記に挙げた方法によって平坦化および空隙低減が同時に行われることが好ましいが、いずれか一方しか達成できない場合の例を以下に挙げる。たとえば、平坦化が不十分な場合は、焼成後の導電パターン17に対し、導電パターン17膜面を研摩する方法、や電界めっき・電解メッキあるいはインクジェットによる導電性材料付与による膜面凹凸の充填を実施し平坦化する方法などが挙げられる。また、空隙低減が不十分な場合は、電界めっき・電解メッキによる空隙充填などが上げられる。
【0060】
本実施例における導電パターン形成装置において対象基板16に転写された導電パターン前駆体7を、対象基板16に定着し、かつ、導電性粒子24同士を融着して導体化し導電パターン17とするための焼成手段21を具備している。
【0061】
焼成手段21は、導電性粒子24を融着させるだけでなく、導電性粒子24表面に付与した分散剤層を焼成する。この時の加熱温度は、導電性粒子24を十分に融着し、イオン性有機分子23を焼成させ、かつ対象基板16の変形や変性を防ぐために300℃以下であることが好ましい。この時、焼成された有機物成分を排気する排気手段を設置しても良い。
【0062】
本実施例における導電パターン形成装置において、誘電性薄膜体10は導電パターンを転写後、再び潜像が形成され導電パターン前駆体7を現像される構成であっても良い。形状としてはベルト状またはドラム状であることが好ましい。
【0063】
また、この時、転写後の誘電性薄膜体10の残留静電潜像を消去する残留潜像消去手段19、および残留した導電性粒子24を除去・回収する残留導電性粒子クリーニング手段18を備えている。残留導電性粒子クリーニング手段18としては、誘電性薄膜体10にブレードを接触させ掻きとる方法や、溶媒により洗い流す方法が挙げられる。また、除去・回収された導電性粒子24は、現像装置5に戻されて、再び導電性粒子分散溶液6中に分散されてリサイクルされても良い。
【0064】
以上、導電パターンの製造方法において、パターン変更が容易であり、かつ信頼性,高解像度化,生産性の面からも有利である電子写真方式を例として説明したが、対象基板16上への導電パターン前駆体7を形成する方法としては、電子写真方式に限らず、凸版印刷方式,凹版(グラビア)印刷方式,平版(フレキソ)印刷方式,スクリーン印刷方式,ナノインプリント方式,インクジェット印刷方式,ディススペンサ方式などのパターニング方式などであっても良い。また、上記に電子写真方式も含め、これらの中から二つ以上の方式を併用して適用する形態であってもよい。対象基板16上への導電パターン前駆体7を形成した後のプロセスは、上記記載のいずれのパターニング技術においても同様に適用できる。
【0065】
本発明の導電性粒子分散溶液6により形成された導電パターン17は、例えばパーソナルコンピュータ,大型電子計算機,ノート型パソコン,ペン入力パソコン,ノート型ワープロ,携帯電話,携帯カード,腕時計,カメラ,電気シェーバ,コードレス電話,ファックス,ビデオ,ビデオカメラ,電子手帳,電卓,通信機能付き電子手帳,携帯コピー機,液晶テレビ,電動工具,掃除機,バーチャルリアリティ等の機能を有するゲーム機器,玩具,電動式自転車,医療介護用歩行補助機,医療介護用車椅子,医療介護用移動式ベッド,エスカレータ,エレベータ,フォークリフト,ゴルフカート,非常用電源,ロードコンディショナ,電力貯蔵システムなどの基板配線や液晶テレビ,プラズマテレビ,有機ELなどの薄型テレビや電子ペーパなどフレキシブルディスプレイの駆動回路用配線として使用することが出来る。また、民生用の他、軍需用,宇宙用としても用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施例における電子写真法による平坦化および空隙低減手段を具備した導電パターン形成方法の模式図である。
【図2】図1の装置に適用可能な導電性粒子分散溶液の概略図である。
【図3】低分子量のイオン性有機分子を有する導電性粒子の概略図である。
【図4】本発明の一実施例における平坦化および空隙低減手段による導電パターン前駆体の平坦化および空隙低減を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0067】
1 帯電装置
2 静電潜像
3 露光装置
4 潜像パターン
5 現像装置
6 導電性粒子分散溶液
7 導電パターン前駆体
8 洗浄装置
9 洗浄液
10 誘電性薄膜体
11 感光体
12 溶媒除去装置
13 転写液塗布装置
14 転写液
15 静電転写装置
16 対象基板
17 導電パターン
18 クリーニング手段
19 残留潜像消去手段
20 残存転写液除去手段
21 焼成手段
22 無極性溶媒
23 イオン性有機分子
24 導電性粒子
25 無機イオン
26 有機物イオン
27 平坦化および空隙低減手段
28 空隙(または残存溶媒)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電微粒子から成る導電パターン前駆体を焼成手段により加熱焼成して導体化する導電パターン形成装置において、平坦化および空隙低減手段を有し、前記導電パターン前駆体を加熱溶解固着し導体化する前記焼成手段の前に前記平坦化および空隙低減手段を設けたことを特徴とする導電パターン形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の導電パターン形成装置において、前記平坦化および空隙低減手段が、プレス,ローラ若しくはブレードを用いて前記導電パターン前駆体に加圧することを特徴とする導電パターン形成装置。
【請求項3】
請求項1記載の導電パターン形成装置において、前記平坦化および空隙低減手段は加圧手段を有し、この加圧手段の加圧面には、導電粒子と同極の電荷を付与し、加圧付与と同時に静電的な斥力を付与し、平坦化および空隙低減の促進、および該導電パターン前駆体の加圧面への付着を防止することのできる形態であることを特徴とする導電パターン形成装置。
【請求項4】
請求項1記載の導電パターン形成装置において、前記平坦化および空隙低減手段が、加圧対象となるパターンが形成されている基板が金属やガラスなどの剛直部材である場合は、加圧部材が弾性部材からなることを特徴とする導電パターン形成装置。
【請求項5】
請求項1記載の導電パターン形成装置において、加圧手段は、現像や転写直後にパターン表面に残存する溶媒を除去した後の面に加圧するよう具備されていることを特徴とする導電パターン形成装置。
【請求項6】
請求項1記載の導電パターン形成装置において、加圧手段は、加圧前のパターン表面性状を検知する手段を具備し、その検知情報に基づいて加圧力を制御する構成であることを特徴とする導電パターン形成装置。
【請求項7】
請求項1記載の導電パターン形成装置において、対象基板上への導電パターン前駆体を形成する導電パターン前駆体形成手段を備え、当該導電パターン前駆体形成手段が、インクジェット印刷方式,ディスペンサ方式,スクリーン印刷方式,凸版印刷方式,凹版印刷方式,平版印刷方式,電子写真方式のいずれか、またはこれらの中から2つ以上を組み合わせた方式を用いて導電パターン前駆体を対象基板上に形成することを特徴とする導電パターン形成装置。
【請求項8】
請求項7記載の導電パターン形成装置において、前記導電パターン前駆体形成手段が電子写真方式を用いて導電パターン前駆体を形成するものであるとき、前記導電パターン前駆体形成手段は導電性材料を用いて導電パターン前駆体を形成し、当該導電性材料は、加熱または加圧により導体化する導電性粒子が液中に分散した導電性粒子分散溶液であることを特徴とする導電パターン形成装置。
【請求項9】
請求項8記載の導電パターン形成装置において、前記導電性粒子分散溶液は、粒径が100nm以下の前記導電性粒子が分散したものであることを特徴とする導電パターン形成装置。
【請求項10】
請求項8記載の導電パターン形成装置において、前記導電性粒子分散溶液中の前記導電粒子は、表面にイオン性有機分子を有し、かつ前記導電粒子は無極性溶媒中に分散していることを特徴とする導電パターン形成装置。
【請求項11】
請求項8記載の導電パターン形成装置において、前記導電パターン前駆体形成手段は、誘電性薄膜体表面に静電パターンを形成する静電潜像形成手段と、この静電潜像形成手段で静電潜像を形成させた前記誘電性薄膜体に前記導電性粒子分散液を供給接触させて静電潜像を現像しパターンを形成する現像手段と、をすることを特徴とする導電パターン形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−87069(P2010−87069A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252140(P2008−252140)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】