説明

導電体の表面形状認識装置

【課題】 ユーザーの手や衣服にトナーが付着した場合にも、ユーザーの嫌悪感を軽減できる導電体の表面形状認識装置を提供する。
【解決手段】 表面形状認識装置1は、媒体10を表面形状認識装置1の内部で搬送させる搬送手段21と、媒体10を表面形状認識装置1の内部で帯電させる帯電手段6と、導電体の表面形状に対応する読み取り情報として保持された媒体10上に形成された静電潜像を表面形状認識装置1の内部でトナーにより現像してトナー像Tを形成するトナー像形成手段7と、表面形状認識装置1の内部でトナー像の形状情報を作成する形状情報作成手段8と、形状情報を出力する出力手段29とを有するものであって、前記トナーを白色トナー62とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に読み取り情報を保持させ、該読み取り情報を予め格納した固有情報と照合して認証を行う認証システムに用いられる導電体の表面形状認識装置に関するものである。
尚、ここで導電体とは、絶縁体以外の半導電体も含む概念で用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
この種の導電体の表面形状認識装置や表面形状認識方法が用いられる認証システムの代表的なものに指紋(導電体である指の表面形状)による認証システムがあり、指紋の検出に関しては、感圧センサを用いたもの、感熱センサを用いたもの、静電容量の変化をとらえるもの、レーザー光の反射を用いたもの等がある。
例えば特許文献1には感圧式の指紋センサを用いた認識装置が記載されている。
【特許文献1】特開2004−138416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に記載されている認識装置及びその他の方式の認識装置は、装置本体に取り付けられたセンサの読み取り面上に指を押し付けることにより指紋の形状を検知しようとするものであり、読み取り面には多数のユーザーが触れることになる。
かかる場合には、読み取り面に傷や汚れが発生しやすくなって認識の精度が低下してしまうことが懸念される。
また人によっては不特定のユーザーが接触した面に触れることに対し不快感を覚える場合がある。
【0004】
このため、傷や汚れによる認識精度の低下、認識対象となる導電体の表面形状の相違による認識精度のバラツキが小さく、ユーザーが不快感を覚えることを防止でき、装置本体外では当該表面形状を他人から見られることのない導電体の表面形状認識装置に対する要請が高まっている。
かかる要請に基づいて、本出願人は既に、導電体の表面形状を、帯電させた例えばカードのような媒体に静電潜像として保持し、装置内部でトナー像化して装置内部の読み取り装置で形状情報化する表面形状認識装置を提案している(特願2004−246570号)。
このような表面形状認識装置においては、媒体上に形成された静電潜像を可視化するためのトナー像形成手段が設けられている。
【0005】
図10は、従来のトナー像形成手段101の概略構成図であり、このトナー像形成手段101においては、現像ローラ102に図示しない外部電源が接続されており、この現像ローラ102は、搬送手段21の上を搬送される媒体103の進行方向と同じ方向に回転されている。
トナー供給ローラ104は、現像ローラ102と接触して回転されながら現像ローラ102にトナー105を供給している。
現像ローラ102は、媒体103の図示しない静電潜像形成部と接触され、この静電潜像形成部の上に形成され静電潜像が現像されて、トナー像Tが形成されることにより可視化される。
【0006】
この場合、トナー105としては、スチレン樹脂等のバインダー樹脂のなかに、離型剤としてのワックスや、帯電制御剤及び黒色顔料等を混合して製作される黒色の負帯電系の非磁性一成分トナーを用いるのが一般的である。
また、静電潜像形成部に形成されたトナー像Tからは、導電体の表面形状に応じた形状情報が作成され、その後、トナー像Tはクリーニング手段により除去され、媒体103はユーザーに返却される。
【0007】
しかしながら、上述したトナー像形成手段101では、黒色のトナー105を用いていたため、トナー像Tのクリーニングが不十分な状態で媒体103がユーザーに返却されると、ユーザーの手や衣服にトナー105が付着する場合があり、ユーザーがひどく嫌悪感を抱くこととなっていた。
【0008】
また、媒体103の基材の表面の色が、黒色又は濃度の濃い色である場合には、形成されたトナー像Tと媒体103の基材の色との間のコントラストが弱いため、CCD等により導電体の表面形状に応じた形状情報を作成する場合に、周囲の照明に気を使わなければならなかった。
具体的には、媒体103の基材の表面の色が黒色又は濃度の濃い色であっても、周囲の照明の明るさを増加させればトナー像を得ることはできるが、基材からの光の反射が少ないのに加えてトナー像Tが黒色のため、基材とトナー像Tとの間のコントラストが非常に弱くなり、トナー像Tが不鮮明となる問題があった。
一方、媒体103の基材の表面の色が白色に近い場合には、トナー像Tと基材103との間のコントラストは強くできるが、周囲の照明の角度などにより基材からの光が乱反射するとトナー像Tがかえって不鮮明となる問題があった。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、ユーザーの手や衣服にトナーが付着した場合にも、ユーザーの嫌悪感を軽減できる導電体の表面形状認識装置を提供することを第1の目的とするものである。
また、本発明は、導電体の表面形状に応じた形状情報の作成を容易に行うことができる導電体の表面形状認識装置を提供することを第2の目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決して、前記第1の目的を達成するために、請求項1記載の導電体の表面形状認識装置は、媒体に読み取り情報を保持させ、該読み取り情報を予め格納した固有情報と照合して認証を行う認証システムに用いられ、前記媒体を装置内部で搬送させる搬送手段と、前記媒体を前記装置内部で帯電させる帯電手段と、前記導電体の表面形状に対応する読み取り情報として保持された前記媒体上に形成された静電潜像を、前記装置内部でトナーにより現像してトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記装置内部で前記トナー像の形状情報を作成する情報作成手段と、前記形状情報を出力する出力手段とを有するものにおいて、前記トナーを白色トナーまたは透明トナーとしたことを特徴とするものである。
【0011】
また、前記第2の目的を達成するために、請求項2記載の導電体の表面形状認識装置は、前記媒体が、平板状の基材と、この基材の一部に形成され、導電層と誘電層とを少なくとも備える静電潜像形成部とを備えており、前記基材の少なくとも前記静電潜像形成部の周囲の色を、黒色または濃度の濃い色としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る導電体の表面形状認識装置によれば、一旦、媒体に導電体の表面形状に応じた静電潜像が、読み取り情報として安定して形成され保持され、装置内部で静電潜像に応じたトナー像が形成されて導電体の表面形状が可視化される。
この際、トナー像形成手段に用いられるトナーの色を白色または透明としたので、トナー像のクリーニングが不十分な状態で媒体がユーザーに返却され、ユーザーの手や衣服にトナーが付着したとしても、トナー像形成手段に用いられるトナーの色を黒色とした場合に比べてユーザーの嫌悪感を大幅に軽減することができる。
【0013】
また、請求項2に係る導電体の表面形状認識装置によれば、トナー像形成手段に用いられるトナーの色を白色または透明とすると共に、媒体の基材の少なくとも静電潜像形成部の周囲の色を、黒色または濃度の濃い色としたので、CCD等により導電体の表面形状に応じた形状情報を作成する場合に、形成されたトナー像と媒体の基材の色との間のコントラストを強くすることができると共に、基材からの光の乱反射を抑えることができるので、鮮明なトナー像が得られ、形状情報の作成を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1から図6は本発明を適用した表面形状認識装置の実施形態を示すものであり、図1は、表面形状認識装置1のブロック図を、図2から図6は、表面形状認識装置1の各部概略構成をそれぞれ示している。
【0015】
図1において、表面形状認識装置1は、挿入口と排出口を兼ねるスロット2が形成されたケース3を有しており、このケース3の内部に、クリーニング手段4、除電手段5、帯電手段6、トナー像形成手段7、形状情報作成手段8、制御手段9の各手段が設けられている。
これら各手段には図示しない電源により所定の電圧が必要に応じて適宜印加される。
また後述するカード(媒体)10が、クリーニング手段4、除電手段5、帯電手段6、トナー像形成手段7及び形状情報作成手段8を通過できるように搬送手段21が設けられている。
【0016】
クリーニング手段4、除電手段5、帯電手段6、トナー像形成手段7、形状情報作成手段8及び搬送手段21は、それぞれライン22〜27で制御手段9と接続されており、この制御手段9により、クリーニング手段4、除電手段5、帯電手段6、トナー像形成手段7、形状情報作成手段8及び搬送手段21の作動が制御される。
また28は図示しないホストコンピュータに設けられた中央演算装置であり、この中央演算装置28は、ライン29を介して形状情報作成手段8と、ライン30を介して制御手段9と接続されている。
この中央演算装置28には、固有情報としてのユーザーの指紋情報が格納されている。
【0017】
図2は、クリーニング手段4の概略構成図であり、このクリーニング手段4には、搬送手段21上を図において左右方向に搬送されてくるカード10の表面に摺接されるファーブラシローラ41、このファーブラシローラ41に当接されるバイアスローラ(回収ローラ)42、及びこのバイアスローラ42の外周に当接され、ウレタンゴム等からなるクリーニングブレード43が設けられている。
また図2の矢印Aで示されるように、クリーニング手段4は、クリーニング時のみカード10と接触し、クリーニングを行わない時はカード10から離れるように上下に移動する構造とされている。
【0018】
図3は、除電手段5の概略構成図であり、除電ブラシ44の先端部44aが、搬送手段21上を図において左右方向に搬送されてくるカード10の表面から1mmから4mmの位置となるように設けられてAC除電器を構成している。
【0019】
図4は、帯電手段6の概略構成図であり、下面が開口されている筐体45の内部空間に、帯電装置としての帯電ローラ46が、金属シャフト47により回転可能に軸支されていると共に、この金属シャフト47の両端は筐体45に回転可能に支持されている。
【0020】
この帯電ローラ46は、金属シャフト47に、導電性ゴムローラ46aを被覆することにより、導電性弾性体ローラとして構成される。
この導電性ゴムローラ46aの体積抵抗は、好適には10〔Ωcm〕から10〔Ωcm〕とされており、含有されるカーボンの量を調整してかかる体積抵抗値に調整されたウレタン系、シリコン系、エピクロヒドリン系の材料が使用される。
なお、導電性ゴムローラ46aの材料として、体積抵抗値が10〔Ωcm〕から10〔Ωcm〕の樹脂を被覆しても差し支えない。この場合、ナイロン(登録商標)系、ウレタン系、テフロン(登録商標)系等の材料が適宜使用される。
上記導電性ゴムローラ46aの抵抗値が10〔Ωcm〕より小さいと、カード上の誘電体部との間で電圧が印加されたときに電流のリークが発生する場合がある。このときは、該誘電体層にピンホールが発生することになる。また上記導電性ゴムローラ46aの体積抵抗値が10〔Ωcm〕より大きい場合は、カード上の誘電体部との間で電圧が印加されたときに抵抗が高すぎて誘電体層を帯電させるのが困難になる。
【0021】
筐体45の下端面45a,45aには、一対のカム48,48が軸49により回転可能に軸支されて対向配置されており、筐体45は、カム48,48に連動して上下方向に移動自在とされている。
このカム48,48には、下端面45a,45aに当接される第1のカム面48a,48a及び第2のカム面48b,48bが形成されている。
【0022】
図4(a)及び(b)に示されるように、下端面45a,45aが、第1のカム面48a,48aと当接されて最下部に位置されている場合には、帯電ローラ46が、カード10に当接して回転される。
このとき帯電ローラ46は、弾性を有する導電性ゴムローラ46aによって、カード10と安定して接触することができ、帯電ローラ46には所定の電圧が印加されて、カード10の表面が一様かつ均一に帯電される。
【0023】
また、図4(c)及び(d)に示されるように、軸49が図示しないモータ等により回転させられ、下端面45a,45aが、第2のカム面48b,48bと当接されて最上部に位置されている場合には、帯電ローラ46はカード10から離間させられ、カード10の帯電は行われない。
【0024】
図5は、トナー像形成手段7の概略構成図であり、このトナー像形成手段7は、現像ローラ61、現像ローラ61上のトナーを薄層化する現像ブレード63、現像ローラ61にトナーを供給するトナー供給ローラ64で構成される接触の1成分現像器である。
白色トナー62には、負帯電性の非磁性1成分系のトナーが用いられている。
【0025】
ここで、本実施の形態においては、従来の黒色のトナー105に代えて、樹脂に白色顔料(酸化チタン)等の添加剤を添加して合成された非磁性1成分系の白色トナー62が用いられている。
この白色トナー62を構成する樹脂としては、結着材として汎用されるものであれば特に限定されるものでなく、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリオレフイン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等の熱可塑性樹脂、または、尿素樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂等の熱硬化性樹脂ならびにこれらの重合体等も使用可能である。
【0026】
白色トナー62の添加剤としては、二酸化チタンに代表される白色顔料、結着樹脂等を用いることができる。
白色顔料としては、二酸化チタンの他に亜鉛華、アンチモン白、硫化亜鉛等が挙げられ、これらを二酸化チタンと組み合わせて使用しても良い。
二酸化チタンとしては、硫酸法、塩酸法、気相法等いずれの方法により製造されたものでも良く、結晶型はアナタ−ゼ型、ルチル型、あるいはブルカイト型いずれの結晶型のものでも使用可能である。
白色顔料としては、粒径が0.05〜0.5μm、好ましくは0.1〜0.4μmのものが好適である。
【0027】
また、白色トナー62には、さらに荷電制御剤を添加させてもよい。
荷電制御剤としては、摩擦帯電により正または負の荷電を与え得るものが用いられ、正荷電制御剤としては、例えば、ポリアミン化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。
また、負荷電制御剤としては、クロム錯塩、亜鉛錯塩等が挙げられる。
更に、白色トナー62には、流動性の向上のために、シリカ、酸化アルミニウム、二酸化チタン、フッ化マグネシウム等の流動化剤を単独で、または、これらを組み合わせて添加しても良い。
【0028】
図6は、形状情報作成手段8の概略構成図であり、この形状情報作成手段8は、読み取りレンズ65、CCDセンサ66で構成されている。
読み取りレンズ65としては、2f系、4f系等を用いることができる。
またCCDセンサ66としては、例えば表面形状認識の対象が大きさ約1インチ角(25.4mm×25.4mm)で表現可能な指紋の場合には、512×512画素程度(約500DPI)のもので十分と考えられるが、更に画素数を増やしても構わない。
【0029】
図7は、表面形状認識装置1に用いられるカード10の構造図であり、このカード10は、指紋に関する読み取り情報を保持し、予め登録されているカード保有者の指紋に関する固有情報と、前記読み取り情報を照合する認証システムに用いられるものである。
【0030】
このカード10は、略平板状の薄板から形成された基材67と、この基材67の基材表面67aに塗布された導電層69と誘電層70とオーバーコート層71とから構成される静電潜像形成部68とを備えている。
基材67は、本実施の形態においては、硬さ、強度及び剛性の観点からポリエチレンテレフタレート(PET)から形成されており、カード10の汎用性を考慮して、銀行のキャッシュカードや信販会社のクレジットカード等と同様に、幅54mm、長さ86mm、厚さ0.75mmの諸寸法を有している。
【0031】
静電潜像形成部68は、上述のように、基材67の基材表面67aに導電層69と誘電層70とオーバーコート層71とにより構成されており、これら導電層69と誘電層70とオーバーコート層71とは、一般に、所定の添加材料と結着樹脂とを溶媒に分散または溶解して調製された塗工液を基材67上に塗布する方法により形成される。
静電潜像形成部68の大きさは、表面形状認識の対象が例えば指紋である場合には、図7(a)の平面視で約1インチ角(25.4mm×25.4mm)が好適であり、本実施の形態においては、基材表面67aの4箇所の角部のうちの一箇所に近接して配置されている。
なお、この静電潜像形成部68の基材表面67aにおける位置は、これに限定されるものではなく、基材表面67aの中央近辺に設けても構わない。
【0032】
導電層69としては、金、アルミ等の導電性金属の蒸着層を用いることができるほか、金属及びその酸化物、窒化物、塩、合金、更にはカーボン等の導電性材料等を含有した樹脂層としても良い。
誘電層70としては、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂等の各種樹脂材料が挙げられる。
【0033】
また、オーバーコート層71は必ずしも必要なものではないが、フッ素樹脂粒子と結着樹脂とを含有する溶液を塗布することにより形成される。
フッ素樹脂粒子の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン等が、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
フッ素樹脂粒子を分散する結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0034】
そして、本実施の形態においては、基材表面67aのうち、図7の一点鎖線で示される静電潜像形成部68を囲繞する領域67bの色は、黒色とされている。
【0035】
次に、上述した表面形状認識装置1とカード10により、本実施形態における表面形状認識がどのように行われるかを図8のフローに基づいて説明する。ここで図8においては、中央の点線部を境界とし、左側が表面形状認識装置1の外部で実行されるステップ、右側が表面形状認識装置1の内部で実行されるステップを示している。
【0036】
ステップS1で、カード10が、スロット2より挿入され、搬送手段21上に載置される。
【0037】
カード10は、搬送手段21によりクリーニング手段4と対向する位置まで搬送され、このカード10の静電潜像形成部68に対してステップS2のプレクリーニングが行われる。
この際クリーニング手段4においては、ファーブラシローラ41及びバイアスローラ42のそれぞれに、図示しない別々の外部電源によってバイアス電圧が印加されており、プラス側の端子がそれぞれファーブラシローラ41及びバイアスローラ42に接続され、マイナス側の端子が接地されている。
外部電源により、ファーブラシローラ41に印加される電圧は、通常マイナスに帯電している静電潜像形成部68とは反極性のプラス300Vからプラス400Vの電圧が印加されている。
一方、図示しない別の外部電源によりバイアスローラ42に印加されるバイアス電圧は、ファーブラシローラ41に印加される電圧より高くプラス500からプラス600Vに設定されている。
かかる電圧の極性の違いと大小関係により、静電潜像形成部68のマイナス極性を有する汚れは、バイアスローラ42に集められ、クリーニングブレード43によって除去される。
【0038】
次に、カード10は、搬送手段21により除電手段5と対向する位置まで搬送され、このカード10に対してステップS3のプレ除電が行われる。
除電手段5においては、図示しない外部電源が接続されて±100V〜±1000V程度のAC電圧が印加されることで、カード10表面の除電が行われる。
【0039】
次に、カード10は、搬送手段21により帯電手段6と対向する位置まで搬送され、このカード10に対してステップS4の帯電が行われる。
帯電手段6においては、図示しないモータ等により、カム48,48が、最下部に位置させられ、帯電ローラ46がカード10に当接させられる(図4(a)及び(b)参照。)。
【0040】
そして、図示しない外部高圧電源から金属シャフト47に電圧が印加され、導電性ゴムローラ46aはカード10と摺接しながらカード10を帯電させる。
具体的には、金属シャフト47には、外部高圧電源からマイナス1250V程度の電圧が印加されており、カード10の表面はマイナス約700Vに帯電されている。
なお、本実施例では、金属シャフト47にマイナスの電圧を印加することにより、カード10をマイナスに帯電させているが、金属シャフト47に印加する電圧の極性は、プラスあるいはマイナスのいずれであっても構わない。
このような帯電ローラ方式により帯電を行う場合、金属シャフト47に印加する電圧の極性に拘わらずオゾンの放出を非常に少なくすることができるので、オゾンフィルター等を別途設ける必要がない。
【0041】
ステップS4の帯電が行われた後、カード10は一旦スロット2から外部に排出される(ステップS5)。
この際、クリーニング手段4は前述の通りカード10から離れる位置まで移動されており、また除電手段5は制御手段9によりオフ状態とされる。
またカード10を全部排出する必要はなく、静電潜像形成部68が外部に露出すれば十分である。
【0042】
そしてステップS6で、ユーザーが静電潜像形成部68上に指紋を押下することにより、静電潜像形成部68の表面には指紋(導電体の表面形状)に応じた静電潜像が形成される。
すなわち指紋は、皮膚の汗腺が突起した模様であり、連続した突起状の表面形状であるので、ユーザーが指を静電潜像形成部68に押下するように接触させるとき、微細に見るとこの突起状の部分が静電潜像形成部68と接触している。
【0043】
また、指は導電体であるので、帯電手段により約マイナス700Vに帯電している静電潜像形成部68の表面の電荷は、指との接触部分のみを通じてアースに流れることになる。
この結果、静電潜像形成部68においては、当該接触部分のみの電荷が失われ、表面に指紋状の静電潜像が形成される。ちなみに本出願人の実験結果によると、指の突起状の部分が接触した箇所の電位は、当初の約マイナス700Vに対し、マイナス100Vから0Vに低下していた。
なおこのステップでは、ユーザーに指紋を押下させる際、必要に応じて指紋の押下を促すための音声や文字表示等によるガイダンスが行われる。
【0044】
この後、カード10は、再度スロット2より表面形状認識装置1内に挿入され(ステップS7)、搬送手段21によりトナー像形成手段7と対向する位置まで搬送され、このカード10に対してステップS8のトナー像形成が行われる。
この際、クリーニング手段4は、カード10から離れる位置まで移動されており、また除電手段5、帯電手段6は、制御手段9によりオフ状態とされており、再度挿入されたカード10は、クリーニング、除電、帯電の各工程をスキップしてトナー像形成手段7に至る。
【0045】
トナー像形成手段7においては、現像ローラ61に図示しない外部電源が接続されており、この現像ローラ61はカード10の進行方向と同じ方向に回転されている。
トナー供給ローラ64は、現像ローラ61と接触して回転されながら、現像ローラ61に白色トナー62を供給している。
なお、トナー供給ローラ64の回転方向は現像ローラ61と同方向でも反対方向でも構わない。
現像ローラ61は、カード10の静電潜像形成部68と接触される。
静電潜像形成部68上に形成された指紋の静電潜像は、これにより現像されてトナー像Tとなり可視化される。
このとき、本実施の形態においては、白色トナー62を用いているため、得られるトナー像Tも白色となる。
【0046】
トナー像Tが形成されて可視化される流れをより具体的に説明すると、現像ローラ61は、図示せぬ外部高圧電源と接続されており、約マイナス300Vの電圧が印加されている。
また、トナー供給ローラ64は、図示せぬ外部高圧電源と接続されており、約マイナス450Vの電圧が印加されている。
白色トナー62は、トナー像形成手段7のフレーム内に蓄えられており、トナー供給ローラ64の回転によって機械的に現像ローラ61に付着するようになっている。
また、トナー供給ローラ64に印加されている電圧は、現像ローラ61に印加されている電圧よりマイナス側で絶対値が大きいので、白色トナー62は、現像ローラ61に吸着されるようになっている。
吸着された白色トナー62は、現像ローラ61に圧接して取り付けられている薄板状の現像ブレード63により薄層化される。
【0047】
ここでカード10が現像ローラ61と接触すると、静電潜像形成部68において、指の突起状の部分が接触した箇所の電位は、前述の通り、マイナス100Vから0Vであるので、現像ローラ61に付着している白色トナー62は、静電潜像形成部68側に移動し、現像が行われる。
一方、静電潜像形成部68において、指の突起状の部分が接触しなかった箇所の電位はマイナス約700Vのままであるので、カード10が現像ローラ61と接触しても、現像ローラ61に付着している白色トナー62は、静電潜像形成部68側に移動しないので、現像は行われない。
以上のようにして、カード10の静電潜像形成部68には、指紋(表面形状)に応じた白色のトナー像Tが形成される。
【0048】
次にカード10は、搬送手段21により形状情報作成手段8と対向する位置まで搬送され、このカード10に対してステップS9の形状情報作成が行われる。
形状情報作成手段8において、前記トナー像TはCCDセンサ66により読み取られ、ユーザーの指紋の形状に応じた画像信号が電気信号に変換される。
このとき、本実施の形態においては、基材表面67aの領域67bの色が黒色とされていると共に白色のトナー像Tが形成されるので、形成されたトナー像Tと領域67bとの間のコントラストを強くすることができる。
【0049】
従って、CCDセンサ66からは、モノクロの画像信号がダイレクトに得られるので、この画像信号画像を2値化(白黒化)するときに周囲の照明に気を使う必要が無い。
具体的には、静電潜像形成部68に押下された指紋のみが白色トナー62で現像され、周囲の照明により領域67bとのコントラストの強い鮮明なトナー像Tが得られる。
また、媒体10の基材の表面の色を黒色又としたので、照明の明るさを強くしても基材からの光の反射が少なく、また、照明の角度が変わっても光の乱反射が抑えられる。
更に、周囲の照明の色が変化しても、媒体10の基材の表面の色を黒色又としたので、照明の色によらずに光の反射は少なく、仮に、現像された白色のトナー像Tが照明の色の変化による影響を受けたとしても、画像を2値化したときのコントラストが弱くなることはない。
【0050】
このユーザーの指紋の形状に応じた電気信号は、ライン29を通じて中央演算装置28に出力され(ステップS10)、この中央演算装置28に予め登録されているユーザーの指紋の固有情報と照合される。
そして照合結果の一致、不一致により、当該ユーザーがカード10の真の所有者であるか否かが判別される。
【0051】
一方、ステップS10の電気信号出力を終えた後、カード10は、搬送手段21によりクリーニング手段4と対向する位置まで戻され、このカード10の静電潜像形成部68に対してステップS11のポストクリーニングが行われる。
このポストクリーニングの内容も、前述したプレクリーニング(ステップS2)とほぼ同様であるが、このとき静電潜像形成部68はマイナス極性を有しており、静電潜像形成部68に残存するトナーもマイナス極性を有している。
【0052】
したがって、前述の通り、静電潜像形成部68の表面電位とファーブラシローラ41の表面電位の電圧の極性の違い、ファーブラシローラ41に印加されているバイアス電圧、バイアスローラ42に印加されるバイアス電圧の大小関係により、静電潜像形成部68に残存するマイナス極性の白色トナー62は、バイアスローラ42に集められ、クリーニングブレード43によって除去される。
【0053】
次にカード10は、搬送手段21により除電手段5と対向する位置まで戻され、このカード10に対してステップS12のポスト除電が行われる。このポスト除電の内容は、前述したプレ除電(ステップS3)と同様であるので説明を省略する。
【0054】
そしてカード10は、スロット2から外部に排出され(ステップS13)、ユーザーに返却されて繰り返し使用される。
【0055】
この実施形態の表面形状認識装置により検出された指紋の一例を図9に示す。
この図9に示す画像は、この実施形態に基づいて、カード10をプレクリーニング、プレ除電及び帯電させ、実際にカード10の静電潜像形成部68に指紋を押下した後、トナー像形成手段7で静電潜像形成部68に白色トナー62を付着させ、形成されたトナー像Tをテープで剥離させて、黒紙に貼り付け、デジタルカメラで撮影した画像である。
指紋の形状が非常に鮮明に検出されていることがわかる。
【0056】
本実施の形態によれば、トナー像形成手段7に用いられるトナーを白色トナー62とすると共に、カード10の静電潜像形成部68の周囲を囲繞する領域67bの色を黒色としたので、トナー像Tのクリーニングが不十分な状態でカード10がユーザーに返却され、ユーザーの手や衣服に白色トナー62が付着したとしても、ユーザーの嫌悪感を大幅に軽減することができる。
また、本実施の形態によれば、トナー像形成手段7に用いられるトナーを白色トナー62とすると共に、カード10の静電潜像形成部68の周囲を囲繞する領域67bの色を黒色としたので、CCDセンサ66により指紋の形状に応じた形状情報を作成する場合に、形成されたトナー像Tと領域67bとの間のコントラストを強くすることができ、形状情報の作成を容易に行うことができる。
【0057】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限られるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能なものである。
具体的には、トナーをカード10上に定着させる必要は無いため、白色トナー62に代えて、従来のトナー105から黒色顔料を抜いた非磁性1成分系の透明トナーとしても、光を乱反射させれば、トナー像Tの見た目は白くすることができ、形状情報の作成を行うことは可能である。
従って、透明トナーを用いても、ユーザーの嫌悪感を軽減することができる。
【0058】
また、上述した実施の形態においては、カード10の領域67bを黒色としたが、濃度の濃い色であれば良い。
ここで、「濃度の濃い色」とは、Macbeth社製の濃度計(型名:RD918)において、測定値が1.0以上である色をいう。
また、上述した実施の形態においては、領域67bのみを黒色としたが、基材表面67aの全体を黒色または濃度の濃い色としても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態による表面形状認識装置1のブロック図である。
【図2】表面形状認識装置1のクリーニング手段4の概略構成図である。
【図3】表面形状認識装置1の除電手段5の概略構成図である。
【図4】表面形状認識装置1の帯電手段6の概略構成図である。
【図5】表面形状認識装置1のトナー像形成手段7の概略構成図である。
【図6】表面形状認識装置1の形状情報作成手段8の概略構成図である。
【図7】表面形状認識装置1と共に用いられるカード10の構造を説明する図であって、(a)は平面図、(b)は正面図を示すものである。
【図8】表面形状認識装置1による表面形状認識のフロー図である。
【図9】表面形状認識装置1により検出された指紋の一例を示す図である。
【図10】従来のトナー像形成手段101の概略構成図である。
【符号の説明】
【0060】
1 表面形状認識装置
4 クリーニング手段
5 除電手段
6 帯電手段
7 トナー像形成手段
8 形状情報作成手段
9 制御手段
10 カード(媒体)
62 白色トナー
67 基材
67b 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に読み取り情報を保持させ、該読み取り情報を予め格納した固有情報と照合して認証を行う認証システムに用いられ、前記媒体を装置内部で搬送させる搬送手段と、前記媒体を前記装置内部で帯電させる帯電手段と、前記導電体の表面形状に対応する読み取り情報として保持された前記媒体上に形成された静電潜像を、前記装置内部でトナーにより現像してトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記装置内部で前記トナー像の形状情報を作成する情報作成手段と、前記形状情報を出力する出力手段とを有する導電体の表面形状認識装置において、
前記トナーを白色トナーまたは透明トナーとしたことを特徴とする導電体の表面形状認識装置。
【請求項2】
前記媒体が、平板状の基材と、この基材の一部に形成され、導電層と誘電層とを少なくとも備える静電潜像形成部とを備えており、
前記基材の少なくとも前記静電潜像形成部の周囲の色を、黒色または濃度の濃い色としたことを特徴とする請求項1に記載の導電体の表面形状認識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−255325(P2006−255325A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−80464(P2005−80464)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000180128)山梨電子工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】