説明

導電性インク組成物、及びそれを用いて製造された電気的導通部位

【課題】空隙が少なく、膜密度が高い電気的導通部位内部が形成可能で、且つ有機基材を利用できる温度で電気的導通部位の形成が可能な導電性インク組成物、及びそれを用いて製造された電気的導通部位を提供する。
【解決手段】金属粉末、配位性化合物、及びギ酸銅粒子を含有する導電性インク組成物であって、金属粉末が、平均粒子径比が金属粒子(B)/金属粒子(A)=0.10〜0.45倍の範囲にある金属粉末を含むことを特徴とする導電性インク組成物、及びそれを基材に塗布又は充填し、当該基材を加熱処理することで製造された電気的導通部位。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性インク組成物及びそれを用いて製造された電気的導通部に関する。本発明の導電性インクは、エレクトロニクス分野で配線基板の回路パターン形成用材料として好適に用いることができ、本発明の導電性インク組成物を用いることにより良好な導電性を有し膜密度の高い電気的導通部を得ることができる。
【背景技術】
【0002】
近年、省コストや低環境負荷への観点から、スクリーン印刷等の印刷法で導電性インクを所望のパターンに印刷し、回路基板における配線や電極等の電気的導通部位を形成する技術が注目を集めている。
【0003】
導電性インクとしては、金属粒子をペースト化した金属ペーストが検討されている。金属ペーストとは、一般的には、金属粒子、バインダー樹脂、及び溶剤を混合しペースト状にしたものであり、バインダー樹脂の硬化収縮等により、金属粒子相互を物理的に接触させ、電気的導通を発現させるものである(例えば、特許文献1参照)。しかし、このような金属ペーストでは一般的に、粒径が10〜100μm程度の銅粒子を利用しているため、形成した電気的導通部位の内部には空隙が多く、膜密度が低いという問題があった。膜密度が低いと抵抗が高いばかりでなく、大気中に存在する水や酸素が導体中を拡散しやすく、電気的導通部位を形成する金属粒子が酸化されたり、マイグレーション現象により、金属イオンの拡散や粒成長が起こり、回路ショートを引き起こす可能性がある。ここで、エレクトロマイグレーションとは、電界の影響で、金属成分(例えば、配線や電極に使用した金属)が非金属媒体(例えば、絶縁物)の上や中を横切って移動する現象である。
【0004】
そこで、電気的導通部位の膜密度を向上させるための検討が行われている。
【0005】
例えば、金属粉末、ガラスフリット、および有機ビヒクルを主成分とする導電性ペーストであって、前記金属粉末は、1次粒子の平均粒子径(D)が0.5〜10μmの略球状粒子(A)と、1次粒子の平均粒子径(D)が0.1μm以上、(D×0.25)μm未満である略球状粒子(B)と、1次粒子の平均粒子径が50nm以下の略球状粒子(C)を主成分とし、かつガラスフリットの配合量は、ガラスフリットと金属粉末の合計値に対して0.1重量%以上、15重量%以下であることを特徴とする導電性ペーストが提案されている。(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2の方法では、3種類の球状粒子を組み合わせ、最密充填された平均粒子径の大きい球状粒子(A)の隙間を粒径の小さい球状粒子(B)で埋め、さらに球状粒子(A)と(B)の隙間を、粒径がより小さい球状粒子(C)で埋めることで充填密度を向上させ、高導電性を達成している。しかし、この導電性ペーストでは、加熱処理に必要な温度が450℃以上であるため、適応できる基材が限られ、特に有機基材への適応は困難である。
【0007】
一方、膜密度が高い電気的導通部位の形成方法として、金属粒子を基板に塗布し、金属粒子層を形成させた後、得られた基材を更に無電解銅メッキする方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。この方法では基板に塗布された、金属粒子が触媒となり、銅メッキが効率よく進行する。
【0008】
しかしながら、このような方法では電気的導通部位形成に係る工程数が、従来のメッキ法と同様に多く、また、省資源、低コスト、低環境負荷といった導電性インクを利用するメリットを生かすことができない。
【0009】
以上のように従来の方法は、いずれも十分なものとは言えず、工業的な実用化を図るために更なる検討が要望されていた。すなわち、内部の空隙が少なく、膜密度が高い電気的導通部位が形成可能で、且つ有機基材を利用できる温度で電気的導通部位の形成が可能な導電性インク組成物、及びそれを用いて製造された電気的導通部位の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平1−167385号公報
【特許文献2】特開2006−196246号公報
【特許文献3】特開2006−225712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記した背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気的導通部位を形成するための導電性インク組成物において、内部の空隙が少なく、膜密度が高い電気的導通部位が形成可能で、且つ有機基材を利用できる温度で電気的導通部位の形成が可能な導電性インク組成物、及びそれを用いて製造された電気的導通部位を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、金属粉末、配位性化合物、及びギ酸銅粒子を含有する導電性インク組成物であって、金属粉末が、平均粒子径比が金属粒子(B)/金属粒子(A)=0.10〜0.45倍の範囲にある金属粉末を含むことを特徴とする導電性インク組成物を見出した。そしてこの導電性インク組成物は、内部の空隙が少なく、膜密度が高い電気的導通部位が形成可能で、且つ有機基材を利用できる温度で電気的導通部位の形成が可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりの導電性インク組成物、及びそれを用いて製造された電気的導通部位に関するものである。
[1]金属粉末、配位性化合物、及びギ酸銅粒子を含有する導電性インク組成物であって、金属粉末が、平均粒子径比が金属粒子(B)/金属粒子(A)=0.10〜0.45倍の範囲にある金属粉末を含むことを特徴とする導電性インク組成物。
[2]金属粒子(A)及び/又は金属粒子(B)が、金粒子、銀粒子、銅粒子、白金粒子、パラジウム粒子、ニッケル粒子、スズ粒子、及び銀コート銅粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする上記[1]に記載の導電性インク組成物。
[3]金属粒子(A)の平均粒子径が、0.1〜10μmの範囲であり、金属粒子(B)の平均粒子径が0.01〜4.5μmの範囲であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の導電性インク組成物。
[4]金属粉末全量に対し、金属粒子(A)の重量濃度が70〜99重量%の範囲であり、金属粒子(B)の重量濃度が1〜30重量%の範囲であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の導電性インク組成物。
[5]配位性化合物が、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、下記一般式(1)で示されるアルコキシアミン、及び下記一般式(2)、又は(3)で示されるアルカノールアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の導電性インク組成物。
【0014】
【化1】

【0015】
[R、Rは各々独立して、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、Rは炭素数1〜6の直鎖状、炭素数3〜6の分岐状若しくは環式のアルキル基を表し、Xはメチレン基、エチレン基を表す。]
【0016】
【化2】

【0017】
[R、Rは各々独立して、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、R、Rは各々独立して、水素原子、メチル基を表し、Yはメチレン基、エチレン基を表す。]
【0018】
【化3】

【0019】
[R、Rは各々独立して、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、Zはメチレン基、エチレン基を表す。]
[6]配位性化合物が、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、ホモピペラジン、ヘキサメチレンイミン、2−メトキシエチルアミン、N,N−ジメチル−2−メトキシエチルアミン、2−エトキシエチルアミン、N,N−ジメチル−2−エトキシエチルアミン、2−n−プロポキシエチルアミン、N,N−ジメチル−2−n−プロポキシエチルアミン、2−n−ブトキシエチルアミン、N,N−ジメチル−2−n−ブトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−エトキシプロピルアミン、3−n−プロポキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−n−プロポキシプロピルアミン、3−n−ブトキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−n−ブトキシプロピルアミン、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N,N−ジメチル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジエチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、4−アミノ−1,2−ブタンジオール、及び4−(ジメチルアミノ)−1,2−ブタンジオールからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載の導電性インク組成物。
[7]ギ酸銅粒子の平均粒子径が、0.01〜5μmの範囲であることを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれかに記載の導電性インク組成物。
[8]導電性インク組成物全量に対し、金属粉末の濃度が1〜98重量%、配位性化合物の濃度が1〜80重量%、及びギ酸銅粒子の濃度が1重量%〜80重量%の範囲であることを特徴とする上記[1]〜[7]のいずれかに記載の導電性インク組成物。
[9]さらに希釈剤を含有することを特徴とする上記[1]〜[8]のいずれかに記載の導電性インク組成物。
[10]導電性インク組成物の粘度が、1〜1000Pa・sの範囲であることを特徴とする上記[1]〜[9]のいずれかに記載の導電性インク組成物。
[11]上記[1]〜[10]のいずれかに記載の導電性インク組成物を、基材に塗布又は充填し、当該基材を加熱処理することで製造することを特徴とする電気的導通部位。
[12]基材が、樹脂、紙、ガラス、シリコン系半導体、化合物半導体、金属酸化物、金属窒化物、及び木材からなる群より選ばれる一種、又は二種以上の複合基材であることを特徴とする上記[11]に記載の電気的導通部位。
[13]加熱処理の温度が60〜300℃の範囲であることを特徴とする上記[11]又は[12]に記載の電気的導通部位。
[14]非酸化性雰囲気で加熱処理を行うことを特徴とする上記[11]〜[13]のいずれかに記載の電気的導通部位。
【発明の効果】
【0020】
本発明は以下に示す効果を奏する。
【0021】
(1)本発明の導電性インク組成物は、加熱処理後に形成される電気的導通部位の膜密度が高く、導電性に優れるほか、塗布又は充填、加熱といった簡便な方法で、導電性パターン等の電気的導通部位を形成することが可能であるため、省エネルギー、低コスト、低環境負荷を達成でき、工業的に極めて有用である。
【0022】
本発明の導電性インク組成物は、基材として樹脂を利用できる温度で、電気的導通部位の形成が可能であり、汎用性に優れる。
【0023】
また、本発明の導電性インク組成物は、導電体前駆体としてのギ酸銅粒子を含有し、これが電気的導通部位の成分である金属銅となるため、銅の優れた特性を有する電気的導通部位を形成可能である。
【0024】
さらに、本発明の導電性インク組成物は、金属濃度が高く、膜厚を厚くするための塗り重ねが不要、若しくは回数を削減でき、作業効率に優れる。また、塗布後加熱時の粘度変化、表面張力変化の影響が少ないため、塗布時と加熱後の配線幅や配線形状の変化が小さく寸法精度が優れる。
【0025】
さらに、本発明の導電性インク組成物は、必要に応じて希釈剤を含有させることで、所望する粘度に容易に調整できるため、スクリーン印刷法によるパターン形成が可能である。
【0026】
(2)本発明の電気的導通部位は、本発明の導電性インク組成物を用いることにより、電気的導通部位の形成工程において、水素を含む還元雰囲気を必要とせず、窒素等の不活性雰囲気下での加熱で電気的導通部位形成が可能であり、安全性に優れる。
【0027】
また、本発明の電気的導通部位は、基材として樹脂を利用できる温度で形成が可能であり、汎用性に優れる。
【0028】
さらに、本発明の電気的導通部位は、内部の空隙が少なく、膜密度が高いため、低抵抗であり、耐酸化性、耐マイグレーション性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
【0030】
本発明の導電性インク組成物は、金属粉末、配位性化合物、及びギ酸銅粒子を含む組成物であって、金属粉末が、平均粒子径比が金属粒子(B)/金属粒子(A)=0.10〜0.45倍の範囲にある金属粉末を含むことを特徴とする導電性インク組成物である。
【0031】
本発明の導電性インク組成物において、金属粉末は、フィラーとして機能し、オーミックコンタクトにより導電性を発現することはもとより、塗布後加熱時の粘度変化、表面張力変化を抑制し、塗布時と加熱処理後の電気的導通部位の形状変化を低減する。さらに、金属粉末は、加熱処理した際に、ギ酸銅粒子中に含まれる銅イオンの還元を促進する触媒の役割も果たし、その結果として、処理温度を低下させ、処理時間を短縮させることができる。
【0032】
本発明の導電性インク組成物において、金属粉末が、平均粒子径比が金属粒子(B)/金属粒子(A)=0.10〜0.45倍の範囲にある金属粉末を含むことを特徴とする。このように平均粒子径の異なる2種類の金属粒子の組み合わせることで、電気的導通部位を形成した際に、その導電膜中において、大きい金属粒子(A)の間に粒径の小さい金属粒子(B)が充填され、金属粒子(A)の隙間を埋めることができ、金属粒子(A)又は、金属粒子(B)をそれぞれ単一で用いる場合と比べて充填密度が向上する。
【0033】
金属粉末中の金属粒子(B)の平均粒子径は、金属粒子(A)の平均粒子径の0.10〜0.45倍の範囲である。金属粒子(B)の粒径が、金属粒子(A)の平均粒子径の0.45倍を超えて大きくなると、金属粒子(A)の最密充填構造が崩れ、粒子全体の充填密度が低くなる。また、金属粒子(B)の粒径が、金属粒子(A)の平均粒子径の0.1倍未満となると、金属粒子(B)の粒径が小さすぎ、金属粒子(A)の隙間を完全に埋めることができず、返って導電性が低下する。
【0034】
本発明の導電性インク組成物において、金属粉末は、金属粒子(A)、及び/又は金属粒子(B)に加え、更に平均粒子径の異なる1種以上の金属粒子を含んでも何ら差し支えない。尚、金属粒子(A)、及び/又は金属粒子(B)の平均粒子径の測定方法としては、一般的な測定方法を用いることができる。例えば、透過型電子顕微鏡(TEM),電界放射型透過電子顕微鏡(FE−TEM),電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等を適宜使用することができる。平均粒子径の値は、上記装置を用いて測定し、観測された視野の中から、粒子径が比較的そろっている箇所を3箇所選択し、粒径測定に最も適した倍率で撮影する。各々の写真から、一番多数存在すると思われる粒子を100個選択し、その直径をものさしで測り、測定倍率を除して粒子径を算出する。これらの値を算術平均することにより求めた。
【0035】
本発明の導電性インク組成物において、金属粒子(A)、及び/又は金属粒子(B)としては、特に限定するものではなく、例えば、金粒子、銀粒子、銅粒子、白金粒子、パラジウム粒子、ニッケル粒子、スズ粒子、及び銀コート銅粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属粒子を含有するものが挙げられる。これらの金属粒子は、単体であってもその他の金属との合金であっても差し支えない。中でもコスト面、入手の容易さ、導電性能の面から、銀粒子、銅粒子、及び銀コート銅粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。ここで銀コート銅粒子とは銀で表面が被覆(コーティング)された銅粒子を表す。
【0036】
本発明の導電性インク組成物において、金属粒子(A)、及び/又は金属粒子(B)としてこれら以外の金属粒子を使用しても差し支えないが、ギ酸銅粒子に含まれる銅イオンにより金属粒子が酸化を受けたり、触媒能が低下、又は発現しなかったりして、ギ酸銅粒子から金属銅への還元析出速度が低下するおそれがあるため、上記した金属粒子を使用することが望ましい。
【0037】
本発明の導電性インク組成物において、スクリーン印刷法で印刷する際にメッシュをインクが通過し印刷可能となること及び金属表面の活性が非常に高くなり、酸化されたり、溶解するおそれがないことから、金属粒子(A)の平均粒子径は、0.1〜10μmの範囲、金属粒子(B)の平均粒子径は0.01〜4.5μmの範囲であることが好ましい。
【0038】
本発明の導電性インク組成物において、金属粉末中の金属粒子(A)と金属粒子(B)の混合比としては、金属粒子同士の接触部をさえぎることもなく、金属粒子の隙間を十分に埋めることができることから、金属粉末全量に対し、金属粒子(A)の重量濃度が70〜99重量%の範囲、金属粒子(B)の重量濃度が1〜30重量%の範囲であることが好ましい。
【0039】
本発明の導電性インク組成物において、金属粒子(A)、及び/又は金属粒子(B)は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよく、特に限定されない。また、金属粒子の形状としては、特に限定はなく、球状、鱗片状、針状、樹枝状など任意の形状のものを用いることができる。公知の合成方法としては、例えば、機械的粉砕法、アトマイズ法、気相還元法、CVD法、PVD法、電解析出法、化学的還元法等が一般的に知られている。また、銀コート銅粒子の合成方法としては、例えば、銅粒子自体に銀をメッキさせる方法や、硝酸銀などの銀塩を銅粒子と混ぜ合わせて析出させる方法が、一般的に知られている。
【0040】
本発明の導電性インク組成物において、金属粒子(A)、及び/又は金属粒子(B)の純度としては、特に限定はなく、余りに低純度であると導電性薄膜とした際に、導電性に悪影響を与えるおそれがあるため、95%以上が好ましく、99%以上が特に好ましい。
【0041】
本発明の導電性インク組成物において、金属粉末は、上記した金属粒子(A)、及び金属粒子(B)を所望の混合比にて、混合することで、簡便に調製することができる。また、その混合の方法は公知の方法で行うことができ特に限定されない。
【0042】
本発明の導電性インク組成物において、配位性化合物は、金属粉末、ギ酸銅粒子の分散性の向上や、電気的導通部位形成時の銅イオンの還元反応を安定化させる効果を有する。
【0043】
本発明における配位性化合物は、金属粉末、及び/又はギ酸銅粒子に対して配位能を有する化合物であればよく、特に限定するものではなく、特に脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、下記一般式(1)で示されるアルコキシアミン、及び下記一般式(2)、又は(3)で示されるアルカノールアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0044】
【化4】

【0045】
[R、Rは各々独立して、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、Rは炭素数1〜6の直鎖状、炭素数3〜6の分岐状若しくは環式のアルキル基を表し、Xはメチレン基、エチレン基を表す。]
【0046】
【化5】

【0047】
[R、Rは各々独立して、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、R、Rは各々独立して、水素原子、メチル基を表し、Yはメチレン基、エチレン基を表す。]
【0048】
【化6】

【0049】
[R、Rは各々独立して、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、Zはメチレン基、エチレン基を表す。]
脂肪族アミンとしては、例えばエチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン等が挙げられ、芳香族アミンとしては、例えばピペリジン、ピリジン等が挙げられ、複素環式アミンとしては、例えばピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、ホモピペラジン、ヘキサメチレンイミン等が挙げられる。
【0050】
一般式(2)のRにおける炭素数1〜6の直鎖状アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられ、炭素数3〜6の分岐状アルキル基としては、例えばi−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、i−ペンチル基、sec−ペンチル基、t−ペンチル基、neo−ペンチル基、i−ヘキシル基等が挙げられ、炭素数3〜6の環式のアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0051】
具体的な一般式(1)で示される化合物としては例えば、2−メトキシエチルアミン、N−メチル−2−メトキシエチルアミン、N,N−ジメチル−2−メトキシエチルアミン、N−エチル−2−メトキシエチルアミン、N,N−ジエチル−2−メトキシエチルアミン、2−エトキシエチルアミン、N−メチル−2−エトキシエチルアミン、N,N−ジメチル−2−エトキシエチルアミン、N−エチル−2−エトキシエチルアミン、N,N−ジエチル−2−エトキシエチルアミン、2−n−プロポキシエチルアミン、N−メチル−2−n−プロポキシエチルアミン、N,N−ジメチル−2−n−プロポキシエチルアミン、2−n−ブトキシエチルアミン、N−メチル−2−n−ブトキシエチルアミン、N,N−ジメチル−2−n−ブトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、N−メチル−3−メトキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−メトキシプロピルアミン、N−エチル−3−メトキシプロピルアミン、N,N−ジエチル−3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、N−メチル−3−エトキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−エトキシプロピルアミン、N−エチル−3−エトキシプロピルアミン、N,N−ジエチル−3−エトキシプロピルアミン、3−n−プロポキシプロピルアミン、N−メチル−3−n−プロポキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−n−プロポキシプロピルアミン、3−n−ブトキシプロピルアミン、N−メチル−3−n−ブトキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−n−ブトキシプロピルアミン等が挙げられる。
【0052】
具体的な一般式(2)で示される化合物としては例えば、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N−メチル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N,N−ジメチル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、3−ヒドロキシプロピルアミン、N−メチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N−エチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジエチル−3−ヒドロキシプロピルアミン等が挙げられる。
【0053】
具体的な一般式(3)で示される化合物としては例えば、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、3−(メチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(エチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジエチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、4−アミノ−1,2−ブタンジオール、4−(メチルアミノ)−1,2−ブタンジオール、4−(ジメチルアミノ)−1,2−ブタンジオール、4−(エチルアミノ)−1,2−ブタンジオール、及び4−(ジエチルアミノ)−1,2−ブタンジオール等が挙げられる。
【0054】
これらの中でも配位性化合物としては、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、ホモピペラジン、ヘキサメチレンイミン、2−メトキシエチルアミン、N,N−ジメチル−2−メトキシエチルアミン、2−エトキシエチルアミン、N,N−ジメチル−2−エトキシエチルアミン、2−n−プロポキシエチルアミン、N,N−ジメチル−2−n−プロポキシエチルアミン、2−n−ブトキシエチルアミン、N,N−ジメチル−2−n−ブトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−エトキシプロピルアミン、3−n−プロポキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−n−プロポキシプロピルアミン、3−n−ブトキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−n−ブトキシプロピルアミン、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N,N−ジメチル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジエチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、4−アミノ−1,2−ブタンジオール、4−(ジメチルアミノ)−1,2−ブタンジオール等が好ましく、さらに好ましくはn−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−デシルアミン、ピペリジン、N−エチルピペラジン、ホモピペラジン、ヘキサメチレンイミン、2−メトキシエチルアミン、2−エトキシエチルアミン、2−n−プロポキシエチルアミン、2−n−ブトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−n−ブトキシプロピルアミン、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジエチルアミノ)−1,2−プロパンジオール等であり、特に好ましくはn−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ホモピペラジン、ヘキサメチレンイミン、2−エトキシエチルアミン、2−n−ブトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−n−ブトキシプロピルアミン、エタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジエチルアミノ)−1,2−プロパンジオール等である。これらは1種又は2種以上用いることができる。
【0055】
本発明の導電性インク組成物においては、本発明の趣旨に反しない程度であれば、上記した以外の配位性化合物を含んでいてもなんら差し支えない。
【0056】
本発明の導電性インク組成物において、配位性化合物は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでも良く、特に限定されない。また、配位性化合物の純度は、特に限定はなく、電子材料分野での使用を考慮すると、95%以上が好ましく、99%以上が特に好ましい。
【0057】
本発明の導電性インク組成物において、ギ酸銅粒子は、ギ酸銅粒子中に含まれる銅イオンが対アニオンであるギ酸により還元され、金属粒子(A)、及び/又は金属粒子(B)の隙間に金属銅として析出し、形成される電気的導通部位の膜密度を更に高めると共に、導電性を向上させる役割を果たす。
【0058】
本発明の導電性インク組成物において、ギ酸銅粒子としては、銅イオンをカチオン種とし、ギ酸をアニオン種とする銅塩の粒子であればよく、特に限定するものではない。例えば、一価の銅イオン、二価の銅イオン、及び三価の銅イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種と、ギ酸からなる銅塩の粒子が挙げられる。これらの中でも、安定性、及び入手の容易さから、二価の銅イオンとギ酸からなる銅塩の粒子が好ましい。
【0059】
本発明の導電性インク組成物において、ギ酸銅粒子の純度については特に限定はなく、導電性付与の観点から、95%以上が好ましく、99%以上が特に好ましい。
【0060】
本発明の導電性インク組成物において、ギ酸銅粒子の平均粒子径は、特に限定はなく、1nm以上、10μm未満の範囲であることが好ましい。この範囲とすることにより、溶解した場合、再析出した際に、他の粒子を核として析出し、粒子の粗大化を引起すおそれがなく、印刷法により配線等のパターン形成できる導電性インク組成物への適応が困難となったり、電気的導通部位を形成する際に、粒子の内部まで完全に反応せず、金属銅への還元が不十分となり、形成された電気的導通部位の導電性に悪影響を及ぼすおそれがない。
【0061】
本発明の導電性インク組成物において、ギ酸銅粒子としては、市販のものでも、公知の方法により製造したものでも良く、さらには、銅イオンを含む化合物とギ酸を混合することにより、系中で形成させたものでも何ら差し支えなく使用することができ、特に限定されない。
【0062】
ギ酸銅粒子を製造する方法としては、特に限定はなく、例えば、ギ酸銅粒子の粗粉末を機械的粉砕により粉砕する方法や、銅イオンとギ酸を含有する溶液から、ギ酸銅粒子を析出させる方法等が挙げられる。これらのうち、粒子サイズの再現性が良好なことや、大量の溶媒及び大規模な設備が必要ないことから、ギ酸銅粒子の粗粉末を機械的粉砕により粉砕する方法が好ましい。
【0063】
機械的粉砕としては、特に限定するものではなく、例えば、乾式であっても、湿式であっても一向に差し支えなく、具体的には、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ジェットミル、カッターミル、ハンマーミル、振動ミル、コロイドミル、ロールミル、乳鉢、及び石臼からなる群の一種又は二種以上を用いることができる。中でも微細粒子が効率的に得られることから、ビーズミルを用いることが好ましい。
【0064】
本発明において、ギ酸銅粒子の平均粒子径の測定方法としては、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、観測された視野の中から、粒子径が比較的そろっている箇所を3箇所選択し、粒径測定に最も適した倍率で撮影する。各々の写真から、一番多数存在すると思われる粒子を100個選択し、その直径をものさしで測り、測定倍率を除して粒子径を算出し、これらの値を算術平均することにより、求めた。
【0065】
本発明の導電性インク組成物において、各成分の濃度は特に制限はなく、導電性インク組成物全量に対し、金属粉末の濃度が1〜98重量%、配位性化合物の濃度が1〜80重量%、及びギ酸銅粒子の濃度が1重量%〜80重量%の範囲で含有することが好ましく、特に金属粉末の濃度が20〜90重量%、配位性化合物の濃度が1〜50重量%、及びギ酸銅粒子の濃度が1重量%〜50重量%の範囲で含有することが好ましい[ただし、金属粉末、配位性化合物、及びギ酸銅粒子の合計量が100重量%を超えることはない。]。
【0066】
金属粉末の濃度を前記範囲とすることにより、インク中の金属含有量が少なく電気的導通部位を形成する際、所望の膜厚とするために、何度も塗り重ねる必要がなく、また固化することもない。
【0067】
また、配位性化合物の濃度を前記範囲とすることにより、銅粒子、及び/又はギ酸銅粒子が十分に分散し、また、導電性インク組成物全量における金属の濃度が低下することもなく、所望する膜厚の電気的導通部位を得るための導電性インク組成物の塗布量が増加することもない。
【0068】
さらに、ギ酸銅粒子の濃度を前記範囲とすることにより、ギ酸銅粒子から生じる金属銅の量が少なくなることもなく、十分な膜厚を有する電気的導通部位を形成でき、導電性インク組成物の粘度上昇又は固化が起こることもない。
【0069】
本発明の導電性インク組成物は、上記成分に加えて、希釈剤を含有しても一向に差し支えない。
【0070】
本発明の導電性インク組成物において、希釈剤は、その濃度を変えることにより、導電性インク組成物の粘度を、所望の粘度に容易に調整することができる。
【0071】
本発明の導電性インク組成物において希釈剤は、金属粉末、配位性化合物、及びギ酸銅粒子と反応しないものであればよく、特に限定はなく、例えば、アルコール類、グリコール類、エーテル類、エステル類、脂肪族炭化水素類、及び芳香族炭化水素類からなる群より選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。
【0072】
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ターピネオール等が挙げられる。
【0073】
グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0074】
エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジブチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン等が例示される。
【0075】
エステル類としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトン等が例示される。
【0076】
脂肪族炭化水素類としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、シクロヘキサン、デカリン等が例示される。
【0077】
芳香族炭化水素類としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が例示される。
【0078】
これらの中でもコスト、及び安全性の面から、ヘキサノール、ターピネオール、エチレングリコール、メチル−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、n−ヘキサン、及びγ−ブチロラクトンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0079】
本発明の導電性インク組成物において、希釈剤は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよい。
【0080】
本発明の導電性インク組成物において、希釈剤の純度は、特に限定はなく、電子材料分野での使用を考慮すると、95%以上が好ましく、99%以上が特に好ましい。
【0081】
本発明の導電性インク組成物において、希釈剤の濃度は特に限定はなく、導電性インク組成物全量における銅の濃度が低下し、所望する膜厚の電気的導通部位を得るための導電性インク組成物の塗布量が増加することがないことから、導電性インク組成物全量に対し、希釈剤の濃度が1〜90重量%の範囲であることが好ましい。
【0082】
本発明の導電性インク組成物において、導電性インク組成物の粘度は、所望する塗布方法により、適宜、調整すれば良く、特に限定はなく、例えば。スクリーン印刷法により塗布し、パターン形成を行う場合、1〜1000Pa・sの範囲に調整することが好ましい。
【0083】
次に本発明の導電性インク組成物を用いた電気的導通部位について説明する。
【0084】
本発明において、「電気的導通部位」とは、本発明の導電性インク組成物を用いて形成された電気的導通を有する部位を意味する。例えば、導電性薄膜、配線、電極、スルーホールを介した両面及び/又は多層間の電気的導通部位、基板と被接合物との電気的導通を有する接合部位等が挙げられる。
【0085】
本発明の電気的導通部位は、本発明の導電性インク組成物を、基材に塗布又は充填し、当該基材を加熱処理することで製造する。例えば、本発明の導電性インク組成物を基材上に塗布した後に、加熱処理することによって、ギ酸銅粒子中に含まれる銅イオンを還元させると共に、配位性化合物が揮発し除去され、当該基材上に電気的導通部位を容易に製造できる。
【0086】
本発明の電気的導通部位において、基材としては、公知のものを用いることができ、特に限定はなく、例えば、樹脂、紙、ガラス、シリコン系半導体、化合物半導体、金属酸化物、金属窒化物、木材等からなる一種又は二種以上、若しくは二種以上の複合基材が挙げられる。
【0087】
樹脂としては、具体的には、例えば低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂)、アクリル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、セルロース誘導体等が例示される。
【0088】
紙としては、具体的には、例えば非塗工印刷用紙、微塗工印刷用紙、塗工印刷用紙(アート紙、コート紙)、特殊印刷用紙、コピー用紙(PPC用紙)、未晒包装紙(重袋用両更クラフト紙、両更クラフト紙)、晒包装紙(晒クラフト紙、純白ロール紙)、コートボール、チップボール、段ボール等が例示される。
【0089】
ガラスとしては、具体的には、例えばソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、シリカガラス、石英ガラス等が例示される。
【0090】
シリコン系半導体としては、具体的には、例えば単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、ポリシリコン等が例示される。
【0091】
化合物半導体としては、具体的には、例えばCdS、CdTe、GaAs等が例示される。
【0092】
金属酸化物としては、具体的には、例えばアルミナ、サファイア、ジルコニア、チタニア、酸化イットリウム、酸化インジウム、ITO(インジウム錫酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、ネサ(酸化錫)、ATO(アンチモンドープ酸化錫)、フッ素ドープ酸化錫、酸化亜鉛、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、ガリウムドープ酸化亜鉛等が例示される。
【0093】
金属窒化物としては、具体的には、例えば窒化アルミニウム、窒化珪素等が例示される。
【0094】
また、複合基材としては、具体的には、例えば、紙−フェノール樹脂、紙−エポキシ樹脂、紙−ポリエステル樹脂等の紙−樹脂複合基材や、ガラス布−エポキシ樹脂、ガラス布−ポリイミド系樹脂、ガラス布−フッ素樹脂等のガラス布−樹脂複合基材が挙げられる。
【0095】
本発明の電気的導通部位において、加熱処理は、非酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。非酸化性雰囲気としては、例えば、ヘリウム、窒素、アルゴン等が挙げられる。これらの中でも安価なことから、窒素を用いることが好ましい。また、非酸化性雰囲気中には、形成された電気的導通部位の酸化に大きな影響を与えない程度ならば酸素を含んでいても良く、その濃度は、5000ppm以下が好ましく、500ppm以下が特に好ましい。
【0096】
本発明の電気的導通部位において、加熱処理の温度は、ギ酸銅粒子中の銅イオンが還元され、配位性化合物が揮発し除去される温度であればよく、特に限定はなく、ギ酸銅粒子中の銅イオンの還元が完全に進行し、配位性化合物の残存がなく、有機基材を利用できることから、60〜300℃が好ましく、80〜200℃の範囲が特に好ましい。
【0097】
また、加熱処理の時間は、温度や所望する導電性により適宜選択すればよく、200℃程度の加熱温度を設定した場合には、通常10〜60分程度である。
【0098】
本発明の電気的導通部位において、本発明の導電性インク組成物を基材に塗布する方法としては、公知の方法によって行うことができ、特に限定はなく、例えば、スクリーン印刷法、ディップコーティング法、スプレー塗布法、スピンコーティング法、インクジェット法、ディスペンサーでの塗布法等が挙げられる。塗布の形状としては面状であっても、ドット状であっても、問題は無く、特に限定されない。導電性インク組成物を基材に塗布する塗布量としては、所望する電気的導通部位の膜厚に応じて適宜調整すればよく、乾燥後の導電性インク組成物の膜厚が0.01〜5000μmの範囲が好ましく、特に好ましくは0.1〜1000μmの範囲となるよう塗布すれば良い。
【0099】
本発明の電気的導通部位は、様々な工業製品を製造する工程の一部として利用することができ、本発明の電気的導通部位により一部〜全体を製造した電気的導通部位を有する工業製品を得ることができる。
【0100】
本発明の電気的導通部位により一部〜全体を製造した電気的導通部位を有する工業製品としては、特に限定はなく、例えば、有機エレクトロルミネッセンスパネル、プラズマディスプレイパネル、液晶パネル等の画像表示装置;LED(Light Emitting Diode)発光装置、及び有機エレクトロルミネッセンス発光装置等の発光装置;1層(片面)プリント配線基板、2層(両面)プリント配線基板、多層プリント配線基板、フレキシブルプリント配線基板等の回路基板;積層コンデンサ、固体電解コンデンサ等のコンデンサ;シリコン系太陽電池、化合物半導体系太陽電池、色素増感型太陽電池、有機半導体型太陽電池等の太陽電池;リチウム二次電池、ニッケル−水素二次電池等の二次電池;電波方式認識タグ;電磁波遮蔽シールド等が挙げられる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定して解釈されるものではない。
【0102】
なお、粒子の平均粒子径は、粒子サイズに応じて、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、観測した視野の中から、ランダムに3箇所選択し、10,000〜1,000,000倍の範囲における任意の倍率で撮影を行い、それぞれの写真から、粒子を計100個選択し、その直径をものさしで測り、測定倍率を除して粒径を算出し、これらの値を算術平均することにより求めた。TEMは日本電子社製、商品名:JEM−2000FX、SEMは、日本電子社製、商品名:JSM T220Aを使用した。
【0103】
さらに、導電性インク組成物の粘度は、レオメーター(ティー・エイ・インスツルメント社製、商品名:ARレオメーター AR2000ex)を用い、測定温度30℃で測定した。
【0104】
[参考例1] ギ酸銅粒子の調製.
エタノール40gにギ酸銅粒子粉末(一次平均粒子径21μm)2.24g、及びジルコニア製ビーズ(ニッカトー社製、商品名:YZT ボール、サイズ:Φ0.1mm)150gを添加し、攪拌用モーターに連結した攪拌羽を用い、周速10m/秒で、12時間攪拌し粉砕を行った。
【0105】
次にこのスラリー状の混合物を、目開き0.075mmの篩に通し、さらにエタノール160gで洗浄し、ジルコニア製ビーズを分離し、ギ酸銅粒子分散体を得た。
【0106】
このギ酸銅粒子分散体をSEMで観測し、平均粒子径を求めたところ、210nmであった。次に、このギ酸銅粒子分散体を、減圧条件で60℃を超えない温度で、エタノールと余分な水分を留去することで、ギ酸銅粒子の粉末を1.68gを得た。
【0107】
[実施例1] 平均粒子径の異なる2種類の銀粒子を含む金属粉末(平均粒子径比 金属粒子(B)/金属粒子(A)=0.30)、n−オクチルアミン、及びギ酸銅粒子を含有する導電性インク組成物の調製.
テトラヒドロフラン10gに、平均粒子径が2.32μmの銀粒子(Alfa Aesar社製 Silver Powder)(金属粒子(A))を0.9g、平均粒子径が0.69μmの銀粒子(Alfa Aesar社製 Silver Powder)(金属粒子(B))を0.1g(金属粉末:金属粒子A 90重量%、金属粒子B 10重量%)、脂肪族アミンであるn−オクチルアミン(配位性化合物)を0.23g、及び参考例1で得たギ酸銅粒子(一次平均粒子径210nm)0.22gを添加し、乳鉢で完全に分散状態になるまで十分に混練した。このスラリー状の混合物を、減圧条件下、40℃で、テトラヒドロフランと余分な水分を留去することで、ペースト状の導電性インク組成物(金属粉末:69.0重量%、n−オクチルアミン:15.8重量%、ギ酸銅粒子:15.2重量%)を調製した。得られた導電性インク組成物の粘度は178Pa・sであった(以下、表記を簡潔にするため、これを「導電性インクA」と称する)。
【0108】
[実施例2] 銅粒子、及び銀粒子を含む金属粉末(平均粒子径比 金属粒子(B)/金属粒子(A)=0.38)、ヘキサメチレンイミン、及びギ酸銅粒子を含有する導電性インク組成物の調製.
テトラヒドロフラン10gに、平均粒子径が2.49μmの銅粒子(Alfa Aesar社製 Copper Powder)(金属粒子(A))を0.8g、平均粒子径が0.95μmの銀粒子(Alfa Aesar社製 Silver Powder)(金属粒子(B))を0.2g(金属粉末:粒子A 80重量%、金属粒子B 20重量%)、複素環式アミンであるヘキサメチレンイミン(配位性化合物)を0.14g、及び参考例1で得たギ酸銅粒子(一次平均粒子径210nm)0.13gを添加し、乳鉢で完全に分散状態になるまで十分に混練した。このスラリー状の混合物を、減圧条件下、40℃で、テトラヒドロフランと余分な水分を留去することで、ペースト状の導電性インク組成物を調製した。得られた導電性インク組成物(金属粉末:78.8重量%、ヘキサメチレンイミン:11.0重量%、ギ酸銅粒子:10.2重量%)の粘度は189Pa・sであった(以下、表記を簡潔にするため、これを「導電性インクB」と称する)。
【0109】
[実施例3] 銀粒子、及び銀コート銅粒子を含む金属粉末(平均粒子径比 金属粒子(B)/金属粒子(A)=0.42)、3−n−ブトキシプロピルアミン、ギ酸銅粒子、及びエチレングリコールを含有する導電性インク組成物の調製.
テトラヒドロフラン10gに、平均粒子径が2.32μmの銀粒子(Alfa Aesar社製 Silver Powder)(金属粒子(A))を0.75g、平均粒子径が0.98μmの銀コート銅粒子(三井金属社製 Ag/湿式銅粉)(金属粒子(B))を0.25g(金属粉末:粒子A 75重量%、金属粒子B 25重量%)、一般式(1)で示されるアルコキシアミンである3−n−ブトキシプロピルアミン(配位性化合物)を0.36g、及び参考例1で得たギ酸銅粒子(一次平均粒子径210nm)0.3g、希釈剤であるエチレングリコール0.2gを添加し、乳鉢で完全に分散状態になるまで十分に混練した。このスラリー状の混合物を、減圧条件下、40℃で、テトラヒドロフランと余分な水分を留去することで、ペースト状の導電性インク組成物(金属粉末:53.8重量%、3−n−ブトキシプロピルアミン:19.3重量%、ギ酸銅粒子:16.1重量%、エチレングリコール:10.8重量%)を調製した。得られた導電性インク組成物の粘度は98Pa・sであった(以下、表記を簡潔にするため、これを「導電性インクC」と称する)。
【0110】
[実施例4] 銅粒子、及び銀コート銅粒子を含む金属粉末(平均粒子径比 金属粒子(B)/金属粒子(A)=0.14)、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、及びギ酸銅粒子を含有する導電性インク組成物の調製.
テトラヒドロフラン10gに、平均粒子径が2.49μmの銅粒子(Alfa Aesar社製 Copper Powder)(金属粒子(A))を0.9g、平均粒子径が0.36μmの銀コート銅粒子(三井金属社製 Ag/湿式銅粉)(金属粒子(B))を0.1g(金属粉末:粒子A 90重量%、金属粒子B 10重量%)、一般式(2)で示されるアルカノールアミンである1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン(配位性化合物)を0.07g、及び参考例1で得たギ酸銅粒子(一次平均粒子径210nm)0.05gを添加し、乳鉢で完全に分散状態になるまで十分に混練した。このスラリー状の混合物を、減圧条件下、40℃で、テトラヒドロフランと余分な水分を留去することで、ペースト状の導電性インク組成物を調製した。得られた導電性インク組成物(金属粉末:89.2重量%、配位性化合物:6.3重量%、ギ酸銅粒子:4.5重量%)の粘度は221Pa・sであった(以下、表記を簡潔にするため、これを「導電性インクD」と称する)。
【0111】
[実施例5] 平均粒子径の異なる2種類の銅粒子を含む金属粉末(平均粒子径比 金属粒子(B)/金属粒子(A)=0.35)、3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、ギ酸銅粒子を含有する導電性インク組成物の調製.
テトラヒドロフラン10gに、平均粒子径が1.02μmの銅粒子(Alfa Aesar社製 Copper Powder)(金属粒子(A))を0.95g、平均粒子径が0.36μmの銅粒子(三井金属社製 湿式銅粉)(金属粒子(B))を0.05g(金属粉末:粒子A 95重量%、金属粒子B 5重量%)、一般式(3)で示されるアルカノールアミンである3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール(配位性化合物)を0.6g、及び参考例1で得たギ酸銅粒子(一次平均粒子径210nm)0.4gを添加し、乳鉢で完全に分散状態になるまで十分に混練した。このスラリー状の混合物を、減圧条件下、40℃で、テトラヒドロフランと余分な水分を留去することで、ペースト状の導電性インク組成物(金属粉末:50.0重量%、3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール:30.0重量%、ギ酸銅粒子:20.0重量%)を調製した。得られた導電性インク組成物の粘度は112Pa・sであった(以下、表記を簡潔にするため、これを「導電性インクE」と称する)。
【0112】
[比較例1] 銅粒子、及び銀粒子を含む金属粉末(平均粒子径比 金属粒子(B)/金属粒子(A)=0.58)、n−オクチルアミン、及びギ酸銅粒子を含有する導電性インク組成物の調製.
テトラヒドロフラン10gに、平均粒子径が2.49μmの銅粒子(Alfa Aesar社製 Copper Powder)(金属粒子(A))を0.9g、平均粒子径が1.44μmの銀粒子(Alfa Aesar社製 Silver Powder)(金属粒子(B))を0.1g(金属粉末:粒子A 90重量%、金属粒子B 10重量%)、n−オクチルアミンを0.23g、及び参考例1で得たギ酸銅粒子(平均粒子径210nm)0.22gを添加し、乳鉢で完全に分散状態になるまで十分に混練した。このスラリー状の混合物を、減圧条件下、40℃で、テトラヒドロフランと余分な水分を留去することで、ペースト状の導電性インク組成物(金属粉末:69.0重量%、n−オクチルアミン:15.8重量%、ギ酸銅粒子:15.2重量%)を調製した。得られた導電性インク組成物の粘度は158Pa・sであった(以下、表記を簡潔にするため、これを「導電性インクF」と称する)。
【0113】
[比較例2] 平均粒子径の異なる2種類の銅粒子を含む金属粉末(平均粒子径比 金属粒子(B)/金属粒子(A)=0.086)、n−オクチルアミン、及びギ酸銅粒子を含有する導電性インク組成物の調製.
テトラヒドロフラン10gに、平均粒子径が4.18μmの銅粒子(三井金属社製 湿式銅粉)(金属粒子(A))を0.9g、平均粒子径が0.36μmの銅粒子(三井金属社製 湿式銅粉)(金属粒子(B))を0.1g(金属粉末:粒子A 90重量%、金属粒子B 10重量%)、n−オクチルアミンを0.23g、及び参考例1で得たギ酸銅粒子(平均粒子径210nm)0.22gを添加し、乳鉢で完全に分散状態になるまで十分に混練した。このスラリー状の混合物を、減圧条件下、40℃で、テトラヒドロフランと余分な水分を留去することで、ペースト状の導電性インク組成物(金属粉末:69.0重量%、n−オクチルアミン:15.8重量%、ギ酸銅粒子:15.2重量%)を調製した。得られた導電性インク組成物の粘度は148Pa・sであった(以下、表記を簡潔にするため、これを「導電性インクG」と称する)。
【0114】
[比較例3] 2種類の銅粒子を含む銅粉末(平均粒子径比 金属粒子(B)/金属粒子(A)=0.35)、n−オクチルアミン、及びエチレングリコールを含有する導電性インク組成物の調製.
テトラヒドロフラン10gに、平均粒子径が1.02μmの銅粒子(Alfa Aesar社製 Copper Powder)(金属粒子(A))を0.95g、平均粒子径が0.36μmの銅粒子(三井金属社製 湿式銅粉)(金属粒子(B))を0.05g(金属粉末:粒子A 95重量%、金属粒子B 5重量%)、n−オクチルアミンを0.4g、エチレングリコールを0.4g添加し、乳鉢で完全に分散状態になるまで十分に混練した。このスラリー状の混合物を、減圧条件下、40℃で、テトラヒドロフランと余分な水分を留去することで、ペースト状の導電性インク組成物(金属粉末:55.6重量%、n−オクチルアミン:22.2重量%、エチレングリコール:22.2重量%)を調製した。得られた導電性インク組成物の粘度は78Pa・sであった(以下、表記を簡潔にするため、これを「導電性インクH」と称する)。
【0115】
[実施例6〜10、比較例4〜6] 導電性評価、及び膜密度評価.
ガラス基材上に、導電性インクA〜Hを、スクリーン印刷法(スクリーン仕様 メッシュ数:200、線径:40μm、織厚:115μm、目開き:87μm、空間率:46.9%、ペースト透過体積:53.94mg/cm)を用いて塗布し、幅2mm×長さ30mm、膜厚54μmの均一な塗布膜とした。
【0116】
次に、窒素ガスを6L/分の流量で流通した加熱炉で、これら導電性インクを塗布したガラス基材を30分間、加熱処理を行い、導電膜(電気的導通部位)を得た。各加熱温度を表1に示す。
【0117】
導電性の評価は、各導電膜において、測定した表面抵抗率と膜厚から算出した、体積抵抗率の比較により行った。
【0118】
表面抵抗率は、四探針抵抗測定機(三菱化学社製、商品名:ロレスタGP)にて測定した。
【0119】
膜厚は、形成された各導電膜を切断し、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、平均膜厚をその値とした。すなわち、各電気的導通部位について、走査型電子顕微鏡(SEM)で観測した視野の中から、ランダムに3箇所選択し、5000倍の倍率で撮影を行い、それぞれの写真において、電気的導通部位の膜厚を計測し、これらの値を撮影倍率で除し、3箇所の膜厚を算術平均して得られた値を各導電膜の膜厚とした。
【0120】
膜密度評価については、形成された各導電膜の体積と重量から膜密度を算出し評価した。
【0121】
これら評価の結果を表1に併せて示す。
【0122】
【表1】

【0123】
表1から明らかなとおり、実施例6〜10において、本発明の導電性インク組成物より製造された導電膜は、良好な導電性を示し、膜密度も高かった。
【0124】
これに対し、比較例4、5において、小粒子と大粒子の平均粒子径の比が本発明の範囲を外れた金属粉末を用いた導電性インク組成物より製造された導電膜は、導電性、又は膜密度が悪化した。また、比較例6において、ギ酸銅粒子を含まない導電性インク組成物より製造された導電膜は、膜密度は良好であったが、導電性が低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末、配位性化合物、及びギ酸銅粒子を含有する導電性インク組成物であって、金属粉末が、平均粒子径比が金属粒子(B)/金属粒子(A)=0.10〜0.45倍の範囲にある金属粉末を含むことを特徴とする導電性インク組成物。
【請求項2】
金属粒子(A)及び/又は金属粒子(B)が、金粒子、銀粒子、銅粒子、白金粒子、パラジウム粒子、ニッケル粒子、スズ粒子、及び銀コート銅粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1に記載の導電性インク組成物。
【請求項3】
金属粒子(A)の平均粒子径が、0.1〜10μmの範囲であり、金属粒子(B)の平均粒子径が0.01〜4.5μmの範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性インク組成物。
【請求項4】
金属粉末全量に対し、金属粒子(A)の重量濃度が70〜99重量%の範囲であり、金属粒子(B)の重量濃度が1〜30重量%の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性インク組成物。
【請求項5】
配位性化合物が、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、下記一般式(1)で示されるアルコキシアミン、及び下記一般式(2)、又は(3)で示されるアルカノールアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の導電性インク組成物。
【化1】

[R、Rは各々独立して、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、Rは炭素数1〜6の直鎖状、炭素数3〜6の分岐状若しくは環式のアルキル基を表し、Xはメチレン基、エチレン基を表す。]
【化2】

[R、Rは各々独立して、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、R、Rは各々独立して、水素原子、メチル基を表し、Yはメチレン基、エチレン基を表す。]
【化3】

[R、Rは各々独立して、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、Zはメチレン基、エチレン基を表す。]
【請求項6】
配位性化合物が、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、ホモピペラジン、ヘキサメチレンイミン、2−メトキシエチルアミン、N,N−ジメチル−2−メトキシエチルアミン、2−エトキシエチルアミン、N,N−ジメチル−2−エトキシエチルアミン、2−n−プロポキシエチルアミン、N,N−ジメチル−2−n−プロポキシエチルアミン、2−n−ブトキシエチルアミン、N,N−ジメチル−2−n−ブトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−エトキシプロピルアミン、3−n−プロポキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−n−プロポキシプロピルアミン、3−n−ブトキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−n−ブトキシプロピルアミン、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N,N−ジメチル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジエチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、4−アミノ−1,2−ブタンジオール、及び4−(ジメチルアミノ)−1,2−ブタンジオールからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の導電性インク組成物。
【請求項7】
ギ酸銅粒子の平均粒子径が、0.01〜5μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の導電性インク組成物。
【請求項8】
導電性インク組成物全量に対し、金属粉末の濃度が1〜98重量%、配位性化合物の濃度が1〜80重量%、及びギ酸銅粒子の濃度が1重量%〜80重量%の範囲であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の導電性インク組成物。
【請求項9】
さらに希釈剤を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の導電性インク組成物。
【請求項10】
導電性インク組成物の粘度が、1〜1000Pa・sの範囲であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の導電性インク組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の導電性インク組成物を、基材に塗布又は充填し、当該基材を加熱処理することで製造することを特徴とする電気的導通部位。
【請求項12】
基材が、樹脂、紙、ガラス、シリコン系半導体、化合物半導体、金属酸化物、金属窒化物、及び木材からなる群より選ばれる一種、又は二種以上の複合基材であることを特徴とする請求項11に記載の電気的導通部位。
【請求項13】
加熱処理の温度が60〜300℃の範囲であることを特徴とする請求項11又は12に記載の電気的導通部位。
【請求項14】
非酸化性雰囲気で加熱処理を行うことを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の電気的導通部位。

【公開番号】特開2012−131894(P2012−131894A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284626(P2010−284626)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】