説明

導電性ゴム組成物及びそれを用いてなる導電性ロール

【課題】射出成形性に優れると共に、加硫して最終的に得られる加硫物が、低高度でありつつも優れた低へたり性を発揮し、更には優れた帯電均一性をも発揮する導電性ゴム組成物、及びそれを用いてなる導電性ロールを提供すること。
【解決手段】エピクロルヒドリン系ゴム材料の100重量部に対して、液状ポリマーの1〜15重量部と、トルエン不溶出分が80重量%以上である架橋シリコーンゴム粒子の1〜40重量部とを、それら液状ポリマー及び架橋シリコーンゴム粒子の合計量が15〜41重量部の範囲内となる割合において配合して、目的とする導電性ゴム組成物を調製した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ゴム組成物及びそれを用いてなる導電性ロールに係り、特に、電子写真方式を利用した複写機やプリンター等に用いられる帯電ロールや現像ロール、転写ロール等の導電性ロールを作製する際に好適に用いられ得る導電性ゴム組成物、及び、それを用いて形成された導電性ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真方式を利用した複写機やプリンター等の画像形成装置(以下、電子写真機器という)においては、例えば、導電体たる軸体(芯金)の外周面上に、低硬度のゴム層からなる導電性弾性体層が設けられ、更に必要に応じて、導電性弾性体層の外周面上に抵抗調整層や保護層が、順次積層形成されてなる構造の導電性ロールが、帯電ロール、現像ロール、転写ロール等として、用いられている。
【0003】
かかる導電性ロールのうち、帯電ロールは、感光体(ドラム)等の像坦持体を帯電させるために用いられるものであり、具体的には、像坦持体を帯電ロールの外周面に接触せしめることにより、かかる像坦持体の表面を帯電させるものである。このため、帯電ロールを構成する導電性弾性体層に対しては、従来より、像坦持体との接触性が確保出来るように圧縮永久歪みが小さいこと(低へたり性)や、電気抵抗が適正な範囲に制御されていること(帯電均一性)等が要求されている。
【0004】
そのような状況の下、ゴム組成物であって、それを用いて形成された導電性弾性体層が上述した優れた特性(低へたり性、帯電均一性)を発揮し得るものとしては、従来より様々なものが提案されているのであり、例えば、特許文献1(特開平9−302232号公報)においては、平均粒子径が20μm以下でありかつトルエン不溶分が30重量%以上である架橋シリコーンゴムと、シリコーンゴム以外の未架橋有機ゴムとからなるゴム組成物(A)中に、電子伝導機構による導電性付与剤(B)とイオン伝導機構による導電性付与剤(C)とを混合分散させてなる導電性ゴム組成物が、提案されている。また、特許文献2(特開2002−3651号公報)においては、イオン導電性ゴム材料からなるポリマー連続相と、電子導電性ゴム材料からなるポリマー粒子相とを含んでなる海島構造のゴム組成物であって、体積固有抵抗率が1×1012Ω・cm以下の原料ゴムAより主になり、該電子導電性ゴム材料は、原料ゴムBに導電粒子(カーボンブラック等の電子導電性の導電剤)を配合することにより導電化されていることを特徴とする半導電性ゴム組成物が、提案されている。
【0005】
一方、近年、電子写真機器に対しては、画像形成の高速化(印刷速度の向上)及び高画質化、機器の小型化が要求されているところ、それに用いられる帯電ロールに対しても、その小型化(小径化)が要求されている。ここで、画像形成の高速化及び帯電ロールの小型化(小径化)に伴い、帯電ロールの回転速度も必然的に上昇することとなるが、かかるロール回転速度の上昇により、帯電ロールと感光体との均一なニップ状態を確保することが困難となるため、導電性弾性体層に対しては、より優れた帯電均一性が要求される。これに対しては、例えば添加剤(可塑剤等)をゴム組成物に配合することにより、最終的に得られる導電性弾性体層(加硫物)の低硬度化を図ることが一般的ではあるが、極端な低硬度化は低へたり性を悪化(圧縮永久歪みを悪化)させる恐れがある。
【0006】
また、画像の高画質化に対応するためには、帯電ロールにおける導電性弾性体層がより優れた帯電均一性を発揮することが要求されるが、従来のゴム組成物であって、カーボンブラック等に代表される電子導電系の導電剤(電子導電剤)を配合してなるものにあっては、得られる加硫物が、電気抵抗のバラツキが比較的大きいという欠点がある。
【0007】
さらに、低硬度と低へたり性とを兼ね備えた加硫物が得られるゴム組成物として、シリコーンゴムを主として用いたゴム組成物があるが、かかるゴム組成物を用いて帯電ロールにおける導電性弾性体層を作製する場合、要求される抵抗を発現させるためにはカーボンブラック等の電子導電剤をゴム組成物に配合せざるを得ないため、結果として、上記と同様の問題を内在している。
【0008】
ところで、近年、エピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性ゴムを主たるゴム材料として用い、必要に応じてイオン導電系の導電剤(イオン導電剤)等を配合してなるゴム組成物が、導電性ロールの導電性弾性体層を形成せしめる際に用いられるようになっている。
【0009】
しかしながら、従来のエピクロルヒドリンゴムを主たるゴム材料とするゴム組成物にあっては、一般に、得られる加硫物の硬度が高いため、可塑剤による低硬度化を図ることが必要とされるところ、可塑剤を使用したゴム組成物を用いて導電性ロールの導電性弾性体層を形成すると、可塑剤が弾性体層の表面(ロール表面)へ滲み出す(ブリードする)恐れがあった。
【0010】
また、得られる加硫物の低硬度化を図るべく種々の液状ポリマーを配合することも考えられるところ、液状ポリマーを使用した場合には先に述べたブリードの問題は解消され得るが、液状ポリマーを多量に配合すると、加硫物のへたり性が悪化する(圧縮永久歪みが悪化する)恐れがあった。
【0011】
さらに、従来のエピクロルヒドリンゴムを主たるゴム材料とするゴム組成物にあっては、射出成形にて成形品を製造する際の成形性が悪い等の問題があり、特に、小型(小径)のロールを射出成形(型注入成形)にて製造する際に採用し難いという問題もあった。
【0012】
【特許文献1】特開平9-302232号公報
【特許文献2】特開2002-3651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、射出成形性に優れると共に、加硫して最終的に得られる加硫物が、低硬度であって且つ低へたり性に優れ、更には優れた帯電均一性をも発揮する導電性ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そして、本発明は、そのような課題を解決すべく、エピクロルヒドリン系ゴム材料の100重量部に対して、液状ポリマーの1〜15重量部と、トルエン不溶出分が80重量%以上である架橋シリコーンゴム粒子の1〜40重量部とが、それら液状ポリマー及び架橋シリコーンゴム粒子の合計量が15〜41重量部の範囲内となる割合において配合されてなる導電性ゴム組成物を、その要旨とするものである。
【0015】
なお、かかる本発明に従う導電性ゴム組成物における好ましい態様の一つにおいては、イオン導電剤の0.1〜5重量部が更に配合されている。
【0016】
また、本発明の導電性ゴム組成物における他の好ましい態様の一つにおいては、前記液状ポリマーが、液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合体又は液状ブタジエンゴムである。
【0017】
一方、本発明は、そのような各態様の導電性ゴム組成物を用いて得られる導電性ロールをも、その要旨とするものである。
【発明の効果】
【0018】
このように、本発明に従う導電性ゴム組成物にあっては、エピクロルヒドリン系ゴム材料に、液状ポリマー及び所定の架橋シリコーンゴム粒子を、各々を所定の割合において、且つ、それらの合計量が所定の範囲内となるような割合において、配合してなるものであるところから、射出成形性に優れ、また、加硫して最終的に得られる加硫物が、低硬度であって且つ低へたり性に優れ、更には優れた帯電均一性をも発揮するのである。
【0019】
具体的には、本発明の導電性ゴム組成物は流動性や滑り性が良好なものであることから、比較的小径で、且つ長尺な導電性ロールにおける導電性弾性体層を、射出成形法(型注入成形法)によって製造することが可能であり、製造上のラティチュード(寛容度)が拡大する。また、射出成形の際の射出圧力を低下させることが出来るため、軸体(芯金)への圧力負荷が減少し、その結果、射出成形時の曲がり等による形状不良の発生が効果的に抑制されるのである。
【0020】
そして、そのような優れた特性を有する導電性ゴム組成物を用いて得られる導電性ロール、即ち、かかる導電性ゴム組成物を用いて導電性弾性体層を形成せしめてなる導電性ロールにあっては、上述した優れた効果を有利に享受し得ると共に、その表面へのトナー固着も少なく、トナーストレスも効果的に低減せしめ得るものとなるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
ところで、本発明に係る導電性ゴム組成物は、エピクロルヒドリン系ゴム材料を主成分とするものであるが、本発明においては、エピクロルヒドリン単独共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合体又はエピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合体等を単独で使用出来ることは勿論のこと、それらのうちの二種以上を併用することも可能である。
【0022】
本発明の導電性ゴム組成物においては、そのようなエピクロルヒドリン系ゴム材料の100重量部に対して、液状ポリマー及び所定の架橋シリコーンゴム粒子が、各々が所定の割合において、且つ、それらの合計量が所定の範囲内となるような割合において、配合される。それら各成分を所定の割合にて配合することにより、得られる導電性ゴム組成物が、容易に射出成形を実施し得る程度の流動性に優れたものとなり、また、それを加硫して得られる加硫物にあっては、低硬度であって且つ低へたり性に優れ、更には優れた帯電均一性をも発揮するのである。
【0023】
ここで、本発明に従う導電性ゴム組成物を調製する際に用いられる液状ポリマーとしては、従来より公知のポリマーであって、常温で液状のものであれば如何なるものであっても使用可能である。そのような液状ポリマーとしては、液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、液状ブタジエンゴム、液状イソプレンゴム、液状スチレン−ブタジエン共重合体、液状イソプレン−ブタジエン共重合体、液状スチレン−イソプレン共重合体及びこれらの水素添加ポリマー、液状エチレン・プロピレン・ターポリマー、液状イソブチレンゴム、液状アクリルゴム、液状クロロプレンゴム、液状シリコーンゴム、液状エーテルゴム等を例示することが出来、そのような液状ポリマーのうちの一種若しくは二種以上が用いられることとなる。それら液状ポリマーの中でも、本発明においては、特に、液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合体又は液状ブタジエンゴムが有利に用いられ得る。
【0024】
また、本発明において、液状ポリマーと共にエピクロルヒドリン系ゴム材料に配合される架橋シリコーンゴム粒子は、トルエン不溶出分が80重量%以上のものである。トルエン不溶出分が80重量%未満の架橋シリコーンゴム粒子を用いると、ゴム粒子中の含まれるトルエン溶出分(未反応モノマー等)がゴム組成物中に溶出して、エピクロルヒドリン系ゴム材料との相溶性が悪化し、ゴム組成物の(射出)成形性や、最終的に得られる加硫物の表面性に悪影響を与える(シリコーンゴム粒子が析出したり、トルエン溶出分がブリードする)恐れがあるからである。
【0025】
なお、本願明細書及び特許請求の範囲における「架橋シリコーンゴム粒子のトルエン不溶出分」とは、以下のようにして算出されたものを意味する。即ち、所定量の架橋シリコーンゴム粒子(重量:W1)を、80℃に加熱したトルエン内に24時間、浸漬し、その後、架橋シリコーンゴム粒子とトルエンとの混合物をメンブランフィルターにて吸引濾過し、濾過物を加熱、減圧乾燥せしめて、トルエン溶出分が除去された架橋シリコーンゴム粒子とする。そのようなトルエンによる処理が施された後の架橋シリコーンゴム粒子の重量(W2)を測定し、計算式:{W2/W1}×100より算出されたものが、「架橋シリコーンゴム粒子のトルエン不溶出分」である(単位:重量%)。
【0026】
また、本発明においては、平均粒子径が大きな架橋シリコーンゴム粒子を用いると、導電性ゴム組成物中での分散性が悪化する恐れがあるところから、一般には0.1〜500μm程度、好ましくは0.5〜200μm程度の平均粒子径を有する架橋シリコーンゴム粒子が用いられる。
【0027】
上述した、エピクロルヒドリン系ゴム材料に配合される各成分は、本発明の導電性ゴム組成物において、各々、所定割合にて配合される。具体的に、先ず、液状ポリマーにあっては、エピクロルヒドリン系ゴム材料の100重量部に対して、1〜15重量部、好ましくは5〜10重量部となるような割合において、配合される。液状ポリマーの配合量が1重量部未満では、その配合効果が認められない恐れがあり、一方、15重量部を超えると、そのような多量の液状ポリマーを配合してなる導電性ゴム組成物の加硫物において、圧縮永久歪みが悪化し、へたり性が悪化する恐れがあるからである。
【0028】
また、架橋シリコーンゴム粒子は、エピクロルヒドリン系ゴム材料の100重量部に対して、1〜40重量部、好ましくは5〜30重量部となるような割合において、配合される。架橋シリコーンゴム粒子の配合量が1重量部未満では、その配合効果が認められない恐れがあり、一方、40重量部を超えると、エピクロルヒドリン系ゴム材料との相溶性が悪化し、架橋シリコーンゴム粒子が析出する等の弊害が発生する恐れがあるからである。
【0029】
さらに、本発明の導電性ゴム組成物においては、上述した液状ポリマー及び架橋シリコーンゴム粒子は、その配合量の合計が、エピクロルヒドリン系ゴム材料の100重量部に対して、15〜41重量部、好ましくは15〜35重量部の範囲内となるように調製される。液状ポリマー及び架橋シリコーンゴム粒子の合計量が15重量部未満では、本発明の目的を有利に達成し得ない恐れがある一方、合計量が41重量部を超える多量の液状ポリマー及びシリコーンゴム粒子を配合してなる導電性ゴム組成物の加硫物においては、圧縮永久歪みが悪化し、へたり性が悪化する恐れがあるからである。
【0030】
一方、本発明に係る導電性ゴム組成物にあっては、特に導電性ロールにおける導電性弾性体層の形成に用いられる場合には、最終的に得られる加硫物(導電性弾性体層)が優れた電気特性(低電気抵抗率)を発揮するよう、イオン導電剤(イオン導電系の導電剤)を配合することが好ましい。使用可能なイオン導電剤としては、従来より公知の各種のもの、例えば、トリブチルエチルアンモニウムエチル硫酸塩、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムヨーダイドやテトラブチルアンモニウムパークロレート等の第4級アンモニウム塩、過塩素酸リチウムや過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、有機ホウ素錯体等を挙げることが出来る。なお、イオン導電剤を配合する際には、その配合量が少な過ぎると配合効果は認められず、一方、多量に配合しても顕著な電気特性の向上は認められず、ブリード等の発生する確率も高くなることから、本発明においては、エピクロルヒドリン系ゴム材料の100重量部に対して、0.1〜5重量部程度の割合において、配合される。但し、本発明の導電性ゴム組成物において、カーボンブラック等の電子導電剤を配合すると、本発明の目的が有利に達成され得ない恐れ、即ち、得られる加硫物の硬度が上昇し、低へたり性及び帯電均一性が悪化する恐れがあるところから、かかるカーボンブラック等の電子導電剤を配合することは好ましいものではない。
【0031】
本発明の導電性ゴム組成物においては、従来のゴム組成物と同様に、加硫剤や加硫助剤が配合され、また、必要に応じて、加硫促進剤やその他の各種添加剤が、本発明の目的を阻害しない量的範囲内において、適宜に配合せしめられ、従来より公知の各種手法に従って、調製されることとなる。
【0032】
ところで、本発明に従う導電性ゴム組成物を用いて、電子写真機器に用いられる各種の導電性ロールを作製するに際しては、従来より公知の手法が何れも採用され得るが、本発明の導電性ゴム組成物にあっては、流動性に優れていることから、特に、射出成形法(型注入成形法)に従って加硫前の導電性弾性体層を形成することが好ましい。具体的には、円筒状の成形キャビティを有する金型内の中心軸上に軸体(芯金)を配置し、その状態にて、金型内へ本発明の導電性ゴム組成物を射出し、軸体(芯金)の外周面上に加硫前の導電性弾性体層を形成せしめ、その後、加硫操作を行なうことにより、目的とする導電性ロールが得られるのである。なお、射出成形の際の各種条件や、加硫する際の温度条件等は、導電性ゴム組成物の組成や目的とする導電性ロール等に応じたものが、適宜に選択されることとなる。
【0033】
なお、そのようにして作製された導電性ロールの表面(導電性弾性体層の外周面)上には、更に必要に応じて、保護層が形成される。この保護層は、ロール表面にトナー等が付着、堆積等することを抑制するために設けられるものであり、例えば、フッ素変性アクリレート樹脂等のフッ素系樹脂を含む樹脂組成物材料や、N−メトキシメチル化ナイロン等のナイロン系材料等に、カーボンブラックや金属酸化物等の導電剤が配合されて、その体積抵抗率が、一般に1×105 〜1×1013Ω・cm程度となるように形成される。なお、このような保護層の作製は、例えばディッピング等の公知のコーティング手法に従って行なわれ、その厚さは、導電性ロールの大きさ(直径、長さ)に応じて適宜に設定されることとなるが、通常、1〜20μm程度とされる。
【0034】
また、本発明のゴム組成物を用いて作製された導電性弾性体層と、上記保護層との間に、導電性ロール全体の電気抵抗を制御して、耐電圧性(耐リーク性)を高めることを目的とする抵抗調整層や、導電性弾性体層上にその他の各種の層を、1層或いはそれ以上、形成することも可能である。
【0035】
そして、そのようにして得られた導電性ロールにあっては、その導電性弾性体層が、低硬度であって且つ低へたり性に優れ、更には優れた帯電均一性をも発揮するのであり、電子写真機器における帯電ロールや現像ロール、転写ロール等として使用すると、高精度な画像が有利に得られるのである。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等が加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0037】
先ず、下記表1及び表2に掲げる各成分と、加硫剤たる硫黄(鶴見化学工業株式会社製):0.5重量部、加硫助剤たる酸化亜鉛2種(三井金属工業株式会社製):5.0重量部、加硫助剤(受酸剤)たるハイドロタルサイト(協和化学工業株式会社製、商品名:DHT4A ):10.0重量部、加硫促進剤A(三新化学工業株式会社製、商品名:サンセラーCZ):1.0重量部、加硫促進剤B(大内新興化学工業株式会社製、商品名:アクセルTBT ):1.0重量部、及び、イオン導電剤として、下記構造式にて表わされる第4級アンモニウム塩:1.0重量部を用いて、16種類の導電性ゴム組成物(本発明例1〜7、比較例1〜8)を調製した。
【0038】
【化1】

【0039】
なお、エピクロルヒドリンゴムとしてはダイソー株式会社製のエピクロマーCG102 (商品名)を、液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(液状NBR)としてはJSR株式会社製のJSR N280(商品名)を、液状ブタジエンゴム(液状BR)としては日本ゼオン株式会社製のニポールBR1220(商品名)を、それぞれ用いた。
【0040】
また、本実施例で用いた三種類の架橋シリコーンゴム粒子は、本発明者等が自ら、特開昭62−257939号公報等にて開示されている手法(シリコーンゴム粒子のエマルジョンをスプレードライする手法)に従って作製したものであり、そのトルエン不溶出分は、架橋シリコーンゴム粒子Aについては85重量%、架橋シリコーンゴム粒子Bについては75重量%、架橋シリコーンゴム粒子Cについては70重量%であった。
【0041】
次いで、所定の円筒状のキャビティを有する成形型を準備し、その中心軸上に軸体(芯金)を配した状態にてキャビティ内に導電性ゴム組成物を射出し、その後、所定の加硫操作を実施することにより、軸体上に導電性弾性体層を形成せしめた。更に、導電性弾性体層の表面にフッ素系樹脂溶液をスプレーコーティングし、乾燥せしめた。このようにして、それぞれの導電性ゴム組成物を用いて、芯金(直径:6mm)の周りに導電性弾性体層(厚さ:3mm)を有し、かかる導電性弾性体層の表面に保護層(厚さ:10μm)を有する導電性ロールを作製した。
【0042】
かかる作製の際に、射出成形の容易性(成形性)、及び射出成形によって得られた加硫前の導電性弾性体層の表面性を評価すると共に、得られた導電性ロールについて、各種物性を測定し、評価した。かかる物性の評価及び測定は、各々、以下の手法に従って実施し、その評価(測定)結果を、下記表1及び表2に示した。
【0043】
−マイクロゴム硬度−
片持ち梁板ばね式の荷重方式が採用されてなるスプリング式硬さ試験機(マイクロゴム硬度計・MD−1型、高分子計器株式会社製)を用いて、Vブロックにて両端が支持された状態で水平に保持された各導電性ロールの軸方向中央部の表面に、かかるスプリング式硬さ試験機の押針の先端を接触させ、更にかかる試験機を33.85gの荷重で垂直に加圧して、直ちに目盛りを読み取ることにより、測定した。
【0044】
−弾性回復率−
ISO 14577−1に準拠して、微小硬度計(株式会社フィッシャ−・インストルメンツ製、商品名:フィッシャースコープH-100 )を用いて、導電性ロール表面のW elast(くぼみの弾性戻り変形仕事量[N・m])とW total(くぼみの全機械的仕事量[N・m])とを測定し、式:{W elast/W total}×100より算出した。なお、W elast及びW totalの測定は、四角錐形状のビッカース圧子を用い、このビッカース圧子を、5秒間/最大押込み荷重(20mN)まで導電性ロール表面に押し込み、最大押込み荷重にて圧子をクリープし、その後、押込み時と同じ速度にて圧子を引き戻すことにより、測定した。なお、この弾性回復率(%)の数値が大きいほど、永久圧縮歪みが小さいこと(低へたり性に優れていること)を表わしている。
【0045】
−セット画像の評価−
作製した導電性ロールを、金属ロール(直径:24mm)に載置し、導電性ロールの両端の軸体上にそれぞれ500gの荷重をかけ、その状態を保持したまま、40℃、湿度:95%の雰囲気下に2週間、放置した。その後、かかる導電性ロールを、帯電ロールとして実機(ヒューレット・パッカード社製、商品名:CLJ4700 )に取り付け、この実機にて所定の画像(テストパターン)を出力した。出力された画像を目視で観察し、帯電ロールに起因する変形スジの有無によって評価した。なお、評価基準は、以下の通りである。
◎:出力された画像中に変形スジが全くない。
○:変形スジが僅かに存在する。
△:変形スジが存在するが、許容される範囲内のものである。
×:著しい変形スジが存在する。
【0046】
−トナー固着の評価−
作製した導電性ロールを、帯電ロールとして実機(ヒューレット・パッカード社製、商品名:CLJ4700 )に取り付け、かかる実機を用いて、温度:32.5℃×湿度:85%の環境下にて1万枚の印字テスト(印字率:5%)を行なった。その後、実機より帯電ロールを取り出し、その表面におけるトナーの固着状態を目視で観察し、評価した。なお、評価基準は以下の通りである。
◎:トナー固着がほとんどない。
○:僅かにトナー固着が存在する。
△:トナー固着が存在するが、許容される範囲内のものである。
×:画像に影響を与える程の著しいトナー固着が存在する。
【0047】
−表面性の評価−
射出成形によって得られた加硫前の導電性弾性体層の表面を目視で観察し、架橋シリコーンゴム粒子の析出の有無を以下の評価基準に従って評価した。
○:架橋シリコーンゴム粒子の析出はない。
△:架橋シリコーンゴム粒子の析出が僅かにある。
×:著しい架橋シリコーンゴム粒子の析出がある。
【0048】
−成形性の評価−
射出成形時の導電性ゴム組成物の状態を、以下の評価基準に従って評価した。
○:組成物の分離(架橋シリコーンゴム粒子の析出)はない。
△:組成物の分離(架橋シリコーンゴム粒子の析出)が僅かにある。
×:架橋シリコーンゴム粒子がゴム組成物と分離している。
【0049】
−材料相溶性の評価−
射出成形によって得られた加硫前の導電性弾性体層の端部を切断し、その切断面を目視で観察して、架橋シリコーンゴム粒子の分散状態を評価した。なお、評価基準は以下の通りである。
○:架橋シリコーンゴム粒子は均一に分散している。
△:架橋シリコーンゴム粒子が偏在している部分がある。
×:著しく架橋シリコーンゴム粒子が偏在している部分がある。
【0050】
−抵抗のバラツキの評価−
図1に示すように、作製した導電性ロールの両端を所定の荷重にて金属ロール(直径:24mm)に押圧した状態で、かかる金属ロールを所定の回転数にて図中の矢印方向に回転させることにより、導電性ロールを連れ回りさせた。かかる状態を保ちながら(金属ロール及び導電性ロール共に回転させながら)、導電性ロールと金属ロールの端部間に300Vの電圧を印加して、流れる電流値を測定した。所定時間、連続的に測定した電流値中の最大電流値:Imax と最小電流値:Imin を用いて、式:[{Imax −Imin }/{(Imax +Imin )/2}]×100[%]より抵抗のバラツキを示す数値を算出し、この数値が10%未満の場合には○と、10%以上20%未満の場合には△と、20%以上の場合には×と、評価した。なお、導電性ロールにおける抵抗のバラツキが小さいほど、かかる数値は小さくなり、帯電均一性に優れていることを示す。
【0051】
以上のようにして各評価を行なった後、各評価における「◎」を2点、「○」を1点、「△」を0点、「×」を−1点と数値化し、それらの合計点を算出した。得られた合計点が6点以上の場合には「○」と、3〜5点の場合には「△」と、1〜2点の場合には「×」と評価した。その結果も、下記表1及び表2に併せて示す。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
上記表1及び表2の結果からも明らかなように、本発明に従う導電性ゴム組成物(本発明例1〜7)にあっては、射出成形の際の成形性に優れていると共に、それを用いて導電性弾性体層を形成しめた導電性ロールが、優れた帯電均一性及び低へたり性を示すことが認められた。また、かかる導電性ロールは、帯電ロールとして用いると、その表面へのトナー固着も少なく、高画質な画像を提供することが出来たことから、総合的に優れた特性を発揮するものであることが、確認されたのである。
【0055】
これに対して、本発明の範囲外の導電性ゴム組成物(比較例1〜8)にあっては、個々の特性においては優れた特性を発揮するものではあるものの、総合的に判断すると、特に従来より小型化が要求されている帯電ロールとしては実用に供し難いものであることも、認められたのである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例における導電性ロールに流れる電流値の測定方法を、模式的に示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピクロルヒドリン系ゴム材料の100重量部に対して、液状ポリマーの1〜15重量部と、トルエン不溶出分が80重量%以上である架橋シリコーンゴム粒子の1〜40重量部とが、それら液状ポリマー及び架橋シリコーンゴム粒子の合計量が15〜41重量部の範囲内となる割合において配合されてなる導電性ゴム組成物
【請求項2】
イオン導電剤の0.1〜5重量部が更に配合されている請求項1に記載の導電性ゴム組成物。
【請求項3】
前記液状ポリマーが、液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合体又は液状ブタジエンゴムである請求項1又は請求項2に記載の導電性ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の導電性ゴム組成物を用いて得られる導電性ロール。


【図1】
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【公開番号】特開2008−248149(P2008−248149A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92890(P2007−92890)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】