説明

導電性シリコーンゴム組成物

【課題】高温、特に180℃以上のポストキュア後、例えば30%以上圧縮しても、電気抵抗の安定性に優れたシリコーンゴムを与える導電性シリコーンゴム組成物を提供する。
【解決手段】(A)平均組成式 R1nSiO(4-n)/2 (1)
(式中、R1は同一又は異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基、nは1.95〜2.04の正数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)金属粉末:50〜800質量部、
(C)イオン導電性添加塩0.0001〜10質量部、及び
(D)硬化剤:有効量
を含有してなる導電性シリコーンゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温でポストキュアを行っても、圧縮抵抗値が安定した硬化物を与える導電性シリコーンゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀粉末を配合した導電性シリコーンゴム組成物は、低抵抗のシリコーンゴムとなるため、電磁波シールド材、水晶振動子の基材に対する接着剤として、また半導体素子用のダイボンディング剤などとして使用されている。銀粉末を使った、導電性シリコーンゴム組成物として、縮合硬化型導電性シリコーンゴム組成物(特開昭60−199057号公報:特許文献1)や室温硬化型導電性シリコーンゴム組成物(特開2005−298661号公報:特許文献2)、付加反応硬化型導電性シリコーンゴム組成物(特開平03−170581号公報、特開2006−328302号公報:特許文献3,4)がある。
【0003】
一方、電子回路基板間等を接続するために、絶縁性の基板に複数の導電性シリコーンゴム素子を貫通支持させた電気コネクタ(特開2004−31203号公報:特許文献5)や、導電性シリコーンゴム層と絶縁性エラストマ層とをゼブラ状に積層させているゼブラコネクタ(特開2005−100884号公報:特許文献6)などが使用されている。これらのコネクタはゴムを圧縮させ接続させている。このような用途に使用される導電性シリコーンゴム組成物としては、球状銀粉末を使用したもの(特開2002−212426号公報:特許文献7)や、塩基性化合物で処理された扁平状の銀粉末を使用したもの(特開2004−149707号公報:特許文献8)がある。いずれの銀粉末を使用しても、高温でポストキュアを行い、低分子シロキサンを低減させると、圧縮抵抗値が上昇してしまうという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開昭60−199057号公報
【特許文献2】特開2005−298661号公報
【特許文献3】特開平03−170581号公報
【特許文献4】特開2006−328302号公報
【特許文献5】特開2004−31203号公報
【特許文献6】特開2005−100884号公報
【特許文献7】特開2002−212426号公報
【特許文献8】特開2004−149707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高温、特に180℃以上のポストキュア後、例えば30%以上圧縮しても、電気抵抗の安定性に優れたシリコーンゴムを与える導電性シリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、金属粉末に加えて、イオン導電性添加塩を添加した導電性シリコーンゴム組成物が、例えば180℃以上のポストキュア後、30%以上圧縮しても、電気抵抗の安定性に優れる硬化物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0007】
従って、本発明は、
(A)下記平均組成式(1)
1nSiO(4-n)/2 (1)
(式中、R1は同一又は異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基、nは1.95〜2.04の正数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)金属粉末:50〜800質量部、
(C)イオン導電性添加塩0.0001〜10質量部、及び
(D)硬化剤:有効量
を含有してなる導電性シリコーンゴム組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の導電性シリコーンゴム組成物は、高温でポストキュアを行っても、圧縮抵抗値が安定した硬化物が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の導電性シリコーンゴム組成物は、
(A)下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、
1nSiO(4-n)/2 (1)
(式中、R1は同一又は異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基、nは1.95〜2.04の正数である。)
(B)金属粉末、
(C)イオン導電性添加塩、及び
(D)硬化剤
を含有してなるものである。
【0010】
[(A)成分]
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、下記平均組成式(1)
1nSiO(4-n)/2 (1)
(式中、R1は同一又は異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基、nは1.95〜2.04の正数である。)
で表されるものである。
【0011】
上記式(1)中、R1としては、例えば、同一又は異種の非置換もしくは置換の炭素原子数1〜20、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8の1価炭化水素基が挙げられる。R1の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;β−フェニルプロピル基等のアラルキル基;又はこれらの炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などが挙げられる。
【0012】
上記式(1)中、nは1.95〜2.04、好ましくは1.98〜2.02の正数である。このnが1.95〜2.04の範囲でないと、得られる組成物の硬化物が十分なゴム弾性を示さないことがある。
【0013】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、分子鎖末端がトリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基、メチルジビニルシリル基、トリビニルシリル基などで封鎖されたものであることが好ましく、少なくとも1つのビニル基を有するシリル基(例えば、ジメチルビニルシリル基、メチルジビニルシリル基、トリビニルシリル基など)で封鎖されたものであることが特に好ましい。
【0014】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、一分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有することが好ましく、具体的には、R1のうち0.001〜10モル%、特に0.01〜5モル%がアルケニル基であることが好ましい。該アルケニル基の例としては、好ましくはビニル基及びアリル基が挙げられ、特に好ましくはビニル基である。
【0015】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの平均重合度は、100以上であることが好ましく、3,000〜100,000の範囲であることがより好ましく、4,000〜20,000の範囲であることが特に好ましい。平均重合度は、ポリスチレンを分子量マーカーとしてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により数平均分子量を測定し、式:
平均重合度=数平均分子量/(A)成分の繰り返し単位の分子量
により計算して求めることができる。(A)成分中に複数種の繰り返し単位が含まれる場合、上記式中の「(A)成分の繰り返し単位の分子量」はこれら複数種の繰り返し単位の数平均分子量である。
【0016】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で用いても、平均重合度や分子構造の異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
[補強性シリカ]
本発明においては、機械的強度等を付与するために、(A)成分のオルガノポリシロキサンに補強性シリカを配合してもよい。
【0018】
補強性シリカとしては、ヒュームド(煙霧質)シリカ、沈降(湿式)シリカが挙げられる。これらのシリカは、BET法による比表面積が50m2/g以上であることが好ましく、特に100〜400m2/gであることが好ましい。
【0019】
このようなシリカは、必要に応じてその表面をオルガノポリシロキサン、シラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等の表面処理剤で表面処理されたシリカを用いてもよい。また、(A)成分のオルガノポリシロキサンに、これら微粉末シリカを配合する時に上記表面処理剤を配合してもよい。
【0020】
補強性シリカの配合は任意であるが、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0〜100質量部、好ましくは1〜80質量部、特に好ましくは5〜50質量部配合する。配合量が少なすぎると十分なゴム強度が得られない場合がある。更に生ゴムを原料とするミラブルゴムの場合、加工性が低下する場合がある。また、配合量が多すぎると配合が困難となる場合があり、ゴム物性が低下してしまう場合もある。
【0021】
[(B)成分]
(B)成分の金属粉末としては、銀、金、白金、パラジウム等の貴金属粉、銅、銅合金、ニッケル等の非貴金属粉、銀めっき銅粉、ニッケルめっき銅粉等のめっき金属粉が挙げられる。特に、銀粉が好ましい。銀粉の銀は、純銀又は銀合金などが用いられる。銀合金としては、銀を50質量%以上、特に70質量%以上含む銀−銅合金、銀−パラジウム合金が代表的であり、その他亜鉛、錫、マグネシウム、ニッケル等の金属を有する銀合金が挙げられる。
【0022】
(B)成分の銀粉等の金属粉末の形状としては、公知のフレーク状(リン片状)、球状、樹枝状(デンドライト状)、球状の1次粒子が3次元状に凝集した形状などがあるが、この内、フレーク状、球状の1次粒子が3次元状に凝集した形状が特に好ましい。
【0023】
(B)成分の金属粉末は、タップ密度が好ましくは1.5g/cc以下である。より好ましくは0.1〜1.3g/cc、特に0.3〜1.2g/ccが望ましい。タップ密度が1.5g/ccを超えると解凝集が起こりにくくなり、分散性が悪くなることがある。また、真密度(真比重)−タップ密度(かさ比重)は、好ましくは7.3g/cc以上、より好ましくは7.5g/cc以上である。7.3g/cc未満では分散性が悪くなることがある。
【0024】
なお、タップ密度は嵩密度の一種で、しばしばかさ比重と同義的に用いられる。嵩密度の測定法は、粉体を一定の容器に充填した時、その質量を容積で割った値(g/cm3)で求められる。粉体の充填時に振動を与えないで、できるだけ粗につめた時を静嵩密度、振動を与えて、できるだけ密になるようにつめた時をタップ密度という。
【0025】
(B)成分の銀粉等の金属粉末は、一次粒子の平均粒径が0.01〜10μmの範囲が好ましく、特に平均粒径0.1〜5μmの範囲が好ましい。平均粒径が小さすぎると、表面に酸化物ができやすくなり、平均粒径が大きすぎると、導電性シリコーンゴムの抵抗安定性が低下することがある。
(B)成分の銀粉等の金属粉末は、凝集粒子の平均粒径が10μmを超えて1,000μm以下が好ましく、特に平均粒径15〜800μmの範囲が好ましい。10μm以下であると、経時で凝集が進み、不均一な凝集が生じる場合があり、1,000μmを超えると、導電ペーストとした場合、表面形状が滑らかでなくなる場合がある。
なお、上記平均粒径は、レーザー法、沈降法等の一般的な粒度分布測定法で求めることができる。
【0026】
(B)成分の銀粉等の金属粉末は、金属塩水溶液を還元剤により還元したり、電気分解により陰極上に析出させたり、溶融金属を水中又は不活性ガス中に噴霧すること等によって得られる。例えば、銀粉の場合は、それぞれ、還元銀粉、電解銀粉、アトマイズ銀粉である。還元銀粉は、硝酸銀水溶液をヒドラジン、ホルムアルデヒド、アスコルビン酸等の還元剤により還元して粒状に調製したものであり、電解銀粉は、硝酸銀水溶液を電気分解により陰極上で樹枝状に析出したものである。また、アトマイズ銀粉は、1,000℃以上に加熱溶融した溶融銀を、水中又は不活性ガス中に噴霧することにより調製したものである。あるいは銀被覆銅粉の場合、特開平3−247702号公報、特開平4−268381号公報等に示されるような銅の表面に銀の粒子をアトマイズ法と呼ばれる方法で被覆して製造される。
【0027】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して50〜800質量部であり、好ましくは100〜700質量部である。これは、(A)成分100質量部に対して(B)成分が50質量部未満であると、得られるシリコーンゴムに十分な導電性を付与することができないためであり、また、800質量部を超えると、得られる組成物の作業性が著しく損なわれる。
【0028】
[(C)成分]
(C)成分のイオン導電性添加塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの周期律表第1族金属塩、又はカルシウム、バリウムなどの周期律表第2族金属塩などが挙げられる。具体的なイオン導電性添加塩としては、LiClO4、Li(CF3SO3)、LiN(CF3SO22、LiAsF6、LiCl、NaSCN、KSCN、NaCl、NaI、KIなどのアルカリ金属塩や、Ca(ClO42、Ba(ClO42などが挙げられる。低抵抗値及び溶解性の点からリチウム塩であることが好ましく、特に、LiClO4、Li(CF3SO3)、LiN(CF3SO22、LiAsF6、LiClが好ましい。
【0029】
(C)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対して0.0001〜10質量部であり、好ましくは0.001〜10質量部であり、より好ましくは0.01〜5質量部である。0.0001質量部未満の場合、目的の抵抗値が得られず、10質量部より多くても効果はない。
【0030】
(C)成分は、熱硬化型シリコーンゴム組成物中の分散性を向上させ、安定した効果を発揮させるために、オルガノポリシロキサンでペースト化しておくことが好ましい。この場合、オルガノポリシロキサンは生ゴム状でもオイル状でもよい。好ましくはジメチルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサンである。また、このペーストには作業性を向上させるために珪藻土等の充填剤を添加してもよい。この場合、オルガノポリシロキサンとして上記(A)成分のオルガノポリシロキサンの一部を用いることができ、また上記補強性シリカの一部を充填剤としてペーストに配合してもよい。ペーストにおけるイオン導電性添加塩の濃度は、好ましくは2〜90質量%、より好ましくは5〜80質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。
【0031】
[(D)硬化剤]
(D)成分は硬化剤であり、本発明のシリコーンゴム組成物を硬化させ得るものであれば特に限定されない。(D)成分は1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。(D)成分としては、例えば、加熱により該シリコーンゴム組成物を硬化させ得る硬化剤が挙げられ、好ましい例としては、(D−1)付加反応型硬化剤、(D−2)有機過酸化物硬化剤、及び(D−1)成分と(D−2)成分との組み合わせが挙げられる。
【0032】
〔(D−1)付加反応型硬化剤〕
(D−1)成分としては、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化触媒を組み合わせて用いられる。
【0033】
ヒドロシリル化触媒は、(A)成分のアルケニル基と(D−1)成分中のオルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子(以下、Si−H基と呼ぶことがある。)とを付加反応させる触媒である。
【0034】
ヒドロシリル化触媒としては、白金族金属系触媒が挙げられ、白金族金属系触媒としては、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の触媒として従来公知のものが使用できる。より具体的には、例えば、白金族の金属単体とその化合物が挙げられる。例えば、シリカ、アルミナ又はシリカゲルのような担体に吸着させた微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸6水塩のアルコール溶液、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられるが、白金又は白金化合物が好ましい。
【0035】
ヒドロシリル化触媒の添加量は、上記付加反応を促進できる量であればよく、好ましくは白金族金属量に換算して(A)成分のオルガノポリシロキサンの質量に対して1ppm〜1質量%の範囲で使用され、より好ましくは0〜500ppmの範囲で使用される。該添加量が1ppm未満であると、付加反応が十分促進されず、硬化が不十分である場合があり、一方、1質量%を超えると、これより多く加えても、反応性に対する影響も少なく、不経済となる場合がある。
【0036】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1分子中に2個以上、好ましくは3個以上のSi−H基を含有すれば、直鎖状、環状、分枝状のいずれであってもよく、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることができ、例えば、下記平均組成式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることができる。
2pqSiO(4-p-q)/2 (2)
【0037】
上記平均組成式(2)中、R2は、非置換又は置換の一価炭化水素基を示し、同一であっても異なっていてもよく、脂肪族不飽和結合を除いたものであることが好ましい。通常、炭素数1〜12、特に1〜8のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基等のアラルキル基、及びこれらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子等で置換した基、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。なお、p,qは0≦p<3、好ましくは1≦p≦2.2、0<q≦3、好ましくは0.002≦q≦1、0<p+q≦3、好ましくは1.002≦p+q≦3を満たす正数である。
【0038】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、Si−H基を1分子中に2個以上、好ましくは3個以上有するが、これは分子鎖末端にあっても、分子鎖の途中にあっても、その両方にあってもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、25℃における粘度が0.5〜10,000mm2/sであることが好ましく、1〜300mm2/sであることがより好ましい。なお、本発明において、粘度はキャノンフェンスケ(SIBATA製)により測定することができる。
【0039】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、具体的に下記構造式の化合物を例示することができる。
【化1】

(式中、kは2〜10の整数、s及びtは0〜10の整数である。)
【0040】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分100質量部に対し、0.1〜40質量部が好ましい。また(A)成分の脂肪族不飽和結合(アルケニル基)1個に対し、ケイ素原子に結合した水素原子(≡Si−H基)の割合が0.5〜10個の範囲が適当であり、好ましくは0.7〜5個となるような範囲が適当である。0.5個未満であると架橋が十分でなく、十分な機械的強度が得られない場合があり、また10個を超えると硬化後の物理特性が低下し、特に耐熱性と圧縮永久歪特性が悪くなる場合がある。
【0041】
また、(D−1)成分の付加反応型硬化剤を用いる場合には、上記の触媒のほかに硬化速度を調整する目的で、反応制御剤を使用してもよい。具体的には、エチニルシクロヘキサノール等のアセチレンアルコール系制御剤やテトラシクロメチルビニルポリシロキサン等が挙げられる。
【0042】
〔(D−2)有機過酸化物硬化剤〕
(D−2)成分として用いられる有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−t−ブチルパーオキシカーボネート等が挙げられる。
【0043】
有機過酸化物の添加量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜10質量部、特に0.2〜5質量部が好ましい。添加量が少なすぎると硬化し難くなる場合があり、多すぎても、それ以上の効果はなく経済的ではなく、また分解残渣が多くなる場合がある。
【0044】
本発明においては、上記(D−1)成分と(D−2)成分とを組み合わせて使用することもできる。この場合、上記(D−1)成分の配合量は、ヒドロシリル化触媒を、白金族金属として(A)成分の質量に対して0.5〜1,000ppm、特に1〜500ppm程度配合することが好ましく、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを上記と同量配合することが好ましい。また、上記(C−2)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましい。
【0045】
本発明の導電性シリコーンゴム組成物は、硬化、好ましくは加熱硬化させることにより導電性に優れたシリコーンゴムとなる。成形方法としては、目的とする成形品の形状や大きさにあわせて公知の成形方法を選択すればよい。例えば、注入成形、圧縮成形、射出成形、カレンダー成形、押出成形、コーティング、スクリーン印刷などの方法が例示される。硬化条件としてもその成形方法における公知の条件でよく、一般的に60℃〜200℃の温度で数秒〜1日程度である。また、硬化物の圧縮永久歪を低下させたり、シリコーンゴム中に残存している低分子シロキサン成分を低減する、あるいは有機過酸化物の分解物を除去する等の目的で、200℃以上、好ましくは200℃〜250℃のオーブン内等で1時間以上、1時間〜70時間程度、好ましくは1時間〜10時間のポストキュア(2次キュア)を行ってもよい。
【0046】
このようにして得られた導電性シリコーンゴム組成物の硬化物は、50%圧縮抵抗値が0.03Ω以下のものとなり、電気コネクタ材として使用することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0048】
下記のようにイオン導電性添加塩ペーストを調製した。
[イオン導電性添加塩ペーストの調製]
末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン生ゴム42質量部、比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(R−972、日本アエロジル(株)製)8質量部、LiN(SO2CF32を20質量%含有するアジピン酸エステル50質量部を混練し、イオン導電性添加塩ペーストを調製した。
【0049】
[実施例1]
ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約6000であるオルガノポリシロキサン100質量部、銀粉(タップ密度1.59g/cc、比表面積0.69m2/g)530質量部、イオン導電性添加塩ペーストを0.5質量部、ジクミルパーオキサイド0.5質量部を添加し、170℃、100kgf/cm2の条件で10分間プレスキュアを行い、1mm厚のシートを作製した。次いで200℃のオーブンで1時間ポストキュアを実施した。
このシートから、厚さ×幅×長さ=1.0×1.0×2.0mmのサンプルを切り出し、図1に示すように、電極1(高さ×幅×長さ=0.1×20×30mm),電極2(高さ×幅×長さ=0.1×1.0×30mm)間に、該サンプル3を図1に示す向き(電極2と直角になる方向)で挟み、リニアモーターアクチュエーター(GLM20−040タイプ、THK製)を用いて該サンプルを50%に圧縮し、このときの抵抗値を測定した。結果を表1に示す。
また、上記シートから、厚さ×幅×長さ=1.0×20×150mmのサンプルを切り出し、このサンプルの体積抵抗率をSRIS−2301に準じて測定した。結果を表1に示す。
【0050】
[実施例2]
イオン導電性添加塩ペーストの添加量を3質量部とした以外は、実施例1と同様にして50%圧縮抵抗値及び体積抵抗率を測定した。
【0051】
[実施例3]
銀粉(タップ密度1.67g/cc、比表面積0.62m2/g)550質量部、イオン導電性添加塩ペーストを2質量部添加した以外は、実施例1と同様にして50%圧縮抵抗値及び体積抵抗率を測定した。
【0052】
[比較例1]
イオン導電性添加塩ペーストを添加しない以外は、実施例1と同様にして50%圧縮抵抗値及び体積抵抗率を測定した。
【0053】
[比較例2]
イオン導電性添加塩ペーストを添加しない以外は、実施例3と同様にして50%圧縮抵抗値及び体積抵抗率を測定した。
【0054】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施例における50%圧縮抵抗値測定の概略説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 電極
2 電極
3 サンプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記平均組成式(1)
1nSiO(4-n)/2 (1)
(式中、R1は同一又は異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基、nは1.95〜2.04の正数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)金属粉末:50〜800質量部、
(C)イオン導電性添加塩0.0001〜10質量部、及び
(D)硬化剤:有効量
を含有してなる導電性シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(B)成分の金属粉末が、銀粉であることを特徴とする請求項1に記載の導電性シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
(C)成分のイオン導電性添加塩が、リチウム塩である請求項1又は2記載の導電性シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
(C)成分のイオン導電性添加塩が、LiClO4、Li(CF3SO3)、LiN(CF3SO22、LiAsF6、LiClから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項3記載の導電性シリコーンゴム組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−291122(P2008−291122A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138655(P2007−138655)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】