説明

導電性ローラの製造方法及び導電性ローラ

【課題】緻密なコントロールが求められる導電性ローラの表面層形成用塗工液の分散を改善し、表面層を安定してある水準以上の表面粗さ及び表面積比を制御可能とし、良好な画像を形成可能な導電性ローラとその製造方法を提供することにある。
【解決手段】導電性芯金上に、導電性ゴム基層を有し、最表面に架橋樹脂粒子が分散された表面層を有する導電性ローラであって、該導電性ローラの表面粗さRaは1.5乃至2.5μmであり、かつ、下記式(I)で表される表面積比が1.2乃至2.0であるようにする。
表面積比=S/S0 (I)
(式中、Sは導電性ローラ表面の実測表面積であり、S0は該導電性ローラの表面を理想的な平面とした場合の理論表面積である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真装置、静電記録装置等に用いられる導電性ローラに関する。詳しくは、導電性カーボンブラックを含む表面層形成用塗工液により形成された表面層を有する導電性ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真装置では、光導電性を有する感光体表面を帯電し、感光体の表面に画像光を露光して静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを静電吸着させてトナー像として顕在化し、このトナー像を用紙に転写し、その転写像を圧力や熱にて用紙に定着する。また、転写後に感光体表面は、残留トナーが除去され(クリーニングされ)、再度、帯電、露光、現像などが繰り返される。これら工程において種々のローラが使用されている。つまり、帯電工程では帯電ローラ、現像工程では現像ローラ、転写工程では転写ローラなどである。
【0003】
現在の電子写真装置おいて、接触式一成分現像装置が主に使用されている。このような接触式一成分現像装置に用いる導電性ローラとして、半導電性弾性ローラを用いるのが主流となっている。具体的には、導電剤を添加することにより中抵抗領域に調整された厚さ数mmのゴムで構成された弾性層の周面上に、厚さ数μm乃至数十μmの同じく導電剤を添加することにより中抵抗領域に調整された樹脂層(表面層)で構成されたローラが用いられている。
【0004】
この表面層の形成には、樹脂及び導電剤等の添加剤を有機溶剤等に溶解あるいは分散して塗布液となし、これを弾性層の表面上に塗工することにより形成する方法が採用されることがある。この塗工液を作製する方法として、ビーズ等を用いたミルによる分散が挙げられる。
【0005】
弾性層、表面層を導電性にするために、導電剤が適宜選択されて使用されている。ここで、導電剤としては、弾性層用のゴム、樹脂に、また表面層用の樹脂への、混練性、分散性、成形性、経済性などに優れる点からカーボンブラックが使用されることが多い。
【0006】
ところで、カーボンブラックは、各種炭化水素を不完全燃焼させて得られる微細な球状粒子の集合体である。樹脂やゴムに少量充填するだけで高い導電性を発現しうるカーボンブラックは、特に導電性カーボンブラックと呼ばれ、通常のカーボンブラックと区別されている。それに伴い、通常のカーボンブラックと比べて高い導電性を発現する導電性カーボンブラックは、高濃度に微分散させることが困難であり、また分散安定性も悪く、経済性にも劣るといった問題がある。
【0007】
導電性カーボンブラックは、導電性フィラーとして広く普及しているものの、その粒子径やストラクチャーが小さくなるほど、粒子間の凝集力が強くなる。そのために、樹脂やゴム中への分散性が悪くなり、また分散しても再凝集して集合体となりやすく、分散が困難になるといった欠点を有するものであるため、そのさらなる開発が待ち望まれている。
【0008】
一方、表面層塗工液の調製では、最初に表面層樹脂材料にカーボンブラックを分散させ、分散が十分に進行したところに、溶剤中に分散させた架橋樹脂粒子を添加するという手順で行われる。そのとき、架橋樹脂粒子分散液の添加により、カーボンブラック分散液と該架橋樹脂粒子を分散させている溶剤との接触により、いわゆる溶剤ショックを起こし、カーボンブラックが再凝集する。その結果、塗工液は、チクソ性が消失し、塗工時に架橋樹脂粒子を弾性層(導電性ゴム基層)上に十分な量、保持することができず、導電性ローラとして重要な機能である表面粗さや表面積比を、架橋樹脂粒子添加によりあげることができない問題があった。
【0009】
カーボンブラックが再凝集するのを防ぐ手段として、水系分散液に対してではあるが、分散液に対して無機粉粒体、分散剤、水性媒体、水溶性増粘剤を含む希釈液で濃度調整を行う方法が提案されている(特許文献1)。
【0010】
しかし、この特許文献1に記載の方法では、導電性ローラの機能とは関連しない成分を含有させることとなり、導電性ローラと直接接触する感光体に影響を与えるリスクが生じる。また、製造に必要な原料を増やすことによって、コスト面についても不利になる。
【特許文献1】特許登録03909191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、緻密なコントロールが求められる導電性ローラの表面層形成用塗工液の分散を改善し、表面層を安定して、ある水準以上の表面粗さ及び表面積比で制御可能とし、良好な画像を形成可能な導電性ローラとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、綿密な制御が求められる導電性ローラの表面層形成用塗工液の分散について、安定かつ、塗工液として性能を満足する分散方法を鋭意検討した。その結果、架橋樹脂粒子分散液の添加の方法によって、導電性ローラの表面層として形成した場合の表面粗さや表面積比が変わることが明らかとなった。さらに検討したところ、特定のカーボンブラックを用いた場合において、架橋樹脂粒子分散液を、ある一定速度以下で添加をすることによって、導電性ローラの表面層として形成した場合、安定して一定水準の表面粗さと表面積比を有する導電性ローラが得られることも明らかとなった。本発明はこれらの知見に基づいてなされたものである。
【0013】
すなわち、本発明は、導電性芯金上に、導電性ゴム基層を有し、最表面に架橋樹脂粒子が分散された表面層を有する導電性ローラであって、該導電性ローラの表面粗さRaは1.5乃至2.5μmであり、かつ、下記式(I)で表される表面積比が1.2乃至2.0であることを特徴とする導電性ローラである。
表面積比=S/S0 (I)
(式中、Sは導電性ローラ表面の実測表面積であり、S0は該導電性ローラの表面を理想的な平面とした場合の理論表面積である。)
【0014】
また、本発明は、導電性芯金上に、導電性ゴム基層を有し、最表面に架橋樹脂粒子が分散された表面層を有する、上記導電性ローラの製造方法であって、下記工程により調製された表面層塗工液を導電性ゴム基層に塗布することにより表面層を形成することを特徴とする導電性ローラの製造方法である:
表面層形成用樹脂原料及び溶剤混合液の中に、表面層形成用樹脂に対し5乃至30質量%のカーボンブラックを分散させ、A液を得る工程;
粒子径が3乃至30μmである架橋樹脂粒子を溶剤中に10乃至40質量%の濃度で分散させ、B液を得る工程;及び、
攪拌しているA液中に、添加速度が1秒当たりB液量の1/200以下であり、かつ、その添加量がA液に対して質量比(B/A)で2倍以下であるように、B液を加える工程。
【0015】
さらに、本発明は、カーボンブラックは、DBP吸収量が120ml/100g以下であり、平均一次粒子径が0.03μm以下であり、pHが8.0以下であり、粉状であり、かつ、該カーボンブラックの比着色力が90%乃至150%である上記の導電性ローラの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、緻密なコントロールが求められる導電性ローラの表面層形成用塗工液の分散が改善されているので、表面層が安定してある水準以上の表面粗さに制御可能された、良好な画像が形成可能な導電性ローラが提供される。また、安定した表面粗さの導電性ローラその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、電子写真装置の帯電、現像、転写部位で用いられる導電性ローラであって、導電性芯金上に、導電性ゴム基層を有し、最表面に架橋樹脂粒子が分散された表面層を有する導電性ローラにかかる。
【0018】
本発明の導電性ローラは、基本的な構成が図1((a)斜視図、(b)断面図)に示したようになっている。すなわち、上記したように、本発明の導電性ローラ1は、導電性時芯金2の回りに導電性ゴム基層3(弾性層ともいう)が設けられており、更にその外層として架橋樹脂粒子5を含む表面層4が形成されている。
【0019】
本発明では、該導電性ローラ1はその表面粗さRaが1.5乃至2.5μmであり、かつ、下記式(I)で表される表面積比が1.2乃至2.0であることが必要である。
表面積比=S/S0 (I)
(式中、Sは導電性ローラ表面の実測表面積であり、S0は該導電性ローラの表面を理想的な平面とした場合の理論表面積である。)
【0020】
なお、表面粗さRaは、JIS B0601―2001に準拠する、表面粗さ測定器「サーフコーダSE3500」(商品名、株式会社小坂研究所製)にて、長手方向3箇所、周方法3箇所の計9ヶ所を測定し、長手方向のそれぞれでの測定値を平均したものである。ここで、基準線長さ及びカットオフ値はそれぞれ25mm、2.5mmとした。
【0021】
また、導電性ローラ表面の表面積は、表面粗さRaを測定した箇所のほぼ中央を、超深度形状測定顕微鏡「VK−8510」(商品名、株式会社キーエンス製)を用いて、0.03mm2の範囲の面積を実測したものである。なお、長手方向のそれぞれの測定値を平均して評価に供する。
【0022】
表面粗さRaが2.5μmを超えると、連続使用すると当接している感光体などを削ることがあり、その削れのために現像ローラ上のトナー付着性にムラが生じ、結果として画像ムラが発生する問題がある。また、表面粗さRaが1.5μm未満ではトナーの搬送性が劣るようになり、適正な濃度を出すことが困難になるので好ましくない。
【0023】
一方、現像ローラの表面積比が2.0を超えると、トナー搬送性が大きくなりすぎるために現像ローラ上へのトナー付着性にムラが生じ、特にハーフトーン画像においてムラが発生することがある。また、表面積比が1.2を下回る場合には、現像ローラにおいてトナー搬送性が低下し、適正な濃度を出すことが困難となることがある。
【0024】
また、表面層の厚みとしては、5μm乃至80μm、特に10μm乃至50μmとするのが望ましい。表面層が厚み5μmより薄いと弾性層中から低分子量成分が染み出して感光体を汚染したり、表面層が剥れたりする恐れがあり、80μmより厚いと現像ローラの表面が硬くなり、トナー劣化を引き起こしやすく、画像性能が低下することがあり、好ましくない。
【0025】
本発明の導電性ローラは、上記のような構造を有するものであるが、好ましくは、以下のようにして製造される。
【0026】
すなわち、導電性芯金上に、導電性ゴム基層が形成され、その上に更に架橋樹脂粒子が分散された表面層を形成する。ここにおいて、以下の工程により調製された表面層塗工液を該導電性ゴム基層に塗布する。
【0027】
工程1:表面層形成用樹脂原料及び溶剤混合液の中に、表面層形成用樹脂に対し5乃至30質量%のカーボンブラックを分散させ、A液を得る。
工程2:粒子径が3乃至30μmである架橋樹脂粒子を溶剤中に10乃至40質量%の濃度で分散させ、B液を得る。
工程3:攪拌しているA液中に、添加速度が1秒当たりB液量の1/200以下であり、かつ、その添加量がA液に対して質量比(B/A)で2倍以下であるように、B液を加える。
【0028】
表面層形成用樹脂としては、導電性ゴム基層(弾性層)の材質により適宜好ましいものが選択されるが、塗工液とし易いこと、塗膜(表面層)の耐久性が良好であることから、ポリウレタン樹脂であることが好ましい。
【0029】
表面層形成用樹脂として、ポリウレタン樹脂を用いた時、該原料はポリオール及びイソシアネートであり、カーボンブラックを分散する分散媒は、ポリオール及びイソシアネートを含む。また、溶剤としては、特にこれに限定されるものではないが、例えば、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、トルエン等の芳香族類、酢酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン等のエーテル類が挙げられる。
【0030】
本発明で用いるカーボンブラックは、表面層の導電性を整えるために加えるもので、導電性ローラを製造するのに使用されるものから適宜選択して用いることができる。しかしながら、本発明においては、そのDBP吸収量が120ml/100g以下であり、平均一次粒子径が0.03μm以下であり、かつpHが中性ないし酸性の領域に含まれるものが好ましい。
【0031】
カーボンブラックのDBP吸収量が、120g/100g超であると、カーボンブラックを高濃度で分散させた際に、粘度が非常に高く、流動性に欠け、かつ分散性に劣り、導電性が低下する(漆黒性に劣り、微粒子になりにくい)といった多大な影響がある。つまり、このようなカーボンブラックを使用した表面層塗工液では導電性ローラの膜厚を均一にし、十分な導電性を持たせることが困難であることが多い。そこでかかる影響が及ばないDPB吸収量120ml/100g以下、好ましくは60ml/100g以下であることが好ましい。
【0032】
カーボンブラックの平均一次粒子径が、カーボンブラックを十分に高濃度で分散させることができるので、0.03μm以下、好ましくは0.025μm以下であることがこの案しい。0.03μm超であると、高濃度に微分散させることが困難となりやすく、また分散安定性も悪くなりやすいことから、導電性ローラに必要な導電性を持たせることが困難であったり、経時による塗工液中でカーボンブラックが再凝集したりしやすい。
【0033】
さらに、カーボンブラックは、分散媒に含まれるポリオール及びイソシアネートとの相溶性を考慮すると、そのpHは8.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは7.0以下である。pHはカーボンブラック水懸濁液を煮沸後に冷却した泥状物のpH値を指す。
【0034】
また、カーボンブラックは、分散性によりすぐれる点から、粉状であることが好ましく、また着色効果の点から、その比着色力が90%乃至150%であることが好ましい。なお、カーボンブラックの比着色力とは、JIS K6217−5:2001に規定されており、色の濃さ、すなわち白色顔料に対する隠遮度を表わすものであり、その値が大きいほど着色力が高い。カーボンブラックの場合、粒子径が小さく、比表面積が大きいほど比着色力も高くなるが、分散性や得られる分散体の粘度を考慮すると、比着色力は95%以上、好ましくは105%以上であることが望ましく、また、145%以下であることが望ましい。
【0035】
本発明においては、好ましくは前記のようなカーボンブラックを表面層形成用樹脂原料及び溶剤混合液の中に分散させる。
【0036】
前記カーボンブラックは、樹脂原料に対し、通常、5乃至30質量%で添加するのが好ましい。カーボンブラックの添加量を5質量%以上とすると、表面層に導電性を付与することができ、30質量%までで必要量のカーボンブラックを加えることにより、導電性をコントロールすることが可能となる。
【0037】
工程1においては、例えば図2に示す装置を用いることができる。攪拌羽根が装備されたタンク8に分散する前の液を入れ、複数枚の羽根5を備える回転軸(ディスク)6を内部に有する容器(ベッセル)7にビーズ(メディア)を入れ、回転軸6を回転させながら該容器7内にポンプ9を用いてタンク8から配管10を通って液を流す。ベッセル7内で一部分散され配管11を通ってタンク8に戻り、またタンク8からベッセル7へ、さらにタンク8へと液が流れ分散される。つまり循環式ビーズミル方式により、導電性カーボンブラックを分散させる。
【0038】
容器としては特に制限されること無く市販の円筒状容器を用いることができる。また、ここで用いる羽根ならびに回転軸についても、特に制限されることなく市販されているものを使用することができる。
【0039】
メディアとして用いるビーズの種類としては、密度が2.0乃至7.0g/cm3となる範囲内であれば、制限されず使用できる。具体例としてはガラスビーズ、ジルコニアビーズ、ジルコンビーズ、アルミナビーズ、シリカビーズ等が挙げられる。
【0040】
前記カーボンブラックを分散度がJIS K5600−2−5:1999に定める方法で1.5μm以下となるまで分散を行うことが望ましい。これにより、この液を用いて現像ローラを作製し、画像を出力した場合に画像上にまだら模様が発生することを優れて防止できる。また、下限値についてはグラインドゲージ上で目視により確認できる範囲では特に弊害は無いので制限されない。この工程1で得られる分散液をA液とする。
【0041】
一方、所定の表面粗さを得られるように計量した架橋樹脂粒子に、溶剤を添加し、攪拌することによって溶剤に架橋樹脂粒子を分散させたスラリーを得る。この工程2で得られる分散液をB液とする。
【0042】
架橋樹脂粒子としては、平均粒径が3乃至30μmであるものが適当であり、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン等の材質でできた球形状樹脂粒子が用いられることが多い。この球形状樹脂粒子は使用する溶剤により膨潤や溶解が起こらないことが要求される。
【0043】
B液中の架橋樹脂粒子の濃度は、10乃至40質量%であることが好ましい。該濃度が10質量%未満では、B液をA液に添加する際に溶剤添加量が局所的に過剰となることがあり、溶剤ショックを起こしやすくなる。一方、40質量%超では、架橋樹脂粒子の粒子径にもよるが、B液(スラリー)の流動性が悪くなり、B液をA液に添加する操作が困難となりやすい。
【0044】
A液を撹拌している中にB液を添加することによって、架橋樹脂粒子を含有する現像ローラ用の表面層塗工液を得る。このときB液の添加速度は、1秒当たりB液量の1/200以下、好ましくは1/500以下となる速度とする。1秒当たり1/200を超える量を添加すると、架橋樹脂粒子を分散している溶剤との混合・接触において、いわゆる溶剤ショックを起こし、分散系が破壊される。つまり、カーボンブラックの再凝集が発生し、塗工液のチクソ性が消失する。その結果として、浸漬塗工時に架橋樹脂粒子が導電性ゴム基層上に十分な量で保持することができずに、現像ローラとして重要な機能である表面粗さや表面積比が低下する。また、下限値については、緩やかに添加を行うことによる弊害は無いので特に制限されない。ただし、生産性の観点から溶剤ショックを起こさない範囲で、できるだけ早い速度で添加することが望ましい。
【0045】
A液に対するB液の量は、A液を分散するときの固形分濃度や最終的に表面層形成用塗工液とした場合の固形分濃度、ならびに添加する架橋樹脂粒子の量などで決定される。このときA液に対してB液が大幅に過剰であると希釈率が大きくなり、カーボンブラックの再凝集が起こりやすくなるので好ましくない。具体的には、A液に対して重量比(B/A)で2.0倍以下の量のB液を添加することが好ましい。
【0046】
導電性芯金2としては、導電性ゴム基層の電極及び支持部材として機能するものであればいずれでも使用できる。例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼などの金属又は合金、クロム、ニッケル等でメッキ処理した鉄、導電性顔料を含む合成樹脂、表面に金属層を形成した合成樹脂などの導電性材質で構成される円柱、円管或いはチューブを挙げることができる。
【0047】
なお、芯金2とその周面に形成される弾性層3を接着するためにプライマーを芯金2表面に塗布しておくこともできる。プライマーとしては、通常使用されている公知のプライマー、例えば、シランカップリング系プライマーを用いることができる。
【0048】
現像ローラの弾性層は、現像剤規制部材や感光ドラムと圧接した場合に、適切な接触面積を得るために現像ローラに弾性をもたせるために設けられた層であり、必要により、機能毎に層を設けた複層とすることもできる。
【0049】
この弾性層は、弾性を有するのであれば、導電性ゴムであることを除き、その形態は、発泡体であっても、ソリッドでもあっても構わない。
【0050】
弾性層は、弾性層用ゴム材料に、必要により導電性部材、例えば、導電性カーボン、金属粉末、金属酸化物等が配されて、上記芯金上に形成されている。
【0051】
なお、ここで用いられるゴム材料としては、特に制限されることは無く、以下のようなものが挙げられる。エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、NBRの水素化物、エピクロロヒドリンゴム、クロロプレンゴム(CR)、フッ素ゴム、多硫化ゴム等。なお、これらは単独で或いは2種類以上を混合して用いることができる。中でも、圧縮永久歪み特性に優れているので、シリコーンゴム、ウレタンゴムあるいはNBRを用いるのが望ましい。
【0052】
シリコーンゴムとしては、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム等がある。
【0053】
弾性層の厚さは、通常1.0mm乃至6.0mm、好ましくは1.5mm乃至5.0mmとするのが適当である。すなわち、均一なニップを確保するために、その厚さは1.0mm以上が望ましく、6.0mm超にしても、帯電性能の向上に繋がらないだけでなく、原料増や成型コスト上昇となり、生産を行う上で不利である。
【0054】
弾性層は、弾性体層材料にもよるが、上記弾性層材料から形成され、所定長さに切断されたチューブ状に芯金を押し込む、芯金と共に弾性体材料を押出す、芯金を内蔵した金型に弾性体材料を注入する、芯金表面上に弾性体材料を流延塗布する等により形成される。
【0055】
本発明においては、上記したように、弾性層の上に、表面層を形成する。表面層塗工液を外周面に塗布する方法としては、均一な塗膜を得ることができる限り、特に制限されないが、均一な塗膜が形成されることから浸漬塗工方法が好ましい。
【0056】
本発明の導電性ローラは、電子写真方式の画像形成装置において、ローラ形状の現像部材、帯電部材、転写部材、除電部材等の被接触物を電気的にコントロールする導電性部材として有用である。また、他の形状であっても、被接触物を電気的にコントロールする導電性部材、例えば、現像剤量規制ブレード、クリーニングブレードなどにおいても、上記したような考え方を適用することができる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これらは、本発明を何ら限定するものではない。
【0058】
表面層に用いる原材料として、以下のものを用いた。
【0059】
1)表面層形成用樹脂原料
表面層形成用樹脂原料として、下記のポリウレタンポリオール及びポリイソシアネートを用いた。
ポリウレタンポリオール:「ニッポランN5033」(商品名)、日本ポリウレタン株式会社製。
ポリイソシアネート:「コロネートL」(商品名)、日本ポリウレタン株式会社製。
【0060】
2)カーボンブラック
実施例、比較例で表面層形成用原料配合したカーボンブラックの物性を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
3)架橋樹脂粒子
架橋樹脂粒子として、表2のものを用いた。
【0063】
【表2】

【0064】
製造例1
「導電性ゴム基層を有するローラの作製」
外径φ6mmの鉄製芯金(通電性芯金)を内径φ12mmの円筒状金型内に同心となるように設置し、液状導電性シリコーンゴム(東レダウコーニング株式会社製、体積固有抵抗107Ωcm品)を注型し、140℃のオーブンに入れ5分加熱成型した。成形物を脱型した後、200℃のオーブンで4時間二次硬化を行い、通電性芯金上に厚み3mm、長さ240mmの導電性ゴム基層を有するローラを得た。
【0065】
実施例1
「表層用塗工液の調製:A液」
ポリウレタンポリオール100質量部、ポリイソシアネート40質量部及びカーボンブラック(CB1)23質量部を、メチルエチルケトンに固形分濃度が約35質量%になるように加え、図3に示したビーズミルを用い、分散して、A液を得た。なお、ベッセル内にφ2mmのガラスビーズを充填率80%になるように入れ、分散の終了は、グラインドゲージによって分散度を確認しながら行った。
【0066】
「表層用塗工液の調製:B液」
ポリウレタン架橋樹脂粒子(RP1)65質量部を固形分濃度30質量%になるようにメチルエチルケトンを加え、ケミカルスターラーで50rpmの速度で攪拌して、樹脂粒子のスラリー(B液)を得た。
【0067】
「A液とB液の混合」
ケミカルスターラーで攪拌している上記で得たA液に、上記B液を等速で1000秒かけて添加した。その後、混合液を1時間、ベッセル内にφ2mmのガラスビーズを充填率80%になるように入れたビーズミルで分散を行った。次いで、メチルエチルケトンを加え、十分混合し、塗工液の粘度が測定温度20±1℃にて、10mPa・sになるよう調製した。なお。粘度測定は、回転式粘度計「VISMETRON VDA」(商品名、芝浦システム株式会社製)を用い、No.1ロータ、回転速度60rpmにて行った。
【0068】
「表面層の形成」
調製した塗工液を塗工槽に装入し、塗工液の液面に対して芯金の中心線が垂直になるように保持し、液面に向かって垂直に、上記製造例1で作成したローラを降下し、10mm/sの速度で浸漬してゆき最下点まで降下してから10秒間停止させた。その後ローラを引き上げて、ローラの弾性層の外周面上に塗工層を形成した。引き上げ時の速度は引き上げ開始直後で300mm/min、導電性弾性層下端が塗工液液面から出た時点で200mm/minとなるようにした。その後、140℃のオーブンに入れ4時間加熱硬化して表面層を形成して、現像ローラを得た。
【0069】
実施例2
原料のカーボンブラックとして、CB2を用いた以外は実施例1と同様にして、現像ローラを得た。
【0070】
実施例3
原料のカーボンブラックとしてCB3を用いた以外は実施例1と同様にして、現像ローラを得た。
【0071】
実施例4
原料のカーボンブラックとして、CB4を用いた以外は、実施例1と同様にして、現像ローラを得た。
【0072】
比較例1
原料のカーボンブラックとして、CB5を用いた以外は、実施例1と同様にして、現像ローラを得た。
【0073】
比較例2
原料のカーボンブラックとして、CB6を用いた以外は、実施例1と同様にして、現像ローラを得た。
【0074】
比較例3
原料のカーボンブラックとして、粒状のCB7を用いた以外は、実施例1と同様にして、現像ローラを得た。
【0075】
比較例4
表面層用塗工液の製造を、B液をA液に対して一気に添加した。それ以外は、実施例1と同様にして、現像ローラを得た。
【0076】
比較例5
B液の添加速度を10g/秒(B液の固形分が3g/秒でA液に添加させるように)にする以外は、実施例1と同様にして、現像ローラを得た。
【0077】
実施例5
原料の架橋樹脂粒子として、アクリル架橋樹脂粒子(RP2)を用いた以外は、実施例1と同様に、現像ローラを得た。
【0078】
実施例6
原料の架橋樹脂粒子として、アクリル架橋樹脂粒子(RP3)を用いた以外は、実施例1と同様に、現像ローラを得た。
【0079】
実施例7
原料の架橋樹脂粒子として、ポリウレタン架橋樹脂粒子(RP4)を用いた以外は、実施例1と同様に、現像ローラを得た。
【0080】
比較例6
原料の架橋樹脂粒子として、アクリル架橋樹脂粒子(RP5)を用いた以外は、実施例1と同様に、現像ローラを得た。
【0081】
比較例7
原料の架橋樹脂粒子として、ポリウレタン架橋樹脂粒子(RP6)を用いた以外は、実施例1と同様に、現像ローラを得た。
【0082】
上記実施例、比較例によって得られた現像ローラについて、塗工の引き上げ時におけるローラの上部、下部及び中央部について、周方向各3箇所の表面粗さRaを、表面粗さ測定器「サーフコーダSE3500」(商品名)にて測定した。また、同様の位置に対して、表面積比を超深度形状測定顕微鏡「VK−8510」(商品名)にて測定した。なお、上部、下部はそれぞれの端部より20mmの位置を中心とした。得られた結果を表3に示した。
【0083】
上記実施例、比較例によって得られた現像ローラを、電子写真式レーザービームプリンタのプロセスカートリッジに現像ローラとして組み込み、ベタ画像及びハーフトーン画像を出力して、下記基準にて評価した。結果を表3に示した。
○:画像濃度が充分に濃く濃度ムラの無い。
△:画像濃度が不十分であったり、軽微な濃度ムラがあったりするが、実用可能である。×:、画像濃度が極端に薄かったり明らかな濃度ムラがあったりする。
【0084】
本評価で使用した電子写真式レーザービームプリンタは、A4版出力用のマシンで、記録メディアの出力スピードはA4縦16枚/分、画像の解像度は600dpiである。また、感光体はアルミシリンダーにOPC(有機光導電体)層をコートした反転現像方式の感光ドラムであり、最外層は変性ポリカーボネートをバインダー樹脂とする電荷輸送層である。感光体上で現像されたトナー像は転写ロールで記録メディアに転写され、定着部で熱定着される。転写ロールで転写しなかったトナーはクリーニングブレードで感光体から掻き取られる。現像部分はカートリッジ化されており、現像剤担持ロールにはトナー層厚規制部材である現像ブレードがカウンタ方向に当接し、トナーの層厚を規制している。
【0085】
なお、画像出力は、初期10枚(ベタ画像5枚、ハーフトーン画像5枚)を行い、上記基準で判定をした。更に、評価「○」であったものについて、印字20%に当たる標準チャートを耐久にて10000枚出力し、500枚毎に抜き出したものについて、上記に準じて評価した。その結果も表3に示した。
【0086】
【表3】

【0087】
実施例1乃至7の現像ローラは、表面粗さRaが1.5乃至2.5μmで、表面積比が1.2乃至1.9である現像ローラを作成することができた。また、画像評価においても良好な結果が得られた。
【0088】
これに対し、比較例1では、DBP吸収量が高いカーボンブラックを用いたために、得られた現像ローラの表面粗さRaは1.4乃至1.5μmで、表面積比は1.0乃至1.1で、実施例1乃至2と比較して低下した。これは、カーボンブラックのDBP吸収量が大きいことから、分散安定性が悪く、B液を添加した際に溶剤ショックが生じ、カーボンブラックが再凝集し、塗工液のチクソ性が減少したため、ローラ表面に保持されるポリウレタン架橋樹脂粒子の量が減ったことによる。また、画像評価においても十分な濃度の画像が得られなかった。
【0089】
比較例2では、一次粒子径が大きいカーボンブラックを用いたため、得られた現像ローラの現像ローラの表面粗さRaは1.6乃至1.7μmで、表面積比は1.1乃至1.2と、実施例1乃至2と比較して低下している。これはカーボンブラックの一次粒子径が大きいことから、十分に分散が進行せず、塗工液のチクソ性が減少した結果ため、ローラ表面に保持される架橋樹脂粒子の量が減ったためである。また、画像評価においても十分な濃度の画像が得られなかった。
【0090】
比較例3では、pHがアルカリ性のカーボンブラックを用いたため、得られた現像ローラの現像ローラの表面粗さRaは1.8乃至1.9μmで、表面積比は1.1乃至1.2で、実施例1乃至2と比較して低下している。これはカーボンブラックの表面性状が変化したことにより、分散安定性が悪くなり、B液を添加した際に溶剤ショックが生じ、カーボンブラックが再凝集し、塗工液のチクソ性が減少し、ローラ表面に保持されるポリウレタン樹脂粒子の量が減ったためである。また、画像評価においても、軽微なムラなどが認められた。
【0091】
比較例4では、A液に対してB液を一度に添加をしたため、得られた現像ローラの現像ローラの表面粗さRaは1.4乃至1.6μmで、表面積比は1.1乃至1.2と、実施例1乃至2と比較して低下している。これは、B液を添加したときの溶剤ショックにより、カーボンブラックが再凝集し、塗工液のチクソ性が減少したため、ローラ表面に保持されるポリウレタン樹脂粒子の量が減ったためである。また、画像評価においても十分な濃度の画像が得られなかった。なお、B液の添加時間を150秒とした時も溶媒ショックを起こしたので、表面層形成には使用しなかった。
【0092】
比較例5では、A液に対してB液の添加速度を10g/秒としたので、得られた現像ローラの表面粗さRaは1.8乃至1.9μmと良好であるが、表面積比が1.1乃至1.3と、実施例1乃至2と比較して低下している。これは、B液の添加速度が早すぎて溶剤ショックの影響が出てしまい、カーボンブラックが幾分か再凝集し、塗工液のチクソ性が不足となり、ローラ表面に保持されるポリウレタン樹脂粒子の量が減ったためと考えられる。また、画像評価においても、軽微なムラなどが認められた。
【0093】
比較例6では、架橋樹脂粒子の粒子径を2.4μmとしているので、得られた現像ローラの表面粗さは1.3乃至1.4で、表面積比が1.0乃至1.2と実施例1乃至2と比較して低下している。これは、架橋樹脂粒子の粒子径が小さいため、ローラ表面を十分に粗面化できなかったためである。画像評価においても、十分な濃度を得ることができなかった。
【0094】
比較例7では、架橋樹脂粒子の粒子径を35μmとしているので、得られた現像ローラの表面粗さは、2.6乃至2.7で、表面積比が2.1乃至2.4と実施例1乃至と比較して高くなっている。これは、架橋樹脂粒子の粒子径が大きいため、ローラ表面が大幅に粗面化されたためである。また、画像評価においても、かなりの濃度ムラが発生した。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】導電性ローラの(a)斜視図、(b)断面図である。
【図2】分散装置の概略を示す模式図である。
【符号の説明】
【0096】
1 導電性ローラ
2 導電性芯体
3 弾性体層
4 表面層
5 羽根
6 回転軸(ディスク)
7 円筒状容器(ベッセル)
8 タンク
9 ポンプ
10、11 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性芯金上に、導電性ゴム基層を有し、最表面に架橋樹脂粒子が分散された表面層を有する導電性ローラであって、
該導電性ローラの表面粗さRaは1.5乃至2.5μmであり、かつ、
下記式(I)で表される表面積比が1.2乃至2.0であることを特徴とする導電性ロ
ーラ。
表面積比=S/S0 (I)
(式中、Sは導電性ローラ表面の実測表面積であり、S0は該導電性ローラの表面を理想的な平面とした場合の理論表面積である。)
【請求項2】
導電性芯金上に、導電性ゴム基層を有し、最表面に架橋樹脂粒子が分散された表面層を有する、請求項1に記載された導電性ローラの製造方法であって、
下記工程により調製された表面層塗工液を導電性ゴム基層に塗布することにより、表面層を形成することを特徴とする導電性ローラの製造方法:
表面層形成用樹脂原料及び溶剤混合液の中に表面層形成用樹脂に対し5乃至30質量%のカーボンブラックを分散させ、A液を得る工程;
粒子径が3乃至30μmである架橋樹脂粒子を溶剤中に10乃至40質量%の濃度で分散させ、B液を得る工程;及び、
攪拌しているA液中に、添加速度が1秒当たりB液量の1/200以下であり、かつ、その添加量がA液に対して質量比(B/A)で2倍以下であるように、B液を加える工程。
【請求項3】
カーボンブラックは、DBP吸収量が120ml/100g以下であり、平均一次粒子径が0.03μm以下であり、pHが8.0以下であり、粉状であり、かつ、カーボンブラックの比着色力が90%乃至150%である請求項2記載の導電性ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−265157(P2009−265157A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111343(P2008−111343)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】