説明

導電性ロール

【課題】 導電性ロールを、初期状態からの電気特性および摩擦特性の変化を小さくし、画像形成装置に実装されたときに画像形成装置の電気的な制御や搬送機構の制御を容易にする。
【解決手段】 芯金外周面上に導電性弾性層とを備えた導電性ロールであって、前記導電性弾性層の最表面に酸化被膜が形成されており、印加電圧1000Vにおける、初期ロール抵抗値をR0[Ω]、100時間連続印可した後のロール抵抗値をR100[Ω]とすると、(logR100−logR0)≦0.3、初期の摩擦係数をμ0、印加電圧1000Vで100時間連続印可した後の摩擦係数をμ100とすると、0.8<μ100/μ0<1.0であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ロールに関し、より詳しくは、初期状態からの電気特性および摩擦特性の変化が小さい導電性ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置の多くは有害とされているオゾンの発生が非常に少ない接触帯電および接触転写方式を採用しており、なかでも耐摩耗性や転写部での転写材搬送性に優れたロール状の部材が主流となっている。ロール状の部材には弾性を有する材料が用いられ、像担持体である感光体や中間転写体に対して確実にニップの形成を可能としている。これらのロールは一般的に、SUSまたはFe等の芯金上にカーボンまたはイオン導電剤等によりその抵抗値を1×10〜1×1010[Ω]とした導電性の弾性層を有する導電性ロールが用いられている。
【0003】
しかしながら、従来の導電性ロールを用いる画像形成装置では以下に示すような問題があった。
導電性ロールの導電性弾性層を形成するゴム内には、ベースポリマーを合成する際に投入する反応開始剤の残留物やその際に生成する副生成物、ベースポリマーの低分子成分、ゴムロール成型時に添加する加硫剤や軟化剤、可塑剤等の成分が含まれる。これらの成分は感光体や中間転写体と反応しやすいものが多く、導電性ロールと感光体や中間転写体を圧接した状態で長時間放置すると、これらの成分が導電性ロールより滲出して感光体や中間転写体に付着し、反応して感光体や中間転写体を改質してしまうという問題がある。特に、単層の導電性ロールではロール内に存在する材料ゴムの低分子量成分や加硫剤・可塑剤等が単層の導電性ロール表面に滲出しやすく、単層の導電性ロールが感光体や中間転写体と圧接固定した状態のまま長時間おかれた場合、感光体や中間転写体表面に滲出した物質が付着して画橡を乱す、またひどい場合は感光体や中間転写体表面が反応・改質されて白化してしまい、以降の画像を全て乱してしまうという問題がある。
【0004】
これらの問題を解決するために、単層の導電性ロール表面に含有成分が滲出するのを防止するバリア層となる物質をコーティングすることが考えられる。
しかし、ロールの構成が複数層となることから、材料費が増えかつ製造工程が複雑になるために、導電性ロールの製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
また、単層の導電性ロールは表面の粘着性が大きいため、感光体や中間転写体との粘着力により駆動トルクが大きくなって正常な動作(回転)ができなくなったり、トナー等が付着してロール表面が汚れてしまい、その付着物によって表面抵抗が変化するために適正な電流が均一に流れなくなったりして、異常画像が発生するという問題があった。
この問題に対しても導電性ロール表面に離型性の良い材料をコーティングすることで付着を防止することが考えられる。しかし、高離型性材料は一般的にコストが高いため、前記方法は導電性ロールの製造コストを高くしてしまうという問題があった。
【0006】
そこで、高コストのバリア層材料や高離型性材料などをコーティングすることなく、含有成分の滲出を防止し、表面の粘着性を低下させるために、下記のような導電性ロールが提案されている。
特開平11−109770号公報(特許文献1)には、芯金上にソリッドゴムからなる弾性層を成形して一次加硫した後に、二次加硫を行い、該二次加硫後に研磨をした後に、紫外線照射による表面処理を施したことを特徴とする転写ローラが記載されている。
また、特開2002−357215号公報(特許文献2)には、芯金外周面上にゴム弾性層を形成し、一次加硫した後、前記ゴム弾性層表面に紫外線処理を施すことを特徴とする半導電性ローラの製造方法が記載されている。
【0007】
導電性ロールが実際に画像形成装置に組み込まれた際に問題となるのは、含有成分の滲出や表面の粘着性だけでなく、初期変化が大きいことも挙げられる。初期変化としては、通電開始直後に電気抵抗が急激に上昇したり摩擦係数が急激に小さくなったりすること等がある。このような初期変化のために画像形成装置の電気的な制御や搬送機構の制御が難しくなっている。
しかし、上記特許文献1、2では、導電性ロールの初期変化の抑制について記載も示唆もされていない。
【0008】
【特許文献1】特開平11−109770号公報
【特許文献2】特開2002−357215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、初期状態からの電気特性および摩擦特性の変化を小さくし、画像形成装置に実装されたときに画像形成装置の電気的な制御や搬送機構の制御を容易にすることができる導電性ロールを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するため、第1に、芯金外周面上に導電性弾性層を備える導電性ロールであって、
前記導電性弾性層の最表面に酸化被膜が形成されており、
印加電圧1000Vにおける初期ロール抵抗値をR0[Ω]とすると共に100時間連続印可した後のロール抵抗値をR100[Ω]とすると、(logR100−logR0)≦0.3であることを特徴とする導電性ロールを提供している。
【0011】
本発明者らは、導電性弾性層の最表面に酸化被膜を形成することにより、画像形成装置に実装されたときに起こる初期変化を予め強制的に起こすことができることを知見した。このように初期変化を予め起こさせておくことにより、初期状態と100時間連続印可後の状態における電気抵抗および摩擦係数の変化を一定範囲内に抑えることができることを知見した。このような導電性ロールを用いることにより、画像形成装置の電気的な制御や搬送機構の制御を容易にすることができる。
【0012】
本発明において、導電性弾性層の最表面に形成される酸化被膜としては多数のC=O基またはC−O基等を有する酸化膜が好ましい。酸化被膜は導電性弾性層の表面に紫外線照射あるいは/およびオゾン照射等の処理を施し導電性弾性層を酸化することで導電性弾性層の表層部分に形成できる。なかでも紫外線照射により酸化被膜を形成することが処理時間も早く、コストが低いことから好ましい。上記酸化被膜を形成するための処理は公知の方法に従って行うことができる。例えば紫外線照射を行う場合には、導電性弾性層の表面と紫外線ランプとの距離や導電性弾性層の組成等により異なるが、波長が100nm〜400nm、より好ましくは100nm〜200nmの紫外線を30秒〜30分、好ましくは1分〜10分程度照射することが好ましい。
なお、紫外線の強度や照射条件(時間、槽内温度、距離)は上記規定の数値範囲内となるように選定される。具体的には、紫外線の光源と導電性弾性層との距離を10cmとし、導電性ロールを10〜60rpmの速度で回転させながら、紫外線を照射することが好ましい。
【0013】
本発明の導電性ロールにおいては、印加電圧1000Vにおける初期ロール抵抗値をR0[Ω]、印加電圧1000Vで100時間連続印可した後の印加電圧1000Vにおけるロール抵抗値をR100[Ω]とすると、(logR100−logR0)≦0.3としている。これは、前記値が0.3を超えると、初期状態からの電気特性の変化が大きすぎ、画像形成装置に実装したときに画像形成装置の電気的な制御が難しくなることによる。好ましくは、0.2≦(logR100−logR0)≦0.3である。
【0014】
本発明は、第2に、芯金外周面に導電性弾性層を備える導電性ロールであって、
前記導電性弾性層の最表面に酸化被膜が形成されており、
初期の摩擦係数をμ0、印加電圧1000Vで100時間連続印可した後の摩擦係数をμ100とすると、0.8<μ100/μ0<1.0であることを特徴とする導電性ロールを提供している。
【0015】
導電性弾性層の最表面に酸化被膜を形成することにより、画像形成装置に実装されたときに起こる摩擦係数の初期変化も予め起こさせておくことにより、初期状態と100時間連続印可後の状態における摩擦係数の変化を一定範囲内に抑えることができることを知見した。このような導電性ロールを用いることにより、画像形成装置の電気的な制御や搬送機構の制御を容易にすることができる。
【0016】
本発明の導電性ロールにおいては、初期の摩擦係数をμ0、印加電圧1000Vで100時間連続印可した後の摩擦係数をμ100とすると、0.8<μ100/μ0<1.0となる。なかでも、0.9≦μ100/μ0≦1.0であることが好ましい。前記式の値が0.8以下であると、初期状態からの摩擦特性の変化が大きすぎ、画像形成装置に実装したときに画像形成装置の搬送機構の制御が難しくなる。また、前記式の値が1.0以上となることは通常あり得ない。
【0017】
さらに、本発明は、第3に、芯金外周面上に導電性弾性層を備えた導電性ロールであって、
前記導電性弾性層の最表面に酸化被膜が形成されており、
印加電圧1000Vにおける初期ロール抵抗値をR0[Ω]とすると共に100時間連続印可した後のロール抵抗値をR100[Ω]とすると、(logR100−logR0)≦0.3で、かつ、
初期の摩擦係数をμ0、印加電圧1000Vで100時間連続印可した後の摩擦係数をμ100とすると、0.8<μ100/μ0<1.0であることを特徴とする導電性ロールを提供している。
【0018】
前記した第1、第2、第3の本発明の導電性ロールでは、温度23℃、湿度55%の環境下での印加電圧1000Vにおけるロール抵抗値を10〜1010Ωとしていることが好ましく、より好ましく、10〜10Ωである。
前記数値範囲を満たせば、導電性弾性層を構成する基材は特に問わず、公知のポリマーを用いてよい。導電性弾性層を構成する基材としては、例えばエピハロヒドリンゴム(特にエピクロルヒドリンゴム)、エチレンプロピレンジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリイソプレンまたは水素化ポリブタジエン等が挙げられる。これらは単独で使用しても、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
なかでも、導電性弾性層を構成する基材としては、エピクロルヒドリンゴムとアクリロニトリルブタジエンゴムのブレンドゴムを用いることが好ましい。エピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体等が挙げられる。
【0020】
また、本発明においては、導電性弾性層が連続相と1相または2相以上の非連続相とからなることも好ましい。特に、連続相と非連続相とが海−島構造を形成していることがより好ましい。前記連続相は、アクリロニトリルブタジエンゴムを含むことが好ましい。また、前記非連続相のうち少なくとも1相は、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体を含むことが好ましい。
【0021】
導電性弾性層が連続相と1相または2相以上の非連続相とからなる場合、前記非連続相のうちの少なくとも1相にイオン導電剤が偏在させることが好ましい。イオン導電剤を非連続相に内包させ、連続相にイオン導電剤が移動しにくくすることにより、初期状態からの電気特性の変化を抑えることができる。更には、イオン導電剤のブリードやブルームによる他の部材の汚染を軽減でき、かつ温度や湿度等の環境の影響を受けにくくして電気抵抗値の環境依存性を低減することもできる。
【0022】
前記イオン導電剤としては、フルオロ基またはスルホニル基を含有しているイオン導電剤が好ましい。具体的には、フルオロ基または/およびスルホニル基を含む有機金属塩がより好ましく、フルオロ基または/およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩がさらに好ましい。
このような塩は、フルオロ基またはスルホニル基等の官能基が電子吸引性を有するため陰イオンがより安定化されることから、より高い解離度を示す。このように解離度の高いイオン導電剤を用いれば、少量の添加で非常に低い電気抵抗値を得ることができる。さらに、このような解離度の高いイオン導電剤は系内で特に移動しやすいため、当該イオン導電剤が連続相に導入されていればイオンの偏りが非常に大きくなり、電気特性の変化が導電率の低い塩に比べて著しく大きくなりやすいが、非連続相内に導電剤を包含させ独立させておくことにより電気特性の変化の抑制において特に顕著な効果を発揮する。
【0023】
上記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンとしては、解離度が非常に大きい点から、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオン、フルオロアルキルスルホン酸イオンからなる群の内の少なくとも1つから選ばれたイオンであることが好ましい。なかでも、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオンまたはフルオロアルキルスルホン酸イオンがより好ましく、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオンまたはトリフルオロメタンスルホン酸イオンが特に好ましい。
上記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩の陽イオンは、アルカリ金属、2A族、遷移金属または両性金属のいずれかの陽イオンであることが好ましい。アルカリ金属は、特にイオン化エネルギーが小さいため安定な陽イオンを形成しやすいことから好ましい。
【0024】
さらに、本発明においては、導電性弾性層が発泡体からなることも好ましい。弾性層を発泡体とすることにより低硬度化を図ることができる。その結果、感光体等に圧接したときにニップ幅が大きくなるため、より高いプロセス効率を得ることができ、かつ圧接したときに感光体等の相手の部材を傷けにくくなる。
導電性弾性層を発泡体とする方法は公知方法に従って良い。例えば導電性弾性層を構成するポリマー組成物に化学発泡剤を混入した後に加硫時の熱により前記化学発泡剤から分解ガスを発生させ、発泡化させる手法が一般的である。化学発泡剤としては、例えばアゾジカルボンアミド(ADCA)、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)または5,5’−ビス−1H−テトラゾール(BHT)等が挙げられる。なかでも、アゾジカルボンアミド(ADCA)または4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)を用いることが好ましく、アゾジカルボンアミド(ADCA)を用いることが特に好ましい。前記発泡剤に加えて、尿素などの発泡助剤を使用しても良い。
発泡体の発泡倍率は100%以上500%以下が好ましく、150%以上300%以下であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の導電性ロールにおいては、導電性弾性層の最表面に酸化被膜を形成することにより、初期状態と100時間連続印可後の状態における電気抵抗、摩擦係数の変化を一定範囲内に抑えることができる。
このような導電性ロールを用いることにより、画像形成装置の電気的な制御や搬送機構の制御を容易にすることができる。
さらに、導電性弾性層の最表面に酸化被膜が形成されているので、導電性弾性層に含有されている成分が滲出しくいため、感光体(像担持体)や中間転写体表面の汚染を有効に防止することができる。また、導電性弾性層の表面の粘着性が低減されるため、トナー等が付着してロール表面が汚れることがなく、かつ感光体や中間転写体との間で正常な動作(回転)が保つことできるので、異常画像が発生しにくい。そのうえ、高コストのバリア層材料や高離型性材料などのコーティングを行わないので、製品を安価に大量に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の導電性ロールについて詳述する。
図1に示すように、導電性ロール10は、円筒状の導電性弾性層11の中空部に芯金12を圧入して取り付けている。導電性弾性層11の表面には紫外線照射処理された酸化皮膜13が設けられている。芯金12としてはアルミニウム、アルミニウム合金、SUSもしくは鉄等の金属製またはセラミック製等の芯金が挙げられる。
【0027】
本発明の第1実施形態の芯金外周面上に導電性弾性層とを備えた導電性ロールは、導電性弾性層がエピクロルヒドリンゴムとアクリロニトリルブタジエンゴムのブレンドゴムを含み、かつ導電性弾性層の最表面に酸化被膜13が形成されている。
導電性弾性層において、エピクロルヒドリンゴムの含有量は全ゴム成分100質量部に対して20〜100質量部、好ましくは50〜90質量部としている。
【0028】
前記導電性弾性層11には、前記ゴム成分の他に、本発明の目的に反しない限り加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、無機充填剤、軟化剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、可塑剤、造核剤、気泡防止剤または架橋剤等の添加剤を適宜配合してもよい。なかでも、加硫剤、加硫促進剤、無機充填剤等を配合することが好ましい。また、導電性弾性層を発泡体とする場合は、発泡剤および所望により発泡助剤を配合している。
【0029】
添加する前記加硫剤としては、特に低電気抵抗を実現できるため硫黄が好ましい。また、加硫とともに発泡を行う場合には加硫速度と発泡速度のバランスが良くなる点からも硫黄を用いるのが好ましい。
その他、加硫剤としては有機含硫黄化合物や過酸化物なども使用可能であり、これらを併用することも、これらと硫黄を併用することもできる。有機含硫黄化合物としては、例えばテトラエチルチウラムジスルフィドまたはN,N−ジチオビスモルホリンなどが挙げられる。過酸化物としてはジクミルペルオキシドまたはベンゾイルペルオキシド等を挙げることができる。
加硫剤の添加量は、ポリマー成分100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下、好ましくは1質量部以上3質量部以下である。
【0030】
さらに、加硫促進剤を配合してもよく、加硫促進剤としては、消石灰、マグネシア(MgO)もしくはリサージ(PbO)等の無機促進剤や以下に記す有機促進剤を用いることができる。有機促進剤としては、2−メルカプト・ベンゾチアゾールもしくはジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドもしくはジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系;チオウレア系等が挙げられ、これらを単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。
加硫促進剤の添加量は、ポリマー成分100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下、好ましくは1質量部以上4質量部以下である。
【0031】
さらに、加硫促進助剤を配合しても良く、加硫促進助剤としては、亜鉛華等の金属酸化物;ステアリン酸、オレイン酸もしくは綿実脂肪酸等の脂肪酸;その他従来公知の加硫促進助剤が挙げられる。
また、無機充填剤としては、シリカ、カーボン、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムまたは水酸化アルミニウム等の粉体を挙げることができる。無機充填剤を配合することにより機械的強度等を向上させることができる。該充填剤の添加量はポリマー100質量部に対し60質量部以下とすることが好ましく、40質量部以下とすることがより好ましい。
【0032】
ゴム成分としてハロゲン系ゴム、特に前記したエピクロルヒドリンゴムまたはエピクロルヒドリン系重合体を用いる場合には、その重量に対し受酸剤を1重量%以上10重量%以下、好ましくは3重量%程度の割合で配合するのが好ましい。加硫阻害および感光体汚染を防止する効果を有効に発揮させるため受酸剤の配合量は約1重量%以上であることが好ましく、硬度の上昇を防ぐため受酸剤の配合量は約10重量%以下であることが好ましい。受酸剤としては、分散性にも優れることから特にハイドロタルサイト類またはマグサラットが好ましい。その他、受酸剤としては酸受容体として作用する種々の物質を用いることができる。
【0033】
発泡剤を添加する場合、該発泡剤の添加量はポリマー成分100質量部に対して3質量部以上12質量部以下が好ましい。発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)を用いることが好ましい。
また、所望により発泡助剤を配合しても良い。特に発泡剤としてADCAを使用する場合は、尿素系発泡助剤を使用することが好ましい。該発泡助剤の添加量はポリマー成分100質量部に対して3質量部以上12質量部以下が好ましい。
【0034】
これらの成分を、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、オープンロールなど公知の方法で混ぜ合わせ、導電性ポリマー組成物を作製し、導電性ロールの作製に供する。
【0035】
前記導電性弾性層の最表面に波長が100nm〜400nm、より好ましくは100nm〜200nmの紫外線を30秒〜30分、好ましくは1分〜10分程度照射して、照射量を100〜5000ジュール、好ましくは800〜1000ジュールとしている。
かつ、紫外線の光源と導電性弾性層との距離を10cmとし、導電性ロールを10〜60rpmの速度で回転させながら紫外線を照射している。
【0036】
本発明の第2実施形態の芯金外周面上に導電性弾性層とを備えた導電性ロールは、導電性弾性層が連続相と1相または2相以上の非連続相とからなり、該導電性弾性層の最表面に紫外線を第1実施形態と同様に、照射して酸化被膜を形成している。
前記非連続相のうち1相がエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体(以下、EO−PO−AGE共重合体と略称する)から構成され、かつ当該非連続層のみにイオン導電剤が1〜20重量%の割合で含有されている。連続相を構成するポリマーと非連続相を構成するポリマーの合計100質量部に対して、連続相を構成するポリマーの含有量を60質量部以上80質量部未満としている。また、前記導電剤を1〜20重量%含有するエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体の含有量を1質量部以上25質量部以下としている。
【0037】
EO−PO−AGE共重合体に含まれるイオン導電剤の含有量が1〜20重量%とは、EO−PO−AGE共重合体の量をX(質量%)、イオン導電剤の含有量をY(質量%)とすると、{Y/(X+Y)}×100の値が1〜20の範囲内に含まれることを指す。
イオン導電剤の含有量を1〜20質量%としているのは、1質量%よりも少ないと電気抵抗の環境依存性が大きくなり、一方、20質量%よりも多いと初期状態からの電気特性の変化が大きくなることによる。
【0038】
また、前記連続相を構成するポリマーと非連続相を構成するポリマーの合計100質量部に対して、前記連続相を構成するポリマーの含有量を60質量部以上80質量部未満としているのは、連続相を構成するポリマーの配合比率が60質量部未満とすると、動的架橋等の手法を用いても連続相として存在させにくくなることによる。一方、80質量部以上とすると、非連続相の体積分率が低くなりすぎ、本発明の導電性ロールの抵抗値を十分に下げることができなくなることによる。
さらに、前記イオン導電剤を含有するEO−PO−AGE共重合体を1質量部以上25質量部以下としているのは、25質量部より多いと本発明の導電性ロールの圧縮永久ひずみ等が大きくなってしまう一方、1質量部より少ないと十分な量のイオン導電剤を配合させることができなくなり、本発明の導電性ロールの抵抗値を十分に下げることができなくなることによる。
【0039】
前記第2実施形態の導電性ロールにおいて、導電性弾性層を構成する導電性ポリマー組成物の相構造(モルフォロジー)を図面を用いて説明する。
図2に示す態様において、導電性弾性層11は連続相1と、第1非連続相2、第2非連続相3とからなり、3つの相は海−島構造を呈している。第1非連続相2および第2非連続相3は連続相1中にほぼ均一に存在し、かつ、第1非連続層2は第2非連続相3を取り囲むように存在している。体積分率は連続相1>第2非連続相3>第1非連続相2となっている。
図3に示す態様においては、導電性弾性層11は1相の連続相1’と1相の第1非連続相2’とからなり、連続相1’と第1非連続相2’とは海−島構造を呈している。体積分率は連続相1’>第1非連続相2’となっている。
【0040】
図2および図3に示されたいずれの態様においても、第1非連続相2,2’はイオン導電剤を1〜20重量%含有するEO−PO−AGE共重合体で構成されている。
一方、連続相1,1’および第2非連続相3にはイオン導電剤が添加していない。連続相1、1’を構成するポリマーとしてはアクリロニトリルブタジエンゴム(以下、NBRという。)が好ましく、なかでも低ニトリルNBRが好ましい。第2非連続相3を構成するポリマーとしては、低極性の耐オゾン性ゴムであるエチレンプロピレンジエン共重合ゴム(以下、「EPDM」という。)を用いることが好ましい。
【0041】
図2に示す態様において、低ニトリルNBRからなる連続相1は60〜80質量部(好ましくは70質量部)、導電剤を1〜20重量量%含有するEO−PO−AGE共重合体からなる第1非連続相2は1〜25質量部(好ましくは10質量部)、EPDMからなる第2非連続相3は5〜30質量部(好ましくは20質量部)としている。
図3に示す形態においては、第1非連続相2は20〜40質量部、連続相1は60〜80質量部としている。
【0042】
前記第1非連続相2および2’に1〜20重量%配合するイオン導電剤としては、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩であるリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウム−トリフルオロメタンスルホネートまたはリチウム−トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンが挙げられる。これらの塩は解離度が非常に大きい点や非連続相を構成するEO−PO−AGE共重合体との相容性が高い点から好ましい。
【0043】
前記第1非連続相2および2’で用いるEO−PO−AGE共重合体においては、エチレンオキサイド比率が55モル%以上95モル%以下であることが好ましい。イオン導電性が発揮されるのは、ポリマー中のオキソニウムイオンや金属陽イオン等(例えば導電剤中のリチウムイオン等)がエチレンオキサイドユニットやプロピレンオキサイドユニットで安定化され、その部分の分子鎖のセグメント運動により運搬されることによる。一般にはエチレンオキサイドユニットの方がプロピレンオキサイドユニットよりもイオン安定化力が高い。よって、エチレンオキサイドユニットの比率が55モル%以上95モル%以下と高い方が多くのイオンを安定化でき、より低抵抗化することができるという利点がある。なかでも、EO−PO−AGE共重合体としてはEO:PO:AGE=90:4:6である共重合体を用いることが好ましい。
【0044】
前記イオン導電剤はEO−PO−AGE共重合体に予め混合しておく。混合方法は公知の手法を用いることができる。例えば、バンバリーミキサーまたはニーダー、オープンロール等を用いてで混合を行っている。ポリマーの劣化を防ぐ等の目的で必要に応じて窒素などの不活性ガス雰囲気下で混合を行ってもよい。
【0045】
本発明ではイオン導電剤として塩を用いた場合、添加する塩から生じるイオンの一部を陰イオン吸着剤等を用いてシングルイオン化し、導電性の安定や少量添加時の導電性向上を図ることができる。前記陰イオン吸着剤としては、MgとAlを主成分とする合成ハイドロタルサイト、Mg−Al系,Sb系もしくはCa系等の無機イオン交換体やアニオンを連鎖中に固定するイオン席を有する(共)重合体等の公知の化合物が有用である。
【0046】
第2実施形態の導電性弾性層においても、本発明の目的に反しない限り、上述したような加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、無機充填剤、受酸剤、軟化剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、可塑剤、造核剤、気泡防止剤または架橋剤等の添加剤を適宜配合してもよい。なかでも、加硫剤、加硫促進剤、無機充填剤等を配合することが好ましい。また、導電性弾性層を発泡体とする場合は、発泡剤および所望により発泡助剤を配合する。
【0047】
第2実施形態の導電性弾性層を構成する導電性ポリマー組成物の製法は、まず、イオン導電剤とEO−PO−AGE共重合体とを混練機を用いて60℃の温度下で3分間混練する。得られた混練物に低ニトリルNBRに代表される連続層を構成するポリマー、EPDMに代表される第2非連続層を構成するポリマー、その他各種配合剤を配合し、再度60℃の温度下で4分間オープンロールまたは密閉式混練機等で混練して導電性ポリマー組成物を作製している。該導電性ポリマー組成物を導電性ロールの作製に供している。
【0048】
本発明の第3実施形態の芯金外周面上に導電性弾性層とを備え、該導電性弾性層の最表面に第1実施形態と同様な酸化被膜が形成されている導電性ロールは、導電性弾性層が連続相と1相または2相以上の非連続相とからなり、該連続相と非連続相とを海−島構造となし、前記非連続相のうちの少なくとも1相をイオン導電剤を偏在させた第1非連続相とし、該第1非連続相を構成するポリマーは前記連続相を構成するポリマーよりもイオン導電剤との親和性を高くし、イオン導電剤の相外への移動を抑制している導電性ポリマー組成物からなる。
【0049】
第3実施態様においては、導電性弾性層が、
連続相と、イオン導電剤を偏在させた第1非連続相の2相からなる場合と、
連続相と、イオン導電剤を偏在させた第1非連続相と、イオン導電剤を含有していない第2非連続相の3相からなる場合とがある。
前記各相のイオン導電剤との親和性は第1非連続相>連続相>第2非連続相とし、各相の電気抵抗値(体積抵抗率)は第1非連続相>連続相>第2非連続相としていることが好ましい。
前記構成とすることにより、導電性をあまり大きく損なうことなく、イオン導電剤を偏在させる第1非連続相の割合を抑えることができる。
その結果、イオン導電剤の配合量を少なくしても組成物全体として低い体積抵抗率を維持することができる。
また、第1非連続相、第2非連続相および連続相が各々2種以上のポリマーからなっていても良いし、各々が細かく複数の相に分かれていても良い。
【0050】
非連続相を構成するポリマーと連続相を構成するポリマーとの重量比は、(非連続相を構成するポリマー:連続相を構成するポリマー)=(5:95)〜(75:25)であることが好ましい。非連続相を構成するポリマーの配合比率が上記範囲より少ないと、非連続相の体積分率が低すぎるため、導電性ロールの抵抗値を十分に下げることができなくなる。一方、連続相を構成するポリマーの配合比率が上記範囲より少ないと、動的架橋等の手法を用いても、連続相として存在し得なくなる。上記重量比は、さらに好ましくは(10:90)〜(60:40)、より好ましくは(20:80)〜(45:55)である。
非連続相として第1非連続相と第2非連続相とが存在する場合、第1非連続相で第2非連続相を取り囲むように存在させることが好ましい。よって、上記連続相、第1非連続相、第2非連続相の体積分率は、連続相>第2非連続相>第1非連続相とすることが好ましい。
【0051】
第1非連続相に含まれるイオン導電剤は、全ポリマー成分100重量部に対して0.01重量部以上20重量部以下の割合で配合されていることが好ましい。これは、0.01重量部より少ないと十分な電気抵抗の低減効果が得られないためであり、20重量部より多いとコスト高を招く割には配合量増加による電気抵抗の低減効果の向上が得にくくなるためである。なお、より好ましくは0.2重量部以上10重量部以下、さらに好ましくは0.4重量部以上6重量部以下である。
イオン導電剤としては、第2実施形態で使用するものと同様のものを例示することができる。
【0052】
上記第1非連続相を構成するポリマーとしては、イオン導電剤との親和性が高いという理由から、EO−PO−AGE共重合体または/およびエピクロルヒドリンゴムを用いることが好ましい。また、ポリエチレンオキサイドブロックポリアミド共重合体またはポリエーテルエステルアミド共重合体も、上記イオン導電剤の親和性が大きく、第1非連続相を構成するポリマーとして好適に用いられる。
EO−PO−AGE共重合体またはエピクロルヒドリンゴムとしては、第1実施形態および第2実施形態で使用するものと同様のものを例示することができる。
【0053】
上記連続相を構成するポリマーは、低ニトリルNBRもしくは/および中高ニトリルNBR、または、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを用いることが好ましく、なかでも低ニトリルNBRを用いることがより好ましい。
イオン導電剤を偏在させない上記第2非連続相は、低極性ゴムを主成分としていることが好ましい。具体的には、低極性ゴムが、エチレンプロピレンジエン共重合ゴム(EPDM)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、ブチルゴム(IIR)から選択される1種以上のゴムであることが好ましい。これにより組成物に耐オゾン性を付与することができ、ひいては導電性ロールの耐オゾン性を確保することができる。
【0054】
より具体的に、第3実施態様において導電性弾性層を構成する導電性ポリマー組成物としては、
(1)連続相が低ニトリルNBRで、第1非連続相がリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含むEO−PO−AGE共重合体で、第2非連続相がEPDMである導電性ポリマー組成物、
(2)連続相が低ニトリルNBRで、第1非連続相がリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含むEO−PO−AGE共重合である導電性ポリマー組成物、
(3)連続相が低ニトリルNBRで、第1非連続相がリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含むエピクロルヒドリンゴムである導電性ポリマー組成物などが挙げられる。
【0055】
第3実施形態の導電性弾性層においても、目的に反しない限り、上述したような加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、無機充填剤、陰イオン吸着剤、受酸剤、軟化剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、可塑剤、造核剤、気泡防止剤または架橋剤等の添加剤を適宜配合してもよい。なかでも、加硫剤、加硫促進助剤、無機充填剤等を配合することが好ましい。また、導電性弾性層を発泡体とする場合は、発泡剤および所望により発泡助剤を配合する。
【0056】
第3実施形態の導電性弾性層を構成する導電性ポリマー組成物の製法は、まずイオン導電剤と第1非連続層を構成するポリマーとを混練機を用いて60℃、3分混練し、ここで得られた混練物に、低ニトリルNBRに代表される連続層を構成するポリマー、EPDMに代表される第2非連続層を構成するポリマー、その他各種配合剤を配合し、再度、60℃、4分オープンロール、密閉式混練機等で混練し導電性ポリマー組成物を作製し、導電性ロールの作製に供する。
【0057】
以下に本発明の導電性ロールの製造方法について説明する。
上記第1〜第3実施形態に応じて作製された導電性ポリマー組成物をφ60mmの単軸押出機に投入し60℃で中空チューブ状に押し出して予備成形し、この生ゴムチューブを所定寸法に裁断して予備成形体を得る。この予備成形体を加圧水蒸気式加硫缶に投入し、発泡させる場合は化学発泡剤がガス化して発泡すると共にゴム成分が架橋する温度、好ましくは160℃程度で15〜70分間加硫して加硫ゴムチューブを得る。加硫条件はキュラストメーター等により測定し、95%トルク上昇時間t95[分]程度を目安に適宜調整する。なお、感光体などの他の部材の汚染を防ぐ等のため、なるべく充分な加硫量を得られるように条件を設定することが望ましい。
導電性弾性層を発泡体とする場合、発泡倍率が100%以上500%以下、好ましくは150%以上300%以下となるようにする。さらに、JIS K 6253に記載のタイプEデュロメータで測定した硬度が60度以下、好ましくは40度以下となるようにすることが好適である。
【0058】
芯金12を用意し、その外周面にホットメルト接着剤を塗布した後、先に得られた加硫ゴムチューブに芯金を挿入し、加熱し接着した後、表面を研磨して導電性弾性層11を目標寸法に仕上げる。
ついで、導電性弾性層の最表面に酸化被膜を形成する。酸化被膜は導電性弾性層の表面に紫外線照射あるいは/およびオゾン照射等の処理を施し導電性弾性層を酸化することで導電性弾性層の表層部分に形成できる。紫外線照射の条件については上述したとおり、導電性ロールを10〜60rpmの速度で回転させながら、波長が100nm〜400nm、好ましくは100nm〜200nmの紫外線を30秒〜30分、好ましくは1分〜10分程度照射し、照射量を100〜5000ジュールとしている。
【0059】
本発明の最表面に酸化皮膜を備えた導電性ロールはレーザービームプリンター、インクジェットプリンター、複写機、ファクシミリ、ATMなどのOA機器における電子写真装置の画像形成機構等に好適に用いることができる。具体的に、本発明の最表面に酸化皮膜を備えた導電性ロールは、トナーを感光体に付着させるための現像ロール、感光ドラムを一様に帯電させるための帯電ロール、トナー像を感光体から転写ベルトや用紙に転写するための転写ロール、トナーを搬送させるためのトナー供給ロール、転写ベルトを内側から駆動するための駆動ロール等として用いることができる。
【0060】
以下、本発明の導電性ロールについて実施例および比較例を示して説明する。
実施例および比較例で作製した導電性ロールのそれぞれについて、下記物性を測定した。
【0061】
(ロール抵抗値)
温度23℃、相対湿度55%の環境下で、図4に示すように芯金42を通した導電性弾性層41をφ30のアルミドラム43上に当接搭載し、電源44の+側に接続した内部抵抗r(100Ω〜10kΩ)の導線の先端をアルミドラム43の一端面に接続すると共に電源44の−側に接続した導線の先端を導電性弾性層41の他端面に接続して通電を行った。芯金42の両端部に500gずつの荷重Fをかけ、芯金42とアルミドラム43間に1000Vの電圧をかけながらアルミドラム43を回転させることで間接的に導電性ロール40を回転させた。このとき周方向に36回抵抗測定を行い、その平均値を求めた。内部抵抗の値はロールの抵抗値のレベルにあわせて測定値の有効数字が極力大きくなるように調節した。この図4の装置で、印加電圧をEとするとロール抵抗値RはR=r×E/V−rとなるが、今回−rの項は微小とみなしR=r×E/Vとし、内部抵抗rにかかる検出電圧Vよりロール抵抗値Rを算出した。表中には、そのロール抵抗値の平均値の常用対数値を用いて示している。本発明においては、初期状態でのロール抵抗値の平均値の常用対数値log10R0が5〜10であることが好ましい。
【0062】
(通電試験)
23℃、相対湿度55%の環境下で、図4に示したロール抵抗値の測定時と同様の状態でロールに1000Vの定電圧を100時間連続印加した。100時間印加後のロール抵抗値R100の値を上記と同様にして測定した。測定された値を用いてlog10R100−log10R0を計算した。本発明においてはこの値が0.3以下となる。
【0063】
(摩擦係数)
温度23℃、相対湿度55%の環境下で、図4に示す状態と同じように芯金42を通した導電性弾性層41をφ30のアルミドラム43上に当接搭載し、導電性弾性層41とアルミドラム43との間に普通紙を挟んだ。芯金42の両端部に500gずつの荷重Fをかけ、普通紙を水平方向に10cm/秒で引き抜くときの力を測定し、これを初期摩擦係数μ0とした。
ついで、23℃、相対湿度55%の環境下でロール抵抗値の測定時と同様の状態でロールに1000Vの定電圧を100時間連続印加した。その後、初期摩擦係数の測定方法と同じ方法で、100時間連続印可した後の摩擦係数μ100を測定した。
本発明においては、μ100/μ0が0.8<μ100/μ0<1.0という条件を満たす。
【0064】
【表1】

【0065】
表中の各成分については下記製品を用いた。
・エピクロルヒドリンゴム;ダイソー(株)製「エピクロマーCG102」
前記ゴム成分においては、エチレンオキサイド(EO)/エピクロルヒドリン(EP )/アリルグリシジルエーテル(AGE)の共重合比率が56モル%/40モル%/ 4モル%である。
・低ニトリルNBR;日本ゼオン(株)製「ニッポール401LL」(ガラス転位温度− 52℃)
・EPDM;三井化学(株)製「EPT4045」
・EO−PO−AGE共重合体; 日本ゼオン(株)製「ZSN8030」(ガラス転位
温度−63℃)に導電剤(リチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド またはリチウム−トリフルオロメタンスルホネート)を10質量%の割合で配合した もの
・充填剤1;HAFカーボン(東海カーボン(株)製「シースト3」)
・充填剤2;軽質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製)
・発泡剤;永和化成工業(株)製「ビニホールAC#3」
・発泡助剤;永和化成工業(株)製「セルペースト101」
・加硫剤;粉末硫黄(鶴見化学工業(株)製)
・加硫助剤1;大内新興化学工業(株)製「ノクセラ−DM」
・加硫助剤2;大内新興化学工業(株)製「ノクセラ−TS」
【0066】
(実施例1)
表1に記載の配合材料をバンバリーミキサーで混練り後、押出機にてチューブ状に押し出し加工を施した。該チューブを加硫用のシャフトに装着し、加硫缶にて発泡剤をガス化させ発泡させると共にゴム成分が架橋する温度(160℃)で1時間加硫して、発泡状の加硫ゴムチューブを得た。
芯金を用意し、その外周面にホットメルト接着剤を塗布した後、先に得られた加硫ゴムチューブに芯金を挿入し、加熱し接着した後、表面を研磨して導電性弾性層を目標寸法に仕上げた。導電性ロールの導電性弾性層の寸法は、内径6mm、外径14mm、長さ230mmとした。
ロール表面を水洗いした後、紫外線照射を行い最表面に酸化被膜を形成した。これは紫外線照射機(セン特殊光源(株)製「PL21−200」)を用い、ロールと紫外線ランプ間の距離を10cmとし、ロールを30rpmの速度で回転させながら、紫外線(波長184.9nm)を5分間照射することによって行った。
【0067】
(実施例2)
EO:PO:AGE=90:4:6であるEO−PO−AGE共重合体(日本ゼオン(株)製「ZSN8030」)とイオン導電剤(リチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドまたはリチウム−トリフルオロメタンスルホネート)とを混練機を用いて60℃の温度下3分間混練した。このとき、導電剤の配合量が10重量%となるようにした。
得られた混練物に低ニトリルNBR、EPDM、その他各種配合剤を表1に示す量で配合し、再度60℃の温度下で4分間オープンロールまたは密閉式混練機を用いて混練し、導電性ポリマー組成物を作製した。
【0068】
この導電性ポリマー組成物をφ60mmの単軸押出機に投入し60℃で中空チューブ状に押し出して予備成形し、この生ゴムチューブを所定寸法に裁断して予備成形体を得た。この予備成形体を加圧水蒸気式加硫缶に投入し、発泡剤をガス化させ発泡させると共に、ゴム成分が架橋する温度(160℃)で30分間加硫して、発泡状の加硫ゴムチューブを得た。
芯金を用意し、その外周面にホットメルト接着剤を塗布した後、先に得られた加硫ゴムチューブに芯金を挿入し、加熱し接着した後、表面を研磨して導電性弾性層を目標寸法に仕上げた。導電性ロールの導電性弾性層の寸法は、内径6mm、外径14mm、長さ230mmとした。
得られた導電性ロールにおいては、図2に示すように、低ニトリルNBRが連続相を、導電剤を含有しているEO−PO−AGE共重合体が第1非連続相を、EPDMが第2非連続相を形成していた。
【0069】
ロール表面を水洗いした後、紫外線照射を行い最表面に酸化被膜を形成した。これは紫外線照射機(セン特殊光源(株)製「PL21−200」)を用い、ロールと紫外線ランプ間の距離を10cmとし、ロールを30rpmの速度で回転させながら、紫外線(波長184.9nm)を5分間照射することによって行った。
【0070】
(実施例3)
発泡剤および発泡助剤を配合せず、導電性弾性層を発泡体としなかった以外は、実施例1と全く同様にして本発明の導電性ロールを作製した。
【0071】
(実施例4)
発泡剤および発泡助剤を配合せず、導電性弾性層を発泡体としなかった以外は、実施例2と全く同様にして本発明の導電性ロールを作製した。
【0072】
(比較例1〜4)
紫外線照射を行わず、導電性弾性層の最表面に酸化被膜を形成しなかった以外は、実施例1〜4と全く同様にして導電性ロールを作製した。
【0073】
表1の結果から、導電性弾性層の最表面に酸化被膜を設けなかった比較例1〜4では、通電試験の結果である(logR100−logR0)の値が0.4、摩擦係数比μ100/μ0が0.56〜0.66となっており、初期状態からの電気特性および摩擦特性の変化が大きい。これに対し、導電性弾性層の最表面に酸化被膜を設けた実施例1〜4では、通電試験の結果である(logR100−logR0)の値が0.3または0.2、摩擦係数比μ100/μ0が0.91〜0.92と、初期状態からの電気特性および摩擦特性の変化が小さくなるように改善されていることがわかる。これにより、本発明の導電性ロールを用いれば、画像形成装置に実装されたときに画像形成装置の電気的な制御や搬送機構の制御を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の導電性ロールの概略図である。
【図2】本発明の導電性ロールにおいて導電性弾性層を構成する導電性ポリマー組成物の相構造(モルフォロジー)の一形態を説明するための模式図である。
【図3】本発明の導電性ロールにおいて導電性弾性層を構成する導電性ポリマー組成物の相構造(モルフォロジー)の他の形態を説明するための模式図である。
【図4】本発明の実施例において、導電性ロールの物性の測定方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0075】
1、1’ 連続相
2,2’ 第1非連続相
3 第2非連続層
10 導電性ロール
11 導電性弾性層
12 芯金
13 酸化皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金外周面上に導電性弾性層を備える導電性ロールであって、
前記導電性弾性層の最表面に酸化被膜が形成されており、
印加電圧1000Vにおける初期ロール抵抗値をR0[Ω]とすると共に100時間連続印可した後のロール抵抗値をR100[Ω]とすると、(logR100−logR0)≦0.3であることを特徴とする導電性ロール。
【請求項2】
芯金外周面に導電性弾性層を備える導電性ロールであって、
前記導電性弾性層の最表面に酸化被膜が形成されており、
初期の摩擦係数をμ0、印加電圧1000Vで100時間連続印可した後の摩擦係数をμ100とすると、0.8<μ100/μ0<1.0であることを特徴とする導電性ロール。
【請求項3】
芯金外周面上に導電性弾性層を備えた導電性ロールであって、
前記導電性弾性層の最表面に酸化被膜が形成されており、
印加電圧1000Vにおける初期ロール抵抗値をR0[Ω]とすると共に100時間連続印可した後のロール抵抗値をR100[Ω]とすると、(logR100−logR0)≦0.3で、かつ、
初期の摩擦係数をμ0、印加電圧1000Vで100時間連続印可した後の摩擦係数をμ100とすると、0.8<μ100/μ0<1.0であることを特徴とする導電性ロール。
【請求項4】
前記酸化被膜は、紫外線照射されたものよりなる請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の導電性ロール。
【請求項5】
前記導電性弾性層が、連続相と1相または2相以上の非連続相とからなり、
前記連続相が、アクリロニトリルブタジエンゴムを含む請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の導電性ロール。
【請求項6】
前記非連続相のうち少なくとも1相が、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体を含む請求項5に記載の導電性ロール。
【請求項7】
上記非連続相のうちの少なくとも1相に、イオン導電剤が偏在されている請求項5または請求項6に記載の導電性ロール。
【請求項8】
上記導電性弾性層が、エピクロルヒドリンゴムとアクリロニトリルブタジエンゴムのブレンドゴムを含む請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の導電性ロール。
【請求項9】
上記導電性弾性層が、発泡体からなる請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の導電性ロール。
【請求項10】
画像形成装置に用いられる請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の導電性ロール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−145636(P2006−145636A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332460(P2004−332460)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】