説明

導電性ロール

【課題】過剰なトナーの搬送を抑制し良好なトナー離れを実現でき、適度な印刷濃度を保ち、初期段階から長期に渡り印刷性能に優れる導電性ロールを提供することを課題としている。
【解決手段】加硫ゴム組成物で形成されてなるトナー搬送部を少なくとも最外層に備えた導電性ロールであって、前記加硫ゴム組成物は、(A)ゴム成分、(B)粒径18nm以上80nm未満の高導電性カーボンブラック、(C)酸化チタン、アルミナおよびシリカからなる群から選択される1種以上の金属酸化物からなる無機フィラーを含有しており、前記(B)および(C)の合計含有量はゴム成分(A)100質量部に対して10質量部以上60質量部以下であることを特徴とする導電性ロールを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ロールに関し、詳しくは電子写真装置に装着される現像ロール、クリーニングロール、帯電ロールまたは転写ロール等として用いられるトナー搬送部を有する導電性ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による印刷技術においては、高速化、高画質化、カラー化、小型化といった要求を満たすために改良が重ねられ、特に、キーとなるトナーは、微細化、粒径の均一化、球形化が図られている。
トナーの微細化については、トナー粒径が10μm以下、さらには5μm以下のものも出てきている。トナーの球形化については、真球度が99%を上回るものまで出てきている。さらに、高画質化を求めて、従来の粉砕トナーに代わり重合トナーが主流となりつつある。かかる重合トナーは、デジタル情報を印刷物にする際にドットの再現性が非常によく高品質な印刷物が得られる。
【0003】
このようなトナーの微細化および均一化・球形化、重合トナーへの移行に対応して、レーザービームプリンター等の電子写真装置の画像形成機構においてトナーに高い帯電性を付与しかつトナーを付着させることなく効率的に感光体に搬送させることができる現像ロールとして導電性ロールが特に有用であるが、さらに、この導電性ロールの高性能な機能を製品の使用寿命の最後まで維持させることが求められる。
【0004】
それに対して、例えば、本出願人が提案した特開2007−286236号公報(特許文献1)には、ゴム組成物で形成される高抵抗な表層と電子導電性のゴム組成物で形成される低抵抗な基層の少なくとも2層を備えた半導電性ゴム部材が記載されており、表層と基層の電気抵抗値のバランスを図ることで良好な帯電特性を得ることができる。
しかし、両層の厚みを精度よく実現することが難しく、極めて高い厚み精度が必要とされる。高い厚み精度を実現するためには手のかかる管理が必要であると共に、管理した場合も製品歩留まりが良好でないことなどによりコスト高になりやすい。そのため、より簡素な工程管理で安価に製造できるよう改善の余地がある。
【0005】
また、本出願人が提案した特開2006−99036号公報(特許文献2)には、クロロプレンゴムを含む導電性ゴム層を最外層に備え、所定条件での誘電正接が0.1〜1.8である半導電性ゴム部材が記載されている。該半導電性ゴム部材は極めて高い電荷をトナー等の付着物に付与することができると共にトナーに付与した電荷の漏洩を防ぐことができる。
該半導電性ゴム部材においては、カーボンブラックの中でもゴム成分の種類や抵抗値に影響を与えることなく誘電性を付与できる弱電性カーボンを使用するなどして誘電正接を前記範囲内に調整することにより、初期画像濃度の向上、耐久性(トナー帯電の経時安定性)の向上はそれぞれ極めて高いレベルで実現しているが、それら両方を一挙に実現できるようさらなる改善の余地がある。
【0006】
さらに、本出願人が提案した特開2004−170845号公報(特許文献3)には、電気特性が均一なイオン導電性ゴムを用い、誘電正接調整用充填剤を配合して誘電正接を0.1〜1.5としている導電性ゴムロールが記載されている。当該導電性ゴムロールを用いれば、トナーに適切でかつ高い帯電を付加でき、結果として高画質な初期画像が得られる。さらに、トナーの帯電量が印刷枚数を経ても低下しにくく、結果として高画質が維持できる。
【0007】
前記特許文献3においては、イオン導電性を得るためにエピクロルヒドリンゴムに代表される塩素原子を含有するゴム成分を用いることがある。この場合、当該塩素原子を含有するゴム成分は一般に表面自由エネルギーが高く、トナーやトナー外添剤と付着しやすい傾向がある。
あわせてイオン導電性を示すエチレンオキサイドモノマーが重合されている場合は、表面自由エネルギーが上がり濡れやすくなり、導電性ゴムロール対するトナーの付着性が高くなる。
さらに表面に紫外線照射やオゾン暴露などを施し酸化膜を形成させると、その部分の酸素濃度が高くなるため表面自由エネルギーが上がり導電性ゴムロールに対するトナーの付着性がさらにます可能性がある。
加えて誘電正接を0.1〜1.5とした場合はトナーの帯電性を向上できトナーの搬送量を低減できるためハーフトーン画像など高画質な画像が実現できるが、一方で現像ロール上のトナーの積層量が少なくなるため、現像ロールとして使用した場合にはトナーの付着性がさらにます可能性がある。
【0008】
このような導電性ゴムロールへのトナーの付着は、ごく初期の画像や連続的に印刷した画像には影響をあまり及ぼさないが、例えば以下のような条件で印刷した場合にはその影響が無視できなくなる。例えば、通常帯電されたトナーは静電気力(クーロン力)により逆の電荷を持つ感光体に搬送されるところ、トナーと現像ロールの付着性が強いためこの静電気力によるトナーの搬送が妨げられ、トナーに付加する帯電量が変わらないにもかかわらず印刷濃度が低下するという問題が生じ得る。
・印刷をほどよく行い、トナーが現像ロールに比較的なじんだ時点
(例えば1%印字画像を2,000枚程度印刷した時点)
・トナーの平均粒径が8μm以下、特に6μm以下の場合
・連続的に印刷せず、例えば一日停止して翌日印刷した場合
・トナーの帯電量が比較的高い低温低湿環境において使用する場合
【0009】
また、特開2005−225969号公報(特許文献4)には、ポリエーテル結合を有するゴムを含むイオン導電性ゴムにワックスを配合することで、表面の自由エネルギーを低減させてトナー外添剤等の付着を長期にわたり防止することができ、加工性に優れ、成形ムラや割れなどの表面欠陥をも防ぐことができる半導電性ゴム部材が開示されている。 しかし、現像ロールとして使用したときのトナーの付着性がまだ高く、前述の「印刷濃度の低下」がまだ見られることがある。さらには、ワックスのブリード等に起因する低分子量成分の存在と、約50℃程度の比較的高温環境下での粘着性の発現とによって、トナーや感光体への汚染がわずかであるが見られることがある。これでは、高画質が要求されるプリンター等の用途においては使用できるゴムやポリマーが限定されかねず、さらなる改善の余地があった。
【0010】
前述した導電性ローラを現像ロールとして用いた場合、設計上は帯電されたトナーが静電気力(クーロン力)により逆の電荷を持つ感光体に搬送されるべき状態であっても、トナーと現像ロールの物理的な付着性が強いため、この静電気力によるトナーの搬送が妨げられ、トナーに負荷する帯電力が変わらないにもかかわらず印刷濃度が低下するという「現像効率の低下」という問題が生じ得る。このようにトナーの搬送量が多いにもかかわらず現像効率の低下が生じる傾向は速度が20rpm以上の高速度プリンターに特に顕著である。
また、現像効率が低下するとトナーボックスで循環するトナーが多くなり、トナーの劣化が原因でトナー帯電量の低下が早まる結果、早期に画像不良が発生するという問題が生じる。すなわち、静電気的および物理的なトナー離れの悪さが主因で現像ローラのトナー搬送量が多くなると、印刷の際に現像ローラにより搬送されるトナーのほとんどが感光体による印刷に寄与せず現像ローラに残ってトナーボックスに戻ってくるような状態となり、その結果トナーがトナーボックス内で何度も循環してトナー同士が擦れることで傷が付くなどトナーの劣化が促進され、耐久使用の後半で画像不良が発生する。
【0011】
このような問題に対し、本出願人は特開2007−72445号公報(特許文献5)で「樹脂またはゴムは少なくとも塩素原子を有する樹脂またはゴムを含み、更に塩素原子を有する樹脂またはゴム100質量部に対して3〜60質量部の割合で酸化チタンを含んでいることを特徴とする半導電性ロール」を提供している。
該半導電性ロールにおいては、表面自由エネルギーが高い塩素原子を含有するゴム成分を用いる場合でも酸化チタンを所定量配合することによりトナーの付着を低減することができる。該特許文献5の具体的態様においては、酸化チタンに加えて更に弱電性カーボンブラックなどの誘電正接調整剤を含み、所定条件下での誘電正接が0.1〜1.8となるように調整されている。こうすることによりトナーに高い帯電を付加でき、十分な印刷濃度が得られる。
しかし、該態様においては静電気力的なトナー付着力が強くなりすぎる場合があり、このことが現像効率の低下を招き、さらにはトナーの劣化が促進され、耐久使用の後半で画像不良が発生しうるという問題があり、この点を改善する余地があった。
【0012】
【特許文献1】特開2007−286236号公報
【特許文献2】特開2006−99036号公報
【特許文献3】特開2004−170845号公報
【特許文献4】特開2005−225969号公報
【特許文献5】特開2007−72445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、過剰なトナーの搬送を抑制し良好なトナー離れを実現でき、適度な印刷濃度を保ち、初期段階から長期に渡り印刷性能に優れる導電性ロールを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記課題を解決するため、加硫ゴム組成物で形成されてなるトナー搬送部を少なくとも最外層に備えた導電性ロールであって、
前記加硫ゴム組成物は、(A)ゴム成分、(B)平均粒径18nm以上80nm未満の高導電性カーボンブラック、(C)酸化チタン、アルミナおよびシリカからなる群から選択される1種以上の金属酸化物からなる無機フィラーを含有しており、前記(B)および(C)の合計含有量はゴム成分(A)100質量部に対して10質量部以上60質量部以下であることを特徴とする導電性ロールを提供する。
【0015】
高導電性カーボンブラック(B)のみを充填剤として配合した場合、ゴム成分(A)100質量部に対して10質量部以上配合すれば高い初期印刷濃度を得ることができる。また、導電性が高いために連続使用時にローラに電荷がたまらないことから安定して使用することができる。しかし、ローラに電荷がたまらないために帯電したトナーを電気的にコントロールできないという問題も逆に生じる。このため、ローラ表面とトナーの付着力のみが作用することとなり、上述したようにトナー搬送量の増大、ひいては耐久性および印刷濃度の低下につながる。
一方、金属酸化物からなる無機フィラー(C)のみを充填剤として配合した場合、トナーの物理的な付着力を低減できる効果はあるが、十分なトナー帯電性が得られず、その結果十分な印刷濃度が得られない。
そこで、本発明者は鋭意検討し、前記高導電性カーボンブラック(B)および無機フィラー(C)を組み合わせ、合計含有量をゴム成分(A)100質量部に対して10質量部以上60質量部以下の割合にすると、高導電性カーボンブラック(B)のトナー付着効果と無機フィラー(C)によるトナーの付着力低減効果とのバランスが絶妙に保たれ、「トナー付着力、言い換えればトナー搬送量の低減による耐久性の向上」および「高印刷濃度の実現」という両立の難しい背反性能を併せ持つ導電性ロールができることを知見した。
【0016】
高導電性カーボンブラック(B)および無機フィラー(C)の合計含有量をゴム成分(A)100質量部に対して10質量部以上60質量部以下としたのは、合計含有量が10質量部未満であると高導電性カーボンブラック(B)および無機フィラー(C)を配合した効果が得られず、逆に合計含有量が60質量部を超えると導電性ロールが固くなりすぎて、耐久性が著しく劣ることとなるとともに他の部材、特に感光体と接触するときのニップが不安定になる結果得られる画像が悪くなるからである。
【0017】
トナー搬送部を形成する加硫ゴム組成物は、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、高導電性カーボンブラック(B)を1質量部以上40質量部以下、無機フィラー(C)を1質量部以上40質量部以下の割合で含有していることが好ましい。
このような配合割合にすることにより、導電性ロールの硬度の上昇を防いだうえで、さらに高導電性カーボンブラック(B)と無機フィラー(C)との相乗効果も期待できる。すなわち、ローラが低抵抗であることによりローラに電荷をためず安定させることと、ローラ表面の物理的な付着力を低減させることで低抵抗による電気的なコントロールの低下の影響が生じない絶妙なトナー搬送特性を有するローラが完成できた。
【0018】
さらに、前記加硫ゴム組成物は、ゴム成分(A)100質量部に対して、高導電性カーボンブラック(B)を5質量部以上30質量部以下、無機フィラー(C)を10質量部以上40質量部以下の割合で含有しており、かつ(B)および(C)の合計含有量はゴム成分(A)100質量部に対して10質量部以上40質量部以下であることがより好ましい。
このような配合割合にすることにより、「トナー搬送量」「耐久性」および「印刷濃度」においてより安定した性能が得られる。
【0019】
前記加硫ゴム組成物に含まれるゴム成分(A)としては特に限定されず、公知のゴムを用いてよい。しかしながら、下記の(1)〜(4)のいずれかの要件を少なくとも1つ満たす加硫ゴムを用いることが好ましい。
(1)塩素原子を有するゴム;
(2)SP値が18.0(MPa)1/2以上であるゴム;
(3)イオン導電性ゴム;
(4)イオン導電材を含むことによりイオン導電性が付与されているゴム。
このようなゴム成分を使用することにより、特に本発明の導電性ローラを電子写真装置の画像形成機構において非磁性1成分トナーを用いた現像装置に搭載される現像ロールとして用いたときに良好な特性を示す。
【0020】
本発明では、粒径18nm以上80nm未満の粒径小のカーボンブラックを「高導電性カーボンブラック」と定義する。一方、粒径80nm以上500nm未満の粒径大のカーボンブラックを「弱導電性カーボンブラック」と定義し、前記高導電性カーボンブラックとは粒径でこれを明確に区別している。なお、本明細書において「粒径」とは「平均一次粒子径」を示している。
これは粒径80nmを境界としてカーボンブラックの導電性に顕著な差異が見られ、加硫ゴム組成物に配合された場合に異なる役割を担うからである。すなわち、弱導電性カーボンブラックは粒径が大きくストラクチャーの発達が小さく導電性への寄与が小さいカーボンブラックであり、これを配合することにより導電性を高めることなく分極作用によるコンデンサー的な働きを得ることができ、電気抵抗の均一化を損なうことなく帯電性のコントロールを実現できる。一方、高導電性カーボンブラックは弱導電性カーボンブラックに比べて粒子径が小さくストラクチャーが発達しており導電性への寄与が大きい。そのため、これを配合することにより導電性を高めることができる。例えば現像ロールとして使用する場合、プリンターが高速化され感光体と接触する時間が短くなったりプリンターが小型化して感光体の径が小さくなったりなどして現像ロールと感光体の接触面積が小さくなっても、高い印刷濃度を得ることができる。
【0021】
粒径80nm以上500nm未満の粒径大の「弱導電性カーボンブラック」のみを用いた場合、トナーに高い帯電を付加でき十分な印刷濃度が得られる。しかし、無機フィラー(C)によるトナーの付着力低減効果と弱電性カーボンブラックの静電気力的なトナー付着効果とのバランスが十分には保たれず、静電気力的なトナー付着力が強くなりすぎる場合があり、このことが現像効率の低下を招き、さらにはトナーの劣化が促進され、耐久使用の後半で画像不良が発生しうるおそれがある。
一方、粒径18nm未満のカーボンブラックを用いると、加硫ゴム組成物内部で均一に分散されにくく、分散の悪い部分でトナーの搬送量が不均一となり、画像不良が発生したり、トナーのシール部が破損してトナー漏れが生じたりするおそれがある。
高導電性カーボンブラックとしては、よう素吸着量が50〜200mg/g、比表面積が30〜140m/g、DBP吸油量が20〜150ml/100gであるものがより好ましい。
【0022】
前記加硫ゴム組成物に含まれる無機フィラー(C)としては、酸化チタン、シリカまたはアルミナを用いている。1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてよい。なかでも酸化チタンを用いることが好ましい。酸化チタンは帯電性において中性の性質を示すことから、トナーの極性によらず、ゴム成分の種類および組成、導電性ロールの物性(特に誘電正接)等によって影響を受けることがなく、安定したトナーの付着低減効果を示すことができるからである。
【0023】
本発明の導電性ロールは、上述の加硫ゴム組成物で形成されてなるトナー搬送部を少なくとも最外層に備えている。前記トナー搬送部は、最外層となる加硫ゴム層1層のみから構成されていても良いし、組成の異なる2層以上から構成されていても良い。
特に、加硫ゴム層1層のみからなる構成とすると、製造が簡便で生産効率の見地からは好ましい。その場合、該加硫ゴム層からなるトナー搬送部の中空部に円柱形状の芯金を圧入している。
本発明の導電性ロールを現像ロール等のトナー搬送部に用いる場合、トナー漏れ防止用のシール部材を有することが好ましい。ここで、「シール部材」としてはトナー漏れ防止用に設けられたものに限らず、導電性ロールの外周面に摺動接触する部材をすべて含む。
【0024】
トナー搬送部の表面には紫外線照射による酸化膜が形成されていることが好ましい。
紫外線照射による酸化膜形成は、処理時間が早く、コストも低いことから好ましく行われる。酸化膜を形成することにより、酸化膜が誘電層となり導電性ロールの誘電正接を低減でき、その結果トナーに帯電性をより効率よく付加でき、付加した帯電性を維持することができるようになる。そのほか、オゾン曝露等の公知の方法に従って酸化膜を形成してもよい。
【0025】
本発明の導電性ロールは、レーザービームプリンター、インクジェットプリンター、複写機、ファクシミリまたはATMなどのOA機器における電子写真装置の画像形成機構に用いられる導電性ロールとしていることが好ましい。
なかでも、非磁性1成分トナーを搬送するための現像ロール、トナー供給ロール、クリーニングロール、帯電ロール、転写ロール等のトナー搬送部、トナーと接触する部材に用いられることが好ましい。この場合、トナー搬送部は少なくともその最外層が加硫ゴムで形成されているので、電気特性の均一性や設計値の繰り返し再現性を低コストで容易に得ることができる。
【0026】
本発明の導電性ロールは、特に、電子写真装置の画像形成機構において非磁性1成分トナーを用いた現像装置に搭載される現像ロールとして好適に用いられる。電子写真装置の画像形成機構における現像方式としては感光体と現像ロールの関係で分類すると接触式または非接触式に大別されるが、本発明の導電性ロールはいずれの方式にも利用できる。なかでも本発明の導電性ロールを現像ロールとして用いる場合は感光体に概接触していることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の導電性ロールにおいては、高導電性カーボンブラック(B)と無機フィラー(C)を組み合わせゴム成分(A)に対して所定の割合で配合することにより、高導電性カーボンブラック(B)のトナー付着効果と無機フィラー(C)によるトナーの付着力低減効果とのバランスが保たれる結果、過剰なトナーの搬送を抑制し良好なトナー離れを実現でき、適度な印刷濃度を保ち、初期段階から長期に渡り優れた印刷性能を発揮することができる。
本発明の導電性ロールは、例えば高い厚み精度が要求されたり特別な設備を要したりすることなく、製品の歩留まりを低下させることなく簡素な工程管理で安価に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
本発明の実施形態の導電性ロール10は、電子写真装置の画像形成機構において非磁性1成分トナーを用いた現像装置に用いられる現像ロールである。
図1に示すように加硫ゴム組成物から構成されるトナー搬送部1と、その中空部に圧入された円柱形状の芯金(シャフト)2と、トナーが漏れるのを防止するシール部3を備えている。
前記トナー搬送部1は、円筒形状で肉厚を0.5〜15mm、好ましくは3〜15mmとしている。該肉厚を0.5〜15mmとしているのは、前記範囲より小さいと適当なニップを得にくく、前記範囲より大きいと部材が大きすぎて小型軽量化を図りにくいからである。
芯金2は、アルミニウム、アルミニウム合金、SUSもしくは鉄等の金属製、またはセラミック製等としており、前記トナー搬送部1と芯金2とは導電性接着剤で接合されている。
シール部3はテフロン(登録商標)などの不織布やシートで構成している。
【0029】
トナー搬送部1を構成する加硫ゴム組成物は、(A)ゴム成分、(B)高導電性カーボンブラック、(C)酸化チタン、アルミナおよびシリカからなる群から選択される1種以上の金属酸化物からなる無機フィラーを含有している。そして、前記(B)および(C)の合計含有量はゴム成分(A)100質量部に対して10質量部以上60質量部以下であり、より好ましくは10質量部以上40質量部以下である。前記(B)と(C)の含有割合は特に限定されないが、前記(B)の含有量が前記(C)の含有量よりも多いことが好ましい。
【0030】
前記高導電性カーボンブラック(B)の含有量はゴム成分(A)100質量部に対して1質量部以上40質量部以下であることが好ましい。高導電性カーボンブラック(B)の含有量が1質量部未満であると十分な導電性が得られないために高い印刷濃度を得ることができない。一方、40質量部を超えると導電性が高くなりすぎ、十分な帯電性が得られなくなることに加え、導電性ロールの硬度が上昇することに伴うトナーの劣化が発生するおそれがあるからである。
ゴム成分(A)100質量部に対する高導電性カーボンブラック(B)の含有量の下限は5質量部であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましく、15質量部以上であることが特に好ましい。上限は、30質量部以下であることがより好ましく、25質量部以下であることがさらに好ましい。
【0031】
前記無機フィラー(C)の含有量はゴム成分(A)100質量部に対して1質量部以上40質量部以下であることが好ましい。無機フィラー(C)の含有量が1質量部未満であるとトナーの物理的な付着の低減、すなわちトナー離れを向上させることができない。一方、40質量部を超えるとトナー搬送部の硬度が高くなりすぎ、トナーの劣化が促進されるとともにトナーに適切な帯電を付加できなくなったり、トナー搬送部の表面を研磨する研磨材の耐久性が悪くなり再ドレスが必要となったりするからである。また、高導電性カーボンブラック(B)との混合性も悪くなる。
ゴム成分(A)100質量部に対する無機フィラー(C)の含有量の下限は2質量部であることがより好ましく、2.5質量部以上であることがさらに好ましく、5質量部以上であることが特に好ましい。上限は、30質量部以下であることがより好ましく、25質量部以下であることがさらに好ましく、20質量部以下であることが特に好ましい。
【0032】
加硫ゴム組成物に含まれる各成分について以下に詳述する。
ゴム成分(A)としては特に限定されず下記の(1)〜(4)のいずれかの要件を少なくとも1つ満たす加硫ゴムを用いることが好ましい。
(1)塩素原子を有するゴム;
(2)SP値が18.0(MPa)1/2以上であるゴム;
(3)イオン導電性ゴム;
(4)イオン導電材を含むことによりイオン導電性が付与されているゴム。
【0033】
(1)「塩素原子を有するゴム」としては塩素原子を有すれば公知のゴムであってよい。具体的には、例えばクロロプレンゴム、塩素化ブチルもしくはクロロスルホン化ポリエチレンなどのほとんど導電性を示さない非導電性ゴム、またはエピクロルヒドリン系共重合体などの導電性ゴムが挙げられる。
ゴムが塩素原子を有する場合、例えばプラス帯電トナーに対して極めて容易に帯電できる特長がある反面、塩素原子に起因することとして塩素原子を有さないゴムと比べて粘着性が大きい傾向がある。そのため、ゴム成分(A)が塩素原子を有するゴムを含む場合、本発明を適用すれば塩素原子を有するゴムの欠点である非静電気的な高粘着性と静電気的な付着力を効果的に抑制できる。
【0034】
非導電性ゴムの場合は、トナー搬送部の最外層をイオン導電性とするためにイオン導電性ゴムと組み合わせることが好ましい。イオン導電性ゴムとしては、例えばポリエーテル系共重合体またはエピクロルヒドリン系共重合体が挙げられる。なお、塩素原子を有するゴムとしてイオン導電性ゴムを用いる場合でも、さらに塩素原子を有さないイオン導電ゴムを組み合わせてもよい。
【0035】
(2)「SP値が18.0(MPa)1/2以上であるゴム」としては、エピクロルヒドリン系共重合体、ポリエーテル系共重合体、アクリルゴム、アクリロニトリル量が20%以上であるNBRゴムまたはクロロプレンゴムなどが挙げられる。
ここで、前記SP値とは溶解度パラメーターまたは溶解度定数のことであり、例えば「塗料の流動と顔料分散」(植木憲二監修、共立出版株式会社発行)等の文献で定義されており、各液体における凝集エネルギー密度の平方根であり、溶解性を特徴づける指標となる。SP値が高いほど極性が高い。2種類以上のゴムをブレンドする場合、SP値が18.0(MPa)1/2未満であるゴムを用いてよいが、みかけのSP値が18.0(MPa)1/2以上となるように配合量を調整する。みかけのSP値は、そのゴム固有のSP値とゴム成分全体を1としたときの混合質量比の積をゴム成分ごとに算出し、その和で表されるものである。例えば、a成分のSP値をXa、ゴム成分全体を1としたときの混合質量比Yaとし、b成分のSP値をXb、ゴム成分全体を1としたときの混合質量比Ybとすると、見かけのSP値はXa・Ya+Xb・Ybとなる。
【0036】
「SP値が18.0(MPa)1/2以上であるゴム」は、ゴムの種類を選定することでプラス帯電においてもマイナス帯電においても極めて高い帯電性を与える可能性がある反面、極性が高すぎて粘着性が大きい傾向がある。しかし、極性があることとフィラーのせん断効果で、複数種類の充填剤を配合しても極めて分散しやすいことが実験によりわかった。そのため、加硫ゴム組成物が「SP値が18.0(MPa)1/2以上であるゴム」を含む場合、高導電性カーボンブラック(B)と無機フィラー(C)を一緒に配合すれば極性が高いゴムの利点を残したまま、その欠点である高粘着性を効果的に抑制できる。
「SP値が18.0(MPa)1/2以上であるゴム」は、ほとんど導電性を示さない非導電性ゴムであっても、イオン導電性ゴムであってもよい。
本発明では高導電性カーボンブラック(B)を必須成分として含むため非導電性ゴムの場合であっても導電性を有するが、導電性を付与するためにイオン導電性ゴムと組み合わせるか、高導電性カーボンブラック(B)以外の他の電子導電材あるいはイオン導電材を配合してもよい。
他の電子導電材としては、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、アンチモンドープ酸化チタン、酸化スズもしくはグラファイト等の導電性金属酸化物;カーボン繊維等が挙げられる。他の電子導電材の配合量は電気抵抗値などの物性を見ながら適宜選択すればよいが、例えばゴム成分100質量部に対して5〜40質量部であることが好ましく、10〜25質量部であることがより好ましい。また、これら他の電子導電材は粒径が80nm未満であることが好ましい。
【0037】
(3)「イオン導電性ゴム」としては、例えばポリエーテル系共重合体またはエピクロルヒドリン系共重合体等のエチレンオキサイドを含有する共重合体が挙げられる。
「イオン導電性ゴム」は、電気特性の均一性や設計値の繰り返し再現性を維持することが容易にできる反面、水とのなじみがよく表面自由エネルギーが高く濡れやすいため粘着性が大きい傾向がある。そのため、ゴム成分(A)が「イオン導電性ゴム」を含む場合、本発明を適用すればその欠点である高粘着性を効果的に抑制できる。
【0038】
(4)「イオン導電材を含むことによりイオン導電性が付与されているゴム」におけるイオン導電材は種々選択できるが、例えば第4級アンモニウム塩、カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物もしくはエステル類等のカルボン酸誘導体、芳香族系化合物の縮合体、有機金属錯体、金属塩、キレート化合物、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、ヒドロキシカルボン酸金属錯体、ポリカルボン酸金属錯体、ポリオール金属錯体等の帯電防止剤または電荷制御剤などとして使用されているものを用いることができる。
また、イオン導電材としては、フルオロ基(F−)およびスルホニル基(−SO2−)を有する陰イオンを備えた塩も好適な例として挙げられる。より具体的には、ビスフルオロアルキルスルホニルイミドの塩、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メタンの塩またはフルオロアルキルスルホン酸の塩などが挙げられる。前記塩において陰イオンと対になる陽イオンとしては、アルカリ金属、2A族またはその他の金属イオンが好ましく、なかでもリチウムイオンがより好ましい。前記イオン導電材として具体的には、例えばLiCF3SO3、LiC49SO3、LiN(SO2CF32、LiC(SO2CF33、LiCH(SO2CF32が挙げられる。
イオン導電材の配合量は、その種類によって適宜選択することができるが、例えばゴム成分100質量部に対して0.1〜5質量部であることが好ましい。
【0039】
ゴム成分(A)のより好ましい態様としては、
(a)エピクロルヒドリン系共重合体単独、
(b)クロロプレンゴムと、エピクロルヒドリン系共重合体または/およびポリエーテル系共重合体との組み合わせ、
(c)クロロプレンゴムとNBRとの組み合わせ
が挙げられる。
なかでも、(b−1)クロロプレンゴムとエピクロルヒドリン系共重合体との組み合わせ、(b−2)クロロプレンゴムとエピクロルヒドリン系共重合体とポリエーテル系共重合体との組み合わせ、(c)クロロプレンゴムとNBRとの組み合わせがさらに好ましく、(b−1)クロロプレンゴムとエピクロルヒドリン系共重合体との組み合わせ、(c)クロロプレンゴムとNBRとの組み合わせが特に好ましい。
【0040】
ゴム成分(A)として2種類以上のゴムを組み合わせる場合、その配合比は適宜選択すればよい。
例えば、(b−1)クロロプレンゴムとエピクロルヒドリン系共重合体とを組み合わせる場合、ゴム成分の総質量を100質量部とすると、エピクロルヒドリン系共重合体の含有量を5〜95質量部、好ましくは20〜80質量部、より好ましくは20〜50質量部とし、クロロプレンゴムの含有量を5〜95質量部、好ましくは20〜80質量部、より好ましくは50〜80質量部とすることが好適である。
(b−2)クロロプレンゴムとエピクロルヒドリン系共重合体とポリエーテル系共重合体とを組み合わせる場合、ゴム成分の総質量を100質量部とすると、エピクロルヒドリン系共重合体の含有量を5〜90質量部、好ましくは10〜70質量部とし、ポリエーテル系共重合体の含有量を5〜40質量部、好ましくは5〜20質量部とし、クロロプレンゴムの含有量を5〜90質量部、好ましくは10〜80質量部とすることが好適である。このような配合比にすることにより3成分をうまく分散させることができ強度をはじめとする物性を向上させることができる。より好ましくは、質量比でエピクロルヒドリン系共重合体:クロロプレンゴム:ポリエーテル系共重合体=2〜5:4〜7:0.5〜1.5であり、更に好ましくは質量比でエピクロルヒドリン系共重合体:クロロプレンゴム:ポリエーテル系共重合体=2〜5:4〜7:1である。
(c)クロロプレンゴムとNBRとを組み合わせる場合、ゴム成分の総質量を100質量部とすると、NBRの含有量を5〜95質量部、好ましくは20〜80質量部、より好ましくは20〜50質量部とし、クロロプレンゴムの含有量を5〜95質量部、好ましくは20〜80質量部、より好ましくは50〜80質量部とすることが好適である。
【0041】
エピクロルヒドリン系共重合体としては、例えば、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体等が挙げられる。
【0042】
エピクロルヒドリン系共重合体としてはエチレンオキサイドを含む共重合体が好ましく、エチレンオキサイド含量が30モル%以上95モル%以下、好ましくは55モル%以上95モル%以下、さらに好ましくは60モル%以上80モル%以下である共重合体が特に好適である。エチレンオキサイドは体積固有抵抗値を下げる働きがあるが、エチレンオキサイド含量が30モル%未満であるとその抵抗値の低減効果が小さい。一方、エチレンオキサイド含量が95モル%を超えると、エチレンオキサイドの結晶化が起こり分子鎖のセグメント運動が妨げられるため、逆に抵抗値が上昇する傾向があると共に、加硫ゴムの硬度上昇や加硫前のゴムの粘度上昇といった問題が生じやすい。
【0043】
なかでも、エピクロルヒドリン系共重合体としてはエピクロルヒドリン(EP)−エチレンオキサイド(EO)−アリルグリシジルエーテル(AGE)共重合体を用いることが特に好ましい。前記共重合体中のEO:EP:AGEの好ましい含有比率はEO:EP:AGE=30〜95モル%:4.5〜65モル%:0.5〜10モル%であり、さらに好ましい比率はEO:EP:AGE=60〜80モル%:15〜40モル%:2〜6モル%である。
また、エピクロルヒドリン系共重合体としては、エピクロルヒドリン(EP)−エチレンオキサイド(EO)共重合体を用いることもできる。前記共重合体中のEO:EPの好ましい含有比率はEO:EP=30〜80モル%:20〜70モル%であり、さらに好ましい比率はEO:EP=50〜80モル%:20〜50モル%である。
【0044】
エピクロルヒドリン系共重合体を配合する場合、その配合量はゴム成分の総質量100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましい。
【0045】
ポリエーテル系共重合体としては、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体またはウレタン系ゴム等が挙げられる。
【0046】
ポリエーテル系共重合体としてはエチレンオキサイドを含む共重合体が好ましく、エチレンオキサイド含量が50〜95モル%である共重合体がより好ましい。エチレンオキサイドの比率が高い方が多くのイオンを安定化でき低抵抗化が実現できるが、エチレンオキサイドの比率を上げすぎるとエチレンオキサイドの結晶化が起こり分子鎖のセグメント運動が妨げられるため、逆に抵抗値が上昇する可能性があるからである。
【0047】
ポリエーテル系共重合体はエチレンオキサイドに加えてアリルグリシジルエーテルをも含むことが好ましい。アリルグリシジルエーテルを共重合することにより、このアリルグリシジルエーテルユニット自体が側鎖として自由体積を得ることから、前記エチレンオキサイドの結晶化を抑制することができ、その結果として従来にない低抵抗化が実現できる。さらにアリルグリシジルエーテルの共重合により炭素−炭素間の二重結合を導入して他のゴムとの架橋を可能にでき、他のゴムと共架橋することによりブリードや感光体などの他の部材の汚染を防止することができる。
ポリエーテル系共重合体中のアリルグリシジルエーテル含量としては1〜10モル%が好ましい。1モル%未満ではブリードや他の部材の汚染の発生が起こり易くなる一方、10モル%を越えると、それ以上の結晶化の抑制効果は得られず、加硫後の架橋点の数が多くなり、却って低抵抗化が実現できず、また引張強度や疲労特性、耐屈曲性等が悪化することとなる。
【0048】
本発明で用いるポリエーテル系共重合体としては、なかでもエチレンオキサイド(EO)−プロピレンオキサイド(PO)−アリルグリシジルエーテル(AGE)三元共重合体を用いることが好ましい。プロピレンオキサイドを共重合させることにより、エチレンオキサイドによる結晶化をさらに抑制することができる。前記ポリエーテル系共重合体中のEO:PO:AGEの好ましい含有比率はEO:PO:AGE=50〜95モル%:1〜49モル%:1〜10モル%である。さらに、ブリードや他の部材の汚染をより有効に防止するため、前記EO−PO−AGE三元共重合体の数平均分子量Mnは10,000以上であることが好ましい。
【0049】
ポリエーテル系共重合体を配合する場合、その配合量はゴム成分の総質量100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。
【0050】
クロロプレンゴムはクロロプレンの重合体で乳化重合により製造されるが、分子量調節剤の種類によりイオウ変性タイプ、非イオウ変性タイプに分類される。
イオウ変性タイプは、イオウとクロロプレンを共重合したポリマーをチウラムジスルフィド等で可塑化し、所定のムーニー粘度に調整するものである。非イオウ変性タイプとしては、メルカプタン変性タイプまたはキサントゲン変性タイプ等が挙げられる。メルカプタン変性タイプは、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンまたはオクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類を分子量調節剤として使用するものである。また、キサントゲン変性タイプはアルキルキサントゲン化合物を分子量調節剤として使用するものである。
また、クロロプレンゴムは生成クロロプレンゴムの結晶加速度により、結晶化速度が中庸のタイプ、結晶化速度が遅いタイプおよび結晶化速度が早いタイプに分けられる。
本発明においてはいずれのタイプを用いてもよいが、非イオウ変性で結晶化速度が遅いタイプが好ましい。
【0051】
クロロプレンゴムを配合する場合、その配合量はゴム成分の総質量100質量部に対し1質量部以上100質量部未満の範囲で適宜選択できる。なかでも、帯電性付与効果等を鑑みれば、クロロプレンゴムが5質量部以上含まれていることが好ましい。さらに、ゴムの均一性の観点からクロロプレンゴムが10質量部以上含まれていることがより好ましい。クロロプレンゴムの配合量の上限値は80質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましい。
【0052】
NBRとしては、アクリロニトリル含量が25%以下である低ニトリルNBR、アクリロニトリル含量が25〜31%である中ニトリルNBR、アクリロニトリル含量が31〜36%である中高ニトリルNBR、アクリロニトリル含量が36%以上である高ニトリルNBRのいずれを用いてもよい。
本発明においてはゴム比重を低減するために比重の小さい低ニトリルNBRを用いることが好ましい。クロロプレンゴムとの混合性を鑑みれば中ニトリルNBRまたは低ニトリルNBRを用いることが好ましく、より具体的にはSP値の観点からアクリロニトリル含量が15〜39%、好ましくは17〜35%、より好ましくは20〜30%のNBRを用いることが好適である。
NBRはトナーの種類によって水素添加やカルボキシル化などを施し、帯電性を調整することも有効である。
【0053】
NBRを配合する場合、その配合量はゴム成分の総質量100質量部に対し5〜65質量部であることが好ましく、10〜65質量部であることがより好ましく、20〜50質量部であることがさらに好ましい。プラス帯電性トナーを用いた場合はトナーの帯電量が低減するのでNBRの含有量は65質量部以下であることが好ましく、硬度上昇の抑制を実質的に得るためにはNBRの含有量は5質量部以上であることが好ましい。
【0054】
高導電性カーボンブラック(B)としては、前記粒径の範囲内で種々のカーボンブラックを使用でき、例えばケッチェンブラック、ファーネスブラックまたはアセチレンブラック等の導電性カーボンブラックが挙げられる。また、カーボンの分類では、前記粒径の範囲内の限りにおいて、例えばSAFカーボン(平均粒径18〜22nm)、SAF−HSカーボン(平均粒径20nm前後)、ISAFカーボン(平均粒径19〜29nm)、N−339カーボン(平均粒径24nm前後)、ISAF−LSカーボン(平均粒径21〜24nm)、I−ISAF−HSカーボン(平均粒径21〜31nm)、HAFカーボン(平均粒径26〜30nm)、HAF−HSカーボン(平均粒径22〜30nm)、N−351カーボン(平均粒径29nm前後)、HAF−LSカーボン(平均粒径25〜29nm)、LI−HAFカーボン(平均粒径29nm前後)、MAFカーボン(平均粒径30〜35nm)、FEFカーボン(平均粒径40〜52nm)、SRFカーボン(平均粒径58〜80nm)、SRF−LMカーボン、GPFカーボン(平均粒径49〜80nm)等が例示される。なかでも、FEFカーボン、ISAFカーボン、SAFカーボンまたはHAFカーボンを用いることが好ましい。
【0055】
粒径80nm以上500nm未満の粒径大の弱導電性カーボンブラックを配合してもよいが、より耐久性を高めるためには配合しない方が好ましい。弱導電性カーボンブラックを配合した場合、初期には高い帯電量が得られ印刷濃度も高くなるが、静電気力的なトナー付着力が強くなりすぎる場合があり、耐久使用の後半で画像不良が発生しうるというおそれがある。
【0056】
金属酸化物からなる無機金属フィラー(C)はゴム成分や目的とするロールの物性等に応じ、酸化チタン、アルミナおよびシリカからなる群から選択される1種以上を用いる。これら1種類を単独で用いても、任意の2種類、さらには3種類を組み合わせて用いてよい。なかでも、高導電性カーボンブラック(B)との分散性の相性が極めてよいために酸化チタンを少なくとも用いることが好ましく、酸化チタンを単独で用いることがより好ましい。
【0057】
無機フィラー(C)は酸化チタン、アルミナおよびシリカのいずれにしても使用するトナーの粒径よりも小さいことが好ましい。具体的には、無機フィラー(C)の一次粒径は10μm以下が好ましく、トナーとの作用を考えると5μm以下がより好ましい。コストや配合時の混合性を考慮すると1nm以上が好ましく、さらに高導電性カーボンブラック(B)との分散性から10nm以上が好ましい。コスト面および性能面の両者を考えると50nm以上1000nm以下が好ましく、100nm以上500nm以下がより好ましい。
【0058】
本発明で用いる酸化チタンとしては特に限定されず公知のものを用いればよい。結晶系としては、アナターゼ型、ルチル型、これらの混晶型、アモルファスのいずれのものも用いることができるが、なかでもルチル型の酸化チタンを用いることが好ましい。酸化チタンは、例えば硫酸法や塩素法、または例えばチタンアルコキシド、チタンハライドもしくはチタンアセチルアセトネート等の揮発性チタン化合物の低温酸化(熱分解や加水分解)により得られる。
本発明で用いる酸化チタンにおいては粒径が500nm以下である粒子が50%以上含まれていることが好ましい。この場合に酸化チタンの分散性が良くなるからである。なかでも、平均粒径が100〜500nmである酸化チタンを用いることが好ましい。特に粒径が300〜500nmである粒子を主成分とし、平均粒径が300〜500nmであるルチル型の酸化チタンを用いることが好ましい。
【0059】
本発明で用いるシリカとしては、その種類は限定されず、市販品を用いればよい。市販品としては、東ソー・シリカ(株)製「ニプシールVN3」などが挙げられる。シリカにはトナーの特性に合わせた表面処理が施されていてもよい。前記表面処理としては例えば疎水処理や親水処理などが挙げられる。
シリカとしては、平均一次粒子径が10〜500nmであるものが特に好ましい。また、BET比表面積が30〜300m2/gのものが好ましく、60〜250m2/gのものがより好ましい。
【0060】
アルミナはアルミニウムの酸化物(Al)である。本発明で用いるアルミナは、粒径が1μm以下のものが80%以上を占めていることが好ましく、さらに粒径が0.5μm以下のものが50%以上を占めていることがより好ましい。このように粒径の小さなアルミナを用いることにより均一に分散させることができ、下記に述べる放熱効果が向上するとともにトナー搬送部1の表面の均一性を確保しやすいという利点がある。
アルミナは熱伝導性に優れるのでトナー搬送部に含有されることによりシール部3とトナー搬送部1の外周面との摩擦により生じる熱をトナー搬送部全体にすばやく分散させることができ、トナー搬送部の内部に伝達された熱は金属からなる芯金2を経由して外部に逃がすことができるとともにトナー搬送部1の表面からも放熱させることができる。そのため、シール部3とトナー搬送部1との摺動摩擦による発熱で加速されていたシール部3の摩耗を抑えることができ、トナー漏れをより長期間にわたって有効に防ぐことができる。
さらには、トナー搬送部1が前記摺動部での発熱により高温とならないため、重合トナーを構成する熱可塑性樹脂が溶融しトナーが大径化・エッジ化し溶着して大きくなると共に角張ってくるのを防ぐことができる。よって、シール部3およびトナー搬送部1の耐久性を格段に向上させることができる。
加えてアルミナと酸化チタンを同時混合する場合、アルミナを混合することにより酸化チタンの混合効率も上がり、例えばこれらが異物としてゴム表面に検出されることが少なくなる。
【0061】
加硫ゴム組成物に含まれる上記必須成分以外の成分について以下に述べる。
加硫ゴム組成物にはゴム成分を加硫するための加硫剤が含まれる。
加硫剤としては硫黄系、チオウレア系、トリアジン誘導体系、過酸化物、各種モノマー等が使用できる。これらは単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。硫黄系加硫剤としては粉末硫黄、またはテトラメチルチウラムジスルフィドもしくはN,N−ジチオビスモルホリンなどの有機含硫黄化合物等が挙げられる。チオウレア系加硫剤としてはテトラメチルチオウレア、トリメチルチオウレア、エチレンチオウレアおよび(C2n+1NH)C=S(式中、nは1〜10の整数を表す。)で示されるチオウレア等が挙げられる。過酸化物としてはベンゾイルペルオキシドなどが挙げられる。
加硫剤の配合量はゴム成分100質量部に対して0.2質量部以上5質量部以下であることが好ましく、1質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。
【0062】
前記加硫剤として硫黄およびチオウレア類を併用することが好ましい。
硫黄は、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下、好ましくは0.2質量部以上2質量部以下の割合で含まれているのが良い。前記範囲としているのは、0.1質量部より小さいと組成物全体の加硫速度が遅くなり生産性が悪くなりやすいためである。一方、5.0質量部より大きいと圧縮永久ひずみが大きくなったり、硫黄や促進剤がブルームしたりする可能性があるためである。
また、チオウレア類はゴム成分100gに対して合計0.0001mol以上0.0800mol以下、好ましくは0.0009mol以上0.0800mol以下、より好ましくは0.0015mol以上0.0400mol以下の割合で配合されているのが良い。前記チオウレア類を前記範囲で配合することにより、ブルームや他の部材の汚染を起こりにくくすることができると共に、ゴムの分子運動をあまり妨げないためより低い電気抵抗を実現できる。また、チオウレア類の添加量を増やし架橋密度を上げるほど電気抵抗値を下げることができる。すなわち、チオウレア類の配合量が0.0001molより少ないと圧縮永久ひずみを改善しにくい。電気抵抗値を効果的に下げるにはチオウレア類の配合量が0.0009mol以上であることが好ましい。一方、チオウレア類の配合量が0.0800molより多いとゴム組成物表面からチオウレア類がブルームし感光体などの他の部材を汚染したり、破断伸び等の機械的物性が極度に悪化しやすい。
【0063】
加硫剤の種類に応じて加硫促進剤や加硫促進助剤をさらに配合してもよい。
加硫促進剤としては、消石灰、マグネシア(MgO)もしくはリサージ(PbO)等の無機促進剤や以下に記す有機促進剤を用いることができる。有機促進剤としては、ジ−オルト−トリルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン、1−オルト−トリルビグアニドもしくはジカテコールボレートのジ−オルト−トリルグアニジン塩等のグアニジン系;2−メルカプト−ベンゾチアゾールもしくはジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドもしくはジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系;チオウレア系等が挙げられ、これらを単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。
加硫促進剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下が好ましく、0.5質量部以上2質量部以下がより好ましい。
【0064】
加硫促進助剤としては、亜鉛華等の金属酸化物;ステアリン酸、オレイン酸もしくは綿実脂肪酸等の脂肪酸;その他従来公知の加硫促進助剤が挙げられる。
加硫促進助剤の添加量は、ゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下が好ましく、2質量部以上8質量部以下がより好ましい。
【0065】
ゴム成分(A)として塩素原子を有するゴムが含まれる場合、受酸剤を配合することが好ましい。受酸剤を配合することにより、ゴム加硫時に発生する塩素系ガスの残留および他の部材の汚染を防止することができる。
受酸剤としては酸受容体として作用する種々の物質を用いることができるが、分散性に優れていることからハイドロタルサイト類または酸化マグネシウムを用いることが好ましく、特にハイドロタルサイトを用いることがより好ましい。さらに、これらに酸化マグネシウムや酸化カリウムと併用することもでき、これにより高い受酸効果が得られ、他の部材の汚染をより確実に防止することができる。
受酸剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対し1質量部以上10質量部以下、好ましくは3質量部以上7質量部以下としている。加硫阻害および他の部材の汚染を防止する効果を有効に発揮させるため受酸剤の配合量は1質量部以上であることが好ましく、硬度の上昇を防ぐため受酸剤の配合量は10質量部以下であることが好ましい。
【0066】
前記成分の他に、本発明の目的に反しない限り、軟化剤、劣化防止剤、充填剤、スコーチ防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、造核剤、発泡剤、気泡防止剤または架橋剤等の添加剤を適宜配合してもよい。しかし、軟化剤はブリードによりトナーや感光体などの他の部材のわずかな汚染をも防ぐため配合しない方が好ましい。また、酸化防止剤を配合する場合は所望により施される表面の酸化膜の形成が進むよう、その配合量を適宜選択することが好ましい。
【0067】
図1に示した導電性ロール10の製造方法について、以下に述べる。
加硫ゴム組成物に含まれる成分をニーダ、ロールやバンバリーミキサ等の混合装置を用いて混練り後、ゴム押出機でチューブ状に予備成形し、この予備成形品を加硫する。
加硫時間は、加硫試験用レオメータ(例:キュラストメータ)により最適加硫時間を求めて決めるとよい。なお、他の部材への汚染と圧縮永久ひずみを低減させるため、なるべく十分な加硫量を得られる様に条件を設定することが好ましい。具体的に、加硫温度は100〜220℃であることが好ましく、120〜180℃であることがより好ましい。加硫時間は15〜120分間であることが好ましく、30〜90分間であることが好ましい。
【0068】
ついで、加硫工程後に、芯金2を挿入・接着した後、所要寸法にカットし、トナー搬送部1の表面に鏡面研磨を施す。該鏡面研磨後の表面粗さRaは、0.1〜3.0μmとしている。
【0069】
ついで、研磨後にロールを水洗いしたあと、所望によりトナー搬送部1の表面に酸化膜を形成している。酸化膜を形成する場合には、紫外線照射機を用い、ロールと紫外線ランプ間の距離を10cmとして周方向90度毎に紫外線(波長184.9nmと253.7nm)を5分間照射し、ロールを4回回転させることで、ロール全周(360度)に酸化膜を形成している。
【0070】
以上のように製造される本発明の導電性ロール10は下記のような物性を示すことが好ましい。
温度23℃、相対湿度55%の環境下での印加電圧5Vにおけるロール電気抵抗が10〜10Ωであることが好ましく、10〜10Ωであることがより好ましい。
JIS K 6253に記載のデュロメーター硬さ試験タイプAの硬度が20〜80度であることが好ましく、40〜80度であることがより好ましく、50〜80度であることが更に好ましい。これは、軟らかいほどニップが大きくなり、転写、帯電、現像等の効率が大きくなる、または感光体等の他の部材への機械的ダメージを小さくできるという利点があるという理由による。一方、硬度が20度より低いと耐摩耗性が著しく劣ることになる。
【0071】
初期印刷濃度の指標として、1%印字にて100枚印刷後に黒ベタ画像を印刷し、得られた印刷物上の透過濃度が1.8以上2.1以下であることが好ましい。
濃度変化率が95%以上105%以下であることが好ましい。
トナー搬送量が0.49mg/cm未満であることが好ましい。
画像不良発生枚数が13,000枚以上であることが好ましい。
これらの測定方法は後述の実施例に記載の通りである。
【0072】
「実施例1〜12、比較例1〜3」
表1に記載の配合材料(表中の数値は質量部を示す。)と、加硫剤として粉末硫黄0.75質量部およびエチレンチオウレア(川口化学工業(株)製「アクセル22−S」)0.75質量部と、受酸剤としてハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製「DHT−4A−2」)6質量部とをバンバリーミキサで混練り後、ゴム押出機にて外径φ22mm、内径φ9〜9.5mmのチューブ状に押し出し加工を施した。該チューブを加硫用のφ8mmシャフトに装着し、加硫缶にて160℃で1時間加硫を行った後、導電性接着剤を塗布したφ10mmのシャフトに装着して160℃のオーブン内で接着した。その後、端部をカット成形し、円筒研磨機でトラバース研磨、ついで仕上げ研磨として鏡面研磨を施し、表面粗さRzが3〜5μmになるように仕上げた。なお表面粗さRzはJIS
B 0601(1994)に従って測定した。その結果、φ20mm(公差0.05)の導電性ロールを得た。
【0073】
ロール表面を水洗いした後、実施例12を除いては紫外線照射を行い表層部分に酸化膜を形成した。これは紫外線照射機(セン特殊光源(株)製「PL21−200」)を用い、ロールと紫外線ランプ間の距離を10cmとして周方向90度毎に紫外線(波長184.9nmと253.7nm)を5分間照射することによって行い、ロールを90度ずつ4回回転させてロール全周(360度)に酸化膜を形成させた。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
各実施例および比較例の導電性ロールにおける構成成分としては以下のものを用いた。(a)ゴム成分
・クロロプレンゴム(CR);昭和電工(株)製「ショープレンWRT」
・エピクロルヒドリン系共重合体(GECO);ダイソー(株)製エピオンON301
EO(エチレンオキサイド)/EP(エピクロルヒドリン)/AGE(アリルグリシジルエーテル)=73mol%/23mol%/4mol%
・アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR);日本ゼオン製「ニッポール401LL」
【0077】
(b)カーボンブラック
・カーボンブラックa;旭カーボン(株)製「旭#8」(粒径120nm)
・カーボンブラックb;電気化学工業(株)製「デンカブラック」(粒径35nm)
・カーボンブラックc;旭カーボン(株)製「サンブラック930」(粒径13nm)
・カーボンブラックd;新日本カーボン(株)製「ニテロンHTC#S」(平均粒径88nm)
(c)無機フィラー
・酸化チタン;チタン工業(株)製「クロノスKR310」
・アルミナ;昭和電工(株)製「AL−160SG−1」
・シリカ;東ソー・シリカ(株)製「VN3」
【0078】
前記各実施例および比較例の導電性ロールについて下記の特性測定を行った。その結果を上記表に示した。
【0079】
「ロール電気抵抗の測定」
図2に示すように芯金2を通したトナー搬送部1をアルミドラム13上に当接搭載し、電源14の+側に接続した内部抵抗r(100Ω)の導線の先端をアルミドラム13の一端面に接続すると共に電源14の−側に接続した導線の先端をトナー搬送部1の他端面に接続して測定した。
前記電線の内部抵抗rにかかる電圧を検出し、検出電圧Vとした。この装置において印加電圧をEとすると、ロール電気抵抗RはR=r×E/(V−r)となるが、今回−rの項は微少とみなし、R=r×E/Vとした。芯金2の両端に500gずつの荷重Fをかけ30rpmで回転させた状態で、印加電圧Eを5Vとした時の検出電圧Vを4秒間で100個測定し、上式によりRを算出した。なお、前記測定は温度23℃、相対湿度55%の恒温恒湿条件下で行った。
なお、表中にはlogRを記載した。
【0080】
「硬度」
JIS K 6253に記載の方法でデュロメーター硬さ試験タイプAの硬度を測定した。
【0081】
「導電性ロールのトナー付着性の評価」
導電性ロールとトナーとの付着性を調べるため、市販のレーザープリンター(非磁性1成分のプラス帯電トナーを使用した市販のプリンターで、印刷スピード24枚/分、トナー推奨印刷枚数約7,000枚相当。)に実施例および比較例の各導電性ロールを現像ロールとして装着し、画像として出力したトナー量の変化、すなわち印刷物上のトナー積層量の変化を指標として性能評価を行った。なお、印刷物上のトナー積層量の測定は以下に示すような透過濃度の測定により代用できる。
具体的には、1%印字にて100枚印刷後に黒ベタ画像を印刷し、得られた印刷物上の任意の5点において反射透過濃度計(TECHKON社製「テシコン濃度計RT120/ライトテーブルLP20」にて透過濃度を測定し、その平均値を初期濃度(表中では「C100」と表す。)とした。初期濃度が1.7未満の場合は薄いので「×」と、1.7以上1.8未満の場合は薄いが使用可能レベルなので「△」と、1.8以上1.9未満の場合はやや薄いが良好な濃さなので「○」と、1.9以上2.0未満の場合は最適な濃さなので「◎」と、2.0以上2.1以下の場合はやや濃いが良好な濃さなので「○」と評価した。
【0082】
さらに、1%印字にて2,000枚印刷後に印刷した黒ベタ画像についても前記と同様に透過濃度を測定し、その平均値を評価値(表中では「C2000」と表す。)とした。2,000枚印刷後の透過濃度を測定したのは、通常慣らし運転が終了するのが2,000枚程度だからである。
得られた値から濃度変化率(%)=C2000/C100を算出した。
濃度変化率が90%未満の場合を「×」と、90%以上95%未満の場合を「△」と、95%以上98%未満の場合を「○」と、98%以上102%未満の場合を「◎」と、102%以上105%以下の場合を「○」と評価した。
【0083】
「トナー搬送量の評価」
前記のようにして測定される印刷物の透過濃度とトナーの搬送性の関係を調べるために、下記のようなトナー帯電量測定器によりトナーの搬送量の評価を行った。
具体的には、前記測定において1%印字にて100枚印刷後に黒ベタ画像を印刷したが、引き続いて102枚目に白ベタ画像(白紙)を印刷し、印刷後レーザープリンターからカートリッジをはずし、カートリッジに装着されている現像ロールに対して上方から吸引型帯電量測定機(トレック社製「Q/M METER Model 210HS−2」)によりトナーを吸引し、帯電量(μC)とトナー重量を測定した。得られた値から次式に基づきトナー帯電量(μC/g)およびトナー搬送量(mg/cm)を算出した。
トナー帯電量(μC/g)=帯電量(μC)/トナー重量(g)
トナー搬送量(mg/cm)=トナー重量(mg)/吸引された面積(cm
トナー搬送量は低い方が良好であり、トナー搬送量が0.39mg/cm未満の場合を「◎」と、0.39mg/cm以上0.49mg/cm未満の場合を「○」と、0.49mg/cm以上0.59mg/cm枚以下の場合を「△」と、0.60mg/cm以上の場合を「×」と評価した。
【0084】
「画像の耐久性の評価」
1%印字により印刷を行い、500枚印刷後に所定の印字を行い、白く印刷させる部分にトナーが乗って黒ずみ始めた印刷枚数を画像不良発生枚数として記録した。
画像不良発生枚数が11,999枚以下の場合を「×」と、12,000枚以上12,999枚以下の場合を「△」と、13,000枚以上13,999枚以下の場合を「○」と、14,000枚以上の場合を「◎」と評価した。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の導電性ロールの概略図である。
【図2】導電性ロールのロール電気抵抗の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
1 トナー搬送部
2 芯金
3 シール部
4 トナー
10 導電性ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫ゴム組成物で形成されてなるトナー搬送部を少なくとも最外層に備えた導電性ロールであって、
前記加硫ゴム組成物は、(A)ゴム成分、(B)粒径18nm以上80nm未満の高導電性カーボンブラック、(C)酸化チタン、アルミナおよびシリカからなる群から選択される1種以上の金属酸化物からなる無機フィラーを含有し、
前記(B)および(C)の合計含有量はゴム成分(A)100質量部に対して10質量部以上60質量部以下であることを特徴とする導電性ロール。
【請求項2】
前記ゴム成分(A)100質量部に対して、高導電性カーボンブラック(B)を1質量部以上40質量部以下、無機フィラー(C)を1質量部以上40質量部以下の割合で含有している請求項1に記載の導電性ロール。
【請求項3】
前記ゴム成分(A)100質量部に対して、高導電性カーボンブラック(B)を5質量部以上30質量部以下、無機フィラー(C)を10質量部以上40質量部以下の割合で含有しており、かつ(B)および(C)の合計含有量はゴム成分(A)100質量部に対して10質量部以上40質量部以下である請求項1に記載の導電性ロール。
【請求項4】
前記加硫ゴム組成物が、前記ゴム成分(A)として塩素原子を有するゴムと溶解度パラメーターが18.0(MPa)1/2以上のゴムとのいずれか一方または両方を含有する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の導電性ロール。
【請求項5】
前記加硫ゴム組成物が、前記ゴム成分(A)としてイオン導電性ゴムまたはイオン導電材を含むことによりイオン導電性が付与されているゴムを含む請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の導電性ロール。
【請求項6】
前記無機フィラー(C)が酸化チタンである請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の導電性ロール。
【請求項7】
電子写真装置の画像形成機構において非磁性1成分トナーを用いた現像装置に用いられる現像ロールである請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の導電性ロール。
【請求項8】
前記加硫ゴム組成物からなるトナー搬送部の一層からなり、該トナー搬送部の中空部に円柱形状の芯金が圧入され、かつ、該トナー搬送部の表面に紫外線照射による酸化膜が形成されている請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の導電性ロール。

【図1】
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【図2】
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