説明

導電性布帛とクリップの組立体およびヒータ装置

【課題】ヒータなどに接続される電極として導電性布帛を用いる場合において、当該電極として機能する導電性布帛を容易かつ自在に分割することができる構成を提供する。
【解決手段】
導電部11を有する導電性布帛10と、この導電性布帛10に接続されるクリップ20と、を備える導電性布帛とクリップの組立体1(ヒータ装置2)であって、クリップ20は、導電性布帛10の導電部11を挟む本体部21と、この本体部21が導電性布帛10の導電部11を挟むことにより導電性布帛10の導電部11を切断し、その切断部分の一方側に位置する導電部11と他方側に位置する導電部11を絶縁する切断部22と、切断部分の一方側に位置する導電部11と電気的に接続される第一の導電性部材231、および、切断部分の他方側に位置する導電部11と電気的に接続される第二の導電性部材232を有する接続部23と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性布帛とクリップの組立体およびヒータ装置に関し、詳しくは、導電性を有する導電部を有する導電性布帛とその導電性布帛に電気的に接続されるクリップとの組立体、およびこの組立体を備えるヒータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、導電性ガラス基板を利用したヒータ装置が記載されている。この種のヒータ装置では、ヒータ面を複数に分割し、分割されたそれぞれの領域を独立して制御可能にすることで、各領域ごとの温度調整を可能にすることが求められる場合がある。特許文献1では、図9等に記載されるように、面状のヒータ(特許文献1の導電性ガラス基板)の両側に接続される電極(電源などと接続するための端子)を複数に分割することにより、各領域を独立して制御することを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−329565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、ヒータに接続される電極を複数に分割する場合、ヒータ面の分割された各領域が同じ大きさであれば各電極が同じ大きさであるため、用いる電極の大きさ(種類)は単一であるため問題ないが、ヒータ面の各領域の大きさを異ならせたい場合、異なる大きさの電極を用いなければならず、部品点数が増加してしまう問題がある。また、このように電極が分割されていると、ヒータと電極の接続作業の負担が大きくなるという問題もある。
【0005】
上記実情に鑑み、本発明は、ヒータなどに接続される電極として導電性布帛を用いる場合において、当該電極として機能する導電性布帛を容易かつ自在に分割することができる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、導電部を有する導電性布帛と、この導電性布帛に接続されるクリップと、を備える導電性布帛とクリップの組立体であって、前記クリップは、前記導電性布帛の導電部を挟む本体部と、この本体部が前記導電性布帛の導電部を挟むことにより前記導電性布帛の導電部を切断し、その切断部分の一方側に位置する導電部と他方側に位置する導電部を絶縁する切断部と、前記切断部分の一方側に位置する導電部と電気的に接続される第一の導電性部材、および、前記切断部分の他方側に位置する導電部と電気的に接続される第二の導電性部材を有する接続部と、を備えることを要旨とする。
【0007】
上記本発明は、導電性布帛をクリップで挟むことにより、導電性布帛の導電部が切断されるとともに絶縁される構造である。しかも、クリップは、切断部分の一方側に位置する導電部と電気的に接続される第一の導電性部材、および、切断部分の他方側に位置する導電部と電気的に接続される第二の導電性部材を有する構成であるから、その複数に分割された各導電部との電気的接続が図れる。このように、本発明によれば、導電性布帛を任意の位置で自在に分割することができるから、複数種(異なる大きさ)の導電性布帛を予め用意しておく必要がない。また、その分割(切断)と同時に、分割された各導電性布帛の導電部とクリップの接続部が電気的に接続されるから、導電性布帛に対する電気的な接続作業が容易である。
【0008】
またこの場合、前記切断部は、前記導電性布帛の一方面側に位置する第一の切断部と、前記導電性布帛の他方面側に位置する第二の切断部と、を備え、前記導電性布帛の導電部は、この第一の切断部と第二の切断部によって剪断されており、前記第一の切断部と前記第二の切断部は、それぞれ、根元側に位置する絶縁性材料で形成された基部と、この基部の先端に固定された金属製の刃部と、を有し、前記導電性布帛の導電部を切断した前記第一の切断部と前記第二の切断部は、それぞれの前記基部同士が接触し、前記刃部同士が接触していなければよい。
【0009】
クリップの第一の切断部および第二の切断部の先端部分である刃部を金属製とすることにより、導電性布帛の導電部を容易に切断することができる。一方、切断部にこのような金属材料を用いると切断された導電部同士がその金属を介して短絡してしまうおそれのあるところ、導電部が切断された状態においては絶縁性材料で形成された第一の切断部および第二の切断部の基部同士が接触する構成であるから、切断された導電部同士の短絡が確実に防止される。このように、上記構成によれば、切断部の刃部を金属製とすることにより優れた切断部の切断性能を確保しつつ、切断された導電部同士の確実に絶縁させることができる。
【0010】
また、前記第一の切断部の刃部は前記第一の導電性部材と一体的に形成され、前記第二の切断部の刃部は前記第二の導電性部材と一体的に形成されていればよい。
【0011】
このように、切断部における金属製の刃部と導電性部材を一体形成することにより、部品点数が少なくなり、加工コストの低減や組立の容易化によるコスト削減が図れる。
【0012】
また、前記第一の導電性部材および前記第二の導電性部材は、前記導電性布帛の導電部と面接触する平面部を有していればよい。
【0013】
このように、第一の導電性部材および第二の導電性部材が、導電性布帛の導電部と面接触する構成であれば、各導電性部材と導電性布帛の導電部の電気的な接続状態が良好なものとなる(接続信頼性に優れる)。
【0014】
また、本発明にかかるヒータ装置は、上記いずれかの構成を備えた導電性布帛とクリップの組立体と導電性布帛とクリップの組立体と、面状の基材およびその基材に固定された複数の導電線材を有し、これら導電線材に通電することにより導電線材が発熱するヒータ部材と、を備え、前記複数の導電線材が前記導電性布帛の導電部に電気的に接続されるとともに、前記導電性布帛の導電部における、前記ヒータ部材におけるある発熱領域を構成する導電線材が接続された部分と、当該ある発熱領域に隣接する別の発熱領域を構成する導電線材が接続された部分とが、前記クリップにより切断されて絶縁されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる導電性布帛とクリップの組立体およびヒータ装置によれば、導電性布帛を任意の位置で自在に分割することができ、複数種(異なる大きさ)の導電性布帛を予め用意しておく必要がない。また、その分割(切断)と同時に、分割された各導電性布帛の導電部とクリップの接続部が電気的に接続されるから、導電性布帛に対する電気的な接続作業が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態にかかる導電性布帛とクリップの組立体(本発明の実施形態にかかるヒータ装置)の平面図である。
【図2】図1に示した組立体(ヒータ装置)に適用することができる導電性布帛(一例)の断面を模式的に示した図である。
【図3】図1に示した組立体(ヒータ装置)が備えるクリップの外観斜視図である。
【図4】図3に示したクリップによって導電性布帛(の導電部)が切断される様子を示した外観斜視図である。
【図5】図3に示したクリップによって導電性布帛(の導電部)が切断される様子を示した断面図である。
【図6】図1に示したヒータ装置が搭載された車両用シートの外観斜視図である。
【図7】クリップに設けられるロック機構の具体例(変形例)を説明するための外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、単に上下方向とは導電性布帛10の長手方向(図1における上下方向)をいい、単に幅方向とは導電性布帛10の幅方向(図1における左右方向)をいう。また、単に平面方向とは導電性布帛10の面方向をいい、単に厚み方向とは導電性布帛10の厚み方向をいう。
【0018】
本実施形態にかかる導電性布帛とクリップの組立体1(以下、単に(本実施形態にかかる)組立体1と称することもある)は、導電性布帛10およびクリップ20を備える。以下、この組立体1を備えたヒータ装置2(本発明の実施形態にかかるヒータ装置2)を例として組立体1の各構成およびヒータ装置2の各構成を詳細に説明する。
【0019】
導電性布帛10は、導電性のある導電部11が形成された面状(シート状)の部材であればどのようなものであってもよい。この種の導電性布帛10の一例としては、導電性部材である導電糸111と、絶縁性部材(非導電性部材)である非導電糸112とが織り込まれた織物によって導電部11が構成された布状の部材が挙げられる(図2参照)。この導電性布帛10における導電部11を構成する織物は、横糸(緯糸)と縦糸(経糸)のいずれか一方に導電糸111を用い、他方に非導電糸112を用いた構成が例示できる。これにより、表面に導電糸111が露出し、外面が導電性のある面となる。
【0020】
図3から図5に示すクリップ20は、導電性布帛10の導電部11を任意の位置で切断するとともに、切断された各導電部11と電気的に接続される部材である。このクリップ20は、導電性布帛10の導電部11を挟む本体部21と、導電性布帛10を切断する切断部22と、導電性布帛10の導電部11と電気的に接続される接続部23と、を備える。
【0021】
本体部21は、導電性布帛10の導電部11をその厚み方向から挟み込む部分であり、導電性布帛10の導電部11の一方面(上面)に接触する部分(以下単に上側部分211と称する)と、導電部11の他方面(下面)に接触する部分(以下単に下側部分212と称する)とを有する。この本体部21は、合成樹脂などの絶縁性材料で形成されている。また、この本体部21には、上側部分211と下側部分212とで導電性布帛10の導電部11を挟み込んだ状態に保持するためのロック機構(詳細は後述)が設けられる。
【0022】
切断部22は、導電性布帛10の一方面(上面)側に位置する第一の切断部221と、導電性布帛10の他方面(下面)側に位置する第二の切断部222と、を備える。具体的には、第一の切断部221は、本体部21の上側部分211から下方に突出して形成された幅方向に細長い部分であり、第二の切断部222は、本体部21の下側部分212から上方に突出して形成された幅方向に細長い部分である。第一の切断部221と第二の切断部222は、それぞれ、根元側に位置する絶縁性材料で形成された基部221a,222aと、この基部221a,222aの先端に固定された金属製の刃部221b,222bと、を有する。基部221a,222aは、本体部21と同様に合成樹脂などの絶縁性材料で形成されている。クリップ20の製造工程を簡単にするため、基部221a,222aと本体部21とを一体的に形成してもよい。刃部221b,222bは、幅方向に延びる刃が形成された金属製の部分であり、導電性布帛10の導電部11を切断する部分である。したがって、刃部221b,222bの長さは、少なくとも導電部11の幅方向の長さよりも大きい。第一の切断部221と第二の切断部222は、上下方向にずれた位置に形成される。図4および図5に示すように、本体部21の上側部分211と下側部分212を近づけ、その間に導電性布帛10の導電部11を挟み込むと、第一の切断部221の刃部221bと第二の切断部222の刃部222bが交わり、その間に導電性布帛10の導電部11が切断(剪断)される。すなわち、第一の切断部221の刃部221bと第二の切断部222の刃部222bが「鋏」の刃のように機能し導電部11を切断する。本実施形態では、この刃部221b,222bは、後述するように接続部23(導電性部材)と一体的に形成されている。
【0023】
接続部23は、導電性布帛10の一方面(上面)側に位置する第一の導電性部材231と、導電性布帛10の他方面(下面)側に位置する第二の導電性部材232と、を有する。第一の導電性部材231は、切断部22による切断部分の一方側(図5における右側)に位置する導電性布帛10の導電部11と電気的に接続される。すなわち、第一の切断部221側に位置する導電性布帛10の導電部11と電気的に接続される。第二の導電性部材232は、切断部22による切断部分の他方側(図5における左側)に位置する導電性布帛10の導電部11と電気的に接続される。すなわち、第二の切断部222側に位置する導電性布帛10の導電部11と電気的に接続される。この第一の導電性部材231および第二の導電性部材232は、それぞれ導電性布帛10の導電部11と面接触する平面部231a,232aを有する。つまり、本体部21の上側部分211と下側部分212を近づけ、その間に導電性布帛10の導電部11を挟み込むと、切断部22によって導電部11が切断されるとともに、第一の導電性部材231の平面部231aと一方側に位置する導電部11が面接触し、第二の導電性部材232の平面部232aと他方側に位置する導電部11が面接触した状態となる。
【0024】
また、この導電部11が切断された状態(クリップ20を取り付けた状態)においては、第一の切断部221と第二の切断部222は、それぞれの基部221a,222a同士が幅方向に接触し、それぞれの刃部221b,222b同士は接触していない(図5(b)の拡大部分参照)。つまり、第一の導電性部材231と一体的に形成された第一の切断部221の刃部221bと第二の導電性部材232と一体的に形成された第二の切断部222の刃部222bは電気的に接続されていないから、第一の導電性部材231に接触する導電部11と、第二の導電性部材232に接触する導電部11は完全に絶縁された状態となる。第一の切断部221と第二の切断部222が対称(断面で見て点対称)な形状である場合においてこのような構成とするためには、第一の切断部221および第二の切断部222のそれぞれにおいて、切断面(第一の切断部221と第二の切断部222の境界面上)における刃部221b,222bの高さを、基部221a,222aの高さよりも低くすればよい。
【0025】
本実施形態において、かかる構成を備える接続部23は、切断部22の刃部221b,222bと一体的に形成されている。具体的には、第一の導電性部材231は、第一の切断部221の刃部221bと一体的に形成されており、第二の導電性部材232は、第二の切断部222の刃部222bと一体的に形成されている。この一体的に形成された部材を得るには、例えば、金属材料のプレス加工により接続部23および切断部22の刃部221b,222bを一度に形成すればよい。なお、第一の導電性部材231と第一の切断部221の刃部221bが一体的に形成された部材と、第二の導電性部材232と第二の切断部222の刃部222bが一体的に形成された部材を同一形状とし、加工費を削減することも可能である。
【0026】
また、第一の導電性部材231および第二の導電性部材232のそれぞれには、導電性布帛10の導電部11と外部機器(例えば電源)を電気的に接続するための電線24(リード線)が接続されている(図1参照)。なお、かかる電線24と、第一の導電性部材231および第二の導電性部材232との接続構造は、本体部21に挟み込まれて電線24が断線することのないような構造であればどのようなものであってもよい。例えば、電線24を直接第一の導電性部材231および第二の導電性部材232に半田付け等により接続すればよい(図1以外の図面では、図をわかりやすくするため電線24を省略してある)。
【0027】
ヒータ装置2は、図1に示すように、上記導電性布帛10およびクリップ20(導電性布帛とクリップの組立体1)と、ヒータ部材30とを備える。ヒータ部材30は、面状(シート状)の基材31と、その基材31に固定された導電線材(ヒータ線)32と、を有する。基材31は、ヒータ装置2を使用する人などが温められるヒータ面を構成するシート状の部材である。その材質は、導電線材32による発熱に耐えうるものであれば特に限定されない。導電線材32は、基材31の幅方向に平行に配置されている。この導電線材32に通電することにより導電線材32が発熱する。また、基材31に固定された導電線材32は、基材31の幅方向両側から突出している。この突出した部分は、電極として機能する導電性布帛10の導電部11に接続されている。
【0028】
このヒータ装置2は、ヒータ部材30のヒータ面が複数に分割され、分割された各領域(発熱領域)を独立して制御することができるように構成されている。具体的には、ヒータ部材30のある領域内に配されている導電線材32が接続された導電性布帛10の導電部11と、その領域とは異なる領域内に配されている導電線材32が接続された導電性布帛10の導電部11とは、クリップ20により分断(絶縁)されている。かかる点について、ヒータ装置2の組立手順の一例とともに以下説明する。
【0029】
まず、導電線材32における基材31の幅方向両側から突出した部分に導電性布帛10の導電部11を接続する。具体的には、導電線材32における基材31の幅方向の一側から突出した部分に上下方向に長い一つの導電性布帛10(導電部11)が接続され、導電線材32における基材31の幅方向の他側から突出した部分にも上下方向に長い一つの導電性布帛10(導電部11)が接続される。なお、この導電線材32と導電性布帛10の接続方法は、導電線材32と導電部11とが電気的に接続される手法であればどのようなものを採用してもよい(例えば、半田付けなど)。この段階では、各導電線材32は、その他の導電線材32と導電性布帛10の導電部11を介して電気的に接続された状態にある。
【0030】
このように導電線材32を導電性布帛10の導電部11に接続した後、クリップ20により基材31の一方側および他方側に配された導電性布帛10両方の導電部11を切断する。具体的には、複数に分割されたヒータ面のある発熱領域を構成する基材31に配された導電線材32が接続された導電部11と、当該ある発熱領域に隣接する別の発熱領域を構成する基材31に配された導電線材32が接続された導電部11と、を切断する。つまり、ある発熱領域とそれに隣接する別の発熱領域の境界が、第一の切断部221と第二の切断部222の境界と一致するようにクリップ20を取り付ける。これにより、第一の切断部221と第二の切断部222によって導電性布帛10の導電部11が切断される。すなわち、クリップ20を取り付ける前には電気的に接続された状態にあった、ある発熱領域を構成する基材31に配された導電線材32と、隣接する発熱領域を構成する基材31に配された導電線材32とが絶縁された状態となる。
【0031】
このようにクリップ20をヒータ面の発熱領域に合わせて導電性布帛10に取り付ける。ヒータ面を二つの発熱領域に分割するのであれば、一方側および他方側の導電性布帛10の導電部11のそれぞれを二つに分割しなければならないため、二つのクリップ20が必要である。ヒータ面を三つの発熱領域に分割するのであれば、四つのクリップ20が必要である。すなわち、領域の数が1つ増えるごとにクリップが2個増加する。
【0032】
例えば、図1に示すようにヒータ面を三つの発熱領域(上から上領域A1、中領域A2、下領域A3とする)に分割する場合、上領域A1を構成する基材31に配された導電線材32と中領域A2を構成する基材31に配された導電線材32とを絶縁する二つのクリップ20(上左クリップ20ULおよび上右クリップ20UR)と、中領域A2を構成する基材31に配された導電線材32と下領域A3を構成する基材31に配された導電線材32とを絶縁する二つのクリップ20(下左クリップLLおよび下右クリップLR)の計四つのクリップを用いる。
【0033】
この場合、上領域A1の導電線材32は、一端が上左クリップ20ULの第一の導電性部材231と電気的に接続され、他端が上右クリップ20URの第一の導電性部材231と電気的に接続される。中領域A2の導電線材32は、一端が上左クリップ20ULの第二の導電性部材232および下左クリップ20LLの第一の導電性部材231と電気的に接続され、他端が上右クリップ20URの第一の導電性部材231および下右クリップ20LRの第一の導電性部材231と電気的に接続される。下領域A3の導電線材32は、一端が下左クリップ20LLの第二の導電性部材232と電気的に接続され、他端が下右クリップ20LRの第二の導電性部材232と電気的に接続される。したがって、上左クリップ20ULの第一の導電性部材231から引き出された電線24および上右クリップ20URの第一の導電性部材231から引き出された電線24を通じて、上領域A1に配された導電線材32に通電すること(上領域A1を独立して制御すること)ができる。また、上左クリップ20ULの第二の導電性部材232あるいは下左クリップ20LLの第一の導電性部材231から引き出された電線24、および、上右クリップ20URの第一の導電性部材231あるいは下右クリップ20LRの第一の導電性部材231から引き出された電線24を通じて、中領域A2に配された導電線材32に通電すること(中領域A2を独立して制御すること)ができる。なお、中領域A2の場合は、導電部11の上下方向両端にクリップ20が接続されているため、一方側(中領域A2の上側または下側)に位置する二つのクリップ20の電線24は不要である。また、下左クリップ20LLの第二の導電性部材232から引き出された電線24および下右クリップ20LRの第二の導電性部材232から引き出された電線24を通じて、下領域A3に配された導電線材32に通電すること(下領域A3を独立して制御すること)ができる。
【0034】
このように、本実施形態は、クリップ20により任意の位置で導電性布帛10の導電部11を切断することができ、かつ、分割された各導電部11との電気的な接続を図ることができるものである。すなわち、基材31に配された導電線材32の全てを、一旦左右一つずつの導電性布帛10の導電部11に接続し、独立して制御したいヒータ面の各発熱領域に合わせてクリップ20により導電部11を切断するだけで、各発熱領域の独立した制御が可能となるものである。したがって、ヒータ面の各発熱領域に合わせて予め複数種(異なる大きさ)の導電性布帛10を用意しておく必要はない。
【0035】
以上のように、本実施形態にかかるヒータ装置2では、ヒータ部材30のヒータ面が複数に分割され、分割された各発熱領域を独立して制御することができるように構成される。このようなヒータ装置2の適用される機器の例としては、図6に示すような車両用シート9が挙げられる。この車両用シート9では、シートクッション91(着座部)やシートバック92(背もたれ部)の表面にヒータ装置2が配される(パッドを覆う表皮に導電線材32を固定する。すなわち表皮をヒータ部材30とする)。そして、例えば、シートクッション91のヒータ面は二つの発熱領域に分割されそれぞれの発熱領域の温度を独立して制御することができるように構成され、シートバック92のヒータ面は三つの発熱領域に分割されそれぞれの発熱領域の温度を独立して制御することができるように構成される。
【0036】
次に、上記組立体1(ヒータ装置2)が備えるクリップ20のロック機構について説明する。クリップ20のロック機構は、クリップ20の本体部21によって導電性布帛10が挟まれた状態を維持するための構成である。すなわち、第一の切断部221および第二の切断部222によって導電性布帛10の導電部11が切断されて切断部分の一方側に位置する導電部11と他方側に位置する導電部11が絶縁された状態、かつ、切断部分の一方側に位置する導電性布帛10の導電部11と第一の導電性部材231および切断部分の他方側に位置する導電性布帛10の導電部11と第二の導電性部材232が電気的に接続された状態を維持するための構成である。
【0037】
かかるクリップ20のロック機構は、種々の構成が考えられ、いずれかに限定されるものではない。例えば、図3から図5に示した構成のように、第一の切断部221および第二の切断部222のいずれか一方の基部221a,222aまたは刃部221b,222bに爪部251を形成し、他方にこの爪部251が係合可能な受け部252(凹部や貫通孔)を形成すればよい(図5(b)の拡大部分参照)。このとき、上述したように刃部221b,222bは金属材料で形成されるため、弾性変形させる必要のある爪部251を金属製である刃部221b,222bに形成し、受け部252を基部221a,222aに形成すると好ましい。
【0038】
また、図7(a)に示すように、クリップ20の本体部21の上側部分211および下側部分212のいずれか一方の先端に爪部261を形成し、他方の先端にその爪部261が係合可能な受け部262(凹部や貫通孔)を形成すればよい。この構成では、クリップ20の本体部21で導電性布帛10を挟むと同時に導電性布帛10を爪部261が貫通し(突き破り)、爪部261が受け部262に係合して本体部21の上側部分211と下側部分212がロックされる。
【0039】
また、図7(b)に示すように、クリップ20の本体部21の上側部分211および下側部分212のいずれか一方の側面に爪部271を形成し、他方の側面にその爪部271が係合可能な受け部272を形成すればよい。この場合、爪部271および受け部272がクリップ20により切断される導電性布帛10(導電部11)と干渉しないようにするため、爪部271および受け部272よりも先端側に、第一の切断部221および第二の切断部222を形成する必要がある。
【0040】
また、図示しないが、クリップ20で導電性布帛10を挟み込んだ後、その挟み込んだ状態を維持するための別部材(ロック部材)によってクリップ20をロックする構成を採用してもよい。かかるロック部材の例としては、導電性布帛10を挟んだ状態における本体部21の厚みよりも若干小さい幅の空間が形成された断面「U」字状の部材が挙げられる。
【0041】
以上説明した本実施形態にかかる導電性布帛とクリップの組立体1(ヒータ装置2)によれば、次のような作用効果が奏される。
【0042】
上記実施形態にかかる組立体1は、クリップ20で挟まれた導電性布帛10の導電部11が第一の切断部221と第二の切断部222によって切断されるとともにその切断部分の一方側の導電部11と他方側の導電部11が絶縁される構造である。しかも、クリップ20は、切断部分の一方側に位置する導電部11と電気的に接続される第一の導電性部材231、および、切断部分の他方側に位置する導電部11と電気的に接続される第二の導電性部材232を有する構成であるから、切断と同時に複数に分割された各導電部11との電気的接続が図れる構造である。このように、本実施形態によれば、導電性布帛10を任意の位置で自在に分割することができるから、複数種(異なる大きさ)の導電性布帛10を予め用意しておく必要がない。また、その分割(切断)と同時に、分割された各導電性布帛10の導電部11とクリップ20の接続部23が電気的に接続されるから、導電性布帛10に対する電気的な接続作業が容易である。
【0043】
また、クリップ20の第一の切断部221および第二の切断部222の先端部分である刃部221b,222bは金属製であるから、導電性布帛10の導電部11を容易に切断することができる。一方、切断部22にこのような金属材料を用いると切断された導電部11同士がその金属を介して短絡してしまうおそれのあるところ、導電部11が切断された状態においては絶縁性材料で形成された第一の切断部221および第二の切断部222の基部221a,222a同士が接触する構成であるから、切断された導電部11同士の短絡が確実に防止される。このように、本実施形態によれば、切断部22の刃部221b,222bを金属製とすることにより優れた切断部22の切断性能を確保しつつ、切断された導電部11同士の確実に絶縁させることができる。
【0044】
また、第一の切断部221の刃部221bは第一の導電性部材231と、第二の切断部222の刃部222bは第二の導電性部材232と一体形成されているから、部品点数が少なくなり、加工コストの低減や組立の容易化によるコスト削減が図れる。
【0045】
また、第一の導電性部材231および第二の導電性部材232には、導電性布帛10の導電部11と面接触する平面部231a,232aが形成されているから、各導電性部材と導電性布帛10の導電部11の電気的な接続状態が良好である(接続信頼性に優れる)。
【0046】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態にかかる組立体1は、ヒータ装置2を構成する面状のヒータ部材30の導電線材32を、電源などと接続するための構成として用いられることを説明したが、その他の装置にも適用可能である。具体的には、通電する対象の部材(ヒータ装置2において導電線材32に相当する部材)が一列に並んで設けられており、それらを一纏めにして電源などと接続するように設計される装置に好適に適用される。
【符号の説明】
【0048】
1 導電性布帛とクリップの組立体
2 ヒータ装置
10 導電性布帛
11 導電部
20 クリップ
21 本体部
22 切断部
221 第一の切断部
221a 基部
221b 刃部
222 第二の切断部
222a 基部
222b 刃部
23 接続部
231 第一の導電性部材
231a 平面部
232 第二の導電性部材
232a 平面部
30 ヒータ部材
31 基材
32 導電線材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電部を有する導電性布帛と、この導電性布帛に接続されるクリップと、を備える導電性布帛とクリップの組立体であって、
前記クリップは、
前記導電性布帛の導電部を挟む本体部と、
この本体部が前記導電性布帛の導電部を挟むことにより前記導電性布帛の導電部を切断し、その切断部分の一方側に位置する導電部と他方側に位置する導電部を絶縁する切断部と、
前記切断部分の一方側に位置する導電部と電気的に接続される第一の導電性部材、および、前記切断部分の他方側に位置する導電部と電気的に接続される第二の導電性部材を有する接続部と、
を備えることを特徴とする導電性布帛とクリップの組立体。
【請求項2】
前記切断部は、前記導電性布帛の一方面側に位置する第一の切断部と、前記導電性布帛の他方面側に位置する第二の切断部と、を備え、前記導電性布帛の導電部は、この第一の切断部と第二の切断部によって剪断されており、
前記第一の切断部と前記第二の切断部は、それぞれ、根元側に位置する絶縁性材料で形成された基部と、この基部の先端に固定された金属製の刃部と、を有し、
前記導電性布帛の導電部を切断した前記第一の切断部と前記第二の切断部は、それぞれの前記基部同士が接触し、前記刃部同士が接触していないことを特徴とする請求項1に記載の導電性布帛とクリップの組立体。
【請求項3】
前記第一の切断部の刃部は前記第一の導電性部材と一体的に形成され、前記第二の切断部の刃部は前記第二の導電性部材と一体的に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の導電性布帛とクリップの組立体。
【請求項4】
前記第一の導電性部材および前記第二の導電性部材は、前記導電性布帛の導電部と面接触する平面部を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の導電性布帛とクリップの組立体。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の導電性布帛とクリップの組立体と、
面状の基材およびその基材に固定された複数の導電線材を有し、これら導電線材に通電することにより導電線材が発熱するヒータ部材と、を備え、
前記複数の導電線材が前記導電性布帛の導電部に電気的に接続されるとともに、
前記導電性布帛の導電部における、前記ヒータ部材におけるある発熱領域を構成する導電線材が接続された部分と、当該ある発熱領域に隣接する別の発熱領域を構成する導電線材が接続された部分とが、前記クリップにより切断されて絶縁されていることを特徴とするヒータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−12376(P2013−12376A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143882(P2011−143882)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】