説明

導電性材料、導電性膜及び導電性材料の作製方法

【課題】導電性、透明性、及び密着性に優れる導電性材料及び導電性膜の提供。導電性や透明性を低下させずに密着性に優れる導電性材料の作製方法の提供。
【解決手段】基板の表面をチオフェン誘導体で修飾した後、導電性高分子前駆体を付与し、前記チオフェン誘導体と前記導電性高分子前駆体とを酸化重合して、前記基板上に導電性膜を形成する導電性材料の作製方法、これにより得られる導電性材料。トリハロシリル基又はトリアルコキシシリル基を有するチオフェン誘導体と、導電性高分子前駆体と、を酸化重合してなる導電性膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性材料、導電性膜及び導電性材料の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ITO系導電性膜をはじめとする金属系材料を用いた透明導電性膜は、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンス(EL)素子などに代表される画像表示体(ディスプレイ)に、さらには、銀行のATM(現金自動預金支払機)、駅の切符販売機、家庭用ゲーム機、各種モバイル装置などに代表されるタッチパネル用途など、様々な分野で広く用いられるようになってきており、目覚しい発展を遂げている。
【0003】
近年、低コスト化、軽量化の観点から、3,4−エチレンジオキシ−ポリチオフェン(PEDOT)−ポリスチレンスルホン酸(PSS)をはじめとする有機系材料を用いた透明導電性膜が注目されている。
【0004】
しかしながら、ITO系導電性膜をはじめとする金属系材料も、PEDOT−PSSをはじめとする有機系材料も、シリコンやガラスなどの基板に対する密着性の向上が求められている。特にタッチパネルの場合では、指先あるいはペンで押すという物理的力によって剥離し、徐々に導電性が低下するという問題があった。
【0005】
また、電界コンデンサーの分野でも、PEDOTやポリピロールをはじめとする有機系材料が注目されている。しかし、耐久性が十分ではなく、金属酸化物電極上に導電性高分子被膜を形成させる技術が開示されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−148330号公報
【非特許文献1】Langmuir, 1999, 15, 3752.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1の技術によって、確かに密着性が向上した導電性膜は得られるものの、透明導電膜として使用するには、透過率や導電性が低いことが分かった。また、チオフェン化合物は導電性が高いことは知られているが、密着性の向上という課題が存在した。
【0007】
そこで本発明の課題は、導電性、透明性、及び密着性に優れた導電性材料及び導電性膜を提供し、また、導電性や透明性を低下させずに密着性に優れる導電性材料の作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記状況を鑑み、本発明者らは鋭意研究を行なったところ、チオフェン誘導体と、導電性高分子前駆体とを、酸化重合することで、透明性、導電性、及び密着性に優れた導電性膜を形成し得ることを知見として得、この知見に基づいてさらに検討し、本発明を完成するに至った。
なお、本発明において「密着性」とは、エタノール中で、超音波細胞破砕機(ソニケーター)(アズワン社製、ULTRASONIC CLEANER VS−150)に5分間かけた後の表面抵抗値で評価したものをいい、表面抵抗値の増大の少ないものほど密着性に優れる。
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
【0009】
<1> 基板の表面をチオフェン誘導体で修飾した後、
導電性高分子前駆体を付与し、
前記チオフェン誘導体と前記導電性高分子前駆体とを酸化重合して、前記基板上に導電性膜を形成する導電性材料の作製方法。
【0010】
<2> 前記チオフェン誘導体が、トリハロシリル基又はトリアルコキシシリル基を有するチオフェン誘導体である前記<1>に記載の導電性材料の作製方法。
【0011】
<3> 前記チオフェン誘導体として、下記一般式(1)で表される化合物を用いる前記<1>に記載の導電性材料の作製方法。
【0012】
【化1】

【0013】
一般式(1)中、Lは、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、カルボニル基、−O−、−S−、−SO−、−NH−、又はこれら2価の基から選ばれる2つ以上の組み合わせにより形成が可能な2価の基を表す。Rは、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。Rは置換基を表し、nは0又は1を表す。
【0014】
<4> 前記チオフェン誘導体として、一般式(2)で表される化合物を用いる前記<1>に記載の導電性材料の作製方法。
【0015】
【化2】

【0016】
一般式(2)中、Lは、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、カルボニル基、−O−、−S−、−SO−、−NH−、又はこれら2価の基から選ばれる2つ以上の組み合わせにより形成が可能な2価の基を表す。Rは、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。Rは置換基を表し、nは0又は1を表す。
【0017】
<5> 前記導電性高分子前駆体として、ピロール、ビピロール、チオフェン、ビチオフェン、エチレンジオキシチオフェン、アニリン、及びこれらの誘導体から選択される少なくとも1つの化合物を用いる前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の導電性材料の作製方法。
【0018】
<6> 前記チオフェン誘導体として前記一般式(2)で表される化合物を用い、前記導電性高分子前駆体として、3,4−エチレンジオキシチオフェンを用いる前記<4>に記載の導電性材料の作製方法。
【0019】
<7> 前記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の導電性材料の作製方法によって得られる導電性材料。
【0020】
<8> トリハロシリル基又はトリアルコキシシリル基を有するチオフェン誘導体と、導電性高分子前駆体と、を酸化重合してなる導電性膜。
【0021】
<9> 前記チオフェン誘導体が、下記一般式(1)で表される化合物である前記<8>に記載の導電性膜。
【0022】
【化3】

【0023】
一般式(1)中、Lは、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、カルボニル基、−O−、−S−、−SO−、−NH−、又はこれら2価の基から選ばれる2つ以上の組み合わせにより形成が可能な2価の基を表す。Rは、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。Rは置換基を表し、nは0又は1を表す。
【0024】
<10> 前記チオフェン誘導体が、一般式(2)で表される化合物である前記<8>に記載の導電性膜。
【0025】
【化4】

【0026】
一般式(2)中、Lは、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、カルボニル基、−O−、−S−、−SO−、−NH−、又はこれら2価の基から選ばれる2つ以上の組み合わせにより形成が可能な2価の基を表す。Rは、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。Rは置換基を表し、nは0又は1を表す。
【0027】
<11> 前記導電性高分子前駆体が、ピロール、ビピロール、チオフェン、ビチオフェン、エチレンジオキシチオフェン、アニリン、及びこれらの誘導体から選択される少なくとも1つの化合物である前記<8>〜<10>のいずれか1項に記載の導電性膜。
【0028】
<12> 前記チオフェン誘導体が前記一般式(2)で表される化合物であり、前記導電性高分子前駆体が、3,4−エチレンジオキシチオフェンである前記<10>に記載の導電性膜。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、導電性、透明性、及び密着性に優れた導電性材料及び導電性膜を提供し、また、導電性や透明性を低下させずに密着性に優れる導電性材料の作製方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0031】
まず始めに、本発明の導電性材料及び導電性膜に用いるチオフェン誘導体と導電性高分子前駆体について説明する。
【0032】
(1)導電性高分子前駆体
本発明に用いる導電性高分子前駆体とは、一般的な導電性高分子の合成に用いられるモノマーを表す。この導電性高分子前駆体と、後述のチオフェン誘導体によって合成された導電性高分子は、10−2S・cm−1以上の導電性を有することが望ましい。
【0033】
導電性高分子前駆体は、ピロール、ビピロール、チオフェン、ビチオフェン、エチレンジオキシチオフェン、アニリン又はこれらの誘導体であることが好適である。
これらは1種のみを用いてもよく、また、目的に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの導電性高分子前駆体は、置換基を有していてもよい。
【0034】
本発明では特に、導電性高分子前駆体として、下記一般式(I)で表される化合物(即ちチオフェン及びその誘導体であること)を用いることが、高い透明性と、高い導電性を両立するという観点から好ましい。
【0035】
【化5】

【0036】
一般式(I)中、R11は置換基を表し、m11は0〜2の整数を表す。m11が2を表すとき、複数のR11は互いに同一であっても異なってもよく、互いに連結して環を形成してもよい。
【0037】
11で表される置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、2−オクテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノなどが挙げられる。)、
【0038】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、
【0039】
アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、
【0040】
カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、
【0041】
ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12で、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。具体的には、例えばピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルフォリン、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)などが挙げられる。
【0042】
上記R11で表される置換基は、さらに置換されていてもよい。また、置換基を複数有する場合、それらの置換基は互いに同じでも異なっていてもよく、また可能な場合は連結して環を形成してもよい。形成される環としては例えば、シクロアルキル環、ベンゼン環、チオフェン環、ジオキサン環、ジチアン環等が挙げられる。
【0043】
11で表される置換基として、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基であり、さらに好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基である。特に好ましくは、m11が2のとき、2つのR11が環を形成したアルコキシ基、アルキルチオ基であり、ジオキサン環、ジチアン環を形成することが好適である。
【0044】
一般式(I)においてm11が1のとき、R11はアルキル基であることが好ましく、炭素数2〜8のアルキル基がより好ましい。
また、R11が、アルキル基であるポリ(3−アルキルチオフェン)であるとき、隣り合ったチオフェン環との連結様式はすべて2−5’で連結した立体規則的なものと、2−2’、5−5’連結が含まれる立体不規則的なものがあるが、立体的不規則なものが好ましい。
【0045】
本発明では、導電性高分子前駆体としては、高い透明性と導電性を両立するという観点から、3,4−エチレンジオキシ−チオフェン(下記具体例化合物(6))であることが特に好ましい。
【0046】
一般式(I)で表されるチオフェン及びその誘導体は、アルドリッチ社やシュタルク社から入手することができる。
【0047】
以下に、導電性高分子前駆体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらの他にも、WO98/01909記載の化合物等が挙げられる。
【0048】
【化6】

【0049】
【化7】

【0050】
【化8】

【0051】
導電性高分子前駆体は、少なくとも一種のドーパントとともに用いることが、高い導電性を得られる観点から好ましい。なお本発明においてドーパントとは、導電性高分子の導電性を変化させる作用を有する添加物を意味する。
このようなドーパントとしては、電子受容性(アクセプター)ドーパント、電子供与性(ドナー)ドーパントが挙げられる。
【0052】
電子受容性(アクセプター)ドーパントの例としては、ハロゲン(Cl,Br,I,ICl,ICl,IBr,IF)、ルイス酸(PF,AsF,SbF,BF,BCl,BBr,SO)、プロトン酸(HF,HCl,HNO,HSO,HClO,FSOH,CISOH,CFSOH,各種有機酸,アミノ酸など)、遷移金属化合物(FeCl,FeOCl,TiCl,ZrCl,HfCl,NbF,NbCl,TaCl,MoF,MoCl,WF,WCl,UF,LnCl(Ln=La,Ce,Pr,Nd,Smなどのランタノイド)、電解質アニオン(Cl,Br,I,ClO,PF,AsF,SbF,BF,各種スルホン酸アニオン)、その他O,XeOF,(NO)(SbF),(NO)(SbCl),(NO)(BF),FSOOOSOF,AgClO,HIrCl,La(NO・6HO等が挙げられる。
【0053】
電子供与性(ドナー)ドーパントの例としてはアルカリ金属(Li,Na,K,Rb,Cs)、アルカリ土類金属(Ca,Sr,Ba)、ランタノイド(Euなど)、その他(R,R,RAs,R,アセチルコリン)等が挙げられる。
【0054】
ドーパントと導電性高分子前駆体との組み合わせとしては、例えば:
(A) アセチレンとI,AsF,FeClなど;
(B) p−フェニレンとAsF,K,AsFなど;
(C) ピロールとClOなど;
(D) チオフェン類とClO,スルホン酸化合物、とくにポリスチレンスルホン酸、ニトロソニウム塩、アミニウム塩、キノン類など;
(E) イソチアナフテンとIなど;
(F) p−フェニレンサルファイドとAsF
(G) p−フェニレンオキシドとAsF
(H) アニリンとHClなど;
(I) p−フェニレンビニレンとHSOなど;
(J) チオフェニレンビニレンとIなど;
(K) ニッケルフタロシアニンとIなど;
等が挙げられる。
【0055】
これらの組み合わせの中でも、好ましくは前記(D)又は(H)の組み合わせであり、より好ましくは、ドープ状態の安定性が高いという観点から、チオフェン類(チオフェン及びその誘導体)とスルホン酸化合物の組み合わせであり、更に好ましくは、水分散液が調整可能であり、塗布により簡便に導電性薄膜が調整できるという観点から、チオフェン類とポリスチレンスルホン酸の組み合わせである。
【0056】
導電性高分子前駆体とドーパントの比率は、いかなるものであってもよいが、ドープ状態の安定性と導電性を両立させるという観点から、好ましくは、質量比で、導電性高分子前駆体:ドーパント=1.0:0.0000001〜1.0:10の範囲であり、好ましくは1.0:0.00001〜1.0:1.0の範囲、より好ましくは1.0:0.0001〜1.0:0.5の範囲である。
【0057】
一方、得られた導電性高分子の分散性を高めるために、ドーパントとして高分子鎖に電解質をドープしたイオン導電性高分子を用いてもよい。該高分子鎖の例としては、ポリエーテル(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなど)、ポリエステル(ポリエチレンサクシネート、ポリ−β−プロピオラクトンなど)、ポリアミン(ポリエチレンイミンなど)、ポリスルフィド(ポリアルキレンスルフィドなど)などが挙げられ、ドープされた電解質としては各種アルカリ金属塩などが挙げられる。
【0058】
前記アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属イオンとしてはLi、Na、K、Rb、Csなどが、対塩を形成するアニオンとしてはF、Cl、Br、I、NO、SCN、ClO、CFSO、BF、AsF、BPhなどが挙げられる。
【0059】
高分子鎖とアルカリ金属塩の組み合わせとしては、例えばポリエチレンオキシドとLiCFSO、LiClOなど、ポリエチレンサクシネートとLiClO、LiBF、ポリ−β−プロピオラクトンとLiClOなど、ポリエチレンイミンとNaCFSO、LiBFなど、ポリアルキレンスルフィドとAgNOなどが挙げられる。
【0060】
導電性高分子前駆体は、更に後述の溶媒や、このほかに更に添加剤とともに用いることも可能である。このような添加剤としては、高分子の分解を抑える目的で、紫外線吸収剤、亜リン酸エステル、ヒドロキサム酸、ヒドロキシアミン、イミダゾール、ハイドロキノン、フタル酸、などを挙げることができる。また、膜強度を高める目的で無機微粒子、高分子微粒子、シランカップリング剤、屈折率を下げて透明性を高める目的でフッ素系化合物(特に、フッ素系界面活性剤)などを挙げることができる。
【0061】
(2)チオフェン誘導体
本発明に用いられるチオフェン誘導体は、チオフェン環を有する化合物であり、トリハロシリル基又はトリアルコキシシリル基を有することが、基板との密着性向上の観点から好適である。本発明に係るチオフェン誘導体と導電性高分子前駆体とによって得られる導電性膜は、透明性、導電性及び密着性に優れる。
【0062】
透明性、導電性及び密着性の観点で、チオフェン誘導体は、下記一般式(1)で表される化合物又は下記一般式(2)で表される化合物であることがより好適である。
【0063】
【化9】

【0064】
一般式(1)中、Lは、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、カルボニル基、−O−、−S−、−SO−、−NH−、又はこれら2価の基から選ばれる2つ以上の組み合わせにより形成が可能な2価の基を表す。Rは、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。Rは置換基を表し、nは0又は1を表す。
【0065】
【化10】

【0066】
一般式(2)中、Lは、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、カルボニル基、−O−、−S−、−SO−、−NH−、又はこれら2価の基から選ばれる2つ以上の組み合わせにより形成が可能な2価の基を表す。Rは、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。Rは置換基を表し、nは0又は1を表す。
【0067】
一般式(1)及び一般式(2)におけるL及びLは、各々独立に、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、カルボニル基、−O−、−S−、−SO−、−NH−、又はこれら2価の基から選ばれる2つ以上の組み合わせにより形成が可能な2価の基を表す。
【0068】
一般式(1)及び一般式(2)におけるL及びLは、各々独立に置換基を有していてもよい。置換基としては、以下に述べる置換基群Vが挙げられる。
【0069】
(置換基群V)
ハロゲン原子(例えば塩素、臭素、沃素、フッ素);メルカプト基;シアノ基;カルボキシル基;リン酸基;スルホ基;ヒドロキシ基;炭素数1〜10、好ましくは炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜5のカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、モルホリノカルバモイル基);炭素数0〜10、好ましくは炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜5のスルファモイル基(例えばメチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、ピペリジノスルファモイル基);ニトロ基;炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−フェニルエトキシ基);炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、更に好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基(例えばフェノキシ基、p−メチルフェノキシ基、p−クロロフェノキシ基、ナフトキシ基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシル基(例えばアセチル基、ベンゾイル基、トリクロロアセチル基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基);
【0070】
炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルホニル基(例えばメタンスルホニル基、エタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルフィニル基(例えばメタンスルフィニル基、エタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基);炭素数0〜20、好ましくは炭素数0〜12、更に好ましくは炭素数0〜8の置換もしくは無置換のアミノ基(例えば、無置換のアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、アニリノ基、ジフェニルアミノ基);炭素数0〜15、好ましくは炭素数3〜10、更に好ましくは炭素数3〜6のアンモニウム基(例えばトリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基);炭素数0〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のヒドラジノ基(例えばトリメチルヒドラジノ基);炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のウレイド基(例えばウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基);炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のイミド基(例えばスクシンイミド基);
【0071】
炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基);炭素数6〜80、好ましくは炭素数6〜40、更に好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ基(例えばフェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、2−ピリジルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニルチオ基);炭素数1〜80、好ましくは炭素数1〜40、更に好ましくは炭素数1〜30のヘテロアリールチオ基(例えば2−ピリジルチオ基、3−ピリジルチオ基、4−ピリジルチオ基、2−キノリルチオ基、2−フリルチオ基、2−ピロリルチオ基);炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2−ベンジルオキシカルボニル基);炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、更に好ましくは炭素数6〜10のアリーロキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基);
【0072】
炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5の無置換のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基);炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5の置換アルキル基{例えばヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、カルボキシエチル基、エトキシカルボニルメチル基、アセチルアミノメチル基、またここでは炭素数2〜18、好ましくは炭素数3〜10、更に好ましくは炭素数3〜5の不飽和炭化水素基(例えばビニル基、エチニル基1−シクロヘキセニル基、ベンジリジン基、ベンジリデン基)も置換アルキル基に含まれることにする};炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15、更に好ましくは炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、p−カルボキシフェニル基、p−ニトロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、p−シアノフェニル基、m−フルオロフェニル基、p−トリル基、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニル);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜10、更に好ましくは炭素数4〜6の置換もしくは無置換のヘテロ環基(例えばピリジル基、5−メチルピリジル基、チエニル基、フリル基、モルホリノ基、テトラヒドロフルフリル基);が挙げられる。
【0073】
上記置換基群Vの置換基は、ベンゼン環やナフタレン環が縮合した構造を形成することができる。
さらに、これらの置換基は更に置換されていてもよい。当該更なる置換基としても、上記置換基群Vから選ばれるいずれかの置換基が挙げられる。
【0074】
一般式(1)及び一般式(2)におけるL及びLで表されるアルキレン基としては、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数1〜50、更に好ましくは炭素数1〜30のアルキレン基である。L及びLで表されるアルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、これらの組み合わせであってもよい。
具体的には、例えば、メチレン、t−ブチレン、t−オクチレン、2−エチルヘキシレン、シクロヘキシレン、n−ヘキサデシレン、3−ドデシルオキシプロピレン、3−(2’,4’−di−tert−ペンチルフェノキシ)プロピレンなどである。
【0075】
一般式(1)及び一般式(2)におけるL及びLで表されるアリーレン基としては、好ましくは炭素数6〜60、より好ましくは炭素数6〜50、更に好ましくは炭素数6〜40のアリーレン基である。
具体的には、例えばフェニレン、1−ナフチレン、p−トリレン、o−トリレン、4−メトキシフェニレン、4−ヘキサデシルオキシフェニレン、3−ペンタデシルフェニレン、2,4−di−tert−ペンチルフェニレン、8−キノリレン、5−(1−ドデシルオキシカルボニルエトキシカルボニル)−2−クロロフェニレンなどである。
【0076】
一般式(1)及び一般式(2)におけるL及びLで表されるヘテロアリーレン基としては、N,S,O及びSeのヘテロ原子を少なくとも一つ含む5員〜8員のヘテロアリーレン基であることが好ましい。
具体的には、例えばピリジレン、フラニレン、ピローレン、チアゾーレン、オキサゾーレン、イミダゾーレン、トリアゾーレン、ベンゾトリアゾーレン、キノリレンなどが挙げられる。
【0077】
及びLは、各々独立に、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、カルボニル基、−O−、−S−、−SO−、又は−NH−であるか、或いはこれら2価の基から選ばれる2つ以上の組み合わせであり、上記2価の基から選ばれる2つ以上の組み合わせであることがより好適である。2つ以上の組み合わせの場合には、少なくともアルキレン基を含むことが好適である。
以下に、L及びLにおける好適な組み合わせの例を挙げる。
【0078】
(1)アルキレン基、−O−
(2)アルキレン基、−S−
(3)アルキレン基、カルボニル基(−CO−)、−O−
(4)アルキレン基、カルボニル基(−CO−)、−NH−
(5)アルキレン基、アリーレン基、−O−
(6)アルキレン基、ヘテロアリーレン基、カルボニル基(−CO−)、−O−
【0079】
なお、カルボニル基と−O−との組み合わせの場合には、これらが隣接してエステル基となっている場合、及び隣接せずに存在する場合の両者を含む。また、カルボニル基と−NH−との組み合わせの場合には、これらが隣接してアミド基となっている場合、及び隣接せずに存在する場合の両者を含む。
【0080】
及びLは、合成の容易さや、熱や酸化剤に対する安定性の観点から、下記構造式(L−1)又は(L−2)であることがより好適である。
【0081】
【化11】

【0082】
構造般式(L−1)及び(L−2)中、*はチオフェン環又は3,4−エチレンジオキシ−ポリチオフェン環への連結位置を表す。L及びLは、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、カルボニル基、−O−、−S−、−SO−、−NH−、又はこれら2価の基から選ばれる2つ以上の組み合わせにより形成が可能な2価の基を表す。但し、Lは少なくともアルキレン基を含む。nは、1〜30の整数であることが好ましく、1〜20の整数がより好ましく、1〜10の整数が更に好ましい。
【0083】
更に、L及びLは下記構造L1〜L5のいずれかであることが好適である。
【0084】
【化12】

【0085】
上記構造L1〜L5中、nは、1〜30の整数であることが好ましく、1〜20の整数がより好ましく、1〜10の整数が更に好ましい。m、k及びpは、各々独立に、1〜30の整数であることが好ましく、1〜20の整数がより好ましく、1〜10の整数が更に好ましい。
【0086】
一般式(1)及び一般式(2)におけるR及びRは、各々独立に、アルコキシ基、ハロゲン原子を表す。
【0087】
一般式(1)及び一般式(2)中、R及びRで表されるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、更に好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基である。
具体的には例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、メトキシエトキシ、n−オクチルオキシなどである。特に好ましくは、メトキシ又はエトキシである。
【0088】
一般式(1)及び一般式(2)中、R及びRで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、沃素原子、又はフッ素原子であり、より好ましくは、塩素原子、臭素原子、又は沃素原子であり、更に好ましくは、塩素原子又は臭素原子である。
【0089】
一般式(1)及び一般式(2)におけるR及びRは置換基を表し、該置換基としては、前述の置換基群Vが挙げられる。このなかでも、R及びRとしては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、或いは−L−Si(R、−L−Si(R(ここで、L、L、R及びRは上述のL、L、R及びRと同義である)が好適である。
及びRとしてのアルキル基は、炭素数1〜40であることが好ましく、炭素数1〜30であることがより好ましく、炭素数1〜20であることが更に好ましい。
及びRとしてのアリール基は、炭素数6〜60であることが好ましく、炭素数6〜30であることがより好ましく、炭素数6〜20であることが更に好ましい。
及びRとしてのヘテロアリール基は、窒素原子、硫黄原子、酸素原子を1つ以上有する芳香環であることが好ましく、窒素原子、硫黄原子を1つ以上有する芳香環であることがより好ましく、硫黄原子を1つ以上有する芳香環であることが更に好ましい。
【0090】
一般式(1)における−L−Si(Rは、チオフェン環の3位に結合し、Rはチオフェン環の4位に結合することが好適である。
【0091】
以下に一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、一般式(1)で表される化合物はこれらの具体例に限定されない。
【0092】
【化13】

【0093】
【化14】

【0094】
【化15】

【0095】
以下に一般式(2)で表される化合物の具体例を示すが、一般式(2)で表される化合物はこれらの具体例に限定されない。
【0096】
【化16】

【0097】
【化17】

【0098】
一般式(1)で表されるチオフェン誘導体は、公知の方法(参考文献:Langmuir 1999,15.3752など)によって合成することができる。
【0099】
(3)導電性材料の作製方法
次に、本発明の導電性材料の作製方法を説明する。
基板の表面を前記チオフェン誘導体で修飾した後、導電性高分子前駆体を付与して、チオフェン誘導体と導電性高分子前駆体とを酸化重合することで、前記基板上に導電性膜を形成した導電性材料が得られる。
本発明の導電性材料は、まず基板表面を修飾し、その修飾材料であるチオフェン誘導体と導電性高分子前駆体とが化学的に結合して重合反応しているため、生成した導電性高分子膜の密着性に優れる。また、基板と導電性高分子とを結合しているのがチオフェン誘導体であるため導電性や透明性を低下させない。
【0100】
本発明で使用し得る基板としては、安定な板状物であって、必要な可撓性、強度、耐久性等を満たせばいずれのものも使用できる。また、ここで得られた導電性高分子材料を画像表示素子、太陽電池等に用いる場合には、高い透明性を要求されるため、表面平滑性の透明基材を用いることが好ましい。
基板の材質としては、ガラス、透明セラミックス、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等が挙げられる。
【0101】
前記チオフェン誘導体は、基板表面に存在するヒドロキシ基と反応して、基板表面を修飾する。特に、一般式(1)及び(2)で表される化合物はシランカップリング剤として機能する。
【0102】
前記チオフェン誘導体によって基板表面を修飾する前に、基板表面を洗浄し乾燥しておくことが、密着性向上の観点で好ましい。洗浄及び乾燥方法は、公知の方法を採用することができる。更に、乾燥後の基板をオゾン処理して表面を活性化させることが、密着性向上の観点から好ましい。
【0103】
前記チオフェン誘導体による基板表面の修飾方法は、前記チオフェン誘導体を含む溶液中に基板を浸漬する方法、チオフェン誘導体を含む溶液を塗布する方法、チオフェン誘導体を含む溶液を噴霧させる方法などが挙げられる。
【0104】
前記チオフェン誘導体を含む溶液は、チオフェン誘導体を均一に溶解、あるいは分散させられる溶媒を用いることが好ましく、例えば、トルエン、酢酸エチル、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン、水などを挙げることができる。
【0105】
前記チオフェン誘導体を含む溶液におけるチオフェン誘導体の含有率は、基板表面全体を、チオフェン誘導体の単分子膜が覆い、凝集体にならないことを鑑みて調整することが好ましく、0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.1質量%〜10質量%であることがより好ましい。
【0106】
チオフェン誘導体によって基板表面を修飾した後、洗浄することが、透明導電膜の平滑性、透明性、導電性の観点から好ましい。洗浄液としては、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン、水などを用いることができる。
【0107】
洗浄後、乾燥させてから、前記導電性高分子前駆体を付与する。
チオフェン誘導体と導電性高分子前駆体の付与比率は、いかなるものであってもよいが、高い導電性と高い耐久性の両立の観点から、好ましくは、質量比で、チオフェン誘導体:導電性高分子前駆体=0.00001:1.0〜1000:1の範囲であり、好ましくは0.0001:1.0〜500:1の範囲、より好ましくは0.0005:1.0〜100:1の範囲である。
【0108】
導電性高分子前駆体は、酸化重合のための酸化剤とともに上記処理後の基板表面に付与される。酸化剤としては、パラトルエンスルホン酸鉄(III)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、酸化銀、酸化セシウム、過酸化ベンゾイル等が用いられ、パラトルエンスルホン酸鉄(III)を用いることが、導電性、耐久性の観点から好適である。
【0109】
酸化剤の付与量は、質量比で、導電性高分子前駆体:酸化剤=1:10000〜 10000:1であることが好ましく、1:1000〜1000:1であることがより好ましく、1:100〜100:1であることが更に好ましい。
【0110】
また、急激な酸化反応で、導電性、透明性が低下するのを防ぐために、イミダゾールを付与することが好適である。イミダゾールの付与量は、質量比で、導電性高分子前駆体:イミダゾール=1:1000〜1000:1であることが好ましく、1:100〜100:1であることがより好ましく、1:10〜10:1であることが更に好ましい。
【0111】
導電性高分子前駆体は溶液として付与されることが、均質な導電膜を形成させる観点から好ましい。導電性高分子前駆体溶液は、前記導電性高分子前駆体と、酸化剤と、溶媒とを少なくとも含み、イミダゾールや前記ドーパント(例えば、パラトルエンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、過塩素酸及び、これらのナトリウム塩やカリウム塩)などの添加剤を加えてもよい。
【0112】
導電性高分子前駆体溶液に用いる溶媒としては、導電性高分子前駆体を溶解、あるいは分散させられる溶媒であることが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、エチレングリコール、メチルエチルケトン、ジメチルスルホキシド、水、あるいは、これらの組み合わせによる混合溶媒等が挙げられる。
【0113】
導電性高分子前駆体溶液における固形分濃度は、固形分の溶解性や溶液の粘度などを鑑みて調整することが好ましく、0.001質量%〜95質量%であることが好ましく、0.01質量%〜80質量%であることがより好ましい。
【0114】
チオフェン誘導体で修飾した基板表面に導電性高分子前駆体が酸化剤とともに付与された後、加熱して酸化重合を行なう。酸化重合により導電性高分子が合成され、基板上に導電性膜が形成する。
酸化重合のための加熱温度は、20℃〜300℃であることが好ましく、20℃〜250℃であることがより好ましく、20℃〜200℃であることが更に好ましい。
【0115】
放冷後、エタノール等で洗浄して、基板上に導電性膜を有する導電性材料が得られる。
得られた導電性膜の膜厚は特に制限はないが、1nm〜2μmの範囲であることが好ましく、10nm〜1μmの範囲であることがより好ましい。導電性高分子層の膜厚がこの範囲内であれば、充分な導電性と透明性とを達成することができる。
【0116】
(4)導電性膜の作製方法
また、本発明の導電性膜は、前記チオフェン誘導体と前記導電性高分子前駆体とを酸化剤を用いて酸化重合することで得られる。この導電性膜は、トリハロシリル基又はトリアルコキシシリル基を有するチオフェン誘導体を用いて形成されるため、透明性、導電性、及び密着性に優れる。
導電性膜の製造方法は、前記チオフェン誘導体と前記導電性高分子前駆体と前記酸化剤と任意の前記添加物(ドーパントや塩基)を、溶媒中で混合し、この混合溶液を基板上へスピンコートあるいはバーコートによって塗布した後、ホットプレート上で加熱することによって導電性膜が得られる。
【0117】
導電性膜の製造で用いる溶媒としては、前記チオフェン誘導体、前記導電性高分子前駆体、前記酸化剤、前記添加物を溶解、あるいは分散させられる溶媒であることが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、エチレングリコール、メチルエチルケトン、ジメチルスルホキシド、水、あるいは、これらの組み合わせによる混合溶媒等が挙げられる。
【0118】
固形分濃度は、固形分の溶解性や溶液の粘度などを鑑みて調整することが好ましく、0.001質量%〜95質量%であることが好ましく、0.01質量%〜80質量%であることがより好ましい。
【0119】
基板や加熱条件、更に添加比率(チオフェン誘導体、導電性高分子前駆体、酸化剤など)は、上述の導電性材料の作製方法と同様であるため、説明を省略する。
【0120】
その他の導電性膜の製造方法としては、前記チオフェン誘導体と前記導電性高分子前駆体と前記酸化剤と前記添加物(ドーパントや塩基)を、溶媒中で混合し、この溶液を加熱することによって導電性微粒子を作成した後、スピンコーターやバーコーターによって基板上へ塗布することによって導電性膜が得られる。
【0121】
(5)用途
本発明の導電性材料及び導電性膜は、透明性、導電性、及び密着性に優れるため、電子材料の配線や電極(基板電極など)として好適に用いることができる。
本発明の導電性材料及び導電性膜は、フレキシブルエレクトロルミネッセンス装置(OLED)、タッチスクリーン、タッチパネル、有機TFT、アクチュエーター、センサー、電子ペーパー、フレキシブル調光材料、コンデンサー、太陽電池などに好適に使用することができる。
【実施例】
【0122】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って本発明の範囲は以下の実施例に制限されるものではない。
【0123】
[合成例1]
<化合物(1)の合成>
化合物(1)は、Synth.Met.2005,155,677. Thin Solid Films,2006,511,182.に記載の方法によって合成することができる。
【0124】
【化18】

【0125】
チオフェン−3−酢酸(上記化合物(1a))10gを塩化チオニル30mlに溶解させ、15分攪拌しながら還流した。放冷した後、エバポレーターにより過剰の塩化チオニルを留去し、これにアセトニトリル30ml、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン16mlを加え、40℃に加熱し1時間攪拌した。アセトニトリルをエバポレーターによって留去することで、上記化合物(1)を16.3g得た。化合物の同定は、H−NMRにより行った。
【0126】
<化合物(1)の同定>
δ:0.59(2H,m),1.18−1.30(11H,m),1.90(2H,m),3.27(2H,m),3.70−3.89(6H,m),7.99(1H,m),8.40(1H,br),8.48(1H,m),8.89(1H,m)
【0127】
[合成例2]
<化合物(18)の合成>
【化19】

【0128】
化合物(18a)の合成
化合物(18a)は、非特許文献(Synth.Met.1998,93,33)に従って合成した。
【0129】
化合物(18b)の合成
脱水THF(200ml)中に、水素化ナトリウム(6.1g)と化合物18a(2.2g)を加え、10分攪拌した。これに5−ブロモ−1−ペンテン(9.4g)を加え、2時間還流した。反応溶液を氷水へ注ぎ、酢酸エチルによって抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒をエバポレーターによって留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって、化合物(18b)を1.8g単離した。
【0130】
化合物(18)の合成
化合物(18b)1.7gに六塩化白金酸5mgとトリエトキシシラン2ml加え、室温で3時間半攪拌した。これに、酢酸エチルを加え、塩化アンモニウム水溶液で洗浄した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、エバポレーターによって酢酸エチルを留去して、化合物(18)を2.6g得た。化合物の同定は、H−NMRにより行った。
【0131】
<化合物(18)の同定>
δ:0.64(2H,m),1.24(9H,m),1.40(4H,m),1.60(2H,m),3.48(2H,t),3.55−3.62(1H,m),3.65−3.71(1H,m),3.81(6H,q),3.85(1H,m),4.01−4.09(1H,m),4.21−4.32(1H,m),6.32(1H,s),6.33(1H,s)
【0132】
[実施例1]
アイ・ジー・シー社製無アルカリガラス基板(5cm×4cm)を、基板用洗剤を純水で20倍に希釈した溶液に浸漬し、10分間超音波をかけた。その後、基板を取り出し、更に2回、純水で10分間ずつ超音波にかけた。これをエタノールで洗浄し、窒素によって乾燥させた。乾燥した基板を、オゾンクリーナーによって基板表面を活性化させ、これを用いて以下の操作を行った。
【0133】
無アルカリ基板を、化合物(1)を1質量%含有するトルエン溶液に浸漬し、3時間放置した。その後、エタノール中で超音波を10分間かけて洗浄した。その後、エタノールで軽く洗い、窒素で乾燥させ、処理基板−1を作製した。
【0134】
3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)、イミダゾール、パラトルエンスルホン酸鉄(III)を質量比で、1:1:8になるように混合し、60質量%のエタノール溶液を調整し、塗布液−1を得た。
【0135】
処理基板−1の上に、塗布液−1を滴下し、ホットプレート上で、100℃で加熱した。3分間加熱した後、放冷し、試料−1を得た。
【0136】
<密着性の評価>
得られた試料−1を超音波細胞破砕機(ソニケーター)(アズワン社製、ULTRASONIC CLEANER VS-150)にかけてエタノール中で5分洗浄した後と、さらにキムワイプ(登録商標)で一定の力で10回擦った後の表面抵抗値と透過率の測定を下記の方法で行なった。表面抵抗値が低いものほど密着性に優れる。
【0137】
<表面抵抗値の測定>
表面抵抗値は、表面抵抗測定装置(三菱化学製ロレスタGP)にて測定した。基板の中心を1箇所測定した。結果を表1に示す。
【0138】
<透過率の測定>
透過率は、紫外可視吸収スペクトル測定装置(島津製作所製UV−2400)にて測定した。基板の中心を測定し、550nmでの透過率の値を表1に示す(ただし無アルカリガラス基板の吸収分を除いている)。
【0139】
[実施例2]
実施例1と同様にして、但し、化合物(1)の代わりに、化合物(18)を用いて、ガラス基板を処理した、試料−2を作製した。得られた試料の表面抵抗値を実施例1と同様にして行なった。結果を表1に示す。
【0140】
[実施例3]
実施例2と同様にして、但し、基板処理の際、浸漬時間を3時間の代わりに3日間にして、試料−3を作製した。得られた試料の評価を実施例1と同様にして行なった。評価結果を表1に示す。
【0141】
[実施例4]
実施例3と同様にして、但し、基板処理の際、化合物濃度を1質量%の代わりに2質量%にして、試料−4を作製した。得られた試料の評価を実施例1と同様にして行なった。評価結果を表1に示す。
【0142】
[比較例1]
浸漬の際、具体例化合物(1)を加えない以外は、実施例1と同様にして、比較の試料−1を作製した。得られた比較の試料−1の評価を実施例1と同様にして行なった。評価結果を表1に示す。
【0143】
[比較例2]
実施例1における、「化合物(1)を1質量%含有するトルエン溶液」を、「3−アミノプロピルトリエトキシシラン(比較化合物(1))(東京化成製)を1質量%含有する水溶液」に代えた以外は実施例1と同様にして、比較の試料−2を作製した。この比較の試料−2の評価を実施例1と同様にして行なった。評価結果を表1に示す。
【0144】
[比較例3]
実施例3における化合物(18)を、N−トリメトキシシリルプロピルピロール(比較化合物(2))(信越ポリマー社製)に代えた以外は実施例3と同様にして、比較の試料−3を作製した。この比較の試料−3の評価を実施例1と同様にして行なった。評価結果を表1に示す。
【0145】
[比較例4]
実施例4における化合物(18)を、N−トリメトキシシリルプロピルピロール(比較化合物(2))(信越ポリマー社製)に代えた以外は実施例4と同様にして、比較の試料−4を作製した。この比較の試料−4の評価を実施例4と同様にして行なった。評価結果を表1に示す。
【0146】
【表1】

【0147】
表1の結果に示すように、実施例1〜4の導電性ポリマー組成物によって形成された導電性膜は、ソニケーターによる洗浄をおこなっても、高い導電性を維持し、密着性に優れていることが分かった。
さらに、実施例3、4では、キムワイプ(登録商標)で擦った後でも導電性を示していることから、密着性に非常に優れていることが分かった。
一方、比較例1、2では、ソニケーターで洗浄することで、導電膜は剥離してしまうほど、密着性が低く、また、比較例3、4では、密着性は向上しているものの、導電性や透過率が低くなっていることが分かる。
【0148】
チオフェンやピロールなどの、他の導電性高分子前駆体においても同様の効果が見られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面をチオフェン誘導体で修飾した後、
導電性高分子前駆体を付与し、
前記チオフェン誘導体と前記導電性高分子前駆体とを酸化重合して、前記基板上に導電性膜を形成する導電性材料の作製方法。
【請求項2】
前記チオフェン誘導体が、トリハロシリル基又はトリアルコキシシリル基を有するチオフェン誘導体である請求項1に記載の導電性材料の作製方法。
【請求項3】
前記チオフェン誘導体として、下記一般式(1)で表される化合物を用いる請求項1に記載の導電性材料の作製方法。
【化1】


〔一般式(1)中、Lは、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、カルボニル基、−O−、−S−、−SO−、−NH−、又はこれら2価の基から選ばれる2つ以上の組み合わせにより形成が可能な2価の基を表す。Rは、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。Rは置換基を表し、nは0又は1を表す。〕
【請求項4】
前記チオフェン誘導体として、一般式(2)で表される化合物を用いる請求項1に記載の導電性材料の作製方法。
【化2】


〔一般式(2)中、Lは、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、カルボニル基、−O−、−S−、−SO−、−NH−、又はこれら2価の基から選ばれる2つ以上の組み合わせにより形成が可能な2価の基を表す。Rは、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。Rは置換基を表し、nは0又は1を表す。〕
【請求項5】
前記導電性高分子前駆体として、ピロール、ビピロール、チオフェン、ビチオフェン、エチレンジオキシチオフェン、アニリン、及びこれらの誘導体から選択される少なくとも1つの化合物を用いる請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の導電性材料の作製方法。
【請求項6】
前記チオフェン誘導体として前記一般式(2)で表される化合物を用い、前記導電性高分子前駆体として、3,4−エチレンジオキシチオフェンを用いる請求項4に記載の導電性材料の作製方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の導電性材料の作製方法によって得られる導電性材料。
【請求項8】
トリハロシリル基又はトリアルコキシシリル基を有するチオフェン誘導体と、導電性高分子前駆体と、を酸化重合してなる導電性膜。
【請求項9】
前記チオフェン誘導体が、下記一般式(1)で表される化合物である請求項8に記載の導電性膜。
【化3】


〔一般式(1)中、Lは、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、カルボニル基、−O−、−S−、−SO−、−NH−、又はこれら2価の基から選ばれる2つ以上の組み合わせにより形成が可能な2価の基を表す。Rは、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。Rは置換基を表し、nは0又は1を表す。〕
【請求項10】
前記チオフェン誘導体が、一般式(2)で表される化合物である請求項8に記載の導電性膜。
【化4】


〔一般式(2)中、Lは、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、カルボニル基、−O−、−S−、−SO−、−NH−、又はこれら2価の基から選ばれる2つ以上の組み合わせにより形成が可能な2価の基を表す。Rは、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。Rは置換基を表し、nは0又は1を表す。〕
【請求項11】
前記導電性高分子前駆体が、ピロール、ビピロール、チオフェン、ビチオフェン、エチレンジオキシチオフェン、アニリン、及びこれらの誘導体から選択される少なくとも1つの化合物である請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載の導電性膜。
【請求項12】
前記チオフェン誘導体が前記一般式(2)で表される化合物であり、前記導電性高分子前駆体が、3,4−エチレンジオキシチオフェンである請求項10に記載の導電性膜。

【公開番号】特開2010−157456(P2010−157456A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335762(P2008−335762)
【出願日】平成20年12月29日(2008.12.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】