説明

導電性材料前駆体および導電性材料

【課題】現像や後処理を施しても、全面に渡って均一な導電性を有する導電性材料を得るための導電性材料前駆体を提供することにある。
【解決手段】支持体上に、少なくとも物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に有する導電性材料前駆体において、前記物理現像核層のJIS B0601−2001に規定される表面粗さRzが0.5μm以上であることを特徴とする導電性材料前駆体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路、アンテナ回路、電磁波シールド材、タッチパネル等の用途に用いることができる導電性材料を製造するために用いる導電性材料前駆体及び、これを用いた導電性材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化が強く求められる中、プリント基板を始めとする電気回路は益々高密度化、高精細化が求められてきている。
【0003】
電気回路を製造する方法としては例えば、1)銅、金、ITO、酸化スズ等の導電性材料で被覆された絶縁性基板に、2)感光性樹脂等のフォトレジスト剤を塗りつけ、3)所望のパターンのマスクをかけて紫外線等を照射して、4)フォトレジスト剤を硬化させ、5)未硬化部分を取り除いた後、6)化学エッチング等によって不要な銅箔部分を除去し電気回路を形成する方法(サブトラクティブ法)が知られている。この方法では工程が煩雑で、且つ高精細な画線を描くことは金属のエッチング工程を有しているため困難であった。
【0004】
高精細な画線を描く方法としては1)絶縁性基板に無電解めっき触媒を付与し、2)フォトレジスト剤を塗布し、露光及び現像し、3)無電解めっきを施し、導電パターンを形成し、4)めっきレジストを除去する方法(フルアディティブ法)、あるいは1)絶縁性基板に無電解めっき触媒を付与し、無電解めっきを施し、2)フォトレジスト剤を塗布し、露光及び現像し、3)電解めっきを施し、導電パターンを形成し、4)めっきレジスト等を剥離する方法(セミアディティブ法)等も知られている。しかしこれらの方法も工程が煩雑で、サブトラクティブ法もそうであるが使用したフォトレジスト剤全てを最終的に廃棄せざるを得ないという問題も有していた。
【0005】
簡易な工程で電気回路を製造する方法としては金属ペーストを基板上にスクリーン印刷法やインクジェット印刷法等で印刷し、焼結等させることで電気回路を形成する方法が知られている。しかしながら、スクリーン印刷法やインクジェット印刷法では50μm以下の高精細な画線を描くことは困難であった。更にスクリーン印刷の場合、高精細な画線を連続して描こうとした場合、高精細な紗を使用しなければならないが、逆にその紗が詰まりやすいという問題を有している。インクジェット法の場合は特に電気回路を製造する場合だけでなく、民生用のインクジェットプリンターを含め、固形分を含有するインク組成物を印刷する場合には常にインクジェットノズルが詰まるという問題を有している。従って、印刷法を用いて電気回路を製造する場合には、その安定性に問題を有していた。
【0006】
均一で高精細なパターンを作ると言う観点において、近年導電性材料前駆体としてハロゲン化銀乳剤層を含有する銀塩写真感光材料を使用する方法が提案されている。例えば国際公開第01/51276号パンフレット(特許文献1)、特開2004−221564号公報(特許文献2)では銀塩写真感光材料を像露光、現像処理した後、金属めっき処理を施すことで透明導電性材料を製造する方法の提案がなされている。同じく銀塩感光材料を使う方法として銀塩拡散転写法を用いる方法も提案されており、例えば特開2003−77350号公報(特許文献3)等がある。
【0007】
これら導電性材料前駆体として各種銀塩写真感光材料を使用した導電性材料の中でも銀塩拡散転写法を用いる方法は形成される銀画像がほとんどバインダーを含有しないために、高い導電性を有する高精細なパターンが得られる点で優れた手法である。また、特開2006−190535号公報(特許文献4)に記載されているような処理装置を用いることで露光済みの長尺の導電性材料前駆体をロールの形態で準備し、これを現像処理した後、ロール状に巻き取る、いわゆるロール・トゥ・ロールで現像処理することができ、且つ処理されたロール間で抵抗値に差がなく、安定に処理できる優秀な手法である。しかしながら、ロール・トゥ・ロールで現像処理した場合、確かに製造された導電性材料の平均値としての抵抗値は非常に安定しているが、特異的に抵抗値が大きく、あるいは小さくなる場所が存在するという場合があった。これが問題になる例として1/4λ型電波吸収体がある。1/4λ型電波吸収体では電波反射体から吸収する電波の波長λの1/4分だけ離れた位置に自由空間の特性インピーダンスである377Ωに等しい透明な抵抗膜を設置する構造になっている。ここで特異的に抵抗膜の抵抗値にずれが生じている場合、その部分の電波吸収特性が悪化することになる。この例から判るように、十分に高い導電性を有するだけではなく、特に安定した搬送、巻き取りを得ることのできるテンションをかけてロール・トゥ・ロールで現像処理した際に全面に渡って均一な導電性が得られる導電性材料前駆体及び全面に渡って均一な導電性を有する導電性材料が求められていた。
【特許文献1】国際公開第01/51276号パンフレット(1頁)
【特許文献2】特開2004−221564号公報(第1頁〜第5頁)
【特許文献3】特開2003−77350号公報(第1頁〜第5頁)
【特許文献4】特開2006−190535号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、特にロール・トゥ・ロールで生産されても、全面に渡って均一な導電性を有する導電性材料を得るための導電性材料前駆体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の発明によって達成された。
1)支持体上に、少なくとも物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に有する導電性材料前駆体において、前記物理現像核層のJIS B0601−2001に規定される表面粗さRzが0.5μm以上であることを特徴とする導電性材料前駆体。
2)前記物理現像核層よりも支持体に近い側に設けられている下引き層が、平均粒子径2.0μm以上の微粒子マット剤を含有することを特徴とする上記1)記載の導電性材料前駆体。
3)上記1)または2)に記載の導電性材料前駆体を用いて製造された導電性材料。
【発明の効果】
【0010】
本発明により全面に渡って均一な導電性を有した導電性材料を得るための導電性材料前駆体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の導電性材料前駆体は支持体上に物理現像核層、ハロゲン化銀乳剤層をこの順に有する。更に本発明において物理現像核層に接し、且つ前記物理現像核層よりも支持体側に設けられる層を下引き層と呼び、本発明の導電性材料前駆体は少なくとも1層の下引き層を有することが好ましい。また、本発明の導電性材料前駆体は必要に応じてハロゲン化銀乳剤層を有する側とは反対側の支持体上に裏塗り層を設けることも可能であり、またハロゲン化銀乳剤層と物理現像核層の間やハロゲン化銀乳剤層の上の層に非感光性層を設けることも可能である。
【0012】
本発明において物理現像核層塗設後の該物理現像核層のJIS B0601−2001に規定される表面粗さRzは0.5μm以上あり、上限は4.0μmとすることが好ましい。また銀画像の導電性を均一にすること及び高い導電性を維持するためにはRzは1.0〜1.9μmであることがより好ましい。これら好ましいRzを得るためには下引き層に微粒子マット剤を含有させ、下引き層を粗面化し、物理現像核層を塗設する方法、支持体表面をエンボス加工する等し、基材を粗面化させ、その上に下引き層や物理現像核層を塗設する方法、物理現像核層に微粒子マット剤を含有させ、物理現像核層自体を粗面化させる方法のいずれの手法を取ることもできるが、中でも、下引き層に微粒子マット剤を含有させることが好ましい。
【0013】
本発明の導電性材料前駆体において、下引き層は1層もしくは複数層有することができる。本発明において物理現像核層の好ましいRzを得るためには、従来公知の微粒子マット剤を下引き層に含有させることで達成させることが前述の通り最も好ましい。マット剤としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の有機ポリマー系のマット剤や、セラミック、シリカ、アルミナ等の無機系のマット剤が挙げられ、中でもシリカが好ましい。マット剤の形状としては球形、羽毛状、楕円形、不定形等いかなる形状でも良い。マット剤の粒径は同じ投影面積となる球状粒子の径として求める。好ましく用いられるマット剤の粒径は2μm以上であり、更に5〜10μmのマット剤を用いることが好ましく、上限は20μmである。これら好ましいマット剤は二種以上含有させても良く、また複数層に分かれた下引き層にそれぞれ別のマット剤を含有させても良い。マット剤の使用量は下引き層に用いるバインダーの量に応じて変化するが、5〜20mg/m2であることが好ましい。
【0014】
本発明の導電性材料前駆体の下引き層に用いるバインダーとしては公知の水溶性高分子、ポリマーラテックス等を用いることができる。水溶性高分子としてはポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸とスチレンの共重合体等が挙げられ、またゼラチン、アルブミン、カゼイン、ポリリジン等のタンパク質、カラギーナン、ヒアルロン酸等のムコ多糖類、「高分子の化学反応」(大河原 信著 1972、化学同人社)2.6.4章記載のアミノ化セルロース、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、アリルアミンとジアリルアミンの共重合体、ジアリルアミンと無水マレイン酸との共重合体、ジアリルアミンと二酸化硫黄との共重合体等が挙げられる。これら水溶性高分子の中ではタンパク質やポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等のアミノ基を有する高分子を用いることが好ましい。
【0015】
本発明の導電性材料前駆体の下引き層に用いられるポリマーラテックスとしては、単独重合体や共重合体等の各種公知のラテックスを用いることができる、単独重合体としては例えば酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン重合体等があり、共重合体としては例えばエチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・p−メトキシスチレン共重合体、スチレン・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル・マレイン酸ジエチル共重合体、メチルメタクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、メチルメタクリレート・酢酸ビニル共重合体、メチルメタクリレート・塩化ビニリデン共重合体、メチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルアクリレート・ブタジエン共重合体、メチルアクリレート・スチレン共重合体、メチルアクリレート・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・ブチルアクリレート共重合体、メチルアクリレート・塩化ビニル共重合体、ブチルアクリレート・スチレン共重合体、ポリエーテル系ウレタン、ポリエステル系ウレタン、ポリカーボネート系ウレタン等が挙げられる。中でもウレタン系ラテックスが高い導電性を得られる点で好ましい。
【0016】
本発明の導電性材料前駆体の下引き層に用いられるポリマーラテックスの平均粒子径は0.01〜0.3μmであることが好ましく、更に好ましくは0.02μm以上0.1μm未満である。またそのガラス転移温度は40℃以下であることが好ましい。これらポリマーラテックスは単独で、あるいは複数の種類のポリマーラテックスを混合させて用いても良い。
【0017】
また、本発明の導電性材料前駆体の下引き層における総バインダー量におけるポリマーラテックスの比率は60質量%以上、好ましくは70〜97質量%である。また、下引き層に用いる総バインダー量としては0.1〜0.8g/m2が好ましく、更に好ましくは0.2〜0.7g/m2である。
【0018】
また、本発明の導電性材料前駆体の下引き層は架橋剤により架橋されていることが望ましい。特に好ましい架橋剤としては、水に対する溶解性が0.5質量%以上を示す架橋剤である。例えばクロム明ばんのような無機化合物、ホルムアルデヒド、グリオキザール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンの様なアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基を二個以上有する化合物、エポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテルやポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等、あるいはこれら以外に「高分子の化学反応」(大河原 信著 1972、化学同人社)の2・6・7章、5・2章、9・3章等に記載の架橋剤等の公知の高分子架橋剤を含有させることもできる。中でもエポキシ基を分子中に二個以上有する水溶性架橋剤が好ましい。
【0019】
本発明の導電性材料前駆体の下引き層における架橋剤の添加量は下引き層中のポリマーラテックスと水溶性高分子の合計量に対して1〜10質量%が好ましく、更に好ましくは3〜7質量%が好ましい。
【0020】
本発明の導電性材料前駆体の下引き層には、その他の成分として、カブリ防止剤、界面活性剤、イラジエーション防止剤等の公知の写真用添加剤を含有させることもできる。
【0021】
本発明の導電性材料前駆体において、物理現像核層が含有する物理現像核としては、重金属あるいはその硫化物からなる微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)が用いられる。例えば、金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物等が挙げられる。これらの物理現像核の微粒子層は、コーティング法または浸漬処理法によって、前記下引き層を形成させた支持体上に設けることができる。生産効率の面からコーティング法が好ましく用いられる。物理現像核層における物理現像核の含有量は、固形分で1m2当たり0.1〜10mg程度が適当である。
【0022】
本発明に用いる物理現像核層は、水溶性高分子を含有することもできる。水溶性高分子を用いる場合の添加量は、物理現像核に対して0〜500質量%程度が好ましい。水溶性高分子としては、ゼラチン、アラビアゴム、セルロース、アルブミン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、各種澱粉、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミドとビニルイミダゾールの共重合体等を用いることができる。また、水溶性高分子の他に下引き層で好ましく用いられるポリマーラテックスやマット剤を含有させることも可能である。物理現像核層自身により、物理現像核層の表面粗さRzを0.5μm以上に調整する場合に用いるマット剤としては、下引き層が含有するマット剤と同様のものを利用することができるが、好ましいマット剤の平均粒子径は0.5〜5μmであり、添加量は水溶性高分子とポリマーラテックスの総固形分量に対して20〜200質量%であることが好ましい。
【0023】
本発明に用いる物理現像核層には、物理現像核層に含有する水溶性高分子の架橋剤を含有することが好ましい。該架橋剤としては、例えばクロム明ばんのような無機化合物、ホルムアルデヒド、グリオキザール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンの様なアルデヒド類、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、高分子硬膜剤としてのジアルデヒド澱粉等の種々の化合物の一種もしくは二種以上を用いることができる。これらの架橋剤の中でも、好ましくは、グリオキザール、グルタルアルデヒド、3−メチルグルタルアルデヒド、サクシンアルデヒド、アジポアルデヒド等のジアルデヒド類であり、より好ましい架橋剤は、グルタルアルデヒドである。架橋剤は、物理現像核層に含まれる水溶性高分子に対して、0.1〜30質量%を物理現像核層に含有させるのが好ましく、特に1〜20質量%が好ましい。
【0024】
物理現像核層や下引き層の塗布には、例えばディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング等の塗布方式で塗布することができる。
【0025】
本発明の導電性材料前駆体においては光センサーとしてハロゲン化銀乳剤層が設けられる。ハロゲン化銀に関する銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、そのまま用いることもできる。
【0026】
ハロゲン化銀乳剤層に用いられるハロゲン化銀乳剤粒子の形成には、順混合、逆混合、同時混合等の、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)及び18716(1979年11月)、308119(1989年12月)で記載されていような公知の手法を用いることができる。中でも同時混合法の1種で、粒子形成される液相中のpAgを一定に保ついわゆるコントロールドダブルジェット法を用いることが、粒径のそろったハロゲン化銀乳剤粒子が得られる点において好ましい。本発明の導電性材料前駆体においては、好ましいハロゲン化銀乳剤粒子の平均粒径は0.25μm以下、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤のハロゲン化物組成には好ましい範囲が存在し、塩化物を80モル%以上含有するのが好ましく、特に90モル%以上が塩化物であることが特に好ましい。
【0027】
ハロゲン化銀乳剤の製造においては、必要に応じてハロゲン化銀粒子の形成あるいは物理熟成の過程において、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩、あるいはロジウム塩もしくはその錯塩、イリジウム塩もしくはその錯塩等のVIII族金属元素の塩、もしくはその錯塩を共存させても良い。また、種々の化学増感剤によって増感することができ、イオウ増感法、セレン増感法、貴金属増感法等の当業界で一般的な方法を、単独、あるいは組み合わせて用いることができる。また本発明の導電性材料前駆体においてハロゲン化銀乳剤は必要に応じて色素増感することもできる
【0028】
また、ハロゲン化銀乳剤層に含有するハロゲン化銀量とゼラチン量の比率は、ハロゲン化銀(銀換算)とゼラチンとの質量比(銀/ゼラチン)が1.2以上、より好ましくは1.5以上である。
【0029】
ハロゲン化銀乳剤層には、更に種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。これらは、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)及び18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載、あるいは引用された文献に記載されている。
【0030】
前述の通り、本発明の導電性材料前駆体にはハロゲン化銀乳剤層と物理現像核層の間やハロゲン化銀乳剤層の上の層に非感光性層を設けることができる。これらの非感光性層は、水溶性高分子を主たるバインダーとする層である。ここでいう水溶性高分子とは、現像液で容易に膨潤し、下層のハロゲン化銀乳剤層、物理現像核層まで現像液を容易に浸透させるものであれば任意のものが選択できる。
【0031】
具体的には、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、ポリビニルアルコール等を用いることができる。特に好ましい水溶性高分子は、ゼラチン、アルブミン、カゼイン等のタンパク質である。本発明の効果を十分に得るためには、この非感光性層のバインダー量としては、ハロゲン化銀乳剤層の総バインダー量に対して20〜100質量%の範囲が好ましく、特に30〜80質量%が好ましい。
【0032】
これら非感光性層には、必要に応じてResearch Disclosure Item 17643(1978年12月)及び18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような公知の写真用添加剤を含有させることができる。また、処理後のハロゲン化銀乳剤層の剥離を妨げない限りにおいて、架橋剤により硬膜させることも可能である。
【0033】
本発明の導電性材料前駆体にはハロゲン化銀乳剤層の感光波長域に吸収極大を有する非増感性染料または顔料を、画質向上のためのハレーション、あるいはイラジエーション防止剤として用いることは好ましい。ハレーション防止剤としては、好ましくは上記した下引き層あるいは物理現像核層、あるいは物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層の間に必要に応じて設けられる中間層、または支持体を挟んで設けられる裏塗り層に含有させることができる。イラジエーション防止剤としては、ハロゲン化銀乳剤層に含有させるのが良い。添加量は、目的の効果が得られるのであれば広範囲に変化しうるが、例えばハレーション防止剤として裏塗り層に含有させる場合、1平方メートル当たり約20mg〜約1gの範囲が望ましく、好ましくは、極大吸収波長における吸光度として0.5以上である。
【0034】
本発明の導電性材料前駆体に用いられる支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルム、ガラス板等が挙げられる。更に本発明の導電性材料前駆体においては下引き層の反対側に帯電防止層等を必要に応じて設けることもできる。また物理現像核層表面のRzを0.5μm以上に調整するため表面をエンボス加工すること等も可能である。
【0035】
上記導電性材料前駆体を用い、導電性材料を作製するための方法は、例えば網目状パターンの銀薄膜の形成が挙げられる。この場合、ハロゲン化銀乳剤層は網目状パターンに露光されるが、露光方法として、網目状パターンの透過原稿とハロゲン化銀乳剤層を密着して露光する方法、あるいは各種レーザー光を用いて走査露光する方法等がある。上記したレーザー光で露光する方法においては、例えば400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザー(バイオレットレーザーダイオードともいう)を用いることができる。
【0036】
網目状パターンのような任意の形状パターンの透過原稿と上記前駆体を密着して露光、あるいは、任意の形状パターンのデジタル画像を各種レーザー光の出力機で上記前駆体に走査露光した後、銀塩拡散転写現像液で処理することにより物理現像が起こり、未露光部のハロゲン化銀が溶解されて銀錯塩となり、物理現像核上で還元されて金属銀が析出して形状パターンの銀薄膜を得ることができる。一方、露光された部分はハロゲン化銀乳剤層中で化学現像されて黒化銀となる。現像後、不要になったハロゲン化銀乳剤層及び中間層、保護層は水洗除去されて、形状パターンの銀薄膜が表面に露出する。
【0037】
現像処理後のハロゲン化銀乳剤層等の物理現像核層の上に設けられた層の除去方法は、水洗除去あるいは剥離紙等に転写剥離する方法がある。水洗除去は、スクラビングローラ等を用いて温水シャワーを噴射しながら除去する方法や温水をノズル等でジェット噴射しながら水の勢いで除去する方法がある。また、剥離紙等で転写剥離する方法は、ハロゲン化銀乳剤層上の余分なアルカリ液(銀錯塩拡散転写用現像液)を予めローラ等で絞り取っておき、ハロゲン化銀乳剤層等と剥離紙を密着させてハロゲン化銀乳剤層等をプラスチック樹脂フィルムから剥離紙に転写させて剥離する方法である。剥離紙としては吸水性のある紙や不織布、あるいは紙の上にシリカのような微粒子顔料とポリビニルアルコールのようなバインダーとで吸水性の空隙層を設けたものが用いられる。
【0038】
次に、銀塩拡散転写現像の現像液について説明する。現像液は、可溶性銀錯塩形成剤及び還元剤を含有するアルカリ液である。可溶性銀錯塩形成剤は、ハロゲン化銀を溶解し可溶性の銀錯塩を形成させる化合物であり、還元剤はこの可溶性銀錯塩を還元して物理現像核上に金属銀を析出させるための化合物である。
【0039】
現像液に用いられる可溶性銀錯塩形成剤としては、チオ硫酸ナトリウムやチオ硫酸アンモニウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、オキサゾリドン類、2−メルカプト安息香酸及びその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、米国特許第5,200,294号明細書に記載のようなチオエーテル類、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に、「The Theory of the photographic Process(4th edition,p474〜475)」、T.H.James著に記載されている化合物が挙げられる。
【0040】
これらの可溶性銀錯塩形成剤の中でも特に、アルカノールアミンが好ましい。アルカノールアミンを含有した処理液で現像を行った導電性材料の表面抵抗は比較的低い値が得られる。
【0041】
アルカノールアミンとしては、例えばN−(2−アミノエチル)エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0042】
これらの可溶性銀錯塩形成剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
【0043】
現像液に用いられる還元剤は、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)及び18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができる。例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロルハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、アスコルビン酸及びその誘導体、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。これらの還元剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
【0044】
可溶性銀錯塩形成剤の含有量は、現像液1リットル当たり0.001〜5モルが好ましく、より好ましくは0.005〜1モルの範囲である。還元剤の含有量は現像液1リットル当たり0.01〜1モルが好ましく、より好ましくは0.05〜1モルの範囲である。
【0045】
現像液のpHは10以上が好ましく、更に11〜14が好ましい。所望のpHに調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ剤、リン酸、炭酸等の緩衝剤を単独、または組み合わせて含有させる。また、本発明の現像液には、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸カリウム等の保恒剤を含むことが好ましい。
【0046】
これらの処理は特開2006−190535号公報や特開2007−240593号公報記載の処理装置を用いることでロール・トゥ・ロールでの処理を行うことが生産性の点から好ましい。
【0047】
更に、前記露光及び現像処理、後処理により形成された導電性材料の銀画像部に更に高い導電性を得るためや、あるいは銀画像の色調を変えるため等の種々の目的でめっき処理を行うことが可能である。本発明におけるめっき処理としては、無電解めっき(化学還元めっきや置換めっき)、電解めっき、または無電解めっきと電解めっきの両方を用いることができる。めっき処理によりどの程度導電性を付与するかは用いる用途に応じて異なるが、例えばPDP用に用いる電磁波シールド材として用いるためには表面抵抗値2.5Ω/□以下、好ましくは1.5Ω/□以下が要求される。
【0048】
本発明の導電性材料前駆体において無電解めっき処理を施す場合、無電解めっきを促進させる目的でパラジウムを含有する溶液で活性化処理することもできる。パラジウムとしては2価のパラジウム塩あるいはその錯体塩の形でも良いし,また金属パラジウムであっても良い。しかし、液の安定性、処理の安定性から好ましくはパラジウム塩あるいはその錯塩を用いることが良い。
【0049】
本発明における無電解めっきは、公知の無電解めっき技術、例えば無電解ニッケルめっき,無電解コバルトめっき、無電解金めっき、無電解銀めっき等を用いることができるが、上記の必要な導電性と透明性を得るためには無電解銅めっきを行うことが好ましい。
【0050】
本発明における無電解銅めっき液には硫酸銅や塩化銅等の銅の供給源、ホルムアルデヒドやグリオキシル酸、テトラヒドロホウ酸カリウム、ジメチルアミンボラン等の還元剤、EDTAやジエチレントリアミン5酢酸、ロシェル塩、グリセロール、メソ−エリトリトール、アドニール、D−マンニトール、D−ソルビトール、ズルシトール、イミノ2酢酸、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン4酢酸、1,3−ジアミノプロパン−2−オール,グリコールエーテルジアミン4酢酸、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等の銅の錯化剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のpH調整剤等が含有される。更にその他に浴の安定化やめっき皮膜の平滑性を向上させるための添加剤としてポリエチレングリコール、黄血塩、ビピリジル、o−フェナントロリン、ネオクプロイン、チオ尿素、シアン化物等を含有させることもできる。めっき液は安定性を増すためエアレーションを行うことが好ましい。
【0051】
無電解銅めっきでは前述の通り種々の錯化剤を用いることができるが、錯化剤の種類により酸化銅が共析し、導電性に大きく影響したり、あるいはトリエタノールアミン等の銅イオンとの錯安定定数の低い錯化剤は銅が沈析しやすいため、安定しためっき液やめっき補充液が作り難い等ということが知られている。従って工業的に通常用いられる錯化剤は限られており、本発明においても同様の理由でめっき液の組成として特に錯化剤の選択は重要である。特に好ましい錯化剤としては銅錯体の安定定数の大きいEDTAやジエチレントリアミン5酢酸等が挙げられ、このような好ましい錯化剤を用いためっき液としては例えばプリント基板の作製に使用される高温タイプの無電解銅めっきがある。高温タイプの無電解銅めっきの手法については「無電解めっき 基礎と応用」(電気鍍金研究会編)p105等に詳しく記載されている。高温タイプのめっきでは通常60〜70℃で処理し、処理時間は無電解めっき後に電解めっきを施すかどうかで変わってくるが、通常1〜30分、好ましくは3〜20分無電解めっき処理を行うことで本発明の目的を達することができる。
【0052】
本発明において銅以外の無電解めっき処理を行う場合は例えば「めっき技術ガイドブック」(東京鍍金材料協同組合技術委員会編、1987年)p406〜432記載の方法等を用いることができる。
【0053】
本発明においては電解めっきを施すこともできる。電解めっき法としては銅めっき、ニッケルめっき、亜鉛めっき、スズめっき等の公知のめっき方法を用いることができ、その方法として例えば「めっき技術ガイドブック」(東京鍍金材料協同組合技術委員会編、1987年)記載の方法を用いることができる。どのめっき法を用いるかは製造する導電性材料の用途によって異なるが、導電性を更に高めるためにめっきする場合、銅めっきやニッケルめっきが好ましい。銅めっきのめっき法として好ましい方法としては硫酸銅浴めっき法やピロリン酸銅浴めっき法、ニッケルめっき法としてはワット浴めっき法、黒色めっき法等が好ましい。
【0054】
本発明においてはめっき処理並びに定着処理の後、酸化処理を行うことも可能である。特にめっき処理の後に定着処理を行い、且つ漂白定着液で処理しない場合は酸化処理を行うことが好ましい。酸化処理としては、種々の酸化剤を用いた公知の方法を用いることができる。酸化処理液には酸化剤としてEDTA鉄塩、DTPA鉄塩、1,3−PDTA鉄塩、β−ADA鉄塩、BAIDA鉄塩等の各種アミノポリカルボン酸鉄塩、重クロム酸塩、過硫酸塩、過マンガン酸塩、赤血塩等を用いることができるが、環境負荷が少なく、安全なアミノポリカルボン酸鉄を用いることが好ましい。酸化剤の使用量は0.01〜1モル/L、好ましくは0.1〜0.3モル/Lである。その他に促進剤として臭化物、ヨウ化物、グアニジン類、キノン類、ヴァイツラジカル、アミノエタンチオール類、チアゾール類、ジスルフィド類、へテロ環メルカプト類等公知のものを用いることもできる。
【0055】
本発明により製造された導電性材料の銀画像は後処理を施すこともできる。後処理液としては例えば還元性物質、水溶性リンオキソ酸化合物、水溶性ハロゲン化合物等の水溶液が一例としてあげられる。このような後処理液により50〜70℃、更に好ましくは60〜70℃で10秒以上、好ましくは30秒〜3分処理することで、銀画像パターンのX線回折による2θ=38.2°での半値幅が0.35以下となるようにすれば、非常に高い導電性を得ることができ、また高温高湿下でもその抵抗値が変動しなくなるので好ましい。
【実施例1】
【0056】
本発明の実施例を以下に示す。本発明に使用される導電性材料前駆体を作製するために、支持体として透明支持体である厚み100μm、幅1280mm、長さ20mのロール状のポリカーボネートベース(三菱ガス化学社製ユーピロンシート)を用いた。この支持体の上に下記内容の下引き層処方に従い塗液を作製し、塗布、乾燥した後、50℃で1日加温した。
【0057】
<下引き層処方A/1m2当たり>
ハイドランWLS210(大日本インキ化学工業社製ポリカーボネート系ウレタンラテックス) 1.9g(固形分0.66g)
ゼラチン 0.04g
サイリシア450(富士シリシア化学社製シリカ:平均粒子径 5.2μm)
20mg
デナコールEX614(ナガセケムテックス社製ソルビトールポリグリシジルエーテル)
10mg
界面活性剤(化1) 3mg
【0058】
【化1】

【0059】
<下引き層処方B/1m2当たり>
上記下引き処方Aのサイリシア450の添加量を15mgに変更し作製した。
【0060】
<下引き層処方C/1m2当たり>
上記下引き処方Aのサイリシア450の添加量を10mgに変更し作製した。
【0061】
<下引き層処方D/1m2当たり>
上記下引き処方Aのサイリシア450の添加量を7mgに変更し作製した。
【0062】
<下引き層処方E/1m2当たり>
上記下引き処方Aのサイリシア450の添加量を5mgに変更し作製した。
【0063】
<下引き層処方F/1m2当たり>
上記下引き処方Aのサイリシア450の添加量を3mgに変更し作製した。
【0064】
<下引き層処方G/1m2当たり>
上記下引き処方Aのサイリシア450の添加量を1mgに変更し作製した。
【0065】
また別に、厚み100μm、幅1280mm、長さ20mの塩化ビニリデンを含有する易接着層を有するロール状のポリエチレンテレフタレートフィルムの上に下記内容の下引き処方に従い塗液を作製し、塗布、乾燥した後、50℃で1日加温した。
【0066】
<下引き層処方H/1m2当たり>
ゼラチン 0.7g
デナコールEX614 10mg
界面活性剤(化1) 3mg
【0067】
次に、硫化パラジウムゾル液を下記の様にして作製し、得られたゾルを用いて物理現像核液を作製した。
【0068】
<硫化パラジウムゾルの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
塩酸 40mL
蒸留水 1000mL
B液 硫化ソーダ 8.6g
蒸留水 1000mL
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
【0069】
<物理現像核液組成/1m2当たり>
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%のグルタルアルデヒド溶液 0.08mL
【0070】
この物理現像核層塗液を前述の下引き層を塗設したロール状のポリカーボネートベース、及びロール状のポリエチレンテレフタレートベースの下引き層上に塗布し、乾燥した。
【0071】
このようにして得られた物理現像核層を塗布したものを、1m四方のサンプルから任意に20箇所選び、それらの表面粗さRzを測定して得られた平均値の結果を表1の現像前の表面粗さにまとめた。
【0072】
続いて、上記物理現像核層を塗布した側と反対側に下記組成の裏塗り層を塗布した。
<裏塗り層組成/1m2当たり>
ゼラチン 2g
不定形シリカマット剤(平均粒径5μm) 20mg
染料(化2) 200mg
界面活性剤(化1) 400mg
【0073】
【化2】

【0074】
続いて、支持体に近い方から順に下記組成の中間層1、ハロゲン化銀乳剤層1、及び最外層1を上記物理現像核層の上に塗布し、ロール状の導電性材料前駆体1−1〜1−8を得た。ハロゲン化銀乳剤は、写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀95モル%と臭化銀5モル%で、平均粒径が0.15μmになるように調製した。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸を用い金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀1g当たり0.5gのゼラチンを含む。
【0075】
<中間層1組成/1m2当たり>
ゼラチン 0.5g
界面活性剤(化1) 5mg
【0076】
<ハロゲン化銀乳剤層1組成/1m2当たり>
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3.0g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3.0mg
界面活性剤(化1) 20mg
【0077】
<最外層1組成/1m2当たり>
ゼラチン 1g
不定形シリカマット剤(平均粒径3.5μm) 10mg
界面活性剤(化1) 10mg
【0078】
このようにして得たロール状の導電性材料前駆体を、水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介し、図1に示した原稿を密着させて露光した。図1において斜線部は細線幅20μmで格子間隔250μmの網目パターンであり、斜線部以外はパターンなしの透過原稿である。
【0079】
続いて下記の拡散転写現像液を作製した。その後、先に露光した導電性材料前駆体を特開2006−190535号公報記載の処理装置及び下記の現像液を用い、以下の処理条件で処理した。露光したサンプルからは透明網目パターン状に銀薄膜が形成された導電性材料を得た。また、得られたロールは隙間はなく、きれいに巻き取ることができた。
【0080】
<処理条件>
現像液の温度:20℃。
現像時間:浸漬現像時間が60秒、空中現像時間が25秒、全現像時間は85秒。
ロール巻き取り条件:張力200N/m。
【0081】
<拡散転写現像液組成>
水酸化カリウム 25g
ハイドロキノン 18g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸カリウム 80g
N−メチルエタノールアミン 15g
臭化カリウム 1.2g
全量を水で1000mL
pH=12.2に調整する。
【0082】
上記のようにして得られた網目パターン状銀薄膜が形成された導電性材料を、図1に示す試料の斜線部以外の表面粗さRzを測定し、平均値を表1の現像後の表面粗さにまとめた。更に、図1の斜線部網目パターンの表面抵抗率をJIS−K7194に準拠し、ダイアインスツルメンツ社製、ロレスターGP/ESPプローブを用いて測定した。また、表面抵抗率は1サンプルにつき全部で50点測定し、表1にその平均値を示した。また、その中で平均表面抵抗率から5%以上外れた箇所の割合もカウントし、得られた結果を表1にまとめた。
【0083】
【表1】

【0084】
表1の結果に示されているように、現像処理前後の導電性材料の表面粗さRzが0.5μm以上であると、導電性が均一であり、且つ、平均表面抵抗率から5%以上外れた箇所の割合も10%未満であることから、その有用性が理解できる。
【実施例2】
【0085】
実施例1で用いた厚み100μm、幅1280mm、長さ20mのロール状のポリカーボネートベース(三菱ガス化学社製ユーピロンシート)を用い、この支持体上に下記内容の下引き層処方に従い塗液を作製し、塗布、乾燥した後、50℃で1日加温した。
【0086】
<下引き層処方I/1m2当たり>
ハイドランWLS210 1.9g(固形分0.66g)
ゼラチン 0.04g
GS−1020(ガンツ化成社製ポリスチレン:平均粒子径 10.0μm)
7mg
デナコールEX614 10mg
界面活性剤(化1) 3mg
【0087】
<下引き層処方J/1m2当たり>
上記下引き処方IのGS−1020をサイロイド378(グレースジャパン社製シリカ:平均粒子径 5.0μm)に変更し作製した。
【0088】
<下引き層処方K/1m2当たり>
上記下引き処方Jのサイロイド378をサイリシア440(富士シリシア化学社製シリカ:平均粒子径 3.5μm)に変更し作製した。
【0089】
<下引き処方L/1m2当たり>
上記下引き処方Kのサイリシア440をサイリシア435(富士シリシア化学社製シリカ:平均粒子径 2.5μm)に変更し作製した。
【0090】
<下引き処方M/1m2当たり>
上記下引き処方Lのサイリシア435をサイシリア540(富士シリシア化学社製シリカ:平均粒子経 2.3μm)に変更し作製した。
【0091】
<下引き処方N/1m2当たり>
上記下引き処方Mのサイリシア540をカープレックスFPS−5(シオノギ製薬社製シリカ:平均粒子経 2.1μm)に変更し作製した。
【0092】
<下引き処方O/1m2当たり>
上記下引き処方NのカープレックスFPS−5をサイリシア470(富士シリシア化学社製シリカ:平均粒子径 12μm)に変更し作製した。
【0093】
<下引き処方P/1m2当たり>
上記下引き処方Oのサイリシア470をサイリシア350(富士シリシア化学社製シリカ:平均粒子径 1.8μm)に変更し作製した。
【0094】
<下引き処方Q/1m2当たり>
上記下引き処方Pのサイリシア350をサイリシア310(富士シリシア化学社製シリカ:平均粒子径 1.4μm)に変更し作製した。
【0095】
<下引き処方R/1m2当たり>
上記下引き処方Qのサイリシア310をシーホスターKE−P30(日本触媒社製球状微粉体:平均粒子径 0.3μm)に変更し作製した。
【0096】
このようにして得られた下引き層を塗設したポリカーボネートベースの下引き層上に、実施例1と同様の物理現像核液と中間層1、ハロゲン化銀乳剤層1、及び最外層1を、また、下引き層を塗布した側と反対側に実施例1と同様の裏塗り層を塗布し、導電性材料前駆体2−1〜2−11を得た。
【0097】
このようにして得たロール状の導電性材料前駆体を実施例1と同様の原稿を用い、露光現像処理を行い、得られた網目パターン状銀膜が形成された導電性材料を実施例1と同様の評価方法で実施し、得られた結果を表2にまとめた。
【0098】
【表2】

【0099】
表2の結果に示されているように、下引き層のマット剤の平均粒子径2.0μm以上であると、導電性が均一であり、且つ、平均表面抵抗率から5%以上外れた箇所の割合も10%未満であることから、その有用性が理解できる。
【実施例3】
【0100】
使用する支持体を厚み130μm、幅1280mm、長さ20m、表面粗さRzが約5μmのロール状の梨地ポリカーボネートベース(三菱ガス化学社製ユーピロンシート)を用い、下記内容の下引き層処方の塗液を作製し、塗布、乾燥した後、50℃で1日加温した。
【0101】
<下引き層処方S/1m2当たり>
ハイドランWLS210 2.85g(固形分0.99g)
ゼラチン 0.06g
デナコールEX614 15mg
界面活性剤(化1) 4.5mg
【0102】
このようにして得られた下引き層を塗設した梨地ポリカーボネートベースの下引き層上に実施例1と同様の物理現像核液と中間層1、ハロゲン化銀乳剤層1、及び最外層1を、また、下引き層を塗布した側と反対側に実施例1と同様の裏塗り層を塗布し、導電性材料前駆体3−1を得た。
【0103】
このようにして得たロール状の導電性材料前駆体を実施例1と同様の原稿を用い、露光現像処理を行い、得られた網目パターン状銀膜が形成された導電性材料を実施例1と同様の評価方法で実施し、得られた結果を表3にまとめた。
【0104】
【表3】

【0105】
表3の結果に示されているように、支持体の表面粗さRzが0.5μm以上であると、導電性が均一であり、且つ、平均表面抵抗率から5%以上外れた箇所の割合も10%未満であることから、その有用性が理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の実施例で用いた、露光原稿である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、少なくとも物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に有する導電性材料前駆体において、前記物理現像核層のJIS B0601−2001に規定される表面粗さRzが0.5μm以上であることを特徴とする導電性材料前駆体。
【請求項2】
前記物理現像核層よりも支持体に近い側に設けられている下引き層が、平均粒子径2.0μm以上の微粒子マット剤を含有することを特徴とする請求項1記載の導電性材料前駆体。
【請求項3】
前記請求項1または2に記載の導電性材料前駆体を用いて製造された導電性材料。

【図1】
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【公開番号】特開2009−193739(P2009−193739A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31265(P2008−31265)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】