説明

導電性構造体を有するガラス板

本発明は、互いにガルバニック分離された少なくとも2つの導電性構造体(2a、2b)を有するガラス板(1)と、導電性構造体(2a、2b)のうちの少なくとも1つの上のガルバニック分離層(5)と、ガルバニック分離層(5)の上の導電体(4)とを備える、導電性構造体を有するガラス板であって、ガルバニック分離層(5)が、導電性構造体(2a、2b)のうちの少なくとも1つから導電体(4)をガルバニック分離する、ガラス板に関する。
本発明は、さらに、ガラス板を製造する方法、およびそれの新しい使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しいガラス板、特にアンテナおよび加熱能力を有する新しいガラス板、新しいガラス板の製造方法、ならびに新しいガラス板の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第3910031号明細書により、無線アンテナおよびガラス板加熱装置が設けられる積層ガラスで作られたガラス板が知られている。面積の最適な利用を得るために、加熱導体が、積層ガラスの第1の表面に配置される。アンテナ導体の部品は、積層ガラスの第1の表面および/またはもう1つの表面の上に配置される。複数の表面を使用することによって、比較的大きな面積が、アンテナおよび加熱能力を得るために常に利用できる。アンテナ利得を改善するために、アンテナ導体および加熱導体が、容量結合される。
【0003】
そこで、容量結合を得るための導電性構造体が、それぞれの場合に、ガラス表面の上に個々の加熱素子と直接対向して配置されなければならない。このことは、特に、ガラス表面上のアンテナおよび加熱素子の配置の制限となる。容量結合は、ガラス板の数ミリメートルの厚さにわたる大きな信号損失と関連する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第3910031号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、アンテナおよび加熱導体の効果的で簡単な容量結合を有する改良されたガラス板、ならびに同時に、アンテナおよび加熱導体の配置についての高い自由度を利用できるようにすることである。
【0006】
さらに、本発明の目的は、新しいガラス板の製造方法を利用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、独立請求項1、20、および29の特徴によって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の特徴から生じる。
【0008】
本発明によれば、導電性構造体を有するガラス板の構成が示され、この構成はは、互いにガルバニック分離された少なくとも2つの導電性構造体を有するガラス板と、導電性構造体のうちの少なくとも1つの上のガルバニック分離層と、ガルバニック分離層の上の導電体とを備え、ガルバニック分離層は、導電性構造体のうちの少なくとも1つから導電体を分離する。
【0009】
「ガルバニック分離された」という特性は、導電性構造体が、いかなる導電性接続部も有さず、DC電圧に対して分離されることを意味している。
【0010】
ガラス板は、特に、透明またはティンテッドソーダ石灰ガラスで作られるガラス板を含む。ガラス板は、特に、ECE−R 43:2004によるthe Uniform Provisions concerning the Approval of Safety Glazing Materials and Their Installation on Vehiclesを満足するように、積層ガラスとして熱強化または化学強化され、あるいは実施され得る。また、ガラス板は、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、またはポリメタクリル酸メチルなどのプラスチックを含むことができる。エネルギー伝達を調整するために、ガラス板は、放射線吸収性、反射性、および/または低公害性を備える、完全または部分的な表面被覆物を有することができる。ガラス板が積層ガラスのガラス板として実施される場合には、2つのソーダ石灰ガラスが、ポリビニルブチラール含有プラスチック層で恒久的に接合される。
【0011】
ガラス板は、好ましくは100cmから4mまでの、自動車のウィンドシールド、サイドウィンド、ガラスルーフ、またはリアウィンドとして自動車産業で通例のサイズを有することができる。ガラス板の通例の厚さは、1mmから6mmの範囲である。
【0012】
導電性構造体は、様々な形態を有する。加熱および/またはアンテナ能力を有するガラス板は、ライン状構造体、および同時に肉眼での透明性を有することが好ましい。
【0013】
加熱導体として加熱能力を有する導電性構造体は、ガラス板の対向する少なくとも端縁にバスバーを介して平行に接続されるいくつかの平行ラインとして構成されることが好ましい。バスバーの間に電圧が加えられると、ジュール加熱が、ガラス板の面積にわたって発生される。ガラス板の温度が増大すると、ガラス板の表面から湿気および着氷が防止され、または除去される。導電性構造体は、ほとんどガラス板の面積全体にわたってライン状に延びることが好ましい。加熱能力を有する導電性構造体は、様々な形状、配置、および相互接続部を有し、たとえば、丸みを帯び、螺旋状に、またはメアンダ状に構成される。導電性構造体は、特に、自動車グレージングの内部表面にわたって延伸する。
【0014】
アンテナ能力を有する導電性構造体は、ラインの形状でアンテナ導体として構成されることが好ましい。アンテナ導体の長さは、目標とするアンテナ特性によって決定される。アンテナ導体は、開いたまたは閉じた端部を有するラインとして実施されることができ、様々な形状、配置、および相互接続部を有し、たとえば、丸みを帯び、螺旋状に、またはメアンダ状に構成され得る。
【0015】
アンテナ特性は、受信または送信されるべき周波数によって決定される。受信または送信される電磁放射は、好ましくは30kHzから10GHzの周波数範囲でLF、MF、HF、VHF、UHF、および/またはSHF信号、特に好ましくは無線信号、特にUSW(1mから10mの波長に対応する、30MHzから300MHzまで)、短波(10mから100mの波長に対応する、3MHzから30MHzまで)、または中波(100mから1000mの波長に対応する、300kHzから3000kHzまで)、ならびに料金収受、移動無線、デジタル放送の信号、TV信号、またはナビゲーション信号でる。アンテナ能力を有する導電性構造体の長さは、伝達されるべき周波数の波長の倍数または何分の1、特に波長の半分または4分の1であることが好ましい。ガラス板の表面のよりよい利用のために、導電性構造体は、湾曲され、メアンダ状に、または螺旋状に構成され得る。
【0016】
本発明による導電性構造体の典型的なライン幅は、0.1mmから5mm、バスバーまたはコンタクト領域の典型的な幅は、3mmから30mm、容量結合の領域での導電性構造体の間の典型的な距離は、1mmから20mmである。導電性構造体は、それ自体不透明であることができるが、肉眼では、ガラス板は透明に見える。
【0017】
導電性構造体は、金属ワイヤ、好ましくは銅、タングステン、金、銀、またはアルミニウムワイヤであることができる。ワイヤには、電気絶縁被覆が備えられ得る。しかしながら、導電性構造体はまた、印刷導体層として実施され得る。電気導電率は、好ましくは層に含まれる金属粒子を介して、特に好ましくは銀粒子を介して実現される。金属粒子は、ペーストまたはインクなどの、好ましくはガラスフリットを有する焼成スクリーン印刷ペーストのような有機および/または無機マトリックスに配置され得る。
【0018】
アンテナ特性を改善するために、および特に、アンテナ導体の長さを増加させるために、加熱導体は、少なくとも1つの容量結合素子を介してアンテナ導体に完全または部分的に接続される。したがって、AC信号の場合には、加熱導体はアンテナ導体の一部である。しかしながら、DC電圧の場合には、ガラス板を加熱するために、加熱導体は、アンテナ導体からガルバニック分離されたままである。結合素子の領域では、アンテナ導体および加熱導体は、好ましくは互いに空間的に接近しており、好ましくは平行であり、および、特に好ましくはそれらの間距離が0.5mmから10mmである。アンテナ導体および加熱導体は、任意の形態、たとえば櫛状またはメアンダ状に容量結合の領域において互いに噛合うことさえできる。
【0019】
容量結合は、導電性構造体を空間的にブリッジングする導電体を通して本発明により実現されるが、ガルバニック接触することはない。ガルバニック分離は、結合素子において導電性構造体と導電体との間のガルバニック分離層を介して実現される。
【0020】
本発明のもう1つの好ましい実施形態では、追加の中間層が、好ましくはガラス板のフレームの形で装飾目的のために、ガラス板と導電性構造体との間に付着される。中間層は、黒色インプリントとしてガラスフリットおよび黒色顔料を含むことが好ましい。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、容量結合は、少なくとも1つの結合素子によって実現される。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、容量結合は、ガラス板上で空間的に分離して配置される少なくとも2つの結合素子によって実現される。
【0023】
本発明によるガラス板の容量結合素子は、導電性構造体の小区域を覆い、導電性構造体の少なくとも2つの小区域にわたって延伸する。結合素子は、導電性構造体を越えて部分的に延伸され、ガラス板に直接接着され得る。これにより、強力な機械的接合が可能となり、導電性構造体での接着剤要求が低減する。
【0024】
しかしながら、本発明の1つの実施形態では、結合素子はまた、導電性構造体の外側輪郭と面一に適応され得る。この場合には、面積および材料要求が低減され、光学系が改善されることが有利である。
【0025】
結合素子は、フィルム層システムおよび/または印刷層システムとして付着されることが好ましい。フィルムは、特に、自己接着性であり得る。フィルム層システムおよび印刷層システムは、任意の輪郭を有することができるが、特に、ストリップ状であることができ、かつ/または導電性構造体の輪郭と面一に適応され得る。
【0026】
結合素子のインピーダンスは、結合素子の導電体と導電性構造体との間のキャパシタンスによって実質的に決定される。ここで、キャパシタンスは、ガルバニック分離層の比誘電率、導電体および導電性構造体のオーバーラップの面積、ならびに導電体と導電性構造体との間の距離の関数である。可能な限り高いキャパシタンス、およびしたがって可能な限り小さいインピーダンスは、介在する距離を可能な限り最も小さくした状態で大きなオーバーラップ面積および高い比誘電率をもたらす。キャパシタンスは、干渉周波数または付着が必要とされない周波数が結合素子を通して伝達されず、高域通過または低域通過が得られるように、選択され得る。
【0027】
本発明によるガラス板の好ましい実施形態では、ガルバニック分離層は、ポリアクリレート、シアノアクリレート、メタクリル酸メチル、シランおよびシロキサン架橋ポリマー、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリクロロプレン、ポリアミド、アセテート、シリコーン接着剤、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ならびにそれらの共重合体、および/またはそれの混合物を含む。
【0028】
ガルバニック分離層は、複数の層でできている場合がある。複数の層の利点は、分離層の機械的および電気的特性の最適化の際に、自由度が増大することである。
【0029】
印刷結合素子を有する本発明によるガラス板の好ましい実施形態では、ガルバニック分離層は、高い破壊強度を有する黒色インプリントを含んでいる。分離層は、有機および無機成分、特にガラスフリットおよび着色顔料を含む。印刷結合素子の導電体は、好ましくは導電性ペースト、導電性接着剤、および、特に好ましくは導電性プライマーを含む。印刷導電体の電気比抵抗は、1kOhmcmより小さく、好ましくは100Ohmcmより小さく、特に好ましくは10Ohmcmより小さい。
【0030】
ガルバニック分離層の層厚は、好ましくは1μmから200μm、かつ特に好ましくは5μmから80μmである。ガルバニック分離層の比誘電率は、好ましくは1.5から10、かつ特に好ましくは2から6の範囲にある。ガルバニック分離層の短絡を回避するための破壊強度は、好ましくは1kV/mmよりも大きく、かつ特に好ましくは10kV/mmよりも大きい。
【0031】
結合素子の導電体は、導電性炭素、共役ポリマー、導電性プライマー、タングステン、銅、銀、金、アルミニウム、および/またはそれの混合物を含むことが好ましい。
【0032】
本発明のもう1つの好ましい環境では、結合素子は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、またはポリメチルメチルアクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、エチレン酢酸ビニル、またはポリビニルブチラール、ならびにそれらの共重合体、および/またはそれの混合物を含む、導電体の上の追加の保護層を有する。導電体は、保護層によって環境から保護される。アンテナ能力、および特に結合素子を有する本発明によるガラス板の化学的および機械的安定性は、保護層によって増大される。
【0033】
本発明の目的は、導電性構造体を有する本発明によるガラス板の製造方法によってさらに達成され、第1のステップでは、互いにガルバニック分離された少なくとも2つの導電性構造体を有するガラス板が被覆される。第2のステップでは、ガルバニック分離層が、導電性構造体のうちの少なくとも1つの上に付着される。第3のステップでは、導電体が、ガルバニック分離層の上に付着される。
【0034】
本発明による方法のさらなる好ましい実施形態では、ガルバニック分離層、ならびに少なくとも1つの容量結合素子、および特に好ましくは少なくとも2つの容量結合素子の導電体が、少なくとも1つの導電性構造体の上に印刷され、またはフィルム複合体として接着される。
【0035】
本発明による方法の好ましい実施形態では、導電性構造体の付着の前に、追加の中間層が、好ましくはシルクスクリーンプロセスにおいてガラス板の上に付着される。
【0036】
本方法の好ましい実施形態では、ガルバニック分離層および導電体は、導電性構造体でのフィルム複合体の結合素子として接着される。フィルム複合体は、自己接着性であることが特に好ましい。本明細書では、「自己接着性」とは、結合素子が、ガルバニック分離層の接着作用によって導電性構造体に、かつ/または基板ガラスに恒久的に接合されることを意味する。
【0037】
本方法のもう1つの好ましい実施形態では、ガルバニック分離層は、導電性構造体の上にシルクスクリーンプロセスにおいて印刷される。次いで、導電体が、好ましくはシルクスクリーンプロセスにおいてガルバニック分離層に付着される。
【0038】
本発明は、例示的な実施形態を参照して詳細に説明され、添付の図が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】容量結合の領域での、本発明によるガラス板を通る断面図である。
【図2】容量結合の領域での、横断面による他の実施形態の図である。
【図3】容量結合の領域での、横断面によるもう1つの他の実施形態の図である。
【図4】容量結合の領域での、横断面によるもう1つの他の実施形態の図である。
【図5】容量結合の領域での、横断面によるもう1つの他の実施形態の図である。
【図6】容量結合の領域での、横断面によるもう1つの他の実施形態の図である。
【図7】本発明によるガラス板の平面図である。
【図8】本発明によるガラス板の他の実施形態の平面図である。
【図9】本発明によるガラス板の他の実施形態の平面図である。
【図10】フローチャートによる、本発明による方法のステップの例示的な実施形態である。
【図11】フローチャートによる、本発明による方法のステップの他の例示的な実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、ガラス板(1)上の2つの導電性構造体(2a、2b)の容量結合の領域での、本発明による断面図を示している。ガルバニック分離層(5)は、導電性構造体(2a、2b)から導電体(4)を分離する。導電体(4)は、厚さが100μmの1つの導電性プライマー層から成り、全幅にわたって導電性構造体(2a)および(2b)のバスバーを覆うように、ガルバニック分離層(5)の上に30mmの幅および100mmの長さで付着された。ガルバニック分離層(5)として、ガラスフリットおよび黒色顔料を有する厚さが100μmのエナメルプリントが使用され、これは、直接的な電気接触を生じることなく、導電体(2a)および(2b)ならびに導電体(4)を恒久的に接合した。ガルバニック分離層(5)は、少なくとも10kV/mmの破壊強度を有した。導電体(4)と導電性構造体(2a、2b)との間の距離(D)は、おおよそ70μmであった。ガルバニック分離層(5)の比誘電率は、おおよそ6であった。この実施形態では、導電性構造体(2a)と導電性構造体(2b)との間のさらに改善された容量結合を得ることができた。利用できる面積が同じ場合、同時に最適化された加熱特性を有するアンテナとして電気構造体(2a)、(2b)の受信性能を改善することができた。
【0041】
図2は、2つの導電性構造体(2a、2b)の容量結合素子(3)の領域での、本発明によるもう1つの断面図を示しており、図1の実施形態は、装飾目的のために追加の中間層(7)によって向上された。中間層(7)は、ガラス板(1)にフレームの形で端縁領域に付着され、ガラスフリットおよび黒色顔料を有する100μmのエナメルプリントを含んでいた。
【0042】
図3は、2つの導電性構造体(2a、2b)の容量結合素子(3)の領域での、本発明による他の断面図を示している。結合素子(3)は、導電体(4)として厚さがおおよそ45μmの銅ストリップを含んでいた。銅ストリップの幅は、25mmであった。導電体(4)は、幅が導電性構造体(2a、2b)と面一に終了した。導電体(4)と導電性構造体(2a、2b)との間のガルバニック分離層(5)として、3の比誘電率を有する、厚さがおおよそ60μmのシリコンベースの接着剤層が付着された。導電性構造体(2a)および(2b)と導電体(4)との間の距離(D)は、おおよそ60μmであった。破壊強度は、少なくとも10kV/mmであった。環境影響、特に湿気に対する導電体(4)のための保護層(6)として、厚さがおおよそ100μmのポリエチレンナフタレート層が、導電体(4)の上に追加的に付着された。ガルバニック分離層(5)および保護層(6)の幅は、40mmであった。ガルバニック分離層(5)と一緒に保護層(6)は、導電体(4)を完全に覆った。
【0043】
図4は、ガラス板(1)上の2つの導電性構造体(2a、2b)の容量結合素子(3)での、本発明によるもう1つの構成を示している。接着剤層の構成についての要求を低減するために、ガルバニック分離層(5)は、2つの層でできていた。導電性構造体(2a、2b)に隣接する下部分離層(5−1)は、30μmの層厚および3の比誘電率を有するシリコン接着剤を含んでいた。導電体(4)に隣接する上部分離層(5−2)は、4の比誘電率および30μmの層厚を有するポリアクリレート接着剤を含んでいた。2層構成(5−1、5−2)を使って、結合素子(3)と導電性構造体(2a、2b)との間のキャパシタンスは、変化しない距離(D)、および図3の例示的な実施形態に比べて相当の接着作用によって増加されることができた。
【0044】
図5は、ガラス板(1)上の2つの導電性構造体(2a、2b)の容量結合の領域での、他の構成を示している。いかなるガルバニック分離層(5)も、導電性構造体(2b)の上に付着されない。導電体(4)が、導電性構造体(2b)にガルバニック接続された。導電体(4)は、他の導電性構造体(2a)からガルバニック分離され、それによって、導電性構造体(2a、2b)全体も、やはり互いにガルバニック分離された。この実施形態では、導電性構造体(2a)と導電性構造体(2b)との間の改善された容量結合を得ることができた。同じ面積の場合には、同時に先行技術に比べて最適化された加熱特性を有するアンテナとして電気構造体(2a、2b)の受信性能を実質的に改善することができた。
【0045】
図6は、断面図による、本発明のもう1つの実施形態を示している。結合素子(3)の長さおよび幅は、結合素子(3)の領域において導電性構造体(2a、2b)の外側輪郭に正確に適応していた。例示的な実施形態では、結合素子(3)は、25mmの幅を有し、導電性構造体(2a、2b)の外側輪郭と面一に終了することができた。この実施形態の場合には、容量結合について低減された材料要求および空間要求を得ることができた。
【0046】
図7は、平面図による、本発明による例示的な実施形態を示している。ガラス板(1)の内表面上に、加熱およびアンテナ能力を有する第1の導電性構造体(2a)、およびメアンダの形状でアンテナ能力を有する第2の導電性構造体(2b)、ならびに容量結合素子(3)が付着された。導電性構造体(2a、2b)は、おおよそ30μmの層厚を有する銀含有スクリーンプリントによって形成された。スクリーンプリントのライン幅は、0.5mmであった。第1の導電性構造体(2a)は、幅が10mmのバスバーに平行に電気的に接続された0.5mmのライン幅を有する互いに平行に走る加熱導体を含んでいた。構造体(2a)の端縁領域では、アンテナ導体の導電性構造体(2b)の容量結合が発生した。アンテナ導体(2b)の1つの端部上で、信号が、アンテナ接続部(A)を介してさらなる処理のために転送された。アンテナ導体(2b)の幅は、0.5mm、かつ結合素子(3)の領域では10mmであった。結合素子(3)は、100mmの長さ、および30mmの幅を有し、100mmの長さまで導電性構造体(2a、2b)を覆った。導電性構造体(2a、2b)のバスバーは、ガラス板(1)の端縁で互いに平行に走る結合素子(3)の領域に印刷された。結合素子(3)の領域において、導電性構造体(2a)と導電性構造体(2b)との間の距離は5mmであった。幅については、結合素子は、それぞれの場合に両側に2.5mmだけ導電性構造体(2a、2b)を越えて延びた。
【0047】
図8は、単一ガラス板の安全ガラス(1)の上に付着された導電性構造体(2a、2b)および結合素子について、本発明による他の実施形態を示している。第1の導電性構造体(2a)は、0.5mmのライン幅および端部で幅が10mmのコンタクト領域を有するメアンダ状の加熱導体を含んでいた。第2の導電性構造体(2b)は、2つの結合素子(3)を介してアンテナ導体を形成するように導電性構造体(2a)と容量結合される0.5mmのライン幅を有する2つのライン状導体を含んでいた。加熱導体(2a)の1つの端部で、信号は、さらなる処理のためにアンテナコネクタ(A)を介して受信装置に転送された。導電性構造体(2a、2b)のライン幅は、結合素子の領域において0.5mmであった。導電性構造体(2a)と導電性構造体(2b)との間の距離は、5mmであった。
【0048】
図9は、単一ガラス板の安全ガラス(1)に付着された導電性構造体(2a、2b)および結合素子について、本発明によるもう1つの実施形態を示している。第1の導電性構造体(2a)は、幅が10mmのバスバーに平行に電気的に接続された、0.5mmのライン幅で互いに平行に走る加熱導体を含んでいた。また、第2の導電性構造体(2b)は、平行に接続された加熱導体を含んでいた。導電性構造体(2a、2b)の延長したバスバーを介して、構造体は、1つの側で結合素子(3)と容量結合された。加熱導体(2b)の1つの端部で、信号は、さらなる処理のためにアンテナコネクタ(A)を介して転送された。導電性構造体(2a、2b)のライン幅は、結合素子(3)の領域で0.5mmであった。導電性構造体(2a)と導電性構造体(2b)との間の距離は、5mmであった。
【0049】
図10および図11は、導電性構造体(2a、2b)および結合素子(3)を有するガラス板(10)を製造するための本発明による方法のステップを詳細に示している。
【0050】
図1から図9に説明された本発明の例示的な実施形態では、先行技術に比べて改善された導電性構造体(2a)と導電性構造体(2b)との間の容量結合が得られた。容量結合素子(3)を介して、導電性構造体(2a)および(2b)は、加熱電圧(DC)に関してはガルバニック分離され、アンテナ信号(高周波AC)に関しては容量結合された。ガラス板の1つの表面上で、同時に最適化された加熱特性を有するアンテナの受信性能は、先行技術に比べて明らかに改善された。
【符号の説明】
【0051】
(1)ガラス板
(2a)、(2b)導電性構造体
(3)容量結合素子
(4)導電体
(5)、(5−1)、(5−2)ガルバニック分離層
(6)保護層
(7)中間層
(A)受信装置の接続点
(D)導電体と導電性構造体との間の距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いにガルバニック分離された少なくとも2つの導電性構造体(2a、2b)を有するガラス板(1)と、
導電性構造体(2a、2b)のうちの少なくとも1つの上のガルバニック分離層(5)と、
ガルバニック分離層(5)の上の導電体(4)とを備える、導電性構造体を有するガラス板であって、
ガルバニック分離層(5)が、導電性構造体(2a、2b)のうちの少なくとも1つから導電体(4)をガルバニック分離する、ガラス板。
【請求項2】
導電体(4)が、ガルバニック分離層(5)によって導電性構造体(2a、2b)からガルバニック分離された、請求項1に記載のガラス板。
【請求項3】
導電体(4)およびガルバニック分離層(5)が、導電性構造体(2a)と導電性構造体(2b)との間の容量結合素子(3)である、請求項1または2に記載のガラス板。
【請求項4】
少なくとも1つの容量結合素子(3)が、少なくとも1つの導電性構造体(2a、2b)の上に付着される、請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス板。
【請求項5】
ガルバニック分離層(5)が、2から6の比誘電率を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のガラス板。
【請求項6】
ガルバニック分離層(5)が、少なくとも2つの層(5−1、5−2)を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のガラス板。
【請求項7】
導電体(4)が、10μmから200μmの層厚を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のガラス板。
【請求項8】
導電性構造体(2a、2b)が、容量結合素子の領域において櫛状に、または互いにメッシュ状に、メアンダ状に構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載のガラス板。
【請求項9】
導電性構造体(2a、2b)が、10μmから100μmの層厚を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のガラス板。
【請求項10】
導電層を有するガラス板を製造する方法であって、
a.互いにガルバニック分離された少なくとも2つの導電性構造体(2a、2b)を有するガラス板(1)が被覆され、
b.導電性構造体(2a、2b)のうちの少なくとも1つの上に、少なくとも1つのガルバニック分離層(5)が付着され、
c.少なくとも1つの導電体(4)が、ガルバニック分離層(5)の上に付着される、方法。
【請求項11】
中間層(7)が、ガラス板(1)に追加として付着される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ガルバニック分離層(5)および導電体(4)が、少なくとも1つの導電性構造体(2a、2b)の上の容量結合素子(3)に付着される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの容量結合素子(3)が、少なくとも1つの導電性構造体(2a、2b)の上のフィルム複合体に接着される、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ガルバニック分離層(5)および/または導電体(4)が、スクリーン印刷、凸版印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷によって、またはドクターブレーディングによって付着される、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
アンテナおよび加熱能力を有する自動車グレージングとして、請求項1から9のいずれか一項に記載のアンテナ能力を有するガラス板の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−502122(P2013−502122A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524186(P2012−524186)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061105
【国際公開番号】WO2011/018361
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】