説明

導電性炭化水素流体

当該公表は、8〜16個の炭素の平均鎖長を有する脂肪族炭化水素成分と、約0.0001wt%〜約50.0wt%のルイス活性成分とを含む加工流体に向けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本公表は、一般に、導電性炭化水素流体に関する。
【背景技術】
【0002】
製造業者は、複雑な部品を製造するために、そして特に、電子部品を製造するために、新しい(exotic)金属及びセラミックスを探索している。この点では、金属、例えば、イリジウム、マンガン、コバルト及び白金が、磁気記憶装置の読み書きヘッド等の部品を形成する上で有用である。
【0003】
上記部品は、ラッピング、研削、研磨及び清浄等の皇帝を用いて形成されることが多い。これらの方法は、部品表面から熱及び切り屑を移動させるための流体を用いるのが典型的である。しかし、典型的な加工流体は水系であり、そして金属及びセラミックスから形成される部品表面の腐食及び望ましくない酸化をもたらす場合がある。
腐食及び酸化を防ぐために、製造者は、炭化水素系流体配合物を探索している。しかし、典型的な炭化水素配合物は、導電性が低く、そして形成されるべき物品に静電気の蓄積をもたらす場合がある。上記物品中で静電気が放電すると、ダメージを受けた部品が生ずるか、又は表面及び品質が乏しい部品を生ずる場合がある。典型的には、ダメージを受け、そして実効性の乏しい部品は捨てられるのが一般的であり、高い製造コストがもたらされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上より、改良された加工流体及び部品を生成させる方法が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
特定の実施形態では、当該公表は、8〜16個の炭素の平均鎖長を有する脂肪族炭化水素成分と、約0.0001wt%〜約50.0wt%のルイス活性成分とを含む加工流体に向けられている。
別の例示的な実施形態では、当該公表は、少なくとも約50.0wt%の非極性炭化水素成分と、約1.0wt%以下の水とを含むラッピング流体に向けられている。上記ラッピング流体は、少なくとも約10nS/mのコンダクタンスを有する。
【0006】
さらに例示的な実施形態では、当該公表は、約0.7〜約0.9の比重と、少なくとも約10nS/mの導電率とを有するラッピング流体に向けられている。
当該公表はまた、物品を形成する方法に向けられている。上記方法には、加工ツールの加工表面を、物品の表面のある位置と接触させる段階、そして上記物品の表面を上記加工ツールの上記加工表面と接触させながら、加工流体を上記位置に供給する段階が含まれる。上記加工流体は、約0.7〜約0.9の比重と、少なくとも約10nS/mの導電率とを有する。上記方法は、加工された物品の表面を清浄することをさらに含む。
【0007】
さらに、当該公表は、少なくとも約50.0wt%の脂肪族炭化水素成分と、約1.0wt%〜約25.0wt%のグリコールエーテル成分と、約0.005wt%〜約5.0wt%のイオン性ポリマー成分と、約0.1wt%〜約5.0wt%のカルボン酸官能性成分とを含む加工流体に向けられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
特定の実施形態では、炭化水素成分及びルイス活性成分を含む加工流体が提供される。上記加工流体の例示的な実施形態は、1種超のルイス活性成分を含むことができ、そして特に、上記加工流体は、少なくとも1種のルイス酸及び少なくとも1種のルイス塩基を含むことができる。さらに、上記加工流体は、極性成分、例えば、グリコールエーテル成分を含むことができる。上記加工流体はまた、研磨微粒子を含むことができる。上記加工流体の特定の実施形態は、ラッピング流体又は清浄液として用いられうる。
【0009】
例示的な実施形態では、上記加工流体には、炭化水素成分が含まれる。一つの例では、上記炭化水素成分は、極性炭化水素成分、例えば、グリコール成分であることができる。あるいは、上記炭化水素成分は、非極性炭化水素成分、例えば、脂肪族炭化水素成分である。上記脂肪族炭化水素成分は、少なくとも8個の炭素を含むことができる。例えば、上記脂肪族炭化水素成分は、8〜16個の炭素、例えば、10〜14個の炭素又は10〜12個の炭素を含むことができる。一つの例では、上記脂肪族炭化水素成分は、8〜16個の炭素の平均値、例えば、10〜14個の炭素の平均値又は10〜12個の炭素の平均値を有する脂肪族炭化水素のブレンドである。あるいは、上記脂肪族炭化水素成分は、8〜16個の炭素、例えば、10〜14個の炭素又は10〜12個の炭素の鎖長を有する単一の脂肪族炭化水素から本質的に成る。上記脂肪族炭化水素成分は、直鎖の炭化水素成分でありうる。一般に、上記脂肪族炭化水素成分は、ルイス活性官能基を含まない直鎖又は分岐鎖の分子である。
【0010】
例示的な実施形態では、上記加工流体は、上記加工流体の総重量に基づいて、少なくとも約50.0wt%の脂肪族炭化水素成分を含む。例えば、上記加工流体は、約50.0wt%〜約99.5wt%、例えば、約65.0wt%〜約95.0wt%の脂肪族炭化水素成分を含むことができる。上記加工流体の特定の実施形態には、約80.0wt%〜約90.0wt%の脂肪族炭化水素成分が含まれる。
【0011】
上記ルイス活性成分の例示的な実施形態は、ルイス酸及びルイス塩基を含み、そして特に、ルイス活性官能基、例えば、ルイス酸として働くことができる官能基又は、ルイス塩基として働くことができる官能基を有する有機成分を含む。一般に、ルイス活性官能基は、電子対を受け入れる(すなわち、ルイス酸)、又は電子対を供与する(すなわち、ルイス塩基)ように構成される。ルイス活性成分は、例えば、ブレンステッド−ラウリ酸若しくは塩基又はアレニウス酸若しくは塩基であることができる。例えば、ルイス活性成分は、ブレンステッド−ラウリ活性成分、例えば、ブレンステッド−ラウリ酸又はブレンステッド−ラウリ塩基であることができる。特に、ブレンステッド−ラウリ酸は、例えば、有機カルボン酸であることができ、そしてブレンステッド−ラウリ塩基は、例えば、アミン官能基を有する有機成分であることができる。
【0012】
例示的な実施形態では、上記ルイス活性成分は、ルイス活性官能基を有する有機成分である。上記有機成分は、カルボン酸、アミン、イミダゾール、イミダゾリン、ホスフェート、ホスホネート、スルフェート、スルホネート、アルケン、及びそれらの関連する塩から成る群から選択される官能基を有することができる。ルイス活性成分の特定の実施形態には、イオン性官能基、例えば、カルボン酸、アミン、ホスフェート、ホスホネート、スルホネート、又はスルホネート官能基が含まれる。
【0013】
特定の実施形態では、上記ルイス活性成分がルイス酸又はルイス塩基であるかにもよるが、上記ルイス活性成分は、25℃で、それぞれ、14.0以下のpKa又はpKb値を示す。例えば、ルイス酸成分は、25℃で、約0.0以上及び14.0以下、例えば、12.0以下、11.0以下、又は10.0以下のpKaを有することができる。上記ルイス酸成分が、ブレンステッド−ラウリ酸として行動する場合には、pKaは、酸の解離定数Kaの対数のマイナス(すなわち、pKa=−logKa)である。対照的に、官能基、例えば、アルコール及びメチレンは、典型的には、ルイス酸官能性成分ではない。というのは、それらは、14.0超のpKa値を有するからである。別の例では、ルイス塩基成分は、25℃で、約0.0以上及び14.0以下、例えば、12.0以下、11.0以下、又は10.0以下のpKbを有することができる。
【0014】
上記ルイス塩基成分が、ブレンステッド−ラウリ塩基として行動する場合、解離定数は、例えば、反応B+H2O←→BH++OH-に従って共役酸から誘導することができる。pKbは、例えば、pKb=pKwater−pKa(式中、pKwaterは、25℃で14.0である)から計算される。対照的に、官能基、例えば、アミド、エーテル及びケトンは、ルイス塩基官能性成分としてみなされない。というのは、それらは、14.0超のpKb値を有するからである。しかし、上記官能基を含む成分は、それらが少なくとも1種のルイス活性官能基、例えば、カルボン酸、アミン、イミダゾール、イミダゾリン、ホスフェート、ホスホネート、スルフェート、スルホネート、又はそれらの関連する塩を含む場合には、ルイス活性成分としてみなされる。さらなる例では、上記ルイス活性成分は、一種超のルイス活性官能基を有する有機成分でありうる。
【0015】
例示的なルイス活性成分は、カルボン酸官能基を有する有機成分であることができ、そして特に、少なくとも6個の炭素を有するカルボキシル基官能性有機成分、例えば、オクタン酸、9−オクタデカン酸、安息香酸、又はポリアクリル酸であることができる。アミン官能基を含む例示的な有機成分は、1−アミノヘキサン、N−ヘキシルヘキシルアミン、1−アミノ−2−プロパノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン又はポリビニルアミンであることができる。例示的なイミダゾリン官能性有機成分は、1−ヒドロキシエチル−2−オクチルイミダゾリンであることができ、そして例示的なイミダゾール成分は、2−メチルイミダゾールであることができる。
【0016】
例示的なホスフェート及びホスホネート成分には、アルキルホスフェート酸エステル、リン酸ジデシルエステル、デシルホスホン酸デシルエステル、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)(ATMP)、N−(2−ヒドロキシエチル)−N、N−ジ(メチレンホスホン酸)(HEMPA)、又は2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸(PBTC)が含まれる。ホスフェート及びホスホネート官能性有機成分の特定の実施形態は、少なくとも6個の炭素を含むことができる。特に、上記ルイス活性成分は、アルキルホスフェート酸エステル官能基及び少なくとも6個の炭素を有する分子を含むことができる。スルホネート官能基を有する有機成分は、少なくとも6個の炭素、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ジノニルナフチルスルホン酸、又はスルホン化ポリアクリル酸を含むことができる。
【0017】
例示的な実施形態では、上記ルイス活性成分は、1又は2以上のルイス活性官能基を有するポリマー、例えば、電子電荷を運搬することができる繰り返しの炭素−炭素二重結合を有する炭素主鎖を有するポリマー又はイオン性ポリマーである。一つの例では、イオン性ポリマーは、窒素含有ルイス活性官能基、酸素含有ルイス活性官能基又は硫黄含有ルイス活性官能基等の官能基を含む。ルイス活性ポリマーの特定の実施形態は、酸素、窒素、硫黄又はそれらの組み合わせを含むルイス活性官能基を有するモノマーのポリマー、ポリマーブレンド又はコポリマーであることができる。あるいは、上記ポリマーを、変性又は処理して、ルイス活性サイトを生成させることができる。例示的な実施形態では、上記ポリマーは、ポリアクリル酸、ポリアルケン、ポリビニルアミン又はスルホン化ポリアクリル酸である。ルイス活性ポリマーの特定の実施形態は、Octel Performance Chemicals,Chesire,UKから入手可能なOctastat(商標)製品、例えば、Octastat(商標)2000、Octastat(商標)3000、又はOctastat(商標)4065に見出される。
【0018】
上記有機成分の別の例示的な実施形態は、少なくとも1種のルイス活性官能基、例えば、オクタン酸、9−オクタデカン酸、安息香酸、ポリアクリル酸、ポリジアセチレン、2−アミノヘキサデカン酸、1−アミノヘキサン、N−ヘキシルヘキシルアミン、1−アミノ−2−プロパノール、ポリビニルアミン、トリエタノールアミン、1−ヒドロキシエチル−2−オクチルイミダゾリン、2−メチルイミダゾール、リン酸ジデシルエステル、デシルホスホン酸デシルエステル、ドデシルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ジノニルナフチルスルホン酸、スルホン化ポリアクリル酸、グリセリンモノオレエート、又はそれらの塩を有する成分であることができる。
【0019】
例示的な実施形態では、上記加工流体は、少なくとも1種のルイス酸及び少なくとも1種のルイス塩基を含む。例えば、上記加工流体は、カルボン酸官能基を有する有機成分と、アミン官能基を有する有機成分とを含むことができる。別の例示的な実施形態では、上記加工流体は、ポリマーのブレンド(一方のポリマーがルイス酸官能基を有し、そして他方のポリマーがルイス塩基官能基を有する)を含むことができる。さらなる例では、上記加工流体は、ルイス塩基官能基を有するポリマーと、ルイス酸官能基を含む有機成分とを含むことができる。特定の実施形態では、上記加工流体は、ルイス酸成分及びルイス塩基成分から形成される有機塩を含むことができる。さらに、例示的な加工流体は、アレニウス酸及びアレニウス塩基を含むことができるか、又はブレンステッド−ラウリ酸及びブレンステッド−ラウリ塩基を含むことができる。
【0020】
上記ルイス活性成分は、上記加工流体の総重量に基づいて、上記加工流体の約0.0001wt%〜約50.0wt%を形成することができる。例えば、上記加工流体は、約0.005wt%〜約10.0wt%のルイス活性成分、例えば、約0.01wt%〜約5.0wt%のルイス活性成分を含むことができる。
【0021】
上記加工流体は、極性有機成分をさらに含むことができる。特定の極性成分は、ルイス活性有機成分の混和性を改良し、そして上記加工流体混合物の安定性及び均質性を改良することができる。上記極性成分の例示的な実施形態には、アミド、アルコール、エーテル、又はジアルキルスルフィド官能基が含まれる。例えば、上記極性成分は、アルコール官能基又はエーテル官能基を有し、且つ少なくとも6個の炭素を有する有機成分であることができる。別の例では、上記極性成分は、少なくとも6個の炭素を有する有機グリコールエーテル成分である。例示的な極性成分は、2−エチル−1−ヘキサノール、2−ブトキシエタノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、2−デシルチオールエタノール、ノニルフェノールペンタグリコールエーテル、オクタデセノールテトラグリコールエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、大豆(soya)アミド、エトキシ化オクチルフェノール、又はエトキシ化ノニルフェノールであることができる。特定の実施形態では、上記極性有機成分は、25℃で14超であるpKa又はpKb値を有する。
【0022】
例示的な実施形態では、上記加工流体は、上記加工流体の総重量に基づいて、約0.1wt%〜約50.0wt%の極性成分を含む。例えば、上記加工流体は、約1.0wt%〜約25.0wt%の極性成分、例えば、約1.0wt%〜約15.0wt%の極性成分、又は約1.0wt%〜約8.0wt%の極性成分を含むことができる。
【0023】
上記加工流体の特定の実施形態は、固定砥粒方法(fixed abrasive process)に有用でありうる。あるいは、上記加工流体を、遊離砥粒方法(free abrasive process)のために構成させることができ、そしてそれ自体は、研磨微粒子を含むことができる。例えば、上記加工流体は、上記加工流体の約0.05wt%〜約5.0wt%の量で、研磨微粒子を含むことができる。一つの例では、上記加工流体は、約0.1wt%〜約1.0wt%の研磨微粒子を含むことができる。例示的な実施形態では、上記研磨微粒子は、約10nm〜約500nm、例えば、約50nm〜約200nm、又は約50nm〜約100nmの平均粒子サイズを有する。例示的な研磨微粒子は、ダイアモンド微粒子又はコーティングされたダイアモンド微粒子、例えば、非晶質炭素がコーティングされたダイアモンド微粒子であることができる。別の例示的な研磨微粒子には、セラミック、例えば、炭化物、窒化物、又は酸化物セラミックが含まれる。例示的な炭化物セラミックには、炭化ケイ素又は炭化ホウ素が含まれる。例示的な窒化物には、窒化ケイ素又は窒化ホウ素が含まれ、そして例示的な酸化物には、アルミナ、シリカ、セリア又はジルコニアが含まれる。いくつかの実施形態では、上記研磨微粒子、例えば、ダイアモンド微粒子は、導電率を下げる。上記のように、研磨微粒子の量は、特定の量のルイス活性成分を有する流体の導電率に影響を与える場合がある。
【0024】
上記加工流体は、炭化水素系であり、そして典型的には、約10.0wt%以下の水を含む。例えば、上記加工流体は、約5.5wt%以下の水、例えば、約1.0wt%以下の水を含むことができる。上記加工流体の例示的な実施形態には、約1.0wt%未満の水、例えば、約0.5wt%以下の水が含まれる。特定の実施形態では、上記加工流体は、当該加工流体又はその成分により吸湿的に(hygroscopically)吸収されるものを超えた、追加の水を含まない。
【0025】
例示的な実施形態では、上記加工流体は、少なくとも約50wt%の脂肪族炭化水素成分、約1.0wt%〜約25.0wt%の極性成分、例えば、グリコールエーテル、約0.005wt%〜約5.0wt%のイオン性ポリマー成分、及び約0.1wt%〜約5.0wt%のカルボン酸官能性成分を含む。例示的な加工流体は、約1.0wt%以下の水を含むことができる。さらに、例示的な加工流体は、0.1wt%〜約5.0wt%の研磨微粒子を含むことができる。
【0026】
別の例示的な実施形態では、上記加工流体は、約65wt%〜約95wt%の脂肪族炭化水素、約1.0wt%〜約15.0wt%の極性成分(例えば、グリコールエーテル)、約0.05wt%〜約5.0wt%のカルボン酸官能性成分、約0.05wt%〜約5.0wt%の脂肪酸アミド、及び約0.05wt%〜約5.0wt%のイミダゾリンを含む。例示的な加工流体は、約10.0wt%以下の水、例えば、約5.5wt%以下の水を含むことができる。
【0027】
さらに例示的な実施形態では、上記加工流体は、約50wt%〜約99.9wt%のエチレングリコール、約0.01wt%〜約5.0wt%のカルボン酸官能性成分、約0.01wt%〜約5.0wt%のトリアゾール成分、約0.01wt%〜約10.0wt%のアミン官能性成分、及び約0.1wt%〜約5.0wt%の極性成分を含む。
【0028】
上記加工流体は、静電気拡散特性を一般的に有する。例示的な実施形態では、上記加工流体は、少なくとも約10pS/m、例えば、少なくとも約100pS/m、又は少なくとも約1.0pS/mの導電率を示す。特定の実施形態では、上記加工流体は、少なくとも約10nS/mの導電率を示す。例えば、上記加工流体は、少なくとも約50nS/m、例えば、少なくとも約100nS/mの導電率を示すことができる。
【0029】
さらに、上記加工流体は、ラッピング、切断、研磨又は清浄等の工程において、上記加工流体を使用するために助けとなる特性(例えば、粘性率、表面張力、潤滑性及び比重)を有することができる。例示的な実施形態では、上記加工流体は、約0.5cp〜約5cpのキャノン(Cannon)粘性率を示す。例えば、上記加工流体は、約1.0cp〜約1.6cpのキャノン粘性率を有することができる。さらに例示的な実施形態では、上記加工流体は、約10ダイン/cm〜約35.0ダイン/cmの表面張力を示す。例えば、上記加工流体は、約20.0ダイン/cm〜約25.0ダイン/cmの表面張力を有することができる。概して、上記加工流体は、約0.7〜約0.9の比重を有する。例えば、上記加工流体は、約0.75〜約0.77の比重を有することができる。
【0030】
上記流体は、例えば、物品を機械加工する方法において用いられうる。例えば、上記流体を、機械加工工程、例えば、磨砕工程、ラッピング工程若しくは研磨工程に用いることができるか、又は清浄工程に用いることができる。一つの例では、上記機械加工工程は、研磨を含む。特定の例では、上記機械加工工程には、ラッピングが含まれる。例示的な実施形態では、上記方法は、加工ツールの加工表面を、物品の表面のある位置に接触させることを含む。例えば、加工ツールは、製造される部品(電子部品等)に形成されるべき物品の表面上の範囲に、圧力をかけることができる。特定の例では、上記加工ツールは、ラッピングツールである。上記加工ツールを上記物品の表面と接触させるか又は極めて近接させて、加工流体を上記位置に適用する。
【0031】
例示的な実施形態では、上記加工流体は、約0.7〜約0.9の比重と、少なくとも約10nS/mの導電率とを有する。固定研磨方法では、上記加工ツールは、固定された研磨面(fixed abrasive surface)を含むことができる。遊離砥粒方法では、上記加工流体は、研磨微粒子、例えば、ダイアモンド微粒子を含むことができる。
当該方法は、加工された物品の表面を清浄することをさらに含むことができる。例えば、研磨微粒子のない第二の流体又は加工流体を用いて、手間がかかる切り屑、切断物(cutting)、及び研磨粒子を取り除くことができる。
【0032】
開示された流体の特定の実施形態は、加工の際に部品に蓄積される静電荷を防ぐために有用な導電率を有する。さらに、開示された流体の特定の実施形態は、例えば、ラッピング及び研磨等の方法において用いられる流体のために望ましい物理的性質(例えば、粘性率及び比重)を有し、そして上記方法において改良された除去速度を規定する。上述のように、上記加工流体の特定の実施形態を用いた方法により製造された部品は、表面特性が改良され、腐食が減り、電気性能安定性が改良され、そして望ましい電気的応答を示す。
【実施例】
【0033】
例示的な加工流体組成物のために、要求される導電率値を準備した。上記導電率値を、導電率計、例えば、Emcee Electronics model 1152導電率計又はOrion model 162A導電率計を用いて、例えば、一般的な条件(すなわち、25℃)において測定することができる。いくつかの例では、加工流体導電率を、ルイス活性成分を含まない組成物と比較した。
【0034】
例1
この例では、89.95wt%の非極性脂肪族炭化水素成分と、9.0wt%のジプロピレングリコールモノブチルエーテル(グリコールエーテルDPMB)と、0.05wt%のOctastat4065と、1.0wt%の9−オクタデカン酸とを含む加工液体を調製した。例示的な加工流体は、0.767の比重(20℃)、23.3ダイン/cmの表面張力(20℃)、及び1.38cPのキャノン粘性率(25℃)を有していた。上記加工流体は、0.05wt%以下の水を含んでいた。
【0035】
上記例示的な加工流体は、118nS/m±16nS/mの導電率を有していた。対照的に、90.0wt%の非極性脂肪族炭化水素と、10.0wt%のグリコールエーテルDPMBとを含む組成物は、導電率計の感度未満の導電率を有していた。
【0036】
例2
別の例では、75.9wt%の非極性脂肪族炭化水素成分と、12.2wt%のエチレングリコールモノヘキシルエーテル(エチレングリコールEH)と、2.6wt%のオクタン酸と、0.5wt%の大豆アミドと、3.8wt%の1−ヒドロキシエチル−2−オクチルイミダゾリンと、5.0wt%の水とを含む加工流体を調製した。
【0037】
当該例示的な加工流体は、2.44×106nS/mの導電率を有していた。対照的に、86.2wt%の脂肪族炭化水素と、13.8wt%のグリコールエーテルEHとを含む組成物は、導電率計の感度未満の導電率を有していた。
【0038】
例3
さらなる例では、96.7wt%のエチレングリコールと、0.1wt%の安息香酸と、0.1wt%のベンゾトリアゾールと、3.0wt%のトリエタノールアミンと、0.1wt%のエトキシ化オクチルフェノールとを含む加工流体を調製した。上記例示的な加工流体は、3.616×103μS/mの導電率を有していた。
【0039】
例4
別の例では、例1の加工流体99.201wt%及び0.12μmの加熱処理されたダイアモンド粒子0.799wt%を含む加工流体を調製した。調製の際、当該混合物を超音波処理し、そして30分間混合した。当該例示的な加工流体は、0.767の比重(20℃)、23.3ダイン/cmの表面張力(20℃)、及び1.38cPのキャノン粘性率(25℃)を有していた。上記例示的な加工流体は、0.1wt%以下の水を有し、そして60nS/m±10nS/mの導電率を有していた。
【0040】
例5
さらなる例では、例1の加工流体99.085wt%と、0.05μmの加熱処理されたダイアモンド粒子0.915wt%とを含む加工流体を調製した。調製の際、当該混合物を超音波処理し、そして30分間混合した。当該例示的な加工流体は、0.767の比重(20℃)、23.3ダイン/cmの表面張力(20℃)、及び1.38cPのキャノン粘性率(25℃)を有していた。上記例示的な加工流体は、0.1wt%以下の水を有し、そして65nS/m±10nS/mの導電率を有していた。
【0041】
本発明を具体的に説明し、そして特定の実施形態の状況において記載してきたが、開示された項目に限定されることを意図するものではない。というのは、種々の改良及び置換を、本発明の範囲から外れることなくすることができるからである。例えば、追加又は同等の置換物を提供することができ、そして追加又は同等の製造段階を用いることができる。上述のように、本明細書に開示される本発明のさらなる改良物及び均等物は、慣例以下の実験を用いて当業者がなすことができ、そしてすべての上記改良物及び均等物は、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲内となると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
8〜16個の炭素の平均鎖長を有する脂肪族炭化水素成分と、約0.0001wt%〜約50.0wt%のルイス活性成分とを含む加工流体。
【請求項2】
前記脂肪族炭化水素が、前記加工流体の約50.0wt%〜約99.95wt%を形成する、請求項1に記載の加工流体。
【請求項3】
前記ルイス活性成分が、前記加工流体の約0.005wt%〜約10.0wt%を形成する、請求項1に記載の加工流体。
【請求項4】
前記ルイス活性成分がルイス酸を含む、請求項1に記載の加工流体。
【請求項5】
第二のルイス活性成分をさらに含み、
前記ルイス活性成分が、ルイス酸及びルイス塩基の一方を形成し、そして前記第二のルイス活性成分が、他方のルイス酸及びルイス塩基を形成する、請求項1に記載の加工流体。
【請求項6】
前記ルイス活性成分が、カルボン酸、アミン、イミダゾール、イミダゾリン、ホスフェート、ホスホネート、スルフェート、スルホネート、ポリアルケン及びそれらの塩から成る群から選択される官能基を含む、請求項1に記載の加工流体。
【請求項7】
研磨微粒子をさらに含む、請求項1に記載の加工流体。
【請求項8】
前記研磨微粒子がダイアモンド微粒子を含む、請求項7に記載の加工流体。
【請求項9】
前記研磨微粒子が、約50nm〜約200nmの平均粒子サイズを有する、請求項7に記載の加工流体。
【請求項10】
前記加工流体が少なくとも約10nS/mの導電率を有する、請求項1に記載の加工流体。
【請求項11】
前記加工流体が約0.7〜約0.9の比重を有する、請求項1に記載の加工流体。
【請求項12】
前記比重が約0.75〜約0.77である、請求項11に記載の加工流体。
【請求項13】
約0.1wt%〜約50.0wt%の極性有機成分をさらに含む、請求項1に記載の加工流体。
【請求項14】
前記極性有機成分が、アルコール、アミド、エーテル及びジアルキルスルフィドから成る群から選択される、請求項13に記載の加工流体。
【請求項15】
少なくとも約50.0wt%の非極性炭化水素成分及び約1.0wt%以下の水を含み、そして少なくとも約10nS/mのコンダクタンスを有するラッピング流体。
【請求項16】
前記非極性炭化水素成分が、脂肪族炭化水素成分を含む、請求項15に記載のラッピング流体。
【請求項17】
前記脂肪族炭化水素成分が8〜16個の炭素を含む、請求項16に記載のラッピング流体。
【請求項18】
約25wt%以下の極性有機成分をさらに含む、請求項15に記載のラッピング流体。
【請求項19】
約0.01wt%〜約10.0wt%のルイス活性成分をさらに含む、請求項15に記載のラッピング流体。
【請求項20】
研磨微粒子をさらに含む、請求項15に記載のラッピング流体。
【請求項21】
少なくとも約50wt%の脂肪族炭化水素成分と、約1.0wt%〜約25.0wt%のグリコールエーテル成分と、約0.005wt%〜約5.0wt%のイオン性ポリマー成分と、約0.1wt%〜約5.0wt%のカルボン酸官能性成分とを含む加工流体。
【請求項22】
前記加工流体が約1.0wt%以下の水を含む、請求項21に記載の加工流体。
【請求項23】
研磨微粒子をさらに含む、請求項21に記載の加工流体。
【請求項24】
前記加工流体が少なくとも約10nS/mの導電率を有する、請求項21に記載の加工流体。

【公表番号】特表2009−507659(P2009−507659A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530228(P2008−530228)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/035067
【国際公開番号】WO2007/030724
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(593150863)サン−ゴバン セラミックス アンド プラスティクス,インコーポレイティド (139)
【Fターム(参考)】