説明

導電性粒子、異方性導電材料、接続構造体及び導電性粒子の製造方法

【課題】例えば、バインダー樹脂中に分散されて、電極間を接続するのに用いられた場合に、導電性粒子と電極との間のバインダー樹脂を充分に排除でき、かつ接続後に電極間の接続抵抗を低くすることができる導電性粒子を提供する。
【解決手段】基材粒子2と、該基材粒子2の表面2aに形成された導電層3とを備え、導電層3の最表面層が、銅及びベリリウムを含有する合金層であり、合金層に含まれる銅及びベリリウムの合計100重量%中のベリリウムの含有量が0.01〜4重量%の範囲内にあり、合金層100重量%中の銅の含有量が95重量%以上である、導電性粒子1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材粒子と、該基材粒子の表面に形成された導電層とを備える導電性粒子に関し、例えば、電極間の接続に使用できる導電性粒子、該導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体、並びに導電性粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム、又は異方性導電シート等の異方性導電材料が広く知られている。これらの異方性導電材料では、ペースト、インク又は樹脂中に導電性粒子が分散されている。
【0003】
異方性導電材料は、ICチップとフレキシブルプリント回路基板との接続、又はICチップとITO電極を有する回路基板との接続等に使用されている。例えば、ICチップの電極と回路基板の電極との間に異方性導電材料を配置した後、加熱及び加圧することにより、これらの電極同士を接続できる。
【0004】
上記異方性導電材料に用いられる導電性粒子の一例として、下記の特許文献1には、架橋重合体微粒子と、該架橋重合体微粒子の表面に形成された金属層とを備える導電性粒子が開示されている。
【特許文献1】特開2003−157717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、上記金属層は、銅又は銅を含む合金により形成されている。また、実施例には、上記金属層が銅により形成された導電性粒子が記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1では、上記金属層を形成するための銅を含む合金に含有される銅以外の金属は、何ら記載されていない。さらに、実施例では、上記金属層が銅を含む合金により形成された導電性粒子は記載されておらず、上記金属層が銅により形成された導電性粒子が記載されているにすぎない。
【0007】
上記金属層が実質的に銅のみにより形成されている場合、金属層の延性が比較的高く、金属層の柔軟性が高すぎることがあった。
【0008】
ところで、例えば、導電性粒子をバインダー樹脂中に分散させることにより得られた異方性導電材料を用いて電極間を接続する際には、電極間に挟まれた導電性粒子に圧縮荷重がかけられる。このとき、電極と導電性粒子との間のバインダー樹脂が排除され、電極間が導電性粒子を介して電気的に接続される。
【0009】
上記金属層が実質的に銅のみにより形成されている場合、上記圧縮荷重がかけられたときに、導電性粒子と電極との間のバインダー樹脂を充分に排除できないことがあった。さらに、接続後に、電極間の接続抵抗が高くなることがあった。
【0010】
本発明の目的は、例えば、バインダー樹脂中に分散されて、電極間を接続するのに用いられた場合に、導電性粒子と電極との間のバインダー樹脂を充分に排除でき、かつ接続後に電極間の接続抵抗を低くすることができる導電性粒子、該導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体、並びに導電性粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、基材粒子と、該基材粒子の表面に形成された導電層とを備え、前記導電層の最表面層が、銅及びベリリウムを含有する合金層であり、前記合金層に含まれる銅及びベリリウムの合計100重量%中のベリリウムの含有量が0.01〜4重量%の範囲内にあり、前記合金層100重量%中の銅の含有量が95重量%以上である、導電性粒子が提供される。
【0012】
本発明に係る導電性粒子の他の特定の局面では、前記導電層の表面に、酸化防止剤が付着している。
【0013】
本発明に係る導電性粒子のさらに他の特定の局面では、前記酸化防止剤は窒素含有化合物である。
【0014】
本発明に係る導電性粒子の別の特定の局面では、前記合金層をX線回折測定したときに、銅の(111)結晶配向面を表すピークから計算される半値幅が、0.52〜1.7°の範囲内にある。
【0015】
本発明に係る異方性導電材料は、本発明に従って構成された導電性粒子と、バインダー樹脂とを含有する。
【0016】
本発明に係る接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備え、前記接続部が本発明に従って構成された導電性粒子又は該導電性粒子とバインダー樹脂とを含有する異方性導電材料により形成されている。
【0017】
また、本発明によれば、本発明の導電性粒子の製造方法であって、ベリリウム化合物を含有する無電解銅めっき液を用いて、前記導電層の最表面層として前記銅及びベリリウムを含有する合金層を形成する、導電性粒子の製造方法が提供される。
【0018】
本発明に係る導電性粒子の製造方法のある特定の局面では、前記無電解銅めっき液は、前記ベリリウム化合物を0.1〜14g/Lの濃度で含有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る導電性粒子は、導電層の最表面層が、銅及びベリリウムを含有する合金層であり、該合金層に含まれる銅及びベリリウムの合計100重量%中のベリリウムの含有量が0.01〜4重量%の範囲内にあり、かつ上記合金層100重量%中の銅の含有量が95重量%以上であるため、例えば、バインダー樹脂中に分散されて、電極間の接続に用いられた場合に、導電性粒子と電極との間のバインダー樹脂を充分に排除できる。さらに、接続後に、電極間の接続抵抗を低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
図1に、本発明の一実施形態に係る導電性粒子の断面図を示す。
【0022】
図1に示すように、導電性粒子1は、基材粒子2と、該基材粒子2の表面2aに形成された導電層3とを備える。導電層3の表面3aには、酸化防止剤4が付着している。
【0023】
基材粒子2として、樹脂粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子又は金属粒子等が挙げられる。
【0024】
上記樹脂粒子を形成するための樹脂として、例えば、ジビニルベンゼン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、尿素樹脂、イミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂又は塩化ビニル樹脂等が挙げられる。上記無機粒子を形成するための無機物として、シリカ又はカーボンブラック等が挙げられる。上記有機無機ハイブリッド粒子として、例えば、架橋したアルコキシシリルポリマーとアクリル樹脂とにより形成された有機無機ハイブリッド粒子等が挙げられる。上記金属粒子を形成するための金属として、銀、銅、ニッケル、ケイ素、金又はチタン等が挙げられる。
【0025】
基材粒子2の平均粒子径は、1〜100μmの範囲内にあることが好ましい。基材粒子2の平均粒子径が1μmよりも小さいと、電極間の接続信頼性が低下することがある。基材粒子2の平均粒子径が100μmよりも大きいと、電極間の間隔が大きくなりすぎることがある。
【0026】
上記「平均粒子径」とは、数平均粒子径を示す。平均粒子径は、例えばコールターカウンター(ベックマンコールター社製)を用いて測定できる。
【0027】
導電性粒子1の導電層3は、1つの層により形成されている。導電層は、複数の層により形成されていてもよい。すなわち、導電層は、2層以上の積層構造を有していてもよい。
【0028】
導電層3は、銅及びベリリウムを含有する合金層である。導電層3は1つの層により形成されているため、導電層の最表面層が、銅及びベリリウムを含有する合金層により形成されている。
【0029】
導電層が1つの層により形成されている場合、導電層3全体が、銅及びベリリウムを含有する合金層により形成される。導電層が複数の層により形成されている場合、導電層の最表面層すなわち最も外側に位置する層が、銅及びベリリウムを含有する合金層により形成される。
【0030】
上記合金層に含まれる銅及びベリリウムの合計100重量%中のベリリウムの含有量は0.01〜4重量%の範囲内にある。上記合金層に含まれる銅及びベリリウムの合計100重量%中のベリリウムの含有量が0.01〜4重量%の範囲内にあることにより、導電層の最表面層が実質的に銅のみにより形成されている場合と比べて、最表面層の延性又は柔軟性を低くすることができる。このため、例えば、導電性粒子がバインダー樹脂中に分散されて、電極間の接続に用いられた場合に、導電性粒子と電極との間のバインダー樹脂を充分に排除できる。さらに、接続後に、電極間の接続抵抗を低くすることができる。上記合金層に含まれる銅及びベリリウムの合計100重量%中のベリリウムの含有量の好ましい下限は0.2重量%であり、好ましい上限は1.6重量%である。
【0031】
上記合金層に含まれる銅及びベリリウムの合計100重量%中の銅の含有量は96〜99.99重量%の範囲内にある。上記合金層に含まれる銅及びベリリウムの合計100重量%中の銅の含有量が96〜99.99重量%の範囲内にあることにより、電極間の接続抵抗を低くすることができる。上記合金層に含まれる銅及びベリリウムの合計100重量%中の銅の含有量の好ましい下限は98.4重量%であり、好ましい上限は99.8重量%である。
【0032】
上記合金層100重量%中の銅の含有量は95重量%以上である。上記合金層100重量%中の銅の含有量が95重量%以上であることにより、電極間の接続抵抗を低くすることができる。上記合金層100重量%中の銅の含有量は96重量%以上であることが好ましく、98重量%以上であることがより好ましい。なお、上記合金層には、リンやホウ素等の非金属成分が含まれることがある。
【0033】
上記合金層をX線回折測定したときに、銅の(111)結晶配向面を表すピークから計算される半値幅は、0.52〜1.7°の範囲内にあることが好ましい。この場合、上記合金層に含まれる銅合金の結晶が微細になることにより、上記合金層が硬くなるため、導電性粒子と電極との間のバインダー樹脂を排除する効果をより一層高めることができる。上記半値幅のより好ましい下限は0.56°であり、より好ましい上限は1.3°である。
【0034】
上記合金層に含まれる銅及びベリリウムの合計100重量%中のベリリウム及び銅の含有量の測定方法、並びに上記合金層100重量%中の銅の含有量の測定方法は、既知の種々の分析法を用いることができ特に限定されない。この測定方法として、原子吸光分析法又は原子スペクトル分析法等が挙げられる。上記原子吸光分析法では、フレーム原子吸光光度計又は電気加熱炉原子吸光光度計等が用いられる。上記原子スペクトル分析法として、プラズマ発光分析法又はプラズマイオン源質量分析法等が挙げられる。
【0035】
基材粒子2の表面2aに導電層3を形成する方法は特に限定されない。導電層3を形成する方法として、例えば、無電解めっき、電気めっき、又はスパッタリング等の方法が挙げられる。なかでも、基材粒子2の表面2aに導電層3を形成する方法は、無電解めっきにより形成する方法であることが好ましい。また、上記銅及びベリリウムを含有する合金層を形成する方法は、無電解めっきにより形成する方法であることが好ましい。
【0036】
無電解めっきにより形成する方法では、一般的に、触媒化工程と、無電解めっき工程とが行われる。以下、無電解めっきにより、樹脂粒子の表面に銅及びベリリウムを含有する導電層を形成する方法の一例を説明する。
【0037】
上記触媒化工程では、無電解めっきによりめっき層を形成するための起点となる触媒を、樹脂粒子の表面に形成させる。
【0038】
上記触媒を樹脂粒子の表面に形成させる方法として、例えば、塩化パラジウムと塩化スズとを含む溶液に、樹脂粒子を添加した後、酸溶液又はアルカリ溶液により樹脂粒子の表面を活性化させて、樹脂粒子の表面にパラジウムを析出させる方法、硫酸パラジウムを含有する溶液に、樹脂粒子を添加した後、還元剤を含む溶液により樹脂粒子の表面を活性化させて、樹脂粒子の表面にパラジウムを析出させる方法等が挙げられる。上記還元剤として、次亜リン酸ナトリウム又はジメチルアミンボラン等が用いられる。
【0039】
上記無電解めっき工程では、例えば、銅塩などの銅化合物及び還元剤を含有する銅めっき浴が用いられる。銅めっき浴中に樹脂粒子を浸漬することにより、触媒が表面に形成された樹脂粒子の表面に、銅を析出させることができる。上記還元剤として、次亜リン酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ホルムアルデヒド又はヒドラジン等が用いられる。
【0040】
上記銅めっき浴中にベリリウム塩などのベリリウム化合物を含有させることにより、樹脂粒子の表面に、銅及びベリリウムを含有する合金層を形成できる。無電解めっきにより形成する方法では、ベリリウム化合物を含有する無電解銅めっき液を用いることが好ましい。
【0041】
上記合金層に含まれる銅及びベリリウムの合計100重量%中のベリリウムの含有量を上記範囲内にする方法として、例えば、無電解銅めっきにより導電層を形成する際に、無電解銅めっき液中のベリリウム化合物の濃度を調整する方法等が挙げられる。
【0042】
上記ベリリウム化合物の具体例として、硫酸ベリリウム、シュウ酸ベリリウム、硝酸ベリリウム、リン酸ベリリウム、ケイ酸ベリリウム、酸化ベリリウム、酢酸ベリリウム、塩化ベリリウム又はフッ化ベリリウム等が挙げられる。上記ベリリウム化合物は、ベリリウム塩であることが好ましい。
【0043】
上記無電解銅めっき液は、ベリリウム化合物を0.1〜14g/Lの濃度で含有することが好ましい。この場合、上記合金層に含まれる銅及びベリリウムの合計100重量%中のベリリウムの含有量を上記範囲内に容易に制御できる。
【0044】
上記無電解銅めっき液は、銅化合物を含有する。該銅化合物の具体例として、硫酸銅、塩化銅、又はピロリン酸銅等が挙げられる。上記銅化合物は、銅塩であることが好ましい。
【0045】
上記無電解銅めっき液は、銅化合物を20〜60g/Lの濃度で含有することが好ましい。この場合、上記合金層に含まれる銅及びベリリウムの合計100重量%中の銅の含有量、並びに上記合金層100重量%中の銅の含有量を上記範囲内に容易に制御できる。
【0046】
上記合金層には、銅及びベリリウム以外の他の金属が含有されてもよい。該他の金属は特に限定されない。上記他の金属として、例えば、金、銀、白金、亜鉛、鉄、鉛、錫、ニッケル、ビスマス、アルミニウム、コバルト、インジウム、クロム、チタン、アンチモン、ゲルマニウム、カドミウム、ナトリウム又はパラジウム等が挙げられる。
【0047】
導電層が複数の層により形成されている場合、最表面層以外の層を形成するための金属は特に限定されない。該金属として、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、鉛、錫、ニッケル、ビスマス、アルミニウム、コバルト、インジウム、クロム、チタン、アンチモン、ゲルマニウム、カドミウム、パラジウム、錫−鉛合金、錫−銅合金、錫−銀合金又は錫−鉛−銀合金等が挙げられる。
【0048】
導電層3の厚みは、5〜500nmの範囲内にあることが好ましく、10〜400nmの範囲内にあることがより好ましい。導電層3の厚みが5nm未満であると、導電性粒子1の導電性が不足することがある。導電層3の厚みが500nmを超えると、基材粒子2と導電層3との熱膨張率の差が大きくなり、基材粒子2から導電層3が剥離しやすくなることがある。導電層が複数の層により形成されている場合、最表面層すなわち銅及びベリリウムを含有する合金層の厚みは、10〜400nmの範囲内にあることが好ましい。
【0049】
導電層3の表面3aに、酸化防止剤4が付着していることが好ましい。また、導電層3の表面3aは、酸化防止剤により表面処理されていることが好ましい。導電層3の最表面層は銅及びベリリウムを含む合金層である。該合金層は銅を含有するため、酸化しやすい。導電層3の表面3aに酸化防止剤4が付着している場合には、導電層3の表面3aの酸化を抑制できる。このため、導電性粒子1を介して接続された電極間の接続信頼性を高めることができる。
【0050】
上記酸化防止剤は特に限定されない。上記酸化防止剤として、窒素含有化合物等が挙げられる。上記窒素含有化合物として、ベンゾトリアゾール化合物、イミダゾール化合物、チアゾール化合物、トリアジン、2−メルカプトピリミジン、インドール、ピロール、アデニン、チオバルビツル酸、チオウラシル、ロダニン、チオゾリジンチオン、1−フェニル−2−テトラゾリン−5−チオン又は2−メルカプトピリジン等が挙げられる。上記酸化防止剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
上記ベンゾトリアゾール化合物として、ベンゾトリアゾール、4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、4−カルボキシ−1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5,6−ジメチル−1H−ベンゾトリアゾール又はベンゾトリアゾールブチルエステル等が挙げられる。上記イミダゾール化合物として、イミダゾール又はベンゾイミダゾール等が挙げられる。上記チアゾール化合物として、チアゾール又はベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0052】
酸化防止剤4は、窒素含有化合物であることが好ましく、ベンゾトリアゾール化合物であることがより好ましい。これらの好ましい酸化防止剤が用いられた場合、導電層3の表面3aの酸化をより一層抑制できる。
【0053】
導電層3の表面3aに酸化防止剤4を付着させるために、酸化防止剤4を含む溶液を用いてもよい。
【0054】
酸化防止剤4を含む溶液は、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤、シランカップリング剤又は金属粉末を含有してもよい。導電層3の表面3aには、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤、シランカップリング剤又は金属粉末が付着していてもよい。
【0055】
酸化防止剤4の塩素イオン濃度は5ppm以下であることが好ましい。この場合、溶出する塩素イオンが少なくなるため、電極の腐食を防止することができる。
【0056】
導電層3の表面3aに酸化防止剤4を付着させる方法は特に限定されない。この方法として、導電層3の表面3aを酸化防止剤4又は酸化防止剤4を含む溶液により表面処理する方法が挙げられる。なかでも、導電層3の表面3aに酸化防止剤4を均一に付着させることができるので、酸化防止剤4が付着される前の導電性粒子を酸化防止剤4又は酸化防止剤4を含む溶液に浸漬させる方法が好ましい。酸化防止剤4が付着される前の導電性粒子を酸化防止剤4又は酸化防止剤4を含む溶液に浸漬させ、導電層3の表面3aに酸化防止剤4を付着させた後、必要に応じて、乾燥が行われてもよい。
【0057】
(異方性導電材料)
本発明に係る異方性導電材料は、本発明の導電性粒子と、バインダー樹脂とを含有する。
【0058】
上記バインダー樹脂は特に限定されない。バインダー樹脂として、一般的には絶縁性の樹脂が用いられる。バインダー樹脂として、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体又はエラストマー等が挙げられる。バインダー樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
上記ビニル樹脂として、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂又はスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂として、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂として、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂であってもよい。上記硬化性樹脂は、硬化剤と併用されてもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体として、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、又はスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーとして、例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、又はアクリロニトリル−スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
【0060】
異方性導電材料は、導電性粒子及びバインダー樹脂の他に、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤又は難燃剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0061】
上記バインダー樹脂中に導電性粒子を分散させる方法は、従来公知の分散方法を用いることができ特に限定されない。上記バインダー樹脂中に導電性粒子を分散させる方法として、例えば、バインダー樹脂中に導電性粒子を添加した後、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、導電性粒子を水又は有機溶剤中にホモジナイザー等を用いて均一に分散させた後、バインダー樹脂中へ添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、又はバインダー樹脂を水又は有機溶剤等で希釈した後、導電性粒子を添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法等が挙げられる。
【0062】
本発明の異方性導電材料は、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム、又は異方性導電シート等として使用され得る。本発明の導電性粒子を含む異方性導電材料が、異方性導電フィルム又は異方性導電シート等のフィルム状の接着剤として使用される場合には、該導電性粒子を含むフィルム状の接着剤に、導電性粒子を含まないフィルム状の接着剤が積層されていてもよい。
【0063】
(接続構造体)
図2は、本発明の一実施形態に係る導電性粒子を用いた接続構造体を模式的に示す正面断面図である。
【0064】
図2に示す接続構造体21は、第1の接続対象部材22と、第2の接続対象部材23と、第1,第2の接続対象部材22,23とを電気的に接続している接続部24とを備える。接続部24は、導電性粒子1を含有する異方性導電フィルムにより形成されている。
【0065】
第1の接続対象部材22の上面22aに、複数の電極22bが設けられている。第2の接続対象部材23の下面23aに、複数の電極23bが設けられている。第1の接続対象部材22の上面22aに、導電性粒子1を含有する異方性導電フィルムを介して、第2の接続対象部材23が積層されている。電極22bと電極23bとが、導電性粒子1により電気的に接続されている。図2では、導電性粒子1は略図的に示されている。
【0066】
接続構造体21では、導電性粒子1が用いられているため、電極22b,23b間に上記異方性導電フィルムを配置した後、圧縮荷重がかけられたときに、導電性粒子1と電極22b,23bとの間のバインダー樹脂を充分に排除できる。すなわち、図2にAを付して示す部分のバインダー樹脂を充分に排除でき、従って導電性粒子1と電極22b,23bとを充分に接触させることができる。このため、電極22b,23b間の接続不良が生じ難く、接続信頼性を高めることができる。
【0067】
第1,第2の接続対象部材22,23として、具体的には、半導体チップ、コンデンサもしくはダイオード等の電子部品、又はプリント基板、フレキシブルプリント基板もしくはガラス基板等の回路基板等が挙げられる。
【0068】
接続構造体21の製造方法は特に限定されない。接続構造体21の製造方法の一例として、第1の接続対象部材22と第2の接続対象部材23との間に、上記異方性導電フィルムを配置して、積層体を得た後、該積層体を加熱し、加圧する方法が挙げられる。
【0069】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0070】
(実施例1)
ポリビニルアルコール(日本合成化学工業社製、GH−20)の3重量%水溶液800重量部に、ジビニルベンゼン70重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート30重量部及び過酸化ベンゾイル2重量部を含有する混合液を加えて、ホモジナイザーにて撹拌して、粒度を調整した。その後、撹拌しながら窒素気流下にて80℃まで昇温し、15時間反応を行い、粒子を得た。
【0071】
得られた粒子を蒸留水及びメタノールにて洗浄した後、分級し、平均粒子径4.1μm及び変動係数5.0%の樹脂粒子を得た。
【0072】
得られた樹脂粒子10gを粉末めっき用プレディップ液(奥野製薬社製)に分散させ、30℃で30分間攪拌することによりエッチングを行った。エッチングの後、樹脂粒子を水洗し、硫酸パラジウムを1重量%含有するパラジウム触媒液100mLに添加し、30℃で30分間攪拌して、パラジウムイオンを樹脂粒子に吸着させた。次に、パラジウムイオンが吸着された樹脂粒子を濾過し、水洗した後、0.5重量%のジメチルアミンボラン液(pH6.0)に添加し、パラジウムが活性化された樹脂粒子を得た。パラジウムが活性化された樹脂粒子に蒸留水500mLを加え、超音波処理機を用いて充分に分散させることにより懸濁液を得た。
【0073】
また、硫酸銅(5水和物)40g/L、EDTA100g/L、グルコン酸ナトリウム50g/L、硫酸ベリリウム3.5g/L、ホルムアルデヒド25g/L及び結晶調整剤を含有する無電解銅めっき液(pH10.5)を用意した。
【0074】
得られた懸濁液を50℃で攪拌しながら、上記無電解銅めっき液を懸濁液に徐々に添加し、無電解銅めっきを行った。樹脂粒子の表面に、厚み0.1μmの導電層が形成されたときに、無電解銅めっき液の添加を終了した。その後、アルコールで洗浄し、真空乾燥することにより、樹脂粒子の表面に、導電層として銅及びベリリウムを含有する合金層が形成されている導電性粒子Aを得た。
【0075】
得られた導電性粒子A1gを蒸留水1000mL(比抵抗18MΩ)に分散させ、撹拌機付オートクレーブに入れて、0.1MPa及び121℃の各条件で10時間攪拌洗浄し、濾過し、乾燥した(第1の処理)。第1の処理が行われた導電性粒子A1gを蒸留水1000mL(比抵抗18MΩ)に分散させ、撹拌機付オートクレーブに入れて0.1MPa及び121℃の各条件で10時間攪拌洗浄し、濾過し、乾燥した(第2の処理)。
【0076】
次に、酸化防止剤を含む溶液として、ピロリン酸カルシウム2.5g/Lと、酸化防止剤としての5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール50mg/Lとを含有するリン酸水溶液(pH5)を用意した。
【0077】
上記第1,第2の処理が行われた導電性粒子Aを上記リン酸水溶液に25℃で0.5時間浸漬した。その後、50℃で8時間真空乾燥することにより、導電層の表面に酸化防止剤が付着している導電性粒子を得た。
【0078】
(実施例2〜5)
無電解銅めっき液の硫酸ベリリウムの濃度を3.5g/Lから、下記の表1に示す濃度に変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電層の表面に酸化防止剤が付着している導電性粒子を得た。
【0079】
(比較例1)
無電解銅めっき液に硫酸ベリリウムを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、導電層の表面に酸化防止剤が付着している導電性粒子を得た。
【0080】
(比較例2及び3)
無電解銅めっき液の硫酸ベリリウムの濃度を3.5g/Lから、下記の表1に示す濃度に変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電層の表面に酸化防止剤が付着している導電性粒子を得た。
【0081】
(評価)
(1)銅及びベリリウムの割合
導電層の表面に酸化防止剤が付着している導電性粒子5gを、60%硝酸5mLと37%塩酸10mLとの混合液に加え、導電層を完全に溶解させ、溶液を得た。得られた溶液を用いて、合金層に含まれる各金属の含有量をICP−MS分析器(日立製作所社製)により分析した。導電層(合金層)に含まれる銅とベリリウムとの合計100重量%中の銅及びベリリウムの含有量を算出した。さらに、導電層(合金層)100重量%中の銅の含有量を算出した。
【0082】
(2)銅の(111)結晶配向面を表すピークから計算される半値幅
粉末X線回折装置(理学電機社製)を用いて、スキャンスピード4.000°/分及びスキャンステップ0.020°の各条件で、導電層の表面に酸化防止剤が付着している導電性粒子の合金層をX線回折測定し、粉末X線回折像を得た。得られた粉末X線回折像における銅の(111)結晶配向面を表すピークから、半値幅を求めた。
【0083】
(3)接続抵抗
L/Sが100μm/100μmの銅パターンが形成された2枚の基板を用意した。また、実施例及び比較例で得られた導電性粒子10重量部と、バインダー樹脂としてのストラクトボンドXN−5A(三井化学社製)90重量部とを含む異方性導電ペーストを用意した。
【0084】
基板の上面に異方性導電ペーストを導電性粒子が銅パターンに接触するように塗布した後、銅パターンの位置を合わせながら、他の基板を銅パターンが導電性粒子に接触するように積層し、圧着し、積層体を得た。その後、積層体を180℃で1分加熱することにより、異方性導電ペーストを硬化させ、接続構造体を得た。
【0085】
得られた接続構造体の電極間の接続抵抗を四端子法により測定し、得られた測定値を接続抵抗とした。
【0086】
結果を下記の表1に示す。
【0087】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る導電性粒子を用いた接続構造体を模式的に示す正面断面図である。
【符号の説明】
【0089】
1…導電性粒子
2…樹脂粒子
2a…表面
3…導電層
3a…表面
4…酸化防止剤
21…接続構造体
22…第1の接続対象部材
22a…上面
22b…電極
23…第2の接続対象部材
23a…下面
23b…電極
24…接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材粒子と、該基材粒子の表面に形成された導電層とを備え、
前記導電層の最表面層が、銅及びベリリウムを含有する合金層であり、
前記合金層に含まれる銅及びベリリウムの合計100重量%中のベリリウムの含有量が0.01〜4重量%の範囲内にあり、前記合金層100重量%中の銅の含有量が95重量%以上である、導電性粒子。
【請求項2】
前記導電層の表面に、酸化防止剤が付着している、請求項1に記載の導電性粒子。
【請求項3】
前記酸化防止剤が窒素含有化合物である、請求項2に記載の導電性粒子。
【請求項4】
前記合金層をX線回折測定したときに、銅の(111)結晶配向面を表すピークから計算される半値幅が、0.52〜1.7°の範囲内にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性粒子と、バインダー樹脂とを含有する、異方性導電材料。
【請求項6】
第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備え、
前記接続部が請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性粒子又は該導電性粒子とバインダー樹脂とを含有する異方性導電材料により形成されている、接続構造体。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性粒子の製造方法であって、
ベリリウム化合物を含有する無電解銅めっき液を用いて、前記導電層の最表面層として前記銅及びベリリウムを含有する合金層を形成する、導電性粒子の製造方法。
【請求項8】
前記無電解銅めっき液が、前記ベリリウム化合物を0.1〜14g/Lの濃度で含有する、請求項7に記載の導電性粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−129455(P2010−129455A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304762(P2008−304762)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】