説明

導電性組成物、その製造方法及びそれを用いたシームレスベルト

【課題】耐熱性、機械的強度及び寸法安定性に優れ、湿度依存性の少ない安定的な導電性及び寸法安定性を有する組成物を提供すること。
【解決手段】対数粘度が1.0dl/g以下のポリアミドイミド樹脂A、対数粘度が1.2dl/g以上のポリアミドイミド樹脂Bおよび帯電防止剤が含有されていることを特徴とする導電性組成物、その製造方法および該組成物から得られるシームレスベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種静電気障害防止材、電磁波シールド材、電子写真複写機やレーザープリンター、ファクシミリ等のトナーや紙等を搬送する転写ベルト、更にはトナーを固定する定着ベルトに有用な耐熱導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、導電性樹脂組成物としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンやエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フルオロエチレン−プロピレン共重合体等のフッ素樹脂等にアセチレンブラックやケッチェンブラック等の導電カーボンまたは界面活性剤等を分散させたものが用いられてきた。
【0003】
これらの中で、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、フッ素樹脂は耐熱性が不充分で長期の機械的ストレスに弱いという欠点があり、ポリイミドについて例えば特許文献1に例示されているが、カーボンの分散が困難であることと成形時に高温でイミド化反応を行わせるために品質のバラツキが大きいという欠点があった。ポリアミドイミド樹脂についても古くから検討されており、例えば、特許文献2〜6等に例示されているが、従来のポリアミドイミド樹脂では膜強度や耐久性が不充分なため架橋剤を配合したり、成形フィルム中に溶剤を残存させたりする必要があった。
【0004】
また、特許文献7にはo−トリジン構造を含むポリアミドイミド樹脂にポリアニリン樹脂を配合した組成物が開示されているが、ポリアニリンの吸湿による寸法安定性の低下及び吸湿時のクリープ特性が低下する等の他、230℃以上の熱処理時にポリアニリンの分解に伴う導電性引き裂き強度の低下などの欠点があった。さらに特許文献8には脂環族構造を有するポリアミド樹脂にポリアニリン樹脂を配合した組成物が開示されているが、アミド結合及びポリアニリンに基づく吸湿による寸法安定性の低下及び吸湿時のクリープ特性が低下することと上記同様高温処理時の導耐久性、耐熱性の向上、更には高温多湿下での寸法安定性が求められている。
【0005】
特に、上記複写機やレーザープリンターの転写ベルトにおいては最近のカラー化、高速化の要求に伴いトナーや紙の吸着、搬送、転写のための静電特性安定性と機械的強度及びその引き裂き強度の低下などが問題であった。
【0006】
【特許文献1】特開平11−170284号公報
【特許文献2】特開昭56−167151号公報
【特許文献3】特開昭58−85468号公報
【特許文献4】特開平10−282801号公報
【特許文献5】特開2000−313071号公報
【特許文献6】特開2001−97519号公報
【特許文献7】特開2003−147199号公報
【特許文献8】特開2003−261766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、耐熱性、機械的強度及び寸法安定性に優れ、湿度依存性の少ない安定的な導電性及び寸法安定性を有する組成物を提供し優れた静電防止剤、電磁波シールド剤を提供すると同時にこれを用いた電子写真複写機やレーザープリンターの搬送ベルトや定着ベルトを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、 遂に本発明を完成するに到った。すなわち、本発明は以下の導電性組成物及びこれを用いたシームレスベルトである。
【0009】
(1)対数粘度が1.0dl/g以下のポリアミドイミド樹脂A、対数粘度が1.2dl/g以上のポリアミドイミド樹脂Bおよび帯電防止剤が含有されていることを特徴とする導電性組成物。
【0010】
(2)ポリアミドイミド樹脂Bの酸成分の一部がピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートから選ばれた1種又は2種以上である前記(1)に記載の導電性組成物。
【0011】
(3)ポリアミドイミド樹脂Bのアミン成分(イソシアネート成分)がナフタレン及び/又はo−トリジン残基を有する成分である前記(1)または(2)に記載の導電性組成物。
【0012】
(4)ポリアミドイミド樹脂Aとポリアミドイミド樹脂Bの混合比率(重量比)が10/90〜90/10であり、混合したポリアミドイミド樹脂皮膜の引張り弾性率が3500MPa以上である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の導電性組成物。
【0013】
(5)対数粘度が1.0dl/g以下のポリアミドイミド樹脂Aに帯電防止剤を分散させた溶液に、対数粘度が1.2dl/g以上のポリアミドイミド樹脂Bの溶液を混合することを特徴とする導電性組成物の製造方法。
【0014】
(6)前記(1)〜5のいずれかに記載の導電性組成物を用いたシームレスベルト。
【発明の効果】
【0015】
本発明の導電性樹脂組成物は強度、耐熱性に優れ、寸法安定性の湿度依存性が少なく、安定的な導電性を有する、静電防止剤、電磁波シールド剤をして有用であると共に、これを用いた電子写真複写機やレーザープリンターの搬送ベルトや定着ベルトとして利用することが出来るので、産業界に寄与すること大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は耐熱性及び機械的特性、高温高湿度下での寸法安定性に優れた、ポリアミドイミド樹脂に帯電防止剤を配合した導電性組成物及びこれを成形したシームレスベルトである。
【0017】
本発明に用いられる対数粘度が異なる2種類以上のポリアミドイミド樹脂はいずれも酸クロリド法又はイソシアネート法等公知の方法で製造することができる。
ポリアミドイミド樹脂AまたはBの製造に用いられる酸成分としてはトリメリット酸及びこれの無水物、酸塩化物の他にピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート等のテトラカルボン酸及びこれらの無水物、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、セバチン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ジカルボキシポリブタジエン、ジカルボキシポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ジカルボキシポリ(スチレン−ブタジエン)等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸があげられこれらの中では反応性、耐熱性、溶解性などの点からトリメリット酸無水物が最も好ましく、その一部がピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートに置き換わったものが寸法安定性の点から好ましい。ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートを用いる場合、共重合量は酸成分を100モル%としたときに、5〜70モル%である事が好ましい。下限は10モル%がより好ましく上限は60モル%であることがより好ましい。
【0018】
次にポリアミドイミド樹脂AまたはBの製造に用いられるジアミン(ジイソシアネート)としてはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン及びこれらのジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環族ジアミン及びこれらのジイソシアネート、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミン及びこれらのジイソシアネートが挙げられこれらの中では耐熱性、機械的特性、溶解性などから4,4’−ジアミノジフェニルメタン(ジイソシアネート)、2,4−トリレンジアミン(ジイソシアネート)、o−トリジン(ジイソシアネート)、ナフタレンジアミン(ジイソシアネート)、イソホロンジアミン(ジイソシアネート)等が好ましい。とりわけ寸法安定性と機械的特性の点からはo−トリジン(ジイソシアネート)とナフタレンジアミン(ジイソシアネート)が好ましい。これらの成分は全ジアミン成分を100モル%としたときに、50モル%以上共重合されていることが好ましく、70モル%以上がより好ましい。
【0019】
本発明の特徴は分子量が異なる2種類以上のポリアミドイミド樹脂を併用することにある。ポリアミドイミド樹脂の分子量が大きいと機械的特性や寸法安定性は向上するが、溶液粘度が高くなるためにカーボンなどの帯電防止剤の分散性が低下し、安定な導電性が得られにくいだけでなく分散作業が困難になる。一方、分子量が小さいと分散の作業が容易になり、均一な分散体が得られ安定な導電性が得られやすいが、逆に機械的特性や寸法安定性が低下する。
本発明の場合、低分子量のポリアミドイミド溶液を用いてカーボンなどの帯電防止剤を分散させた後、高分子量のポリアミドイミド樹脂を混合して目的とする導電性を発現させることにより安定な導電性と寸法安定性、機械的特性のいずれも優れた導電性組成物を提供できる。
【0020】
本発明の低分子量ポリアミドイミド樹脂Aは対数粘度で1.0dl/g以下であり、好ましくは0.9dl/g以下である。下限は特に制限しないが機械的特性を著しく損なわない点から考慮すると0.3dl/g以上が好ましい。
低分子量ポリアミドイミド樹脂Aの対数粘度が1.0dl/gを超えるとカーボンなどの分散性、分散作業性が低下して好ましくない。
【0021】
本発明の高分子量ポリアミドイミド樹脂Bは対数粘度で1.2dl/g以上であり、好ましくは1.4dl/g以上である。上限は特にはないが、通常ポリアミドイミド樹脂の生産性から2.5dl/g以下が好ましい。この対数粘度が1.2dl/g以下では機械的強度及び寸法安定性が不足する。
【0022】
本発明で低分子量ポリアミドイミド樹脂と高分子量ポリアミドイミド樹脂の混合割合は各々の対数粘度にもよるが、固形分の重量比で10/90〜90/10であり、好ましくは20/80〜80/20より好ましくは30/70〜60/40である。低分子量のポリアミドイミド樹脂の割合が10%以下ではカーボンなどの分散作業が困難になり、90%以上では導電組成物から作られたシームレスベルトの機械的特性や寸法安定性が低下する。
【0023】
本発明に用いる2種類以上のポリアミドイミド樹脂はN,N’−ジメチルアセトアミドやN−メチル−2−ピロリドン,N,N’−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン等の極性溶剤中、60〜200℃に加熱しながら攪拌することで製造することができる。
この場合、必要に応じてトリエチルアミン、ジエチレントリアミン、ジアザビシクロウンデセン等の有機アミン化合物やフッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、ナトリウムメトキシド等の金属化合物を触媒に用いることができる。
【0024】
本発明に用いられる帯電防止剤としては特に制限されないが、ケッチェンブラックやアセチレンブラック、グラファイト等のカーボンブラック類、アニオン系、カチオン系、非イオン性及び両性の界面活性剤、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアニリン等の電子電導性ポリマー等が用いられる。これらの中では導電性の湿度依存性が少なく、ポリアミドイミドへの分散性や相溶性に優れるカーボンブラックやポリアニリンが好ましい。
【0025】
ポリアニリンとは、酸化重合したポリアニリン誘導体に無機酸やドデシルベンゼンスルホン酸等の有機プロトン酸ドーパントをドーピングした有機溶剤や水に溶解又は分散可能なものである。
【0026】
ポリアミドイミド樹脂に配合する帯電防止剤の量は帯電防止剤によって異なるが、ベルトに成形したときの表面抵抗値が10〜1014(Ω/□)の範囲にはいるように調整される。カーボンブラックの場合の配合量は5〜30%の間で選択される。
【0027】
本発明のポリアミドイミド樹脂に帯電防止剤を配合する方法は、好ましくは低分子量ポリアミドイミド樹脂溶液に上記帯電防止剤を混合してデイゾルバー、3本ロールミル、サンドミル、ボールミル、プラネタリウムミキサー、アトライター等通常の分散機を用いて行い、高濃度の帯電防止剤溶液を製造する。その後、高分子量ポリアミドイミド樹脂溶液を加えて最終的な導電性組成物溶液とする。この場合、耐熱導電性組成物の特性を損なわない範囲で着色剤、分散剤、無機フィラー、レベリング剤、消泡剤、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン等の他樹脂、シリコーン系離型剤、架橋剤等を配合することができる。架橋剤としては2官能以上のエポキシ樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート化合物が挙げられる。
【0028】
本発明のポリアミドイミド樹脂と帯電防止剤からなる耐熱導電性組成物からベルト等を成型する方法は、押し出し成形、ブロー成形、射出成形、コーテイング、遠心成形等によって行われ、これらの中では溶液成形が可能な遠心成型法が好ましい。
【実施例】
【0029】
以下実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例よって何ら制限されるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法で測定した値である。
・ 対数粘度
ポリマー0.5gを100mlのNMP(N−メチル−2−ピロリドン)に溶解した溶液を25℃でウベローデ粘度管を用いて測定した。
・ 表面抵抗
横河ヒューレットパッカード社製のHIGH RESISTANCE METERを用いて25℃,65%RH及び10℃,15%RHの環境で測定した。
・ 膜強度
測定幅10mm、測定長40mmのポリアミドイミド樹脂フィルムを25℃、65%RH環境下、引っ張り速度20mm/分の条件で東洋ボールドウイン社のテンシロンを用いて測定した。
・ 引き裂き強度
JIS K7128−1(トラウザー引き裂き法)に従って室温で測定した。
・ 引張り強度弾性率
ポリアミドイミド樹脂溶液をPETフィルムに乾燥膜厚が約30μmとなるように塗布し、100℃で10分乾燥後PETフィルムから剥離し、剥離したポリアミドイミド 樹脂フィルムを金属枠に固定して、200℃で15時間乾燥した。
得られたフィルムから幅10mmの短冊をつくり、東洋ボールドウイン社製テンシロンを用い、引張り速度20mm/分で測定したときの初期応力の勾配から求めた。
【0030】
参考例1(ポリアミドイミド樹脂A1の合成)
冷却管と窒素ガス導入口のついた4ツ口フラスコにトリメリット酸無水物(以下TMAと略することがある)1.02モルとジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(以下MDIと略することがある)1モルを固形分濃度が20%となるようにN−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略することがある)と共に仕込み、攪拌しながら100℃に昇温して約1時間反応させた。更にこの反応溶液を180℃に昇温して約3時間反応を継続した。冷却しながら固形分濃度が15%となるようにNMPで希釈した。得られたポリアミドイミド樹脂A1の対数粘度は0.75dl/gであった。
【0031】
参考例2(ポリアミドイミド樹脂B1の合成)
実施例1と同じ装置を用いて、TMA1.0モル、ナフタレンジイソシアネート(NDI)1.0モル、フッ化カリウム0.01モルを固形分濃度が20%となるようにNMPと共に仕込み、攪拌しながら100℃で約3時間反応させた後固形分濃度が15%となるようにNMPで希釈した。得られたポリアミドイミド樹脂B1の対数粘度は1.52dl/gであった。
【0032】
参考例3(ポリアミドイミド樹脂B2の合成)
冷却管と窒素ガス導入口のついた4ツ口フラスコにTMA1.01モルとo−トリジンジイソシアネート(TODI)0.8モル、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)0.2モル、ジアザビシクロウンデセン0.01モルを固形分濃度が20%となるようにNMPと共に仕込み、攪拌しながら90℃に昇温して約4時間反応させた後冷却しながら固形分濃度が15%となるようにNMPで希釈した。得られたポリアミドイミド樹脂B2の対数粘度は1.45dl/gであった。
【0033】
参考例4(ポリアミドイミド樹脂B3の合成)
冷却管と窒素ガス導入口のついた4ツ口フラスコにTMA0.90モル、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物0.05モル、ビフェニルテトラカルボン酸無水物0.05モルとo−トリジンジイソシアネート1モル、フッ化カリウム0.01モルを固形分濃度が20%となるようにN−メチル−2−ピロリドンと共に仕込み、攪拌しながら90℃に昇温して約4時間反応させた後、冷却しながら固形分濃度を15%となるようにNMPで希釈した。得られたポリアミドイミド樹脂B3の対数粘度は1.47dl/gであった。
【0034】
実施例1〜3(導電性成型品の製造例−1,2,3)
参考例1で合成したポリアミドイミド樹脂A1にラーベン780(コロンビアンカーボン社)を固形分比で50%配合して3本ロールミルに二回通して分散さてマスター塗料を製造した。この分散液をポリアミドイミド樹脂B1,B2およびB3溶液にカーボン濃度が固形分比で25%となるように混合撹拌し均一に分散させて導電性塗料を調整した。これらの塗料を直径150mmの円筒状金型に流して200回転/分で回転させながら100℃で30分、次いで220℃で5時間乾燥させた後、金型から脱着して厚みが約0.1mmのシームレスベルトを作成した。表1に示すように優れた導電性と機械的特性を示し、電子写真複写機やレーザープリンター用ベルトに好適な成型物が得られた。
【0035】
比較例1
実施例1で用いたポリアミドイミド樹脂A1の代わりに、ポリアミドイミド樹脂B2を用いカーボン分散マスター溶液を製造し、引き続き、ポリアミドイミド樹脂B2を混合撹拌して得られた導電性塗料を用いて実施例1と同じ方法でシームレスベルトを製造した。表1に示すとおり、分散不良に基づく導電性不良及び引き裂き強度が不足した成型品が得られた。
【0036】
比較例2
ポリアミドイミド樹脂A1を用いたマスターカーボン分散液に、同じくポリアミドイミド樹脂A1を混合攪拌して、実施例1と同じ導電性成型品を製造した。引き裂き強度及び引っ張り弾性率が低く、転写ベルトとして不充分な成型品となった。
【0037】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の導電性樹脂組成物は強度、耐熱性に優れ、寸法安定性の湿度依存性が少なく、安定的な導電性を有する、静電防止剤、電磁波シールド剤をして有用であると共に、これを用いた電子写真複写機やレーザープリンターの紙搬送ベルトやトナー転写ベルトとして利用することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対数粘度が1.0dl/g以下のポリアミドイミド樹脂A、対数粘度が1.2dl/g以上のポリアミドイミド樹脂Bおよび帯電防止剤が含有されていることを特徴とする導電性組成物。
【請求項2】
ポリアミドイミド樹脂Bの酸成分の一部がピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートから選ばれた1種又は2種以上である請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項3】
ポリアミドイミド樹脂Bのアミン成分(イソシアネート成分)がナフタレン及び/又はo−トリジン残基を有する成分である請求項1〜2のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項4】
ポリアミドイミド樹脂Aとポリアミドイミド樹脂Bの混合比率(重量比)が10/90〜90/10であり、混合したポリアミドイミド樹脂皮膜の引張り弾性率が3500MPa以上である請求項1〜3のいずれかに記載の導電性組成物。
【請求項5】
対数粘度が1.0dl/g以下のポリアミドイミド樹脂Aに帯電防止剤を分散させた溶液に、対数粘度が1.2dl/g以上のポリアミドイミド樹脂Bの溶液を混合することを特徴とする導電性組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の導電性組成物を用いたシームレスベルト。

【公開番号】特開2008−266430(P2008−266430A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109965(P2007−109965)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】