説明

導電性部材、帯電ローラ、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】 被接部材との間に安定した空隙を維持できる耐久性の高い、帯電ローラとしての導電性部材を提供する。
【解決手段】 長尺状の導電性支持体201と、電気抵抗調整層202と、空隙保持部材203と有する導電性部材において、空隙保持部材203の電気抵抗調整層202の端面に対向する部分の厚さをXとしたとき、1mm≦X≦3mmの関係を満たし、電気抵抗調整層202の端面とこの端面に対向する空隙保持部材203面との間隔をXとしたとき、0.1≦X≦1mmの関係を満たし、空隙保持部材203の電気抵抗調整層202の端面に対向する面と、電気抵抗調整層202の縮径段差面までの間隔をXとしたとき、Xは、5mm以上であり、且つ空隙保持部材203の電気抵抗調整層202の端面に対向する面から電気抵抗調整層202における感光体101の画像形成領域の対応する端部に対向する位置までの長さよりも短くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置において、像担持体に対して近接配置される導電性部材であって、帯電部材、転写部材等として適用することができる導電性部材及びこれを有する帯電ローラ、プロセスカートリッジ、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置には、像担持体(以下、感光体ともいう)に対して帯電処理を行う帯電部材や、感光体上のトナーに対して転写処理を行う転写部材として導電性部材が用いられている。
図1は、帯電ローラとして導電性部材を用いた電子写真方式の画像形成装置の概略構成図である。図1において、この画像形成装置は、静電潜像が形成される感光体101と、ドラム状の感光体101に接触又は近接配置されて帯電処理を行う帯電部材としての帯電ローラ102と、レーザー光又は原稿の反射光等の露光103を照射する図示省略した露光装置と、感光体101の静電潜像にトナーを付着させる現像ローラ104と、帯電ローラ102に電圧を印加するための電圧印加電源105と、感光体101上のトナー像を記録紙107に転写処理する転写ローラ106と、転写処理後の感光体101をクリーニングするクリーニング装置108と、感光体101の表面電位を測定する表面電位計109とから主として構成されている。
図2は、感光体101及び帯電ローラ102を含むプロセスカートリッジを示す断面図である。図2に示すように、感光体101、帯電ローラ102、現像ローラ104、クリーニング装置108を包含するプロセスカートリッジが画像形成装置内に設置される場合もある。
【0003】
このような画像形成装置では次のような手段で、画像の形成を行う。即ち、先ず帯電ローラ102によって、感光体101の表面を所望の電位に帯電する。次に、図示省略した露光装置によって、感光体101に露光103を投射して、所望の画像に対応する静電潜像を形成する。次いで、現像ローラ104によって、前記静電潜像をトナーによって現像し、感光体101上にトナー像(顕像)を形成する。次に、転写ローラ106によって、感光体101上のトナー像を、記録紙107に転写する。像転写後、転写されずに感光体101上に残留したトナーをクリーニング装置108によって清掃する。トナー像が転写された記録紙107は、不図示の定着装置へと搬送される。定着装置は、トナーを加熱及び加圧して記録紙上に定着させる。このような手順を繰り返すことによって、記録紙上に所望の画像を形成する。
【0004】
このような帯電ローラを用いた画像形成装置に関する従来技術として、例えば特許文献1及び特許文献2が挙げられ、これらには、感光体に帯電ローラを接触させる接触帯電方式が開示されているが、この接触帯電方式には以下のような問題がある。
即ち、帯電ローラを構成している物質が帯電ローラから染み出し、被帯電体の表面に付着移行するために、被帯電体の表面に帯電ローラ跡が付着するという問題があり、特に上述した染み出しによって、トナー付着が発生し易くなる。
また、帯電ローラに交流電圧を印加したときに被帯電体に接触している帯電ローラが振動するために帯電音が発生する。
更に、感光体上のトナーが帯電ローラに付着することによって帯電性能が低下するという問題がある。
更にまた、感光体を長期停止した場合に、帯電ローラを構成している物質が感光体に付着して帯電ローラが永久変形するという問題もある。
【0005】
このような問題を解決する技術として、上述した接触帯電方式に代えて、帯電ローラを感光体に近接させる近接帯電方式が提案された。即ち、特許文献3には、帯電部材と被帯電体との近接隙間を5〜300μmとし、導電性の芯金とその外側にカーボン等で所要に抵抗を落としたEPDM等の外層を設け、外層の両端部側に一体に具備させたナイロン、テトラフルオロエチレン(商品名:テフロン(登録商標))等からなるローラ周方向のスペーサリングを備えた近接帯電方式の帯電ローラが開示されている。また、特許文献4には、帯電部材と被帯電体との近接隙間を1mm以下とし、導電性の芯金と抵抗層を有し、抵抗層の両端部側に一体に絶縁部材製のスペーサリングを具備させた近接帯電方式の帯電ローラが開示されている。
このような近接帯電方式は、帯電ローラと感光体との最近接距離(空隙)が50〜200μmになるように対向させ、帯電ローラに電圧を印加することにより、感光体を帯電させるものである。近接帯電方式では、帯電装置と感光体が接触していないので、接触帯電方式で問題となる例えば帯電ローラを構成している物質の感光体への付着の問題、感光体を長期停止したときに生ずる永久変形の問題は生じない。また、感光体上のトナー等が帯電ローラに付着することによる帯電性能の低下の問題に関しても、帯電ローラに付着するトナーが少なくなるので、近接帯電方式の方が有利である。
【0006】
しかし、近接帯電方式は接触帯電方式に比べて上述したような利点があるにもかかわらず、以下の二つの問題があるために実用化が難しい面がある。
即ち、近接帯電方式は、帯電部材と感光体との空隙の均一性確保が困難となり、また、帯電部材と感光体との空隙が変動することによる帯電むらが生じ易くなり、帯電むらが発生すると、画像形成時に、白地にトナーが付着するような画像不良の原因となる。
帯電部材と感光体との最近接部での隙間の均一性確保の問題については、帯電むらによる画像不良を発生させないためには、帯電部材と感光体との最近接部での間隙のばらつきを例えば20μm程度に抑えなければならない。
【0007】
そこで、帯電ローラと感光体との間隙を保持する手段として、例えば特許文献5には、弾性ローラ部の両端部外周にギャップ管理部材として繋ぎ目を有するテープ部材を取り付け、像担持体表面との間にギャップを形成する非接触帯電装置が開示されており、初期的には上述した不具合を解決しているが、帯電ローラに用いられている弾性ゴムは経時でのへたりが発生しやすく、長期間の使用において、感光体と帯電ローラ間の空隙を維持できないという問題がある。また、テープ状部材の磨耗、帯電ローラとテープ状部材間へのトナーの進入、固着等により、長期間の使用において、感光体と帯電ローラ間の空隙を維持できないという問題がある。
【0008】
また、特許文献6には、図8に示したように。空隙保持部材として、デュロメータ硬さHDD30以上、かつHDD70以下、テーバー磨耗試験機の磨耗質量が10mg/1000サイクル以下を満たす熱可塑性樹脂組成物を使用し、この空隙保持部材をローラの両端部に圧入する構成が開示されている。図8において、ローラの電気抵抗調整層202と空隙保持部材203の関係は、電気抵抗調整層202の端部に空隙保持部材203が形成され、空隙保持部材203は、電気抵抗調整層202の端面及び導電性支持体201と接している。このことにより、テープ状の空隙保持部材より長期の信頼性が向上するものである。
更に、特許文献7には、空隙保持部材と電気抵抗調整層を同時加工、即ち同時除去加工する技術が開示されており、これによって、例えば帯電ローラとこれに当接する当接部材との空隙を精密に制御することが可能となったが、電気抵抗調整層と空隙保持部材とを別材料で形成する場合、吸水率の違いから、環境変動時の寸法変化量が異なるために、空隙量が変化してしまうという不具合がある。即ち、空隙保持部材と電気抵抗調整層はトナー固着性を考慮して、通常、異なった材質で形成されるが、電気抵抗調整層の抵抗調整剤としてイオン導電剤が使用されているため、吸水性が高く、高温高湿時には、電気抵抗調整層が吸湿して寸法変動が発生し易くなる。これに対して、空隙保持部材は、絶縁性及び耐トナー固着性よりオレフィン系材料が好適に使用されるが、オレフィン系材料は低吸水材料であるため、電気抵抗調整層に比べ高温高湿時の寸法変動量が小さく、環境変動で高精度に形成された空隙(段差)が変動するという問題がある。
このような不具合を解決するため、本発明者による未公知の技術(特願2005−019517号)においては、図9に示したように、電気抵抗調整層の両端近傍に段差部を1段以上有し、空隙保持部材が電気抵抗調整層の段差部を構成する2面以上に接して固定されたものがあるが、空隙保持部材に切削加工や研削加工等の除去加工を施す際、特に空隙保持部材の厚みが薄い場合に、刃具の応力により空隙保持部材の端部の剥がれ、むしれ等が発生し、空隙保持部材の形状が変形し、これによって空隙が変動する場合がある。
【0009】
【特許文献1】特開昭63−149668号公報、
【特許文献2】特開平01−267667号公報
【特許文献3】特開平03−240076号公報
【特許文献4】特開平04−358175号公報
【特許文献5】特開2001−296723号公報
【特許文献6】特開2004−354477号公報
【特許文献7】特開2005−076138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、長期にわたって使用しても、当接部材との間に安定した空隙を維持することができる耐久性の高い導電性部材、これを用いた帯電ローラ、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る導電性部材は、長尺状の導電性支持体と、この導電性支持体の外周面に設けられ、両端に縮径部を有する電気抵抗調整層と、この電気抵抗調整層の前記縮径部にそれぞれ嵌合する一対の空隙保持部材とを有し、前記空隙保持部材の外周面は、像担持体と当接したときに前記像担持体の外周面と前記電気抵抗調整層の外周面との間に所定の間隙が形成されるように前記電気抵抗調整層の外周面に対して高低差を有する導電性部材において、前記空隙保持部材の前記電気抵抗調整層の端面に対向する部分の厚さをXとしたとき、1mm≦X≦3mmの関係を満たすことを特徴とする。
【0012】
また、別の導電性部材は、長尺状の導電性支持体と、この導電性支持体の外周面に設けられ、両端に縮径部を有する電気抵抗調整層と、この電気抵抗調整層の前記縮径部にそれぞれ嵌合する一対の空隙保持部材とを有し、前記空隙保持部材の外周面は、像担持体と当接したときに前記像担持体の外周面と前記電気抵抗調整層の外周面との間に所定の間隙が形成されるように前記電気抵抗調整層の外周面に対して高低差を有する導電性部材において、前記電気抵抗調整層の端面とこの端面に対向する前記空隙保持部材面との間隔をXとしたとき、0.1≦X≦1mmの関係を満たすことを特徴とする。
【0013】
更に、別の導電性部材は、長尺状の導電性支持体と、この導電性支持体の外周面に設けられ、両端に縮径部を有する電気抵抗調整層と、この電気抵抗調整層の前記縮径部にそれぞれ嵌合する一対の空隙保持部材とを有し、前記空隙保持部材の外周面は、像担持体と当接したときに前記像担持体の外周面と前記電気抵抗調整層の外周面との間に所定の間隙が形成されるように前記電気抵抗調整層の外周面に対して高低差を有する導電性部材において、前記空隙保持部材の前記電気抵抗調整層の端面に対向する面と、前記電気抵抗調整層の縮径段差面までの間隔をXとしたとき、前記Xは、5mm以上であり、且つ前記空隙保持部材の前記電気抵抗調整層の端面に対向する面から前記電気抵抗調整層における前記像担持体の画像形成領域の対応する端部に対向する位置までの長さよりも短いことを特徴とする。
【0014】
この場合において、前記電気抵抗調整層の両端縮径部の外径Bの前記電気抵抗調整層の外径Aに対する比B/Aは、0.87〜0.97であることが好ましい。
また、前記電気抵抗調整層と像担持体表面との間の隙間は、10〜50μmとすることができる。
更に、前記空隙保持部材の前記電気抵抗調整層の縮径部に嵌合する部分の厚さは、前記電気抵抗調整層の外径Aの7〜12%相当であることが好ましい。
更にまた、前記電気抵抗調整層の端部縮径部に前記空隙保持部材を嵌合させた後、前記空隙保持部材の外周面と前記電気抵抗調整層の外周面とに加工を施して前記高低差を形成するようにしてもよい。
また、前記空隙保持部材は、前記電気抵抗調整層の縮径部に接着、固定されていてもよい。
更に、前記空隙保持部材表面にはプライマーが施されており、このプライマーを介して前記空隙保持部材が前記電気抵抗調整層の縮径部に接着、固定されていてもよい。
更にまた、前記空隙保持部材は、少なくとも前記像担持体と当接する部分が絶縁性を有するものとすることができる。
更にまた、前記電気抵抗調整層の外周面に表面層が形成されているものとしてもよい。
更にまた、前記表面層の抵抗は、前記電気抵抗調整層の抵抗よりも大きいことが好ましい。
更にまた、前記導電性支持体は、円筒形状であることが好ましい。
更にまた、前記導電性支持体は、帯電部材であることが好ましい。
【0015】
本発明に係る帯電ローラは、画像形成装置の像担持体表面を一様に帯電させる帯電装置の帯電ローラにおいて、上述したいずれか一つの導電性部材からなることを特徴とする。
本発明に係るプロセスカートリッジは、像担持体と、この像担持体に近接するように配置された帯電装置とを一体化し、画像形成装置本体に対して着脱自在に形成したプロセスカートリッジにおいて、前記帯電装置は、上記帯電ローラを有するものであることを特徴とする。
本発明に係る画像形成装置は、像担持体と、像担持体表面に帯電を施す帯電装置と、帯電した像担持体表面に画像データに基づいて露光して潜像を書き込む露光装置と、像担持体表面に形成された静電潜像にトナーを供給して可視像化する現像装置と、像転写後の前記像担持体表面に残存するトナーを回収するクリーニング装置と、を有する画像形成製装置において、この画像形成装置は、上述したプロセスカートリッジを有するものであるか、又は前記帯電装置は、上述した帯電ローラを有するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電気抵抗調整層表面と、当接部材である例えば感光体表面との間の間隙を長期間に亘って精密制御することができ、例えば異常放電の発生を防止することができ、また、環境が変動しても空隙保持部材外周面と電気抵抗調整層の外周面との高低差の変動を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
図3は、画像形成装置の帯電ローラとして使用される導電性部材の構成を示す断面図である。この帯電ローラ102は、近接帯電方式の帯電ローラであって、導電性支持体201と、電気抵抗調整層202と、空隙保持部材203とを備えている。導電性支持体201は長尺の円柱形状を呈しており、その端部には帯電ローラに電圧を印加するための図示省略したパワーパック(電圧印加電源)が接続される。
電気抵抗調整層202は、導電性支持体201を中心軸として導電性支持体201の周面部に設置された円筒状を呈しており、その両端近傍に縮径部を有している。空隙保持部材203は、電気抵抗調整層202の両端縮径部の外周面に嵌合、設置され、円筒状を呈している。
【0018】
図4は、図3に示す帯電ローラ102を像担持体である感光体101に隣接設置した様子を示した模式図である。帯電ローラ102は感光体ドラムに対して任意の圧力で当接されて配置される。この帯電ローラ102は近接帯電方式となっており、電気抵抗調整層202の外径が空隙保持部材203の外径に対して僅かに小径に形成され、帯電ローラ102の空隙保持部材203の外周面は感光体101の外周面に当接するが、電気抵抗調整層202の外周面と感光体ドラム101の外周面との間には空隙が形成されている。更に、帯電ローラ102は、空隙保持部材203が感光体101の画像形成領域外の領域(非画像形成領域)に当接するようにして設置されている。この状態で帯電ローラ102に電圧を印加することにより、感光体ドラム101を帯電させることができる。
また、感光体101は円筒形状(ドラム状)を呈している。このため帯電ローラ102と感光体101とを回転駆動させることによって、互いに対向する面を回転に伴って変化させることができるので通電ストレスによる表面の化学的劣化が生じにくくなり、製品寿命を高めることができる。なお、感光体101と帯電ローラ102とは互いに円筒形状を呈している必要は必ずしもなく、楕円筒状であってもよい。
帯電ローラ102は、近接帯電方式を採用するため、感光体101との間隔を所定間隔にかつ均一に保つ必要がある。空隙が大きくなると、帯電ローラ102に対する電圧引加条件を高くする必要があり、感光体101の電気的劣化や異常放電が発生しやすくなるためであり、好ましくは100μm以下である。また、画像を形成したときに帯電むらによる画像不良が発生しないためには、帯電ローラ102と感光体101との最近接部での距離のばらつきを20μm程度に抑える必要がある。
空隙保持部材203は、その一部が電気抵抗調整層202と高低差を有している。帯電ローラ102と感光体101との空隙を所定の値に保つことが望ましいことから、図4のように空隙保持部材203の一部の高さを電気抵抗調整層202の高さよりも高くする。前述のように空隙が大きくなると感光体ドラム101の電気的劣化や異常放電が発生しやすくなるため、その高低差、つまり空隙間隔は100μm以下であることが望ましい。
【0019】
図5及び図6は、空隙保持部材の形成方法及び得られた導電性部材としての帯電ローラ102を示す模式図である。予め任意の形状に形成された空隙保持部材203を両端に段差部としての縮径部を有する電気抵抗調整層202の両端部に挿入する。次いで、切削加工等の除去加工を空隙保持部材203、電気抵抗調整層202と連続して行うことで、高低差を形成する。その結果、高低差のばらつきを例えば±10μm以下の高精度にすることができる。空隙保持部材203は電気抵抗調整層202の両端縮径部の外周面から端部側面を覆うように設置できるような形状をしていることが好ましく、これによって、除去加工時の刃具204の応力による空隙保持部材203の端部剥がれ、むしれ等が発生しにくくなり、空隙保持部材203の表面形状の変形、それに伴う空隙変動を抑止することができる。電気抵抗調整層202と被帯電体である感光体101表面との所定のギャップは、例えば10〜50μmとする。
【0020】
図10において、外径Aは、電気抵抗調整層202の外径であり、外径Bは、前記電気抵抗調整層202の縮径部である凹部の外径である。
また、図11は、コロの厚みと、80時間高温高湿環境に放置した後の上述したギャップとの関係を示す実験結果を示すグラフ図である。この結果より、コロの厚みとしては0.2mmから0.6mmが好ましく、上記外径Aは、例えば11.17mmであり、B/Aは以下の範囲となる。
本実施形態では電気抵抗調整層202の外径Aに対するその端部である縮径部の外径Bの割合(B/A)を0.87〜0.97の範囲とする。0.87(87%)未満の場合は、電気抵抗調整層202の部分とスペーサ(空隙保持部材)部分のコロ外径とで膨潤による膨張寸法の差が大きくなり、十分なギャップを保てなくなる。スペーサ部分の膨潤による膨張力が弱くなるのに対して、コロの厚みは増すため、コロが膨張しにくくなるためである。逆に、縮径部の外径Bが前記Aの0.97(97%)より大きくなると、コロ厚みが小となり、強度不足となるのみならず、コロ自体の製作が困難になる。
【0021】
本実施形態では、電気抵抗調整層202と被帯電体表面である例えば感光体101との所定のギャップは、10〜50μmの範囲としている。ギャップが10μm以下であると、異物の付着などにより、ギャップ保持効果が十分に得られにくく、ギャップが50μm以上であると、コロ厚みが大きくコロが膨張しにくいため、ギャップ保持が困難となるためである。またギャップを大きくすると、必要帯電電圧が大きくなることで、感光体フィルミングに対しての余裕度が低下する。フィルミングランク4以上が異常画像にならないレベルであり、ギャップが50μm以上であると、フィルミングランクとギャップとの関係を示す図である図15より、感光体フィルミングにより異常画像が発生する領域となることが分かる。従って、ギャップのMax値(上限限界値)を50μmとする。
本実施形態では、コロの厚さ、即ち空隙保持部材203の電気抵抗調整層202の縮径部に嵌合する部分の厚さは電気抵抗調整層202の外径Aに対して7〜12%に相当する範囲とする。7%よりも小さいと、コロの強度不足及び製作困難という問題が生じるからである。逆に、12%よりも大きいと、コロの強度が大となって膨張しにくくなり、ギャップが保てなくなるからである。
【0022】
本実施形態においては、空隙保持部材の電気抵抗調整層の端面に対向する部分の厚さをXとしたとき、1mm≦X≦3mmの関係を満たすようにする。
図12は、帯電ローラにおける各寸法を特定するためのデータを示す図である。図12において、Xが1mmより小さいと加工上難しくなり、加工できたとしても強度的に弱くなる。また、Xが3mmよりも大きいと強度が増し、コロ部の膨潤に対する効果が低減する。図12の縦軸は電気抵抗調整層202と被帯電体表面とのギャップの膨潤幅を示し、数値が大きくなると電気抵抗調整層202が膨潤していることを示す。なお、図12において、後述するX=0.1mm、X=5mmとした。
即ち、電気抵抗調整層202の膨潤に対して最も効果のある空隙保持部材203における各寸法である上記X、後述するX及びXの組み合わせは、X=1mm、X=1mm、X=空隙保持部材の電気抵抗調整層の端面に対向する面から画像形成領域端部までの長さである。また、逆に電気抵抗調整層202の膨潤に対して最も効果が小さいと考えられる組み合わせは、X>3mm 、X<0.1mm、X<5mmとなる。従って、それぞれX〜Xの数値を規定する際の他の試験条件としては、膨潤に対して効果が小さい範囲との境界値としてX=3mm、X=0.1mm、X=5mmを用いた。なお、図13及び図14においても同様である。
【0023】
帯電ローラにおける各寸法を特定するためのデータを示す図13において、Xが0.1mmよりも小さいと、電気抵抗調整層202の縮径部が膨潤したときの行き場がなくなり、膨潤に対する余裕度が低減する。また、Xが1mmより大きいと前記電気抵抗調整層202と被帯電体表面との所定のギャップを10〜50μmという高精度で保つ安定性がなくなる。なお、図13において、X=3mm、X=5mmとした。
帯電ローラにおける各寸法を特定するためのデータを示す図14において、Xが5mmよりも小さいと、長さが短いため電気抵抗調整層202が膨潤した時に、電気抵抗調整層202の縮径部のコロが持ち上がり、被帯電体表面とのギャップが大きくなってしまう。一方、長い分には、画像形成領域端部位置まで問題ない。
また得られた導電性部材は、電気抵抗調整層202が環境変動で寸法変化しても、電気抵抗調整層202の変化に空隙保持部材203が追従し変化することで、空隙変動を抑止することができる。なお、図14において、X=3mm、X=0.1mmとした。
この際、空隙保持部材203と電気抵抗調整層202との当接面に接着剤を塗布することで、長期間に渡って使用した際に、空隙保持部材203が脱離することを避けることができる。また、空隙保持部材203の除去加工時に刃具の応力による空隙保持部材203の端部剥がれ、むしれ等をより発生しにくくできる。
更に、接着前に空隙保持部材203にプライマー処理を施すことで、極性部分と非極性部分を持つプライマー有効成分が空隙保持部材203に浸透、配向することにより接着面の表面改質が起こるので、接着性が大幅に向上する
【0024】
空隙保持部材203は像担持体との当接時に基層との間にショート電流が発生することを防止するために電気絶縁性材料であることが必要である。体積抵抗率で1013Ωcm以上であることが望ましい。また空隙保持部材の全部が絶縁性材料である必要は無く、少なくとも電気抵抗調整層及び像担持体との当接部分等が絶縁性を備えているものであるならば、ショート電流の発生を防止することができる。
空隙保持部材203の材料としては、電気抵抗調整層202の寸法変動に追従可能な弾性を有し、かつ絶縁性材料である他は特に限定するものではないが、感光体101の摺動性に優れかつ感光体101を傷つけない程度に軟らかいこと、トナーが固着しにくいこと等の理由から、ポリエチレンやフッ素樹脂等が好ましい。
【0025】
電気抵抗調整層202は、例えば高分子型イオン導電材料を含む熱可塑性樹脂組成物により形成されている。高分子型イオン導電材料としては、例えばポリエーテルエステルアミド成分を含有する高分子化合物を用いる。ポリエーテルエステルアミドはイオン導電性の高分子材料であり、感光体へのリークが起こり難く、また表面へのブリードアウトが生じ難いことを特長とする材料である。
電気抵抗調整層202の体積抵抗率は10〜10Ωcmであることが望ましい。10Ωcmを越えると帯電量の不足により、均一画像を得る為の十分な帯電電位を得ることができなくなる。一方、10Ωcmよりも低いと、感光体欠陥部への電圧集中(リーク)、異常放電が生じ易くなる。電気抵抗調整層202は、上述したように、例えば高分子型イオン導電材料を含む熱可塑性樹脂組成物によって構成されるが、その目的から、絶縁性の熱可塑性樹脂を所定の割合でブレンドしてもよい。熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンおよびその共重合体等の汎用樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール等のエンジニアリングプラスチック等があげられる。配合量については、熱可塑性樹脂が0〜70重量%に対し、高分子型イオン導電材料が30〜100重量%とすることで所望の体積抵抗率を得ることができる
【0026】
電気抵抗調整層202の厚みは薄すぎるとリークによる異常放電が発生し、厚すぎると表面精度の維持が困難となる。従って、好ましくは100μm以上、500μm以下である。
電気抵抗調整層202を形成する熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、各材料の混合物を二軸混練機、ニーダー等で溶融混練することによって、容易に製造できる。電気抵抗調整層202を導電性支持体201の周面部に形成する工程は、押出成形や射出成形等の手段で導電性支持体201に上記熱可塑性樹脂組成物を被覆することによって、容易に行うことができる。
また導電性支持体201上に電気抵抗調整層202のみを形成して導電性部材を構成すると、電気抵抗調整層202にトナー等が固着して性能低下する場合がある。このような不具合は、電気抵抗調整層202に表面層を形成することで、無くすことができる。
表面層の抵抗値は電気抵抗調整層のそれよりも大きくなるように形成され、これによって感光体欠陥部への電圧集中、異常放電(リーク)を回避することができる。但し、表面層の抵抗値を高くしすぎると帯電能力や転写能力が不足してしまうため、表面層と電気抵抗調整層202との抵抗値の差を10Ωcm以下にすることが好ましい。
表面層を形成する材料としては、製膜性が良好であるという点で熱可塑性樹脂組成物が好適に用いられる。樹脂材料としては、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が非粘着性に優れ、トナー固着防止の面で好ましい。また、樹脂材料は電気的に絶縁性であるため樹脂に対して各種導電材料を分散することによって表面層の抵抗を調整する。
表面層の電気抵抗調整層202上への形成は、上記表面層構成材料を有機溶媒に分散して塗料を作製し、スプレー塗装、ディッピング等によってコーティングすることによって行う。膜厚は、10〜30μm程度が望ましい。
【0027】
以下、本発明の具体的な実施例を図面に基づき説明する。
(実施例1)
ステンレスからなる芯軸(外径8mm)に、電気抵抗調整層202としてABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業社製)50重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2×10Ωcm)を、射出成形により被覆し、外径14mm、両端縮径部外径11.3mmの電気抵抗調整層202を形成した。ついで電気抵抗調整層202の両端縮径部に、空隙保持部材203として高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックPP HY540、日本ポリケム社製)からなるリング状の空隙保持部材を挿入接着した。
次に、切削によって空隙保持部材203の外径(最大径)を12.1mm、電気抵抗調整層202の外径を12.0mmに同時仕上げし、図7に示す形状とした(空隙保持部材203のA部厚み0.4mm、B部厚み2mm、C部幅8mm)。次いで、電気抵抗調整層202の表面に、アクリルシリコーン樹脂(3000VH−P、川上塗料社製)、イソシアネート系硬化剤(川上塗料社製)、及びカーボンブラック(全固形分に対して30重量%)からなる混合物(表面抵抗:2×1010Ω)をスプレーコーティングすることにより膜厚約10μmの表面層を形成した。その後、オーブンで80℃、1時間、塗料樹脂を加熱硬化させ導電性部材を得た。
【0028】
(実施例2)
ステンレスからなる芯軸(外径8mm)に、電気抵抗調整層202としてABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業社製)50重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2×10Ωcm)を、射出成形により被覆し、外径14mm、両端縮径部外径11.1mmの電気抵抗調整層202を形成した。次いで、電気抵抗調整層202の両端縮径部に、空隙保持部材203として高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックPP HY540、日本ポリケム社製)からなるリング状の空隙保持部材を挿入接着した。
次に、切削によって空隙保持部材203の外径(最大径)を12.1mm、電気抵抗調整層202の外径を12.0mmに同時仕上げし、図7に示す形状とした(空隙保持部材のA部厚み0.5mm、B部厚み2mm、C部幅8mm)。次いで、電気抵抗調整層の表面に、アクリルシリコーン樹脂(3000VH−O、川上塗料社製)、イソシアネート系硬化剤(川上塗料社製)、及びカーボンブラック(全固形分に対して30重量%)からなる混合物(表面抵抗:2×1010Ω)をスプレーコーティングすることにより膜厚約10μmの表面層を形成した。その後、オーブンで80℃、1時間、塗料樹脂を加熱硬化させ導電性部材を得た。
【0029】
(実施例3)
ステンレスからなる芯軸(外径8mm)に、電気抵抗調整層としてABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業社製)50重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2×10Ωcm)を、射出成形により被覆し、外径14mm、両端段差部としての縮径部の外径10.9mmの電気抵抗調整層202を形成した。次いで、電気抵抗調整層の両端縮径部に、空隙保持部材として高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックPP HY540、日本ポリケム社製)からなるリング状の空隙保持部材203を挿入接着した。
次に、切削によって空隙保持部材の外径(最大径)を12.1mm、電気抵抗調整層202の外径を12.0mmに同時仕上げし、図7に示す形状とした(空隙保持部材のA部厚み0.6mm、B部厚み2mm、C部幅8mm)。次いで、電気抵抗調整層202の表面に、アクリルシリコーン樹脂(3000VH−P、川上塗料社製)、イソシアネート系硬化剤(川上塗料社製)、及びカーボンブラック(全固形分に対して30重量%)からなる混合物(表面抵抗:2×1010Ω)をスプレーコーティングすることにより膜厚約10μmの表面層を形成した。その後、オーブンで80℃、1時間、塗料樹脂を加熱硬化させ導電性部材を得た。
【0030】
(実施例4)
ステンレスからなる芯軸(外径8mm)に、電気抵抗調整層としてABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業社製)50重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2×10Ωcm)を、射出成形により被覆し、外径14mm、両端段差部外径10.9mmの電気抵抗調整層202を形成した。ついで電気抵抗調整層の両端段差部に、空隙保持部材として高密度ポリエチレン樹脂(ノバテックPP HY540、日本ポリケム社製)からなるリング状の空隙保持部材203を挿入接着した。
次に、切削によって空隙保持部材の外径(最大径)を12.1mm、電気抵抗調整層の外径を12.0mmに同時仕上げし、図7に示す形状とした(空隙保持部材のA部厚み0.5mm、B部厚み1mm、C部幅8mm)。次いで電気抵抗調整層202の表面に、アクリルシリコーン樹脂(3000VH-P、川上塗料製)、イソシアネート系硬化剤(川上塗料製)、及びカーボンブラック(全固形分に対して30重量%)からなる混合物(表面抵抗:2×1010Ω)をスプレーコーティングすることにより膜厚約10μmの表面層を形成した。その後、オーブンで80℃、1時間、塗料樹脂を加熱硬化させ導電性部材を得た。
【0031】
(比較例1)
ステンレスからなる芯軸(外径8mm)に、電気抵抗調整層202としてエピクロルヒドリンゴム(エピクロマーCG、ダイソー社製)100重量部に過塩素酸アンモニウム3重量部を配合したゴム組成物(体積抵抗率:4×10Ωcm)を、押出成形、加硫工程を経て被覆し、研削により外径12mmに仕上げた。次いで、この表面に、ポリビニルブチラール樹脂(デンカブチラール3000−K、電気化学工業社製)、イソシアネート系硬化剤、及び酸化スズ(全固形分に対して60重量%)からなる混合物(表面抵抗:2×1010Ω)により膜厚10μmの表面層を形成した。次いでこの両端部に、ポリアミド樹脂(ノバミッド1010C2、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)からなるリング状の空隙保持部材(外径12.1mm)を挿入接着し、導電性部材を得た。
【0032】
(比較例2)
ステンレスからなる芯軸(外径8mm)に、電気抵抗調整層としてエピクロルヒドリンゴム(エピクロマーCG、ダイソー社製)100重量部に過塩素酸アンモニウム3重量部を配合したゴム組成物(体積抵抗率:4×10Ωcm)を、押出成形、加硫工程を経て被覆し、研削により外径12mmに仕上げた。次いで、この表面に、ポリビニルブチラール樹脂(デンカブチラール3000−K、電気化学工業社製)、イソシアネート系硬化剤、及び酸化スズ(全固形分に対して60重量%)からなる混合物(表面抵抗:2×1010Ω)により膜厚10μmの表面層を形成した。次いでこの両端部周囲に、空隙保持部材としてテープ状部材(ダイタックPF025−H、大日本インキ社製)幅8mm、厚さ60μmを被覆し、導電性部材を得た。
【0033】
(比較例3)
ステンレスからなる芯軸(外径8mm)に、電気抵抗調整層としてABS樹脂(デンカABS GR−0500、電気化学工業社製)50重量%、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)50重量%からなる樹脂組成物(体積固有抵抗:2×10Ωcm)を、射出成形により被覆した。次いで、この両端部に、空隙保持部材としてポリアミド樹脂(ノバミッド1010C2、三菱エンジニアリングプラスチック社製)からなるリング状の空隙保持部材を挿入接着し、切削によって空隙保持部材203の外径(最大径)を12.1mm、電気抵抗調整層202の外径を12.0mmに同時仕上げし、図8に示す形状とした。次いで、この表面にポリビニルブチラール樹脂(デンカブチラール3000−K、電気化学工業社製)、イソシアネート系硬化剤、及び酸化スズ(全固形分に対して60重量%)からなる混合物(表面抵抗:2×1010Ω)により膜厚10μmの表面層を形成し、導電性部材を得た。
【0034】
(試験1)
以上の導電性部材を帯電ローラとして用い、図1に示した画像形成装置に搭載し、室温環境下(23℃、60%RH)で帯電部材と感光体間の空隙量を測定した。次いでLL;10℃、65%RH、HH;30℃、90%RHの各環境下に24h放置し、各環境下での帯電部材と感光体間の空隙量を測定し、各環境間の空隙変化量を算出した。評価結果を表1に示す。表1において、各実施例のローラは空隙量のばらつき及び各環境間の変化量が小さい結果が得られたことが分かる。
(試験2)
また、印加する電圧をDC=−800V、AC=2400Vpp(周波数=2kHz)に設定し、300,000枚通紙し、帯電部材と感光体間の空隙量及びローラ表面の状態並びに画像について評価を行った。評価環境は10,000枚ごとに23℃、60%RH、LL;10℃、65%RH、HH;30℃、90%の各環境を切り替えて行った。
評価結果を表1併せて示した。
表1において、実施例のローラは全項目で良好な結果が得られたが、比較例では不具合が見られた。
【0035】
【表1】

【0036】
図16は、本実施形態に係る帯電ローラ(図3)と従来技術における帯電ローラとの高温高湿環境に対する電気抵抗調整層202とこれに当接した像担持体表面とのギャップの経時変化を比較して示したものである。図16において、本実施形態の帯電ローラの方が従来技術の帯電ローラに比べて長期にわたってギャップが安定していることが分かる。
【0037】
本実施形態によれば、加工時に空隙保持部材203の端部剥がれが発生せず、感光体101との空隙を精度良く一定に保ち、かつ、空隙保持部材203が配置されている電気抵抗調整層が環境変動で寸法変化しても、電気抵抗調整層202の変化に追従することができるので、空隙変動を抑えることができる。
また、本実施形態によれば、空隙保持部材203と電気抵抗調整層202との高低差の形成を、除去加工による一体加工で行うことによって、前記高低差の精度をより高めることができる。
更に、本実施形態によれば、空隙保持部材203を電気抵抗調整層202上へ接着、固定することによって、樹脂どうしの接着力により、長期に渡って空隙保持部材203を確実に固定し、また除去加工時の空隙保持部材203のずれを防止して高精度の空隙を維持することができる。
更にまた、本実施形態によれば、空隙保持部材203に施されたプライマーを介して、空隙保持部材203が電気抵抗調整層202上へ接着固定することにより、樹脂どうしの接着をより強固にし、長期に渡って空隙保持部材203を確実に固定し、また除去加工時の空隙保持部材203のずれを防止して高精度の空隙を維持することができる。
【0038】
更にまた、本実施形態によれば、少なくとも空隙保持部材203の像担持体と当接する部分を絶縁性を有するものとすることによって、導電性部材に高電圧を印加したときに、空隙保持部材203と像担持体101との基層との間に異常放電(リーク)の発生を防止することができる。
更にまた、本実施形態によれば、電気抵抗調整層202に表面層を形成することによって、トナー及びトナーに添加されている添加剤が長期に渡って導電性部材表面に付着することを防止することができる。
更にまた、本実施形態によれば、前記表面層の抵抗を電気抵抗調整層202の抵抗より大きくすることによって、導電性部材へ高電圧を印加した際に像担持体欠陥部への電圧集中及び異常放電の発生を防止することができる。
本実施形態によれば、導電性部材を円筒形状としたので、導電性部材を回転させて同一箇所からの連続放電を防止し、これによって長寿命化を図ることができる。
本実施形態において、導電性支持体を帯電部材とすることが好ましい。これによって、例えば像担持体の帯電を均一に行うことができる。
更にまた、本実施形態において、導電性部材からなる帯電ローラ102を有する帯電装置と像担持体101とを一体化し、画像形成装置本体に対して着脱自在に形成することができる。これによって、例えば帯電ローラ102の交換が容易なカートリッジを提供することができる。
本実施形態において、上記プロセスカートリッジを例えば電子写真方式の画像形成装置に搭載することによって、長期に渡って安定した高品質の画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】画像形成装置の構成を示す断面図である。
【図2】プロセスカートリッジを備えた画像形成装置の説明図である。
【図3】本発明の導電性部材の構造を示す断面図である。
【図4】図3に示す導電性部材を感光体上に配置した状態を示す説明図である。
【図5】本発明に係る帯電ローラ(導電性部材)における電気抵抗調整層と空隙保持部材との取り付け工程を示した断面図である。
【図6】電気抵抗調整層と空隙保持部材とを有する帯電ローラにおける除去加工工程を示す断面図である。
【図7】実施形態に係る帯電ローラの端部を示す拡大断面図である。
【図8】従来技術の断面図である。
【図9】未公知の先行技術を示す断面図である。
【図10】実施形態係る帯電ローラの端部を示す拡大断面図である。
【図11】コロの厚みと、80時間高温高湿環境に放置後のギャップとの関係を示す図である。
【図12】実施形態に係る帯電ローラにおける各寸法を特定するためのデータを示す図である。
【図13】実施形態に係る帯電ローラにおける各寸法を特定するためのデータを示す図である。
【図14】実施形態に係る帯電ローラにおける各寸法を特定するためのデータを示す図である。
【図15】ギャップとフィルミングランクとの関係を示す図である。
【図16】本発明の効果を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
101 感光体ドラム
102 帯電ローラ
103 露光
104 現像ローラ
105 パワーパック
106 転写ローラ
107 記録紙
108 クリーニング装置
109 表面電位計
110 画像形成装置
111 プロセスカートリッジ
201 導電性支持体(心金)
202 電気抵抗調整層
203 空隙保持部材
204 刃具




【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の導電性支持体と、
この導電性支持体の外周面に設けられ、両端に縮径部を有する電気抵抗調整層と、
この電気抵抗調整層の前記縮径部にそれぞれ嵌合する一対の空隙保持部材とを有し、
前記空隙保持部材の外周面は、像担持体と当接したときに前記像担持体の外周面と前記電気抵抗調整層の外周面との間に所定の間隙が形成されるように前記電気抵抗調整層の外周面に対して高低差を有する導電性部材において、
前記空隙保持部材の前記電気抵抗調整層の端面に対向する部分の厚さをXとしたとき、
1mm≦X≦3mmの関係を満たすことを特徴とする導電性部材。
【請求項2】
長尺状の導電性支持体と、
この導電性支持体の外周面に設けられ、両端に縮径部を有する電気抵抗調整層と、
この電気抵抗調整層の前記縮径部にそれぞれ嵌合する一対の空隙保持部材とを有し、
前記空隙保持部材の外周面は、像担持体と当接したときに前記像担持体の外周面と前記電気抵抗調整層の外周面との間に所定の間隙が形成されるように前記電気抵抗調整層の外周面に対して高低差を有する導電性部材において、
前記電気抵抗調整層の端面とこの端面に対向する前記空隙保持部材面との間隔をXとしたとき、
0.1≦X≦1mmの関係を満たすことを特徴とする導電性部材。
【請求項3】
長尺状の導電性支持体と、
この導電性支持体の外周面に設けられ、両端に縮径部を有する電気抵抗調整層と、
この電気抵抗調整層の前記縮径部にそれぞれ嵌合する一対の空隙保持部材とを有し、
前記空隙保持部材の外周面は、像担持体と当接したときに前記像担持体の外周面と前記電気抵抗調整層の外周面との間に所定の間隙が形成されるように前記電気抵抗調整層の外周面に対して高低差を有する導電性部材において、
前記空隙保持部材の前記電気抵抗調整層の端面に対向する面と、前記電気抵抗調整層の縮径段差面までの間隔をXとしたとき、
前記Xは、5mm以上であり、且つ前記空隙保持部材の前記電気抵抗調整層の端面に対向する面から前記電気抵抗調整層における前記像担持体の画像形成領域の対応する端部に対向する位置までの長さよりも短いことを特徴とする導電性部材。
【請求項4】
前記電気抵抗調整層の両端縮径部の外径Bの前記電気抵抗調整層の外径Aに対する比B/Aは、0.87〜0.97であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項5】
前記電気抵抗調整層と前記像担持体表面との間の隙間は、10〜50μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項6】
前記空隙保持部材の前記電気抵抗調整層の縮径部に嵌合する部分の厚さは、前記電気抵抗調整層の外径Aの7〜12%相当であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項7】
前記電気抵抗調整層の端部縮径部に前記空隙保持部材を嵌合させた後、前記空隙保持部材の外周面と前記電気抵抗調整層の外周面とに加工を施して前記高低差を形成するようにしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項8】
前記空隙保持部材は、前記電気抵抗調整層の縮径部に接着、固定されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項9】
前記空隙保持部材表面にはプライマーが施されており、このプライマーを介して前記空隙保持部材が前記電気抵抗調整層の縮径部に接着、固定されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項10】
前記空隙保持部材は、少なくとも前記像担持体と当接する部分が絶縁性を有していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項11】
前記電気抵抗調整層の外周面に表面層が形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項12】
前記表面層の抵抗は、前記電気抵抗調整層の抵抗よりも大きいことを特徴とする請求項11に記載の導電性部材。
【請求項13】
前記導電性支持体は、円筒形状であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項14】
前記導電性支持体は、帯電部材であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項15】
画像形成装置の像担持体表面を一様に帯電させる帯電装置の帯電ローラにおいて、この帯電ローラは、請求項1〜14のいずれか1項に記載の導電性部材からなることを特徴とする帯電ローラ。
【請求項16】
像担持体と、この像担持体に近接するように配置された帯電装置とを一体化し、画像形成装置本体に対して着脱自在に形成したプロセスカートリッジにおいて、前記帯電装置は、請求項15に記載の帯電ローラを有するものであることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項17】
像担持体と、
像担持体表面に帯電を施す帯電装置と、
帯電した像担持体表面に画像データに基づいて露光して潜像を書き込む露光装置と、
像担持体表面に形成された静電潜像にトナーを供給して可視像化する現像装置と、
像転写後の前記像担持体表面に残存するトナーを回収するクリーニング装置と、
を有する画像形成製装置において、
この画像形成装置は、請求項16に記載のプロセスカートリッジを有するものであるか、又は前記帯電装置は、請求項15に記載の帯電ローラを有するものであることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−79323(P2007−79323A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−269332(P2005−269332)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】