説明

導電性高分子微粒子の製造方法、ならびにそれにより得られる導電性高分子微粒子およびその水系分散液

【課題】膜厚が厚くても透明性にすぐれた導電性薄膜を形成することができる導電性高分子微粒子およびその水系分散液を提供し、またそれらを効率良くかつ高純度で得ることができる製造方法を提供する。さらにまた、微細でありながら粒径のそろった導電性高分子微粒子の大量生産にも好適に対応しうる製造方法、ならびにそれにより得られる導電性高分子微粒子およびその水系分散液を提供する。
【解決手段】導電性高分子前駆体モノマー液を流通式反応装置の流路に導入し、流通過程で前記モノマーを酸化重合するとともに微粒子化する導電性高分子微粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子微粒子の製造方法、ならびにそれにより得られる導電性高分子微粒子およびその水系分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電膜は、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、太陽電池、タッチパネルなどの透明電極、ならびに電磁波シールド材などの基材のコーティングに用いられている。最も広く応用されている透明導電膜は、インジウム−スズの複合酸化物(ITO)の蒸着膜であるが、成膜に高温が必要であるとか、成膜コストが高いという問題点がある。塗布成膜法によるITO膜も、成膜に高温が必要であり、その導電性はITOの分散度に左右され、ヘイズ値も必ずしも低くない。さらに、ITOなどの無機酸化物膜は、基材の撓みによりクラックが入りやすく、そのため導電性の低下が起こりやすい。また、インジウムは希少金属であり供給源が限られ、供給量が変動したり、滞ったりするおそれがある。そのため、各種表示機器等のより安定した生産を維持するよう、ITOに替わる次世代の透明導電膜材料が切望されている。
【0003】
導電性高分子であるポリピロールやポリチオフェンは、微粒子分散状態でも導電性能を有しかつ空気中で安定なので、導電性塗料、防錆塗料、半導体材料、コンデンサ用電解質、有機EL素子の正孔輸送材や電極材、二次電池用電極材等への活用が期待されている材料である。有機材料である導電性高分子は低温かつ低コストで成膜可能なので、これをITOなどの無機材料に換えてを透明導電膜として用いることが提案されている。しかしながら、導電性高分子は有機材料ではあるが溶媒に不溶であるので通常微粒子状態で使用されるが、黒色の粉末状高分子を微粒子状態で導電性を維持しながら高い透明性を実現することは容易ではない。そのため、その改良を目指した多くの検討がなされている。
【0004】
ポリピロールの成形加工性の改良を目的として、ポリビニルアルコール(PVA)、界面活性剤等を用いてポリピロールを水性溶媒中に微分散させ、見掛け上均一な水系分散体を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この方法は、ピロールモノマーをPVAおよび所望によるノニオン界面活性剤および/またはアニオン界面活性剤の存在下で化学酸化重合することからなり、水溶性高分子であるPVAの分散作用、また界面活性剤による界面張力の低下作用により、化学酸化重合して得られるポリピロールを微粒子化して分散させる。この方法により、粒径0.03〜0.06μの範囲の安定微粒子分散液が合成可能としているが、その分散液の透明性については何ら述べられていない。
【0005】
ポリ酸の存在下重合することにより、好適な処理特性を有するポリチオフェンの水分散体を製造する方法が開示されている(特許文献2参照)。該特許において、ポリ酸として例えばポリスチレンスルホン酸の存在下、3,4−ジアルコキシチオフェンを酸化重合(空気や三価の鉄塩、過硫酸塩などを酸化剤として重合)し、ポリ−3,4−ジアルコキシチオフェンの淡青色微粒子分散液を製造している。そしてその分散液を用いて透明性の高い帯電防止膜の製造が可能としている。しかしながら、得られる微粒子の粒径については何ら述べられておらず、またそれにより得られる膜の透明性については定性的な記述しかない。実際、得られる分散液の粒径は大きく、またその分布は広く、導電性を上げるために膜厚を高める用途には透明性がいまだ不十分である。
【0006】
最近、導電性高分子を形成するモノマーを反応性乳化剤の存在下に水中で化学酸化重合することで導電性高分子微粒子分散体を製造する方法が開示された(特許文献3参照)。該特許は、導電性高分子を形成するモノマーが重合した高分子粒子の表面が、反応性乳化剤のポリマーで被覆されているか又は反応性乳化剤と反応性乳化剤と共重合可能なラジカル重合性モノマーとで共重合したポリマーで被覆されていることを特徴としており、得られる導電性高分子微粒子分散体は分散安定性に優れ、それを含有する導電性塗料は透明性に優れているとしている。しかし、従来の方法に比べて分散安定性には優れるが、透明性については未だ不十分なものであった。
【特許文献1】特公平7−78116号公報
【特許文献2】特開平7−90060号公報
【特許文献3】特開2007−297500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の導電性ポリマーの水系分散体から導電性薄膜を形成した場合、薄い膜厚で所望の抵抗値を得ることは難しく、通常十分な抵抗値を達成するには数10μm以上の膜厚が必要であった。しかしながら、このような厚さの膜では、透明性の低い、黒色のものともなり外観を著しく損なうことがある。
本発明は、上記課題点を解決し、膜厚が厚くても透明性にすぐれた導電性薄膜を形成することができる導電性高分子微粒子およびその水系分散液の提供を目的とし、またそれらを効率良くかつ高純度で得ることができる製造方法の提供を目的とする。さらにまた、本発明は微細でありながら粒径のそろった導電性高分子微粒子の大量生産にも好適に対応しうる製造方法の提供、ならびにそれにより得られる導電性高分子微粒子およびその水系分散液の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、導電性高分子前駆体モノマーを流通過程で酸化重合して製造した導電性高分子微粒子を用いることにより、導電性を十分維持しながら透明性が高い薄膜を形成することができることを見出し、本発明を成すに至った。
【0009】
すなわち、上記の目的は、以下の手段により達成された。
(1)導電性高分子前駆体モノマー液を流通式反応装置の流路に導入し、流通過程で前記モノマーを酸化重合するとともに微粒子化することを特徴とする導電性高分子微粒子の製造方法。
(2)前記導電性高分子前駆体モノマー液が、該モノマーを分散相中に含有する乳化液であることを特徴とする(1)に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
(3)前記酸化重合が電解酸化重合であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
(4)前記流通式反応装置が前記電解酸化重合を行う電解酸化装置部を有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
(5)前記流通式反応装置の流路の等価直径が10mm以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
(6)前記流通式反応装置の流路の等価直径が1mm以下であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
(7)導電性高分子微粒子がその水系分散液として得られることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
(8)導電性高分子微粒子がポリチオフェンの微粒子であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
(9)(1)〜(8)のいずれか1項に記載の方法で製造された導電性高分子微粒子。
(10)(9)に記載の導電性高分子微粒子を含有する水系分散液。
(11)体積平均粒径(MV)が10〜70nmであり、体積平均粒径(MV)/個数平均粒径(MN)が1.2〜3.0であるポリチオフェン導電性高分子微粒子を含有する水系分散液。
(12)(11)記載の水系分散液をガラス基板にスピンコートし、乾燥工程を経て得られる300nmの厚さの薄膜としたとき、該薄膜の可視光線(550nm)の透過率が95%以上であることを特徴とするポリチオフェン導電性高分子微粒子の水系分散液。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、ウェットプロセスで容易に成膜でき、その薄膜は可撓性を有し、膜厚が厚くても十分な透明性を有し導電性に優れる導電膜を形成しうる導電性高分子微粒子及びその水系分散液を効率良くかつ高純度で得ることができる。また本発明の製造方法によれば、上記の優れた特性を発揮する、微細でありながら粒径のそろった導電性高分子微粒子及びその水系分散液の大量生産にも好適に対応しうる。
本発明の導電性高分子微粒子及びその水系分散液は、ITOに替わる、エレクトロルミネッセンスパネルの表面電極、液晶ディスプレイの画素電極、コンデンサーの電極、タッチパネルの透明電極などの各種透明電極を形成する透明導電性材料、ならびにブラウン管ディスプレイの電磁遮蔽材料として好適に利用できる。また、低温成膜が可能で、その薄膜は可撓性を有することから、プラスチックフィルム用の透明性の高い導電膜に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明の製造方法に用いられる導電性の高分子化合物の原料として用いるモノマー(以下、「導電性高分子前駆体モノマー」という。)は、チオフェン、ピロール、アニリン、およびそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。導電性高分子前駆体モノマーとして例えば、チオフェン誘導体としては、アルキルチオフェン(例えば3−メチルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ステアリルチオフェン、3−ベンジルチオフェン、3−メトキシジエトキシメチルチオフェン)、ハロゲン化チオフェン(例えば3−クロロチオフェン、3−ブロモチオフェン)、アリルチオフェン(3−フェニルチオフェン、3,4−ジフェニルチオフェン、3−メチル−4−フェニルチオフェン)、アルコキシチオフェン(例えば3,4ジメトキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン)等が挙げられる。ピロール誘導体としては、N−アルキルピロール(例えばN−メチルピロール、N−エチルピロール、メチル−3−メチルピロール、N−メチル−3−エチルピロール)、N−アリールピロール(例えばN−フェニルピロール、N−ナフチルピロール、N−フェニル−3−メチルピロール、N−フェニル−3−エチルピロール)、3−アルキルピロール(例えば3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−ブチルピロール)、3−アリールピロール(例えば3−フェニルピロール、3−トルイルピロール、3−ナフチルピロール)、3−アルコキシピロール(例えば3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−n−プロポキシピロール、3−n−ブトキシピロール)、3−アリールオキシピロール(例えば3−フェノキシピロール、3−メチルフェノキシピロール)、3−アミノピロール(例えば3−ジメチルアミノピロール、3−ジエチルアミノピロール、3−ジフェニルアミノピロール、3−メチルフェニルアミノピロール、3−フェニルナフチルアミノピロール)等が挙げられる。また、アニリン誘導体としては、アルキルアニリン(例えばo−メチルアニリン、m−メチルアニリン、o−エチルアニリン、m−エチルアニリン、o−エトキシアニリン、m−ブチルアニンリン、m−ヘキシルアニリン、m−オクチルアニリン、2,3−ジメチルアニリン、2,5−ジメチルアニリン)、アルコキシアニリン(例えばm−メトキシアニリン、2,5−ジメトキシアニリン)、アリールオキシアニリン(例えば3−フェノキシアニリン)シアノアニリン(例えばo−シアノアニリン、m−シアノアニリン)、ハロゲン化アニリン(例えば、m−クロロアニリン、2,5−ジクロロアニリン、2−ブロモアニリン、5−クロロ−2−メトキシアニリン)等が挙げられる。好ましい導電性高分子前駆体モノマーは、チオフェン誘導体であり、更に好ましくはアルコキシチオフェンである。特に好ましくは3,4−ジアルコキシチオフェンである。3,4−ジアルコキシチオフェンについて、以下詳しく説明する。
【0012】
本発明の導電性高分子微粒子の製造方法に用いられる3,4−ジアルコキシチオフェンは、下記一般式(1)で表される。
【0013】
【化1】

【0014】
式中、RおよびRは相互に独立して水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基であるか、あるいはRとRとが結合して炭素原子数1〜4のアルキレン基を形成していてもよく、該アルキレン基は任意の置換基により置換されてもよい。
【0015】
一般式(1)において、RおよびRの炭素原子数1〜4のアルキル基としては、好適には、メチル基、エチル基、n−プロピル基などが挙げられる。RおよびRが結合して形成される炭素原子数1〜4のアルキレン基としては、1,2−アルキレン基、1,3−アルキレン基などが挙げられ、好ましくは、メチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基などが挙げられる。このうち、1,2−エチレン基が特に好ましい。また、炭素原子数1〜4のアルキレン基は置換されていてもよく、置換基としては、炭素原子数1〜12のアルキル基、フェニル基などが挙げられる。置換された炭素原子数1〜4のアルキレン基としては、1,2−シクロヘキシレン基、2,3−ブチレン基などが挙げられる。
【0016】
本発明の製造方法に用いられる導電性高分子前駆体モノマー液は、該モノマーを酸化重合反応に用いる溶媒に均一に溶解させた液であってもよいが、固体状のモノマーを分散させた分散液であってもよいし、該モノマーを連続層および/または分散相に含む乳化液であってもよい。本発明において乳化とは、液体(連続相)中に液体粒子(分散相)がコロイド粒子又はそれより粗大な粒子として分散して安定な乳状分散系をなすことをいう。本発明の導電性高分子前駆体モノマー液は該モノマーを分散相中に含有する乳化液であることが好ましく、連続相中に水を含む乳化液として用いることが特に好ましい。該モノマー液は導電性高分子前駆体モノマー以外に溶媒および/または後述する各添加剤を導入してもよい。導電性高分子前駆体モノマー液中の導電性高分子前駆体モノマーの濃度は好ましくは0.01〜100質量%であり、より好ましくは0.1〜50質量%であり、特に好ましくは1.0〜20質量%である。ただし、80〜100質量%の場合は液状モノマーに限る。
【0017】
本発明の導電性高分子前駆体モノマーから得られる導電性高分子は、好ましいモノマーである3,4−ジアルコキシチオフェンで示せば一般式(2)で表されるような構造単位からなるポリマーである。尚、導電性高分子は溶剤に不溶なため、通常の測定方法によりポリマーの物性を規定するために用いる平均分子量を特定することは難しい。
【0018】
【化2】

【0019】
式中、R11は前記R、R22は前記Rと同義の基を表わす。
【0020】
本発明の製造方法で得られる導電性高分子微粒子の粒径(本発明において粒径とは粒子の直径をいう。)は動的光散乱法により測定された体積平均粒径(Mv)が10〜70nmであることが好ましく、10〜50nmであることがより好ましい。単分散性については、その指標である体積平均粒径(Mv)を個数平均粒径(Mn)で除した値(Mv/Mn)を用い、その値が1.2〜3.0であることが好ましく、1.2〜2.0であることがより好ましい。
なお、粒子の粒径測定方法としては、顕微鏡法、動的光散乱法、電気抵抗法などを用いることができる。本発明における粒径は、特に断らない限り、動的光散乱法による(機器は日機装社製ナノトラックUPA―EX150[商品名])、分散液の濃度0.2質量%での測定値をいう。
【0021】
本発明の製造方法においては、導電性高分子前駆体モノマー液は前記流通式反応装置中の流通過程で酸化重合されるが、以下にその酸化重合方法について詳しく説明する。
流通過程で酸化重合する方法としては、酸化剤と流通過程で接触させて重合させる化学酸化重合と、流通過程でモノマー液を電極の間を通過させることで電気的に酸化する電解酸化重合とが挙げられる。
【0022】
本発明の流通過程での酸化重合において、得られる微粒子分散液の透明性および導電性を高めるために陰イオンを共存させてもよい。特にポリ陰イオンの共存がよい結果を与える場合が多い。共存させてもよいポリ陰イオンとしては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸などのポリカルボン酸類、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸などのポリスルホン酸類などが挙げられる。これらの中で、ポリスチレンスルホン酸が特に好ましい。これらのカルボン酸およびスルホン酸類はまた、ビニルカルボン酸類またはビニルスルホン酸類と他の重合可能なモノマー類(例えば、アクリレート類、スチレンなど)との共重合体であっても良い。また、上記ポリ陰イオンの数平均分子量は、1,000〜2,000,000の範囲が好ましく、2,000〜500,000の範囲がより好ましく、10,000〜200,000の範囲が特に好ましい。ポリ陰イオンの使用量は、導電性高分子前駆体モノマー100重量部に対して、50〜3,000の範囲が好ましく、100〜1,000の範囲がより好ましく、150〜500の範囲が特に好ましい。
【0023】
酸化重合反応に用いる溶媒は、重合に不活性な溶媒であれば特に制限はないが、酸化重合過程に用いられる溶媒は化学酸化重合においては、酸化剤を十分に溶解可能な溶媒が好ましく、電解酸化重合においては伝導性を有する溶媒が好ましい。両方の酸化重合に用いることが可能な溶媒を具体的に示せば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノールもしくはエチレングリコールなどのアルコール類溶媒、アセトンもしくはメチルエチルケトンのケトン系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒、ジメチルアセトアミドもしくはN−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、または水である。これらのうち特に水が好ましく、水に前記溶媒を混合して用いても良い。水を含む溶媒を用いた場合、得られる導電性高分子微粒子分散液は水系分散液として得られる。本発明においては、導電性高分子微粒子がその水系分散液として得られることが好ましい。また、微粒子分散液の安定性を悪化させない範囲で他の有機溶媒を添加して用いてもよい。
【0024】
重合を行う際の反応混合液の温度は、−78〜100℃であることが好ましく、副反応を抑制する観点から、−10〜60℃がより好ましく、0〜50℃が特に好ましく、0〜30℃であることが殊更好ましい。
【0025】
また重合に際して、反応系中にドーピング剤(ドーパント)を共存させることにより、ドーパントを重合体中に導入することもできる。用いられるドーパントとしては、一般に使用されるアクセプター性のドーパントであれば特に制限はなく、例えば、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、5フッ化リン等のルイス酸、塩化水素、硫酸等のプロトン酸、塩化第二鉄等の遷移金属塩化物、過塩素酸銀、フッ化ホウ素酸銀等の遷移金属化合物が挙げられる。また重合に用いる酸化剤の一部が重合体中に取り込まれドーパントの役割を果たすこともある。このようなドーパントの導入は本発明において必須ではないが、ドーパントを導入することによって、さらなる導電性能の向上が可能である。
【0026】
高分子の性能を悪化させない範囲で界面活性剤を使用してもよいし、ドープ剤として(ポリ)陰イオンを共存させるときは、それを界面活性剤の代わりとしてもよい。界面活性剤は(1)析出した微粒子表面に素早く吸着して、微細な粒子を形成し、かつ(2)これらの粒子が再び凝集することを防ぐ作用を有するものであることが好ましい。本発明では、このような界面活性剤(分散剤)として、アニオン性、カチオン性、両イオン性、ノニオン性もしくは顔料性の低分子または高分子分散剤、又は高分子分散剤を使用することができる。これらの分散剤は、単独あるいは併用して使用することができる。
【0027】
アニオン性分散剤(アニオン性界面活性剤)としては、アシルメチルタウリン塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。なかでも、アシルメチルタウリン塩が好ましい。これらアニオン性分散剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
カチオン性分散剤(カチオン性界面活性剤)には、四級アンモニウム塩、アルコキシル化ポリアミン、脂肪族アミンポリグリコールエーテル、脂肪族アミン、脂肪族アミンと脂肪族アルコールから誘導されるジアミンおよびポリアミン、脂肪酸から誘導されるイミダゾリンおよびこれらのカチオン性物質の塩が含まれる。これらカチオン性分散剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
両イオン性分散剤(両イオン性界面活性剤)は、前記アニオン性分散剤が分子内に有するアニオン基部分とカチオン性分散剤が分子内に有するカチオン基部分を共に分子内に有する分散剤である。
【0030】
ノニオン性分散剤(ノニオン性界面活性剤)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。なかでも、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルが好ましい。これらノニオン性分散剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
本発明において化学的酸化重合に用いる酸化剤としては、流通過程でモノマーを十分に酸化重合させる能力があれば特に限定されないが、好ましくはペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、無機酸化第二鉄塩、有機酸化第二鉄塩、過酸化水素、過酢酸、過マンガン酸カリウム、硫酸セリウム、ニクロム酸カリウム、過ホウ酸アルカリ塩、銅塩などである。特に好ましくは、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、およびペルオキソ二硫酸アンモニウムである。また、助酸化剤(メディエーター)として触媒量の金属イオン、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、バナジウムイオンなどを添加しても良い。酸化剤の使用量は、上記導電性高分子前駆体モノマー1モル当たり、1から5当量の範囲が好ましく、より好ましくは、2から4当量の範囲である。反応温度は、用いるモノマー、酸化剤の種類や量等により適宜調節すればよいが、−78〜100℃で行うことが好ましく、−10〜60℃で行うことがより好ましい。
【0032】
次に電解酸化重合について説明する。
電解重合は、電解条件下に不活性である溶媒の存在下、又は非存在下に実施することができ、不活性である溶媒の存在下に実施することが好ましい。また、溶媒に所定の添加剤を添加してもよい。電解酸化重合に用いる添加剤としては、電解質化合物、メディエーター(助酸化剤)等が挙げられる。
【0033】
好ましく使用される電解質化合物は、使用する溶媒にある程度の溶解性を有する遊離酸又は標準的な導電性を有する塩である。電解質化合物として適している化合物は、例えば、遊離酸ではp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、並びに塩としてアルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、テトラフルオロホー酸塩、ヘキサフルオロ燐酸塩、過塩素酸塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、ヘキサフルオロ砒酸塩、及びヘキサクロロアンチモン酸塩及びアルカリ金属、アルカリ土類金属、又は随時アルキル化されていて良いアンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム、及びオキソニウムカオチンが挙げられる。
【0034】
電解質化合物は、電解中少なくとも0.1mAの電流が流れるのに必要な量を使用することが好ましい。電解酸化重合の際の導電性高分子前駆体モノマー液の導電性高分子前駆体モノマーの濃度は、特に限定されないが、
0.01〜100質量%であることが好ましく、0.05〜20質量%であることがより好ましい。100質量%は液状モノマーの場合である。
【0035】
電解重合においては、反応基質(モノマーまたはオリゴマー)と電極との電子移動を仲立ちするメディエーター(助酸化剤)を共存させることが好ましい。メディエーターとして有機、無機、金属メディエーターがあるが、好ましくは有機もしくは無機メディエーターである。具体的には2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(TEMPO)のN−オキシル化合物などの有機メディエーターや塩化鉄など無機メディエーターである。
【0036】
電解重合は、不連続的に又は連続的に実施することができる。電極材料として適している材料としては、例えば、貴金属及び鋼が挙げられる。具体的には、白金シート、鋼板、貴金属及び鋼の網、カーボンブラック充填ポリマー、金属蒸着絶縁層、カーボンフェルト等である。その他、膨潤性ポリマーフィルム(例えば、ポリ塩化ビニールフィルム)を塗布した電極を用いることができる。
電解酸化重合の電流密度は広い範囲で変えることができ、電流密度は0.0001〜100mA/cmが好ましく、0.01〜40mA/cmがより好ましい。このような電流密度で電圧は約0.1〜50Vであることが好ましく、0.5〜30Vであることがより好ましい。
電解酸化重合を行う際の反応温度は、0〜100℃であることが好ましく、副反応を抑制する観点から、0〜50℃がより好ましく、0〜30℃であることが特に好ましい。
【0037】
電解酸化重合法については、特開昭61−8344号公報、同63−137925号公報、特開平1−313521号公報の記載を参考にすることができる。
【0038】
本発明の製造方法において、導電性高分子前駆体モノマー液は流通式反応装置中の流通過程で酸化重合されるが、流通式反応装置の流通過程について以下に詳しく説明する。酸化重合を流通過程で行うことにより導電性高分子前駆体モノマーの酸化重合を反応釜中で行うバッチ法に比べて均一な条件下で重合反応を行うことができる。また、電解酸化重合の場合、電解槽を用いるバッチ法では、導電性高分子が電極上に堆積した膜として得られるため微粒子として得ることは困難である。
【0039】
本発明において、流通過程の中でも層流下、または層流と乱流の間に位置する過渡状態下の過程で酸化重合することが好ましい。層流および乱流とは以下のように説明される。管の中に水を流し、その中心軸状に細い管を挿入し着色した液を注入すると、水の流速が遅い間は、着色液は一本の線となって流れ、水は管壁に平行にまっすぐに流れる。しかし、流速を上げ、ある一定の流速に達すると急に水流の中に乱れが生じ、着色液は水流と混じって全体が着色した流れになる。前者の流れを層流(laminar flow)、後者を乱流(turbulent flow)という。その間を過渡状態の流れという。
【0040】
流れが層流になるか乱流になるかは流れの様子を示す無次元数であるレイノルズ数(Reynolds number)が、ある臨界値以下であるか否かによって決まる。レイノルズ数が小さいほど層流を形成しやすい。管内の流れのレイノルズ数Reは次式で表される。
Re=D<υ>ρ/μ
Dは管の等価直径、<υ>は断面平均速度、ρは流体の密度、μは流体の粘度を表す。この式からわかるように等価直径が小さいほどレイノルズ数は小さくなるので、μmサイズの等価直径の場合は安定な層流を形成しやすくなる。また、密度や粘度の液物性もレイノルズ数に影響し、密度が小さく、粘度が大きいほどレイノルズ数は小さくなるので層流を形成しやすいことがわかる。
【0041】
流れが変化する臨界値のレイノルズ数を臨界レイノルズ数(critical Reynolds number)と呼ぶ。臨界レイノルズ数は必ずしも一定とはいえないが、凡そ次の値が基準となる。(荻野文丸総編集、「化学工学ハンドブック」、p37、2004年、朝倉書店)
Re<2300 層流
Re>4000 乱流
4000≧Re≧2300 過渡状態(遷移領域)
【0042】
過渡状態の流れとして、例えば層流渦の領域から乱流領域までを含む流れであるカルマン渦やテーラー渦等がある(「化学工学便覧改訂六版,化学工学会編,丸善株式会社」、「理化学辞典第5版,岩波書店」、「M.Engler et al.,“Effective Mixing by the Use of Convective Micro Mixers”,Conference Proceedings,2005 Spring National Meeting,AIChE,128d」、特開2006−342304号公報参照)。
【0043】
層流又は過渡状態(Re<4000)の流通過程で微粒子形成を行い、粒子の成長速度を制御することにより、粒子サイズが小さく、かつその分布が狭い微粒子分散液を効率良く調製することができる。この流通過程での酸化重合による導電性高分子微粒子析出は、粒子サイズ、その分布、分散安定性に優れ、しかも生産効率が高い点で特に好ましい。とりわけ、粒径分布の幅が狭い(単分散度性に優れる)微粒子であることは透明性に優れた薄膜形成に好ましい。
【0044】
本発明の製造方法において、好ましい流通式反応装置は流路の等価直径が10mm以下の装置であり、特に好ましくは等価直径1mm以下の装置である。流路の等価直径1mm以下の流通式反応装置は、一般に「マイクロリアクター」と総称され、最近大きな発展を遂げている。代表的マイクロリアクターには、その断面を円形に換算した場合の等価直径が数μm〜数百μm程度の複数本のマイクロ流路(上記の反応装置)、及びこれらのマイクロ流路と繋がる混合空間が設けられており、このマイクロリアクターでは、複数本のマイクロ流路を通して複数の溶液をそれぞれ混合空間へ導入することで、複数の溶液を混合し、又は混合と共に化学反応を生じさせることができる。
【0045】
次に、上記のようなマイクロリアクターによる反応がタンク等を用いたバッチ方式と異なる点を説明する。すなわち、液相間の化学反応では、一般に反応液の界面において分子同士が出会うことによって反応が起こるので、微小空間(マイクロ流路)内で反応を行うと相対的に界面の面積が大きくなり、反応効率は著しく増大する。また前記のように分子の拡散そのものも拡散時間は距離の二乗に比例する。このことは、スケールを小さくするに従って、反応液を能動的に混合しなくても、流通域で分子の拡散によって混合が進み、反応が起こり易くなることを意味している。また、微小空間においては、スケールが小さいために層流支配の流れとなり、溶液同士が層流状態となって互いに拡散し、混合されて行く。
【0046】
上記のような特徴を有するマイクロリアクーを用いれば、反応の場として大容積のタンク等を用いた従来のバッチ方式と比較し、溶液同士の反応時間及び温度の精密な制御が可能になる。またバッチ方式の場合には、特に、反応速度が速い溶液間では混合初期の反応接触面で反応が進行し、さらに溶液間の反応により生成された一次生成物が容器内で引き続き反応を受けてしまうことから、生成物が不均一になったり、混合容器内で凝集や析出が生じてしまうおそれがある。これに対して、マイクロリアクターによれば、溶液が混合容器内に殆ど滞留することなく連続的に流通するので、溶液間の反応により生成された一次生成物が混合容器内に滞留する間に引き続き反応を受けてしまうことを抑止でき、従来では取り出すことが困難であった純粋な一次生成物を取り出すことも可能になる。
【0047】
また、実験的な製造設備により製造された少量の化学物質を大規模の製造設備により多量に製造(スケールアップ)する際には、従来、実験的な製造設備に対し、バッチ方式による大規模の製造設備での再現性を得るために多大の労力及び時間を要していたが、必要となる製造量に応じてマイクロリアクーを用いた製造ラインを並列化することにより、このような再現性を得るための労力及び時間を大幅に減少できる可能性がある。
【0048】
本発明の製造方法に用いられる流路の作製方法を以下に説明する。流路の等価直径が1mm以上のサイズの場合は従来の機械加工技術を用いることで比較的容易に作成可能であるが、サイズが1mm以下のマイクロサイズ、特に500μm以下になると格段に作製が難しくなる。マイクロサイズの流路(マイクロ流路)は固体基板上に微細加工技術を用いて作成される場合が多い。基板材料としては腐食しにくい安定な材料であれば何でもよい。例えば、金属(例えば、ステンレス、ハステロイ(ニッケル−鉄系合金)、ニッケル、アルミニウム、銀、金、白金、タンタルまたはチタン)、ガラス、プラスチック、シリコーン、テフロン(登録商標)またはセラミックスなどである。
【0049】
マイクロ流路を作製するための微細加工技術として代表的なものを挙げれば、X線リソグラフィを用いるLIGA(Roentgen−Lithographie Galvanik Abformung)技術、EPON SU−8(商品名)を用いた高アスペクト比フォトリソグラフィ法、マイクロ放電加工法(μ−EDM(Micro Electro Discharge Machining))、Deep RIE(Reactive Ion Etching)によるシリコンの高アスペクト比加工法、Hot Emboss加工法、光造形法、レーザー加工法、イオンビーム加工法、およびダイアモンドのような硬い材料で作られたマイクロ工具を用いる機械的マイクロ切削加工法などがある。これらの技術を単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。好ましい微細加工技術は、X線リソグラフィを用いるLIGA技術、EPON SU−8を用いた高アスペクト比フォトリソグラフィ法、マイクロ放電加工法(μ−EDM)、および機械的マイクロ切削加工法である。また、近年では、エンジニアリングプラスチックへの微細射出成型技術の適用が検討されている。
【0050】
マイクロ流路を作成する際、よく接合技術が用いられる。通常の接合技術は大きく固相接合と液相接合に分けられ、一般的に用いられている接合方法は、固相接合として圧接や拡散接合、液相接合として溶接、共晶接合、はんだ付け、接着等が代表的な接合方法である。さらに、組立に際しては高温加熱による材料の変質や大変形による流路等の微小構造体の破壊を伴わない寸法精度を保った高度に精密な接合方法が望ましいが、そのような技術としてはシリコン直接接合、陽極接合、表面活性化接合、水素結合を用いた直接接合、フッ化水素水溶液を用いた接合、金−ケイ素共晶接合、ボイドフリー接着などがある。
【0051】
本発明の製造方法に用いられる装置における流路の等価直径は、好ましくは10mm以下であり、1mm以下であることがより好ましく、10μm〜1mmであることがさらに好ましく、20〜500μmであることが特に好ましい。また流路の長さは特に限定されないが、1mm以上10m以下であることが好ましく、5mm以上10m以下であることがより好ましく、10mm以上5m以下であることが特に好ましい。
【0052】
本発明の製造方法においては、導電性高分子微粒子をその分散液中に生成させることが好ましく、流路中に流通させながら連続フロー法で行うことが好ましい。流通式反応装置において流路の数は、1つでも構わないが、必要に応じて流路を複数並列化し(ナンバーリングアップ)、その処理量を増大させることができる。並列本数は、製造する微粒子の種類、目的とする生産量などによるが、5〜1000本が好ましく、10〜100本がより好ましい。流路は、固体基板上に微細加工技術を用いて作成されたものに限らず、例えば、入手可能な数μm〜数百μmの内径を有する各種ヒューズドシリカキャピラリーチューブでもよい。高速液体クロマトグラフ用、ガスクロマトグラフ用部品として市販されている数μm〜数百μmの内径を有する各種シリコンチューブ、フッ素樹脂製管、ステンレス管、PEEK管(ポリエーテルエーテルケトン管)も同様に利用可能である。
これまでにマイクロリアクターに関しては、反応の効率向上などを目指したデバイスに関する報告がなされている。例えば、特開2003−210960号、特開2003−210963号、特開2003−210959号の各公報にはマイクロミキサーに関して記載されており、これらのマイクロデバイスを利用することもできる。
【0053】
本発明の製造方法において、上記流路は目的に応じて表面処理してもよい。特に水溶液を操作する場合、ガラスやシリコンへの試料の吸着が問題になることがあるので表面処理は重要である。マイクロサイズの流路内における流体制御では、複雑な製作プロセスを要する可動部品を組み込むことなくこれを実現することが望ましい。例えば、流路内に表面処理により親水性と疎水性の領域を作製し、その境界に働く表面張力差を利用して流体を操作することが可能である。ガラスやシリコンの表面処理する方法として多用されるのはシランカップリング剤を用いた疎水または親水表面処理である。
【0054】
流路中へ試薬やサンプルなどを導入して混合するためには、流体制御機能が必要である。特に、マイクロ流路内における流体の挙動は、マクロスケールとは異なる性質を持つため、マイクロスケールに適した制御方式を考えなければならない。流体制御方式は形態分類すると連続流動方式と液滴(液体プラグ)方式があり、駆動力分類すると電気的駆動方式と圧力駆動方式がある。
【0055】
これらの方式を以下に詳しく説明する。流体を扱う形態として、最も広く用いられるのが連続流動方式である。連続流動式の流体制御では、マイクロ流路内は全て流体で満たされ、外部に用意したシリンジポンプなどの圧力源によって、流体全体を駆動するのが一般的である。この方法は、デッドボリュームが大きいことなどが難点であるが比較的簡単なセットアップで制御システムを実現できることが大きな利点である。
【0056】
連続流動方式とは異なる方式として、液滴(液体プラグ)方式がある。この方式では、リアクター内部やリアクターに至る流路内で、空気で仕切られた液滴を動かすものであり、個々の液滴は空気圧によって駆動される。その際、液滴と流路壁あるいは液滴同士の間の空気を必要に応じて外部に逃がすようなベント構造、および分岐した流路内の圧力を他の部分と独立に保つためのバルブ構造などを、リアクターシステム内部に用意する必要がある。また、圧力差を制御して液滴の操作を行うために、外部に圧力源や切り替えバルブからなる圧力制御システムを構築する必要がある。このように液滴方式では、装置構成やリアクターの構造がやや複雑になるが、複数の液滴を個別に操作して、いくつかの反応を順次行うなどの多段階の操作が可能で、システム構成の自由度は大きくなる。
【0057】
流体制御を行うための駆動方式として、流路(チャンネル)両端に高電圧をかけて電気浸透流を発生させ、これによって流体移動させる電気的駆動方法と、外部に圧力源を用意して流体に圧力をかけて移動させる圧力駆動方法が一般に広く用いられている。両者の違いは、たとえば流体の挙動として、流路断面内で流速プロファイルが電気的駆動方式の場合にはフラットな分布となるのに対して、圧力駆動方式では双曲線状に、流路中心部が速くて、壁面部が遅い分布となることが知られており、サンプルプラグなどの形状を保ったまま移動させるといった目的には、電気的駆動方式の方が適している。電気的駆動方式行う場合には、流路内が流体で満たされている必要があるため、連続流動方式の形態をとらざるを得ないが、電気的な制御によって流体の操作を行うことができるため、例えば連続的に2種類の溶液の混合比率を変化させることによって、時間的な濃度勾配をつくるといった比較的複雑な処理も実現されている。圧力駆動方式の場合には、流体の電気的な性質にかかわらず制御可能であること、発熱や電気分解などの副次的な効果を考慮しなくてよいことなどから、基質に対する影響がほとんどなく、その適用範囲は広い。その反面、外部に圧力源を用意しなければならないこと、圧力系のデッドボリュームの大小に応じて、操作の応答特性が変化することなど、複雑な処理を自動化する必要がある。
本発明の製造方法における流体制御方法として用いられる方法はその目的によって適宜選ばれるが、好ましくは連続流動方式の圧力駆動方式である。
【0058】
本発明の製造方法においては、流通式反応装置中で導電性高分子微粒子を得ることにより、フラスコ中で粒子形成したのでは得られない程に、粒径が揃った微粒子を得られる。さらに、この流通式反応装置をナンバリングアップ(並列化)すれば、微粒子およびその有機溶媒分散液を再現性よく大量に生産することができる。
【0059】
以下に本発明に用いられる好ましい流通式反応装置の具体例を示す。
本発明における酸化重合を化学酸化剤を用いて行う場合は、中心衝突型と呼ばれる溶液の合流方法を採用したマイクロリアクター装置を用いることが好ましい。図1は、立体型のマイクロリアクター装置10の一例であり、マイクロリアクター装置10を構成する3つのパーツを分解した状態を斜視図で示した分解斜視図である。立体型のマイクロリアクター装置10は、主として、それぞれが円柱状の形状をした供給ブロック11、合流ブロック12、及び反応ブロック13により構成される。そして、マイクロリアクター装置10を組み立てるには、円柱状をしたこれらのブロック11、12、13を、この順番で互いの側面同士を合わせて円柱状になるようにし、この状態で各ブロック11、12、13をボルト・ナット等により一体的に締結する。
【0060】
供給ブロック11の合流ブロック12に対向する側面13には、2本の環状溝14、15が同心状に穿設されており、マイクロリアクター装置10を組み立て状態において、2本の環状溝16、15は溶液Bと溶液Aとがそれぞれ流れるリング状流路を形成する。ここで化学酸化による本実施態様においては溶液A及びBは、それぞれ導電性高分子前駆体モノマー液と酸化剤液となる。そして、供給ブロック11の合流ブロック12に対向しない反対側の側面24から外側環状溝16と内側環状溝15に達する貫通孔18、17がそれぞれ形成される。かかる2本の貫通孔18、17のうち、外側の環状溝16に連通する貫通穴18には、溶液Aを供給する供給手段(ポンプ及び連結チューブ等)が連結され、内側環状溝15に連通する貫通孔17には、溶液Bを供給する供給手段(ポンプ及び連結チューブ等)が連結される。図1では、外側環状溝16に溶液Aを流し、内側環状溝15に溶液Bを流すようにしたが、逆にしてもよい。
【0061】
合流ブロック12の反応ブロック13に対向する側面19の中心には円形状の合流穴20が形成され、この合流穴20から放射状に4本の長尺放射状溝21、21・・・と4本の短尺放射状溝22、22・・・が交互に穿設される。これら合流穴20や放射状溝21,22はマイクロリアクター装置10を組み立て状態において、合流領域20となる円形状空間と溶液A,Bが流れる放射状流路とを形成する。また、8本の放射状溝21,22のうち、長尺放射状溝21の先端から合流ブロック12の厚み方向にそれぞれ貫通穴25、25・・・が形成され、これらの貫通穴25は供給ブロック11に形成されている前述の外側環状溝16に連通される。同様に、短尺放射状溝22の先端から合流ブロック12の厚み方向にそれぞれ貫通穴26、26・・・が形成され、これらの貫通穴26は供給ブロック11に形成されている内側環状溝15に連通される。
また、反応ブロック13の中心には、反応ブロック13の厚み方向に合流穴20に連通する1本の貫通孔23が形成され、この貫通孔23がマイクロ流路となる。
【0062】
これにより、溶液Aは供給ブロック11の貫通孔→外側環状溝16→合流ブロック12の貫通孔25→長尺放射溝21から構成される供給流路を流れて4つの分割流に分割されて合流領域(合流穴20)に至る。一方、溶液Bは供給ブロック11の貫通孔17→内側環状溝15→合流ブロック12の貫通孔26→短尺放射溝22から構成される供給流路を流れて4つの分割流に分割されて合流領域(合流穴20)に至る。合流領域において溶液Aの分割流と溶液Bの分割流とがそれぞれの運動エネルギーを有して合流した後、90°流れ方向を変えてマイクロ流路に流入する。
【0063】
本発明における酸化重合を電解酸化にて行う場合は、反応装置の実施形態として、流路の側面に電極を有する電解酸化装置を概略的に図2に示す。図3は図2のIII−III線断面を示す断面図である。尚、本発明がこれらに限定されないことはいうまでもない。本実施形態の装置においては、流路が1つのみの形態を示したが、前述のとおり流路を複数設けてもよい。
本実施形態の装置100は114が白金蒸着電極である。同装置100は導入口111、排出口112、流路113を有し、流路113の長さ方向に直交する断面の形状は必要に応じて微細加工しうるが、台形または矩形に近い形であることが好ましい。流路幅Wおよび流路深さHをマイクロメートルサイズにすれば、瞬時に加熱および冷却を行うことができる。導入口111から導入されたモノマー液は、電極を内蔵した流路長aで示される範囲を流通する過程で高分子微粒子分散液に電解酸化重合反応により変換される。
【0064】
流路を流れる流体の速度(流速)は、化学酸化重合及び電解酸化重合を含め0.1mL〜300L/hrとすることが好ましく、0.2mL〜30L/hrとすることがより好ましく、0.5mL〜15L/hrとすることが更に好ましく、1.0mL〜6L/hrとすることが特に好ましい。
【0065】
[透過率]
本発明の導電性高分子微粒子分散液の特徴は、それを用いて作製した薄膜の透過率が高く透明であることである。本発明において、薄膜の透過率は特に断らない限り、石英ガラス基板上に乾燥後ほぼ300nmの厚さになるようにスピンコート法にて薄膜を形成し、前記の乾燥工程を経て得られる薄膜塗布ガラス板を、ベースの石英ガラス基板をリファレンスとして分光光度計((株)島津製作所製MPC−2200)により測定した550nmの透過率値をいう。
【0066】
上記のガラス基板上の薄膜は、スピンコート・乾燥工程を経てほぼ300nmの厚さになるように作製する。ただし厚さのばらつきを考慮し、作製した薄膜の膜厚を触針式段差計(ULVAC, DEKTAK 6M[商品名])を用いて測定し、その値から300nmの厚さにおける透過率を算出する(透過率は膜厚に比例する)。このようにして得た、本発明の分散液によるガラス基板上の膜厚300nm薄膜の透過率(T)は、90%以上であり、好ましくは95%以上である。95%以上であるとはかなり透明性の良いレベルの膜である。
【0067】
本発明の分散液を基材上に塗布・乾燥場合の乾燥の温度は、20〜250℃であることが好ましく、50〜130℃であることがより好ましい。乾燥時間は3秒〜1週間であることが好ましく、5秒〜60秒であることがより好ましい。このようにして本発明の導電性高分子微粒子を有する透明導電膜を有する被覆基材が得られる。得られた基材表面の薄膜は、可撓性を有し、特にこれまでのポリチオフェン系導電性高分子分散液による薄膜に比べて、十分な導電性を有しながら高い透明性を示すものとすることができる。
【0068】
[表面低効率]
本発明において、導電性高分子微粒子を含有する膜の導電性は表明抵抗率(Surface Resistivity、単位Ω/□)で表す。測定は特に断らない限り、三菱化学製Loresta−EP MCP−T360(商品名)によって、湿度50%下において行った。表面抵抗率は、1×10〜1×10Ω/□の範囲であることが好ましく、1×10〜1×10Ω/□の範囲であることがより好ましい。
【0069】
本発明の導電性高分子微粒子の分散液を用いて作製した透明導電膜は、エレクトロルミネッセンスパネルの表面電極、液晶ディスプレイの画素電極、コンデンサーの電極、タッチパネルの透明電極などの各種透明電極、ならびにブラウン管ディスプレイの電磁遮蔽などに好適に用いられる。
【実施例】
【0070】
以下に実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0071】
(実施例1)
導電性高分子前駆体モノマー(3,4−エチレンジオキシチオフェン)14g(0.1モル)、ポリスチレンスルホン酸(Mw4,000)18g(0.1モルSOH)アニオン性界面活性剤(アクアロンKH−10、商品名、第一工業製薬(株)社製)2gとを、水300gとを激しく攪拌混合して調製した乳化液をIA液とした。酸化剤として過硫酸アンモニウム108g(0.4モル)を水600gに溶解した溶液をIIA液とした。マイクロリアクター装置として、流路本数(分割数)等を下記のようにした図1の立体型のマイクロリアクター装置を使用した。
【0072】
・供給流路本数(n)・・2種類の反応液それぞれについて3本に分割(合計6本の流路が合流する。なお図1の装置は各4本合計8本流路が合流する装置である。)
・供給流路21、22の幅(W)・・・各3.0mm
・供給流路21、22の深さ(H)・・・各0.5mm
・合流領域20の直径(D)・・・10mm
・マイクロ流路23の直径(R)・・・10mm
・マイクロ流路23の長さ(L)・・・10mm
・合流領域20において各供給流路21、22とマイクロ流路23との中心軸同士の交差角度・・・90°
・装置の材質・・・ステンレス(SUS304)
・流路加工法・・・マイクロ放電加工で行い、供給ブロック11、合流ブロック12、反応ブロック13の3つのパーツの封止方法は鏡面研磨による金属面シールで行った。二つの入り口に長さ50cm、等価直径1mmのテフロン(登録商標)チューブ2本をコネクターを用いて接続し、その先にそれぞれIA液とIIA液を入れたシリンジを繋ぎ、ポンプにセットした。コネクターの出口には長さ10m、等価直径8mmを有するテフロン(登録商標)チューブを接続した。
【0073】
上記のマイクロリアクター装置を用いコネクターの出口に接続したテフロン(登録商標)チューブのうちの6m長(出口から1m地点から7m地点)を温度を70℃に保ったオイルバスに浸けた状態で、IA液を10mL/min、IIA液を20mL/minの送液速度にて送り出した。導電性高分子微粒子分散液(試料1)が得られたのでこれを捕集した。
【0074】
この分散液試料1を限外濾過装置(アドバンテック東洋社製、UHP−62K、分画分子量5万)により蒸留水を加えてろ液を排除して体積を一定にしながら精製した後、5.0質量%まで濃縮した。この液の粒子の体積平均粒径Mvは69nmであり、単分散性の指標である体積平均粒径Mv/個数平均粒径Mnの比は2.8であった(粒子の粒径(Mv)及び単分散性(Mv/Mn)は日機装(株)社製のナノトラックUPA−EX150(商品名)にて、蒸留水で微粒子濃度0.2質量%に希釈して室温(約25℃)で測定した。)。
【0075】
[透過率の測定]
上記分散液試料1の5.0質量%濃縮液を上記のガラス基板上にスピンコートし(MIKASA社製、1H−PX2[商品名]を使用した。)、70℃で60分乾燥して、300nmの厚さになるようにて導電性高分子微粒子膜(試料1a)を作製した。得られた膜試料1aの膜圧を触針式段差計(ULVAC社製、DEKTAK 6M[商品名])を用いて測定し(このとき膜厚による誤差の補正を行ない、300nmの厚さにおける透過率値を算出した。)。薄膜試料1aの透過率(T)は90.5%であった。
【0076】
[導電性の測定]
上記の膜試料1aの表面抵抗率を湿度50%において三菱化学製Loresta EP MCP−T360を用いて測定した。その結果膜資料1aの表面抵抗率は8.1×10Ω/□であった。(以下、全て単位を加えてください。)
【0077】
(実施例2)
実施例1の条件に対して、流路21,22の幅と深さを0.3mm、合流領域20の直径を1mm、マイクロ流路23の等価直径を1mmとした以外同様にして、導電性高分子微粒子の分散液(試料2)を得た。合流後のマイクロ流路23内の滞留時間を同じにするために1A液の送液速度を0.3ml/min、IIA液の送液速度を0.6ml/minにする以外は実施例1と同様にして分散液試料2中の微粒子の粒径及び単分散度を測定したところ、体積平均粒径Mvは45.5nmであり、単分散性の指標である体積平均粒径Mv/個数平均粒径Mnの比は2.05であった。また実施例1と同様にして、分散液試料2から膜試料2aを作製し測定した透過率は92.3%であり、表面抵抗率は5.3×10であった。
【0078】
(実施例3)
実施例1の条件に対して、流路21,22の幅と深さを150μm、合流領域20の直径を300μm、マイクロ流路23の等価直径を300μmとした以外同様にして、導電性高分子微粒子の分散液(試料3)を得た。実施例1と同様にして分散液試料3中の微粒子の粒径及び単分散度を測定したところ、体積平均粒径Mvは40.3nmであり、単分散性の指標である体積平均粒径Mv/個数平均粒径Mnの比は1.83であった。また実施例1と同様にして、分散液試料3から膜試料3aを作製し測定した透過率は95.3%であり、表面抵抗率は1,2×10であった。
【0079】
(実施例4)
図2に示した反応装置として、流路幅(W)と深さ(H)とを300μm、流路長aを10cmとした流路113(等価直径300μm)を形成したセラミックス製装置本体100を準備し、テフロン(登録商標)チューブ2本を逆止弁付きコネクタを用いて導入口111に接続し、その先にIA液を入れたシリンジを繋ぎ、ポンプにセットした。排出口112に圧力調節弁を有するコネクタを接続し、それを介してテフロン(登録商標)チューブを接続した。
【0080】
装置本体10の大きさは20cm×6cm×10mmとした。白金電極114及び115は、それぞれ10cm(長さa)にわたって流路113の上下に配設された。それらは配線によりポテンショスタットに接続された。反応温度は約50℃になるよう調節し、流れるIA液に22mAの定電流(電圧は6〜7V)を印加し電解酸化重合反応を行った。
【0081】
上記の条件で実施例1で調製したIA液にメディエーターとして、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(TEMPO)1.4gを混合し、その溶液を20μL/minの流速で導入口111より注入したところ、排出口112から導電性高分子微粒子の分散液(試料4)が得られた。注入を1時間継続して、分散液をチューブの先端より捕集した。実施例1と同様にして分散液試料4中の微粒子の粒径及び単分散度を測定したところ、体積平均粒径Mvは30.5nmであり、単分散性の指標である体積平均粒径Mv/個数平均粒径Mnの比は1.22であった。また実施例1と同様にして、分散液試料4から膜試料4aを作製し測定した透過率は98.3%であり、表面抵抗率は1.2×10であった。
【0082】
(実施例5)
実施例3に対して、IA液の導電性高分子前駆体モノマーをピロールに等モル量で置き替えた以外同様にして、導電性高分子微粒子の分散液(試料5)を得た。実施例1と同様にして分散液試料5中の微粒子の粒径及び単分散度を測定したところ、体積平均粒径Mvは40.1nmであり、単分散性の指標である体積平均粒径Mv/個数平均粒径Mnの比は1.62であった。また実施例1と同様にして、分散液試料5から膜試料5aを作製し測定した透過率は97.2%であり、表面抵抗率は2.2×10であった。
(実施例6)
実施例4に対して、メディエーターTEMPOを塩化鉄(II)に置き替えた以外同様にして、導電性高分子微粒子の分散液(試料6)を得た。実施例1と同様にして分散液試料6中の微粒子の粒径及び単分散度を測定したところ、体積平均粒径Mvは33.3nmであり、単分散性の指標である体積平均粒径Mv/個数平均粒径Mnの比は1.32であった。また実施例1と同様にして、分散液試料6から膜試料6aを作製し測定した透過率は97.2%であり、表面抵抗率は8.2×10であった。
【0083】
(実施例7)
実施例5に対してメディエーターのTEMPOを塩化鉄(II)に置き替えた以外同様にして、導電性高分子微粒子の分散液(試料7)を得た。実施例1と同様にして分散液試料7中の微粒子の粒径及び単分散度を測定したところ、体積平均粒径Mvは38.4nmであり、単分散性の指標である体積平均粒径Mv/個数平均粒径Mnの比は1.53であった。また実施例1と同様にして、分散液試料7から膜試料7aを作製し測定した透過率は96.5%であり、表面抵抗率は1.1×10であった。
【0084】
(実施例8)
実施例4に対してIA液の導電性高分子前駆体モノマーをアニリンの等モル量に置き替えた以外同様にして、導電性高分子微粒子の分散液(試料8)を得た。実施例1と同様にして分散液試料8中の微粒子の粒径及び単分散度を測定したところ、体積平均粒径Mvは45.3nmであり、単分散性の指標である体積平均粒径Mv/個数平均粒径Mnの比は1.74であった。また実施例1と同様にして、分散液試料8から膜試料8aを作製し測定した透過率は95.3%であり、表面抵抗率は1.4×10であった。
【0085】
(実施例9)
実施例4に対して、流路113の等価直径を150μmに替えた以外同様にして、導電性高分子微粒子の分散液(試料9)を得た。実施例1と同様にして分散液試料9中の微粒子の粒径及び単分散度を測定したところ、体積平均粒径Mvは20.3nmであり、単分散性の指標である体積平均粒径Mv/個数平均粒径Mnの比は1.23であった。また実施例1と同様にして、分散液試料9から膜試料9aを作製し測定した透過率は99.5%であり、表面抵抗率は1.2×10であった。
【0086】
(比較例1) 請求項5に係る発明の比較例
実施例1に対して合流領域20の直径を20mm、流路23の等価直径を20mmとし、各液の送液速度を合流液の流路23内の滞留時間が同じになるように変更した以外同様にして、導電性高分子微粒子の分散液(試料10)を得た。実施例1と同様にして分散液試料10中の微粒子の粒径及び単分散度を測定したところ、体積平均粒径Mvは100.5nmであり、単分散性の指標である体積平均粒径Mv/個数平均粒径Mnの比は3.57であった。また実施例1と同様にして、分散液試料10から膜試料10aを作製し測定した透過率は88.1%であり、表面抵抗率は5.2×10であった。
【0087】
(比較例2)
実施例1で用いたIA液とIIA液をフラスコ中で70℃に維持し、1000rpmで30分間撹拌して化学酸化重合を行い、導電性高分子の粒子を含む分散液(試料1C)を得た。実施例1と同様にして分散液試料1C中の微粒子の粒径及び単分散度を測定したところ、体積平均粒径Mvは150.5nmであり、単分散性の指標である体積平均粒径Mv/個数平均粒径Mnの比は4.05であった。また実施例1と同様にして、分散液試料9から膜試料1Caを作製し測定した透過率は80.3%であり、表面抵抗率は2.3×10であった。
【0088】
(比較例3)
実施例4で用いた導電性高分子前駆体モノマー液(IA液)をフラスコに入れ、1対の白金電極を液内に導入し、22mAの定電流が流れるように2時間電圧を印加し、電解酸化重合を行った。その結果、導電性高分子膜が電極に付着し微粒子は得られなかった。
【0089】
上記の結果より、本発明の製造方法によれば、化学酸化重合法によっても、電解酸化重合法によっても、ナノメートルサイズで粒径のそろった導電性高分子微粒子の分散液を効率良くかつ不純物なく得ることができることが分かる。また、その分散液を用いて形成した薄膜は、導電性があり、透明性が高い。なかでも電解酸化重合で得た分散液を用いた分散液によれば、一層透明性及び導電性の高い薄膜としうることが分かる。
また、上記結果より、本発明の製造方法により得た導電性高分子微粒子の分散液によれば、厚い膜であっても高い透明性を維持した工業的に有用な導電性薄膜を形成しうることが分かる。
【0090】
一方、フラスコ(バッチ反応)における化学酸化重合法(比較例1)で得た導電性高分子化合物の粒子を用いたものでは、その薄膜の導電性が低いか、あるいは導電性があっても透明性の低いものであった。また、フラスコによる電解酸化重合法(比較例2)では導電性高分子化合物を微粒子として得ることさえできなかった。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】立体型マイクロリアクター装置の一実施態様を模式的に示す分解斜視図である。
【図2】本発明の製造方法に用いられる流通式反応装置の好ましい実施形態を模式的に示す平面図である。
【図3】図1の流通式反応装置のIII−III線断面を示す断面図である。
【符号の説明】
【0092】
10、100 反応装置本体
11 供給ブロック
12 合流ブロック
13 反応ブロック
16 外側環状溝
15 内側環状溝
17、18 供給ブロックの貫通孔
20 合流部(合流領域)
21 長尺放射状溝
22 短尺放射状溝
25、26 合流ブロックの貫通孔
23 反応ブロックの貫通孔(マイクロ流路からなる液体混合空間)
110 反応装置本体
111 導入口
112 排出口
113 流路
114 白金蒸着電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性高分子前駆体モノマー液を流通式反応装置の流路に導入し、流通過程で前記モノマーを酸化重合するとともに微粒子化することを特徴とする導電性高分子微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記導電性高分子前駆体モノマー液が、該モノマーを分散相中に含有する乳化液であることを特徴とする請求項1に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記酸化重合が電解酸化重合であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記流通式反応装置が前記電解酸化重合を行う電解酸化装置部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
【請求項5】
前記流通式反応装置の流路の等価直径が10mm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記流通式反応装置の流路の等価直径が1mm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
【請求項7】
導電性高分子微粒子がその水系分散液として得られることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
【請求項8】
導電性高分子微粒子がポリチオフェンの微粒子であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の導電性高分子微粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法で製造された導電性高分子微粒子。
【請求項10】
請求項9に記載の導電性高分子微粒子を含有する水系分散液。
【請求項11】
体積平均粒径(MV)が10〜70nmであり、体積平均粒径(MV)/個数平均粒径(MN)が1.2〜3.0であるポリチオフェン導電性高分子微粒子を含有する水系分散液。
【請求項12】
請求項11記載の水系分散液をガラス基板にスピンコートし、乾燥工程を経て得られる300nmの厚さの薄膜としたとき、該薄膜の可視光線(550nm)の透過率が95%以上であることを特徴とするポリチオフェン導電性高分子微粒子の水系分散液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−235127(P2009−235127A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79264(P2008−79264)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】