説明

導電膜及びその製造方法、並びにタッチパネル及び集積型太陽電池

【課題】光散乱が小さく黒締まりが良好で、長波長領域まで高透過率であり、かつ高導電性を有する導電膜及び導電膜の製造方法、並びに視認性のよいタッチパネル及び変換効率の高い集積型太陽電池の提供。
【解決手段】平均短軸長さが50nm以下であり、かつ平均長軸長さが5μm以上である金属ナノワイヤーを少なくとも含有する導電膜であって、前記導電膜表面に対し垂直方向から走査型電子顕微鏡で観察した際に、測定対象となる1本の金属ナノワイヤーが他の金属ナノワイヤーと重なる交点の数が、前記1本の金属ナノワイヤーの1μm当たり、2個〜200個である導電膜とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電膜及び導電膜の製造方法、並びにタッチパネル及び集積型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンなエネルギーとしての太陽電池が注目されている。特に、原材料の使用量の少ない薄膜太陽電池に関しては、今後太陽電池の普及に欠かせないものとなっている。一方、太陽電池の変換効率を高くすることは、省スペース、低コストの観点からも重要であり、数多くの研究がなされている。地球に降り注ぐ太陽光のあらゆる波長の光を電気エネルギーに変換すべく、より長波長の光を吸収できる工夫がなされている。例えば、短波長から長波長の吸収を持つ材料を組み合わせた、所謂タンデム型、又はCIGS太陽電池などのような長波長の吸収量が多い材料の検討が行われており、高効率化の進歩が得られている。このように変換効率向上のために長波長の光吸収の改善の検討がなされているが、この際太陽電池を電気エネルギーとして取り出すための役割を担っている透明電極の光吸収(光透過率)も重要となってくる。
【0003】
一般に、太陽電池の透明電極として用いられているITO(酸化インジウムスズ)や酸化亜鉛は、導電性付与のため主にN型ドーパントが施されているが、導電性を上げるためドープ量を増やすと長波長の透過率が低下するという問題点があった。しかし、長波長の吸収が高い太陽電池を用いる場合、長波長領域の吸収のための光が透明電極を通過できないため効率アップの妨げとなっていた。このため、酸化物に添加するドープ元素、ドープ量の工夫により長波長の透過率を改善する試みがなされている。しかし、これらの改善だけでは不十分であり、更なる透過率の改善が望まれている。
【0004】
近年、携帯ゲーム機、携帯電話等の普及により急速に需要が拡大しているタッチパネルにおいては、透明導電材料としてITOが広く利用されている。しかし、上記と同様に長波長領域の透過率が低いことに起因する色味、及びタッチパネル特有の問題として、筆圧耐久性が問題となる。そのような折、銀ナノワイヤーを用いた透明導電膜の検討が報告されている。この報告では、銀ナノワイヤーは透明性、低抵抗、使用金属量の低減の面では優れているが、有機溶剤を用いた高温中での合成が一般的であること、また、合成された銀ナノワイヤーの太さに起因して、ヘイズが高く、コントラストの低下が著しいこと、空気最表面層に光硬化樹脂等のコーティングを施さない限り、実用的な耐久性が得られないこと、コーティングにより抵抗が上がってしまうこと、更に、面内の抵抗の均一性が低下してしまうという問題があり、その改良が望まれていた。
【0005】
例えば特許文献1には、金属ナノワイヤーの平均短軸長さが小さく単分散であることが透明性と高導電性の両立に好ましいことが記載されているが、金属ナノワイヤー同士の交点の数や交差角度に関しては記載されていない。
また、金属ナノワイヤーにおける透明性と低抵抗を図るには、測定対象である1本の金属ナノワイヤーが複数本の金属ナノワイヤーと接触することが必要であることが記載されている(特許文献2参照)。更に、金属ナノワイヤーが格子状(90度)に交差することが理想的であることが記載されている(特許文献2及び3参照)。
しかし、これらの特許文献には、金属ナノワイヤーの交点の数や交差角度の数値範囲を具体的に示していない。また、金属ナノワイヤー同士の交点数は、金属ナノワイヤーのアスペクト比や密度とも相関するがそのことについては開示も示唆もされていない。
【0006】
したがって、光散乱が小さく黒締まりが良好で、長波長領域まで高透過率であり、かつ高導電性を有する導電膜及び導電膜の製造方法、並びに視認性のよいタッチパネル及び変換効率の高い集積型太陽電池の速やかな提供が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−84173号公報
【特許文献2】特開2009−211978号公報
【特許文献3】米国特許出願公開2009/0228131号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、光散乱が小さく黒締まりが良好で、長波長領域まで高透過率であり、かつ高導電性を有する導電膜及び導電膜の製造方法、並びに視認性のよいタッチパネル及び変換効率の高い集積型太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 平均短軸長さが50nm以下であり、かつ平均長軸長さが5μm以上である金属ナノワイヤーを少なくとも含有する導電膜であって、
前記導電膜表面に対し垂直方向から走査型電子顕微鏡で観察した際に、測定対象となる1本の金属ナノワイヤーが他の金属ナノワイヤーと重なる交点の数が、前記1本の金属ナノワイヤーの1μm当たり、2個〜200個であることを特徴とする導電膜である。
<2> 平均短軸長さが50nm以下であり、かつ平均長軸長さが5μm以上である金属ナノワイヤーを少なくとも含有する導電膜であって、
前記導電膜表面に対し垂直方向から走査型電子顕微鏡で観察した際に、測定対象である1本の金属ナノワイヤーが他の金属ナノワイヤーと重なる交点における狭角側の交差角度が、平均値で50度以上90度未満であることを特徴とする導電膜である。
<3> 金属ナノワイヤーの平均短軸長さが15nm〜35nmである前記<1>から<2>のいずれかに記載の導電膜である。
<4> 金属ナノワイヤーが、銀、及び銀と銀以外の金属との合金のいずれかからなる前記<1>から<3>のいずれかに記載の導電膜である。
<5> 金属ナノワイヤーの曲率半径が100μm〜1,000μmである前記<1>から<4>のいずれかに記載の導電膜である。
<6> 長軸長さが0.1μm以下の球状乃至棒状粒子の比率が10%以下である前記<1>から<5>のいずれかに記載の導電膜である。
<7> 金属ナノワイヤーにおける長軸長さの単一度が70%以上である前記<1>から<6>のいずれかに記載の導電膜である。
<8> 支持体上に、少なくとも金属ナノワイヤーを含有する導電層組成物を塗布して導電層を形成する導電層形成工程を少なくとも含み、
前記導電層形成工程において、導電層組成物をバーコートにより塗布し、塗布方向を変えて2回以上行うことを特徴とする導電膜の製造方法である。
<9> 導電層を有機溶剤及びアルカリ溶液の少なくともいずれかで洗浄する洗浄工程を含む前記<8>に記載の導電膜の製造方法である。
<10> 導電層を100℃以上に加熱する加熱工程を含む前記<8>から<9>のいずれかに記載の導電膜の製造方法である。
<11> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の導電膜を用いたタッチパネル又は集積型太陽電池である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、光散乱が小さく黒締まりが良好で、長波長領域まで高透過率であり、かつ高導電性を有する導電膜及び導電膜の製造方法、並びに視認性のよいタッチパネル及び変換効率の高い集積型太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(A)〜(C)は、タッチパネルの層構成を示す模式図である。
【図2】図2は、タッチパネルの一例を示す概略断面図である。
【図3】図3は、タッチパネルの他の一例を示す概略説明図である。
【図4】図4は、図3に示すタッチパネルにおける導電膜の配置例を示す概略平面図である。
【図5】図5は、タッチパネルの更に他の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(導電膜)
本発明の導電膜は、少なくとも金属ナノワイヤーを含有してなり、ポリマー、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0013】
前記導電膜の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、膜状、シート状などが挙げられ、また、その平面形状としては、四角形、円形などが挙げられ、前記構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられ、前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
前記導電膜は、可撓性を有し、透明であることが好ましく、前記透明には、無色透明のほか、有色透明、半透明、有色半透明などが含まれる。
前記導電膜は、パターニングされていてもパターニングされていなくてもよい。前記パターニングとしては、既存のITO透明導電膜で施されているパターニングが挙げられ、長方形状のパターン、ダイヤモンドパターンと呼ばれているものなどが挙げられる。
【0014】
本発明においては、前記導電膜表面に対し垂直方向から走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際に、測定対象である1本の金属ナノワイヤーが他の金属ナノワイヤーと重なる交点の数が、前記測定対象である1本の金属ナノワイヤーの1μm当たり、2個〜200個であり、5個〜100個であることが好ましく、8個〜50個であることがより好ましい。前記交点の数が、2個未満であると、高導電性が得られないことがあり、200個を超えると、透過率の低下や黒締りが不足し許容できないことがある。
ここで、前記交点とは、導電膜表面に対し垂直方向からみて金属ナノワイヤー同士が交差している点(交点)であり、必ずしも金属ナノワイヤー同士が接触している必要はないが、電気抵抗を下げる点で金属ナノワイヤー同士が接触している点(接触点)であることが好ましい。
前記交点の数は、例えば水平な基板上に載置した導電膜表面に対し垂直方向から走査型電子顕微鏡で観察した際に、測定対象である1本の金属ナノワイヤーが他の金属ナノワイヤーと重なる交点を測定し、測定対象である1本の金属ナノワイヤーの1μm当たりの交点数を求める。例えば、金属ナノワイヤー上の重複を避けた任意の1μm当たりの交点数を10箇所求め、平均値を交点数とする。
測定対象である1本の金属ナノワイヤーの選定は、任意の倍率の電子顕微鏡画像上で金属ナノワイヤーの粗密に関係なく無作為に選択することにより行うことができる。
【0015】
また、本発明においては、前記導電膜表面に対し垂直方向から走査型電子顕微鏡で観察した際に、測定対象である1本の金属ナノワイヤーが他の金属ナノワイヤーと重なる交点における狭角側の交差角度は、平均値で50度以上90度未満であり、平均値で75度以上90度未満であることが好ましい。前記平均交差角度が、50度未満であると、金属ナノワイヤーの配向を制御しない導電膜と同等の表面抵抗しか得られないことがある。
前記平均交差角度の調整方法としては、後述する導電膜の製造方法で説明するが、支持体上に金属ナノワイヤー含有組成物を塗布方向の角度を変えて2回以上塗布することで達成することができる。
前記平均交差角度は、例えば走査型電子顕微鏡画像の任意の2本の金属ナノワイヤーからなる交点における直線のなす角度又は湾曲している場合はその接線どうしのなす角度のうち鋭角側を分度器やデジタイザを用いて角度計測することにより求めることができる。前記平均交差角度は、任意の20個の測定データの平均値である。
【0016】
<金属ナノワイヤー>
前記金属ナノワイヤーの材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、長周期律表(IUPAC1991)の第4周期、第5周期、及び第6周期からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、第2族〜第14族から選ばれる少なくとも1種の金属がより好ましく、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、及び第14族から選ばれる少なくとも1種の金属が更に好ましく、主成分として含むことが特に好ましい。
【0017】
前記金属としては、例えば、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンテル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、又はこれらの合金などが挙げられる。これらの中でも、導電性に優れる点で、銀、及び銀との合金が特に好ましい。
前記銀との合金で使用する金属としては、白金、オスミウム、パラジウム、イリジウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
−形状−
前記金属ナノワイヤーの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円柱状、直方体状、断面が多角形となる柱状など任意の形状をとることができるが、高い透明性が必要とされる用途では、円柱状や断面の多角形の角が丸まっている断面形状であることが好ましい。
前記金属ナノワイヤーの断面形状は、基材上に金属ナノワイヤー水分散液を塗布し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより調べることができる。
【0019】
−平均短軸長さ径及び平均長軸長さ−
前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(「平均短軸径」、「平均直径」と称することがある)としては、1nm〜50nmが好ましく、10nm〜40nmがより好ましく、15nm〜35nmが更に好ましい。
前記平均短軸長さが、1nm未満であると、耐酸化性が悪化し、耐久性が悪くなることがあり、50nmを超えると、金属ナノワイヤー起因の散乱が生じ、十分な透明性を得ることができないことがある。
前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さは、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの平均短軸長さを求めた。なお、前記金属ナノワイヤーの短軸が円形でない場合の短軸長さは、最も長いものを短軸長さとした。
【0020】
前記金属ナノワイヤーの平均長軸長さ(「平均長さ」と称することがある)としては、1μm〜40μmであることが好ましく、3μm〜35μmがより好ましく、5μm〜30μmが更に好ましい。
前記平均長軸長さが、1μm未満であると、密なネットワークを形成することが難しく、十分な導電性を得ることができないことがあり、40μmを超えると、金属ナノワイヤーが長すぎて製造時に絡まり、製造過程で凝集物が生じてしまうことがある。
前記金属ナノワイヤーの平均長軸長さは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの平均長軸長さを求めた。なお、前記金属ナノワイヤーが曲がっている場合、それを弧とする円を考慮し、その半径、及び曲率から算出される値を長軸長さとした。
【0021】
−長軸長さの単一度−
前記金属ナノワイヤーにおける長軸長さの単一度は、70%以上であることが好ましく、80%〜100%であることがより好ましい。前記長軸長さの単一度が、70%未満であると、2箇所以上の交点がない金属ナノワイヤーが生じ、表面抵抗が下がりにくくなり、透過率も減少する原因となることがある。
前記長軸長さの単一度は、例えば走査型電子顕微鏡画像から任意の100本の金属ナノワイヤーの長軸長さを計測し、その平均長軸長さの±30%の範囲に入る金属ナノワイヤーの数の割合(百分率)から求めることができる。
【0022】
−曲率半径−
前記金属ナノワイヤーの曲率半径は、100μm〜1,000μmであることが好ましく、300μm〜900μmであることがより好ましく、500μm〜800μmであることが更に好ましい。前記曲率半径が、100μm未満であると、金属ナノワイヤーの交点は増えるものの、実質的な金属ナノワイヤーの長さが短くなることによる繋がりやねじれの位置となる交点が増え、高抵抗となることがあり、1,000μmを超えると、実質的に湾曲していない直線型ナノワイヤーと同等の抵抗となることがある。
前記金属ナノワイヤーの曲率半径は、例えば走査型電子顕微鏡画像のナノワイヤーをデジタイザ等で円弧に近似し曲率半径を求める方法などにより測定することができる。
【0023】
また、長軸長さが0.1μm以下の球状乃至棒状粒子の比率は、10%以下であることが好ましく、5%〜0%であることがより好ましい。
前記比率が10%を超えると、透過率が低くなり視認性を低下させることがある。
前記長軸長さが0.1μm以下の球状乃至棒状粒子の比率は、例えば走査型電子顕微鏡画像のナノワイヤーの本数Nと、長軸長さが0.1μm以下の球状乃至棒状粒子Rの個数を数えて、R/N×100を計算することにより求めることができる。
【0024】
−アスペクト比−
前記金属ナノワイヤーのアスペクト比としては、10以上であることが好ましい。前記アスペクト比とは、一般的には金属ナノワイヤーの長辺と短辺との比(平均長軸長さ/平均短軸長さの比)を意味する。
前記アスペクト比の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子顕微鏡等により測定する方法などが挙げられる。
前記金属ナノワイヤーのアスペクト比を電子顕微鏡で測定する場合、前記金属ナノワイヤーのアスペクト比が10以上であるか否かは、電子顕微鏡の1視野で確認できればよい。また、前記金属ナノワイヤーの長軸長さと短軸長さとを各々別に測定することによって、前記金属ナノワイヤー全体のアスペクト比を見積ることができる。
【0025】
前記金属ナノワイヤーのアスペクト比としては、10以上であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜1,000,000が好ましく、100〜1,000,000がより好ましい。
前記アスペクト比が、10未満であると、前記金属ナノワイヤーによるネットワーク形成がなされず導電性が十分取れないことがあり、1,000,000を超えると、金属ナノワイヤーの形成時やその後の取り扱いにおいて、成膜前に金属ナノワイヤーが絡まり凝集するため、安定な液が得られないことがある。
【0026】
−アスペクト比が10以上の金属ナノワイヤーの比率−
前記アスペクト比が10以上の金属ナノワイヤーの比率としては、全導電性組成物中に体積比で、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、75%以上が更に好ましい。これらの金属ナノワイヤーの割合を、以下、「金属ナノワイヤーの比率」と呼ぶことがある。
前記金属ナノワイヤーの比率が、50%未満であると、導電性に寄与する導電性物質が減少し導電性が低下してしまうことがあり、同時に密なネットワークを形成できないために電圧集中が生じ、耐久性が低下してしまうことがある。また、金属ナノワイヤー以外の形状の粒子は、導電性に大きく寄与しない上に吸収を持つため好ましくない。特に金属の場合で、球形などのプラズモン吸収が強い場合には透明度が悪化してしまうことがある。
【0027】
ここで、前記金属ナノワイヤーの比率は、例えば、金属ナノワイヤーが銀ナノワイヤーである場合には、銀ナノワイヤー水分散液をろ過して、銀ナノワイヤーと、それ以外の粒子とを分離し、ICP発光分析装置を用いてろ紙に残っている銀の量と、ろ紙を透過した銀の量とを各々測定することで、金属ナノワイヤーの比率を求めることができる。ろ紙に残っている金属ナノワイヤーをTEMで観察し、300個の金属ナノワイヤーの短軸長さを観察し、その分布を調べることにより、短軸長さが200nm以下であり、かつ長軸長さが1μm以上である金属ナノワイヤーであることを確認する。なお、ろ紙は、TEM像で短軸長さが200nm以下であり、かつ長軸長さが1μm以上である金属ナノワイヤー以外の粒子の最長軸を計測し、その最長軸の2倍以上であり、かつ金属ナノワイヤーの長軸の最短長以下の長さのものを用いることが好ましい。
【0028】
ここで、前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さ及び平均長軸長さは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や光学顕微鏡を用い、TEM像や光学顕微鏡像を観察することにより求めることができ、本発明においては、金属ナノワイヤーの平均短軸長さ及び平均長軸長さは、透過型電子顕微鏡(TEM)により300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から求めたものである。
【0029】
−製造方法−
前記金属ナノワイヤーの製造方法としては、特に制限はなく、いかなる方法で製造してもよいが、以下のようにハロゲン化合物と分散添加剤とを溶解した溶媒中で加熱しながら金属イオンを還元することによって製造することが好ましい。
また、金属ナノワイヤーの製造方法としては、特開2009−215594号公報、特開2009−242880号公報、特開2009−299162号公報、特開2010−84173号公報、特開2010−86714号公報などに記載の方法を用いることができる。
【0030】
前記溶媒としては、親水性溶媒が好ましく、例えば、水、アルコール類、エーテル類、ケトン類などが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコールなどが挙げられる。
前記エーテル類としては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
前記ケトン類としては、例えば、アセトンなどが挙げられる。
【0031】
前記加熱時の加熱温度としては、250℃以下が好ましく、20℃〜200℃がより好ましく、30℃〜180℃が更に好ましく、40℃〜170℃が特に好ましい。
前記加熱温度が、20℃未満であると、前記加熱温度が低くなる程、核形成確率が下がり金属ナノワイヤーが長くなりすぎるので金属ナノワイヤーが絡みやすく、分散安定性が悪くなることがあり、250℃を超えると、金属ナノワイヤーの断面の角が急峻になり、塗布膜評価での透過率が低くなることがある。
必要に応じて、金属ナノワイヤーの形成過程で温度を変更してもよく、途中での温度変更により、金属ナノワイヤーの核形成の制御や再核発生の抑制、選択成長の促進による単分散性向上の効果を向上させることができる。
【0032】
前記加熱の際には、還元剤を添加して行うことが好ましい。
前記還元剤としては、特に制限はなく、通常使用されるものの中から適宜選択することができ、例えば、水素化ホウ素金属塩、水素化アルミニウム塩、アルカノールアミン、脂肪族アミン、ヘテロ環式アミン、芳香族アミン、アラルキルアミン、アルコール、有機酸類、還元糖類、糖アルコール類、亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン化合物、デキストリン、ハイドロキノン、ヒドロキシルアミン、エチレングリコール、グルタチオンなどが挙げられる。これらの中でも、還元糖類、その誘導体としての糖アルコール類、エチレングリコールが特に好ましい。
前記水素化ホウ素金属塩としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウムなどが挙げられる。
前記水素化アルミニウム塩としては、例えば、水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムカリウム、水素化アルミニウムセシウム、水素化アルミニウムベリリウム、水素化アルミニウムマグネシウム、水素化アルミニウムカルシウムなどが挙げられる。
前記アルカノールアミンとしては、例えば、ジエチルアミノエタノール、エタノールアミン、プロパノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノプロパノールなどが挙げられる。
前記脂肪族アミンとしては、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ジプロピレンアミン、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミンなどが挙げられる。
前記ヘテロ環式アミンとしては、例えば、ピペリジン、ピロリジン、Nメチルピロリジン、モルホリンなどが挙げられる。
前記芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、N−メチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジンなどが挙げられる。
前記アラルキルアミンとしては、例えば、ベンジルアミン、キシレンジアミン、N−メチルベンジルアミンなどが挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどが挙げられる。
前記有機酸類としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、アスコルビン酸又はそれらの塩などが挙げられる。
前記還元糖類としては、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラフィノース、スタキオースなどが挙げられる。
前記糖アルコール類としては、例えば、ソルビトールなどが挙げられる。
【0033】
前記還元剤によっては、機能として分散添加剤、溶媒としても働く場合があり、同様に好ましく用いることができる。
【0034】
前記金属ナノワイヤー製造の際には、分散添加剤と、ハロゲン化合物又はハロゲン化金属微粒子とを添加して行うことが好ましい。
前記分散添加剤と、ハロゲン化合物との添加のタイミングとしては、還元剤の添加前でも添加後でもよく、金属イオンあるいはハロゲン化金属微粒子の添加前でも添加後でもよいが、単分散性のよりよい金属ナノワイヤーを得るためには、ハロゲン化合物の添加を2段階以上に分けることが好ましい。
【0035】
前記分散添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ基含有化合物、チオール基含有化合物、スルフィド基含有化合物、アミノ酸又はその誘導体、ペプチド化合物、多糖類、合成高分子、これらに由来するゲルなどが挙げられる。これらの中でも、ゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアルキレンアミン、ポリアクリル酸の部分アルキルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン共重合体が特に好ましい。
前記分散添加剤として使用可能な構造については、例えば、「顔料の事典」(伊藤征司郎編、株式会社朝倉書院発行、2000年)の記載を参照できる。
また、使用する分散添加剤の種類によって、得られる金属ナノワイヤーの形状を変化させることもできる。
【0036】
前記ハロゲン化合物としては、臭素、塩素、ヨウ素を含有する化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化カリウムなどのアルカリハライドや、以下に説明する分散添加剤と併用できる化合物が好ましい。
前記ハロゲン化合物によっては、分散添加剤として機能するものがありうるが、同様に好ましく用いることができる。
【0037】
前記ハロゲン化合物の代替としてハロゲン化銀微粒子を使用してもよいし、ハロゲン化合物とハロゲン化銀微粒子を共に使用してもよい。
【0038】
前記分散剤とハロゲン化合物は同一物質で併用してもよい。前記分散剤とハロゲン化合物を併用した化合物としては、例えば、アミノ基と臭化物イオンを含むHTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)、アミノ基と塩化物イオンを含むHTAC(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムクロライド)、アミノ基と臭化物イオン又は塩化物イオンを含むドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムブロミド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロミド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジパルミチルアンモニウムブロミド、ジメチルジパルミチルアンモニウムクロリド、などが挙げられる。
【0039】
前記脱塩処理は、金属ナノワイヤーを形成した後、限外ろ過、透析、ゲルろ過、デカンテーション、遠心分離などの手法により行うことができる。
【0040】
<<ポリマー>>
前記ポリマーとしては、水溶性ポリマー、及び非水溶性ポリマーのいずれも好適に用いることができる。
【0041】
−水溶性ポリマー−
前記水溶性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばゼラチン、ゼラチン誘導体、ガゼイン、寒天、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デキストラン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記金属ナノワイヤーの含有量(A)と前記水溶性ポリマーの含有量(B)との質量比(A/B)は、0.2〜3.0が好ましく、0.5〜2.5がより好ましい。
前記質量比(A/B)が、0.2未満であると、前記金属ナノワイヤーに対して前記ポリマーが多くなりすぎ、僅かな塗布量変動により抵抗が上がってしまう懸念があり、3.0を超えると、ポリマーが少ないため、膜強度が実用上十分にならない場合がある。
【0042】
−非水溶性ポリマー−
前記非水溶性ポリマーは、バインダーとしての機能を有しており、中性付近の水に実質的に溶解しないポリマーである。前記非水溶性ポリマーとは、具体的には、SP値(沖津法により算出)が、18MPa1/2〜30MPa1/2のポリマーを意味する。
【0043】
前記SP値としては、18MPa1/2〜30MPa1/2が好ましく、19MPa1/2〜28MPa1/2がより好ましく、19.5MPa1/2〜27MPa1/2が更に好ましい。
前記SP値が、18MPa1/2未満であると、付着した有機汚れを洗浄するのが困難になる場合があり、30MPa1/2を超えると、水との親和性が高くなり、塗布膜の含水率上昇に起因し、赤外線領域の吸収が高くなるためか、例えば太陽電池を作製したときに変換効率が減少してしまうことがある。
【0044】
ここで、前記SP値は、沖津法(沖津俊直著「日本接着学会誌」29(3)(1993))によって算出したものである。具体的には、SP値は以下の式で計算されるものである。なお、ΔFは文献記載の値である。
SP値(δ)=ΣΔF(Molar Attraction Constants)/V(モル容積)
複数の非水溶性ポリマーを用いた場合のSP値(σ)及びSP値の水素結合項(σh)は次の式により算出する。
【0045】
【数1】

ただし、σnは、非水溶性ポリマーと水のSP値又はSP値の水素結合項を、Mnは、混合液中における非水溶性ポリマーと水のモル分率を、Vnは、溶媒のモル体積を、nは、溶媒の種類を表す2以上の整数をそれぞれ表す。
【0046】
前記非水溶性ポリマーとしては、前記SP値が18MPa1/2〜30MPa1/2であれば特に制限されないが、塗膜の基板への密着性、摺りなどに対する耐久性という点で、エチレン性不飽和基を有するポリマーが好ましい。これらの中でも、主鎖に連結する側鎖に、エチレン性不飽和結合の少なくとも1種を含むことが好ましい。前記エチレン性不飽和結合は、側鎖中に複数含まれていてもよい。また、前記エチレン性不飽和結合は、非水溶性ポリマーの側鎖中に、前記分岐及び/又は脂環構造、並びに/又は前記酸性基とともに含まれていてもよい。
【0047】
前記エチレン性不飽和結合としては、非水溶性ポリマーの主鎖との間に少なくとも1つのエステル基(−COO−)を介して結合し、エチレン性不飽和結合とエステル基のみで非水溶性ポリマーの側鎖を構成していてもよい。また、非水溶性ポリマーの主鎖とエステル基との間、及び/又は、エステル基とエチレン性不飽和結合との間に、更に2価の有機連結基を有してもよく、エチレン性不飽和結合は「エチレン性不飽和結合を有する基」として非水溶性ポリマーの側鎖を構成していてもよい。
前記2価の有機連結基としては、例えば、スチレン類、(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、(メタ)アクリレート類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類が好ましく、(メタ)アクリレート類が特に好ましい。
【0048】
前記エチレン性不飽和結合としては、(メタ)アクリロイル基を導入して配されることが好ましい。
前記非水溶性ポリマーの側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、酸性基を持つ繰り返し単位にエポキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法、ヒドロキシル基を持つ繰り返し単位にイソシアネート基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法、イソシアネート基を持つ繰り返し単位にヒドロキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法などが挙げられる。
これらの中でも、酸性基を持つ繰り返し単位にエポキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法が最も製造が容易であり、低コストである点で好ましい。
【0049】
前記エチレン性不飽和結合及びエポキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、これらを有すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、下記構造式(1)で表される化合物及び下記構造式(2)で表される化合物が好ましい。
【0050】
【化1】

ただし、前記構造式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Lは、有機基を表す。
【0051】
【化2】

ただし、前記構造式(2)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Lは、有機基を表す。Wは、4〜7員環の脂肪族炭化水素基を表す。
【0052】
前記構造式(1)及び構造式(2)で表される化合物の中でも、光硬化樹脂と組み合わせ、ネガ型、ポジ型のレジストとして使用した場合、良現像性、及び膜強度という点で、前記構造式(1)で表される化合物が好ましい。前記構造式(1)及び(2)においては、L及びLがそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましい。
【0053】
前記構造式(1)及び構造式(2)で表される化合物としては、特に制限はないが、例えば、以下の化合物(1)〜(10)が挙げられる。
【0054】
【化3】

【0055】
前記金属ナノワイヤーの含有量(A)と前記非水溶性ポリマーの含有量(C)との質量比(A/C)は、0.2〜3.0が好ましく、0.5〜2.5がより好ましい。
前記質量比(A/C)が、0.2未満であると、塗布量変動による抵抗値のバラツキが問題になる場合や、本発明における溶解液の作用が低下することがあり、3.0を超えると、塗布膜に実用上の十分な強度が得られないことがある。
前記金属ナノワイヤーの含有量(塗布量)は、0.005g/m〜0.5g/mであることが好ましく、0.01g/m〜0.45g/mがより好ましく、0.015g/m〜0.4g/mが更に好ましい。
【0056】
−分散剤−
前記分散剤は、前記金属ナノワイヤーの凝集を防ぎ、分散させるために用いられる。前記分散剤としては、前記金属ナノワイヤーを分散させることができれば特に制限はなく、目的に応じて適否選択することができ、例えば、市販の低分子顔料分散剤、高分子顔料分散剤を利用でき、特に高分子分散剤で金属ナノワイヤーに吸着する性質を持つものが好ましく用いられ、ポリビニルピロリドン、BYKシリーズ(ビックケミー社製)、ソルスパースシリーズ(日本ルーブリゾール社製など)、アジスパーシリーズ(味の素株式会社製)などが挙げられる。
【0057】
前記分散剤の含有量としては、前記ポリマー100質量部に対し、0.1質量部〜50質量部が好ましく、0.5質量部〜40質量部がより好ましく、1質量部〜30質量部が更に好ましい。前記含有量が、0.1質量部未満であると、分散液中で金属ナノワイヤーが凝集してしまうことがあり、50質量部を超えると、塗布工程において安定な塗布膜が形成できず、塗布ムラが発生してしまうことがある。
【0058】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、必要に応じて例えば、界面活性剤、酸化防止剤、硫化防止剤、金属腐食防止剤、粘度調整剤、防腐剤等の各種添加剤などが挙げられる。
【0059】
本発明の導電膜は、支持体上に形成されたものであってもよく、その場合には、導電体と称することもある。
【0060】
−支持体−
前記支持体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、透明ガラス基板、合成樹脂性シート、フィルム、金属基板、その他セラミック板、光電変換素子を有する半導体基板などを挙げることができる。これらの基板には、所望により、シランカップリング剤などの薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着などの前処理を行うことができる。
前記透明ガラス基板としては、例えば、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラスなどが挙げられる。
前記合成樹脂製シート、フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド、ポリイミドなどが挙げられる。
前記金属基板としては、例えば、アルミニウム板、銅板、ニッケル板、ステンレス板などが挙げられる。
【0061】
前記支持体の全可視光透過率としては、70%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。前記全可視光透過率が、70%未満であると、透過率が低く実用上問題となることがある。
なお、本発明では、支持体として本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
【0062】
前記支持体の厚みとしては、1μm〜5,000μmが好ましく、3μm〜4,000μmがより好ましく、5μm〜3,000μmが更に好ましい。
前記厚みが、1μm未満であると、塗布工程においてのハンドリングの困難さに起因し、歩留まりが低下することがあり、5,000μmを超えると、ポータブルなアプリケーションにおいてその支持体の厚みや質量が問題となることがある。
【0063】
(導電膜の製造方法)
本発明の導電膜の製造方法は、導電層形成工程を少なくとも含み、洗浄工程、加熱工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0064】
<導電層形成工程>
前記導電層形成工程は、支持体上に少なくとも金属ナノワイヤーを含有する導電層組成物を塗布して導電層を形成する工程である。
前記支持体、及び前記金属ナノワイヤーとしては、上述したものの中から適宜選択することができる。
前記導電層形成工程において、支持体上への導電層組成物の塗布を、塗布方向を変えて2回以上行うことにより、金属ナノワイヤー同士の交点における交差角度を制御することができる。
具体的には、第1回目の塗布方向に対し、第2回目の塗布方向を45度〜90度に変えて塗布することが好ましい。
【0065】
前記導電層組成物の塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばバーコート法、スピンコート法、ロールコート法、スリットコート法などが挙げられる。これらの中でも、金属ナノワイヤーの配向の制御がしやすい点でバーコート法が特に好ましい。
前記塗布速度は、バーの周速と支持体の搬送速度の差が100mm/分〜500mm/分であることが好ましい。
【0066】
前記金属ナノワイヤーの塗布量(含有量)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.005g/m〜0.5g/mであることが好ましく、0.01g/m〜0.45g/mがより好ましく、0.015g/m〜0.4g/mが更に好ましい。
前記塗布量が、0.005g/m未満であると、局所的に抵抗が高くなってしまう箇所ができ、面内の抵抗分布が悪化することがあり、0.5g/mを超えると、塗布後の乾燥中に金属ナノワイヤー同士の凝集により、ヘイズが悪化することがある。
【0067】
前記導電層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することがで、20nm〜5,000nmが好ましく、25nm〜4,000nmがより好ましく、30nm〜3,500nmが更に好ましい。
前記厚みが、20nm未満であると、金属ナノワイヤーの平均短軸長さと変わらない範囲となってしまい、膜強度が低下することがあり、5,000nmを超えると、導電層のヒビ割れ、透過率やヘイズが悪化することがある。
【0068】
<洗浄工程>
前記洗浄工程は、前記導電層を有機溶剤及びアルカリ溶液の少なくともいずれかで洗浄する工程である。前記導電層を有機溶剤及びアルカリ溶液の少なくともいずれかで洗浄することにより、金属ナノワイヤー同士の間の余分なものを除去でき、金属ナノワイヤー同士の接触点の数が増え、表面抵抗が低下し、導電層の導電性を向上させることができる。
【0069】
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、アセトン等のケトン類などが挙げられる。
前記有機溶剤による洗浄方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば前記有機溶剤中に導電膜を浸漬する方法、シャワーやスプレーを用いて有機溶剤をかけ流す方法、有機溶媒を浸したナプキン等で塗りつける方法などが挙げられる。
【0070】
前記アルカリ溶液に含まれるアルカリとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0071】
前記アルカリ溶液による洗浄方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば前記アルカリ溶液中に導電膜を浸漬する方法、シャワーやスプレーを用いて有機溶剤をかけ流す方法、アルカリ溶液を浸したナプキン等で塗りつける方法などが挙げられる。
前記アルカリ溶液の浸漬時間は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10秒間〜5分間であることが好ましい。
【0072】
<加熱工程>
前記加熱工程は、前記導電層を100℃以上に加熱する工程である。
前記加熱工程における加熱温度は100℃以上が好ましく、120℃〜250℃がより好ましい。前記加熱温度が、100℃未満であると、導電性の向上効果が得られないことがある。
【0073】
<その他の工程>
本発明の導電膜の製造方法は、必要に応じてパターニング工程を含んでいてもよい。
前記パターニング工程は、前記導電層をパターン露光し、現像する工程である。
前記露光における光源としては、特に制限はなく、用途などに応じて適宜選択することができるが、例えば紫外線照射装置、紫外線照射ランプなどが好ましい。
前記現像は、前記洗浄工程においてアルカリ溶液で洗浄を行う場合には、該アルカリ洗浄工程で代用することができる。
【0074】
本発明の導電膜の表面抵抗は、0.1Ω/□〜5,000Ω/□であることが好ましく、0.1Ω/□〜30Ω/□であることがより好ましい。
前記表面抵抗は、例えば表面抵抗計(三菱化学株式会社製、Loresta−GP MCP−T600)を用いて、測定することができる。
本発明の導電膜の光透過率は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
ここで、前記光透過率は、例えば自記分光光度計(UV2400−PC、島津製作所製)により測定することができる。
【0075】
本発明の導電膜は、高透過性、低抵抗であり、耐久性及び可撓性が向上し、簡易にパターニングが可能であるので、例えばタッチパネル、ディスプレイ用電極、電磁波シールド、有機ELディスプレイ用電極、無機ELディスプレイ用電極、電子パーパー、フレキシブルディスプレイ用電極、集積型太陽電池、表示素子、その他の各種デバイスなどに幅広く適用される。これらの中でも、タッチパネル、表示素子、集積型太陽電池が特に好ましい。
【0076】
<表示素子>
本発明で用いられる表示素子としての液晶表示素子は、上記のようにして基板上にパターニングされた本発明の前記導電膜が設けられた素子基板と、対向基板であるカラーフィルター基板とを、位置を合わせて圧着後、熱処理して組み合わせ、液晶を注入し、注入口を封止することによって製作される。このとき、カラーフィルター上に形成される導電膜も、本発明の前記導電膜を用いることが好ましい。
また、前記素子基板上に液晶を散布した後、基板を重ね合わせ、液晶が漏れないように密封して液晶表示素子が製作されてもよい。
なお、前記液晶表示素子に用いられる液晶、即ち液晶化合物及び液晶組成物については特に制限はなく、いずれの液晶化合物及び液晶組成物をも使用することができる。
【0077】
(タッチパネル)
本発明のタッチパネルは、本発明の前記導電膜を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表面型静電容量方式タッチパネル、投射型静電容量方式タッチパネル、抵抗膜式タッチパネルなどが挙げられる。
【0078】
ここで、前記タッチパネルは、以下に説明するように、反射防止フィルムを有することが好ましい。
<反射防止フィルム>
前記反射防止フィルムは、透明支持体上にハードコート層及び反射防止層を形成して作製される。
ここで、図1(A)〜図1(C)は、タッチパネルの層構成を示す模式図である。
図1(A)は、ディスプレイ101と、タッチパネル130と、反射防止フィルム120とからなり、タッチパネル130は、第1の電極105と、透明基板104と、第2の電極103と、透明接着剤102とからなり、反射防止フィルム120は、反射防止層109と、ハードコート層108とからなる。
図1(B)は、ディスプレイ101と、タッチパネル130と、反射防止フィルム120とからなり、タッチパネル130は、保護樹脂層110と、第1の電極105と、透明基板104と、第2の電極103と、透明接着剤102とからなり、反射防止フィルム120は、反射防止層109と、ハードコート層108とからなる。
図1(C)は、ディスプレイ101と、タッチパネル130と、反射防止フィルム120とからなり、タッチパネル130は、透明接着剤106と、第1の電極105と、透明基板104と、第2の電極103と、透明接着剤102とからなり、反射防止フィルム120は、反射防止層109と、ハードコート層108と、透明フィルム107とからなる。
【0079】
−透明支持体−
前記透明支持体は、画像表示装置の視認者側表面に用いるため、光透過率が高く、かつ透明性に優れた無色のフィルムであることが要求される。このような透明支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。
前記プラスチックフィルムを形成するポリマーとしては、例えばセルロースアシレート(例えば富士フイルム株式会社製、TAC−TD80U、TD80UF等のセルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR株式会社製)、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン株式会社製)、(メタ)アクリル系樹脂(アクリペットVRL20A:商品名、三菱レイヨン株式会社製、特開2004−70296号公報や特開2006−171464号公報記載の環構造含有アクリル系樹脂)などが挙げられる。これらの中でも、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、セルローストリアセテートが特に好ましい。
【0080】
−ハードコート層−
前記反射防止フィルムには、フィルムの物理的強度を付与するために、ハードコート層を設けることが好ましい。前記ハードコート層は、2層以上の積層から構成されてもよい。
【0081】
前記ハードコート層の屈折率は、反射防止性のフィルムを得るための光学設計から、屈折率が1.48〜1.90であることが好ましく、1.50〜1.80であることがより好ましく、1.52〜1.65であることが更に好ましい。前記ハードコート層上に低屈折率層が少なくとも1層あるので、屈折率がこの範囲より小さ過ぎると反射防止性が低下し、大き過ぎると反射光の色味が強くなる傾向がある。
【0082】
前記ハードコート層の厚みは、フィルムに充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、前記ハードコート層の厚みは、0.5μm〜50μmであることが好ましく、1μm〜20μmであることがより好ましく、2μm〜15μmであることが更に好ましく、3μm〜10μmであることが特に好ましい。また、前記ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、2H以上であることが好ましく、3H以上であることがより好ましく、4H以上であることが更に好ましい。更に、前記ハードコート層は、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0083】
前記ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む組成物を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。前記光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基などが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。具体的な化合物としては、特開2006−30740号公報の段落〔0087〕及び〔0088〕に記載のモノマーを使用することができ、特開2006−30740号公報の段落〔0089〕に記載の硬化方法を用いることができる。光重合の場合には特開2006−30740号公報の段落〔0090〕〜〔0093〕に記載の光重合開始剤を用いることができる。
【0084】
前記ハードコート層には、内部散乱性付与の目的で、平均粒径が1.0μm〜10.0μm、好ましくは1.5μm〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子を含有してもよい。これらの粒子としては、例えば特開2006−30740号公報の段落〔0114〕に記載の粒子を用いることができる。
【0085】
前記ハードコート層のバインダーには、ハードコート層の屈折率を制御する目的で、高屈折率モノマー又は光散乱を生じない大きさの無機微粒子(一次粒子の直径が10nm〜200nm)、或いは両者を加えることができる。前記無機微粒子には屈折率を制御する効果に加えて、架橋反応による硬化収縮を抑える効果もある。前記無機微粒子としては、例えば特開2006−30740号公報の段落〔0120〕に無機フィラーとして記載されている化合物を用いることができる。
【0086】
−反射防止層−
前記反射防止フィルムは、前記ハードコート層上に反射防止層を形成したフィルムであり、光学干渉を利用しているため、前記反射防止層は以下に述べる屈折率と光学厚みを有することが好ましい。前記反射防止層は一層のみでもよいが、より低い反射率が求められる場合には複数の反射防止層を積層して形成する。複数の反射防止層の積層には、異なる屈折率を有する光学干渉層を交互に積層してもよく、異なる屈折率を有する光学干渉層を2層以上積層してもよい。具体的には、前記ハードコート層上に低屈折率層のみを設ける態様、ハードコート層上に高屈折率層、低屈折率層をこの順に設ける態様、ハードコート層上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層をこの順に設ける態様、が常用されている。なお、屈折率層の低、中、高は、屈折率の相対的な大小関係の表現である。
前記低屈折率層の屈折率は前記のハードコート層の屈折率より低く設定することが好ましい。前記低屈折率層と前記ハードコート層との屈折率差が小さすぎる場合は反射防止性が低下し、大き過ぎると反射光の色味が強くなる傾向がある。前記低屈折率層と前記ハードコート層との屈折率差は0.01以上0.40以下が好ましく、0.05以上0.30以下がより好ましい(特開2009−201727号公報の段落〔0080〕参照)。
各層の屈折率と厚みは、以下を満たすことが好ましい。
【0087】
前記低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.46であることが好ましく、1.25〜1.42であることがより好ましく、1.30〜1.38であることが更に好ましい。また、前記低屈折率層の厚みは、50nm〜150nmであることが好ましく、70nm〜120nmであることがよりに好ましい。
【0088】
前記高屈折率層の上に前記低屈折率層を構築して、反射防止フィルムを作製するためには、前記高屈折率層の屈折率は1.55〜2.40であることが好ましく、1.60〜2.20であることがより好ましく、1.65〜2.10であることが更に好ましく、1.80〜2.00であることが特に好ましい。
【0089】
支持体から近い順に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層を塗設し、反射防止フィルムを作製する場合、前記高屈折率層の屈折率は、1.65〜2.40であることが好ましく、1.70〜2.20であることがより好ましい。前記中屈折率層の屈折率は、前記低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。前記中屈折率層の屈折率は、1.55〜1.80であることが好ましい。なお、前記高屈折率層、及び前記中屈折率層の厚みは、屈折率の範囲に応じた光学厚みとすることができる。
【0090】
−低屈折率層−
前記低屈折率層は、層の形成後に硬化させることが好ましい。前記低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましい。
【0091】
前記低屈折率層を形成するための好ましい組成物としては少なくとも以下のいずれかを含む組成物であることが好ましい。
(1)架橋性又は重合性の官能基を有する含フッ素ポリマーを含有する組成物
(2)含フッ素のオルガノシラン材料の加水分解縮合物を主成分とする組成物
(3)2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーと中空構造を有する無機微粒子を含有する組成物、が挙げられる。
【0092】
(1)架橋性又は重合性の官能基を有する含フッ素化合物
前記架橋性又は重合性の官能基を有する含フッ素化合物としては、含フッ素モノマーと架橋性又は重合性の官能基を有するモノマーの共重合体を挙げることができる。
前記共重合体のうちで、主鎖が炭素原子のみからなり、かつ含フッ素ビニルモノマー重合単位と側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重合単位とを含んでなる共重合体としては、特開2004−45462号公報の段落〔0043〕〜〔0047〕に記載のP−1〜P−40を用いることができる。また、耐擦傷性、すべり性の改良のためにシリコーン成分を導入した含フッ素ポリマーとして、側鎖にポリシロキサン部位を含む重合単位を有し、主鎖にフッ素原子を有するグラフトポリマーとしては特開2003−222702号公報の段落〔0074〕〜〔0076〕の表1及び表2に記載の化合物を用いることができ、主鎖にポリシロキサン化合物に由来する構造単位を含むエチレン性不飽和基含有フッ素重合体としては、特開2003−183322号公報に記載の化合物を用いることができる。
【0093】
前記ポリマーに対しては特開2000−17028号公報に記載のごとく適宜重合性不飽和基を有する硬化剤を併用してもよい。また、特開2002−145952号に記載のごとく含フッ素の多官能の重合性不飽和基を有する化合物との併用も好ましい。多官能の重合性不飽和基を有する化合物の例としては、前記2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを挙げることができる。また、特開2004−170901号公報に記載のオルガノランの加水分解縮合物も好ましく、特に(メタ)アクリロイル基を含有するオルガノシランの加水分解縮合物が好ましい。これら化合物は、特にポリマー本体に重合性不飽和基を有する化合物を用いた場合に耐擦傷性改良に対する併用効果が大きく好ましい。
【0094】
前記ポリマー自身が単独で十分な硬化性を有しない場合には、架橋性化合物を配合することにより、必要な硬化性を付与することができる。例えばポリマー本体に水酸基含有する場合には、各種アミノ化合物を硬化剤として用いることが好ましい。架橋性化合物として用いられるアミノ化合物は、例えば、ヒドロキシアルキルアミノ基及びアルコキシアルキルアミノ基のいずれか一方又は両方を合計で2個以上含有する化合物であり、具体的には、例えば、メラミン系化合物、尿素系化合物、ベンゾグアナミン系化合物、グリコールウリル系化合物等を挙げることができる。これら化合物の硬化には、有機酸又はその塩を用いるのが好ましい。
【0095】
(2)含フッ素のオルガノシラン材料の加水分解縮合物
前記含フッ素のオルガノシラン化合物の加水分解縮合物を主成分とする組成物も屈折率が低く、塗膜表面の硬度が高く好ましい。フッ素化アルキル基に対して片末端又は両末端に加水分解性のシラノールを含有する化合物とテトラアルコキシシランの縮合物が好ましい。具体的組成物は、特開2002−265866号公報、特開2002−317152号公報に記載されている。
【0096】
(3)2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーと中空構造を有する無機微粒子を含有する組成物
更に別の好ましい態様として、低屈折率の粒子とバインダーからなる低屈折率層が挙げられる。低屈折率粒子としては、有機でも無機でもよいが、内部に空孔を有する粒子が好ましい。中空粒子の具体例としては、特開2002−79616号公報に記載のシリカ系粒子に記載されている。粒子屈折率は1.15〜1.40が好ましく、1.20〜1.30が更に好ましい。バインダーとしては、前記ハードコート層の項で述べた2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを挙げることができる。
【0097】
前記低屈折率層には、上記の防眩層の頁で述べた重合開始剤を添加することが好ましい。ラジカル重合性化合物を含有する場合には、該化合物100質量部に対して1質量部〜10質量部添加することが好ましく、1質量部〜5質量部添加することがより好ましい。
【0098】
前記低屈折率層には、無機粒子を併用することができる。耐擦傷性を付与するために、低屈折率層の厚みの15%〜150%、好ましくは30%〜100%、更に好ましくは45%〜60%の粒径を有する微粒子を使用することができる。
【0099】
前記低屈折率層には、防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、公知のポリシロキサン系あるいはフッ素系の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することができる。
【0100】
−高屈折率層/中屈折率層−
前記反射防止フィルムには、前記のように低屈折率層とハードコート層の間に屈折率の高い層を設け、反射防止性を高めることができる。
前記高屈折率層及び中屈折率層は高屈折無機微粒子とバインダーを含有する硬化性組成物から形成されることが好ましい。ここで使用することのできる高屈折率無機微粒子は前記、ハードコート層の屈折率を高めるために含有することのできる高屈折率の無機微粒子を用いることができる。
【0101】
前記高屈折率層及び中屈折率層は、分散媒体中に無機粒子を分散した分散液に、好ましくは、更にマトリックス形成に必要なバインダー前駆体(例えば、後述する電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)、光重合開始剤等を加えて高屈折率層及び中屈折率層形成用の塗布組成物とし、透明支持体上に高屈折率層及び中屈折率層形成用の塗布組成物を塗布して、電離放射線硬化性化合物(例えば、多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)の架橋反応又は重合反応により硬化させて形成することが好ましい。
【0102】
更に、高屈折率層及び中屈折率層のバインダーを層の塗布と同時又は塗布後に、分散剤と架橋反応又は重合反応させることが好ましい。
このようにして作製した高屈折率層及び中屈折率層のバインダーは、例えば、上記の好ましい分散剤と電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーとが、架橋又は重合反応し、バインダーに分散剤のアニオン性基が取りこまれた形となる。更に高屈折率層及び中屈折率層のバインダーは、アニオン性基が無機粒子の分散状態を維持する機能を有し、架橋又は重合構造がバインダーに皮膜形成能を付与して、無機粒子を含有する高屈折率層及び中屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性を改良する。
【0103】
前記高屈折率層のバインダーは、該層の塗布組成物の固形分量に対して、5質量%〜80質量%添加する。
前記高屈折率層における無機粒子の含有量は、前記高屈折率層の質量に対し10質量%〜90質量%であることが好ましく、15質量%〜80質量%であることがより好ましく、15質量%〜75質量%であることが更に好ましい。前記無機粒子は高屈折率層内で2種類以上を併用してもよい。
前記高屈折率層の上に低屈折率層を有する場合、前記高屈折率層の屈折率は透明支持体の屈折率より高いことが好ましい。
【0104】
前記高屈折率層を光学干渉層として用いるときの厚みは、30nm〜200nmが好ましく、50nm〜170nmがより好ましく、60nm〜150nmが更に好ましい。
前記高屈折率層及び中屈折率層のヘイズは、低いほど好ましい。前記ヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましい。
【0105】
本発明において、低屈折率層を設けた反射防止性防眩フィルムの好ましい積分反射率は、3.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.5%以下0.3%以上であることが更に好ましい。
【0106】
本発明においては、防汚性向上の観点から、更に、低屈折率層表面の表面自由エネルギーを下げることが好ましい。具体的には、含フッ素化合物やポリシロキサン構造を有する化合物を低屈折率層に使用することが好ましい。また、低屈折率層の上に下記の化合物を含む防汚層を低屈折率層とは別に設けてもよい。
【0107】
ポリシロキサン構造を有する添加剤としては、反応性基含有ポリシロキサン{例えば“KF−100T”、“X−22−169AS”、“KF−102”、“X−22−3701IE”、“X−22−164B”、“X−22−5002”、“X−22−173B”、“X−22−174D”、“X−22−167B”、“X−22−161AS”(商品名)、以上信越化学工業株式会社製;“AK−5”、“AK−30”、“AK−32”(商品名)、以上東亜合成株式会社製;「サイラプレーンFM0725」、「サイラプレーンFM0721」(商品名)、以上チッソ株式会社製等}を添加するのも好ましい。また、特開2003−112383号公報の表2、表3に記載のシリコーン系化合物も好ましく使用できる。これらのポリシロキサンは低屈折率層全固形分の0.1質量%〜10質量%の範囲で添加されることが好ましく、1質量%〜5質量%であることがより好ましい。
【0108】
<<反射防止フィルムの作製方法>>
前記反射防止フィルムは、以下の塗布方式で形成することができるが、これらに制限されるものではない。
【0109】
−塗布の準備作業−
まず、ハードコート層や反射防止層などの各層を形成するための成分を含有した塗布液が調製される。通常、塗布液は有機溶媒系が主であるので含水量を2質量%以下に抑制すると共に、密閉して溶媒の揮発量を抑制することが必要である。用いる有機溶媒は各層に用いられる材料により選択される。塗布液の均一性を得るために適宜、攪拌機や分散機が使用される。
調製された塗布液は、塗布故障を発生させないために塗布前に濾過されることが好ましい。濾過のフィルタは、塗布液中の成分が除去されない範囲でできるだけ孔径の小さいものを使うことが好ましく、濾過圧力も1.5MPa以下で適宜選択される。濾過した塗布液は、塗布直前に超音波分散して、脱泡、分散物の分散保持することが好ましい。
本発明で使用する透明支持体は、塗布前に、ベース変形の矯正のための加熱処理、又は、塗工性改良や塗設層との接着性改良のための表面処理を施してもよい。表面処理の具体的方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理又は紫外線照射処理が挙げられる。また、特開平7−333433号公報に記載のように、下塗り層を設けることも好ましく利用される。
【0110】
更に塗布の前工程として、除塵工程を設けることが好ましく、それに用いられる除塵方法としては、特開2010−32795号公報の段落〔0119〕に記載の方法を用いることができる。また、このような除塵工程を行う前に、透明支持体上の静電気を除電しておくことは、除塵効率を上げ、ゴミの付着を抑える点で特に好ましい。このような除電方法としては、特開2010−32795号公報の段落〔0120〕に記載の方法を用いることができる。更に、特開2010−32795号公報の段落〔0121〕及び〔0123〕に記載の方法によりフィルムの平面性の確保、接着性の改良をしてもよい。
【0111】
−塗布工程−
前記反射防止フィルムの各層は以下の塗布方法により形成することができるが、この方法に制限されない。ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法(ダイコート法)(米国特許第2681294号明細書、国際公開第05/123274号パンフレット参照)、マイクログラビアコート法等の公知の方法が用いられ、その中でもマイクログラビアコート法、ダイコート法が好ましい。前記マイクログラビアコート法については、特開2010−32795号公報の段落〔0125〕及び〔0126〕に、ダイコート法については、特開2010−32795号公報の段落〔0127〕及び〔0128〕に記載されており、本発明においてもこれらの方法を用いることができる。ダイコート法を用い、20m/分以上の速度で塗布することが生産性の点で好ましい。
【0112】
−乾燥工程−
前記反射防止フィルムは、透明支持体上に直接又は他の層を介して塗布された後、溶媒を乾燥するために加熱されたゾーンにウェブで搬送されることが好ましい。
溶媒を乾燥する方法としては、各種の知見を利用することができる。具体的な知見としては、特開2001−286817号公報、特開2001−314798号公報、特開2003−126768号公報、特開2003−315505号公報、特開2004−34002号公報などの記載の技術が挙げられる。
【0113】
乾燥ゾーンの温度条件については、特開2010−32795号公報の段落〔0130〕に、乾燥風の条件については、特開2010−32795号公報の段落〔0131〕に記載されているそれぞれの条件を用いることができる。
【0114】
−硬化工程−
前記反射防止フィルムは、溶媒の乾燥の後又は乾燥の後期に、ウェブとして電離放射線及び/又は熱により各塗膜を硬化させるゾーンを通過させ、塗膜を硬化することができる。本発明における電離放射線種は、特に制限はなく、皮膜を形成する硬化性組成物の種類に応じて、紫外線、電子線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線、X線などから適宜選択することができるが、紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという点で紫外線が好ましい。
【0115】
前記紫外線硬化性化合物を光重合させる紫外線の光源については、例えば特開2010−32795号公報の段落〔0133〕に記載の光源を用いることができる。電子線については、例えば特開2010−32795号公報の段落〔0134〕に記載の電子線を用いることができる。また、照射条件、照射光量、照射時間については、例えば特開2010−32795号公報の段落〔0135〕及び〔0138〕に記載の条件を用いることができる。更に、照射前後のフィルムの膜面温度、酸素濃度、酸素濃度の制御方法については、例えば特開2010−32795号公報の段落〔0136〕、〔0137〕、〔0139〕〜〔0144〕に記載の条件、方法を用いることができる。
【0116】
−連続製造のためのハンドリング−
前記反射防止フィルムを連続的に製造するためには、ロール状の透明支持体フィルムを連続的に送り出す工程、塗布液を塗布・乾燥する工程、塗膜を硬化する工程、硬化した層を有する該支持体フィルムを巻き取る工程が行われる。
【0117】
前記工程は、各層の形成毎に行ってもよいし、塗布部−乾燥室−硬化部を複数設け(いわゆるタンデム方式)て、各層の形成を連続的に行うことも可能である。
【0118】
前記反射防止フィルムを作製するためには、上記したように塗布液の精密濾過操作と同時に、塗布部における塗布工程及び乾燥室で行われる乾燥工程が高い清浄度の空気雰囲気下で行われ、かつ塗布が行われる前に、透明支持体フィルム上のゴミ、ほこりが充分に除かれていることが好ましい。塗布工程及び乾燥工程の空気清浄度は、米国連邦規格209Eにおける空気清浄度の規格に基づき、クラス10(0.5μm以上の粒子が353個/m以下)以上であることが好ましく、クラス1(0.5μm以上の粒子が35.5個/m以下)以上であることがより好ましい。なお、空気清浄度は、塗布−乾燥工程以外の送り出し、巻き取り部等においても高いことがより好ましい。
【0119】
画像の鮮明性を維持する目的では、前記反射防止フィルムはその表面形状をできるだけ平滑に調整することに加えて、透過画像鮮明度を調整することが好ましい。本発明の反射防止フィルムの透過画像鮮明度は60%以上が好ましい。透過画像鮮明度は、一般にフィルムを透過して映す画像の呆け具合を示す指標であり、この値が大きい程、フィルムを通して見る画像が鮮明で良好であることを示す。前記透過画像鮮明度は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
【0120】
前記反射防止フィルムは、画像表示装置の視認側の表面フィルムとして用いることができる。画像表示装置としては、各種の液晶表示装置、プラズマディスプレイ、有機EL、タッチパネルなど各種の表示装置に適用できる。前記反射防止フィルムを用いる画像表示装置の最表面の性質によって、前記反射防止フィルムの透明支持体の塗布層を有さない側表面に接着剤層を設けたり、支持体表面をケン化したりして画像表示装置に張り合わせることができる。
前記透明支持体の塗布層を有さない面をケン化する方法については、例えば特開2010−32795号公報の段落〔0149〕〜〔0160〕に記載の技術を用いることができる。
【0121】
ここで、前記表面型静電容量方式タッチパネルの一例について、図2を参照して説明する。この図2において、タッチパネル10は、透明基板11の表面を一様に覆うように透明導電膜12を配してなり、透明基板11の端部の透明導電膜12上に、図示しない外部検知回路との電気接続のための電極端子18が形成されている。
なお、図中、13は、シールド電極となる透明導電膜を示し、14、17は、保護膜を示し、15は、中間保護膜を示し、16は、グレア防止膜を示す。
透明導電膜12上の任意の点を指でタッチ等すると、前記透明導電膜12は、タッチされた点で人体を介して接地され、各電極端子18と接地ラインとの間の抵抗値に変化が生じる。この抵抗値の変化を前記外部検知回路によって検知し、タッチした点の座標が特定される。
【0122】
前記表面型静電容量方式タッチパネルの他の一例について図3を用いて説明する。該図3においてタッチパネル20は、透明基板21の表面を覆うように配された透明導電膜22と透明導電膜23と、該透明導電膜22と該透明導電膜23とを絶縁する絶縁層24と、指等の接触対象と透明導電膜22又は透明導電膜23の間に静電容量を生じる絶縁カバー層25からなり、指等の接触対象に対して位置検知する。構成によっては、透明導電膜22,23を一体として構成することもでき、また、絶縁層24又は絶縁カバー層25を空気層として構成してもよい。
絶縁カバー層25を指等でタッチすると、指等と透明導電膜22又は透明導電膜23の間の静電容量の値に変化が生じる。この静電容量値の変化を前記外部検知回路によって検知し、タッチした点の座標が特定される。
また、図4により、投射型静電容量方式タッチパネルとしてのタッチパネル20を透明導電膜22と透明導電膜23とを平面から視た配置を通じて模式的に説明する。
タッチパネル20は、X軸方向の位置を検出可能とする複数の透明導電膜22と、Y軸方向の複数の透明導電膜23とが、外部端子に接続可能に配されている。透明導電膜22と透明導電膜23とにより、指先等の接触対象が複数接触しても、接触情報を多点で検出できる。
このタッチパネル20上の任意の点を指でタッチ等すると、X軸方向及びY軸方向の座標が位置精度よく特定される。
なお、透明基板、保護層等のその他の構成としては、前記表面型静電容量方式タッチパネルの構成を適宜選択して適用することができる。また、タッチパネル20において、複数の透明導電膜22と、複数の透明導電膜23とによる透明導電膜のパターンの例を示したが、その形状、配置等としては、これらに限られない。
【0123】
前記抵抗膜式タッチパネルの一例について、図5を用いて説明する。該図5おいて、タッチパネル30は、透明導電膜32が配された基板31と、該透明導電膜32上に複数配されたスペーサ36と、空気層34を介して、透明導電膜32と接触可能な透明導電膜33と、該透明導電膜33上に配される透明フィルム35とが支持されて構成される。
このタッチパネル30に対して、透明フィルム35側からタッチすると、透明フィルム35が押圧され、押し込まれた透明導電膜32と透明導電膜33とが接触し、この位置での電位変化を図示しない外部検知回路で検出することで、タッチした点の座標が特定される。
【0124】
(集積型太陽電池)
本発明の集積型太陽電池は、本発明の前記導電膜を用いている。
前記集積型太陽電池(以下、太陽電池デバイスと称することもある)としては、特に制限はなく、太陽電池デバイスとして一般的に用いられるものを使用することができる。例えば、単結晶シリコン系太陽電池デバイス、多結晶シリコン系太陽電池デバイス、シングル接合型、又はタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイス、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池デバイス、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池デバイス、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池デバイス、色素増感型太陽電池デバイス、有機太陽電池デバイスなどが挙げられる。これらの中でも、本発明においては、前記太陽電池デバイスが、タンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイス、及び銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池デバイスであることが好ましい。
【0125】
タンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイスの場合、アモルファスシリコン、微結晶シリコン薄膜層、また、これらにゲルマニウムを含んだ薄膜、更に、これらの2層以上のタンデム構造が光電変換層として用いられる。成膜はプラズマCVD等を用いる。
【実施例】
【0126】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0127】
(調製例1)
−銀ナノワイヤー分散物(1)の調製−
予め、下記の添加液A、G、及びHを調製した。
〔添加液A〕
硝酸銀粉末0.56gを純水50mLに溶解した。その後、1Nのアンモニア水を透明になるまで添加した。そして、全量が100mLになるように純水を添加した。
【0128】
〔添加液G〕
グルコース粉末0.5g及びヒドロキルアミン0.05gを140mLの純水で溶解して、添加液Gを調製した。
【0129】
〔添加液H〕
HTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)粉末0.5gを27.5mLの純水で溶解して、添加液Hを調製した。
【0130】
次に、以下のようにして、銀ナノワイヤー水分散液を調製した。
純水410mLを三口フラスコ内に入れ、20℃にて攪拌しながら、前記添加液H 82.5mL、及び前記添加液G 206mLをロートにて添加した(一段目)。この液に、前記添加液A 206mLを流量2.0mL/min、攪拌回転数800rpmで添加した(二段目)。その10分間後、添加液Hを82.5mL添加した(三段目)。その後、3℃/分で内温65℃まで昇温した。その後、攪拌回転数を200rpmに落とし、8時間加熱した。
得られた分散液を冷却した後、限外濾過モジュールSIP1013(旭化成株式会社製、分画分子量6,000)、マグネットポンプ、及びステンレスカップをシリコーン製チューブで接続して、限外濾過装置とした。
銀ナノワイヤー水分散液をステンレスカップに入れ、ポンプを稼動させて限外濾過を行った。モジュールからの濾液が50mLになった時点で、ステンレスカップに950mLの蒸留水を加え、洗浄を行った。前記の洗浄を伝導度が50μS/cm以下になるまで繰り返した後、濃縮を行い、銀ナノワイヤー分散物(1)を得た。
得られた銀ナノワイヤー分散物(1)中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ、平均長軸長さ、短軸長さの変動係数、及びアスペクト比が10以上の銀ナノワイヤーの比率を、以下に示すようにして測定した。結果を表1に示す。
【0131】
<金属ナノワイヤーの平均短軸長さ及び平均長軸長さ>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの平均短軸長さ及び平均長軸長さを求めた。
【0132】
<金属ナノワイヤー短軸長さの変動係数>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、金属ナノワイヤーの短軸長さを300個観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの短軸長さを計測し、その標準偏差と平均値を計算することにより変動係数を求めた。
【0133】
<アスペクト比が10以上の金属ナノワイヤーの比率>
各銀ナノワイヤー水分散物をろ過して銀ナノワイヤーとそれ以外の粒子を分離し、ICP発光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPS−8000)を用いてろ紙に残っている銀の量と、ろ紙を透過した銀の量を各々測定し、短軸長さが50nm以下であり、かつ長軸長さが5μm以上である金属ナノワイヤーをアスペクト比が10以上の金属ナノワイヤーの比率(%)として求めた。
なお、金属ナノワイヤーの比率を求める際の金属ナノワイヤーの分離は、メンブレンフィルター(Millipore社製、FALP 02500、孔径1.0μm)を用いて行った。
【0134】
<長軸長さの単一度>
金属ナノワイヤーにおける長軸長さの単一度は、走査型電子顕微鏡画像から任意の100本の金属ナノワイヤーの長軸長さを計測し、その平均長軸長さの±30%の範囲に入る金属ナノワイヤーの数の割合(百分率)から求めた。
【0135】
<曲率半径>
前記金属ナノワイヤーの曲率半径は、走査型電子顕微鏡画像のナノワイヤーをデジタイザで円弧に近似し曲率半径を求めた。
【0136】
<長軸長さが0.1μm以下の球状乃至棒状粒子の比率>
走査型電子顕微鏡画像から金属ナノワイヤーの本数Nと、長軸長さが0.1μm以下の球状乃至棒状粒子の個数Rを計測し、比率R/N(百分率)を求めた。
【0137】
(調製例2)
−銀ナノワイヤー分散物(2)の調製−
エチレングリコール30mLを三口フラスコに入れ160℃に加熱した。その後、36mMのポリビニルピロリドン(PVP K−55、アルドリッチ社製)、3μMのアセチルアセトナート鉄、60μMの塩化ナトリウムエチレングリコール溶液18mLと、24mMの硝酸銀エチレングリコール溶液18mLを毎分1mLの速度で添加した。160℃で60分間加熱後室温まで冷却した。水を加えて遠心分離し、伝導度が50μS/cm以下になるまで精製し、プロピレングリコールモノメチルエーテルで更に遠心分離を行い水を除去し、最終的にプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加し、銀ナノワイヤー分散物(2)を調製した。
得られた銀ナノワイヤー分散物(2)中の銀ナノワイヤーの平均短軸長さ、平均長軸長さ、短軸長さの変動係数、及びアスペクト比が10以上の金属ナノワイヤー(銀ナノワイヤー)の比率を、調製例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0138】
(調製例3)
−カーボンナノチューブ(CNT)分散物の調製−
特許第3903159号公報の実施例1を参考にして単層カーボンナノチューブ分散液を調製した。
単層カーボンナノチューブ(Chemical Physics Letters,323(2000) P.580−P.585に基づき合成)と、分散剤としてポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体とを、溶媒としてのイソプロピルアルコール/水混合物(混合比5:1)中に加えた。単層カーボンナノチューブの含有率は0.003質量%、分散剤の含有率は0.05質量%であった。
得られたCNT分散物中のCNTの平均短軸長さは5nm、平均長軸長さは1μmであった。
【0139】
【表1−1】

*表1中、「金属ナノワイヤーの比率」とは、アスペクト比が1000以上の金属ナノワイヤー(銀ナノワイヤー)の比率を表す。
【0140】
【表1−2】

【0141】
(実施例1)
<透明導電膜(単層)の作製>
以下に示すようにして、表2に示す試料No.101〜112の透明導電膜を作製した。
【0142】
<試料No.101の作製>
−下引き層の形成−
市販の二軸延伸熱固定済の厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基板に8W/m・分のコロナ放電処理を施し、下記組成の下引き層用塗布液を塗布して、乾燥厚み0.8μmの下引き層を形成した。
【0143】
−下引き層用塗布液の組成−
・ブチルアクリレート・・・40質量%
・スチレン・・・20質量%
・グリシジルアクリレート・・・・40質量%
上記組成からなる共重合体ラテックスに、ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア)を0.5質量%含有させて、下引き層用塗布液を調製した。
【0144】
次に、下引き層の表面に8W/m・分のコロナ放電処理を施して、ヒドロキシエチルセルロースを親水性ポリマー層として乾燥厚みが0.2μmになるように塗設した。
【0145】
次に、前記銀ナノワイヤー分散物(1)を親水性ポリマー層上に、枚葉式自動塗工機(テスター産業社製、G−7型)にて、塗布速度50mm/分、塗布液温度25℃、ガラス基板温度25℃の条件で番手No.2のバーコーターでバーコート塗布し、厚み0.1μmの導電層を形成した。以上により、試料No.101の透明導電膜を作製した。
【0146】
<試料No.102の作製>
試料No.101において、前記銀ナノワイヤー分散物(1)を親水性ポリマー層上に、バーコーターの番手をNo.6に変えてバーコート塗布した以外は、試料No.101と同様にして、試料No.102の透明導電膜を作製した。
【0147】
<試料No.103の作製>
試料No.101において、前記銀ナノワイヤー分散物(1)を親水性ポリマー層上に、バーコーターの番手をNo.14に変えてバーコート塗布した以外は、試料No.101と同様にして、試料No.103の透明導電膜を作製した。
【0148】
<試料No.104の作製>
試料No.101において、前記銀ナノワイヤー分散物(1)を親水性ポリマー層上に、バーコーターの番手をNo.60に変えてバーコート塗布した以外は、試料No.101と同様にして、試料No.104の透明導電膜を作製した。
【0149】
<試料No.105の作製>
試料No.101において、前記銀ナノワイヤー分散物(1)を親水性ポリマー層上に、水で3倍に希釈してバーコート塗布した以外は、試料No.101と同様にして、試料No.105の透明導電膜を作製した。
【0150】
<試料No.106の作製>
試料No.101において、前記銀ナノワイヤー分散物(1)を親水性ポリマー層上に、バーコーターの番手をNo.75に変えてバーコート塗布した以外は、試料No.101と同様にして、試料No.106の透明導電膜を作製した。
【0151】
<試料No.107の作製>
試料No.101において、前記銀ナノワイヤー分散物(1)を親水性ポリマー層上に、前記銀ナノワイヤー分散物(2)に変えて番手No.2のバーコーターでバーコート塗布した以外は、試料No.101と同様にして、試料No.107の透明導電膜を作製した。
【0152】
<試料No.108の作製>
試料No.107において、前記銀ナノワイヤー分散物(2)を親水性ポリマー層上に、バーコーターの番手をNo.6に変えてバーコート塗布した以外は、試料No.101と同様にして、試料No.108の透明導電膜を作製した。
【0153】
<試料No.109の作製>
試料No.101において、前記銀ナノワイヤー分散物(2)を親水性ポリマー層上に、バーコーターの番手をNo.14に変えてバーコート塗布した以外は、試料No.101と同様にして、試料No.109の透明導電膜を作製した。
【0154】
<試料No.110の作製>
試料No.101において、前記銀ナノワイヤー分散物(2)を親水性ポリマー層上に、バーコーターの番手をNo.60に変えてバーコート塗布した以外は、試料No.101と同様にして、試料No.110の透明導電膜を作製した。
【0155】
<試料No.111の作製>
試料No.101において、前記CNT分散物を親水性ポリマー層上に、前記銀ナノワイヤー分散物(1)に変えて番手No.2のバーコーターでバーコート塗布した以外は、試料No.101と同様にして、試料No.111の透明導電膜を作製した。
【0156】
<試料No.112の作製>
試料No.101において、前記CNT分散物を親水性ポリマー層上に、バーコーターの番手をNo.6に変えてバーコート塗布した以外は、試料No.101と同様にして、試料No.112の透明導電膜を作製した。
【0157】
次に、作製した試料No.101〜No.112の透明導電膜について、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表2に示す。
【0158】
<交点の数>
得られた各透明導電膜の導電層表面に対し垂直方向から走査型電子顕微鏡(SEM、日立製作所製、S−2300)で観察し、測定対象である1本の金属ナノワイヤーが他の金属ナノワイヤーと重なる交点の数を、金属ナノワイヤー上の重複を避けた任意の1μm当りの交点数を10箇所求め、その平均を得ることにより、交点数を測定した。
【0159】
<交差角度>
走査型電子顕微鏡画像の任意の2本の金属ナノワイヤーからなる交点における直線のなす角度、又は湾曲している場合はその接線どうしのなす角度のうち鋭角側を分度器を用いて、交差角度を測定した。なお、測定値は20箇所の平均値である。
【0160】
<透過率の測定>
得られた各透明導電膜の導電層について、島津製作所製UV−2550を用い、400nm〜800nmの透過率を測定した。
【0161】
<表面抵抗の測定>
得られた各透明導電膜の導電層について、表面抵抗計(三菱化学株式会社製、Loresta−GP MCP−T600)を用い、表面抵抗を測定した。
【0162】
<黒締まりの評価>
黒締りの評価は、黒紙の上に金属ナノワイヤーを塗設したガラス基板を置き、目視にて官能評価を行った。評価は外光及び照明の反射(写りこみ)が起こらないように暗室中で行い、ガラス面上が500ルクスになるように照明を調整した。評価の基準は、下記の通りであり、5人のパネラーによる評価において最も多い評価をその試料の黒締まりの評価とした。
〔評価基準〕
◎:未塗布のガラスに対してほとんど黒さが変わらず、良好。
○:未塗布のガラスに対してわずかに黒さが不足するが、単体では感じられず良好。
△:単体でも黒さの不足が感じられるが許容できる程度。
×:黒さが不足しており、許容できない。
【0163】
【表2−1】

【表2−2】

【0164】
(実施例2)
−透明導電膜の作製(2層積層)−
以下に示すようにして、表3に示す試料No.201〜No.212の透明導電膜を作製した。
【0165】
<試料No.201の作製>
−下引き層の形成−
市販の二軸延伸熱固定済の厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基板に8W/m・分のコロナ放電処理を施し、下記組成の下引き層用塗布液を塗布して、乾燥厚み0.8μmの下引き層を形成した。
【0166】
−下引き層用塗布液の組成−
・ブチルアクリレート・・・40質量%
・スチレン・・・20質量%
・グリシジルアクリレート・・・・40質量%
上記組成からなる共重合体ラテックスに、ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア)を0.5質量%含有させて、下引き層用塗布液を調製した。
【0167】
次に、下引き層の表面に8W/m・分のコロナ放電処理を施して、ヒドロキシエチルセルロースを親水性ポリマー層として乾燥厚みが0.2μmになるように塗設した。
【0168】
次に、前記銀ナノワイヤー分散物(1)を親水性ポリマー層上に、枚葉式自動塗工機(テスター産業社製、G−7型)にて、塗布速度120mm/分、塗布液温度35℃、ガラス基板温度35℃の条件で第1回目のバーコート塗布し、厚み0.1μmの第1の導電層を形成した。
次に、前記銀ナノワイヤー分散物(1)を第1の導電層上に、前記第1回目のバーコート塗布の塗布方向に対し45度の塗布方向に変えた第2回目のバーコート塗布を行った以外は、第1回目のバーコート塗布と同様にして、厚み0.1μmの第2の導電層を形成した。以上により、試料No.201の透明導電膜を作製した。
【0169】
<試料No.202の作製>
試料No.201において、第2回目のバーコート塗布を、第1回目のバーコート塗布の塗布方向に対し60度の塗布方向に変えた以外は、試料No.201と同様にして、試料No.202の透明導電膜を作製した。
【0170】
<試料No.203の作製>
試料No.201において、第2回目のバーコート塗布を、第1回目のバーコート塗布の塗布方向に対し75度の塗布方向に変えた以外は、試料No.201と同様にして、試料No.203の透明導電膜を作製した。
【0171】
<試料No.204の作製>
試料No.201において、第2回目のバーコート塗布を、第1回目のバーコート塗布の塗布方向に対し90度の塗布方向に変えた以外は、試料No.201と同様にして、試料No.204の透明導電膜を作製した。
【0172】
<試料No.205の作製>
試料No.201において、第2回目のバーコート塗布を、第1回目のバーコート塗布の塗布方向に対し40度の塗布方向に変えた以外は、試料No.201と同様にして、試料No.205の透明導電膜を作製した。
【0173】
<試料No.206の作製>
試料No.201において、第2回目のバーコート塗布を、第1回目のバーコート塗布の塗布方向に対し10度の塗布方向に変えた以外は、試料No.201と同様にして、試料No.206の透明導電膜を作製した。
【0174】
<試料No.207の作製>
試料No.201において、銀ナノワイヤー分散物(1)を銀ナノワイヤー分散物(2)に代えた以外は、試料No.201と同様にして、試料No.207の透明導電膜を作製した。
【0175】
<試料No.208の作製>
試料No.202において、銀ナノワイヤー分散物(1)を銀ナノワイヤー分散物(2)に代えた以外は、試料No.202と同様にして、試料No.208の透明導電膜を作製した。
【0176】
<試料No.209の作製>
試料No.203において、銀ナノワイヤー分散物(1)を銀ナノワイヤー分散物(2)に代えた以外は、試料No.203と同様にして、試料No.209の透明導電膜を作製した。
【0177】
<試料No.210の作製>
試料No.204において、銀ナノワイヤー分散物(1)を銀ナノワイヤー分散物(2)に代えた以外は、試料No.204と同様にして、試料No.210の透明導電膜を作製した。
【0178】
<試料No.211の作製>
試料No.205において、銀ナノワイヤー分散物(1)を銀ナノワイヤー分散物(2)に代えた以外は、試料No.205と同様にして、試料No.211の透明導電膜を作製した。
【0179】
<試料No.212の作製>
試料No.206において、銀ナノワイヤー分散物(1)を銀ナノワイヤー分散物(2)に代えた以外は、試料No.206と同様にして、試料No.212の透明導電膜を作製した。
【0180】
次に、作製した試料No.201〜No.212の透明導電膜について、試料No.101〜No.112と同様にして、諸特性を評価した。結果を表3に示す。
【0181】
【表3−1】

【表3−2】

【0182】
(実施例3)
−溶剤洗浄、アルカリ洗浄、又は加熱処理−
実施例1の試料No.103及び試料No.104と同様にして作製した試料に対し、下記表4に示すように溶剤洗浄、アルカリ洗浄、加熱の後処理を行った。溶剤洗浄ではエタノール水溶液(95質量%)、又はプロパノール水溶液(80質量%)浸漬を25℃で20秒間行い、40℃で乾燥した。アルカリ洗浄では0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液浸漬を25℃にて20秒間行い、40℃で乾燥した。熱処理では110℃のホットプレートに1分間密着させて行った。水浸漬は25℃で30秒間行った。
次に、作製した試料No.301〜No.310の透明導電膜について、試料No.101〜No.112と同様にして、諸特性を評価した。結果を表4に示す。
【0183】
【表4】

表4の結果から、試料No.103を用いた試料No.301〜No.306、及び試料No.104を用いた試料No.307〜No.310は、いずれも後処理後に水浸漬よりも表面抵抗が低下し、透過率と黒締りが改善され、本発明のより好ましい態様であることが分かる。
【0184】
(実施例4)
−タッチパネルの作製−
試料No.305の透明導電膜を用いて、『最新タッチパネル技術』(2009年7月6日発行、株式会社テクノタイムズ)、三谷雄二監修、“タッチパネルの技術と開発”、シーエムシー出版(2004年12月発行)、「FPD International 2009 Forum T−11講演テキストブック」、「Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292」等に記載の方法により、タッチパネルを作製した。
作製したタッチパネルを使用した場合、透過率の向上により視認性に優れ、かつ導電性の向上により素手、手袋を嵌めた手、指示具のうち少なくとも一つによる文字等の入力又は画面操作に対し応答性に優れるタッチパネルを製作できることが分かった。なお、タッチパネルとは、いわゆるタッチセンサ及びタッチパッドを含むものとする。
【0185】
(実施例5)
<集積型太陽電池の作製>
−アモルファス太陽電池(スーパーストレート型)の作製−
ガラス基板上に、試料No.304の透明導電膜を形成した。該透明導電膜の上部にプラズマCVD法により厚みが15nmのp型、前記p型の上部に厚みが350nmのi型、前記i型の上部に厚みが30nmのn型アモルファスシリコンを形成した。前記n型アモルファスシリコンの上部に裏面反射電極として厚み20nmのガリウム添加酸化亜鉛層、該ガリウム添加酸化亜鉛層の上部に厚み200nmの銀層を形成し、光電変換素子を作製した。
【0186】
(実施例6)
<集積型太陽電池の作製>
−CIGS太陽電池(サブストレート型)の作製−
ガラス基板上に、直流マグネトロンスパッタ法により厚みが500nm程度のモリブデン電極、前記電極の上部に真空蒸着法により厚みが2.5μmのカルコパイライト系半導体材料であるCu(In0.6Ga0.4)Se薄膜、前記Cu(In0.6Ga0.4)Se薄膜の上部に溶液析出法により厚みが50nmの硫化カドミニウム薄膜を形成した。前記硫化カドミニウム薄膜の上部に、試料No.104の透明導電膜を形成し、該透明導電膜の上部に直流マグネトロンスパッタ法により厚み100nmのホウ素添加酸化亜鉛薄膜(透明導電層)を形成し、光電変換素子を作製した。
【0187】
<太陽電池特性(変換効率)の評価>
作製した実施例5及び6の太陽電池について、AM1.5、100mW/cmの疑似太陽光を照射することで太陽電池特性(変換効率)を測定した。結果を表5に示す。
【0188】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0189】
本発明の導電膜は、光散乱が小さく黒締まりが良好で、長波長領域まで高透過率であり、かつ高導電性を有し、耐光性及び耐マイグレーション性が向上しているので、例えば、タッチパネル、ディスプレイ用帯電防止、電磁波シールド、有機ELディスプレイ用電極、無機ELディスプレイ用電極、電子ペーパー、フレキシブルディスプレイ用電極、フレキシブルディスプレイ用帯電防止、太陽電池、その他の各種デバイスなどに幅広く利用可能である。
【符号の説明】
【0190】
10、20、30 タッチパネル
11、21、31 透明基板
12、13、22、23、32、33 透明導電膜
24 絶縁層
25 絶縁カバー層
14、17 保護膜
15 中間保護膜
16 グレア防止膜
18 電極端子
33 スペーサ
34 空気層
35 透明フィルム
36 スペーサ
101 ディスプレイ
102 透明接着剤
103 第2の電極
104 透明基板
105 第1の電極
106 透明接着剤
107 透明フィルム
108 ハードコート層
109 反射防止層
110 保護樹脂層
120 反射防止フィルム
130 タッチパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均短軸長さが50nm以下であり、かつ平均長軸長さが5μm以上である金属ナノワイヤーを少なくとも含有する導電膜であって、
前記導電膜表面に対し垂直方向から走査型電子顕微鏡で観察した際に、測定対象となる1本の金属ナノワイヤーが他の金属ナノワイヤーと重なる交点の数が、前記1本の金属ナノワイヤーの1μm当たり、2個〜200個であることを特徴とする導電膜。
【請求項2】
平均短軸長さが50nm以下であり、かつ平均長軸長さが5μm以上である金属ナノワイヤーを少なくとも含有する導電膜であって、
前記導電膜表面に対し垂直方向から走査型電子顕微鏡で観察した際に、測定対象である1本の金属ナノワイヤーが他の金属ナノワイヤーと重なる交点における狭角側の交差角度が、平均値で50度以上90度未満であることを特徴とする導電膜。
【請求項3】
金属ナノワイヤーの平均短軸長さが15nm〜35nmである請求項1から2のいずれかに記載の導電膜。
【請求項4】
金属ナノワイヤーが、銀、及び銀と銀以外の金属との合金のいずれかからなる請求項1から3のいずれかに記載の導電膜。
【請求項5】
金属ナノワイヤーの曲率半径が100μm〜1,000μmである請求項1から4のいずれかに記載の導電膜。
【請求項6】
長軸長さが0.1μm以下の球状乃至棒状粒子の比率が10%以下である請求項1から5のいずれかに記載の導電膜。
【請求項7】
支持体上に、少なくとも金属ナノワイヤーを含有する導電層組成物を塗布して導電層を形成する導電層形成工程を少なくとも含み、
前記導電層形成工程において、導電層組成物をバーコートにより塗布し、塗布方向を変えて2回以上塗布を行うことを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項8】
導電層を有機溶剤及びアルカリ溶液の少なくともいずれかで洗浄する洗浄工程を含む請求項7に記載の導電膜の製造方法。
【請求項9】
導電層を100℃以上に加熱する加熱工程を含む請求項7から8のいずれかに記載の導電膜の製造方法。
【請求項10】
請求項1から6のいずれかに記載の導電膜を用いたタッチパネル又は集積型太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−3900(P2012−3900A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136463(P2010−136463)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】