説明

導電薄膜

【課題】製造工程において、電子製品の品質が低下する欠点を解決するとともに高いデザイン自由度を有する導電薄膜を提供する。
【解決手段】基板10、ハードコーティング層12、第1の屈折率層14、第2の屈折率層16及び透明導電層18を含む導電薄膜を提供する。ハードコーティング層は、基板上に設けられ、第1の屈折率層、第2の屈折率層及び透明導電層は順次にハードコーティング層上に積層され、透明導電層は第2の屈折率層の一部を被覆する。透明導電層は、光が所定の入射角で入射された場合、所定の第1の反射率で前記光を反射し、第2の屈折率層は、前記光が前記入射角で入射された場合、所定の第2の反射率で前記光を反射し、第1の反射率と第2の反射率との差は所定の第1の閾値よりも小さいことを特徴とする。これにより、導電薄膜は、エッチング領域と非エッチング領域との色差を消去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電薄膜に関し、特にエッチング領域と非エッチング領域との間の色差を消去することができる導電薄膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製造技術の進歩や各種の応用面での発展に伴い、電子製品は、機能の多様性や高度に統合された利便性が提供されており、ユーザが容易に操作できるようになっている。例えば、ユーザがより簡単且つ直感的に電子製品を制御できるように、現在の電子情報製品には、従来の押ボタン式の制御ボタンの代わりに、タッチ式の表示パネルが設けられたものが広く用いられている。
【0003】
タッチパネルは、抵抗型、容量型、赤外線型及び超音波型等のものに大きく分けられる。このうち、抵抗型タッチパネル及び容量型タッチパネルはよく用いられている。現在の応用面としては、容量型タッチパネルは、マルチタッチに適用可能な特性によってよりヒューマン的な制御モードが可能となり、市場やユーザに愛用されている。しかしながら、容量型タッチパネルは、タッチパネルに導体材質、例えば指でタッチして電子製品を操作する必要があるという欠点を有している。一方、抵抗型タッチパネルは、ユーザがタッチパネルに如何なる材質でタッチしても、電子製品の操作や制御を行うことができるため、タッチパネルの使用利便性が向上する。また、抵抗型タッチパネルは、コストが低く、且つ技術発展が成熟しているため、中位レベルの製品には多く利用されている。
【0004】
従来のタッチパネルは、ガラス基板の表面上に直接的に導電薄膜が堆積され、前記導電薄膜にタッチすることにより、信号を入力したりタッチ位置を検知したり等の機能を達成することができる。前記導電薄膜は、その上に回路パターンを得るために、黄色現像、エッチングの工程を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−016264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明に係る導電薄膜によれば、ハードコーティング層の組成材料及び厚さを調整することにより、エッチングされた導電薄膜及びエッチングされていない導電薄膜がほぼ同様の反射率を有するようになることで製造工程に残った残跡が目視で観察されなくなるため、光学上の表示効果が向上する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板、ハードコーティング層、第1の屈折率層、第2の屈折率層及び透明導電層を含む導電薄膜を提供する。前記ハードコーティング層は、前記基板上に設けられ、組成材料がシリコンを含む。前記第1の屈折率層、前記第2の屈折率層及び前記透明導電層は、順次に前記ハードコーティング層上に積層され、前記透明導電層は前記第2の屈折率層の一部を被覆する。前記透明導電層は光が所定の入射角で入射された場合、所定の第1の反射率で前記光を反射し、前記第2の屈折率層は前記光が前記入射角で入射された場合、所定の第2の反射率で前記光を反射し、前記第1の反射率と前記第2の反射率との差は所定の第1の閾値よりも小さい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る導電薄膜によれば、ハードコーティング層の組成材料及び厚さを調整することにより、導電薄膜がエッチング工程を経て最上層の透明導電層の一部の領域がエッチングされた場合、エッチングされた導電薄膜及びエッチングされていない導電薄膜はほぼ同様の反射率を有するようになっている。ここで、透明導電層の一部の領域がエッチングされた場合、光が透明導電層及び第2の屈折率層を介して導電薄膜に入射される反射率は、光が第2の屈折率層のみを介して導電薄膜に入射される反射率とほぼ同様である。これにより、本発明に係る導電薄膜は、エッチング領域と非エッチング領域との間の色差を消去することができ、製造工程に残った残跡が目視で観察されなくなるため、光学上の表示効果を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の好ましい実施例に係る導電薄膜の模式図を示す。
【図2】本発明の好ましい実施例に係る導電薄膜の立体図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[導電薄膜の実施例]
図1及び図2を併せて参照して、図1は本発明の好ましい実施例に係る導電薄膜の模式図を示し、図2は本発明の好ましい実施例に係る導電薄膜の立体図を示す。図1、図2に示すように、本発明に係る導電薄膜1は、基板10、ハードコーティング層12、第1の屈折率層14、第2の屈折率層16及び透明導電層18を備え、基板10上にハードコーティング層12、第1の屈折率層14、第2の屈折率層16及び透明導電層18が順次に設けられる。以下、本発明に係る導電薄膜1の各部の構成について説明する。
【0011】
基板10は、ガラス又はPET(polyethylene terephthalate、ポリエチレンテレフタレート)の材料によって薄膜形状に形成されるが、それらの材料に限定されず、例えば、ジアセチルセルロース(diacetyl cellulose)薄膜、トリアセチルセルロース(triacetyl cellulose)薄膜、アセチルセルロースブチラート(acetyl cellulose butyrate)薄膜等のアセチルセルロース系薄膜、ポリカーボネート(polycarbonate)系薄膜、環状ポリオレフィン(polyolefin)系薄膜、アクリル酸(acrylic acid)樹脂系薄膜、ポリエチレンテレフタレート薄膜、ポリブチレンテレフタレート(Polybutylene terephthalate、PBT)薄膜、ポリエチレンナフタレート(poly ethylene naphthalate)薄膜等のポリエステル(polyester)系薄膜、ポリサルフォン(polysulfone)系薄膜、ポリエーテルスルホン(polyether sulfone、PES)系薄膜、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)系薄膜、ポリイミド(polyimide)系薄膜、ポリエーテルイミド(polyether imide、PEI)系薄膜等の透明プラスチック薄膜であってもよい。上述した基板材料において、光透過率等の光学特性、加工性、機械的物性、低吸水率、耐熱性、耐気候性等の点を考慮すると、アセチルセルロース系薄膜、ポリカーボネート系薄膜、環状ポリオレフィン系薄膜、アクリル酸樹脂系薄膜及びポリエステル系薄膜が好ましく、特にトアセチルセルロース系薄膜、ポリカーボネート系薄膜、環状ポリオレフィン系薄膜、アクリル酸樹脂系薄膜及びポリエチレンテレフタレート薄膜がより好ましい。
【0012】
実施例において、基板10がガラス又はPETの材料によって製造された場合、基板10の屈折率は約1.52である。もちろん、上述した材料に限定されず、所属する技術分野において通常知識を有する者は、屈折率が1.52に近いその他の化合物の材料を用いて基板10を製造してもよい。ここで、本発明では、基板10の厚さは特に限定しないが、一般的には、基板10の厚さは約300μm以下である。さらに、基板10の一方の表面にハードコーティング層12、第1の屈折率層14及び第2の屈折率層16を設けることができるほか、基板10の反対側の表面にその他の装置を接着するための接着剤層20をさらに形成してもよい。また、接着剤層20は、光学特性のよい材料、例えば、アクリル酸系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコン系接着剤等であってもよい。
【0013】
ハードコーティング層12、第1の屈折率層14及び第2の屈折率層16は順次に基板10上に積層され、ハードコーティング層12は基板10に接し、第1の屈折率層14はハードコーティング層12と第2の屈折率層16との間に介在され、第2の屈折率層16は透明導電層18に接する。一つの例として、第1の屈折率層14は金属酸化物層であり、その材料が酸化チタン、ITO(Indium Tin Oxide、酸化インジウムスズ)、酸化タンタル、酸化スズのいずれか1種又は2種以上の組み合わせから製造されてもよい。第2の屈折率層16はシロキサン重合体(siloxane polymer)層であり、その材料が無機二酸化シリコン系化合物、ポリオルガノシロキサン(polyorganosiloxane)系化合物のいずれか1種又はそれらの組み合わせから製造されてもよい。
【0014】
ここで注意すべき点は、本発明に係るハードコーティング層12の厚さは1μm〜3μmであり、ハードコーティング層12の組成成分におけるシリコンの重量は5%〜25%であり、その他の組成成分は炭素及び水素を含んでもよい点である。ここで、ハードコーティング層12の組成成分における炭素及び水素の重量比は特に限定されず、導電薄膜1が耐久性テストをパスすることができるとともに、本発明の達成しようとする目的から離脱することなく、所属する技術分野において通常知識を有する者がハードコーティング層12における炭素及び水素の重量比を適当に配合することができるものであればよい。
【0015】
実施例において、本発明においては、ハードコーティング層12、第1の屈折率層14及び第2の屈折率層16における各層の厚さ及び屈折率を調整することにより、導電薄膜1がエッチング工程を経た後に生じた色差を消去することができ、製造工程において導電薄膜1に残った残跡が目視で観察されなくなることが可能となる。一つの例として、本発明に係る第1の屈折率層14は、厚さが100Å〜300Åであり、屈折率が1.6〜2.0である。第2の屈折率層16は、厚さが500Å〜700Åであり、屈折率が1.42〜1.46である。
【0016】
透明導電層18は、第2の屈折率層16上に形成され、導電薄膜1の最外層に位置する。エッチング工程の後、透明導電層18は、一部の領域のみがエッチングされたことによって特定のパターンが形成されるため、エッチングされた領域には透明導電層18が存在されなくなった一方、エッチングされていない透明導電層18は第2の屈折率層16の一部を被覆し続ける。一つの例として、透明導電層18は、SnO2、ZnO2、In2O3又はITO等の材料からなり、厚さが150Å〜250Åである。一般的には、透明導電層18は、材質がITOである場合、厚さが180Åであってもよい。
【0017】
一方、透明導電層18は屈折率が1.9〜2.1である。上述した透明導電層18が導電性を有するため、応用時には接地過程を簡単化させるとともに製造工程の歩留まりを向上させることができる。また、透明導電層18が導電層であるため、電極を透明導電層18に容易に形成することができる。従って、本発明は、例えばタッチ式の表示ユニットに適用することが好ましいが、これに限られるものではない。実施例において、透明導電層18の厚さ及び屈折率は、ユーザが透明導電層18又は第2の屈折率層16のいずれから導電薄膜1を観察しても製造工程において導電薄膜1に残った残跡が観察されないように、ハードコーティング層12、第1の屈折率層14及び第2の屈折率層16の厚さ及び屈折率に応じて調整する必要がある。
【0018】
光の反射角度としては、光が所定の入射角で透明導電層18及び第2の屈折率層16を介して導電薄膜1に入射された場合、前記光は所定の第1の反射率R1を有する。一方、光が同じ入射角で第2の屈折率層16(透明導電層18を介さない)のみを介して導電薄膜1に入射された場合、前記光は第2の反射率R2を有する。第1の反射率R1と第2の反射率R2との差は所定の第1の閾値よりも小さい。実施例において、本発明の仕様で製造された導電薄膜1としては、前記第1の閾値が0.5よりも小さく、即ち、第1の反射率R1と第2の反射率R2との差が極めて小さいため、目視で観察されない効果を図ることができる。
【0019】
一方、光の透過角度としては、光が所定の入射角で透明導電層18及び第2の屈折率層16を介して基板10に入射された場合、前記光は第1の透過率T1を有する。一方、光が同じ入射角で第2の屈折率層16(透明導電層18を介さない)のみを介して基板10に入射された場合、前記光は第2の透過率T2を有する。第1の透過率T1と第2の透過率T2との差は所定の第2の閾値よりも小さい。実施例において、本発明の仕様で製造された導電薄膜1としては、第2の閾値が同様に0.5よりも小さく、即ち、第1の透過率T1と第2の透過率T2との差が極めて小さい。同様に、光が直線的に進行するため、光が基板10から入射された場合、ユーザが透明導電層18の外部から観察すると、製造工程において残った残跡は、目視で観察されない。
【0020】
一つの例として、導電薄膜1が接着剤層20を介して発光可能な表示装置の表面、例えばLCD、CRT及びタッチパネル等のディスプレイ又はその他の表示機器、若しくは上述した表示機器を有した電子製品に接着されることで、ユーザは、導電薄膜1を介して表示機器の表示画面を見た場合、製造工程に残った残跡によって干渉されることがない。
【0021】
上述のように、本発明の好ましい実施例に係る導電薄膜によれば、特定の範囲内の屈折率及び厚さを有した反射率調整構造及び透明導電層により、エッチングされた導電薄膜及びエッチングされていない導電薄膜はほぼ同様の反射率及び透過率を有するようになる。特に、光が透明導電層又は基板のいずれから導電薄膜に入射されても、本発明の仕様で製造された導電薄膜は、製造工程に残った残跡が目視で観察されない効果を図ることができる。これにより、本発明に係る導電薄膜は、エッチング領域と非エッチング領域との間の色差を消去することができることで、製造工程に残った残跡が目視で観察されなくなり、光学上の表示効果を向上することができる。
【0022】
上述したものは、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の実施の範囲を限定するためのものではなく、本発明の明細書及び図面内容に基づいてなされた均等な変更および付加は、いずれも本発明の特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0023】
1 導電薄膜
10 基板
12 ハードコーティング層
14 第1の屈折率層
16 第2の屈折率層
18 透明導電層
20 接着剤層
R1、R2 反射率
T1、T2 透過率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられ、組成材料がシリコンを含むハードコーティング層と、
前記ハードコーティング層上に設けられた第1の屈折率層と、
前記第1の屈折率層上に設けられた第2の屈折率層と、
前記第2の屈折率層上に設けられ、前記第2の屈折率層の一部を被覆するための透明導電層と、
を備え、
前記透明導電層は、光が所定の入射角で入射された場合、所定の第1の反射率で前記光を反射し、
前記第2の屈折率層は、前記光が前記入射角で入射された場合、所定の第2の反射率で前記光を反射し、
前記第1の反射率と前記第2の反射率との差は所定の第1の閾値よりも小さいことを特徴とする導電薄膜。
【請求項2】
前記ハードコーティング層の組成材料におけるシリコンの重量比は、5%〜25%であることを特徴とする請求項1に記載の導電薄膜。
【請求項3】
前記ハードコーティング層の厚さは、1μm〜3μmであることを特徴とする請求項2に記載の導電薄膜。
【請求項4】
前記第1の屈折率層は、厚さが100Å〜300Åであり、屈折率が1.6〜2.0であることを特徴とする請求項2に記載の導電薄膜。
【請求項5】
前記第2の屈折率層は、厚さが500Å〜700Åであり、屈折率が1.42〜1.46であることを特徴とする請求項2に記載の導電薄膜。
【請求項6】
前記第1の閾値は0.5であることを特徴とする請求項2に記載の導電薄膜。
【請求項7】
前記透明導電層は前記光が前記入射角で入射された場合、前記透明導電層における前記光は第1の透過率を有し、
前記第2の屈折率層は前記光が前記入射角で入射された場合、前記第2の屈折率層における前記光は第2の透過率を有し、
前記第1の透過率と前記第2の透過率との差は所定の第2の閾値よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の導電薄膜。
【請求項8】
前記第2の閾値は0.5であることを特徴とする請求項7に記載の導電薄膜。
【請求項9】
前記基板は、ガラス及びPETからなる群から選ばれた材料からなり、屈折率が1.52であることを特徴とする請求項2に記載の導電薄膜。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−25898(P2013−25898A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157102(P2011−157102)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(507103606)智盛全球股フン有限公司 (16)
【Fターム(参考)】