小便器洗浄装置及び小便器洗浄システム並びに給水装置
【課題】マイクロ波ドップラセンサを用いた小便器洗浄装置が複数隣接して設置された場合に、小便器洗浄装置同士の影響を低減すること。
【解決手段】ドップラ信号に基づいて人体検出又は尿流検出を行い、ボール部内に洗浄水を供給する小便器洗浄装置において、ドップラ信号に基づいて人体検出又は尿流検出を判断するために必要な期間を複数に分割しそれぞれの期間を第1期間とし、この第1期間内に第1期間の始まり時点から所定時間遅延させる第2期間を設け、この第2期間経過後にマイクロ波ドップラセンサを所定サンプリング周期でn回(nは2以上の整数)間欠動作させ、しかも、第2期間を第1期間毎にランダムに変更するようにした。
【解決手段】ドップラ信号に基づいて人体検出又は尿流検出を行い、ボール部内に洗浄水を供給する小便器洗浄装置において、ドップラ信号に基づいて人体検出又は尿流検出を判断するために必要な期間を複数に分割しそれぞれの期間を第1期間とし、この第1期間内に第1期間の始まり時点から所定時間遅延させる第2期間を設け、この第2期間経過後にマイクロ波ドップラセンサを所定サンプリング周期でn回(nは2以上の整数)間欠動作させ、しかも、第2期間を第1期間毎にランダムに変更するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小便器洗浄装置及び小便器洗浄システム並びに給水装置に関し、さらに詳細には、マイクロ波ドップラセンサから出力されるドップラ信号に基づいて人体や尿流などの対象物検出を行い、洗浄水を供給する小便器洗浄装置及び小便器洗浄システム並びに給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マイクロ波ドップラセンサを用いて人体や尿流を検出し、小便器のボール部内を洗浄する小便器洗浄装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の小便器洗浄装置は、赤外線によって人体検出などを行う小便器洗浄装置に比べ、センサを小便器内に配置することができる点で有効である。すなわち、マイクロ波が陶器を透過することができるという特性を利用して、マイクロ波ドップラセンサを小便器の内側に隠すことができるため、小便器洗浄装置の美観を向上させることができるのである。
【0004】
また、マイクロ波ドップラセンサはドップラ効果を利用していることから、尿流の速度を検出することができる点で有効である。すなわち、マイクロ波ドップラセンサにより尿流を検出した後にのみ小便器のボール部内を洗浄するようにすることによって、利用者が用を足していないときに小便器の洗浄を行ってしまうことを防止することができる。
【特許文献1】実開平2−69760号公報
【特許文献2】特開2005−265615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような小便器洗浄装置は、家庭用トイレブースなどを除き、同一トイレブース内に複数設置されることが多い。たとえば、空港、駅、ホテル等のトイレブースなどである。しかし、上記のような小便器洗浄装置が同一トイレブース内に複数設置されると、隣接した小便器洗浄装置のマイクロ波センサ同士が影響しあい、人体や尿流の正常な検出ができないことがある。
【0006】
そこで、従来、マイクロ波ドップラセンサ同士が影響して誤動作することを抑制するために、マイクロ波ドップラセンサの周波数が互いに異なる小便器洗浄装置を隣接する個数分準備し、トイレブースにおいて周波数が重ならないようしていた。
【0007】
しかし、このようにマイクロ波ドップラセンサの周波数が異なる小便器洗浄装置が何種類も必要になると、小便器洗浄装置の商品品番が増えて生産コストのアップにつながり、またトイレブースへの設置作業においても負担となる。
【0008】
特許文献2には、マイクロ波ドップラセンサの動作をランダム周期で間欠的に行うことによって、マイクロ波ドップラセンサ同士の影響を無視できる程度にまで抑制する技術が開示されており、この技術を小便器洗浄装置に適用することも考えられる。しかし、このようにランダム周期でサンプリングしたドップラ信号をデジタル処理するためには、基準周期に合わせた信号値に変換する処理が必要となり、装置の制御演算能力を大幅にアップしなければならなかった。
【0009】
そこで、本発明は、マイクロ波ドップラセンサを用いた小便器洗浄装置などの装置において、これらが複数隣接して設置されても装置同士の影響を低減することができる小便器洗浄装置及び小便器洗浄装置並びに給水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、請求項1,4に記載の発明は、小便器と、前記小便器のボール部内へ洗浄水を供給する給水バルブと、前記ボール部に向けて電波を送信し、その反射波を受信してドップラ信号を生成するマイクロ波ドップラセンサと、前記ドップラ信号に基づいて人体検出又は尿流検出を行い、前記人体検出又は前記尿流検出に応じて前記給水バルブを制御し、前記ボール部内に洗浄水を供給する制御部と、を有する小便器洗浄装置において、前記制御部は、前記ドップラ信号に基づいて前記人体検出又は前記尿流検出を判断するために必要な期間を複数に分割しそれぞれの期間を第1期間とし、この第1期間内に第1期間の始まり時点から所定時間遅延させる第2期間を設け、前記第1期間の始まり時点から前記第2期間経過後に前記マイクロ波ドップラセンサを所定サンプリング周期でn回(nは2以上の整数)間欠動作させるセンサ制御手段と、前記マイクロ波ドップラセンサから出力されるドップラ信号に応じて前記人体検出又は前記尿流検出を行う対象物検出手段とを備え、前記センサ制御手段は、前記第1期間ごとに、前記第2期間を設定することを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記対象物検出手段は、前記第1期間で生成されるドップラ信号が所定期間で連続して人体又は尿流を示すデータであると判定すると、前記人体検出又は前記尿流検出を行うことを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記センサ制御手段は、前記第2期間を前記第1期間毎にランダムに設定することを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、所定方向に電波を送信し、その反射波を受信してドップラ信号を生成するマイクロ波マイクロ波ドップラセンサと、前記ドップラ信号に基づいて対象物の検出を行い、前記対象物の検出に応じて給水バルブを制御し、給水を行う制御部とを有する給水装置において、前記制御部は、前記ドップラ信号に基づいて前記対象物の検出を判断するために必要な期間を複数に分割しそれぞれの期間を第1期間とし、この第1期間内に第1期間の始まり時点から所定時間遅延させる第2期間を設け、前記第1期間の始まり時点から前記第2期間経過後に前記マイクロ波ドップラセンサを所定サンプリング周期でn回(nは2以上の整数)間欠動作させるセンサ制御手段と、前記マイクロ波ドップラセンサから出力されるドップラ信号に応じて前記対象物の検出を行う対象物検出手段とを備え、前記センサ制御手段は、前記第1期間ごとに、前記第2期間を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1,4に記載の発明によれば、前記ドップラ信号に基づいて前記人体検出又は前記尿流検出を判断するために必要な期間を複数に分割しそれぞれの期間を第1期間とし、この第1期間内に第1期間の始まり時点から所定時間遅延させる第2期間を設け、前記第1期間の始まり時点から前記第2期間経過後に前記マイクロ波ドップラセンサを所定サンプリング周期でn回(nは2以上の整数)間欠動作させ、この第2期間を第1期間毎に設定するので、隣接するセンサ同士の動作が連続して一致する確率を下げることができる。その結果、マイクロ波ドップラセンサを用いた小便器洗浄装置において、複数の小便器洗浄装置が隣接して設置された場合であっても互いに影響を低減して動作させることが可能となるので、小便器洗浄装置の商品品番を増やす必要がない。しかも、ランダムな間欠周期でのサンプリングではなく、一定周期でのサンプリングを行っているため、ドップラ信号の処理が複雑にならずに済み、制御演算能力への負担が少ない。
【0015】
また、請求項2に記載の発明によれば、対象物検出手段は、第1期間で生成されるドップラ信号が所定期間で連続して人体又は尿流を示すデータであると判定すると、人体検出又は尿流検出を行うので、誤検出や検出漏れを低減することができ、隣接する小便器洗浄装置同士の影響をさらに低減することが可能となる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明によれば、第2期間を第1期間毎にランダムに設定するので、隣接する小便器洗浄装置同士の影響が時間的に連続する確率を低減することができ、しかも第2期間の設定処理が複雑にならずに済む。
【0017】
また、請求項5に記載の発明によれば、前記ドップラ信号に基づいて前記対象物の検出を判断するために必要な期間を複数に分割しそれぞれの期間を第1期間とし、この第1期間内に第1期間の始まり時点から所定時間遅延させる第2期間を設け、前記第1期間の始まり時点から前記第2期間経過後に前記マイクロ波ドップラセンサを所定サンプリング周期でn回(nは2以上の整数)間欠動作させ、この第2期間を第1期間毎に設定するので、隣接するセンサ同士の動作が連続して一致する確率を下げることができる。その結果、マイクロ波ドップラセンサを用いた給水装置において、複数の給水装置が隣接して設置された場合であっても互いに影響を低減して動作させることが可能となるので、給水装置の商品品番を増やす必要がない。しかも、ランダムな間欠周期でのサンプリングではなく、一定周期でのサンプリングを行っているため、ドップラ信号の処理が複雑にならずに済み、制御演算能力への負担が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態においては、マイクロ波ドップラセンサを用いた給水装置のうち、図1に示すように、トイレブース内にマイクロ波ドップラセンサを用いて人体検出や尿流検出を行う小便器洗浄装置Aを複数隣接させて配置した小便器洗浄装置システムSに関して説明する。図2は本発明の実施形態における小便器洗浄装置Aの全体構成図、図4は小便器洗浄装置Aの制御部8の概略構成図である。
【0019】
図2に示すように、本実施形態における小便器洗浄装置Aは、小便器1と、ボール部2と、給水路3の中途部に設けられ、小便器1のボール部2内へ洗浄水を供給する給水バルブ4と、ボール部2の底部に配置され、小便器1のボール部内の汚水を排水する排水路5と、この排水路5に連通するトラップ管路6と、小便器1のボール部2に向けて電波を送信し、その反射波を受信してドップラ信号を生成するマイクロ波ドップラセンサ7と、このマイクロ波ドップラセンサ7から出力されるドップラ信号に基づいて人体検出や尿流検出を行い、この人体検出や尿流検出の結果に応じて給水バルブ4を制御し、ボール部2内に洗浄水を供給する制御部8とを有している。なお、給水バルブ4は、電磁弁などから構成される。
【0020】
マイクロ波ドップラセンサ7は、小便器1の上部背面側に配置され、ボール部2を含む斜め下前方に向けて電波を放射して送信し、この電波の反射波を受信するものであり、小便器1のボール部2に尿が流れたこと(尿流)のほか、小便器1に人体が近づいてきたこと(人体近接)や小便器から人体が遠ざかったこと(人体離反)を検出するために用いられるものであり、図4に示すように構成されている。
【0021】
すなわち、マイクロ波ドップラセンサ7は、小便器1の上部背面側から正面側のボール部2に向けて電波を送信するために10.525GHzの電気信号である送信信号S1を生成する発振回路10と、発振回路10から出力される送信信号S1を10.525GHzのマイクロ波として送信する送信手段11と、送信手段11から送信されたマイクロ波が検出対象物によって反射され、その反射波を受信して電気信号に変換した受信信号S2を出力する受信手段12と、送信信号S1の周波数と受信信号S2の周波数との差分信号であるドップラ信号S3を出力する差分検出手段13から構成される。また、発振回路10と送信手段11との間には、スイッチSW1が設けられており、このスイッチSW1が制御部8によってオンされることによって送信手段11へ送信信号S1が供給され、制御部8がオフされることによって送信手段11への送信信号S1の供給が停止する。
【0022】
このマイクロ波ドップラセンサ7は、ドップラ効果を利用して以下の式(1)に基づいて検出対象物の動きを検出するために用いられるものである。
【0023】
基本式:ΔF=FS―Fb=2×FS×ν/c ・・・(1)
ΔF:ドップラ 周波数(ドップラ信号S3の周波数)
FS:送信周波数(送信信号S1の周波数)
Fb:反射周波数(受信信号S2の周波数)
ν:検出対象物の移動速度
c:光速(300×106 m/s)
【0024】
すなわち、送信手段11から送信された周波数FSのマイクロ波は、速度νで移動している検出対象物に反射する。この反射波は、相対運動によるドップラ周波数シフトを受けているためその周波数はFbとなり、受信手段12によって受信される。そして、差分検出手段13によって、送信波と反射波の周波数差ΔFであるドップラ信号S3が検出信号として取り出され、このドップラ信号S3に基づいて、人体検出(人体接近検出や人体離反検出)及び尿流検出が行われる。
【0025】
マイクロ波ドップラセンサ7から出力されるドップラ信号S3は、A/D変換手段であるA/Dコンバータ22によってデジタルドップラ信号S4へ変換される。その後、このデジタルドップラ信号S4は、デジタルフィルタ回路23によって、人体検出及び尿流検出に必要な帯域以外の周波数成分が除去され、対象物判定手段24に入力される。
【0026】
対象物判定手段24は、入力されたデジタルドップラ信号S4に基づいて、人体検出や尿流検出の判定を行う。対象物判定手段24で人体検出や尿流検出が判定されたとき、給水バルブ制御部25は所定の条件に従い給水バルブ4を制御して、ボール部2内に洗浄水を供給する。
【0027】
ここで、本実施形態においては、人体として検出するためのドップラ信号を50(Hz)以下とし、尿流として検出するためのドップラ信号を100〜180(Hz)としている。なお、50(Hz)以下のドップラ信号は、検出対象物の速度νが約0.7(m/s)以下の速度であるときにマイクロ波ドップラセンサ7から出力され、100〜180(Hz)のドップラ信号は、検出対象物の速度νが約1.4〜2.6(m/s)の速度のときにマイクロ波ドップラセンサ7から出力されるものである。
【0028】
マイクロ波ドップラセンサ7から50(Hz)以下の所定閾値以上のドップラ信号S3が所定期間連続して出力されると、対象物判定手段24は人体接近検出を行う。このように人体接近検出が行われると給水バルブ制御部25は、給水バルブ4を制御して、ボール部2内に所定量の洗浄水を供給する。その後、マイクロ波ドップラセンサ7から100〜180(Hz)の所定閾値以上のドップラ信号S3が所定期間連続して出力されると、対象物判定手段24は尿流検出を行う。その後更に、マイクロ波ドップラセンサ7からら50(Hz)以下のドップラ信号S3が所定期間連続して出力されると、対象物判定手段24は人体離反検出を行う。このように尿流検出後、人体離反検出が行われると給水バルブ制御部25は、給水バルブ4を制御して、ボール部2内に所定量の洗浄水を供給して、小便器1の洗浄を行う。
【0029】
ところで、小便器洗浄装置Aを複数隣接した小便器洗浄装置システムSにおいては、図3に示すように、隣接するマイクロ波ドップラセンサ7同士が互いに影響しあい、人体や尿流の誤検出を発生する恐れがある。
【0030】
そこで、図4,図5に示すように、本実施形態における制御部8に、マイクロ波ドップラセンサ7を等間隔サンプリング周期Taで間欠動作させるセンサ制御手段20を設け、マイクロ波ドップラセンサ7をサンプリング周期Taで間欠動作させるようにして、隣接する小便器洗浄装置Aのマイクロ波ドップラセンサ7同士が同時に動作する可能性を低減している。すなわち、ナイキストのサンプリング定理を用いて、マイクロ波ドップラセンサ7を間欠駆動させることによって、マイクロ波ドップラセンサ7の動作時間を可及的に低減させるのである。本実施形態においては、対象物検出のために180Hzまでのドップラ信号を得ることができればよいため、サンプリング周波数は、360Hzよりも高い周波数であればよい。そこで、本実施形態においては、図5に示すように、等間隔サンプリング周期Taを2ms(サンプリング周波数500Hz)とする。また、1回のサンプリングのためにマイクロ波ドップラセンサ7を動作させるための期間T2(以下、「駆動期間T2」とする。)を10μSとする。
【0031】
図6(a)には、このようにマイクロ波ドップラセンサ7を等間隔サンプリング周期Taで間欠動作させたときに、サンプリング周期Taごとにマイクロ波ドップラセンサ7から出力されるドップラ信号を黒丸で示している。また、図6(b)は、マイクロ波ドップラセンサ7をランダムな周期、すなわち不等間隔サンプリング周期でサンプリングしたときに、サンプリング周期ごとにマイクロ波ドップラセンサから出力されるドップラ信号を黒丸で示している。このように不等間隔でサンプリングを行うと、基準周期に合わせた信号値に変換する処理が必要となるが、図6(a)に示すように、等間隔でサンプリングを行うことにより、基準周期に合わせた信号値に変換する処理が不要となる。
【0032】
以上のようなサンプリング周期Taでの間欠動作に加え、さらにマイクロ波ドップラセンサ7同士が同時に動作する可能性を低減するために、所定期間T1(以下、「第1期間T1」とする。)ごとに、サンプリング開始タイミングをずらすようにしている。この所定時間T1は、人体検出や尿流検出の判断を行うために必要な期間を複数に分割した期間である。このように所定期間T1ごとにサンプリング開始タイミングをずらすのは、以下の理由によるものである。
【0033】
すなわち、マイクロ波ドップラセンサ7を用いた複数の小便器洗浄装置Aがサンプリング周期Taでの間欠動作を継続して行う場合、その間欠動作のタイミングがマイクロ波ドップラセンサ7同士でたまたま一致してしまうことがある。このように間欠動作タイミングが一致している状態では、マイクロ波ドップラセンサ7同士が長期間継続して影響しあい、対象物の誤検出や検出漏れを起こしてしまう恐れがある。
【0034】
そこで、間欠動作のタイミングがマイクロ波ドップラセンサ7同士で一致したとしても、第1期間T1ごとにサンプリング開始タイミングをずらすことで、その一致状態を第1期間T1以上継続させないようにするのである。
【0035】
以下、図4及び図7を用いて、マイクロ波ドップラセンサ7をサンプリング周期Taで間欠動作させると共に、第1期間T1ごとにサンプリング開始タイミングをずらす仕組みを具体的に説明する。
【0036】
図4に示すように、制御部8は、センサ制御手段20にコード情報を第1期間T1ごとに出力するコード出力手段21を設けている。センサ制御手段20は、コード出力手段21から出力されるコード情報に応じたタイミングでマイクロ波ドップラセンサ7におけるサンプリング周期Taでの間欠動作を開始して、この間欠動作をn回(nは2以上の整数)行わせ、これをコード出力手段21からコード情報が出力される毎に繰り返し行う。ここで、コード情報に応じたタイミングとは、第1期間T1内に設けられた第1期間T1の始まり時点から所定時間遅延させる期間tb(以下、「第2期間tb」とする。)をコード情報によって規定したタイミングであり、これにより第1期間T1の開始から間欠動作を開始するまでのタイミングがコード情報に応じて変わるのである。すなわち、センサ制御手段20は、第1期間T1毎にこの第1期間T1の始まり時点、すなわち開始タイミングtaを生成し、コード出力手段21から出力されるコード情報に基づいて、開始タイミングtaから第2期間tb経過後にマイクロ波ドップラセンサ7を所定サンプリング周期でn回(nは2以上の整数)間欠動作させ、その後この第2期間tbの設定を変えながらこれを繰り返すのである。言い換えれば、センサ制御手段20は、第1期間T1内における所定サンプリング周期Taでのn回のマイクロ波ドップラセンサ7の間欠動作を1つの単位ブロック(以下、「間欠動作ブロック」と呼ぶ。)とし、この間欠動作ブロックにおける1回目の間欠動作のタイミングを変えながら間欠動作ブロックを繰り返すのである。
【0037】
なお、n回の間欠動作はデジタルフィルタ処理に必要な回数に設定され、回数を最小限に抑えることで、第1期間T1内の演算処理を間引くことができる。
【0038】
図7は、以上のように構成された制御部8によって制御されるマイクロ波ドップラセンサ7の間欠動作の例を示している。この例では、まず第1間欠動作ブロック(ブロック1)において、コード出力手段21が「コード1」のコード情報を出力する。センサ制御手段20は、このコード情報に基づいて第2期間tbを決定する。その後、センサ制御手段20は、第1期間T1の開始タイミングta(1)から第2期間tb(1)だけ遅延させてマイクロ波ドップラセンサ7によるn回の間欠動作を開始する。また、次の第2間欠動作ブロック(ブロック2)において、コード出力手段21が「コード5」のコード情報を出力する。センサ制御手段20は、このコード情報に基づいて第2期間tbを決定する。センサ制御手段20は、第1期間T1の開始タイミングta(2)から第2期間tb(5)だけ遅延させてマイクロ波ドップラセンサ7によるn回の間欠動作を開始する。
【0039】
上記コード情報は、コード出力手段21において、疑似乱数アルゴリズムあるいは乱数生成回路によってランダムな値を算出し、このようにランダムに算出した値をコード情報とする。ただし、このコード情報は1〜mまでの整数とする。そして、センサ制御手段20はこのコード情報に対応した第2期間情報を有する。すなわち、センサ制御手段20は、コード情報に応じた第2期間tb(1)〜tb(m)を格納しており、たとえば、コード情報が5であるときには、第2期間tb(5)を選択する。なお、ここでは、t(n)=n×t(1)としている。
【0040】
また、コード情報をランダムな値とせず、コード情報を所定の配列で並べたテーブル(図示せず)を記憶部(図示せず)に格納し、このテーブルをセンサ制御手段20によって用いることにより、マイクロ波ドップラセンサ7の間欠動作を行うようにしてもよい。
【0041】
また、コード情報をコード1から順に切り替えるようにしてもよい。このようにしたときのコード出力手段21の動作を図8を用いて説明する。コード出力手段21は、コード情報を0から+1だけインクリメント(STEP1)し、このように+1だけインクリメントしたコード情報をセンサ制御手段20へ出力する(STEP2)。その後、このSTEP1,S2の処理をコード情報が100になるまで繰り返し(STEP3)、コード情報が100になるとコード情報を0にリセット(STEP4)する。コード出力手段21は、以上の処理を第1期間T1ごとに繰り返す。
【0042】
また、センサ制御手段20とコード出力手段21とを分けて説明したがこれに限られるものではく、たとえば、コード出力手段21を設けずに、センサ制御手段20において疑似乱数アルゴリズムあるいは乱数生成回路によってランダムな値を算出し、これをコード情報として動作させるようにしてもよい。
【0043】
図9は、トイレブース内に小便器洗浄装置Aが隣接して4台設置されたときの各マイクロ波ドップラセンサ7の動作状態を示しており、この図では、便宜的にこれらのマイクロ波ドップラセンサ7をそれぞれセンサ1〜センサ4として記載している。
【0044】
この例では、まず第1間欠動作ブロック(ブロック1)においては、第1期間T1から動作開始までの第2期間tbがそれぞれtb(1),tb(3),tb(9),t(3)となっており、センサ2とセンサ4とで間欠動作タイミングが一致している。したがって、センサ2及びセンサ4同士で影響しあう。しかし、その後の第2間欠動作ブロック(ブロック2)では、第1期間T1の開始タイミングから動作開始までの第2期間tbがそれぞれtb(5),tb(1),tb(2),t(8)となり、したがって、センサ2及びセンサ4同士で影響しあう状況はなくなる。
【0045】
このように、第1期間T1ごとに間欠動作の開始タイミングをずらすことで、仮にマイクロ波ドップラセンサ7同士の間欠動作タイミングが一致したとしても、その一致状態が第1期間T1以上継続しないため、マイクロ波ドップラセンサ7同士の影響を可及的に回避できるのである。
【0046】
そして、対象物判定手段24による対象物の判定を、複数の間欠動作ブロックによって行うことによって、マイクロ波ドップラセンサ7同士の影響を無視できる程度まで低減するのである。
【0047】
本実施形態においては、対象物判定手段24は、3つの連続する間欠動作ブロックにおいて、ドップラ信号が所定の閾値以上の振幅レベルとなったときに、対象物の検出を行うようにしている。また、人体検出を判定するドップラ信号は、デジタルフィルタ回路23によって50Hz以下の周波数帯域以外を減衰させたドップラ信号であり、尿流検出を判定するドップラ信号は、デジタルフィルタ回路23によって100〜180Hzの周波数帯域以外を減衰させたドップラ信号である。
【0048】
図10は、対象物判定手段24による対象物の判定の例を示す図である。図10(a)に示すように、1つの間欠動作ブロックのみ振幅レベルが高くなるドップラ信号に対しては、対象物判定手段24による対象物検出が行われない。一方、図10(b)に示すように、3つ以上の連続する間欠動作ブロックにかけて振幅レベルが高くなるドップラ信号に対しては、対象物判定手段24によって対象物検出が行われる。このように、人体検出や尿流検出などの対象物検出の判断を行うために必要な期間は、複数の連続する間欠動作ブロックの期間、すなわち第1期間T1の整数倍の時間となる。したがって、第1期間T1は、人対象物検出の判断を行うために必要な期間を複数に分割した期間と言い換えることもできる。
【0049】
ここで、対象物判定手段24での対象物の判定処理を、図11のフローチャートを用いて具体的に説明する。
【0050】
まず、マイクロ波ドップラセンサ7の間欠動作タイミングが到来し、センサ制御手段20が駆動期間T2だけマイクロ波ドップラセンサ7を動作させる。この動作によってマイクロ波ドップラセンサ7から出力されるドップラ信号が対象物判定手段24によって受信される(STEP10)。
【0051】
対象物判定手段24は、受信したドップラ信号が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する(STEP11)。そして、受信したドップラ信号が所定の閾値以上であると判定すると(
(STEP11:Yes)、感知カウンタNを+1だけインクリメントする(STEP12)。このインクリメントによって感知カウンタNが3以上となったとき、対象物判定手段24は対象物検出、すなわち対象物があると判定する(STEP14)。そして、感知カウンタNを0にリセットして(STEP16)、処理を終了する。一方で、感知カウンタNが3以上ではないときには(STEP13:No)、処理を終了する。
【0052】
また、STEP11において、受信したドップラ信号が所定の閾値よりも小さいと判定すると(STEP11:No)、対象物判定手段24は対象物がないと判定する(STEP15)。そして、感知カウンタNを0にリセットして(STEP16)、処理を終了する。なお、感知カウンタNには、少なくとも人体検出用感知カウンタN1と尿流検出用感知カウンタN2の2つがあり、上記処理がそれぞれの感知カウンタに対して行われる。
【0053】
以上の処理をマイクロ波ドップラセンサ7が間欠動作するたびに繰り返し行う。すなわち、サンプリング周期Taごとに行う。
【0054】
このように対象物判定手段24は、所定期間連続してドップラ信号が所定の閾値以上のとき、対象物を示すデータであると判定する。すなわち、対象物判定手段24は、デジタルフィルタ回路23によって50Hz以下の周波数帯域以外を減衰させたドップラ信号が所定期間連続して所定の閾値以上のとき、人体を示すデータが所定期間連続したと判定して人体検出を行い、デジタルフィルタ回路23によって100〜180Hzの周波数帯域以外を減衰させたドップラ信号が所定期間連続して所定の閾値以上のとき、尿流を示すデータが所定期間連続したと判定して尿流検出を行うようにしている。
【0055】
ところで、上述では、センサ制御手段20は、第1期間T1ごとにコード出力手段21から出力されるコード情報に応じたタイミングでマイクロ波ドップラセンサ7の間欠動作を開始するようにしたが、図12に示すようなテーブルをセンサ制御手段20に設け、xブロックを一つのまとまりとした期間(以下、「1セグメント」とする。)とし、このセグメント間隔で、コード出力手段21からコード情報を出力するようにしてもよい。たとえば、コード出力手段21から「コード2」のコード情報が出力されると、最初の間欠発振ブロック1では第2期間tb(2)が、次のブロック2では期間t(4)が、その次のブロック3では第2期間tb(6)がそれぞれ設定されることになり、ブロックxになるまでテーブルを用いて第2期間tbを設定する。なお、図12に示す例では、第2期間tbをブロック順に階差数列で割り当てるようにしている。
【0056】
図13は、図12に示すようなテーブルを有する小便器洗浄装置Aが隣接して4台設置され他状態において、各対象物判定手段24におけるドップラ信号の閾値判定状態を示している。この図では、便宜的にこれらのマイクロ波ドップラセンサ7の動作状態をそれぞれセンサ1〜センサ4として記載している。図10における場合と同様に、1つの間欠動作ブロックのみ振幅レベルが高くなるドップラ信号に対しては、対象物判定手段24による対象物検出が行われず、3つ以上の連続する間欠動作ブロックにかけて振幅レベルが高くなるドップラ信号に対しては、対象物判定手段24によって対象物検出が行われる。
【0057】
なお、対象物判定手段24による対象物の判定は、たとえば、5つの連続する間欠動作ブロックのうち、3つの間欠動作ブロックにおいて、ドップラ信号が所定の閾値以上の振幅レベルとなったときに、対象物を検出したと判定するようにしてもよい。すなわち、所定期間内にドップラ信号が所定の閾値以上の振幅レベルとなる間欠動作ブロックが所定数あるときに対象物検出を行うようにしてもよい。
【0058】
以上のように本実施形態における小便器洗浄装置Aは、ドップラ信号に基づいて人体検出又は尿流検出を判断するために必要な期間を複数に分割しそれぞれの期間を第1期間T1とする。また、この第1期間T1内に第1期間T1の開始タイミングtaから所定時間遅延させるための第2期間T2を設ける。そして、第1期間の開始タイミングtaから第2期間T2経過後にマイクロ波ドップラセンサ7を所定サンプリング周期Taで間欠動作させる。このように、本実施形態における小便器洗浄装置Aでは、第1期間T1ごとに、マイクロ波ドップラセンサのサンプリング開始タイミングをずらすようにしているので、マイクロ波ドップラセンサ7同士の影響を可及的に小さくすることができる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態のうちいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、上記記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて、種々の変形、改良を施した他の実施形態で実施をすることができる。
【0060】
たとえば、本実施形態においては、マイクロ波ドップラセンサ7は、小便器1の上部背面側から正面側のボール部2に向けて電波を送信するようにしたが、これに限られるものではなく、マイクロ波ドップラセンサ7を小便器1の下部背面側に取り付け、起立した使用者の正面に向かって斜め上方に向けて電波を送信するようにしてもよく、また、マイクロ波ドップラセンサ7を小便器1の高さ方向の中央付近の背面側に設置し、水平方向、あるいは斜め下方へ向けて電波を送信するようにしてもよい。
【0061】
また、本実施形態においては、10.525GHzのマイクロ波を用いたマイクロ波ドップラセンサについて説明したが、これに限られず、マイクロ波を利用するものであれば、その周波数は限られない。
【0062】
また、本実施形態においては、小便器洗浄装置について説明したが、これに限られるものではなく、図14に示すような洋式便器洗浄装置50や自動水栓装置60などであってもよい。すなわち、図4に示すような構成を適用することができる限り、マイクロ波ドップラセンサを用いて自動的に給水制御を行う給水装置であれば、どのようなものであっても構わない。このように、本発明を、トイレブースで用いる小便器洗浄装置、洋式便器洗浄装置及び自動水栓装置、或いは自動水栓機能付き洗面装置などの種々の給水装置に適用することによって、トイレブース内においてどのような組み合わせで配置されても、マイクロ波ドップラセンサ同士の影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態である小便器洗浄システムを示す図である。
【図2】本発明の実施の形態である小便器洗浄装置の概略構成図である。
【図3】本発明の実施の形態である小便器洗浄システムを示す図である。
【図4】図2に示す小便器洗浄装置の制御部の概略構成図である。
【図5】所定サンプリング周期でのマイクロ波ドップラセンサの動作例を示す図である。
【図6】マイクロ波ドップラセンサが出力するドップラ信号の例を示す図である。
【図7】所定周期で間欠動作開始タイミングを変更したマイクロ波ドップラセンサの動作例を示す図である。
【図8】コード情報生成処理のフローチャートである。
【図9】複数のマイクロ波ドップラセンサの動作関係を示す図である。
【図10】対象物判定手段の動作説明図である。
【図11】対象物判定処理のフローチャートである。
【図12】コード情報テーブルの例を示す図である。
【図13】複数のマイクロ波ドップラセンサの動作関係を示す図である。
【図14】小便器洗浄装置以外の給水装置の例を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
A 小便器洗浄装置
1 小便器
2 ボール部
3 給水路
4 給水バルブ
5 排水路
6 トラップ管路
7 マイクロ波ドップラセンサ
8 制御部
10 発振回路
11 送信手段
12 受信手段
13 差分検出手段
20 センサ制御手段
21 コード出力手段
22 A/Dコンバータ
23 デジタルフィルタ
24 対象物判定手段
25 給水バルブ制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、小便器洗浄装置及び小便器洗浄システム並びに給水装置に関し、さらに詳細には、マイクロ波ドップラセンサから出力されるドップラ信号に基づいて人体や尿流などの対象物検出を行い、洗浄水を供給する小便器洗浄装置及び小便器洗浄システム並びに給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マイクロ波ドップラセンサを用いて人体や尿流を検出し、小便器のボール部内を洗浄する小便器洗浄装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の小便器洗浄装置は、赤外線によって人体検出などを行う小便器洗浄装置に比べ、センサを小便器内に配置することができる点で有効である。すなわち、マイクロ波が陶器を透過することができるという特性を利用して、マイクロ波ドップラセンサを小便器の内側に隠すことができるため、小便器洗浄装置の美観を向上させることができるのである。
【0004】
また、マイクロ波ドップラセンサはドップラ効果を利用していることから、尿流の速度を検出することができる点で有効である。すなわち、マイクロ波ドップラセンサにより尿流を検出した後にのみ小便器のボール部内を洗浄するようにすることによって、利用者が用を足していないときに小便器の洗浄を行ってしまうことを防止することができる。
【特許文献1】実開平2−69760号公報
【特許文献2】特開2005−265615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような小便器洗浄装置は、家庭用トイレブースなどを除き、同一トイレブース内に複数設置されることが多い。たとえば、空港、駅、ホテル等のトイレブースなどである。しかし、上記のような小便器洗浄装置が同一トイレブース内に複数設置されると、隣接した小便器洗浄装置のマイクロ波センサ同士が影響しあい、人体や尿流の正常な検出ができないことがある。
【0006】
そこで、従来、マイクロ波ドップラセンサ同士が影響して誤動作することを抑制するために、マイクロ波ドップラセンサの周波数が互いに異なる小便器洗浄装置を隣接する個数分準備し、トイレブースにおいて周波数が重ならないようしていた。
【0007】
しかし、このようにマイクロ波ドップラセンサの周波数が異なる小便器洗浄装置が何種類も必要になると、小便器洗浄装置の商品品番が増えて生産コストのアップにつながり、またトイレブースへの設置作業においても負担となる。
【0008】
特許文献2には、マイクロ波ドップラセンサの動作をランダム周期で間欠的に行うことによって、マイクロ波ドップラセンサ同士の影響を無視できる程度にまで抑制する技術が開示されており、この技術を小便器洗浄装置に適用することも考えられる。しかし、このようにランダム周期でサンプリングしたドップラ信号をデジタル処理するためには、基準周期に合わせた信号値に変換する処理が必要となり、装置の制御演算能力を大幅にアップしなければならなかった。
【0009】
そこで、本発明は、マイクロ波ドップラセンサを用いた小便器洗浄装置などの装置において、これらが複数隣接して設置されても装置同士の影響を低減することができる小便器洗浄装置及び小便器洗浄装置並びに給水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、請求項1,4に記載の発明は、小便器と、前記小便器のボール部内へ洗浄水を供給する給水バルブと、前記ボール部に向けて電波を送信し、その反射波を受信してドップラ信号を生成するマイクロ波ドップラセンサと、前記ドップラ信号に基づいて人体検出又は尿流検出を行い、前記人体検出又は前記尿流検出に応じて前記給水バルブを制御し、前記ボール部内に洗浄水を供給する制御部と、を有する小便器洗浄装置において、前記制御部は、前記ドップラ信号に基づいて前記人体検出又は前記尿流検出を判断するために必要な期間を複数に分割しそれぞれの期間を第1期間とし、この第1期間内に第1期間の始まり時点から所定時間遅延させる第2期間を設け、前記第1期間の始まり時点から前記第2期間経過後に前記マイクロ波ドップラセンサを所定サンプリング周期でn回(nは2以上の整数)間欠動作させるセンサ制御手段と、前記マイクロ波ドップラセンサから出力されるドップラ信号に応じて前記人体検出又は前記尿流検出を行う対象物検出手段とを備え、前記センサ制御手段は、前記第1期間ごとに、前記第2期間を設定することを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記対象物検出手段は、前記第1期間で生成されるドップラ信号が所定期間で連続して人体又は尿流を示すデータであると判定すると、前記人体検出又は前記尿流検出を行うことを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記センサ制御手段は、前記第2期間を前記第1期間毎にランダムに設定することを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、所定方向に電波を送信し、その反射波を受信してドップラ信号を生成するマイクロ波マイクロ波ドップラセンサと、前記ドップラ信号に基づいて対象物の検出を行い、前記対象物の検出に応じて給水バルブを制御し、給水を行う制御部とを有する給水装置において、前記制御部は、前記ドップラ信号に基づいて前記対象物の検出を判断するために必要な期間を複数に分割しそれぞれの期間を第1期間とし、この第1期間内に第1期間の始まり時点から所定時間遅延させる第2期間を設け、前記第1期間の始まり時点から前記第2期間経過後に前記マイクロ波ドップラセンサを所定サンプリング周期でn回(nは2以上の整数)間欠動作させるセンサ制御手段と、前記マイクロ波ドップラセンサから出力されるドップラ信号に応じて前記対象物の検出を行う対象物検出手段とを備え、前記センサ制御手段は、前記第1期間ごとに、前記第2期間を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1,4に記載の発明によれば、前記ドップラ信号に基づいて前記人体検出又は前記尿流検出を判断するために必要な期間を複数に分割しそれぞれの期間を第1期間とし、この第1期間内に第1期間の始まり時点から所定時間遅延させる第2期間を設け、前記第1期間の始まり時点から前記第2期間経過後に前記マイクロ波ドップラセンサを所定サンプリング周期でn回(nは2以上の整数)間欠動作させ、この第2期間を第1期間毎に設定するので、隣接するセンサ同士の動作が連続して一致する確率を下げることができる。その結果、マイクロ波ドップラセンサを用いた小便器洗浄装置において、複数の小便器洗浄装置が隣接して設置された場合であっても互いに影響を低減して動作させることが可能となるので、小便器洗浄装置の商品品番を増やす必要がない。しかも、ランダムな間欠周期でのサンプリングではなく、一定周期でのサンプリングを行っているため、ドップラ信号の処理が複雑にならずに済み、制御演算能力への負担が少ない。
【0015】
また、請求項2に記載の発明によれば、対象物検出手段は、第1期間で生成されるドップラ信号が所定期間で連続して人体又は尿流を示すデータであると判定すると、人体検出又は尿流検出を行うので、誤検出や検出漏れを低減することができ、隣接する小便器洗浄装置同士の影響をさらに低減することが可能となる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明によれば、第2期間を第1期間毎にランダムに設定するので、隣接する小便器洗浄装置同士の影響が時間的に連続する確率を低減することができ、しかも第2期間の設定処理が複雑にならずに済む。
【0017】
また、請求項5に記載の発明によれば、前記ドップラ信号に基づいて前記対象物の検出を判断するために必要な期間を複数に分割しそれぞれの期間を第1期間とし、この第1期間内に第1期間の始まり時点から所定時間遅延させる第2期間を設け、前記第1期間の始まり時点から前記第2期間経過後に前記マイクロ波ドップラセンサを所定サンプリング周期でn回(nは2以上の整数)間欠動作させ、この第2期間を第1期間毎に設定するので、隣接するセンサ同士の動作が連続して一致する確率を下げることができる。その結果、マイクロ波ドップラセンサを用いた給水装置において、複数の給水装置が隣接して設置された場合であっても互いに影響を低減して動作させることが可能となるので、給水装置の商品品番を増やす必要がない。しかも、ランダムな間欠周期でのサンプリングではなく、一定周期でのサンプリングを行っているため、ドップラ信号の処理が複雑にならずに済み、制御演算能力への負担が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態においては、マイクロ波ドップラセンサを用いた給水装置のうち、図1に示すように、トイレブース内にマイクロ波ドップラセンサを用いて人体検出や尿流検出を行う小便器洗浄装置Aを複数隣接させて配置した小便器洗浄装置システムSに関して説明する。図2は本発明の実施形態における小便器洗浄装置Aの全体構成図、図4は小便器洗浄装置Aの制御部8の概略構成図である。
【0019】
図2に示すように、本実施形態における小便器洗浄装置Aは、小便器1と、ボール部2と、給水路3の中途部に設けられ、小便器1のボール部2内へ洗浄水を供給する給水バルブ4と、ボール部2の底部に配置され、小便器1のボール部内の汚水を排水する排水路5と、この排水路5に連通するトラップ管路6と、小便器1のボール部2に向けて電波を送信し、その反射波を受信してドップラ信号を生成するマイクロ波ドップラセンサ7と、このマイクロ波ドップラセンサ7から出力されるドップラ信号に基づいて人体検出や尿流検出を行い、この人体検出や尿流検出の結果に応じて給水バルブ4を制御し、ボール部2内に洗浄水を供給する制御部8とを有している。なお、給水バルブ4は、電磁弁などから構成される。
【0020】
マイクロ波ドップラセンサ7は、小便器1の上部背面側に配置され、ボール部2を含む斜め下前方に向けて電波を放射して送信し、この電波の反射波を受信するものであり、小便器1のボール部2に尿が流れたこと(尿流)のほか、小便器1に人体が近づいてきたこと(人体近接)や小便器から人体が遠ざかったこと(人体離反)を検出するために用いられるものであり、図4に示すように構成されている。
【0021】
すなわち、マイクロ波ドップラセンサ7は、小便器1の上部背面側から正面側のボール部2に向けて電波を送信するために10.525GHzの電気信号である送信信号S1を生成する発振回路10と、発振回路10から出力される送信信号S1を10.525GHzのマイクロ波として送信する送信手段11と、送信手段11から送信されたマイクロ波が検出対象物によって反射され、その反射波を受信して電気信号に変換した受信信号S2を出力する受信手段12と、送信信号S1の周波数と受信信号S2の周波数との差分信号であるドップラ信号S3を出力する差分検出手段13から構成される。また、発振回路10と送信手段11との間には、スイッチSW1が設けられており、このスイッチSW1が制御部8によってオンされることによって送信手段11へ送信信号S1が供給され、制御部8がオフされることによって送信手段11への送信信号S1の供給が停止する。
【0022】
このマイクロ波ドップラセンサ7は、ドップラ効果を利用して以下の式(1)に基づいて検出対象物の動きを検出するために用いられるものである。
【0023】
基本式:ΔF=FS―Fb=2×FS×ν/c ・・・(1)
ΔF:ドップラ 周波数(ドップラ信号S3の周波数)
FS:送信周波数(送信信号S1の周波数)
Fb:反射周波数(受信信号S2の周波数)
ν:検出対象物の移動速度
c:光速(300×106 m/s)
【0024】
すなわち、送信手段11から送信された周波数FSのマイクロ波は、速度νで移動している検出対象物に反射する。この反射波は、相対運動によるドップラ周波数シフトを受けているためその周波数はFbとなり、受信手段12によって受信される。そして、差分検出手段13によって、送信波と反射波の周波数差ΔFであるドップラ信号S3が検出信号として取り出され、このドップラ信号S3に基づいて、人体検出(人体接近検出や人体離反検出)及び尿流検出が行われる。
【0025】
マイクロ波ドップラセンサ7から出力されるドップラ信号S3は、A/D変換手段であるA/Dコンバータ22によってデジタルドップラ信号S4へ変換される。その後、このデジタルドップラ信号S4は、デジタルフィルタ回路23によって、人体検出及び尿流検出に必要な帯域以外の周波数成分が除去され、対象物判定手段24に入力される。
【0026】
対象物判定手段24は、入力されたデジタルドップラ信号S4に基づいて、人体検出や尿流検出の判定を行う。対象物判定手段24で人体検出や尿流検出が判定されたとき、給水バルブ制御部25は所定の条件に従い給水バルブ4を制御して、ボール部2内に洗浄水を供給する。
【0027】
ここで、本実施形態においては、人体として検出するためのドップラ信号を50(Hz)以下とし、尿流として検出するためのドップラ信号を100〜180(Hz)としている。なお、50(Hz)以下のドップラ信号は、検出対象物の速度νが約0.7(m/s)以下の速度であるときにマイクロ波ドップラセンサ7から出力され、100〜180(Hz)のドップラ信号は、検出対象物の速度νが約1.4〜2.6(m/s)の速度のときにマイクロ波ドップラセンサ7から出力されるものである。
【0028】
マイクロ波ドップラセンサ7から50(Hz)以下の所定閾値以上のドップラ信号S3が所定期間連続して出力されると、対象物判定手段24は人体接近検出を行う。このように人体接近検出が行われると給水バルブ制御部25は、給水バルブ4を制御して、ボール部2内に所定量の洗浄水を供給する。その後、マイクロ波ドップラセンサ7から100〜180(Hz)の所定閾値以上のドップラ信号S3が所定期間連続して出力されると、対象物判定手段24は尿流検出を行う。その後更に、マイクロ波ドップラセンサ7からら50(Hz)以下のドップラ信号S3が所定期間連続して出力されると、対象物判定手段24は人体離反検出を行う。このように尿流検出後、人体離反検出が行われると給水バルブ制御部25は、給水バルブ4を制御して、ボール部2内に所定量の洗浄水を供給して、小便器1の洗浄を行う。
【0029】
ところで、小便器洗浄装置Aを複数隣接した小便器洗浄装置システムSにおいては、図3に示すように、隣接するマイクロ波ドップラセンサ7同士が互いに影響しあい、人体や尿流の誤検出を発生する恐れがある。
【0030】
そこで、図4,図5に示すように、本実施形態における制御部8に、マイクロ波ドップラセンサ7を等間隔サンプリング周期Taで間欠動作させるセンサ制御手段20を設け、マイクロ波ドップラセンサ7をサンプリング周期Taで間欠動作させるようにして、隣接する小便器洗浄装置Aのマイクロ波ドップラセンサ7同士が同時に動作する可能性を低減している。すなわち、ナイキストのサンプリング定理を用いて、マイクロ波ドップラセンサ7を間欠駆動させることによって、マイクロ波ドップラセンサ7の動作時間を可及的に低減させるのである。本実施形態においては、対象物検出のために180Hzまでのドップラ信号を得ることができればよいため、サンプリング周波数は、360Hzよりも高い周波数であればよい。そこで、本実施形態においては、図5に示すように、等間隔サンプリング周期Taを2ms(サンプリング周波数500Hz)とする。また、1回のサンプリングのためにマイクロ波ドップラセンサ7を動作させるための期間T2(以下、「駆動期間T2」とする。)を10μSとする。
【0031】
図6(a)には、このようにマイクロ波ドップラセンサ7を等間隔サンプリング周期Taで間欠動作させたときに、サンプリング周期Taごとにマイクロ波ドップラセンサ7から出力されるドップラ信号を黒丸で示している。また、図6(b)は、マイクロ波ドップラセンサ7をランダムな周期、すなわち不等間隔サンプリング周期でサンプリングしたときに、サンプリング周期ごとにマイクロ波ドップラセンサから出力されるドップラ信号を黒丸で示している。このように不等間隔でサンプリングを行うと、基準周期に合わせた信号値に変換する処理が必要となるが、図6(a)に示すように、等間隔でサンプリングを行うことにより、基準周期に合わせた信号値に変換する処理が不要となる。
【0032】
以上のようなサンプリング周期Taでの間欠動作に加え、さらにマイクロ波ドップラセンサ7同士が同時に動作する可能性を低減するために、所定期間T1(以下、「第1期間T1」とする。)ごとに、サンプリング開始タイミングをずらすようにしている。この所定時間T1は、人体検出や尿流検出の判断を行うために必要な期間を複数に分割した期間である。このように所定期間T1ごとにサンプリング開始タイミングをずらすのは、以下の理由によるものである。
【0033】
すなわち、マイクロ波ドップラセンサ7を用いた複数の小便器洗浄装置Aがサンプリング周期Taでの間欠動作を継続して行う場合、その間欠動作のタイミングがマイクロ波ドップラセンサ7同士でたまたま一致してしまうことがある。このように間欠動作タイミングが一致している状態では、マイクロ波ドップラセンサ7同士が長期間継続して影響しあい、対象物の誤検出や検出漏れを起こしてしまう恐れがある。
【0034】
そこで、間欠動作のタイミングがマイクロ波ドップラセンサ7同士で一致したとしても、第1期間T1ごとにサンプリング開始タイミングをずらすことで、その一致状態を第1期間T1以上継続させないようにするのである。
【0035】
以下、図4及び図7を用いて、マイクロ波ドップラセンサ7をサンプリング周期Taで間欠動作させると共に、第1期間T1ごとにサンプリング開始タイミングをずらす仕組みを具体的に説明する。
【0036】
図4に示すように、制御部8は、センサ制御手段20にコード情報を第1期間T1ごとに出力するコード出力手段21を設けている。センサ制御手段20は、コード出力手段21から出力されるコード情報に応じたタイミングでマイクロ波ドップラセンサ7におけるサンプリング周期Taでの間欠動作を開始して、この間欠動作をn回(nは2以上の整数)行わせ、これをコード出力手段21からコード情報が出力される毎に繰り返し行う。ここで、コード情報に応じたタイミングとは、第1期間T1内に設けられた第1期間T1の始まり時点から所定時間遅延させる期間tb(以下、「第2期間tb」とする。)をコード情報によって規定したタイミングであり、これにより第1期間T1の開始から間欠動作を開始するまでのタイミングがコード情報に応じて変わるのである。すなわち、センサ制御手段20は、第1期間T1毎にこの第1期間T1の始まり時点、すなわち開始タイミングtaを生成し、コード出力手段21から出力されるコード情報に基づいて、開始タイミングtaから第2期間tb経過後にマイクロ波ドップラセンサ7を所定サンプリング周期でn回(nは2以上の整数)間欠動作させ、その後この第2期間tbの設定を変えながらこれを繰り返すのである。言い換えれば、センサ制御手段20は、第1期間T1内における所定サンプリング周期Taでのn回のマイクロ波ドップラセンサ7の間欠動作を1つの単位ブロック(以下、「間欠動作ブロック」と呼ぶ。)とし、この間欠動作ブロックにおける1回目の間欠動作のタイミングを変えながら間欠動作ブロックを繰り返すのである。
【0037】
なお、n回の間欠動作はデジタルフィルタ処理に必要な回数に設定され、回数を最小限に抑えることで、第1期間T1内の演算処理を間引くことができる。
【0038】
図7は、以上のように構成された制御部8によって制御されるマイクロ波ドップラセンサ7の間欠動作の例を示している。この例では、まず第1間欠動作ブロック(ブロック1)において、コード出力手段21が「コード1」のコード情報を出力する。センサ制御手段20は、このコード情報に基づいて第2期間tbを決定する。その後、センサ制御手段20は、第1期間T1の開始タイミングta(1)から第2期間tb(1)だけ遅延させてマイクロ波ドップラセンサ7によるn回の間欠動作を開始する。また、次の第2間欠動作ブロック(ブロック2)において、コード出力手段21が「コード5」のコード情報を出力する。センサ制御手段20は、このコード情報に基づいて第2期間tbを決定する。センサ制御手段20は、第1期間T1の開始タイミングta(2)から第2期間tb(5)だけ遅延させてマイクロ波ドップラセンサ7によるn回の間欠動作を開始する。
【0039】
上記コード情報は、コード出力手段21において、疑似乱数アルゴリズムあるいは乱数生成回路によってランダムな値を算出し、このようにランダムに算出した値をコード情報とする。ただし、このコード情報は1〜mまでの整数とする。そして、センサ制御手段20はこのコード情報に対応した第2期間情報を有する。すなわち、センサ制御手段20は、コード情報に応じた第2期間tb(1)〜tb(m)を格納しており、たとえば、コード情報が5であるときには、第2期間tb(5)を選択する。なお、ここでは、t(n)=n×t(1)としている。
【0040】
また、コード情報をランダムな値とせず、コード情報を所定の配列で並べたテーブル(図示せず)を記憶部(図示せず)に格納し、このテーブルをセンサ制御手段20によって用いることにより、マイクロ波ドップラセンサ7の間欠動作を行うようにしてもよい。
【0041】
また、コード情報をコード1から順に切り替えるようにしてもよい。このようにしたときのコード出力手段21の動作を図8を用いて説明する。コード出力手段21は、コード情報を0から+1だけインクリメント(STEP1)し、このように+1だけインクリメントしたコード情報をセンサ制御手段20へ出力する(STEP2)。その後、このSTEP1,S2の処理をコード情報が100になるまで繰り返し(STEP3)、コード情報が100になるとコード情報を0にリセット(STEP4)する。コード出力手段21は、以上の処理を第1期間T1ごとに繰り返す。
【0042】
また、センサ制御手段20とコード出力手段21とを分けて説明したがこれに限られるものではく、たとえば、コード出力手段21を設けずに、センサ制御手段20において疑似乱数アルゴリズムあるいは乱数生成回路によってランダムな値を算出し、これをコード情報として動作させるようにしてもよい。
【0043】
図9は、トイレブース内に小便器洗浄装置Aが隣接して4台設置されたときの各マイクロ波ドップラセンサ7の動作状態を示しており、この図では、便宜的にこれらのマイクロ波ドップラセンサ7をそれぞれセンサ1〜センサ4として記載している。
【0044】
この例では、まず第1間欠動作ブロック(ブロック1)においては、第1期間T1から動作開始までの第2期間tbがそれぞれtb(1),tb(3),tb(9),t(3)となっており、センサ2とセンサ4とで間欠動作タイミングが一致している。したがって、センサ2及びセンサ4同士で影響しあう。しかし、その後の第2間欠動作ブロック(ブロック2)では、第1期間T1の開始タイミングから動作開始までの第2期間tbがそれぞれtb(5),tb(1),tb(2),t(8)となり、したがって、センサ2及びセンサ4同士で影響しあう状況はなくなる。
【0045】
このように、第1期間T1ごとに間欠動作の開始タイミングをずらすことで、仮にマイクロ波ドップラセンサ7同士の間欠動作タイミングが一致したとしても、その一致状態が第1期間T1以上継続しないため、マイクロ波ドップラセンサ7同士の影響を可及的に回避できるのである。
【0046】
そして、対象物判定手段24による対象物の判定を、複数の間欠動作ブロックによって行うことによって、マイクロ波ドップラセンサ7同士の影響を無視できる程度まで低減するのである。
【0047】
本実施形態においては、対象物判定手段24は、3つの連続する間欠動作ブロックにおいて、ドップラ信号が所定の閾値以上の振幅レベルとなったときに、対象物の検出を行うようにしている。また、人体検出を判定するドップラ信号は、デジタルフィルタ回路23によって50Hz以下の周波数帯域以外を減衰させたドップラ信号であり、尿流検出を判定するドップラ信号は、デジタルフィルタ回路23によって100〜180Hzの周波数帯域以外を減衰させたドップラ信号である。
【0048】
図10は、対象物判定手段24による対象物の判定の例を示す図である。図10(a)に示すように、1つの間欠動作ブロックのみ振幅レベルが高くなるドップラ信号に対しては、対象物判定手段24による対象物検出が行われない。一方、図10(b)に示すように、3つ以上の連続する間欠動作ブロックにかけて振幅レベルが高くなるドップラ信号に対しては、対象物判定手段24によって対象物検出が行われる。このように、人体検出や尿流検出などの対象物検出の判断を行うために必要な期間は、複数の連続する間欠動作ブロックの期間、すなわち第1期間T1の整数倍の時間となる。したがって、第1期間T1は、人対象物検出の判断を行うために必要な期間を複数に分割した期間と言い換えることもできる。
【0049】
ここで、対象物判定手段24での対象物の判定処理を、図11のフローチャートを用いて具体的に説明する。
【0050】
まず、マイクロ波ドップラセンサ7の間欠動作タイミングが到来し、センサ制御手段20が駆動期間T2だけマイクロ波ドップラセンサ7を動作させる。この動作によってマイクロ波ドップラセンサ7から出力されるドップラ信号が対象物判定手段24によって受信される(STEP10)。
【0051】
対象物判定手段24は、受信したドップラ信号が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する(STEP11)。そして、受信したドップラ信号が所定の閾値以上であると判定すると(
(STEP11:Yes)、感知カウンタNを+1だけインクリメントする(STEP12)。このインクリメントによって感知カウンタNが3以上となったとき、対象物判定手段24は対象物検出、すなわち対象物があると判定する(STEP14)。そして、感知カウンタNを0にリセットして(STEP16)、処理を終了する。一方で、感知カウンタNが3以上ではないときには(STEP13:No)、処理を終了する。
【0052】
また、STEP11において、受信したドップラ信号が所定の閾値よりも小さいと判定すると(STEP11:No)、対象物判定手段24は対象物がないと判定する(STEP15)。そして、感知カウンタNを0にリセットして(STEP16)、処理を終了する。なお、感知カウンタNには、少なくとも人体検出用感知カウンタN1と尿流検出用感知カウンタN2の2つがあり、上記処理がそれぞれの感知カウンタに対して行われる。
【0053】
以上の処理をマイクロ波ドップラセンサ7が間欠動作するたびに繰り返し行う。すなわち、サンプリング周期Taごとに行う。
【0054】
このように対象物判定手段24は、所定期間連続してドップラ信号が所定の閾値以上のとき、対象物を示すデータであると判定する。すなわち、対象物判定手段24は、デジタルフィルタ回路23によって50Hz以下の周波数帯域以外を減衰させたドップラ信号が所定期間連続して所定の閾値以上のとき、人体を示すデータが所定期間連続したと判定して人体検出を行い、デジタルフィルタ回路23によって100〜180Hzの周波数帯域以外を減衰させたドップラ信号が所定期間連続して所定の閾値以上のとき、尿流を示すデータが所定期間連続したと判定して尿流検出を行うようにしている。
【0055】
ところで、上述では、センサ制御手段20は、第1期間T1ごとにコード出力手段21から出力されるコード情報に応じたタイミングでマイクロ波ドップラセンサ7の間欠動作を開始するようにしたが、図12に示すようなテーブルをセンサ制御手段20に設け、xブロックを一つのまとまりとした期間(以下、「1セグメント」とする。)とし、このセグメント間隔で、コード出力手段21からコード情報を出力するようにしてもよい。たとえば、コード出力手段21から「コード2」のコード情報が出力されると、最初の間欠発振ブロック1では第2期間tb(2)が、次のブロック2では期間t(4)が、その次のブロック3では第2期間tb(6)がそれぞれ設定されることになり、ブロックxになるまでテーブルを用いて第2期間tbを設定する。なお、図12に示す例では、第2期間tbをブロック順に階差数列で割り当てるようにしている。
【0056】
図13は、図12に示すようなテーブルを有する小便器洗浄装置Aが隣接して4台設置され他状態において、各対象物判定手段24におけるドップラ信号の閾値判定状態を示している。この図では、便宜的にこれらのマイクロ波ドップラセンサ7の動作状態をそれぞれセンサ1〜センサ4として記載している。図10における場合と同様に、1つの間欠動作ブロックのみ振幅レベルが高くなるドップラ信号に対しては、対象物判定手段24による対象物検出が行われず、3つ以上の連続する間欠動作ブロックにかけて振幅レベルが高くなるドップラ信号に対しては、対象物判定手段24によって対象物検出が行われる。
【0057】
なお、対象物判定手段24による対象物の判定は、たとえば、5つの連続する間欠動作ブロックのうち、3つの間欠動作ブロックにおいて、ドップラ信号が所定の閾値以上の振幅レベルとなったときに、対象物を検出したと判定するようにしてもよい。すなわち、所定期間内にドップラ信号が所定の閾値以上の振幅レベルとなる間欠動作ブロックが所定数あるときに対象物検出を行うようにしてもよい。
【0058】
以上のように本実施形態における小便器洗浄装置Aは、ドップラ信号に基づいて人体検出又は尿流検出を判断するために必要な期間を複数に分割しそれぞれの期間を第1期間T1とする。また、この第1期間T1内に第1期間T1の開始タイミングtaから所定時間遅延させるための第2期間T2を設ける。そして、第1期間の開始タイミングtaから第2期間T2経過後にマイクロ波ドップラセンサ7を所定サンプリング周期Taで間欠動作させる。このように、本実施形態における小便器洗浄装置Aでは、第1期間T1ごとに、マイクロ波ドップラセンサのサンプリング開始タイミングをずらすようにしているので、マイクロ波ドップラセンサ7同士の影響を可及的に小さくすることができる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態のうちいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、上記記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて、種々の変形、改良を施した他の実施形態で実施をすることができる。
【0060】
たとえば、本実施形態においては、マイクロ波ドップラセンサ7は、小便器1の上部背面側から正面側のボール部2に向けて電波を送信するようにしたが、これに限られるものではなく、マイクロ波ドップラセンサ7を小便器1の下部背面側に取り付け、起立した使用者の正面に向かって斜め上方に向けて電波を送信するようにしてもよく、また、マイクロ波ドップラセンサ7を小便器1の高さ方向の中央付近の背面側に設置し、水平方向、あるいは斜め下方へ向けて電波を送信するようにしてもよい。
【0061】
また、本実施形態においては、10.525GHzのマイクロ波を用いたマイクロ波ドップラセンサについて説明したが、これに限られず、マイクロ波を利用するものであれば、その周波数は限られない。
【0062】
また、本実施形態においては、小便器洗浄装置について説明したが、これに限られるものではなく、図14に示すような洋式便器洗浄装置50や自動水栓装置60などであってもよい。すなわち、図4に示すような構成を適用することができる限り、マイクロ波ドップラセンサを用いて自動的に給水制御を行う給水装置であれば、どのようなものであっても構わない。このように、本発明を、トイレブースで用いる小便器洗浄装置、洋式便器洗浄装置及び自動水栓装置、或いは自動水栓機能付き洗面装置などの種々の給水装置に適用することによって、トイレブース内においてどのような組み合わせで配置されても、マイクロ波ドップラセンサ同士の影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態である小便器洗浄システムを示す図である。
【図2】本発明の実施の形態である小便器洗浄装置の概略構成図である。
【図3】本発明の実施の形態である小便器洗浄システムを示す図である。
【図4】図2に示す小便器洗浄装置の制御部の概略構成図である。
【図5】所定サンプリング周期でのマイクロ波ドップラセンサの動作例を示す図である。
【図6】マイクロ波ドップラセンサが出力するドップラ信号の例を示す図である。
【図7】所定周期で間欠動作開始タイミングを変更したマイクロ波ドップラセンサの動作例を示す図である。
【図8】コード情報生成処理のフローチャートである。
【図9】複数のマイクロ波ドップラセンサの動作関係を示す図である。
【図10】対象物判定手段の動作説明図である。
【図11】対象物判定処理のフローチャートである。
【図12】コード情報テーブルの例を示す図である。
【図13】複数のマイクロ波ドップラセンサの動作関係を示す図である。
【図14】小便器洗浄装置以外の給水装置の例を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
A 小便器洗浄装置
1 小便器
2 ボール部
3 給水路
4 給水バルブ
5 排水路
6 トラップ管路
7 マイクロ波ドップラセンサ
8 制御部
10 発振回路
11 送信手段
12 受信手段
13 差分検出手段
20 センサ制御手段
21 コード出力手段
22 A/Dコンバータ
23 デジタルフィルタ
24 対象物判定手段
25 給水バルブ制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小便器と、前記小便器のボール部内へ洗浄水を供給する給水バルブと、前記ボール部に向けて電波を送信し、その反射波を受信してドップラ信号を生成するマイクロ波ドップラセンサと、前記ドップラ信号に基づいて人体検出又は尿流検出を行い、前記人体検出又は前記尿流検出に応じて前記給水バルブを制御し、前記ボール部内に洗浄水を供給する制御部と、を有する小便器洗浄装置において、
前記制御部は、
前記ドップラ信号に基づいて前記人体検出又は前記尿流検出を判断するために必要な期間を複数に分割しそれぞれの期間を第1期間とし、この第1期間内に第1期間の始まり時点から所定時間遅延させる第2期間を設け、前記第1期間の始まり時点から前記第2期間経過後に前記マイクロ波ドップラセンサを所定サンプリング周期でn回(nは2以上の整数)間欠動作させるセンサ制御手段と、
前記マイクロ波ドップラセンサから出されるドップラ信号に応じて前記人体検出又は前記尿流検出を行う対象物検出手段と、を備え、
前記センサ制御手段は、
前記第1期間ごとに、前記第2期間を設定することを特徴とする小便器洗浄装置。
【請求項2】
前記対象物検出手段は、
前記第1期間で生成されるドップラ信号が所定期間で連続して人体又は尿流を示すデータであると判定すると、前記人体検出又は前記尿流検出を行うことを特徴とする請求項1に記載の小便器洗浄装置。
【請求項3】
前記センサ制御手段は、
前記第2期間を前記第1期間毎にランダムに設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の小便器洗浄装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の小便器洗浄装置を複数設けてなる小便器洗浄システム。
【請求項5】
所定方向に電波を送信し、その反射波を受信してドップラ信号を生成するマイクロ波マイクロ波ドップラセンサと、前記ドップラ信号に基づいて対象物の検出を行い、前記対象物の検出に応じて給水バルブを制御し、給水を行う制御部とを有する給水装置において、
前記制御部は、
前記ドップラ信号に基づいて前記対象物の検出を判断するために必要な期間を複数に分割しそれぞれの期間を第1期間とし、この第1期間内に第1期間の始まり時点から所定時間遅延させる第2期間を設け、前記第1期間の始まり時点から前記第2期間経過後に前記マイクロ波ドップラセンサを所定サンプリング周期でn回(nは2以上の整数)間欠動作させるセンサ制御手段と、
前記マイクロ波ドップラセンサから出力されるドップラ信号に応じて前記対象物の検出を行う対象物検出手段と、を備え、
前記センサ制御手段は、
前記第1期間ごとに、前記第2期間を設定することを特徴とする給水装置。
【請求項1】
小便器と、前記小便器のボール部内へ洗浄水を供給する給水バルブと、前記ボール部に向けて電波を送信し、その反射波を受信してドップラ信号を生成するマイクロ波ドップラセンサと、前記ドップラ信号に基づいて人体検出又は尿流検出を行い、前記人体検出又は前記尿流検出に応じて前記給水バルブを制御し、前記ボール部内に洗浄水を供給する制御部と、を有する小便器洗浄装置において、
前記制御部は、
前記ドップラ信号に基づいて前記人体検出又は前記尿流検出を判断するために必要な期間を複数に分割しそれぞれの期間を第1期間とし、この第1期間内に第1期間の始まり時点から所定時間遅延させる第2期間を設け、前記第1期間の始まり時点から前記第2期間経過後に前記マイクロ波ドップラセンサを所定サンプリング周期でn回(nは2以上の整数)間欠動作させるセンサ制御手段と、
前記マイクロ波ドップラセンサから出されるドップラ信号に応じて前記人体検出又は前記尿流検出を行う対象物検出手段と、を備え、
前記センサ制御手段は、
前記第1期間ごとに、前記第2期間を設定することを特徴とする小便器洗浄装置。
【請求項2】
前記対象物検出手段は、
前記第1期間で生成されるドップラ信号が所定期間で連続して人体又は尿流を示すデータであると判定すると、前記人体検出又は前記尿流検出を行うことを特徴とする請求項1に記載の小便器洗浄装置。
【請求項3】
前記センサ制御手段は、
前記第2期間を前記第1期間毎にランダムに設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の小便器洗浄装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の小便器洗浄装置を複数設けてなる小便器洗浄システム。
【請求項5】
所定方向に電波を送信し、その反射波を受信してドップラ信号を生成するマイクロ波マイクロ波ドップラセンサと、前記ドップラ信号に基づいて対象物の検出を行い、前記対象物の検出に応じて給水バルブを制御し、給水を行う制御部とを有する給水装置において、
前記制御部は、
前記ドップラ信号に基づいて前記対象物の検出を判断するために必要な期間を複数に分割しそれぞれの期間を第1期間とし、この第1期間内に第1期間の始まり時点から所定時間遅延させる第2期間を設け、前記第1期間の始まり時点から前記第2期間経過後に前記マイクロ波ドップラセンサを所定サンプリング周期でn回(nは2以上の整数)間欠動作させるセンサ制御手段と、
前記マイクロ波ドップラセンサから出力されるドップラ信号に応じて前記対象物の検出を行う対象物検出手段と、を備え、
前記センサ制御手段は、
前記第1期間ごとに、前記第2期間を設定することを特徴とする給水装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−247280(P2007−247280A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72958(P2006−72958)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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