説明

小口径推進機における先導管の回収方法

【課題】砂礫層から岩盤層等の広範囲の土質に対して推進抵抗を少なくかつ精度良く先導管を推進させることができ、その先導管を敷設された埋設管内を通して発進立坑側へ容易に回収することができるとともに、予め敷設された埋設管内に回収された先導管もしくは新たな先導管を投入して再掘進させることができる小口径掘進機における先導管の回収方法を提供する。
【解決手段】カッタヘッド6の縮径を行うとともに、埋設管2の敷設時に連結状態にある先導管Cと外筒Aとの連結を解除した後に、土砂排出用のスクリューコンベアを用いて先導管Cの前方へ薬液を注入しつつ先導管Cに引き戻し力を付与して所定量後退させて防護壁を作り、その後外筒A内および埋設管2内を通して先導管Cを回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小口径推進機に設けられる先導管を引き戻して回収する小口径推進機における先導管の回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の小口径推進機としては、埋設管外径と略同一外径を有する胴部の前端部にカッタヘッドが回転可能に装着されてなる先導管を備えるものが用いられている。この小口径推進機により埋設管を敷設する際には、前記カッタヘッドを回転させるとともに、発進立坑内に予め設置された推進装置を先導管の後端部に押付けて伸長させることにより先導管に推進力を伝達し、先導管を地山に貫入する。次いで、推進装置を収縮させて先導管の後端部に埋設管を連結し、その埋設管の後端部に前記推進装置を押付けて伸長させることにより埋設管を介して先導管に推進力を伝達する。これを繰り返して順次埋設管を連結して埋設管の敷設作業を行う。こうして埋設管の敷設作業が終了すると、到達立坑に露呈する先導管のみをその到達立坑から回収する。なお、推進中に先導管の方向が敷設予定線からはずれた場合には、先導管の揺動操作により方向修正を行うのが一般的である。
【0003】
しかし、このような小口径推進機においては、先導管は到達立坑に到達するまでは回収することができないため、埋設管の敷設場所周辺の事情により到達立坑が構築できない場合には埋設管の敷設ができないという問題点を生じる。
【0004】
このような問題点を解決する方法として、特許文献1および特許文献2において、先導管の外径を埋設管の内径より小さくし、この先導管を埋設管内を通して発進立坑に回収するように構成された小口径推進機が提案されている。
【0005】
しかし、これら特許文献1,2に開示されている小口径推進機では、先導管の外径が埋設管の内径より小さくされているために、埋設管の内径より外側の部分は掘削されずに埋設管が推進されることとなり、埋設管の内径より外側の地山が圧密となって推進抵抗が大きくなり施工効率が低下してしまうという問題点がある。
【0006】
このような問題点に対処したものとして、特許文献3,特許文献4および特許文献5には、先導管による掘削径が埋設管の外径と略同一で、かつ前記先導管が埋設管との干渉を回避しつつその埋設管内を通して発進立坑側に回収可能に構成された小口径推進機が提案されている。
【0007】
前記特許文献3に記載の小口径推進機100においては、図6に示されるように圧裂型ビット101が保持部材102に保持されて外筒管103にヒンジ104で揺動自在に取り付けられるとともに、内筒105を前方に移動させることにより前記圧裂型ビット101の保持部材102の後端部と外筒管103との間に挿入されるくさび状スライダ106が内筒管107の先端に設けられている。前記圧裂型ビット101は、前記くさび状スライダ106が完全に挿入されて外側に開いた状態で支持され、前記内筒105が後方に移動されることにより圧裂型ビット101の支持が解かれる。この小口径推進機100は、圧裂型ビット101の支持が解かれた状態で発進立坑側に引き戻すように構成されている。また、この小口径推進機100は、内筒105全体が回転して掘削物が前面の開口部108から取り込まれるようにされている。
【0008】
前記特許文献4に記載の小口径推進機110は、図7にその正面図が示されるように、前面にカッタヘッド111が備えられる先導管112の外周に外筒113が配設され、この先導管112と外筒113とは所定値以上の剪断力が作用したときに剪断されるシャーピンによって接続されて構成される。前記カッタヘッド111の外径は外筒113の内径より小さくされており、外筒113前方の土砂はカッタヘッド111により掘削されないが、外筒113の先端内周面が先端に向けて径を拡大させるテーパ面とされており、推進力が付与されたときに地中に刺し込まれ土砂を先導管112内に導入するようにされている。また、この小口径推進機110による掘進終了後は、前記先導管112に付与される引抜力によってシャーピンが剪断されて外筒113と先導管112との連結が解除され、その先導管112が外筒113内を通って引き戻される。
【0009】
前記特許文献5に記載の小口径推進機120は、図8に示されるように先端に外周ビット121が取り付けられ、掘削面に向けて屈折可能な複数のスポーク122が半径方向に配置されているカッタヘッド123と、このカッタヘッド123を前面に回転自在に装着する先導管124と、この先導管124の外周に配置されている外筒125とからなり、前記カッタヘッド123を回転させたときの外周ビット121の軌跡が外筒125の外径と略等しくなるようにされ、前記先導管124と外筒125とは所定値以上の剪断力が作用したときに剪断されるシャーピン(図示省略)を介して接続されている。
【0010】
この小口径推進機120においては、掘進終了後先導管124に引抜力が伝達され、前記シャーピンに作用する剪断力が増大し、所定値に達したときシャーピンが剪断されて外筒125と先導管124との接続が解除される。その後、スポーク122の先端が外筒125の端部と接触し、引き続く先導管124の引き戻しによってスポーク122が掘削面側に屈折し、外筒125との干渉を回避して外筒125内を通って引き戻される。
【0011】
【特許文献1】実用新案登録第2537753号公報
【特許文献2】実用新案登録第2559261号公報
【特許文献3】特開平7−269284号公報
【特許文献4】特開平8−284140号公報
【特許文献5】特開平9−144485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記特許文献3に記載の小口径推進機100においては、内筒105の全体が回転し屈曲不可能であるため、方向修正が行なえず、精度の良い施工は困難であるという問題点がある。また、掘削された土砂が開口部108より直接取り込まれるため、内筒内に土砂が貯留している状態では発進立坑内への引き戻しは不可能であるという問題点がある。また、カッタ前方の土圧を支える手段を備えておらず、滞水層や崩壊性の高い土質での施工には対応することができない。
【0013】
また、特許文献4に記載の小口径推進機110では、外筒113の先端部を地山に刺し込むようにして外筒113の推進が行われているが、例えば岩盤や礫質層等の頑強な地層に対しては外筒113の推進が困難であるという問題点がある。また、先導管112と外筒113とを接続するシャーピンを剪断して先導管112が引き戻されるため、この先導管112を再び外筒113内に内挿して掘進させることができないという問題点がある。
【0014】
一方、特許文献5に記載の小口径推進機120では、前記スポーク122に取りつけられた外周ビット121により土砂の掘削を行うようにされているため、礫質層の掘削が困難であるという問題点がある。また、前記先導管124と外筒125とを連結させるシャーピンを剪断して先導管124と外筒125とを分離させて先導管124が引き戻すようにされているため、一度引き戻した先導管124を再び外筒125に内挿させて連結できず、また屈折されたスポーク122を切羽面に対して拡径させることができないため、先導管124の再投入・再掘進が不可能であるという問題点がある。
【0015】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたもので、砂礫層から岩盤層等の広範囲の土質に対して推進抵抗を少なくかつ精度良く先導管を推進させることができ、その先導管を敷設された埋設管内を通して発進立坑側へ容易に回収することができるとともに、予め敷設された埋設管内に回収された先導管もしくは新たな先導管を投入して再掘進させることができる小口径掘進機における先導管の回収方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、第1発明による小口径推進機における先導管の回収方法は、
埋設管の先端に連結され、その埋設管の外径と略同一の外径を有する外筒内に、拡径時には前記埋設管外径と略同一外径となり、縮径時には前記埋設管内径より小さい外径となる拡縮自在のカッタヘッドを前端部に備える先導管を連結分離可能に内挿させてなる小口径推進機を用いて敷設した埋設管内を通して前記先導管を回収する小口径推進機における先導管の回収方法において、
前記カッタヘッドの縮径を行うとともに、前記埋設管の敷設時に連結状態にある前記先導管と前記外筒との連結を解除した後に、土砂排出用のスクリューコンベアを用いて前記先導管の前方へ薬液を注入しつつ前記先導管に引き戻し力を付与して所定量後退させて防護壁を作り、その後前記外筒内および前記埋設管内を通して前記先導管を回収することを特徴とするものである。
【0017】
また、第2発明による小口径推進機における先導管の回収方法は、
埋設管の先端に連結され、その埋設管の外径と略同一の外径を有する外筒内に、拡径時には前記埋設管外径と略同一外径となり、縮径時には前記埋設管内径より小さい外径となる拡縮自在のカッタヘッドを前端部に備える先導管を連結分離可能に内挿させてなる小口径推進機を用いて敷設した埋設管内を通して前記先導管を回収する小口径推進機における先導管の回収方法において、
前記カッタヘッドの縮径を行うとともに、前記埋設管の敷設時に連結状態にある前記先導管と前記外筒との連結を解除した後に、前記外筒の先端がカッタヘッドの先端位置に達するまで前記外筒および前記埋設管を押し込み、その後前記先導管の前方へ薬液を注入しつつ前記先導管に引き戻し力を付与して所定量後退させて防護壁を作り、次いで前記外筒内および前記埋設管内を通して前記先導管を回収することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
第1発明によれば、埋設管の敷設終了後に、先導管を引き戻して回収することができるので、従来先導管の回収に必要とされていた到達立坑が不要となりコスト低減および工期の短縮を図ることができる。また、先導管は、引き戻しが可能であるとともに、地中の外筒に内挿されて埋設管の敷設作業を再開できるため、例えば埋設管の敷設途中に先導管の補修や地中障害物が生じた場合であっても、中間立坑等を構築する必要がなく、先導管の補修作業および地中障害物の撤去作業を行なうことができる。また、先導管の引き戻しに際しては、この引き戻しにより形成される空洞部に薬液が注入されて防護壁が形成されるため、湧水地盤や崩落性の強い地盤であっても確実に埋設管の敷設と先導管の回収とが可能であり、より広範囲の土質に適応させることができる。また、外筒および埋設管を小さい推進抵抗で精度良く推進可能であるという効果を奏する。
【0019】
第2発明によれば、前記第1発明と同様の効果を有するほか、先導管を引き戻す際に外筒および埋設管を前方に推進させるようにして、先導管の引き戻しにより生じる空洞部を予め覆い、さらに前記先導管を後退させつつ所定量の薬液注入を行って防護壁が形成されるので、例えば湧水地盤や崩落性の強い地盤であっても確実に埋設管の敷設と先導管の回収とが可能であり、さらに薬液注入区間を短くすることができるため、工期の短縮およびコストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明による小口径推進機における先導管の回収方法の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1には、本発明の第1の実施形態に係る小口径推進機の先導管の縦断面図が示されている。図2には、図1のP−P線断面図が示されている。
【0022】
本実施形態の小口径推進機1は、埋設管2の外径と略同一外径を有してその埋設管2の先端に接続される外筒Aと、前記外筒Aに連結・分離可能な先導管Cと、図示されない発進立坑内に配設され、埋設管2の後端面を押圧して前記先導管Cに推進力を付与する推進装置(図示省略)とにより構成されている。
【0023】
前記先導管Cは、埋設管2および外筒Aの内径より小さい外径の胴部3を有し、この胴部3は前胴3aと後胴3bとに分割され、これら前胴3aおよび後胴3bは図示されない揺動ジャッキにより揺動部4にて揺動自在に連結されており、推進方向を修正可能な構造とされている。前記前胴3aの推進方向前方には、前面に複数のディスクカッタ5を有するカッタヘッド6が設けられ、このカッタヘッド6後部のバルクヘッド7と前記ディスクカッタ5との間に外部から土砂等を取り込むチャンバ8が設けられている。また、前記カッタヘッド6は前胴3a内に設けられるカッタヘッド駆動部6aにより前記前胴3aに対して回転自在に支承されている。なお、図1において、小口径推進機1の先導管Cは前後2分割されて記載されている。
【0024】
前記胴部3内には、その中心軸線に沿って後胴3bのやや後方まで、前記チャンバ8内に取り込まれた土砂を排出する排土装置9が貫通して設けられている。この排土装置9は、スクリューコンベア10とそのケーシング11とからなり、前記スクリューコンベア10のスクリュー軸12は、その後端に取り付けられる駆動モータ13により軸心周りに正逆回転自在とされている。
【0025】
前記カッタヘッド6の外周部に配設されるディスクカッタ5は、前記バルクヘッド7に前方に向けて突設されているブラケット15に枢支される断面略L字形の支持部材14先端部に支持されており、外筒Aの外径と略同一位置から外筒Aの内径よりやや中心側位置まで揺動可能にされている。前記バルクヘッド7の前面には、カッタヘッド6の拡径時すなわち前記ディスクカッタ5を外筒Aの外径と略同一位置まで揺動させたときに支持部材14のコーナ部より基端部側背面を接当させてディスクカッタ5の位置を保持させるストッパ16が付設されている。このストッパ16前面の最外部には、前記支持部材14がストッパ16に接当されていない状態のときに、この支持部材14の基端部側背面とバルクヘッド7との間にトンネル坑壁から砂礫が入り込まないように礫噛み込み防止ゴム17が突設されている。
【0026】
前記カッタヘッド6の前面には、前記ディスクカッタ5の揺動を操作してカッタヘッド6の外径を拡縮させる拡縮機構Dが設けられている。この拡縮機構Dは、前記ディスクカッタ5がカッタヘッド6の前面中心に配置されるシャフト19の外周に沿って前後方向に揺動可能なスライドケース20から半径方向でかつ放射線状に突設されるブラケット21に枢支されたリンク部材22を介してリンク結合されて構成されている。すなわち、前記スライドケース20を前方へ摺動させると、リンク部材22を介してディスクカッタ5にカッタヘッド6の半径方向外側に向けて押付け力が付与されてカッタヘッド6の外径が拡大される(図1中実線で示す。)。一方、前記スライドケース20を後方へ摺動させると、リンク部材22を介してディスクカッタ5にカッタヘッド6の半径方向内側に向けて引込み力が付与されてカッタヘッド6の外径が縮小される(図1中二点鎖線で示す)。
【0027】
前記スライドケース20は、ボールジョイント20aを介して前記スクリュー軸12の前端に連結されており、このボールジョイント20aによって前記スライドケース20にスクリュー軸12の前後方向の動きのみが伝達され、カッタヘッド6の回転とスクリュー軸12の回転との回転数差を許容するようにされている。
【0028】
前記排土装置9のケーシング11後端部は前後に分割され、その後方側のケーシング部分は前方側のケーシング部分に前後に摺動自在に嵌合されており、それら前後に分割されたケーシング部分にはその分割部分を跨いでスライドケース摺動ジャッキ23が装着されている。したがって、このスライドケース摺動ジャッキ23の伸長によりスクリュー軸12が後方に引き戻され、スライドケース摺動ジャッキ23の収縮によりスクリュー軸12が前方へ押し出される。
【0029】
前記ケーシング11の後部には、スクリュー軸12とケーシング11との間の掘削土砂搬出空間に連結される排土管24が接続されており、この排土管24には切替弁25を介して、掘削土砂を後方に排出するバキュームポンプP1を備える吸い込み側配管26と、前記掘削土砂空間を通してカッタヘッド6の前面に充填材を送出する圧送ポンプP2を備える送出側配管27とが接続されている。なお、この充填材は、前記掘削土砂空間を経てカッタヘッド6前方に到達した後に硬化するように硬化時間が調整されている1液タイプの固化剤である。
【0030】
前記後胴3bの後端には、略円弧状板材からなる上下一対の推進力伝達部材30a,30bが設けられている。図2に示されるように、これら推進力伝達部材30a,30bの一端同士は互いに回動可能にピン結合されており、他端同士はジャッキ31を介して連結され、このジャッキ31の伸縮により前記推進力伝達部材30a,30bが径方向に拡縮するようにされている。
【0031】
また、外筒Aの後部内周で、かつ前記推進力伝達部材30a,30bの対応位置には、推進力伝達部材30a,30bを拡径させた際にそれら推進力伝達部材30a,30bの外周部を係合する係合溝32を備える係合部材33が固設されている。このように前記ジャッキ31を伸長させて推進力伝達部材30a,30bを拡径させてその外周部を係合溝32に係合させることにより、外筒Aと後胴3bとが連結され、埋設管2の後端面を押圧して推進力を付与することにより、先導管Cに推進力が付与される。また、前記ジャッキ31を収縮させて推進力伝達部材30a,30bを縮径させた際には、それら推進力伝達部材30a,30bの外周部が係合溝32から外れ、外筒Aと後胴3bとの連結が解除される。
【0032】
このように構成される小口径推進機1を用いて埋設管2を敷設するには、まず外筒A内に先導管Cを嵌挿し、前記スライドケース摺動ジャッキ23を収縮させてスクリュー軸12を前方に押し付けてスライドケース20を前方に移動させることにより、ディスクカッタ5をカッタヘッド6の半径方向に押し出してカッタヘッド6を拡径させる。次いで、前記推進力伝達部材30a,30bの拡径により係合部材33の係合溝32に係合され、前記外筒Aと先導管Cとが一体化される。こうして、前面のカッタヘッド6を回転させた状態で、前記発進立坑内に設置された推進装置により外筒Aの後端面が押圧されて先導管Cに推進力が付与され、外筒Aの外径と略同一径で掘削が行われて、外筒Aが地中に貫入される。
【0033】
次いで、外筒Aの後端面に埋設管2が接続され、前記推進装置によりその埋設管2の後端面を押圧すれば、埋設管2および外筒Aを介して先導管Cに推進力が伝達され、掘進作業が行われる。こうして埋設管2の後端面に順次新たな埋設管2が継ぎ足されて前記掘進作業を繰り返して前記埋設管2が敷設される。なお、掘進作業中は、前記排土管24が切替弁25により吸い込み側配管26に連結され、前記チャンバ8内に取り込まれた土砂がスクリューコンベア10の正回転により排土装置9の掘削土砂排出空間を経て排土管24に供給され、バキュームポンプP1の作動により吸い込み側配管26に吸引される。
【0034】
次に、前記小口径推進機1による掘進作業(埋設管2の敷設作業)が終了した後に、もしくは掘進作業を中断して、先導管Cを発進立坑側に回収する際の回収手順について説明する。
【0035】
図3には、第1の実施形態の先導管Cを発進立坑に回収する手順を説明する説明図が示されている。
【0036】
本実施形態において、前記小口径推進機1による掘進作業(埋設管2の敷設作業)が終了して先導管Cを発進立坑に回収する際、もしくは掘進作業を中断して先導管Cを発進立坑に回収する際には(図3(a))、まず前記スライドケース摺動ジャッキ23を伸長させてスクリュー軸12を後方へ摺動させることにより前記スライドケース20を後方へ移動させ、前記ディスクカッタ5をカッタヘッド6の半径方向中心側へ引込ませてカッタヘッド6の外径を前記外筒Aの内径より小さくなるように縮小させる(図3(b))。
【0037】
次に、前記ジャッキ31を収縮させて前記推進力伝達部材30a,30bを縮径し、外筒Aと先導管Cとの連結を解除した後、先導管Cを発進立坑側に引き戻す。この先導管Cの引き戻しとともに、前記切替弁25を送出側配管に連結してスクリューコンベア10を逆回転させて充填材をカッタヘッド6の前方に送出する(図3(c))。
【0038】
この充填材により、前記先導管Cの後退により形成される空洞部および前記外筒A内の先端部を固化した後(図3(d))、前記圧送ポンプを停止して充填材の注入を終了し、先導管Cを引き戻して発進立坑内に回収する(図3(e))。
【0039】
本実施形態によれば、先導管Cの後退により形成される空洞部および外筒Aの先端部が充填材によって塞がれるため、湧水地盤や崩落性の強い地盤であっても確実に施工することができ、より広範囲の土質に対応させることができるという効果を奏する。
【0040】
また、本実施形態によれば、カッタヘッド6前面に配設されるディスクカッタ5により掘進作業が行われるため、礫質,岩盤などの広範囲の土質に対応可能であり、そのカッタヘッド6により外筒Aの外径と略同一径の掘進が行われるため、外筒Aおよび埋設管2を小さい推進抵抗で、かつ精度良く推進可能である。また、先導管Cが再使用可能状態で回収されるため、一旦回収された先導管Cを外筒A内に再投入して再掘進させることができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、先導管Cを再使用可能な状態で発進立坑内に回収することができるので、例えば掘進作業途中にディスクカッタ5を交換する場合や、掘進途中に掘削不能な障害物が現れた場合に、先導管Cを一旦発進立坑内に回収し、カッタ鋼管作業や障害物除去作業の終了後に再び先導管Cを投入して再掘進させることができる。
【0042】
本実施形態においては、掘進作業する際にカッタヘッド6の拡径が行われた後に先導管Cと外筒Aとの連結が行われているが、これに限らず、先導管Cと外筒Aとが連結された後にカッタヘッド6の拡径が行われても良く、また先導管Cと外筒Aとの連結とカッタヘッド6の拡径とが同時に行われても良い。
【0043】
また、本実施形態においては、推進装置によって先導管Cとの連結が解除された外筒Aおよび埋設管2が前方へ推進するようにされているが、これに限らず、図4に概略構成図が示されるように、外筒Aを二重筒構造とし、内側の筒Aを外側の筒A内に設けたスライドジャッキ35で前方に押し出すようにして、内側の筒Aの先端部が先導管Cの先端部と同位置になるようにしてもよい。この場合、スライドジャッキ35のストロークは必要スライド量とせずに、短いストロークでスペーサ36を順次継ぎ足すことにより押し出される。
【0044】
本実施形態においては、充填材として1液タイプの固化剤が用いられているが、これに限らず、例えば2液混合タイプの固化剤を用いることも可能である。この場合には、例えばスクリュー軸12を中空とし、このスクリュー軸12内を通して2液混合タイプの一方の薬液をカッタヘッド6の前方に供給するとともに、前記掘削土砂排出空間を通して他方の薬液をカッタヘッド6の前方に供給して、カッタヘッド6の前方で2種の薬液を混合させて硬化させればよい。
【0045】
次に、本発明の第2の実施形態に係る先導管の回収方法について説明する。本実施形態において、先導管Cを発進立坑に回収する手順のみが異なる以外は、第1の実施形態と異なるところがない。以下、第1の実施形態と共通する部分について、同一の符号を用いて説明する。
【0046】
次に、本発明の第2の実施形態に係る先導管の回収方法について図5を参照しつつ説明する。本実施形態において、充填材をカッタヘッド6に注入する構成および外筒A'の構成が異なる以外は、第1の実施形態と基本的に異なるところがない。したがって、第1の実施形態と共通する部分には、同一符号を用いて説明する。
【0047】
本実施形態の小口径推進機1'においては、外筒A'の外周の一部(本実施形態では下部)で、かつ先端部から後端部に渡って充填材流路配管40が付設されており、充填材がこの充填材流路配管40内を通ってカッタヘッド6前方に注入されるように構成されている。この充填材流路配管40の後部は埋設管2内に配設されており、その充填材流路配管40の先端は外筒A'内の先端部に連通されている。なお、前記排土管24の下流側に切替弁25を設ける必要がなく、この排土管24はバキュームポンプP1を備える吸い込み側配管26に連結されていればよい。
【0048】
また、前記外筒A'は、充填材流路配管40から充填材を注入しつつ先導管Cを引き戻す長さを確保するため、第1の実施形態で用いられる小口径推進機1の外筒Aに比べて長く設定されている。
【0049】
本実施形態においては、図5に示されるように、第1の実施形態と同様の手順で小口径推進機1'による掘削作業が終了した際、もしくは中断して先導管Cを発進立坑側へ引き戻す際には(図5(a))、まず前記ディスクカッタ5をカッタヘッド6の半径方向中心側へ引込ませてカッタヘッド6の外径を外筒A'の内径より小さく縮小させる(図5(b))。次に、ジャッキ31を収縮させて前記推進力伝達部材30a,30bを縮径し、外筒Aと先導管Cとの連結を解除して外筒Aの先端面が先導管2の先端面と略同位置になるまで外筒Aおよび埋設管2を前方に推進させる(図5(c))。
【0050】
次いで、先導管Cを後方に移動させつつ、充填材を前記充填材流路配管40内を通して外筒Aの先端部からカッタヘッド6の前方に送出させ、トンネル切羽面から前記外筒A内の先端部空間に前記充填材を注入して防護壁を形成した後(図5(d))、その充填材の注入を終了して先導管Cを引き戻して発進立坑内に回収する(図5(e))。
【0051】
本実施形態によれば、前記第1の実施形態と略同等の効果を得ることができる。また、充填材の注入量を少なくすることができるため、コストダウンおよび工期の短縮を図ることができる。また、前記充填材流路配管40が外筒A'の外周部に備えられ、先導管Cの小型化が可能となるため、さらに径の小さい埋設管の敷設に適用することができる。
【0052】
本実施形態においては、充填材流路配管40よりカッタヘッド6の前方に充填材を注入しながら先導管Cが引き戻されているが、これに限らず、第1の実施形態と同一の小口径推進機1を用いてスクリュー軸12の逆回転により充填材を注入しつつ、前記手順で先導管Cを引き戻すことも可能である。
【0053】
前記各実施形態においては、カッタヘッド6を縮径させた後に先導管Cと外筒Aとの連結が解除されているが、これに限らず、先導管Cと外筒Aとの連結が解除された後にカッタヘッド6を縮径させてもよく、先導管Cと外筒Aとの連結とカッタヘッド6の縮径とを同時に行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る小口径推進機の先導管の縦断面図
【図2】図1のP−P線断面図
【図3】第1の実施形態の先導管の回収手順を説明する説明図
【図4】外筒を前方へ推進させる別方法を説明する説明図
【図5】本発明の第2の実施形態の先導管の回収手順を説明する説明図
【図6】従来の小口径推進機の先導管の縦断面図
【図7】従来の小口径推進機の先導管の平面図
【図8】従来の小口径推進機の先導管の縦断面図
【符号の説明】
【0055】
1 小口径推進機
2 埋設管
3 胴部
3a 前胴
3b 後胴
4 揺動部
5 ディスクカッタ
6 カッタヘッド
6a カッタヘッド駆動部
7 バルクヘッド
8 チャンバ
9 排土装置
10 スクリューコンベア
11 ケーシング
12 スクリュー軸
13 駆動モータ
14 支持部材
15 ブラケット
16 ストッパ
17 礫噛み込み防止ゴム
19 シャフト
20 スライドケース
21 ブラケット
22 リンク部材
23 スライドケース摺動ジャッキ
24 排土管
25 切替弁
26 吸い込み側配管
27 送出側配管
30a,30b 推力伝達部材(連結手段)
31 ジャッキ
32 係合溝
33 係合部材
35,41 スライドジャッキ
36,42 スペーサ
40 充填材流路配管
A 外筒
C 先導管
D 拡縮機構(拡縮手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋設管の先端に連結され、その埋設管の外径と略同一の外径を有する外筒内に、拡径時には前記埋設管外径と略同一外径となり、縮径時には前記埋設管内径より小さい外径となる拡縮自在のカッタヘッドを前端部に備える先導管を連結分離可能に内挿させてなる小口径推進機を用いて敷設した埋設管内を通して前記先導管を回収する小口径推進機における先導管の回収方法において、
前記カッタヘッドの縮径を行うとともに、前記埋設管の敷設時に連結状態にある前記先導管と前記外筒との連結を解除した後に、土砂排出用のスクリューコンベアを用いて前記先導管の前方へ薬液を注入しつつ前記先導管に引き戻し力を付与して所定量後退させて防護壁を作り、その後前記外筒内および前記埋設管内を通して前記先導管を回収することを特徴とする小口径推進機における先導管の回収方法。
【請求項2】
埋設管の先端に連結され、その埋設管の外径と略同一の外径を有する外筒内に、拡径時には前記埋設管外径と略同一外径となり、縮径時には前記埋設管内径より小さい外径となる拡縮自在のカッタヘッドを前端部に備える先導管を連結分離可能に内挿させてなる小口径推進機を用いて敷設した埋設管内を通して前記先導管を回収する小口径推進機における先導管の回収方法において、
前記カッタヘッドの縮径を行うとともに、前記埋設管の敷設時に連結状態にある前記先導管と前記外筒との連結を解除した後に、前記外筒の先端がカッタヘッドの先端位置に達するまで前記外筒および前記埋設管を押し込み、その後前記先導管の前方へ薬液を注入しつつ前記先導管に引き戻し力を付与して所定量後退させて防護壁を作り、次いで前記外筒内および前記埋設管内を通して前記先導管を回収することを特徴とする小口径推進機における先導管の回収方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−29079(P2006−29079A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296602(P2005−296602)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【分割の表示】特願平11−109968の分割
【原出願日】平成11年4月16日(1999.4.16)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】