説明

小型共振器光ファイバージャイロスコープ

【課題】2つの入力/出力結合素子を用いる、回転速度を検出するための、実質的に対称のRFOG構成を提供する。
【解決手段】光学結合素子40、50は、入力光波および出力光波の両方を制御する。入力/出力結合素子の数を減らし、一方で、CWおよびCCWビームに関して実質的に対称性を備える構成を維持することで、損失を低減し、共振器10内の光通路の非対称性によるバイアス誤差の発生を防止し、信号対ノイズの性能を増強する。さらに、複数の機能が小型のマイクロ光学装置に統合されたシステムを開示し、これは、組み立ておよびパッケージをより容易にし、コストが低く製造性が改善された小型のRFOGに寄与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型共振器光ファイバージャイロスコープに関する。
【背景技術】
【0002】
共振器光ファイバージャイロスコープ(RFOG)は、回転速度測定装置であり、回転誘導サニャック効果を増強するためにファイバーリング共振器を用いる。RFOG動作の基本原理は、回転が共振器の軸に対して非ゼロの成分を持つときに、共振器の時計回り(CW)および反時計回り(CCW)の一周の経路長が異なるということである。CWおよびCCWの共振周波数差を測定することにより、RFOGは回転速度を正確に測定することができる。この共振周波数の差は回転によるサニャック位相シフトに比例する。いくつかのRFOG構成が従来技術において提案されている。3つの具体的な従来技術の共振器の構成が図1−3に示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図1は反射モード構成の共振器を示しており、ここで、光は、共振器入力ミラーおよび光ファイバー共振器コイルにより形成された共振器に導入される。ミラーは、いくらかの反射率を備え、且つ、低い、しかし非ゼロの透過率を備える。従って、ミラーへの入射光の多くは反射されるが、光の一部は透過する。動作において、レーザーからの光は、共振器入力ミラーを通って透過した後に共振器に導入される。光は、共振器入力ミラーにより共振器内を複数回循環する。すなわち、ファイバーの一方の端部から出た光は、繰り返し反射されて他の端部に戻される。循環した光のいくぶんかは、共振器の外に伝達されて(破線)検出器にいたる。ここで、循環した光は、光源から最初に反射された光と干渉する(検出器に向かう実線)。これらの共振器入力ミラーからの干渉する光波は、共振信号を測定するのに用いられる。具体的には、図1のコイルのCW方向に伝播する光を参照すると、CWレーザーからの光の小部分は、共振器入力ミラーのところで共振器に入る。CWレーザーからの光の多くは、共振器入力ミラーにより反射され、CCWレーザーに向かって続く。共振器コイル内を循環する光の一部は、反射光と同一の経路に沿って、共振器の外に出て結合される。反射光の一部および共振器から出てきた光は、CWタップミラーによりCW検出器に向けられる。この反射光および共振器から出た光は、CW検出器上で干渉する。この干渉は、光にゼロ光に対応する共振ディップを生じさせる。ディップの底は、光の周波数がコイルの共振周波数にあるときに生じる。同様に、CCWレーザーからの光は、反対方向に共振器に入り、共振がCCW検出器により検出される。
【0004】
図1に示される構成に関連する問題は、大きな回転検出誤差であり、これは、反射光の望ましくない部分と共振器出力光との間の干渉により生じる。反射波の望ましくない部分は、空間モード特性または偏光モード特性が、共振器出力波のそれとは僅かに異なる。注意深くアライメントしても、共振器入力ミラーと検出器との間の偏光依存損失(polarization dependent losses)または空間開口効果(spatial aperturing effects)は、回転測定の誤差を生じさせうる。たとえば、入力偏光状態の不完全性は、線形状の非対称性を生じさせ、これは、ジャイロ速度バイアス誤差になりうる。従って、反射光と共振器出力光とを干渉させずに、共振器の共振周波数を検出する必要がある。
【0005】
図2は、伝達モードにおける共振器の従来技術を示している。この共振器構造は、前述の反射モード共振器の問題を、コイル内の循環光の一部をタップオフするためにキャビティ内に他のミラーを配置することにより克服している。具体的には、共振器により反射された光は、反対側のレーザーの前に配置された光学分離器により除去される。こうして、共振器内でCW方向に循環した光だけがCW検出器に到達し、すなわち、循環光と反射光との間の干渉が生じない。しかし、この構成は、CW方向のいくらかの光だけが、CW検出器に到達する前にファイバーコイルを通って伝播し、一方で、CCW方向の全ての光がCW検出器に到達する前にファイバーコイルを通って伝播するので、CW方向およびCCW方向で非対称である。この非対称性は問題を生じさせる。もしCW方向に伝播するいくらかの光が、正しい空間モードまたは偏光モードでないならば、これらの光は、CW検出器を通って漏れ、そして、共振器内を循環した光と異なることになるであろう。従って、検出される光は、共振器出力光とミスマッチすることになり、共振器コイルを一度も通過をすることなく検出器に到達することになる。偏光モードおよび空間モードの不完全性と組み合わされる非対称性は、有意な回転検出誤差を導くことが知られている。従って、対称性のある、伝達モード共振器への需要がある。
【0006】
図3は対称性のある伝達モード共振器の従来技術を示している。この共振器は、共振器キャビティに第3のミラーを追加することにより形成されている。この共振器は、伝達モード構成と、CW光伝播およびCCW光伝播の対称性の両者を備える。この構成において、検出器に到達する光は常に、少なくとも1回は共振器コイルファイバーを通り、図1および図2に示される構成で議論した問題を取り除く。しかし、第3のミラーを追加することは、共振器キャビティ内の光学系を有意に複雑にする。高性能を実現するために、キャビティ内の周回する光学損失は、とても小さくなければならない。キャビティ内での低い光学損失を実現することは、キャビティ外での低い光学損失を実現するよりもはるかに重要である。具体的には、1dBでの周回損失は、通常キャビティ内で許容され、3dBの損失までがキャビティ外で許容される。各キャビティミラーの角度アライメントは、キャビティ内での低損失を実現するのに重要である。キャビティ内に第3ミラーを含むことは、高度に自動化された装置で製造することができる低コストの装置における低いキャビティ損失を得るための困難性を増加させる。さらに、温度変化はキャビティミラーのアライメントを悪くするので、環境の変動はキャビティ損失を悪化させ得る。従って、2つのミラーによる、簡略化された、対称性のある、伝達モード共振器への需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、改良された小型の共振器光ファイバージャイロスコープシステムを提供し、これは、対称性があり、伝達モードであり、および/または共振器キャビティ内の2つだけの結合装置(たとえばミラー、部分反射器、または部分的に透過させ部分的に反射させる装置)を使用する。
【0008】
光ファイバージャイロシステムは、第1端部および第2端部を備えるコイルと、コイルと光学的に相互作用する装置とを含む。この装置は、源からの光を受け取り、また、コイルの各端部からの光を受け取るように構成される。この装置の第1要素は、源からの少なくとも一部の光をコイルの第1端部に導くように構成され、光がコイル内を第1方向に伝播するようにする。この装置の第2要素は、源からの少なくとも一部の光をコイルの第2端部に導くように構成され、光がコイル内を第2方向に伝播するようにする。また、第1要素は、コイルの第1端部からの少なくとも一部の光を第2要素に導くように構成され、また、第2要素からの少なくとも一部の光をコイルの第1端部へ導くように構成され、また、第2方向に伝播する少なくとも一部の光を第1検出器に導くように構成される。第2要素は、コイルの第2端部からの少なくとも一部の光を第1要素に導くように構成され、第1要素からの少なくとも一部の光をコイルの第2端部に導くように構成され、また、第1方向に伝播する少なくとも一部の光を第2検出器に導くように構成される。
【0009】
本発明のさらなる側面によれば、この装置は、第3要素および第4要素を備えることができる。第3要素は、第1要素から受け取った光を第1検出器に導くように構成され、源からの光を第1要素に導くように構成され、源から受け取った光が、コイル内を循環せずに第1検出器に入ることを防止するように構成される。第4要素は、第2要素から受け取った光を第2検出器に導くように構成され、また、源からの光を第2要素へ導くように構成され、また、源から受け取った光がコイル内を循環することなく第2検出器に入ることを防止するように構成される。
【0010】
本発明の他の側面によれば、第3要素は、源からの少なくとも一部の光を第1RIN監視要素に導くように構成され、第4要素はさらに、源からの少なくとも一部の光を第2RIN監視要素に導くように構成される。
【0011】
本発明のさらなる側面によれば、第3要素および第4要素は、それぞれ案内結合装置を有する。
本発明のさらなる側面によれば、本装置は、少なくとも1つの偏光素子を含む。
【0012】
本発明のさらなる側面によれば、単一の偏光素子は、第3要素、第4要素、コイルの第1端部、およびコイルの第2端部から受け光を偏光させるように構成される。
本発明のさらなる側面によれば、本装置およびコイルは、検出器に導かれる全ての光が少なくとも1つの偏光子およびコイルを通過したものとなるように構成される。
【0013】
本発明のさらなる側面によれば、本装置は、第1要素と第3要素との間の両方向の光学相互作用を促進するように構成される第1経路を含み、本装置はさらに、第2要素と第4要素との間の両方向の光学相互作用を促進するように構成される第2経路を含む。
【0014】
本発明のさらなる側面によれば、本装置は、第1要素と第2要素との間の両方向の光学相互作用を促進するように構成される第3経路を含む。
本発明のさらなる側面によれば、本装置およびコイルは、第1方向に伝播する光および第2方向に伝播する光が実質的に対称な経路を進むように構成される。
【0015】
本発明のさらなる側面によれば、第1要素および第2要素は、光を透過し且つ反射するように構成される結合装置を含む。
本発明のさらなる側面によれば、各結合装置はミラーを含む。
【0016】
本発明のさらなる側面によれば、第1要素および第2要素は、全部で2つより多くのミラーを含まない。
本発明のさらなる側面によれば、第1要素、第2要素、第3要素、および第4要素は、単一の微小光学装置に統合される。
【0017】
本発明のさらなる側面によれば、第1要素および第2要素は、単一の微小光学装置に統合される。
本発明の好ましい実施形態および代替実施形態が以下に添付図面とともに説明される。添付図面は以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来技術の反射モードのRFOG共振器の概略図である。
【図2】従来技術の非対称の透過モードの2ミラーRFOGの概略図である。
【図3】従来技術の対称の3ミラーRFOGの概略図である。
【図4】本発明の一実施形態により形成される、2つの案内素子および2つの結合光学素子を備える対称性RFOG共振器の概略図である。
【図5】図4に示される共振器で用いられるRFOG結合光学素子の概略図である。
【図6】本発明の一実施形態により形成される、2つの案内素子および2つの結合光学素子を備える対称性RFOG共振器の概略図である。
【図7】本発明の一実施形態により形成される、4つのポートを含むRFOG案内光学素子の一実施形態の概略図である。
【図8】本発明の一実施形態による、4つのポートを含むRFOG結合光学素子の一実施形態の概略図である。
【図9】4つのポートを含むRFOG結合光学素子の代替実施形態の概略図である。
【図10】本発明の一実施形態による、1つの案内素子および結合光学素子を含む対称型RFOG共振器の概略図である。
【図11】8つのポートを含むRFOG案内光学素子の一実施形態の概略図である。
【図12】本発明の一実施形態による、1つの8ポート光学素子を含む対称型RFOG共振器の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図4は、本発明の例示的な一実施形態により形成される共振器光ファーバージャイロスコープ(RFOG)100を示している。RFOG100は、光源8、案内光学素子20および30、共振器入出力結合光学素子40および50、検出器11および13、およびファイバーループ80を含む共振器10、を含む。光源8は、少なくとも2つの光ビーム、つまりCCW方向の光ビームおよびCW方向の光ビームを発する。代替的に、光源8は、2つの独立した光源を含むことができ、1つはCCW方向の光を提供し、もう一つはCW方向の光を提供してもよい。各案内光学素子20および30は、入力ポート21および31、出力ポート22および32、および検出器ポート23および33を含む。入力ポート21および31により受け取られる光の実質的な部分は、出力ポート22および32に導かれ、検出器ポート23および33へ入ることは防止される。反対方向において(出力ポート22および32の下の矢印で示される)、出力ポート22および32における案内光学素子20および30へ入力される光の実質的な部分は、検出器ポート23および33へ導かれ、これは光を検出器11および13に導く。
【0020】
案内光学素子20および30は、限定するわけではないが、光ファイバー循環器、ファイバーカプラー、ビームスプリッタ、または、上述の所望の機能を提供する任意の光学素子を含むことができる。案内光学素子20および30のポート21、22、23、31、32、33は、光ファイバーまたは自由空間光学ビームに接続される。全てではないが上述の案内素子の多くは商業的に入手可能である。
【0021】
結合光学素子40および50は、入出力ポート41および51、ループポート42および52、およびリレーポート43および53を含む。入出力ポート43および53内に導かれる光の一部を、ループポート42および52が受け取り、リレーポート43および53に入らない。リレーポート43および53における結合光学素子40および50内に導かれる光の実質的な部分(典型的には80〜99%)は、ループポート42および52に導かれ入出力ポート41および51に入らない。反対方向において、ループポート42および52における結合光学素子40および50内に導かれる光の実質的な部分(典型的には80〜99%)を、リレーポート43および53が受け取り、一部(典型的には1〜20%)は入出力ポート41および51に導かれる。
【0022】
結合光学素子40および/または50は、限定するわけではないが、ファイバーカプラー、ファイバースプリッタ、ビームスプリッタ、導波装置、および/またはこれらの組み合わせを含むことができる。結合光学素子40および/または50は、偏光子のような光学素子を含むことができる。全てではないが、上述の結合光学素子の多くは商業的に入手可能である。
【0023】
ファイバーループ80は端部81および82を含む。第1端部81は、結合光学素子40のループポート42に接続され、第2端部82は、結合光学素子50のループポート52に接続される。ポート43および53は、限定するわけではないが、ファイバーの一部、導波路、または単に光ビーム伝播の自由空間の光通路のようなコネクタ45により接続される。
【0024】
光を共振器10にCW方向に導くために、光は、光源8から案内光学素子20の入力ポート21に導かれる。光の少なくとも一部は、案内光学素子20および出力ポート22を通って、結合光学素子40の入出力ポート41に到る。案内光学素子40は、光の少なくとも一部をループポート42を通ってファイバーループ80に導く。光は、ループポート52、リレーポート53、コネクタ45、リレーポート43およびループポート42を通ってCW方向に伝播することで循環する。
【0025】
ループポート52に入るCW循環光の一部(典型的には1〜20%)は、結合光学素子50により入出力ポート51において共振器10外に導かれる。この光は、案内光学素子30の出力ポート32に伝播する。案内光学素子30は、光を検出器ポート33に導く。CW検出器13は、CW共振検出のためのポート33からの光を受け取る。
【0026】
光を共振器内でCCW方向へ導くために、光は、光源8から案内光学素子30の入力ポート31に導かれる。ポート32にから出てくる光は、結合光学素子50の入出力ポート51内に導かれる。結合光学素子50は、結合光学素子50の入出力ポート51からの光をファイバーループ80に連結されるループポート52に導く。光りは、ループポート42、リレーポート43、コネクタ45、リレーポート53、およびループポート52を通って伝播することにより共振器内をCCW方向に循環する。このCCW循環光の一部(典型的には1〜20%)は、結合光学素子40における共振器10外へ導かれる。具体的には、ループポート42からの光の一部は、結合光学素子40により入出力ポート41に導かれる。この光は、案内光学素子20の出力ポート22へ伝播し、検出器ポート23へ導かれる。CCW検出器11は、CCW共振検出のために、ポート23からの光を受け取る。
【0027】
案内光学素子20、30および結合光学素子40、50は実質的に類似している(すなわち、互いに鏡像関係にある)。従って、共振器10の構成は、実質的にCW方向およびCCW方向に対称である。CWおよびCCWの光は、共振器10内で正確に同一の光学路(ただし逆方向)に沿って進む。CW光学路およびCCW光学路のこの高レベルの対称性および互換性は、CWおよびCCWの両方における光伝播を共通にすることにより、位相遅れおよびバイアス誤差を生じさせるビーム経路の非対称性を相殺し、それによりジャイロのバイアス安定性を改良する。
【0028】
図5は、結合光学素子40の例示的な実施形態を示している。結合光学素子40は、ビーム分割ミラー104を含み、これはポート101からの入力光の一部(典型的には1〜20%)をポート102へ反射し、ポート102からの光の一部をポート101へ反射する。ミラー104は、ポート103から伝播する光の一部(典型的には80〜99%)をポート102へ透過させ、ポート102からの光の一部をポート103へ透過させる。偏光子105をミラー104とポート102との間に配置することができ、望まない偏光モードを低減/除去することができる。この装置において、ポート101およびポート102は、ファイバーアダプタを含むことができる。ポート103は、光ビームを自由空間を通過させるための光学開口を含むことができる。
【0029】
図6は代替実施形態のRFOG300を示している。RFOG300は、相対強度ノイズ(RIN)検出器12および14を含み、案内光学素子120および130は実質的に案内光学素子20および30に実質的に類似しているが、追加のRIN監視ポート124および134を備える。ポート121、131、122、132、123、133は、入力ポート21および31、出力ポート22および32、および検出器ポート23および33と実質的に同一の導光機能を備える。これらの上述の機能に加え、ポート121および131に入る入力光の一部は、RIN監視ポート124および134に導かれる。RIN検出器12および14は、入力ビームの強度ノイズの測定のために、RIN監視ポート124および134からの光を受け取る。これらのRIN信号は、入力光の強度ノイズ、望まない強度または振幅変調を低減するために、典型的なRINサーボ電子機器システムに信号フィードバックを提供する。RIN監視ポート124を案内光学素子120および130に統合することは、ジャイロの光学素子の総数を減少させる。より少ない光学素子を用いることは、パッケージの負担を減らす。さらに、RIN監視点が共振器10に近接して配置されるので、少ない強度ノイズのよりクリーンな入力光ビームが期待される。
【0030】
図6に示される結合装置60は、結合光学素子40および50の変形例である。結合装置60は、結合光学素子40および50の機能を1つの装置に組み合わせており、そのため、ジャイロをより小型にし、パッケージしやすくする。一般的に、結合装置60は4つのポートを含み、具体的には、CW入力ポート61、CCW入力ポート64、ループポート62、およびもう一つのループポート64を含む。CW入力ポート61に導かれる光の一部(典型的には1〜20%)は、ループポート62へ導かれ(ただしループポート64への直接的な進入は防止される)、ファイバーループ80内をCW方向に伝播する。ファイバーループ80を端部82のところで出るCW光は、ループポート64へ導かれる。CW光の実質的な部分(典型的には80〜99%)は、ループポート62に導かれて、共振器10内をCW方向に循環する。共振器10の内部を循環するCW光の一部(典型的には1〜20%)は、ループポート64からCCW入力ポート53へ伝播することで共振器10の外へ導かれる。この光はその後、案内光学素子130の検出器ポート133を通って、CW共振信号検出のためにCW検出器13に導かれる。
【0031】
CCW入力ポート63に導かれる光の一部(典型的には1〜20%)は、ループポート64に導かれ、ファイバーループ80内でCCW方向に伝播する。ファイバーループを端部81のところで出るCCW光は、ループポート62に導かれる。この光の実質的な部分(典型的には80〜99%)は、ループポート64へ導かれ、共振器10内をCCW方向に循環する。共振器10内を循環するCCW光の一部(典型的には1〜20%)は、ループポート62からCW入力ポート61へ伝播することにより共振器10外に導かれる。CW入力光61から、この光は、CCW共振信号検出のために、案内光学素子120の検出器ポート123を通ってCCW検出器11に導かれる。
【0032】
図7は、案内光学素子400の例示的な実施形態であり、案内光学素子120のように用いることができる。案内光学素子400は、部分反射ミラー405を含み、これは、RIN監視のためにポート401からの入力光の一部をポート404へ透過させる。入力光の実質的な部分は(ここでは一般性を失うことなく水平方向に偏光していることを想定している)、ミラー405で反射させて、偏光ビームスプリッタ406を通過する。偏光ビームスプリッタ406は水平偏光光を透過し、垂直偏光光を反射する。ファラデー回転子407は、入力光を45°回転させる。後続の半波プレート408は、入力光の偏光状態を水平面に戻すように変化させ、偏光子409を通過できるようにする。偏光子409の偏光通過軸は、水平方向に向けられる。反対方向において、ポート402内に導かれる水平偏光光は、有意な損失なしに偏光子409を通過する。半波プレート408は、ビームの偏光状態を水平面に対して45°回転させる。ファラデー回転子407は、不可逆装置であり、反対に伝播する光の偏光を垂直面に回転させる。ビームスプリッタ406は、垂直偏光光の大部分を検出器ポート403へ反射する。ビームスプリッタ406、回転子407、プレート408、および偏光子409は、典型的な循環装置の例示的な実施形態である。他の実施形態も可能であり、マイクロ光学素子を用いてミラー405(RIN信号タップのため)を循環器に統合することができる(入力ビームから反対に伝播するビームを分離するため)。ポート401、402、403、404は、ファイバーでもよいし、または自由空間結合ポートでもよい。
【0033】
図8は、例示的な実施形態である結合素子500を示しており、これは図6の結合装置60のように用いることができる。結合装置500は、部分反射ミラー505および507を含み、ポート501および503に導かれる入力光をポート502および504へ反射し、反対に、ポート502および504に導かれる光をポート501および503に反射する。ミラー505および507は、ポート502からの光の実質的な部分(典型的には80〜99%)をポート502からポート504へ透過させ、反対に、ポート504からの光をポート502に透過させる。光ビームの偏光状態を制御するために、偏光子506および507を、ミラー505とポート502との間、およびミラー507とポート504との間に挿入することができる。結合装置500は、4ポート結合装置の機能を実現するマイクロ光学素子を使う基本的アイディアを強調した例示的な実施形態であることに注意されたい。
【0034】
図9は、他の実施形態である結合装置600を示している。この実施形態において、入力ポート601および603(図8のポート501および503に類似する)は、パッケージしやすさのために、ループポート602および604と同じ側面に配置される。部分反射ミラー605および607に加えて、入力ポート601および603からのビームをループポート602および604へ導くために、案内ミラー609および601が用いられる。
【0035】
装置500および600は、自由空間光学系がコイルを通って循環する光ビームが一直線上になるように配置されるように有利に構成される。このようにすることで、光学素子505、506、507、508、および605、606、607、608は、決定的になりにくい。これらの光学系のミスアライメントによる環境変動に対する共振器の感度は、低減され得る。さらに、素子502、504、602および604を備えるこれらの装置は、ミニチュア基板上のファイバーをV溝に取り付けるような技術を用いて自己整合でき、製造コストを有意に低減できる。
【0036】
図10は、本発明による他のRFGOシステム700を示している。RFOGシステム700は、案内光学素子200、結合光学素子70、およびファイバーループ80を含む。この実施形態において、案内光学素子200は、8ポート装置であり、案内光学素子120、130の機能を単一の装置に組み合わせたものである。ポート221、222、223、224、231、232、233、および234は、それぞれポート121、122、123、124、131、132.133、および134に対応する。これらの案内機能は実質的に同じである。CWおよびCCW案内光学素子を統合する主要な効果は、より小型の設計、パッケージ内の部品数の低減、およびCWおよびCCW伝播ビームの対称性のレベルの増加である。
【0037】
RFOGシステム700は結合光学素子70を含み、これは、結合装置60と実質的に同一の機能を備える。部分反射ミラー75および77は、ポート71および73内に導かれる光の一部を、ループポート72および74へ透過させる。ループポート72および74に導かれた光の実質的な部分(典型的には80〜99%)は、部分反射ミラー75および77により、また部分反射ミラー77および75により連続的に反射されて、ループポート74および72に至る。循環するCW(CCW)光の一部(典型的には1〜20%)は、部分反射ミラー77および75を通ってポート73および71へ透過することにより、共振器10外へ導かれる。偏光を制御するために、偏光子76がCW光およびCCW光で共有される。結合光学素子70内で素子を共有することは、部品数が減り、製造コストを低減し、共振器10の対称性がよくなるので有利である。
【0038】
図10の実施形態は、図4および図6の実施形態の変形例である。
図11は、8ポート装置800の一例を示しており、これは8ポート装置200のように用いることができる。この実施形態は、個別の部品数を減らすために、CW案内光学素子およびCCW案内光学素子で同一の光学素子を共有する可能性を示している。8ポート装置800は、部分反射ミラー841および842を含み、これは、ポート821および831内に導かれた入力光の一部をRIN監視ポート824および834に透過させる。入力光の実質的な部分は(一般性を失うことなく水平偏光であると想定する)、部分反射ミラー841および842に反射されて、偏光ビームスプリッタ843および844に至る。偏光ビームスプリッタ843および844は、水平偏光光を透過させるが、垂直偏光光を反射させる。ファラデー回転子845は、入力光を約45°回転させる。半波プレート846は、入力光の偏光状態を水平面に戻し、偏光軸が水平方向に沿って配置される偏光子847を通過できるようにする。その後、光はポート822および832から出る。反対方向への光の伝播(すなわち、ポート822および832からポート823および833への伝播)は、図7で上述したのと同様である。ファラデー回転子、半波プレート、および偏光子845、846、847は、この設計においてCWおよびCCWのビームで共通であることに注意されたい。素子を少なくすることで、空間を節約し、また装置のコストを低減させる。また、素子を減らすことは、CWビームおよびCCWビームにおいて同一の光学素子を共有することは装置の対称性を向上させ、バイアス誤差を効果的に相殺するので、性能の点からも有利である。
【0039】
図12は、本発明による他の実施形態のRFOGシステム900である。RFOGシステム900は、8ポート装置300を含み、これは、前述の実施形態の案内光学素子と結合光学素子の機能を組み合わせたものである。より具体的には、ポート321および331に導かれる入力光の実質的部分は、ループポート322および332に導かれ、光の一部は、RIN監視ポート324および334へ導かれる。ファイバーループ80内をCW方向/CCW方向に循環する光の一部は、偏光子308および306、ビーム案内素子307および306、およびビーム分割装置312および311を通って共振器10外へ導かれ、検出器ポート333および323に至る。ビーム分割装置311および312は、共振器10から共振器10外に導かれた光の実質的な部分を分離する。ビーム分割装置311および312は、入力ビームおよび出力ビームの両方にとって低損失であるようにされることが好ましく、これはファラデー回転子のような不可逆偏光回転装置を必要とし得る。偏光子306および308は、共振器10内を循環する光の望まない変更モードを低減するために用いられる。より少ない素子の使用はコストを低減するので、CWビームおよびCCWビームで光学素子を共有することが好ましい。また、光学素子を共通することは、高レベルのRFOGの対称性に寄与し、これは性能を高める。
【0040】
上述の共振器構成は透過モードに関して対称性があり、および/または共振器空洞内で、2つの結合素子だけを用いる(ミラー、部分反射器、または部分透過且つ部分透過装置)。共振器は、光波の伝播方向が反対であるが、CW光およびCCW光の光学通路が実質的に同一であるので、対称性を備える。対称性の共振器構造は、回転速度に誤差となって現れるバイアス誤差を相殺しやすくし、ジャイロバイアスの不安定性を減少させる。また、対称性構造により、共振器キャビティ光学系が互いに直線上に並ぶようになり、これは、共振器内のアライメントの困難性を低減し、環境変動への感度を低下させる。さらに、対称性の構造は、ジャイロの性能および製造しやすさを向上させ、さらに、部品数を低減させて、コストを低減させ、また、装置の形状因子(たとえばサイズ)を低減させる。
【0041】
本発明の好ましい実施形態が図示および説明されたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な変更が可能である。案内光学素子および結合光学素子は、新しい実施形態を構成するために、上述の実施形態間で交換可能であると考えられる。たとえば、8ポート案内光学素子200を結合光学素子60に用いることができる。結合光学素子70を案内光学素子120および130に用いることで、他の実施形態を構成することができる。他の実施形態として、案内光学素子20および30を結合装置60に用いることができ、または結合光学素子40および50を案内光学素子120および130に用いることもできる。また、2つの光源を用いることもでき、各光源は少なくとも1つの光ビームを発する。従って、本発明の範囲は、好ましい実施形態の開示に限定されない。本発明は、添付の特許請求の範囲により決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング共振器センサ(100、300、700、900)であって、前記リング共振器センサは、
第1検出器(11)および第2検出器(13)と、
リング共振器(10)と、を有し、
前記リング共振器(10)は、第1端部(81)および第2端部(82)を備えるコイル(80)と、前記コイルに光学的に相互作用する装置と、を有し、
前記装置は、第1素子(40)と、
第2素子(50)と、を有し、
前記装置は、光源(8)からの光を受け取り、且つ、前記コイル(80)の前記各端部からの光を受け取るように構成され、
前記第1素子(40)は、前記光源(8)から受け取る光の少なくとも一部を前記コイル(80)の前記第1端部(81)に導き、光を前記コイル(80)内を通って第1方向に伝播させるように構成され、
前記第2素子(50)は、前記光源(8)から受け取る光の少なくとも一部を前記コイル(80)の前記第2端部(82)へ導き、光を前記コイル(80)内を通って第2方向に伝播させるように構成され、
前記第1素子(40)は、前記コイルの前記第1端部(81)から受け取る光の少なくとも一部を前記第2素子(50)へ導き、前記第2素子(50)から受け取る光の少なくとも一部を前記コイルの前記第1端部(81)に導き、また、前記コイルの前記第1端部から受け取る光の少なくとも一部を前記第1検出機(11)へ導く、ように構成され、
前記第2素子(50)は、前記コイルの前記第2端部(82)から受け取る光の少なくとも一部を前記第1素子(40)へ導き、前記第1素子(40)から受け取る光の少なくとも一部を前記コイルの前記第2端部(82)に導き、また、前記コイルの前記第2端部から受け取る光の少なくとも一部を前記第2検出器(13)へ導く、ように構成される、リング共振器センサ。
【請求項2】
請求項1に記載のリング共振器センサ(100、300、700、900)であって、前記装置はさらに、第3素子(20)および第4素子(30)を有し、前記第3素子(20)は、前記第1素子(40)から受け取る光を前記第1検出器(11)に導き、前記光源(8)からの光を前記第1素子(40)に導き、前記光源(8)から受け取る光が前記第1検出器(11)に入るのを防止するように構成され、前記第4素子(30)は、前記第2素子(50)から受け取る光を前記第2検出器(13)に導き、前記光源(8)からの光を前記第2素子(50)へ導き、前記光源(8)から受け取る光が前記第2検出器(13)に入るのを防止する、ように構成される、リング共振器センサ。
【請求項3】
請求項2記載のリング共振器センサ(100、300、700、900)であって、前記第1素子(40)および前記第2素子(50)は、単一のマイクロ光学装置(60)内に統合される、リング共振器センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−271308(P2010−271308A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−108167(P2010−108167)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】