説明

小型弾性ロール

【課題】軸の外周にスポンジ、シリコンゴムなどを円筒状に装着したものは使用を続けていると表面の磨耗や損傷が生じコンタミが発生し、耐久性が低い。また、外径に金属パイプを使用したものは外径が太くて、適用できるところが少なかった。
【解決手段】薄肉金属パイプと、該薄肉金属パイプの軸芯を通り、それより細くて長く中央に軸直角に貫通孔を有する中空軸と、該薄肉金属パイプ両端部の内径と該中空軸との間に設けた二個のシールリングと、該中空軸の一方の端に敷設された気体送気口バルブと、該中空軸の他方の端に敷設した安全弁とで機密空間を構成し、該気体送気口バルブを通して外気から該機密空間に気体またはわずかな液体を含む気体を送気して大気圧以上の圧力で封入封入する弾性ロールを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂製フイルムや紙の搬送など円筒表面が弾性を要するロールを使用する機械分野に適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂製フイルムの製造工程内の搬送や印刷機・OA機器内の紙の搬送用ロールなど円筒表面が弾性を要するロールは、軸の外周にスポンジ、シリコンゴムなどを円筒状に装着したものがある。
【0003】
また、特開2006−207790には薄肉金属パイプと、該薄肉金属パイプの中心を通り該薄肉金属パイプより長い軸と、該薄肉金属パイプの両端部に該中空軸に固定された2個のフランジと、該フランジ外径部と該薄肉金属パイプの内径との間にシールリングと、該シールリングと併設した該薄肉金属パイプの内径部と該フランジ外径部に接着したリング状弾性体と、該フランジ側面に気体注入口のバルブとからなり内部に少量の粘性の高い液体と、大気圧以上の圧力を封入した弾性ロールがある。
【特許文献1】特開2006−207790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来使用されている軸の外周にスポンジ、シリコンゴムなどを円筒状に装着したものは使用を続けていると表面硬度が低いために表面の磨耗や損傷が生じやすくコンタミが発生する。
これを防ぐため、樹脂の硬度を上げ表面強度を上げると、ロールの半径方向の弾性が硬くなり弾性ロールとしての特性が限定される。また、樹脂材料は熱伝導が低いため押しつけて変形使用するとゴムの内部摩擦によりロール内に熱がこもりやすくこれが耐久性を低めている。
【0005】
樹脂製フイルムの製造用ロールとして使用する場合は製造するフイルムの種類によりロールの外径表面に鏡面特性を必要性とする場合があるが、軸の外周にスポンジ、シリコンゴムなどを円筒状に装着したものは、その特性を持たせることができない。
【0006】
これらの特性を補うものとして、特開2006-207790があるが、これは表面硬度が高く表面の磨耗や損傷が生なくコンタミの発生も防ぐことができる。また、円筒表面が金属なので硬く耐久性もあり、ロールの外径表面に鏡面特性を適用することもできる。しかしながら、薄肉金属パイプと軸との間にフランジ部と気体注入口のバルブなどがあるため小径化することが困難である。
また、構造が複雑で製造コストが高い課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の弾性ロールは、厚さ0.02〜0.3mmの薄肉金属パイプと、該薄肉金属パイプの軸芯を通り、それより細くて長く中央に軸直角に貫通孔を有する中空軸と、該薄肉金属パイプ両端部の内径と該中空軸との間に設けた二個のシールリングと、該中空軸の一方の端に敷設された気体送気口バルブと、該中空軸の他方の端に敷設した安全弁とで機密空間を構成し、該気体送気口バルブを通して外気から該機密空間に気体またはわずかな液体を含む気体を大気圧以上の圧力で封入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明はコンタミの発生を防ぎ、円筒表面を金属としたので硬く耐久性もあり、薄肉金属パイプと軸との間にあったフランジ部を無くし、気体注入口のバルブなどをロールの軸芯部に内蔵したため小径化することができたため製品の適用分野が広がり、また安価な製品とすることが出来た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を2つの実施例について図面を使って詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は本発明の断面図で、本発明の側面図2のA−A断面を示している。
図1において1は本発明の小型弾性ロールである。2は薄肉金属パイプで材質はステンレスやニッケルなど板厚0.02〜0.3mm程度のシームレスシームレスパイプ、またはシームレスパイプ相当の強度を有するもので、薄肉なので極めて柔軟性に富んでいる。
この薄肉金属パイプの外径表面は小型弾性ロール1を適用する機械の要求する特性に合わせ鏡面とすることも出来るし、ブラストなどの手法により凹凸のある面とし搬送が必要とする摩擦係数を向上した仕様とすることもできる。
【0011】
3は中空軸右で図における左端外径には雄ねじ3aが切られている。4は中空軸左で右端の内径には雌ねじ4aがきられている。この中空軸右3と中空軸左4とのそれぞれにきられた雄ねじ3aと雌ねじ4aはゆるみ防止剤などを塗布しっかりとしめこまれ一本の中空軸となる。この一本となった中空軸の両端の一番細くなったところ3b、4bには図示されていないがベアリングが挿入され小型弾性ロール1が適用される機械本体に支持される。
【0012】
中空軸右3は右端部から貫通孔3cが孔設され、その奥にはテーパー雌ねじ3dがきられている。該テーパー雌ねじ3dには一般に広く市販されている気体送気口バルブ5のテーパー雄ねじ5aが密封を確保するため図示はしてないがシルーテープを間に巻いて6角部分5bで締めることにより螺設されている。
【0013】
6は一般に広く市販されている安全弁で、その左端部近くに追加工により設けられたOリング用溝6aにはめられたゴム製Oリング7により、中空軸左4の内筒部4cに締め代を持って外気とは機密を確保できるように挿入されている。
中空軸左4には軸端部から外気との貫通孔4dが孔設されており、中央部付近にもセンター部空間8と円筒部空間9とに通ずる孔4eが孔設されている。
【0014】
安全弁6は所期の圧力より大きな内圧を受けると6bの弁が図1において左に移動してセンター部空間8から内部の気体が中空軸左4の貫通孔4dを通して大気に放出される。
なお、図1において気体送気口バルブ5と安全弁6の部分は断面ではなく、この部分のみは普通の外見図で示めされている。
【0015】
10はシールリングで円筒部空間9の気体の圧力を薄肉金属パイプ2と中空軸右3、中空軸左4との間で保持している。シールリング10のシールリングリップ10aは内圧により薄肉金属パイプ2に拡径されるような形で押し付けられており、小型弾性ロール1が図にはない機械に取り付けられ相手のロール或いは平面により変形を受け回転してもそれに柔軟に追従し内部の圧力が漏れない構造となっている。
【0016】
11はバックアップリングでシールリング10が内圧により変形することを防ぐとともに、それに接して設けられているC型止め輪12により内部に圧送される空気圧によりシールリング10が外部に外れる事を防いでいる。C型止め輪12はその内径が中空軸右3、中空軸左4に加工されたC型止め輪用溝3e,4fにより軸方向に移動しないように勘合されている。また、バックアップリング11は金属で出来ており小型弾性ロール1が図にはない機械に取り付けられ相手のロール或いは平面により変形を受けてもバックアップリング11の外径がストパーの役目をはたしており、薄肉金属パイプ2の過剰な変形を受けることを防いでいる。
【0017】
13はリング状弾性体で外径は薄肉金属パイプ2の内径に接着されており、その内径は中空軸右3、中空軸左4の軸部に接着されており薄肉金属パイプ2の軸方向にずれていくことを防いでいる。
14はスペーサリング、15はC型止め輪で中空軸右3、中空軸左4の溝3f、4gに勘合しておりリング状弾性体13と中空軸右3、中空軸左4の軸部と軸方向の移動を接着方法と二重の方法で防止している。
なおシールリング10、バックアップリング11、C型止め輪12、リング状弾性体13、スペーサリング14、C型止め輪15はいずれも左右対称に適用されているので、部分的には片側だけの説明に省略されている。
【0018】
更に、リング状弾性体13の機能は、両端を図には無いベアリングで支持された、中空軸右3と中空軸左4との一体となった軸芯に対し、薄肉金属パイプ2が外部ロールなどから、力を受けた場合偏芯することを防止し、外部ロールとの接触幅を確保することにある。
【0019】
即ち、薄肉金属パイプ2は内部から圧力をかけると、より真円になろうとした円筒形状を保とうとする。このためこのロールを別のロールあるいは平面で接触すると、リング状弾性体13が無い場合、その接触部は薄肉金属パイプ2とシールリング10が接触部で凹むのではなく、シールリングリップ10aは、薄肉金属パイプ2に張り付いた状態となり、薄肉金属パイプ2と共に円筒形状を保ちながら、軸に対し偏芯し接触部の幅はそれほど広くはならない。
【0020】
このため、小型弾性ロールが、別のロールあるいは平面で接触したときの薄肉金属パイプ2の偏芯防止機能に対しては、シールリング10がその機能を損なわない程度の柔らかいリング状弾性体13をシールリング10と並列に設置することにより,薄肉金属パイプ2の偏芯は少なくなり幅広くピークのない面圧分布を有する弾性ロールとなっている。
リング状弾性体13は薄肉金属パイプ2と中空軸右3と中空軸左4との一体となった軸芯に対し、偏芯が許容され柔らかいロールタッチとしたい場合には無くてよい適用条件がある。
【0021】
また図には示してないが、本発明のロール内部には体積比で数%の機械油などを封入し、さらに空気などの気体を所期圧力で封入してある。シールリング材はその成分により気体の透過性に差があり、必要に応じて材質を選択するが、気体の透過性をより防ぐためには、気体は分子量が小さいのでゴムなどの分子を通してわずかずつ洩れるため、機械油などをシールリングの内面に膜が出来る程度に封入し気体より分子量が大きい液体で内部気体の漏れを防ぐようにしている。
【実施例2】
【0022】
図3は本発明の実施例2の小型弾性ロール20の断面図である。21は軸でその適用される小型弾性ロール20の両端21aの部分が実施例1の場合よりも軸の径が太く、内部に気体送気口バルブ機構と安全弁の機構を内蔵した構造となっている。
【0023】
以下は気体送気口バルブ機構あるいはチェックバルブ機構とも呼ばれる構造を説明する。軸21は段差21bがあり気体送気口バルブ機構を組み込んでスナップリング溝21cが切られており、中央に外径部の空間につながる孔21dが孔設されている。
22は気体送気口バルブで弱い力のスプリング23でその頭部半球部23aが弁座リング24の円錐面24aに押し付けられて内部空間25と外部空間とを遮断している。弱い力のスプリング23の他方はスプリングケース26で反力を支持しておりこの反力は軸21の段差21bで止められている。弁座リング24の外径にはOリング用の溝24cにOリング27が挿入されており内部空間25と外気への空気漏れを防止しており、弁座リング24を挟んでC型留め輪28で軸21の溝21cで内部気圧により飛び出すことを防止している。
スプリングケース26の中央には孔26aが孔設されており気体送気口バルブ22の軸部のガイドとなっている。気体送気口バルブ22の軸部には気体の通路22bがキー溝状に切られており、軸21の右端からエアが送気されるとエアは弁座リング24のセンターに孔設された孔24bを通り気体送気口バルブ22の半球部22aを押して弱い力のスプリング23を撓め、弁座リング24の円錐面24aとの隙間を通り、スプリング23の隙間と気体送気口バルブ22の通路22bを通り内部空間25に送気される。更にエアは軸21に孔設された孔21dを通り円筒部空間29を満たす。
【0024】
次に安全弁機構を説明する。安全弁機構はセットスプリング30以外は気体送気口バルブ機構と同じ構造である。セットスプリング30は小型弾性ロール20
の要求される圧力特性にセットスプリング30のセット荷重をセットすることにより実施例1と同様過剰圧力を防ぐ目的を達成することができる。
以上説明した実施例2は上記説明以外の部分は実施例1とおなじなので省略する。
【0025】
なお、実施例1も実施例2も封入する気体の圧力が、これを封入する容器部分の強度が十分余裕のあり、封入圧力管理の行われた製法で組み立てられた場合、中空軸左4に貫通孔4dを孔設しないで、安全弁を省略することもできる。
【0026】
以上説明してきたように、本発明はロール外径部に薄肉金属パイプを適用しており、表面硬度が高いために表面の磨耗や損傷が生じ難くコンタミが少ない。
また、ロール外径部に薄肉金属パイプを適用しているため耐久性もあり、ロールの外径表面は目的に応じて、鏡面に研磨仕上げとすることも出来るし、ブラスト加工を適応することにより目的に応じた凹凸の梨地肌とすることも出来る。
【0027】
更に、薄肉金属パイプと、該薄肉金属パイプの中心を通りそれより長い軸と、該薄肉金属パイプの内径両端部に該中空軸との間に設けた2個のシールリングとで機密空間を構成し、特開2006-27790にはある構成要素のフランジ部を削除し、外部より螺設していた気体送付バルブや安全弁を内蔵した機構としたため、薄肉金属パイプの外径を小さくすることが出来た。また、製品に使われている部品も減らすことが出来るので製品コストを下げることができた。
【0028】
また、気体送気口バルブと安全弁を軸の内部に設けたため、特開2006-27790ように気体注入口バルブや安全弁の張出部分が無く、一般に従来から広く使用されている軸の外周にスポンジ、シリコンゴムなどを円筒状に装着したロールと、外形的に軸心の両側に開けられた孔以外はほぼ同じような形状とすることが出来たため、これらのロールに代替適用できる。
【0029】
本発明のロールは半径方向の剛性を中に封入する気体の圧力により変化させることができるため、求める製品の特性によりロールを変えなくても、中に封入する気体の圧力を変化させることにより多様な製品に対応することができる。
【0030】
さらに、本発明のロール内部には体積比で数%の機械油など空気より分子量の高い液体を封入したため、シール部が回転のたびに変形を受けても気体の漏れを防げるものとなっている。この封入されている気体により、外部より接触するロールなどとの接触圧をピークのないフラットな特性を得られるものとしている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例1の断面図
【図2】本発明の左からの側面図
【図3】本発明の実施例2断面図
【符号の説明】
【0032】
1 小型弾性ロール
2 薄肉金属パイプ
3 中空軸右3
4 中空軸左4
5 気体送気口バルブ
6 安全弁
11 シールリング
13 リング状弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ0.02〜0.3mmの薄肉金属パイプと、該薄肉金属パイプの軸芯を通り、それより細くて長く中央に軸直角に貫通孔を有する円筒形の中空軸と、該薄肉金属パイプ両端部の内径と該中空軸との間に設けた二個のシールリングと、該中空軸の一方の端に敷設された気体送気口バルブと、該中空軸の他方の端に敷設しためくら栓とで機密空間を構成し、該気体送気口バルブを通して外気から該機密空間に気体またはわずかな液体を含む気体を大気圧以上の圧力で封入することを特徴とする弾性ロール。
【請求項2】
該薄肉金属パイプの端部付近の内径部と該中空軸を接着したリング状弾性体を該シールリングと併設し、弾性ロールが他のローラまたは平面に接触しながら回転するときに生じる該中空軸に対する該薄肉金属パイプの偏芯を抑制したことを特徴とする請求項1に記載の弾性ロール。
【請求項3】
該中空軸は、該薄肉金属パイプ内部で2つの中空軸に分離して形成され、一方の中空軸には雄ねじ、他方の中空軸には雌ねじが切られており、堅く締めこまれて一本の軸の機能を持たせたことを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の弾性ロール。
【請求項4】
該めくら栓を取り除き、そこに安全弁を設置して、該安全弁を通して該機密空間の過剰圧力を低下させることを特徴とする請求項1または請求項3のいずれかに記載の弾性ロール。
【請求項5】
該めくら栓を取り除き、そこに安全弁を設置して、該安全弁を通して該機密空間の過剰圧力を低下させることを特徴とする請求項2に記載の弾性ロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−149461(P2011−149461A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9698(P2010−9698)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(599124426)株式会社ディムコ (11)
【Fターム(参考)】