説明

小型自動セルカウンター

液体懸濁液中の生体細胞が、該懸濁液のイメージの焦点をデジタルイメージングセンサーに合わせる自動セルカウンターにおいて計測される。該デジタルイメージングセンサーは、各々の面積が2 x 2 μm以下である画素を少なくとも4,000,000画素を含み、少なくとも3 mm2の視野を撮像する。このセンサーは、光路の方向を全体として変化させない状態で垂直に配置された際、カウンターが光学部品を高さ20 cm以下の光路中に圧縮することを可能にする。そして機器全体の床面積は、300 cm2よりも小さい。光源の活性化、センサーイメージの自動焦点調節、およびデジタル細胞計測は全て、単にサンプルホルダーを機器に挿入することにより起動される。懸濁液は、セルカウンター中で適切な配向性を担保するように成形されたスライドの形態をとるサンプルチャンバーの中に配置される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年8月31日付で出願された米国仮特許出願第61/238,534号の優先権の恩典を主張し、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
1.発明の分野
本発明は概して、液体中に懸濁した生体細胞の計測のための血球計算法およびシステムの分野に属する。本発明の関心は、自動細胞計測システムにある。
【背景技術】
【0003】
2.先行技術の記述
白血球および赤血球の計測を含む細胞計測は、多岐の臨床および研究手順における関心の的であり、それは様々な疾患または異常状態の診断において有益であり、またそのような疾患または状態に対する治療を受けている患者のモニタリングにおいても有益である。細胞は以下の工程より手動で計測される:サンプルの既知の希釈液を、互いに対して十分に近い(典型的にはおよそ100ミクロンの間隔を有する)光学的に透明なプレートの間に配置し、細胞を単一層に成形する工程;指定された寸法の層の一領域を既知の倍率に拡大する工程;および、拡大された領域中の細胞を、顕微鏡を通じて計測する工程。手動の細胞計測は、ユーザーの負担を減らすため、計測領域中に刻まれた格子をしばしば含む。そのような格子およびその使用手順に関する記載は、2008年2月12日に発行された、Qiu, J.による米国特許第7,329,537 B2号の「Micro-Pattern Embedded Plastic Optical Film Device for Cell-Based Assays.」(特許文献1)に見られる。それがどのように為されようとも、手動の細胞計測は、退屈であり、ユーザーのエラーを非常に受けやすい。計測には通常、計測領域中の細胞数を減らすため、サンプルを高度に希釈した液を利用することにより促進されるが、計測の正確性は、計測される細胞の割合の減少に伴い、低下する。
【0004】
細胞計測手順の自動化は、デジタルイメージングシステムの使用により可能となった。このようなシステムの一例は、イメージJ(ImageJ)、すなわちJavaに基づくイメージ処理プログラムであり、それはアメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health)で開発され、Collins, T.J.,「ImageJ for microscopy」; BioTechniques 43 (1 Suppl.): 25-30 (July 2007)(非特許文献1)により報告された。血液学システムにおけるイメージJの使用は、Gering, T.E. and C. Atkinson,「A rapid method for counting nucleated erythrocytes on stained blood smears by digital image analysis」; J. Parasitol. 90 (4): 879-81 (2004)(非特許文献2)により報告された。自動細胞計測の更なる開示は、2008年8月12日に発行されたChang, J.K.らによる米国特許番号第7,411,680 B2号の「Device for Counting Micro Particles」(特許文献2)、および2006年10月5日に公開されたChang, J.K.らによる米国特許出願公開番号第2006/0223165 A1号の「Device for Counting Cells and Method for Manufacturing the Same」(特許文献3)である。
【0005】
自動細胞計測システムは、それ自身、「サンプリングエラー」と一般に称されるものに起因する固有の統計的不確実性を含む。「サンプリングエラー」とは、自動計測が実行される領域を選択する際の固有のエラーを言う。現在利用可能な自動セルカウンターの制約の一つは、機器中の光学部品の制約を受けることで、細胞が計測される領域が、サンプルにより占められる全領域に比べて限られたサイズになってしまうことである。この制約は細胞数を制限し、計測される細胞数の減少に伴いエラーは増加するため、先行技術の典型的な機器は、許容できるレベルの正確性を達成するよう、長い光路若しくは広い床面積(機器が実験台上で占める表面積)、またはその両方を有するように構築される。これは、ユーザーにとって不都合をもたらし、特に、機器が細胞培養台において使用される際に顕著である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,329,537 B2号
【特許文献2】米国特許番号第7,411,680 B2号
【特許文献3】米国特許出願公開番号第2006/0223165 A1号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Collins, T.J.,「ImageJ for microscopy」BioTechniques 43 (1 Suppl.): 25-30 (July 2007)
【非特許文献2】Gering, T.E. and C. Atkinson,「A rapid method for counting nucleated erythrocytes on stained blood smears by digital image analysis」J. Parasitol. 90 (4): 879-81 (2004)
【発明の概要】
【0008】
本明細書は、ユーザーの介入が最低限で済むだけでなく、比較的小さな床面積および限られた高さをもって、非常に正確な細胞計測を実現する完全内蔵型の機器を開示する。細胞懸濁液は、サイズおよび寸法が大幅に多様であってもよい消耗サンプル容器中に配置される。この都合の良い例として、顕微鏡のスライドの外のり寸法と同様の外のり寸法を有する容器が挙げられる。従って、容器は、上記の米国特許出願公開番号第2006/0223165 A1号に記載の容器と、構造および寸法が類似していてもよい。米国特許出願公開番号第2006/0223165 A1号に記載の容器は、平坦で浅い内部チャンバーであって、その上部および底部で、プラスチックシートであってもよい平坦で光学的に透明なウインドウにより、サンプルのほとんどの細胞が一細胞分の深さの層を形成できる程度に十分に近接した間隔を有するように境されたチャンバーを少なくとも一つ有するものである。適当な入口および出口が容器に含まれてもよく、このことで、チャンバーは容易にかつ完全にサンプルで満たすことができる。容器は次いで機器中に配置され、そこで該容器は直線状の光路と交差する。本願明細書で用いられる「直線状」なる用語は、曲りを有さない、又は、レンズに起因する方向変化以外に光線の方向に変化を有さない道筋を意味する。容器は、スロットを通じて、光路中の指定された高さで機器に入り、以下に詳述するように、該機器は、本発明のある態様において、サンプルイメージに焦点を合わせる目的でサンプルの高さを自動的に調節する特徴を有する。ある態様は、サンプル容器を機器へ挿入した際に、機器の全機能の操作を開始させる特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本願明細書で開示されるコンセプトの遂行の一例を示す、細胞計測機器の斜視図である。
【図2】図1の機器の光学部品の略図である。
【図3】図1の機器の内部における光学部品の斜視図である。
【図4】図1の機器において使用するためのサンプルスライドを構成する二枚のプレートの大局的な分解図である。
【図5】図5Aは、図4のサンプルスライドの上側プレートの上面の図である。図5Bは、図4のサンプルスライドの上側プレートの下面の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
上側および下側の光学ウインドウは、それらウインドウ間で細胞懸濁液がサンプル容器中に保持されるものであり、十分に近接しているため、保持された懸濁液は薄いフィルムであり、その横向き寸法、すなわち露出される長さと幅は厚さよりも少なくとも一桁大きい。サンプルチャンバーの全露出領域(すなわち、横向き寸法)またはその横向きに寸法付けられた(laterally dimensioned)部分は、少なくとも約4,000,000 (400万)画素またはある態様において約4,000,000〜約10,000,000画素を含むデジタルイメージングセンサー上に投影される視野としての機能を果たす。各画素のサイズは、約2 x 2 μm (4 μm2)以下、またはある態様において約0.5 x 0.5 μm (0.25 μm2)から約2 x 2 μm (4 μm2)、および後者の一態様において、約1 x 1 μm (l μm2)から約2 x 2 μm (4 μm2)である。センサーにより撮像された視野は、少なくとも約3平方ミリメートル、しばしば約3 mm2から約10 mm2である。相補型金属酸化膜半導体(CMOS)は、この目的に有益なデジタルイメージングセンサーの一例である。これらパラメーターを満たすCMOSセンサーの例は、OmniVision Santa Clara, California, USAから入手可能なOV5620およびOV5632カラー撮像装置である。他の例も、Aptina Imaging, a division of Micron Technology, Inc., of San Jose, California, USAから入手可能である。カラーデジタルイメージングセンサーもまた使用できる。CMOSセンサーにより生成されたイメージ中の細胞を計測するためのイメージ処理は、上述したような既知のデジタル計測方法により達成できる。
【0011】
サンプルチャンバーのイメージは、光路に沿って、ある倍率で拡大される。その倍率は、しばしば約1.5から約6の範囲内の倍率、または約1.5から約3の範囲内の倍率、一例として約2の倍率である。これは、二枚のレンズのアクロマートアセンブリにより達成できる。このようなレンズアセンブリの一例は、サンプルに至近の35 mmの焦点距離のレンズ、センサーに至近の60 mmの焦点距離のレンズ、およびこれらレンズ間にあるアパーチャーである。従って、この例において、サンプルに至近のレンズとサンプル自身の距離は35 mmであり、センサーに至近のレンズと撮像装置自身の距離は60 mmである。この系の倍率は、二枚のレンズの焦点距離の比率であり、この場合において、60 mm/35 mm=1.7である。二枚のレンズはそれぞれ直径が例えば12.5 mmであってよく、かつアパーチャーは直径が6 mmであってよい。同一またはほぼ同一の結果を奏する他の直径および焦点距離のレンズも当業者にとって容易に明らかであろう。機器の床面積は、機器と、光路に垂直な平面上にある機器の支持基盤との大きな方により投影される領域として定義される。上述のとおり、機器は、領域において、小さな床面積、特に300 cm2よりも小さい床面積を有するように設計することができる。
【0012】
平坦なデジタルイメージングセンサーが用いられた時、負レンズがセンサー下方に位置づけられることで、すぐに光学シグナルを遮り、かつアクロマートレンズ対の焦点の像面湾曲を補正できる。この像面湾曲のタイプは、光学システムにおいて一般的であり、かつペツヴァル湾曲とも称される。例示的な態様において、直径6 mmで、マイナス18 mmの焦点距離を有するレンズが用いられる。レンズの厚さは様々であってよいが、最適には、視野を実質的に減ずることなく湾曲を補正するよう選択される。
【0013】
サンプルの照明は、機器の基盤において慣用の光源を用いること、および該光源とサンプルとの間にコリメーティングレンズを用いることにより達成できる。これら部品を用いることにより、サンプルはディフューザーを用いることなく徹照される。好ましい光源は、蛍光塗料を有する単一の白色発光ダイオード(LED)である。そのような部品の一例は、LUXEON(登録商標)Rebel White, part no. LXML-PWN 1-0050であり、Philips Lumileds Lighting Company, San Jose, California, USAから入手可能である。コリメーティングレンズの一例は、直径9 mmで、18 mmの焦点距離を有するレンズである。これらの寸法および先の段落の寸法を有することにより、機器は、サンプルからおおよそ35 mmの高さにあるアクロマートレンズ対および該アクロマートレンズ対からおおよそ60 mmの高さにあるセンサーを有するように、構築できる。おおよそ13 mmの厚さのアクロマートレンズ対を有することで、該サンプルと該センサーとの総距離はわずか108 mmの距離にすることができる。一般的に、機器の光路、すなわち本願明細書において、光源からCMOSまたは他のデジタルイメージングセンサーへと延びる部品の配置として定義されるものは、高さが20 cm以下であってよい。本発明の範囲内にある好ましい機器において、光学部品は、適合する計算(compliant counts)を用いて浮遊状態でハウジング内部に取り付けられる。これにより、機器が落ちたり若しくはその取扱いを誤ったり、または他の機器や装置の一部と衝突する時に起こりうるような、機器に衝撃が加わった際にも、該光学システムの損傷やずれを防ぐことができる。
【0014】
上述のとおり、サンプル容器(これ以降は、顕微鏡スライドとのサイズおよび形の類似性を考慮して、サンプルスライドと称する)は、スロットを通じて、機器に受け入れられる。該スロットは、アクロマートレンズ対の至近レンズから、該レンズの焦点距離と等しい距離にある光路上の地点に位置する。その好ましい態様において、機器は全体として30 cm以下の高さであり、上述のように所定の小さなサイズの画素を数多く用いるデジタルイメージングセンサーを使用することで、ユーザーが手動で快適に該スロットを挿入するのに十分な高さ、すなわち、機器が載っている台からユーザーの手を放すことができる高さにスロットを有する機器を構築する。従って、該スロットは機器の底から60 mm以上であってもよく、好ましくは底から70〜80 mmであってもよい。
【0015】
本発明の好ましい態様において、機器は、スライドの挿入後、スライドの高さを自動的に調節することにより、サンプルイメージのオートフォーカスを提供する。オートフォーカスの一手段として、イメージを隔ててセンサーの向かい側の区域のアレイ内にイメージコントラストを出力する、イメージプロセッサーチップの使用を含む。そのようなチップの一例は、Freescale Semiconductor MC9328MX21であり、Keil(商標)- an ARM Company, Plano, Texas, USAから入手できるし、他の例も当業者にとって明らかであろう。センサーアレイの特定の区域における、隣接する緑の画素同士の絶対的差異の合計は、イメージコントラスト値として用いることができ、最適焦点はイメージコントラスト値が最大値であるときに実現される。次いで、該焦点は、受け入れスロット内のスライドマウントに結合したギア付モーター、すなわち、回転するとスライドマウントを上方向または下方向に動かしイメージの焦点を変化させるモーターにより調節される。コントラスト値はモーターの様々な位置で検出され、検出後、該モーターは最大のコントラスト値を示す位置に戻される。機器の多くの態様において、このオートフォーカスは、15秒以内に起こる。
【0016】
機器に提供できる付属品として、品質管理、例えば、生存細胞および死滅細胞の計測の正確性ならびに適切に焦点を合わせる機器の能力を担保するための標準スライドがある。該標準スライドは、サンプルスライドと同様の外形寸法を有してもよいが、サンプルチャンバーの代わりに、該標準は暗色の点と環とがプリントされたアレイを有してもよく、該点はデジタルイメージングセンサーにおいて死滅細胞をシミュレーションし死滅細胞として検出され、該環はデジタルイメージングセンサーにおいて生存細胞をシミュレーションし生存細胞として検出される。
【0017】
本願明細書で記載されるコンセプトに関するある態様において、機器により発揮される機能は、オートフォーカスおよび細胞計測を含み、サンプルスライドを単に挿入するだけで起動される。この起動は、スロット内またはスロット内のスライドマウント上に設置された非接触光学反射センサーを包含することにより達成できる。適切なセンサーの一例は、赤外線ビームを放出し、該ビームからの反射シグナルを検出することによりセンサーアパーチャーのおおよそ1 mmの範囲内の物体を検出するものである。該反射シグナルは、スライドが完全に挿入される際に最大値まで上昇し、この高いシグナルはオートフォーカスおよび細胞計測メカニズムを起動する。この目的を果たすセンサーの一例は、QRE1113 Reflective Object Sensorであり、Fairchild Semiconductor Corporation, San Jose, California, USAから入手可能である。他の例も、当業者にとって明らかであろう。
【0018】
本願明細書に記載される特徴を具現化する機器に含むことのできる更なる特徴は、生体染色により染色される、サンプル中の細胞の自動検出である。生体染色は、死滅細胞を選択的に染色するものであり、そのような染色により染色される細胞と染色されない細胞との判別は、異なる色の画素により達成される。トリパンブルーは生体染色の一例であり、エオシンおよびヨウ化プロピジウムは他の例である。トリパンブルーは、青の光を伝え、赤の光を減衰させ、イメージセンサーにおける青および赤の画素の強度を比較することにより、機器は、生体染色により染色された細胞が存在するかどうか決定できる。他の染料も、それら染料自身に応じて適切に、同様の色の区別を提供すると考えられる。この自動検出特徴を包含するイメージ処理チップは、上述したものを含み、容易に入手可能である。該機器は、生存細胞のいかなる想定上の数え落としを排除するようにプログラム化されてもよく、これにより二以上の平面に焦点を合わせることで特に高度な正確性を以て生存細胞を検出できる。生存細胞と死滅細胞との間のコントラストは、照明帯域幅を制御する光学フィルターを使うことにより、または白色でなく特定の色のLEDのようなスペクトル的に狭い光源を選択することにより、更に増加させることができる。例えば、約20 nm帯域幅を有する585 nm光学フィルターは、照明を、最大吸収波長586 nmのトリパンブルー染料と一致させるために使用できる。サンプルをこのフィルターを通じて照らすと、死滅細胞はより暗く見える。
【0019】
本発明の範囲内の好ましい機器において、サンプル中の細胞計測の取得に寄与する機能は全て、機器のハウジング内に含まれ、従って機器の全操作は外付けの機械やコンピューターを用いずに達成できる。これら機能には以下が含まれる:サンプルスライドの高さを変化させ、細胞をバックグラウンドから識別するのに最善の焦点面を探す自動焦点調節;サンプルがトリパンブルーまたは他の生体染色で染色されたかどうかの決定;生体染色が検出された場合、生存細胞の数え落としを防ぐために各細胞に対して多重の焦点面上でスコア付けを行う多重焦点面上の分析;細胞懸濁液の使用量を決定するための統合希釈液カウンター;細胞の視覚イメージをディスプレイ上にユーザーの選択により生成する能力および細胞の詳細な目視検査のためのズームインする能力;ならびに、これら結果をUSBフラッシュドライブまたは感熱式プリンタもしくは他の外付けプリンタにエクスポートする能力およびユーザーによる選択。これら機能は全て、サンプルスライドを単に挿入するだけで上述の非接触光学反射センサーを介して起動される。多くの場合において、これらの機能の実行は30秒以内に完了する。
【0020】
本願明細書中の図は、上述の特徴の多くを含む機器を描写したものであり、本願明細書中に記載されたコンセプトの遂行の一例としての役割を果たす。
【0021】
図1は、自動セルカウンター機器11は実験台上で使用されると考えられることから、その立位を描写したものである。該機器の可視部は、ハウジング12、支持基盤13、ディスプレイスクリーン14、コントロールパネル15、およびサンプルスライド17の挿入のためのスロット16である。ディスプレイスクリーンは細胞計測分析の進行を表示し、実行中の機器の機能を同定し、ならびに、様々な機能およびサンプルスライド中の細胞のイメージ表示に関してユーザーに選択肢を与える。
【0022】
図2は、サンプルスライド17が光路に位置づけられた状態の、図1の機器の内部における光路の部品を描写したものである。サンプルスライド17は水平であり、光源としての役割を果たすLEDボード22の上方に存在する。コリメーティングレンズ23は、LEDからの光線を、該光線がサンプルスライドに近づく際、平行にする。アクロマートレンズ対24は、サンプルスライド17とセンサー25との間に位置づけられている。アクロマートレンズ対の二枚のレンズ26および27は、アパーチャー28によって隔てられている。フィールド平坦化レンズ29は、センサー25のすぐ下方に位置づけられている。
【0023】
図3は、主要な光学アセンブリを描写し、サンプルスライド17が部分的に挿入された状態のスライドマウント31、LEDボード22、照明(コリメーティング)レンズ23、スライドの高さを調節しイメージの焦点を合わせるためのギア付モーター32、およびCMOSセンサーボードを受け入れるためにフィッティング34中に終点を有するイメージングレンズ管33を示したものである。該図において、他にも、機器の機能を制御し、かつモーター32を制御するためのモーター駆動チップを含む、主要なプリント回路基板35が示されている。該基板35はハウジングの内部に存在し、図中の該基板の位置は、光学アセンブリに対する位置を示している。
【0024】
先述の図の機器において用いられるためのサンプルスライドは、図4、5A、および5Bにおいて示されている。図4は斜視図であり、スライド17は互いに接合した二枚のプレート42および43から形成されるが、図中では分離した状態で示されている。スライドは、それぞれ「A」および「B」なる表示により示される二つのサンプルチャンバーを含み、これらチャンバーはスライドに沿って縦方向に互いに分離しており、かつ横方向にも互いにずれた状態である。該サンプルチャンバーの底面を形成する下側プレート43の領域44および45は、光学的に透明な材質から作られる。また、該下側プレート上のこれら領域の直ぐ上方にあり、サンプルチャンバーの上面を形成する上側プレート42の対応領域も、光学的に透明な材質から作られる。この態様における下側プレート43は、スライドに剛性を付与するために上側プレート42より厚く、上側プレート42が相対的に薄いことで、各サンプルチャンバーの上側ウインドウは下側ウインドウよりも薄くなる。そして実際には、上側プレート42の相対的な薄さはCMOSセンサーにおいて高度に焦点の合ったイメージを実現するために、可能な限り薄い。各サンプルチャンバーは、このように、スライドの中心面からずれており、下側プレート43に対してよりも、上側プレート42に対して近い。
【0025】
図5Aおよび5Bは、それぞれ上側プレート42の上面51および底面52の平面図であり、該底面52は下側プレート43に接合する面である。各サンプルチャンバーは、上側プレートの底面において凹部53(図5B)により規定され、これにより、各サンプルチャンバーの上部で光学的に透明なウインドウを形成する領域の厚さがさらに減ることになる。スライドの寸法の一例において、凹部53以外の領域における上側プレートの厚さは0.65 mmであり、下側プレートの厚さは1.00 mmであり、全体のスライドの厚さは1.65 mmである。凹部53は0.100 mmの深さであり、従って、手動血球計算機のための標準的なサンプルチャンバーの厚さである、0.100 mmの深さのサンプルチャンバーを形成する。各サンプルチャンバーは、二つの注入または排出ポート54および55を有し、これらのポートは、細長いチャンバーの対向する縦方向の二端のそれぞれの端に存在する。スライドの上部で開口しているオーバーフロー領域56、57、58、および59は、各サンプルチャンバーの四隅のそれぞれに位置づけられ、過剰のサンプルを収容し、それにより、サンプルチャンバーがサンプルで適切に満たされていることを保証する。
【0026】
各サンプルチャンバーは、下側プレート43に対してよりも、上側プレート42に対して近い。従って、スライドは、上側プレート42、それゆえ最薄の光学のウインドウが上部にある状態で、セルカウンターに適切に挿入された際に、最も良く機能する。スライドがこの配向性で挿入されることを担保するため、該スライドは、該スライドの対角線上に対向する二つの隅においてノッチ61および62を有するように形成される。セルカウンターの機能を起動するためにスライドが挿入される該セルカウンター中のスロットの内側面は、これらノッチに相補的な輪郭特徴を含む。従って、ノッチおよびスロットにおける相補的な輪郭は、ユーザーがスライドを上下逆さまに挿入すること、すなわち、上側プレート42が上部ではなく底部にある状態でスライドを挿入することを防ぐ。ノッチの対称配置はまた、二つのサンプルチャンバーの対称配置と相補的であり、スライドのどちらの端が最初に挿入されてもよい一方で、スライドが逆さまの位置(上下逆さま)に挿入されることは防止される。該スライドは、好ましくは消耗アイテムであり、従って、それは別々の時における独立した二つのサンプルに対する細胞計測測定のために用いてもよく、いったん両チャンバーが使用された際には、該スライドを廃棄し再び使わなくてもよい。
【0027】
変化を持たせてもなお適切な配向性を担保するサンプルスライドの構築に関する変化は当業者にとって明らかであろう。ノッチの配置、数、および形はこのように変化を持たせてもよいし、サンプルチャンバーの数およびそれらチャンバーの他に対する相対的な位置も変化を持たせてもよい。構築物の材料は大きく変化を持たせてもよいし、光学的に透明なウインドウを形成でき、サンプルに対し不活性であり、かつセルカウンターに挿入されるよう十分に硬ければ、いかなる材料であってもよい。ポリ(メチルメタクリレート)およびポリカーボネートは、使用することのできる材料の例である。他のものも当業者にとって容易に明らかであろう。同様に、プレートの接合も慣用手段によって達成できる。レーザー溶接および超音波溶接が例である。
【0028】
本明細書に添付の特許請求の範囲において、用語「一つの(a)」および「一つの(an)」は、「一つ以上」を意味するよう意図される。用語「含む(comprise)」ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」のような変形は、工程や要素の記載に先行する際、更なる工程や要素の追加が選択的でありかつ排除されていないことを意味するように意図されたものである。本明細書中で引用された全ての特許、特許出願、および他の刊行物は、その全文が参照により本明細書中に組み入れられる。本明細書中で引用されたいかなる刊行物またはいかなる先行技術全般と本明細書における明確な教示との間のいかなる齟齬の解消にあたっても、本明細書の教示が優先されることが意図される。これは、単語または用語に関する当該技術分野において理解された定義と、同じ単語または用語について本明細書において明確に提示された定義との齟齬を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部品と、サンプルスライドを受け入れるためのサンプルマウントと、該光学部品および該サンプルマウントを保持するハウジングとを備える自動セルカウンターであって、
該光学部品が、光源と、デジタルイメージングセンサーと、光を該光源から該サンプルマウントを通って該デジタルイメージングセンサーへ向けるように位置づけられたレンズとを備え、
該光学部品が、直線状の光路に配置され、かつ細胞懸濁液を含むサンプルスライドが該サンプルマウント中に取り付けられた時に該細胞懸濁液のイメージが該デジタルイメージングセンサーに投影されるように配置され、
該デジタルイメージングセンサーが、少なくとも約4,000,000画素を含み、かつサンプルマウントにおける少なくとも3 mm2の視野を撮像し、各画素が2 x 2 μm以下の面積である、
自動セルカウンター。
【請求項2】
デジタルセンサーが約4,000,000から約10,000,000画素を含み、各画素が約0.5 x 0.5 μmから約2 x 2 μmの面積であり、かつイメージングフィールドが約3 mm2から約10 mm2である、請求項1記載の自動セルカウンター。
【請求項3】
光路が垂直に方向付けられており、ハウジングが少なくとも該ハウジングと同じ幅の支持基盤に取り付けられており、ハウジングおよび支持基盤がそれぞれ最大で300 cm2までの横向き領域を占め、かつ光路が最大で20 cmまでの全高を有する、請求項1記載の自動セルカウンター。
【請求項4】
デジタルイメージングセンサーが、イメージの隣接領域間のコントラスト値を生成する手段を含み、サンプルマウントが、光路に沿って調節可能な高さであり、セルカウンターが、イメージに焦点が合うまで、前記コントラスト値に応じて高さを自動調節するための手段をさらに備える、請求項1記載の自動セルカウンター。
【請求項5】
視野内の細胞を計測するデジタル撮像装置をさらに備える、請求項4記載の自動セルカウンター。
【請求項6】
サンプルマウントの高さの自動調節およびデジタル撮像装置が、サンプルスライドを該サンプルマウントに挿入した際に自動で起動される、請求項5記載の自動セルカウンター。
【請求項7】
デジタルイメージングセンサーが平坦であり、レンズが、該デジタルイメージングセンサーにおいて焦点フィールドを有するアクロマートレンズ対を含み、かつ自動セルカウンターが該焦点フィールドの湾曲を補正するための手段をさらに備える、請求項1記載の自動セルカウンター。
【請求項8】
焦点フィールドの湾曲を補正するための手段が、デジタルイメージングセンサーに隣接した負レンズである、請求項7記載の自動セルカウンター。
【請求項9】
光源が、生存細胞と死滅細胞とを判別するイメージングセンサー中にイメージを生成するためにスペクトル的に限定されている、請求項1記載の自動セルカウンター。
【請求項10】
デジタルイメージングセンサーがカラーデジタルセンサーである、請求項1記載の自動セルカウンター。
【請求項11】
支持基盤が表面にあり、ハウジングが30 cm以下の高さであり、かつサンプルマウントが前記表面より少なくとも6 cm上方にある、請求項3記載の自動セルカウンター。
【請求項12】
サンプルマウントに取り付けられる寸法であり、かつ生存細胞および死滅細胞をシミュレーションするよう表面にイメージがプリントされた、品質管理スライドをさらに備える、請求項1記載の自動セルカウンター。
【請求項13】
以下を備える、細胞懸濁液中の細胞を計測するためのサンプルスライド:
光学的に透明である上側および下側のウインドウにより境された内部チャンバーを有する平坦プレート;および
該平坦プレートを細胞計測機器内へ、上側ウインドウが該機器内で選択された方向に向くような配向性で導くための、該平坦プレート中のオリエンテーションノッチ。
【請求項14】
上側ウインドウが下側ウインドウよりも実質的に薄い、請求項13記載のサンプルスライド。
【請求項15】
第一および第二の内部チャンバーを有する単一の平坦プレートを内部に備えるサンプルスライドであって、
該内部チャンバーが、該平坦プレートにおいて互いに対して横向きに位置し、かつそれぞれが光学的に透明な上側および下側のウインドウを有し、
該単一の平坦プレートが、該平坦プレートを該細胞計測機器内へ、光学的に透明な上側ウインドウが機器内で選択された方向に向くような配向性で導くための第一および第二のオリエンテーションノッチを備える、
請求項13記載のサンプルスライド。
【請求項16】
以下の工程を含む、細胞懸濁液中の細胞を計測するための方法:
(a)細胞懸濁液のアリコートをサンプルスライドの内部チャンバー中に設置して、該チャンバー中に該懸濁液のフィルムを形成する工程;
(b)該フィルム内にある少なくとも3 mm2の視野のデジタルイメージを、少なくとも4,000,000画素を含むデジタルイメージングセンサー上に作成する工程であって、
各画素が、2 x 2 μm以下の面積であり、
前記作成する工程が、
該サンプルスライドをサンプルマウント上に挿入すること、および
該サンプルマウントを、光源と、デジタルイメージングセンサーと、光を該光源から該サンプルマウントを通って該デジタルイメージングセンサーへ向けるように位置づけられたレンズとを備える光学部品から形成される直線状の光路中に位置づけること
により為される、工程;ならびに
(c)該デジタルイメージ中の細胞をデジタル方式で計測する工程。
【請求項17】
デジタルセンサーが約4,000,000から約10,000,000画素を含み、各画素が約0.5 x 0.5 μmから約2 x 2 μmの面積であり、かつイメージングフィールドが約3 mm2から約10 mm2である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
工程(b)が、サンプルマウントを動かすことによるデジタルイメージの自動焦点調節を含む複数の機能により実行され、
アリコート中に生体染色が存在しているかどうか検出すること、生体染色が検出された場合にサンプルスライドの内部チャンバー内の複数の焦点面のデジタルイメージを作成すること、およびデジタルイメージングセンサー上に形成されたイメージを処理して該アリコート中の細胞計測を決定することが全て、ハウジングの内部で実行される、
請求項16記載の方法。
【請求項19】
光路が垂直に方向付けられており、サンプルマウントおよび光学部品が支持基盤に取り付けられたハウジング中に保持され、該支持基盤が少なくとも該ハウジングと同じ幅であり、該ハウジングおよび支持基盤がそれぞれ最大で300 cm2までの横向き領域を占め、かつ該光路が最大で20 cmまでの全高を有する、請求項16記載の方法。
【請求項20】
(a')イメージの隣接領域間のコントラスト値を自動で生成する工程、および該イメージに焦点を合わせるために該コントラスト値に応じて光路に沿った高さにサンプルマウントを自動で調節する工程をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項21】
工程(a')および(b)が、サンプルスライドをサンプルマウントに挿入した際に自動で起動される、請求項16記載の方法。
【請求項22】
デジタルイメージングセンサーが平坦であり、かつレンズが、該デジタルイメージングセンサーにおいて焦点フィールドを有するアクロマートレンズ対および該焦点フィールドの湾曲を補正するために位置づけられた負レンズを含む、請求項16記載の方法。
【請求項23】
光源が、生存細胞と死滅細胞とを判別するイメージングセンサー中にイメージを生成するためにスペクトル的に限定されている、請求項16記載の方法。
【請求項24】
細胞懸濁液を生体染色で処理し、それにより、生存細胞と死滅細胞とを判別するイメージングセンサー中にイメージを生成することをさらに含む、
請求項16記載の方法。
【請求項25】
デジタルイメージングセンサーがカラーデジタルセンサーである、請求項16記載の方法。
【請求項26】
工程(c)が、光学部品の焦点を内部チャンバー内にある複数の平面上に合わせることを含む、請求項16記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−503351(P2013−503351A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527068(P2012−527068)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/047143
【国際公開番号】WO2011/026029
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
【出願人】(507190880)バイオ−ラッド ラボラトリーズ インコーポレーティッド (25)
【Fターム(参考)】