説明

小旋回型掘削機の運転室

【課題】運転室の前方左側ピラー部に取り付けられるハンドレールを建設機械の旋回半径内に位置させ、且つハンドレールにより運転者の前方視界が妨げられることを防止し、さらに運転室への出入りが容易となるようにした小旋回型掘削機の運転室を提供する。
【解決手段】出入口を開閉するためのドアが取り付けられ、外部にハンドレール21が取り付けられる小旋回型掘削機の運転室2において、ハンドレール21は、運転室2の前方左側ピラー部20の外側面下側に固定され、建設機械の旋回半径内に位置する下部ハンドレール21aと、建設機械の旋回半径内に位置するように下部ハンドレールと非対称をなしながら延長形成され、ピラー部の外側面上側に固定される上部ハンドレール21bとからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転室への出入時に用いられるハンドレールを運転室の前方ピラー部に取り付けた運転室に係る。
【0002】
さらに詳しく説明すれば、運転室の前方左側ピラー部に取り付けられるハンドレールを建設機械の旋回半径内に位置させることによって、旋回作業時、周辺障害物との衝突を防止し、且つ、ハンドレールにより運転者の前方視界が妨げられることを防止し、さらに運転室への出入りが容易となるようにした小旋回型掘削機の運転室に係る。
【背景技術】
【0003】
掘削機のような建設機械は、大都市内での工事を始めとして狭小な道路など限られた工事現場で作業を行う場合、上部旋回体の旋回過程で建設機械の前方に装着のバケットなどの作業装置はもちろん、機械の後方に装着のエンジンルームが周辺障害物に衝突したり、又は運転室ドアの開閉動作時に外部構造物に突き当たったりする問題点を抱えていた。
【0004】
こうした問題点を勘案して運転室及び旋回体の旋回半径を小さく維持しながら作業を行えるように小旋回型機械が開発された。即ち、小旋回型機械は、作業時、作業装置との干渉を避けながらその移動軌跡内に収まるようにコンパクト化と共に、旋回時の安定性を確保することができるように運転室の出入口をスライディングドアで開閉するようになっている。
【0005】
運転室の構造面で有効空間を充分確保し得るように運転室の外側面及びスライディングドアは外側に向かって湾曲又は曲がるように形成される。
【0006】
運転室の前面部には、運転者の視界を確保し得るように前面ガラス窓が設けられ、該前面ガラス窓を介して前面の上方部の視界をより広く確保し、操作性の向上を図ると共に、作業装置の干渉を避けるために前方ピラー部は建設機械の後方に傾斜させられて形成されている(前方ピラー部の下端部を基準とする場合、前方ピラー部の上端部は建設機械の後方に傾斜させられるように形成される)。
【0007】
図1に示したように従来技術による小旋回型掘削機の運転室は、
運転室2の前方ピラー部20の外側面に取り付けられるコ字形状のハンドレール21が建設機械の旋回半径Rから離れて突出しているので、建設機械の旋回作業時、周辺障害物との接触により破損する不具合があった。
【0008】
前述した問題点を勘案し、ハンドレール21が旋回半径R内に収まるように取り付ける場合(図1に仮想線で示される)は、ハンドレール21がピラー部20から離れ、建設機械の右側方向(運転席の運転者を基準とする場合)に偏ることになるので、ハンドレール21により前方視界を妨げるような区間が生じ、安定性及び作業能率が低下するという問題点を有する。
【0009】
また、運転者がドアを開放し、運転室2から降りるとき、建設機械の右側方向に偏って取り付けられているハンドレール21の上端部を容易に把持することができなかったため、運転者にとって不便であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の実施例は、運転室に取り付けられるハンドレールを旋回半径内に位置させることにより、旋回作業時、周辺障害物などに接触することを防止できるようにした小旋回型掘削機の運転室に係る。
【0011】
また、本発明の実施例は、旋回半径内に位置するように取り付けられるハンドレールにより、運転者の前方視界が妨げられることを防止できるようにした小旋回型掘削機の運転室に係る。
【0012】
さらに、本発明の実施例は、運転者がドアを開放し、運転室から降りるとき、出入口側に近接して固定されたハンドレールの上端部を容易に把持することができるので、運転者に利便性を提供することができるようにした小旋回型掘削機の運転室に係る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の実施例による小旋回型掘削機の運転室は、
出入口を開閉するためのドアが取り付けられ、外部にハンドレールが取り付けられる小旋回型掘削機の運転室において、
ハンドレールは、
運転室の前方左側ピラー部の外側面下側に固定され、建設機械の旋回半径内に位置する下部ハンドレールと、建設機械の旋回半径内に位置するように下部ハンドレールと非対称をなしながら延長形成され、ピラー部の外側面上側に固定される上部ハンドレールとからなるものである。
【0014】
望ましい実施例によれば、前述した上部及び下部ハンドレールの何れか一方は棒状の直線区間を有するように形成され、上部及び下部ハンドレールの何れか他方は弧形状の曲線区間を有するように形成される。
【0015】
前述した上部ハンドレールは、運転室の出入口側に近接した位置に置かれるように取り付けられ、下部ハンドレールは、運転室の前方ピラー部から離れ、前面ガラス窓の前方に置かれないように取り付けられる。
【発明の効果】
【0016】
前述したように、本発明の実施例による小旋回型掘削機の運転室は、次のような利点を有する。
運転室の前方ピラー部に取り付けられるハンドレールを旋回半径内に位置させることによって、旋回作業時、周辺障害物との衝突により破損することを防止できる。
【0017】
旋回半径内に位置するようにハンドレールを取り付ける場合であっても、運転者の視界を妨げることがないので、安定性及び作業能率を高めることができる。
【0018】
運転者がドアを開放し、運転室から降りるとき、出入口側に近接して取り付けられているハンドレールの上端部を容易に把持することができるので、運転者に利便性を提供することができ、機械に対する高信頼性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来技術による建設機械用運転室の概略的な平面図である。
【図2】本発明の実施例による小旋回型掘削機のハンドレールが装着された運転室の要部斜視図である。
【図3】本発明の実施例による小旋回型掘削機のハンドレールが装着された運転室の正面図である。
【図4】本発明の実施例による小旋回型掘削機のハンドレールが装着された運転室の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の望ましい実施例について添付図面を参照して説明するが、これは、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が発明を容易に実施し得る程度に詳細に説明するためのものであって、これに本発明の技術的思想及び範疇が限られるものではない。
【0021】
図2ないし4に示したように、本発明の実施例による小旋回型掘削機の運転室は、
出入口を開閉するためのドアが取り付けられ、外部にハンドレールが取り付けられる小旋回型掘削機の運転室において、
ハンドレール21は、
運転室2の前方左側ピラー部20の外側面下側に固定され、建設機械の旋回半径R内に位置する下部ハンドレール21aと、建設機械の旋回半径R内に位置するように下部ハンドレール21aと非対称をなしながら延長形成され、前方左側ピラー部20の外側面の上側に固定される上部ハンドレール21bとからなるものである。
【0022】
前述した上部及び下部ハンドレール21a、21bの何れか一方は、棒状の直線区間(一例で上部ハンドレール21bが直線区間を有している)を有するように形成され、上部及び下部ハンドレール21a、21bの何れか他方は、曲線区間(一例で下部ハンドレール21aが曲線区間を有している)を有するように形成される。
【0023】
即ち、ハンドレール21は、建設機械の旋回半径R内に位置し、運転者の前方視界を妨げることがないように曲線区間を有する下部ハンドレール21aと直線区間を有する上部ハンドレール21bとが一体形につながれて形成される。
【0024】
前述した上部ハンドレール21bは、運転者が運転室2から離脱するとき、容易に把持することができるように運転室2の出入口側に近接した位置に置かれるように固定され、下部ハンドレール21aは、運転者の前方視界を妨げることがないように運転室2の前方左側ピラー部20から離して配置されることにより前面ガラス窓の前方に置かれないように固定される。
【0025】
前述したピラー部20は、運転者の前面上方部の視界を広く確保し得るように前方ピラー部20の下端部を基準として前方ピラー部20の上端部が建設機械の後方に傾くように形成される。
【0026】
これにより、下部ハンドレール21aは、旋回半径Rから外れない範囲内でピラー部20の外側面に近接して固定され、上部ハンドレール21bは、運転者が容易に把持することができるようにピラー部20の外側面から一定距離だけ突出する場合でも旋回半径4内に収まるようになっている。
【0027】
この際、下部ハンドレール21aと上部ハンドレール21bとからなり、運転室2の前方ピラー部に取り付けられるハンドレール21は、小旋回型掘削機の運転室又は非小旋回型掘削機の運転室、両方に取り付け可能であることは言うまでもない(添付図面に示された運転室は、技術内容の理解を助けるために一実施例として提供されたものである)。
【0028】
一方、運転室2の前方左側ピラー部20の外側面に、旋回半径Rから外れることなく、且つ、運転者の前方視界を妨げることがないように取り付けられる上部及び下部ハンドレール21a、21bからなるハンドレール21の構成を除いては、図1に示した運転室2の構成と実質的に同様に適用されるので、これらに対する詳しい説明は省略し、同じ構成要素には同じ図面符号を付する。
【0029】
以下、本発明の実施例による小旋回形掘削機の運転室の使用例について添付図面を参照して説明する。
図2ないし図4に示したように、運転者によりドアを運転室2の後方側に移動させる場合、開放位置に移動したドアは、運転室2の旋回半径内に位置することになる。これにより、工事スペースが狭小である道路などで作業を行うとき、ドアを開放した状態で旋回する場合であっても、周辺の構造物や樹木などに影響されることがなく、作業を行うことができる。
【0030】
また、下部ハンドレール21a及び上部ハンドレール21bを包含してなるハンドレール21が旋回半径R内に位置することになるので、旋回作業時、周辺障害物との接触によりハンドレール21が破損することを防止できる。
【0031】
一方、運転者が運転室から離脱する場合、ドアを開放した後、ハンドレール21を容易に把持することによって、安全な状態で建設機械から降りることができる。即ち、ピラー部20の上部外側面に取り付けられる上部ハンドレール21bが出入口側2bに近接して配置されていることによって、運転者は、ハンドレール21bを容易に把持でき、運転室2から安全に降りることができる。
【0032】
一方、旋回半径R内に位置するように固定されたハンドレール21の下部ハンドレール21aがピラー部20の位置から離れ、前面ガラス窓22の前方に置かれないように設けられるので、運転者の前方視界を妨げることがない。そのことから、運転者の視界をより広く確保することができ、建設機械の操作性の向上を図ると共に、作業能率を高めることができる。
【符号の説明】
【0033】
2 運転室
20 左側ピラー部
21 ハンドレール
21a 下部ハンドレール
21b 上部ハンドレール
22 前面ガラス窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入口を開閉するためのドアが取り付けられ、外部にハンドレールが取り付けられる小旋回型掘削機の運転室において、
前記ハンドレールは、
前記運転室の前方左側ピラー部の外側面下側に固定され、建設機械の旋回半径内に位置する下部ハンドレールと、建設機械の旋回半径内に位置するように下部ハンドレールと非対称をなしながら延長形成され、前記ピラー部の外側面上側に固定される上部ハンドレールとからなることを特徴とする小旋回型掘削機の運転室。
【請求項2】
前記上部及び下部ハンドレールの何れか一方は、棒状の直線区間を有するように形成され、上部及び下部ハンドレールの何れか他方は、弧形状の曲線区間を有するように形成されることを特徴とする請求項1に記載の小旋回型掘削機の運転室。
【請求項3】
前記上部ハンドレールは、運転室の出入口側に近接する位置に置かれるように取り付けられ、下部ハンドレールは、運転室の前方ピラー部から離れ、前面ガラス窓の前方に置かれないように取り付けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の小旋回型掘削機の運転室。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−203123(P2010−203123A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49006(P2009−49006)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(502032378)ボルボ コンストラクション イクイップメント アーベー (156)
【Fターム(参考)】