説明

少なくとも一つのワークピース上の輪郭をロボットにより加工するためのプロセス

本発明は、少なくとも一つのワークピースの輪郭をロボットにより加工するための方法、特に、二つのワークピースの間の、特に、二つのボディ・コンポーネントの間の、シームの溶接または封止ために、加工するための方法に係り、以下のプロセス・ステップにより特徴付けられる:ロボットで加工されるワークピースを位置決めし、および/または、ワークピースの実際の位置を決定し、少なくとも一つのセンサーにより、予め定められたまたは他のポイントで、ワークピースの輪郭の現実の経路を決定し、輪郭を加工しながら、ロボットの動きを修正するために、個々のベクトルに対応して、ロボットを駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前書き部分に基づくプロセスに係る。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のボディを製造する目的のために、ボディのパーツは、受けるデバイスの中で、加工される位置(例えば、互いに溶接されるエッジ)が、ロボット・アームの作業領域内に位置するように、互いに対して配置される。ロボット・アームは、二つのワークピースが互いに溶接されるラインに沿って、ツール(この場合には、溶接チップ)と共に移動する。しばしば、これらのラインは直線でなく、ボディの形態に従って湾曲し、ロボット・チップがこの湾曲したラインをたどることが可能であるように、ロボット・コントロール・システムがそれに対してプログラムされる。
【0003】
これに関連して留意すべきことは、ボディのパーツは、変形などの許容差の存在のために、他と同一ではない、と言うことである。
【0004】
この目的のため、ボディ・パーツの加工のために、理想的なボディが最初に作られ、このボディは、許容差がほぼゼロになるように、加工され処理される。この高度に正確に作られた理想的なボディは、測定ボディまたは測定ボディ・シェルとも呼ばれ、ロボットの動きをプログラミングする目的で使用される。
【0005】
現実のボディが加工されるとき、この現実のボディは、ロボットに対して割り当てられまたは配置され、イメージ(例えば、一緒に溶接されることになる輪郭)の記録が、複数のカメラにより作り出され、その結果として、位置ずれが認識されることが可能になる。それから、平均の位置のベクトルが作り出され、このベクトルは、理想的なボディの輪郭に対する平均の変位または実際の輪郭のねじれに対応していて、そして、ロボットのコントロール・システムに入力される。
【0006】
従って、ロボット・チップは、平均の位置のベクトルに従って移動される。これは、ロボット・チップが正確に輪郭に沿って移動しないと言う結果をもたらすことがあり、輪郭からのロボット・チップの動きの偏差が余り大きくない場合に、そのようになる。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、冒頭に述べたタイプのプロセスを作り出すことにあり、このプロセスにより、改善された加工、例えばボディの加工が、実現されることが可能になる。
【0008】
この目的は、冒頭に述べたタイプのプロセスの場合、特許請求項1の特徴部分の特徴により実現される。
【0009】
かくして、本発明によれば、少なくとも一つのワークピースの輪郭をロボットにより加工するためのプロセス、特に、二つのワークピースの間の(特に、二つのボディ・パーツの間の)シームの溶接または封止ために、加工するためのプロセスが、以下のプロセス・ステップにより特徴付けられる:
− 加工されるワークピースをロボットに対して位置決めし、および/または、ワークピースの実際の位置を取得し、
− ワークピースの輪郭の現実のコース、予め規定されたポイントで、少なくとも一つのセンサーにより、取得し、この予め規定されたポイントで変位ベクトルを決定し、
− 輪郭の加工の間、ロボットの動きを修正する目的で、変位ベクトルに従って、ロボットを駆動する。
【0010】
もし、許容差を含む現実のワークピースの輪郭が加工される場合、このプロセスは、補足的に、以下のステップにより特徴付けられる:
− 基準ワークピースとして、理想的に作られたワークピースを、ロボットに対して位置決めする、
− 少なくとも一つのセンサーにより、そのロボットにおける、輪郭の理想的なコースを決定し、予め規定されたポイントで、基準ワークピースの輪郭のコースを取得し、
− 許容差を含む現実のワークピースを、ロボットに対して位置決めし、および/または、現実のワークピースの実際の位置を取得し、
− 少なくとも一つのセンサーにより、前記予め規定されたポイントまたは他のポイントで、ワークピースの輪郭の現実のコースを取得し、それにより、前記予め規定されたポイントで、理想的なコースからの現実のコースの偏差を取得し、
− これらの偏差に対応する変位ベクトルを計算し、
− 輪郭の加工の間、ロボットの動きを修正する目的で、これらの変位ベクトルに従って、ロボットを駆動する。
【0011】
これらの変位ベクトルは、いわゆる理想的なワークピースと比較して、現実のワークピースの場合に生ずる許容差に対応している。これらの変位ベクトルにより、ロボット・チップでのツールの動きが、加工される輪郭の現実のコースに適合する。平均の変位ベクトルまたは位置のベクトルが計算される既知のプロセスと比較して、変位ベクトルが、各個々の予め規定されたポイントに割り当てられ、それにより、全体として、加工がより正確になる。
【0012】
このプロセスの更なる好ましい発展は、従属請求項により与えられる。
【0013】
自動車ボディの場合において、このプロセスは、理想的なボディの各輪郭が、特定の測定ポイントで規定されるように、実行され、一台のまたは複数のカメラにより、測定ポイントが取得される。現実のボディの場合、対応する測定ポイントが同じやり方で同様に取得され、それぞれそれら自身の個別のベクトルまたは変位のベクトルが与えられ、または計算され、それによって、コンポーネントの許容差及びボディ全体の嵌め合いの許容差が補償されることが可能になる。
【0014】
本発明の特に好ましい発展が、見えない覆われた輪郭コース(例えば、自動車ボディ上の、見える輪郭の近傍の見えないシーム)の加工の場合に、実現されることが可能であり、見える輪郭の見えるポイントが、最初に取得され且つ測定され、見えないシームの位置が、それから計算される。
【0015】
この場合、補足的に、現実のワークピースの見える輪郭が、複数のセクターに分割されることが可能であり、特定のポイントの部分的な測定が、各セクターの中で、実行されることが可能であり、その結果として、各セクターに対して修正値が決定されるように、ロボットの動きのコースが計算される。
【0016】
見えるポイントの測定は、レーザー・カメラにより実現され、三角測量プロセス(それ自体としては既知である)により、操作され数学的に処理される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、理想的なワークピースの上面図を示す。
【図2】図2は、加工される現実のワークピースの上面図を示し、位置のベクトルが示されている。
【図3】図3は、図2に基づくワークピースを、ロボット・ツールの実際のガイド経路と共に示す。
【図4】図4は、自動車ドアの側面図を示す。
【図5】図5は、図4の切断線ラインV−Vによる断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明、更なる好ましい発展及び改良、並びに更なる有利な効果は、本発明の実施形態の幾つかの例が示された図面を参照しながら、より十分に説明され記述される。
【0019】
ワークピース10は、例えば、自動車ボディなどであって、矩形の、フラットなコンポーネントとして、ここに示されていて、このコンポーネントは、長手方向のエッジ11で、更なるワークピース13の長手方向のエッジ12に溶接されることになる。二つのワークピース10及び13は、真っ直ぐな、直線のエッジ11及び12を有していて、従って、それらは、いわゆる理想的なワークピースのパーツと呼ばれることも可能である。
【0020】
ロボット・アーム(ここに示されていない)は、ライン11及び12に沿って、センサー(例えば、カメラであって良い)と共に移動し、スタート・ポイント14から開始して、予め規定された位置15,16,17,18及び19で、イメージを作成し、そのイメージの信号が記憶装置の中に貯えられる。
【0021】
現実のワークピース20は、理想的なワークピース10とは、現実のエッジ21が特定のポイント11'' 及び11''' で理想的なエッジ11’と交差するS字形状を有している限りにおいて、エッジ11に対応するエッジ21が、理想的なエッジ11’と比較して異なっていると言う点で、異なっている。
【0022】
ロボットは、センサーとともに、曲線11’に沿って移動し、イメージが、カメラにより、同じポイント14’,15’,16’,17’,18’及び19’で記録され、イメージに属する信号が、同様に、記憶装置に貯えられる。実際の輪郭21は、理想的な輪郭からの偏差を有していて、これが、現実の信号といわゆる理想的な信号を比較することにより計算され、その結果として、位置のベクトル22,23,24,25及び26が計算され、それらによりロボットによりたどられるべき輪郭が、理想的なポイントから現実のポイントへ変位される。
【0023】
それにより、図3に示されているように、動きの経路30が得られ、この動きの経路は、それぞれ個々の測定ポイント間で、現実の曲線または現実の輪郭21に近似する直線を構成する。実際の輪郭に対する、ロボットの動きの経路のより良い近似は、測定ポイントの数を増大することにより実現されることが可能である。
【0024】
図1に基づくロボットの動きの経路は、トレーニング経路と呼ばれことも可能であり、図2に基づく次のステップは、現実のワークピースの輪郭が測定される測定経路であり、そして、図3に基づく動きの経路30は、修正された経路30であって、この経路に沿って、加工の際に、ロボットが移動する。
【0025】
本発明の運転のモードが、非常にシンプルなワークピースのパーツを参照しながら、説明された。図1には、ワークピースのパーツの二つのエッジが互いに近いことが示されている。実際には、エッジが互いに重複し、それによって、スポット溶接作業が、対応する位置及び対応する輪郭で実行されることが可能になる。
【0026】
特定のケースは、いわゆる隠蔽されたシームの封止である。このために、図4及び5が参照される。図4は、ボディ41の中のドア40の上面図を示していて、ギャップ44(可能な限り狭く実現されることになる)が、ドアの外周のエッジ42とボディ41の内側のエッジ43の間に構成され、この内側のエッジはドア40のアウター輪郭に適合している。
【0027】
切断線V−Vによる断面図が、図5に示されている。この例では、ドア40は、アウター・プレート45を有していて、このアウター・プレートは、ドア表面に対して平行に伸びるフリー・リブ47を有するU字形状46を形成するように、端部のエッジ42で、L字形状に内側に曲げられている。アウター・プレート45は、補強されてドアを形成し、その中に、インナー・プレート48が配置され、このインナー・プレートは、リブ47がインナー・プレート48の部分的な領域と重複するように、U字形状46の中に係合している。リブ47は、必要な場合には、接着剤によりまたはスポット溶接プロセスにより、インナー・プレート48に接続されても良い。
【0028】
この場合、狭いギャップ49が形成され、このギャップを通って、湿度が、アウター・プレート45とインナー・プレート48の間の内側のスペースの中に入ることが可能になる場合もある。このため、ギャップ49をシールすること、またはシーム49までもシールすることが、必要になることになる。これは、ここで、L字状のツール50(より詳細には示されていない)により実現され、このツールのL字状のリブ51にスロットが設けられ、このスロットを通って封止材料52(矢印で示されている)が送り出され、シーム49を覆うことが可能になる。
【0029】
シーム49は、この場合、いわゆる隠蔽されたシームであって、センサーにより検出されることが可能でない。
【0030】
この場合、ドアの輪郭42は、特定の測定ポイントで検出されて取得され、それらは、図5の中で“x”の印により示されている。輪郭42の取得のスタートは、スタート・ポイント53であって、測定ポイントの特定の数(その数は、輪郭42のコースに依存する)は、ドア40のヒンジ・ポイント54及び55の反対側にある湾曲した輪郭42に基づいて、センサーにより取得される。個々の測定ポイント(その中で、測定ポイント56,57及び端部の測定ポイント58のみが、例として示されている)が取得され、センサーにより決定された信号が、記憶装置の中に貯えられた後に、測定ポイントが、この領域内で取得された位置のベクトルを考慮に入れて、計算により変位され(図2参照)、ツール55の動きがそれにより計算される。
【0031】
その後に、図5に示されているように、ツールがギャップ44の中に適切に通され、リブ51がリブ47に対して平行に伸びるように、位置が調整され、ツール50が、ギャップ44の中で、新たに計算された、現実の輪郭に基づいて、輪郭42に沿って移動し、封止材料52が背後からギャップに送り出される。明らかに、同じことが、ドア40の上部領域内の輪郭42aに対して、及び、ドア40の下部領域内の輪郭42bに対してもまた、実現される。
【符号の説明】
【0032】
10…ワークピース、45…アウター・プレート、11…長手方向のエッジ/ライン、46…U字形状、11’…理想的なエッジ、47…リブ、12…長手方向のエッジ/ライン、48…インナー・プレート、13…更なるワークピース、49…ギャップ/シーム、
14…スタート・ポイント、50…ツール、15…予め規定された位置、51…L字状のリブ、16…予め規定された位置、52…封止材料、17…予め規定された位置、53…スタート・ポイント、18…予め規定された位置、54…ヒンジ・ポイント、19…予め規定された位置、55…ヒンジ・ポイント、20…現実のワークピース、56…測定ポイント、21…現実のエッジ、57…測定ポイント、22…位置のベクトル、58…端部の測定ポイント、23…位置のベクトル、24…位置のベクトル、25…位置のベクトル、26…位置のベクトル、30…動きの経路、40…ドア、41…ボディ、42…端部のエッジ、42a…ドアの上部領域の輪郭、42b…ドアの下部領域の輪郭、43…内側のエッジ、44…ギャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのワークピースの輪郭をロボットにより加工するためのプロセス、特に、二つのワークピースの間の、特に、二つのボディ・パーツの間の、シームの溶接または封止のために、加工するためのプロセスにおいて:
− 加工されるワークピースをロボットに対して位置決めし、および/または、ワークピースの実際の位置を取得し、
− 少なくとも一つのセンサーにより、予め規定されたポイントで、ワークピースの輪郭の現実のコースを取得し、
− 輪郭の加工の間、ロボットの動きを修正する目的で、個々のベクトルに基づいて、ロボットを駆動する、
ことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
下記特徴を有する請求項1に記載のプロセス、
許容差を含む現実のワークピースの輪郭が加工されるプロセスであって:
−基準ワークピースとして、理想的に作られたワークピースをロボットに対して位置決めし、
− 少なくとも一つのセンサーにより、ロボットの中で、輪郭の理想的なコースを決定し、予め規定されたポイントで、基準ワークピースの輪郭のコースを取得し、
− 許容差を含む現実のワークピースを、ロボットに対して位置決めし、および/または、現実のワークピースの実際の位置を取得し、
− 少なくとも一つのセンサーにより、予め規定されたポイントまたは他のポイントで、ワークピースの輪郭の現実のコースを取得し、それにより、前記予め規定されたポイントで、理想的なコースからの現実のコースの偏差を取得し、
− 偏差に対応する個々のベクトルを計算し、
− 輪郭の加工の間、ロボットの動きを修正する目的で、個々のベクトルに基づいて、ロボットを駆動する。
【請求項3】
下記特徴を有する請求項1または2に記載のプロセス、
ワークピースは、コンベアシステムにより、ロボットを有するロボット・ステイションの中に、移送される。
【請求項4】
下記特徴を有する請求項2に記載のプロセス、
ワークピースの位置は、少なくとも一つの位置センサーにより、特に、光学的な認識システムにより、決定される。
【請求項5】
下記特徴を有する請求項1から4の何れか1項に記載のプロセス、
見える輪郭の近傍の見えない覆われた輪郭コースを、例えば自動車ボディの見えないシームを、加工するためのプロセスであって、
見える輪郭の見えるポイントが最初に取得され且つ測定され、その見えないシームの位置がそれから計算される。
【請求項6】
下記特徴を有する請求項5に記載のプロセス、
現実のワークピースの見える輪郭が、複数のセクターに分割され、特定のポイントの部分的な測定が、各セクターの中で実施され、その結果として、ワークピース及び位置の許容差が決定されるように、各セクターに対して修正値が決定され、且つロボットの動きのコースが計算される。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−533596(P2010−533596A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516382(P2010−516382)
【出願日】平成20年6月14日(2008.6.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004799
【国際公開番号】WO2009/010137
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(508278675)アーベーベー・アーゲー (9)
【氏名又は名称原語表記】ABB AG
【住所又は居所原語表記】Kallstadter Str. 1,68309 Mannheim,Germany
【Fターム(参考)】