説明

少なくとも一種の環状モノマーのコポリマーの製造方法

【課題】少なくとも一つの環式モノマーのコポリマーを製造する方法。
【解決手段】スルホン酸基を有する化合物の存在下で、ラクトン、ラクタム、ラクチドおよびグリコリドの中から選択される少なくとも一種の環式モノマーを重合体開始剤(マクロイニシエータ、macroinitiator)と反応させる段階を有することを特徴とするラクトン、ラクタム、ラクチドおよびグリコリドの中から選択される少なくとも一種の環式モノマーのコポリマーの製造方法と、この方法で得られるポリマー組成物と、その帯電防止剤としての使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシル基またはチオール基を有する高分子開始剤(マクロイニシエータ、macroinitiator)を用いて開環することによってラクトン、ラクタム、ラクチドまたはグリコリドから選択される少なくとも一種の環状モノマーのコポリマーを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ε−カプロラクトンのようなラクトンのコポリマーは特にそのバイオコンパティビリティ(biocompatibility)、生理化学的性質および少なくとも200〜250℃の温度までの優れた熱安定性によって種々の分野で工業的に重要なポリマーである。
【0003】
これらのコポリマーの製造方法は特に非特許文献1(Jerome et al., Macromol. 2002,35,1190-1195)に記載されている。その方法はジクロロメタン中のエーテルアル塩酸(HCl・Et2O)の存在下で0℃でδ−バレロラクトンをポリ(エチレングリコール)またはモノメトオキシポリ(エチレングリコール)である高分子開始剤と共重合するものである。この方法では3モル.1-1のモノマー濃度を使用し、高分子開始剤のヒドロキシル基に対して3当量の酸を使用する。2〜3時間後に得られたジブロックおよびトリブロックポリマーの最大分子量は9500〜19000 g/モルであり、多分散性指数は1.07〜1.09である。
この方法は腐蝕性のある酸を比較的多量に使用するため、必要する機器に有害な影響を及ぼすことがある。
【0004】
触媒として塩酸ではなくスルホン酸を使用してε−カプロラクトンをカチオン共重合するための他の方法も提案されている。そうした方法は特に非特許文献2(Maigorzata Basko et al., Journal of Polymer Science: Part A:Polymer Chemistryp, Vol. 44, 7071-7081、2006)に記載されている。この方法ではジクロロメタン中で35℃でイソプロピルアルコールおよびトリフルオロメタンスルホン(トリフリック)酸の存在下でε−カプロラクトンおよび任意成分のL,Lラクチドを反応させる。得られるカプロラクトンコポリマーの分子量は4780〜5900グラム/モルで、多分散性指数は1.21〜1.24である。
【0005】
特許文献1(国際出願公開第WO 2004/067602号公報)には触媒としてトリフルオロメタンスルホン酸を使用し、水または脂肪族アルコールである(共)重合添加剤または共開始剤(coinitiator)の存在下で、必要に応じて用いる塩素化溶剤中でラクチドおよびグリコリドを(共)重合する方法が開示されている。
【0006】
しかし、上記文献には、高分子量Mn(例えば20000 g/モル以上)で多分散性指数が低い(1.5以下)のラクトン、ラクタム、ラクチドまたはグリコリドのコポリマーをマクロモノマーそれ自体を開始剤として使用し、一般に穏やかな条件下で、しかも速い反応速度で製造できる方法は記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際出願公開第WO 2004/067602号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Jerome et al., Macromol.、2002、35、1190-1195
【非特許文献2】Maigorzata Basko et al., Journal of Polymer Science: Paer A:Polymer Chemistryp, Vol. 44, 7071-7081(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は高分子量Mn(例えば20000 g/モル以上)で多分散性指数が低い(1.5以下)のラクトン、ラクタム、ラクチドまたはグリコリドのコポリマーをマクロモノマーそれ自体を開始剤として使用し、一般に穏やかな条件下で、しかも速い反応速度で製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の対象は、スルホン酸基を有する化合物の存在下で、ラクトン、ラクタム、ラクチドおよびグリコリドの中から選択される少なくとも一種の環式モノマーを重合体開始剤(マクロイニシエータ、macroinitiator)と反応させる段階を有することを特徴とする上記環式モノマーのコポリマーの製造方法にある。
本発明の他の対象は、以下で詳細に記載する上記方法で得られるポリマー組成物にある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の方法は有機触媒(organocatalytic)方法であるということができる。
本明細書で「〜」という記載は両方の境界を含むものと理解しなければならない。
【0012】
本発明方法では、ラクトン、ラクタム、ラクチドまたはグリコリドを重合体開始剤(マクロイニシエータ、macroinitiator)(以下、単に「開始剤」ともいう)と反応させる。
「重合体開始剤(マクロイニシエータ、macroinitiator)」とは、本明細書では少なくとも一つのヒドロキシル基または少なくとも一つのチオール基を有する化合物を意味する。「重合体」とは基本的に低分子量の分子から(任意タイプの重合反応によって)効率的または概念的に誘導される単位の多重反復物から成る構造を有する分子を意味する。この用語には重合体(ポリマー)とオリゴマーが含まれる。後者は前者より低分子量である。
【0013】
「コポリマー」とは特に、少なくとも2つの互いに異なるタイプのモノマーまたはマクロモノマーから得られるポリマーを意味し、その少なくとも一つはラクトン、ラクタム、ラクチドまたはグリコリド(以下に、単に「環式モノマー」という)の中から選択され、他は上記重合体開始剤から生じる。
【0014】
ラクトンの例としては特に、飽和または不飽和の置換または未置換の4〜12の炭素原子を有するβ−、γ−、δ−およびε−ラクトン、例えばε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトンおよびγ−ブチロラクトンが挙げられる。本発明ではε−カプロラクトンを使用するのが好ましい。これは特に、ペルオキシ酢酸を用いたシクロヘキサノンのBaeyer−Villiger酸化反応によって得ることができる。
【0015】
ラクタムの例としては特に、飽和または不飽和の置換または未置換の4〜12の炭素原子を有するβ−、γ−、δ−およびε−ラクタム、例えばカプロラクタム、ピロリジノン、ピペリドン、エナントラクタムおよびラウリンラクタムを挙げることができる。本発明ではカプロラクタムを使用するのが好ましい。これらはベックマン転移反応によってシクロヘキサンオキシムから得ることができ、重合によってポリカプロラクタムまたはナイロン-6(登録商標)が得られる。
【0016】
本発明で使用するラクチドはラセミ形、エナンチオマー的に純粋な形かメゾ形で提供できる。
反応媒体中の環式モノマーの濃度はある程度まで変化できる。例えば、重合度が約40の場合、モノマー濃度を高くすることで重合体開始剤による重合の開始をよりよく制御し、重合をよりよく制御することができる。逆に、重合度を高くする(特に、100以上にする)場合には、媒体中にモノマーを希釈することで制御がより有利になる。例えば、反応媒体中の環式モノマーの濃度は0.01〜9モル/l、好ましくは0.45〜3モル/l、より好ましくは0.45〜2.7モル/lにすることができる。
【0017】
重合体開始剤はモノ−またはポリ−ヒドロキシル化したオリゴマーまたはポリマー二することができ、特に下記の中から選択できる:(アルコキシ)ポリアルキレングリコール、例えば、(メトオキシ)ポリエチレングリコール(MPEG/PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリ(アルキル)アルキレンアジペートジオール、例えばポリ(2−メチル−1,3−プロピレンアジペート)ジオール(PMPA)およびポリ(1,4−ブチレンアジペート)ジオール(PBA)、α−ヒドロキシル化またはα、ω−ジヒドロキシレート化ポリジエン(必要に応じて水素化されていてもよい)、例えばα、γ−ジヒドロキシレート化ポリブタジエンまたはα、ω−ジヒドロキシレート化ポリイソプレン、モノ−またはポリ−ヒドロキシル化ポリアルキレン、例えばモノ−またはポリ−ヒドロキシル化ポリイソブチレン、末端ヒドロキシル基を有するポリラクチド、ポリヒドロキシアルカノエート、例えばポリ(3−ヒドロキシブチレート)およびポリ(3-ヒドロキシバレレート)、変性または未変性の多糖、例えばデンプン、キチン、キトサン、デキストランおよびセルロースおよびこれらの混合物。
【0018】
変形例では、重合体開始剤は一つまたは複数のチオール基を有するオリゴマーまたはポリマーであり、例えばα−チオール化またはα、ω−チオール化ポリスチレン、α−チオール化またはα、ω−チオール化ポリ(メタ)アクリレート、α−チオール化またはα、ω−チオール化ポリブタジエンおよびこれらの混合物二することができる。
【0019】
本発明の他の変形例では、重合体開始剤はアクリル、メタアクリル、スチレンまたはジエンポリマーのファミリのビニル共オリゴマー(coologomer)またはコポリマーにすることができる。これらはアクリル、メタアクリル、スチレンまたはジエンモノマーと水酸基を有する機能性モノマー、例えばヒドロキシル化アクリル、メタアクリルモノマー、例えば4−ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレートとの共重合で得られる。この重合は従来のラジカル重合、制御されたラジカル重合またはアニオン重合法で実行できる。
【0020】
本発明の他の変形例では、重合体開始剤はラジカル開始剤および/または制御因子が少なくとも一つのヒドロキシル基またはチオール基を有する制御されたラジカル重合で得られるビニール共重合体にすることができる。
【0021】
重合体開始剤として使用されるオリゴマーおよびポリマーは例えば数平均分子量が1000〜100000 g/モル、例えば1000〜20000 g/モルで、多分散性指数が1〜3、例えば、1〜2.6である。
【0022】
この種のオリゴマーまたはポリマーを使用することで、重合体開始剤上のヒドロキシル基またはチオール基の配列に従って、グラフトコポリマー、星型コポリマーまたは直鎖のブロックコポリマーを得ることができる。
【0023】
重合体開始剤に対する環式モノマーのモル比は5〜500が好ましく、より好ましくは10〜200、さらに好ましくは40〜100にする。
【0024】
本発明方法は無水媒体中で有利には実行できる。さらに、非塩素化溶剤、好ましくは芳香族溶剤、例えばトルエン、エチルベンゼンまたはキシレン中で好ましく実行できる。変形例では非芳香族溶剤、例えばケトン(メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンを含む)、環式でもよいエーテルおよびポリエーテル(メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびジメトキシエタンを含む)中でも実行できる。本発明ではトルエンを使用するのが好ましい。この種の溶剤は重合を加速できるということが分かっている。
【0025】
本発明方法で使用する反応物は使用前に乾燥。特に、減圧、蒸留または不活性乾燥剤を用いた乾燥処理で乾燥しておくのが好ましい。
【0026】
本発明方法は触媒を使用する必要がある。この触媒はスルホン酸基を有する化合物から成るか、それを含むのが好ましい。「スルホン酸基」という用語は遊離した酸基を意味し、塩でないことを意味する。この化合物は式RSO3Hの化合物であるのが好ましい。ここで、Rは下記の(1)または(2)を表す:
(1)オキソ基およびハロー基、例えばフッ素、塩素、臭素または沃素の中からそれぞれ独立して選択される一つまたは複数の置換基によって置換されていてもよい1〜20の炭素原子を有する直鎖アルキル基または3〜20の炭素原子を有する分岐鎖または環式のアルキル基、
(2)下記(a)〜(c)によって置換されていてもよいアリール基:
(a)1〜20の炭素原子を有する少なくとも一つの直鎖のアルキル置換基または3〜20の炭素原子を有する少なくとも一つの分岐鎖または環式のアルキル基、上記アルキル置換基自体はフッ素、塩素、臭素または沃素の中から選択される少なくとも一つのハロゲン基またはニトロ基で置換されていてもよく、または、
(b)フッ素、塩素、臭素または沃素の中から選択される少なくとも一つのハロゲン基、または、
(c)少なくとも一つのニトロ基。
【0027】
本発明では(トリフルオロ)メタンスルホン酸およびパラ−トルエンスルホン酸を使用するのが好ましい。
【0028】
本発明方法は、触媒が反応物(環式モノマーおよび重合体開始剤)と同じ相で存在し、担持触媒ではない、という意味で均一系触媒プロセスであるのが好ましい。本発明方法では重合の制御に影響を及ぼさずに反応時間を調節するために触媒の量を変化させることができる。開始剤の各ヒドロキシル基またはチオール基に対するスルホン酸基を有する化合物のモル比は一般に0.5〜1の間であるのが好ましい。
【0029】
触媒は反応終了時に例えばヒンダード有機塩基、例えばジイソプロピルエチルアミン(CIEA)を用いて中和し、形成されたアンモニウム塩を除去、好ましくは水で洗浄して簡単に除去することができる。本発明方法では金属元素を使用しないのが好ましい。
【0030】
本発明方法は20℃〜105℃、好ましくは25℃〜65℃、さらに好ましくは25℃〜50℃の温度で実行するのが好ましい。これらの温度、例えば約30℃では分子量Mnが14000g/モル以上であるコポリマーを加圧運転せずに3〜4時間で少なくとも90%の収率、実際には99%近くの収率で得ることができるということが証明されている。これは本発明方法が大きな効果である。
【0031】
本発明方法は撹拌下で実行するのが好ましく、連続的またはバッチで実行することができる。
本発明方法に従って製造されたコポリマーはゲルパーミエーションクロマトグラフィ(またはGPC)で測定した数平均分子量Mn(これは重合体開始剤に対するモノマーのモル比で制御できる)が9000グラム/モル以上であり、および/または、ポリマー鎖長の均一性を反映する多分散性指数は1.5以下である。
【0032】
本発明方法に従って製造されたコポリマーは種々の分野で使用できる。特に、液体または気体の流体の処理用メンブレンの製造、または、活性成分を運ぶため電気化学エネルギー貯蔵システム、例えばリチウムイオン電池、スーパーキャパシターまたは燃料電池、医薬品または化粧品の製造、生体適合材料の製造、プラスチックの添加剤、特に、重合体樹脂、例えばポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドまたはポリ(メタ)アクリレートの帯電防止剤として、樹脂、例えば透明または透明でないポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミドまたはポリ(メタ)アクリレートの衝撃強度を改善する化合物、PVCの可塑剤、織物繊維の製造で使用できる。
【0033】
本発明はさらに、上記方法で得られたポリマー組成物のポリマー樹脂の帯電防止剤として使用にも関するものである。
本発明はさらに、液体または気体の流体の処理用メンブレンの製造または電気化学エネルギー貯蔵システムおよび医薬品または化粧品分野での生体適合材料、樹脂の衝撃強度改善剤、PVCの可塑剤、または、織物繊維の製造での本発明組成物の使用にも関するものである。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
ε−カプロラクトンコポリマーの製造
以下の方法は下記の一般的手順に従って実行した。
アルコールとトルエンはナトリウム上で蒸留した。ε−カプロラクトンは水素化カルシウム(CaH2)上で蒸留して乾燥した。MPEGとPEGは乾燥機中でP25の存在下で減圧下で乾燥した。PTMGは減圧下で80℃で乾燥した。
スルホン酸は追加の精製なしで使用した。ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)はカルシウム二水素化物(CaH2)上で蒸留して乾燥し、水酸化カリウム(KOH)上で保存した。
【0035】
Schienkチューブは減圧下に熱絞り弁で乾燥し、痕跡量の水分も除去した。
反応はBruker Avance 300装置を使用した1HNMRと、Waters 712WISP装置を使用したGPC(40℃に制御、1ml/分、ポリスチレンで較正)とでモニターした。そのためにサンプルを採取し、DIEAで中和し、蒸発し、特徴付け用溶剤中に取った。1HNMRは、最初に開始剤上にしったOH基を有する−CH2−基のプロトンの信号に対するC=O基を有する-CH2-基の信号の成分値の比を求めてモノマーの重合度(DP)を定量できる。スペクトルは300MHz分光計で重水素化ロロホルムで記録した。THF中のGPCでサンプルの数平均分子量Mnと多分散性(PDI)とを決定できる。
【0036】
実施例1
11mlのトルエン中の1.32g(1eq.)のPEG(Mnは約17000 g/モル、PDI=1.07)の溶液中に、580μ1のε−カプロラクトン(40eq.、0.45mol.l-1)と、12μ1のトリフルオロメタンスルホン酸(1eq.)とを加えた。NMRでモノマーが変換したことが確認される(すなわち4時間後)まで反応媒体をアルゴン下で50℃で撹拌した。
変換率:≧ 99%
1HNMR:DP=41
GPO:Mn=25350g/モル、PDI=1.14
【0037】
実施例2
5.5mlのトルエン中の0.17g(1eq.)のPTMG(Mn=2610g/モル、PDI= 2.09)の溶液中に、610μlのε-カプロラクトン(40eq.、0.9mol.1-1)と、9μ1のメタンスルホン酸(1eq.)とを加えた。NMRでモノマーが変換したことが確認される(すなわち1時間後)まで反応媒体をアルゴン下で30℃で撹拌する。
変換率:≧99%
1HNMR:DP=40
GPO:Mn=10380g/モル、PDI=1.16
【0038】
実施例3
5mlのトルエン中の0.265g(1eq.)のPMPA(乾燥Mn=3450g/モル、PDI = 2.01)の溶液中に、560μ1のε−カプロラクトン(45eq.、0.9mol.l-1)と11μ1のトリフルオロメタンスルホン酸(1eq.)とを加えた。NMRでモノマーが変換したことが確認される(すなわち1時間後)まで反応媒体をアルゴン下で30℃で撹拌する。
変換率:≧ 99%
1HNMR:DP=42
GPO:Mn=11260g/モル、PDI=1.20
【0039】
実施例4
5mlのトルエン中の0.135g(1eq.)のPBA(乾燥Mn=2160グラム/モル、PDI== 1.90)の溶液に、550 μ1のε-カプロラクトン(40eq.、0.9mol.l-1)と、11μ1のトリフルオロメタンスルホン酸(1eq.)とを加えた。NMRでモノマーが変換したことが確認される(すなわち1時間30分後)まで反応媒体をアルゴン下で30℃で撹拌する。
変換率:≧ 99%
1HNMR:DP=39
GPO:Mn=9660g/モル、PDI=1.16
【0040】
実施例5
8.9mlのトルエン中の0.50g(1eq.)のMPEG(Mn=8100g/モル、PDI=1.05)の溶液中に、440μ1のε−カプロラクトン(40eq.、0.45mol.1-1)と、9μ1のトリフルオロメタンスルホン酸(1eq.)とを加えた。NMRでモノマーが変換したことが確認される(すなわち3時間後)まで反応媒体をアルゴン下で50℃で撹拌する。
変換率:≧98%
1HNMR:DP=40
GPO:Mn=15080/モル、PDI=1.15
【0041】
実施例6
4.5mlのトルエン中の68mg(1eq.)のポリブタジエンPoly bd(登録商標) R20LM (Sartomer社からの低分子量のα、ω−ヒドロキシル化ポリブタジエン)(Mは約1200グラム/モル、Mnは約2300g/モル、PDI=2.54)の溶液に、500μ1のε−カプロラクトン(80eq.、0.9mol.1-1)と、4μ1のメタンスルホン酸(1eq.)とを加える。反応媒体をアルゴン下で30℃で4時間撹拌する(変換率:100%)。媒体を中和し、蒸発する。得られた製品を1HNMRで特徴付けした:
DP=65
GPO:Mn=14850g/モル、PDI=1.40
【0042】
実施例7
4.7mlのトルエン中の164mg(1eq.)のPoly Bd(登録商標)R45(Sartomer社からの低分子量ヒドロキシル化ポリブタジエン、M=2800グラム/モル、Mn=5400g/モル、PDI = 2.45)の溶液に、520μ1のε−カプロラクトン(80eq.、0.9mol.1-1)と、4μ1のメタンスルホン酸(1eq.)とを加える。反応媒体をアルゴン下で30℃で4時間撹拌する(変換率:100%)。媒体を中和し、蒸発する。
NMR:DP=53
GPO:Mn=19800g/モル、PDI=1.36
【0043】
上記実施例は12000 g/モルの分子量を有するコポリマーは約1時間のみで得ることができ、最大で4時間後には分子量が14000 g/モル以上、さらには20000 g/モル以上で、多分散性指数が1.4以下のコポリマーを得ることができる、ということを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン酸基を有する化合物の存在下で、ラクトン、ラクタム、ラクチドおよびグリコリドの中から選択される少なくとも一種の環式モノマーを重合体開始剤と反応させる段階を有することを特徴とする上記環式モノマーのコポリマーの製造方法。
【請求項2】
ラクトンがε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトンおよびγへブチロラクトンの中から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ラクトンがε−カプロラクトンである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ラクタムがカプロラクタム、エナントラクタム、ラウリン ラクタム、ピロリジノンおよびピペリドンの中から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
環式モノマーがラセミ体、エナンチオマー的に純粋かメゾ形のラクチドおよびグリコリドの中から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
重合体開始剤が少なくとも一つのヒドロキシル基を有するポリマーから成る請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
重合体開始剤が(アルコキシ)ポリアルキレングリコール、ポリ(アルキル)アルキレンアジペートジオール、水素化されていてもよいα−ヒドロキシル化またはα、ω−ジヒドロキシレート化ポリジエン、モノ−またはポリ−ヒドロキシル化ポリアルキレン、末端ヒドロキシル基を有するポリラクチド、ポリヒドロキシアルカノエート、変性または未変性の多糖およびこれらの混合物の中から選択をされるモノ−またはポリ−ヒドロキシル化されたオリゴマーまたはポリマーである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも一つのヒドロキシル基を有する上記ポリマーが(メトオキシ)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(2−メチル−1,3−プロピレンアジペート)ジオール、ポリ(l,4−ブチレンアジペートジオール、α、ω−ジヒドロキシレート化ポリブタジエン、α、ω−ジヒドロキシレート化ポリイソプレン、モノ−またはポリ−ヒドロキシル化ポリイソブチレン、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、デンプン、キチン、キトサン、デキストラン、セルロースおよびこれらの混合物の中から選択される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
重合体開始剤が少なくとも一つのチオール基を有するポリマーである請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
重合体開始剤がα−チオール化またはα、ω−チオール化ポリスチレン、α−チオール化またはα、ω−チオール化ポリ(メタ)アクリレート、α−チオール化またはα、ω−チオール化ポリブタジエンおよびこれらの混合物の中から選択をされる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
重合体開始剤がアクリル、メタアクリル、スチレンまたはジエンモノマーと水酸基またはチオール基を有する機能性モノマーとの共重合で得られるアクリル、メタアクリル、スチレンまたはジエンポリマーのファミリのビニル共オリゴマーまたはコポリマーである請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
スルホン酸基を有する化合物が、Rが下記(1)または(2)を表す式:R−SO3Hの化合物である請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法:
(1)オキソ基およびハロ基、例えばフッ素、塩素、臭素または沃素の中から選択される一つまたは複数の置換基によってそれぞれに独立して置換基によって置換されていてもよい1〜20の炭素原子を有する直鎖のアルキル基または3〜20の炭素原子を有する分岐鎖または環式のアルキル基、または、
(2)下記(a)〜(c)で置換されていてもよいアリール基:
(a)少なくとも一種の1〜20の炭素原子を有する直鎖のアルキル置換基、少なくとも一種の3〜20の炭素原子を有する分岐鎖または環式のアルキル基、上記アルキル置換基自体は必要に応じてフッ素、塩素、臭素または沃素から選択される少なくとも一つのハロゲン基またはニトロ基によって置換されていてもよく、または、
(b)フッ素、塩素、臭素または沃素の中から選択される一つのハロゲン基、または、
(c)一つのニトロ基。
【請求項13】
スルホン酸基を有する化合物が(トリフルオロ)メタンスルホン酸またはパラトルエンスルホン酸である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
重合体開始剤に対する環式モノマーのモル比が5〜500、好ましくは10〜200、より好ましくは40〜100である請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
非塩素化溶剤中で実行する請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
非塩素化芳香族溶剤、例えばトルエン、エチルベンゼンまたはキシレン中で実行する請求項155に記載の方法。
【請求項17】
無水媒体中で実行する請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
重合体開始剤の各ヒドロキシル基またはチオール基に対するスルホン酸基を有する化合物のモル比が1である請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
20℃〜105℃、好ましくは25℃〜65℃、より好ましくは25℃〜50℃の温度で実行する請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法で得られるポリマー組成物。
【請求項21】
請求項20に記載の組成物のポリマー樹脂での帯電防止剤としての使用。
【請求項22】
請求項20に記載の組成物の液体または気体の流体の処理用メンブレンの製造での使用または電気化学エネルギー貯蔵システムでの使用、医薬品または化粧品分野の生体適合材料としての使用、樹脂の衝撃強度改善剤としての使用、PVCの可塑剤としての使用または織物繊維の製造での使用。

【公表番号】特表2010−519343(P2010−519343A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549461(P2009−549461)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050256
【国際公開番号】WO2008/104724
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【出願人】(595040744)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク (88)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【Fターム(参考)】