説明

少なくとも2つの熱可塑性樹脂を含む粉末溶射組成物

約90質量%以下の第1の熱可塑性樹脂材料と、約50質量%以下の少なくとも一つのさらなる熱可塑性樹脂材料とを含み、少なくとも一つのさらなる熱可塑性樹脂材料は、第1の熱可塑性樹脂材料とは異なる溶射組成物を開示する。さらに、最適な第2の性質を付け加えるために経験的に組成物を添加することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2006年1月26日に出願した米国の仮出願第60/762,982号の優先権を主張したものであり、上記出願を参照することで本明細書に含まれるものとする。
【0002】
本発明は溶射組成物に関し、特にきれいな未塗布面または塗布面のいずれにも塗布できる少なくとも2つの熱可塑性樹脂を含む粉末溶射組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
溶射組成物は粉末形状であり、溶射によって表面に塗布される。ここでいう「溶射」とは、被覆する原料(例えば、溶射組成物)を加熱し、基材の表面上に個々の液滴または粒子を吹き付ける方法をいう。可燃性のガス、プラズマ炎または電気温風を用いて塗布器(例えば、溶射ガン)でコーティングする材料を加熱し、プラスチック粒子を液滴になるまで溶解させ、圧縮ガスを用いて溶射ガンで外に吹き付ける。コーティングする材料の粒子が基板に当たると、粒子は平らになって、流れて、隣接する粒子に溶解し、連続的な膜を形成する。この膜が表面を覆う。
【0004】
種々の溶射組成物は、今日、市場で入手可能であり、例えば、金属、紙、木、プラスチック、コンクリート等の様々な表面を被覆するために用いることができる。これらの溶射組成物は、熱可塑性粉末からなる組成物を含む。熱可塑性粉末は、溶射で被覆することができるが、熱可塑性粉末は、一回塗布すると特殊な問題を引き起こし、被覆するには限界があり、信頼性に問題があった。例えば、熱可塑性樹脂の中には、溶射することでコーティングする際、はがれたり、ひびが入ったり、端がめくれたり、塊が発生したりする。従って、今日の市場で必要とされているのは、特殊な装置を使用して溶射することができ、基材表面に付着して塗膜を形成し、はがれたり、ひびが入ったりせず、端がめくれたり、端が持ち上がったりしない熱硬化性組成物である。
【0005】
数多くの実験的試験後、溶射熱可塑性樹脂の被覆と関係がある固有の問題は、別のタイプの熱可塑性樹脂/別の種類の熱可塑性樹脂を加えることによって解決できることがわかった。換言すれば、少なくとも2種類であって別のタイプ及び/または別の種類の熱可塑性樹脂が混合されている溶射組成物は、個々に溶射熱可塑性樹脂固有の上記問題を解決できる。少なくとも2つの熱可塑性樹脂を含む本発明の組成物は、上述したような特徴を有しており、上述したような従来技術の問題点を解決することができる。以下、本発明について詳細に説明する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、約90質量%以下の第1の熱可塑性樹脂材料と、約50質量%以下の第1の熱可塑性樹脂材料と異なる少なくとも一つの熱可塑性樹脂材料とを含む粉末溶射組成物に関する。本発明の組成物の第2の熱可塑性樹脂成分は、第1の熱可塑性樹脂材料と構造が異なるか、加工されていない第2の熱可塑性樹脂材料とは異なる熱可塑性樹脂材料を与える特定の方法で加工されるのいずれかであってよい。少なくとも2つの異なる熱可塑性樹脂材料を組合せは、溶射すると、熱可塑性樹脂材料をそれぞれ溶射するよりも好ましい物理的性質を有する被膜をつくる粉末溶射組成物を与える。換言すれば、少なくとも2つの異なる熱可塑性樹脂材料を組み合わせることで、粉末溶射組成物を製造できる。異なる熱可塑性樹脂材料は、溶射されると、予期せぬ好ましい性質を有する被膜をつくる粉末溶射組成物を製造するように相乗的に作用する。
【0007】
本発明の第1実施形態は、ポリオレフィン、ビニル類、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステル合金、ナイロンおよびポリ(ビニリデンフルオライド)、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルケトン(PEEK)およびポリウレタンからなる群から選択される第1の熱可塑性樹脂材料と、ポリオレフィン、ビニル類、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステル合金、ナイロンおよびポリ(ビニリデンフルオライド)、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルケトン(PEEK)およびポリウレタンからなる群から選択される少なくとも一つの、第1の熱可塑性樹脂材料とは異なるさらなる熱可塑性樹脂材料とを含む粉末溶射組成物を提供する。
【0008】
また、本発明の溶射組成物は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フッ素化エチレンプロピレン樹脂(FEP)過フルオロアルコキシ共重合体樹脂(PFA)テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選択される少なくとも一つのフッ素ポリマーを少なくとも一つ含んでよい。本発明の溶射組成物にフッ素ポリマーを加えることにより、耐落書き被膜(anti−graffiti coating)をつくるようにインクの付着を防止できる表面を製造できる潤滑性を有するようになる。
【0009】
本発明の溶射組成物は、酸化銅、銅の顔料、殺菌性化合物、色彩管理粒子(color control particles)、耐磨耗性粒子、発光粒子、潤滑粒子、滑り止めの粒子、金属カーバイド、バーミキュライト、金属単体(neat metals)、炭素繊維、結晶状粒子、セルロース、ガラス繊維およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの添加物をさらに含んでもよい。
【0010】
上述した添加物を本発明の溶射組成物に一度に添加すると、付加的に第2の性質が与えられるが、上述した少なくとも2つの熱可塑性材料の組み合わせによる予期せぬ相乗的な効果を打ち消すことはない。以下、発明の詳細な説明の欄で本発明の組成物をより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、少なくとも2つの異なる熱可塑性樹脂材料を含む粉末溶射組成物であって、一度で基材表面に溶射して被覆されると、各々の熱可塑性樹脂材料を別々に溶射して基材表面に付着させるよりも良好に基材表面に付着し被覆できる粉末溶射組成物を提供する。加えて、本発明の溶射組成物を噴霧することで生じる被膜は、同一の熱可塑性樹脂材料を別々に塗布して得られる被膜と比較して、高度に、割れ、剥離、端がめくれたり、端が持ち上がったりすることに耐える。
【0012】
本発明の溶射組成物は、約90質量%以下の第1の熱可塑性樹脂材料と、約50質量%以下の第1の熱可塑性樹脂材料と異なる少なくとも一つの熱可塑性樹脂材料とを含み、少なくとも一つの熱可塑性樹脂材料は、第1の熱可塑性樹脂材料とは異なる。本発明の第1の熱可塑性樹脂組成物は、ポリオレフィン、ビニル類、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステル合金、ナイロンおよびポリ(ビニリデンフルオライド)からなる群から選択されてよい。本発明の組成物は、少なくとも一つのさらなる熱可塑性樹脂材料を含み、この材料は、第1の熱可塑性樹脂材料と同じ群から選択されてもよいが、第1の熱可塑性樹脂材料とは異ならなければならない。
【0013】
各々の熱可塑性樹脂材料を別々に溶射するよりむしろ、2つまたはそれ以上の熱可塑性樹脂材料を機械的ブレンドしたものからなる溶射組成物を溶射したほうが優れた被膜ができることがわかった。本発明の組成物を溶射することでつくられる被膜は、本発明の組成物の各熱可塑性樹脂材料を別々に溶射してつくられる被膜と比較して、優れた物理的性質を有する。本発明の組成物を製造するために使用される熱可塑性樹脂粉末の多くは、溶射で被覆することができる。しかし、各々の熱可塑性樹脂材料のタイプは、現場での塗布を実用化すると特殊な問題を引き起こし、被覆するには限界があり、信頼性に問題があった。数多くの実験的試験後、特に熱可塑性樹脂材料の群/熱可塑性樹脂材料の種類と関係がある固有の問題は、別のタイプの熱可塑性樹脂材料/別の種類の熱可塑性樹脂材料を加えることによって解決できることがわかった。換言すれば、少なくとも2つの異なるタイプの熱可塑性樹脂材料を組み合わせることによって、単独で各熱可塑性樹脂材料を使用することに関係がある問題を解決できる。
【0014】
例えば、等量のポリエチレンとエチレンアクリル酸(EAA、酸修飾したポリオレフィン)を含む本発明の溶射組成物を溶射すると、各々の熱可塑性樹脂材料を単独で塗布する場合にはない予期せぬ性質を被膜にもたらす。強化される性質としては、より良好な接着性能、厚さ、柔軟性および非技術依存(non−technique dependence)(等量のTSブレンドのデータに関する表1参照)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0015】
同等に、溶射をポリエチレン単独で行うと、オレンジの皮のような外観の粗い被膜がつくられる。その被膜は、ひびが入ったり、剥離したりするため、壊滅的に失敗する傾向にある。エチレンアクリル酸(EAA)を溶射すると、接着力がよい滑らかな被膜が得られるが、硬度や耐摩耗性が欠如する。しかしながら、表1に示すように、ポリエチレンおよびエチレンアクリル酸(EAA)を組み合わせた本発明の組成物は、大変有用で十分に機能的な被膜を与える。
【0016】
また、本発明は、ナイロン、好ましくはナイロン−11および少なくとも一つのコポリアミドを含む組成物(好ましくは、ナイロン−6、ナイロン−66およびナイロン−12を含み、Atofina Chemicals、inc.ニュージャージー州から入手可能なPlatamid(登録商標)なる組成物)も対象とし、この組成物は、二つの成分を単独で溶射するよりも非常に優れた性質を有する被膜を生じさせる。特に、本発明は、約1質量%から約67質量%のナイロンと、約33質量%のコポリアミドとを含む組成物を提供する。本発明の組成物で使用するナイロンとしては、特に限定されないが、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−12またはナイロン−11が挙げられ、ナイロン−11が好ましい。この組成物はプライマーなしで大体の基材に付着し、端がめくれることはほとんどなく、各熱可塑性樹脂材料に関連するよく知られた問題点もほとんど示さない。加えて、ナイロン単独での溶射は、プライマーを使用しなければならず、また、ナイロンを溶解させるために予め約400°F(204.4℃)に加熱しなければならないので、きわめて困難である。一方、本発明のナイロン/コポリアミドの組成物は、プライマーを使用せずにほとんどの基材表面に溶射することができ、ナイロンを予め加熱する必要がなく、端がめくれることがほとんどない被膜を生じさせる。
【0017】
使用する熱可塑性樹脂材料の特定タイプに加え、本発明の組成物の各成分量を操作することで、特有で且つ優れた溶射組成物を製造することもできた。例えば、約10質量%から約60質量%のポリエチレンと、約10質量%から約60質量%のエチレンアクリル酸(EAA)とを含む組成物は、溶射されると、用途の広い厚膜被膜をつくる。この用途の広い厚膜被膜は、特に、電気抵抗、特異的性質を与える添加剤を含む下塗り塗料として有用である。
【0018】
本発明の別の粉末溶射組成物は、約10質量%〜85質量%の金属合金またはセラミック合金と、約3質量%のフルオロポリマーと、約6質量%のエチレンアクリル酸(EAA)と、6質量%以下のポリエチレンと、を含む。この溶射組成物を溶射することで、単独で塗布される各熱可塑性樹脂材料では通常関連しないような、静止摩擦(グリップ)、磨耗及び非付着的性質が増強された被膜を作成できる。この組成物で使用される金属合金としては、ニッケル合金、酸化アルミニウム合金またはそれらの混合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。ニッケル合金および/または酸化アルミニウム合金の使用量は、必要とされる耐摩耗性に依存する。ニッケル合金および/または酸化アルミニウム合金の代わりに、他の耐摩耗性および/または潤滑性の付加剤が使用でき、他の金属酸化物、バーミキュライト、炭素繊維、結晶状粒子、セルロース、ガラス繊維およびクロムのような金属(neat metals)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの付加剤は、さまざまな粒径および濃度で使用することができる。これらの付加剤のいくつかは耐摩耗性を与え、ニッケル合金及び/または酸化アルミニウム合金の代わりに加えることができるが、ほとんどの場合、組成物中に必要なニッケル合金及び/または酸化アルミニウム合金の量を減少させてニッケル合金及び/または酸化アルミニウム合金に加えて添加することができ、ニッケル合金及び/または酸化アルミニウム合金を単独で使用したときには認識されてない付加的性質を与える。
【0019】
本発明の組成物に含まれるフルオロポリマーとしては、(PTFE)ポリテトラフルオロエチレン、FEP(フッ素化エチレンプロピレン樹脂)PFA(過フルオロアルコキシ共重合樹脂)またはETFEとしてデュポンから入手可能なテトラフルオロエチレン−エチレン共重合体が挙げられる。これらフルオロポリマーは、組成物の約1質量%から約30質量%の範囲で添加され、最終組成物の残量は、約1質量%から約30質量%の範囲で少なくとも2つの熱可塑性樹脂材料を含む混合粉末のマトリックス(hybrid powder matrix)を含む。
【0020】
本発明の別の熱可塑性樹脂組成物は、表面のリリース(release)を増強させるために、約50質量%以下のEAA、約50質量%以下のポリ(フッ化ビニリデン)−PVDF、約1から約15質量%のフルオロポリマー粒子を含む。この組成物は、落書きの防止のみならず、長期間に亘る耐候性のために使用することもできる。
【0021】
さらに、本発明の別の熱可塑性樹脂組成物は、抗菌性のために加えられる約1質量%から約5質量%の殺菌性の粉末とともに、ポリエチレンとEAAとの混合物を含む。本発明の組成物で使用される殺菌性の粉末としては銀イオン粉末、トリクロサン(triclosane)、カプサイシンおよびそれらの混合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0022】
さらに、本発明の別の熱可塑性樹脂組成物は、ポリエチレンとポリエーテルアミドの混合物、好ましくはPebax(登録商標)を含む。ポリエーテルブロックアミドのPebax(登録商標)は、可塑剤が含まれていない工業ポリマー(engineering polymer)に属する熱可塑性エラストマーである。Pebax(登録商標)は、他のポリマーと混合させることで容易に溶融させることができる。それら固有の化学(ポリエーテルブロックアミド−PEBA)は、Pebax(登録商標)を単量体ブロックのタイプや比率を変えることで、様々な物理的性質及び機械的性質の実現を可能にする。Pebax(登録商標)の製品範囲は、ポリアミドの性質をもつグレードから、よりエラストマーに近い性質をもつグレードまでに亘る。Pebax(登録商標)の優れた加工処理性能により、それらが必要とする要素:軽量性、大きな柔軟性(広範囲)、弾力性、低いヒステリシス(他の屈曲)による非常に良好な動的な性質、低温(耐衝撃性、低いリグリフィケーション(rigification))での顕著な性質、簡単な処理、大部分の化学製品に対する良好な抵抗、香りを染み込ませる能力、低温での顕著な耐衝撃性に理想的な材料となる。
【0023】
得られるPebax(登録商標)含有被膜は、単独で溶射して塗布された各成分では奏されない特性を有する。例えば、Pebax(登録商標)は、単独で塗布すると良好な柔軟性を有するが、良好な耐摩耗性を示さない。しかしながら、Pebax(登録商標)およびポリエーテルおよび/またはEAAからなる組成物は、溶射されると、Pebax(登録商標)の柔軟性と、ポリエーテルおよび/またはEAAの耐摩耗性とを有する被膜を作成できる。さらに、この組成物からつくられる被膜は、−50℃もの低温及び50℃もの高温に耐えることができる。
【0024】
本発明の別の組成物は、Pebax(登録商標)およびナイロン、好ましくはナイロン−11を組み合わせることによって作成される。この場合も、溶射されると、ナイロンよりも耐磨耗性に優れ、Pebax(登録商標)よりも柔軟性に優れた被膜を作成する溶射組成物を提供する。換言すれば、組成物は、各成分単独から作成される被膜被覆によっては示されない性質を有する被膜を作る。
【0025】
さらに、本発明の別の熱可塑性樹脂材料は、ポリエチレン、銅顔料/銅金属、PTFE、エチレングリコールとともに結合されているアジオン(Agion)の複合物を含み、Pebax(登録商標)のようなポリエーテルコポリアミドと混合させる。この組成物は、一度に溶射すると、防汚性を与える溶射被膜をつくる。銅顔料/銅金属は、上述した組成物の防汚性を与える添加剤の1つであるが、防汚性を示す溶射された表面を製造するために設計された組成物中に、カプサイシンのような他の防汚剤を含ませることは、本発明の範囲内である。
【0026】
少なくとも2つの熱可塑性樹脂材料を含む本発明の下塗り溶射組成物には、上述のような多くの異なる添加剤を添加でき、1種の熱可塑性樹脂材料のみを含む溶射組成物よりも強化された性質を有する独自の溶射組成物を製造できることは、本開示の範囲内で十分に予想される。使用する添加物としては、本明細書で開示されているもののみならず、溶射の分野で用いられる他の添加剤も挙げられるが、これらに限定されない。本発明の独創的な面は、単独で使用すると組み合わせるよりも劣った性質を有する少なくとも2つの熱可塑性樹脂材料を添加することであるので、この開示の後に開発される添加剤を本発明の溶射組成物に添加してもよい。そのような添加剤は、本発明の溶射組成物を塗布された際に付加的性質を与えるために使用される。これらの性質としては、抗菌性、匂い制御、暗闇で光る性質、潤滑性の増加、耐摩耗性の増加、グリップの増加または減少が挙げられ、それらは全て、溶射組成物の第2の主目的である。
【0027】
例えば、組成物の潤滑性を増加させるために、2成分の熱可塑性樹脂材料の溶射組成物にバーミキュライトを添加することができる。この組成物の使い道のひとつとして、転倒を防ぐために変形する際、タイヤが道路をグリップせずに回転するよう、SUVタイヤの側壁に適用することができる。また、バーミキュライトを含む組成物と同様にここで説明した全ての組成物について、付加的な機能を見出すことができ、これらは本開示の一部である。
【0028】
本発明の粉末溶射組成物は、単に大規模混合機で粉末成分をブレンドし、組成物の組成が等量に分配されるまで粉末成分を混合することによって製造できる。本発明の組成物は、バインダーを使用及び/または、加えた粒子を加熱軟化した成分に付着させて複合物を形成するために加熱軟化することによって製造する。この手順において、熱可塑性樹脂粒子はバインダーで湿り、および/または加熱によって軟化(粘着)する。そして、上述した他の成分の少なくとも一つは、湿った及び/または軟化した熱可塑性樹脂粒子に付着または被覆される。湿った熱可塑性樹脂粒子に加えられた他の成分は、互いに付着し、他の成分を被覆する粒子を形成する。粒子は、部分的に被覆されていなければならず、組成物を製造するために添加する他の成分へ1つの熱可塑性樹脂材料を過剰容量で加えることで制御する。別の方法では、添加剤は、容易に気化可能な溶媒、すなわちアルコールまたは水に溶解させ、溶媒を完全に気化させた後に、添加剤が組成物中るところに均一に分散するよう、組成物の固形成分上に噴霧することができる。
【0029】
高分子化学で使用される一般的な攪拌機がこの混合工程にて使用できる。一般的に、組成物中の1つの熱可塑性樹脂粒子の大きさは、組成物で使用される第2の熱可塑性樹脂粒子よりも大きい。一般的な大きさの範囲は約10μmから約300μmであり、好ましくは、約44μmから約150μm、または、それ以上である。顔料のような組成物の微細成分は、一般的に大きさが約1μm以下から約30μmである。添加物がガラス繊維のような繊維状である場合、その繊維は、直径約5μm以下、長さ約300μm以下である。最終組成物中の粒子の大きさは、好ましい粒径の大きさを有するメッシュに最終的な粉末組成を通過させることによって制御することができる。
【0030】
【表1】

【0031】
以上、上記の説明は多くの具体例を含むが、これら具体例は、好ましい実施形態の例示にすぎず、本発明を制限するように解釈してはならない。当業者であれば、特許請求の範囲に定義されている発明の思想、発明の範囲内で多くの実施形態を想到するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末溶射組成物であって、前記組成物の約90質量%以下の第1の熱可塑性樹脂材料と、該第1の熱可塑性樹脂材料とは異なる前記組成物の約50質量%以下の少なくとも一つのさらなる熱可塑性樹脂材料と、を含む粉末溶射組成物。
【請求項2】
前記第1の熱可塑性樹脂材料は、ポリオレフィン、ビニル類、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステル合金、ナイロンおよびポリ(ビニリデンフルオライド)、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルケトン(PEEK)およびポリウレタンからなる群から選択される請求項1に記載の溶射組成物。
【請求項3】
前記少なくとも一つのさらなる熱可塑性樹脂材料は、ポリオレフィン、ビニル類、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステル合金、ナイロンおよびポリ(ビニリデンフルオライド)、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルケトン(PEEK)およびポリウレタンからなる群から選択され、前記第1の熱可塑性樹脂材料とは異なる請求項2に記載の溶射組成物。
【請求項4】
さらに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレンプロピレン樹脂(FEP)、過フルオロアルコキシ共重合体樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つのフルオロポリマーを含む請求項1に記載の溶射組成物。
【請求項5】
前記少なくとも一つのフルオロポリマーを、前記組成物の約1質量%から約30質量%で含む請求項4に記載の溶射組成物。
【請求項6】
前記第1の熱可塑性樹脂材料はポリエチレンであり、前記少なくとも一つのさらなる熱可塑性樹脂材料は、エチレンアクリル酸(EAA)である請求項1に記載の溶射組成物。
【請求項7】
前記組成物の約10質量%から約60質量%のポリエチレンと、前記組成物の約10質量%から約60質量%のエチレン・アクリル酸(EAA)を含む請求項6に記載の溶射組成物。
【請求項8】
前記組成物の約50質量%のポリエチレンと、前記組成物の約50質量%のエチレン・アクリル酸(EAA)を含む請求項7に記載の溶射組成物。
【請求項9】
前記第1の熱可塑性樹脂材料はナイロンであり、前記少なくとも一つのさらなる熱可塑性樹脂は、コポリアミドである請求項1に記載の溶射組成物。
【請求項10】
前記ナイロンは、ナイロン−11であり、前記コポリアミドはナイロン−6、ナイロン−66、及びナイロン−12の混合物である請求項9に記載の溶射組成物。
【請求項11】
前記ナイロン−11を前記組成物の約1質量%から約67質量%含み、前記コポリアミドを前記組成物の約1質量%から約33質量%含む請求項10に記載の溶射組成物。
【請求項12】
さらに、金属またはセラミック合金および少なくとも一つのフルオロポリマーを含む請求項6に記載の溶射組成物。
【請求項13】
前記組成物の約10質量%から約85質量%の前記金属合金またはセラミック合金と、前記組成物の約3質量%の前記フルオロポリマーと、前記組成物の約6質量%のエチレンアクリル酸(EAA)と、前記組成物の約6質量%以下のポリエチレンとを含む請求項12に記載の溶射組成物。
【請求項14】
前記金属合金は、ニッケル合金または酸化アルミニウムである請求項13に記載の溶射組成物。
【請求項15】
さらに、金属酸化物、耐磨耗性粒子、潤滑性添加剤、カーバイド、バーミキュライト、金属単体、炭素繊維、結晶状粒子、セルロース、ガラス繊維、またはそれらの混合物を含む請求項6に記載の溶射組成物。
【請求項16】
さらに、金属酸化物、耐磨耗性粒子、潤滑性添加剤、カーバイド、バーミキュライト、金属単体、炭素繊維、結晶状粒子、セルロース、ガラス繊維、またはそれらの混合物を含む請求項12に記載の溶射組成物。
【請求項17】
前記フルオロポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレンプロピレン樹脂(FEP)、過フルオロアルコキシ共重合体樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項12に記載の溶射組成物。
【請求項18】
前記組成物の約50質量%以下のエチレンアクリル酸(EAA)と、前記組成物の約50質量%以下のポリビニリデンフルオライド(PVDF)と、前記組成物の約1質量%から約15質量%のフルオロポリマー粒子と、を含む熱可塑性樹脂組成物。
【請求項19】
ポリエチレンと、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と、酸化銅、銅顔料、殺菌性化合物、色彩管理粒子、耐磨耗性粒子、発光粒子、潤滑性粒子、滑り止め粒子、バーミキュライト、金属単体、炭素繊維、結晶状粒子、セルロース、ガラス繊維およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの添加剤と、を含む粉末溶射組成物。
【請求項20】
前記殺菌性化合物は、銀イオン粉末、トリクロサン、カプサイシン及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項19に記載の粉末溶射組成物。
【請求項21】
前記第1の熱可塑性樹脂材料は、ポリエチレン、エチレンアクリル酸(EAA)、及びナイロンからなる群から選択され、前記少なくとも一つのさらなる熱可塑性樹脂材料は、ポリエーテルブロックアミドである請求項9に記載の溶射組成物。
【請求項22】
前記組成物の約90質量%以下のポリエーテルブロックアミドと、前記組成物の約90質量%以下のポリエチレン、エチレンアクリル酸(EAA)またはナイロンとを含む請求項21に記載の溶射組成物。
【請求項23】
前記ナイロンはナイロン−11である請求項22に記載の溶射組成物。
【請求項24】
さらに、前記組成物の20質量%以下のガラス繊維を含む請求項21に記載の溶射組成物。

【公表番号】特表2009−524732(P2009−524732A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552451(P2008−552451)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/002227
【国際公開番号】WO2007/089620
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(507231725)ジオム コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】