説明

少なくとも2つの相異なる水素化脱硫工程を包含するオレフィンガソリンを脱硫する方法

【課題】硫黄およびチオール含有量が少ないガソリンの製造のためのガソリン留分の水素化脱硫方法を提供する。
【解決手段】本発明の方法は、供給材料を構成するガソリンの2つの相異なる留分について並行して操作される、少なくとも2つの水素化脱硫工程HDS1およびHDS2を包含する。水素化脱硫工程HDS2における水素流量は、水素流量と処理されるべき供給材料の流量との間の比が、水素化脱硫工程HDS1において脱硫するために用いられる流量の比の80%未満であるようにされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄およびチオール含有量が少ないガソリンを製造する方法であって、2つの相異なるガソリン留分について並行して操作される少なくとも2つの水素化脱硫工程を包含する方法に関する。前記方法は、場合によっては、単一の水素精製および再循環セクションを含む。水素化脱硫工程は、1つ以上の水素化脱硫セクションに対応する。水素化脱硫セクションは、1つ以上の床に対応する。
【0002】
新環境標準を満足するガソリンまたはディーゼルエンジン用の燃料を製造するには、特に、それらの硫黄含有量が大幅に低減させられることが必要である。環境規格により、EC内では精製業者はガソリンおよび軽油プール中の硫黄量を2005年には多くとも50ppmの値に2009年1月1日には多くとも10ppmの値に低減させるように強いられる。
【0003】
処理されるべき供給材料は、一般的に、硫黄を含有するガソリン留分、例えば、コーキング装置、ビスブレーキング装置、水蒸気クラッキング、接触分解装置(FCC)等からのガソリン留分である。前記供給材料は、好ましくは、接触分解装置からのガソリン供給材料であって、その蒸留範囲が0〜300℃、好ましくは0〜250℃であるものによって構成される。本明細書の以降の記載において、本発明者らは、大雑把には、接触分解ガソリンについて述べるが、この定義を、接触分解ガソリン部分に加えて、他の転化装置からのガソリンフラクションを含み得るガソリンに広げる。
【0004】
接触分解ガソリンは、ガソリンプールの30〜50容積%を構成し得、一般的には、モノオレフィンおよび硫黄含有量が多い。しかしながら、改質ガソリンに存在する硫黄のほぼ90%は、接触分解からのガソリンに起因する。ガソリン脱硫、主としてFCCガソリンは、それ故に、現在および将来の規格に合わせる際に重大である。しかしながら、ガソリン中に含まれるモノオレフィンは、それらのオクタン価に大きく貢献する。オレフィンクラッキングからのガスのオクタン価を高く維持するために、ガソリンの水素化脱硫処理の間のモノオレフィンの水素化度を制限することが必要である。この目的のために選択的水素化脱硫法が開発された。
【0005】
さらに、脱硫ガソリンはまた、腐食力に関する規格を満足しなければならない。ガソリンの腐食力は、本質的に、チオール等の酸性の硫黄含有化合物の存在に起因する。それ故に脱硫ガソリンが含んでいるチオールは、それらの腐食性を制限するように少量でなければならない。しかしながら、現在知られているのは、オレフィンガソリンの選択的水素化脱硫のための装置において、反応器中に存在するHSが、水素化されなかったモノオレフィンと反応してチオールを形成し得ることである。製造されたガソリン中のチオールの割合は、一般的に、ガソリンの硫黄含有量がより少ない場合により高い。チオール含有量を最少にするために、一般的に、水素流量を多くして操作することが好ましい。しかしながら、これは、コンプレッサ、再循環および水素精製に関連して高コストを必要とする。この問題を克服するために、本発明は、脱硫ガソリン中の一定の硫黄含有量に対してチオール含有量を低減させ、かつ、オクタン価を増加させつつ、コンプレッサのエネルギー消費を制限し得る解決方法を提供する。
【0006】
さらに、対照的に、世界規模の自動車市場における変化は、状況に応じた、最大の柔軟性、したがって、ディーゼルエンジン車両用の軽油の製造またはガソリンの製造を最大化することの可能性を研究することを精製業者に強要する。それ故に、ガソリンプールまたは中間留分プールのいずれかに重質ガソリンフラクションを送る最も安価な可能性のある選択肢を精油業者が要求に応じて自由に有することは非常に有利であり得る。
【0007】
要約すると、本発明により、燃料中の硫黄含有量を低減させること、低硫黄ガソリン中のチオール含有量を制限すること、および、市場要求に応じたガソリン留分または中間留分に向けた燃料の製造の適応柔軟性の三重の課題を経済的に解決する新規解決方法が提案される。さらに、温室効果ガスの排出を低減させるという現在の背景において、あらゆる新規な考えに、エネルギー消費を制御することの課題を結び付けることは重要である。本発明の背景において記載される方法は、水素化脱硫工程に再循環させられる水素の必要な圧縮に起因するエネルギー消費を制限しながら上記の三重の課題の同時処理を可能にするので、革新的である。オクタン価(research octane number:RON)≧90.70および硫黄含有量[S]≦50ppm、好ましくはRON≧90.70および[S]≦37ppm、より好ましくはRON≧90.75および[S]≦35ppm、より好ましくはRON≧90.80および[S]≦31ppmであるようなオクタン価および硫黄含有量(S)を有するガソリンが得られる。好ましくは、各対は、モーター法オクタン価(motor octane number:MON)≧79.45、好ましくはMON≧79.50、より好ましくはMON≧79.55であるようなMONと関連する。
【背景技術】
【0008】
特許文献1には、モノオレフィン水素化によるオクタン価の損失を制限しながら接触分解ガソリンを脱硫する方法が記載されている。この方法は、ガソリンを、チオフェンおよびアルキルチオフェンから選択される脱硫することが困難である化合物を豊富に含む少なくとも1つのフラクションと、チアシクロペンタン、アルキルチアシクロペンタン、ベンゾチオフェンおよびアルキルベンゾチオフェンから選択される脱硫することが容易である化合物を豊富に含むフラクションとを含む複数のフラクションに蒸留する工程からなる。これら2種のフラクションの少なくとも1つは、水素化脱硫法によって処理され、次いで、未処理フラクションと混合される。
【0009】
当該方法は、処理前に異なるフラクションの分析を必要とするという不利益な点を有しており、最終脱硫生成物中のチオールの量を制限するためにどのようにしてフラクションを選択するかを記載していない。
【0010】
特許文献2には、非選択的である水素化脱硫条件下でのHCN(heavy cat naphtha)と称されるガソリンの重質フラクションおよび選択的水素化脱硫条件下でのICN(intermediate cat naphtha)と称されるガソリンの中間フラクションの並行処理に基づく、クラッキング装置からのガソリン留分を脱硫する方法であって、水素化処理済の重質フラクション(HCN)によって中間ガソリン(ICN)が加熱される、方法が記載されている。
【0011】
当該特許には、脱硫ガソリン中のチオール形態の硫黄含有化合物の割合を制限するために種々の留分をどのように処理するかが記載されていない。さらに、当該特許の開示によると、LCN(light cat naphtha)と称されるガソリンの軽質フラクションは、一般的に、補完脱硫処理、例えば、水酸化ナトリウム含有溶液を用いる洗浄によるチオールの抽出を経なければならない。
【0012】
脱硫クラッキングガソリン中のチオールを抽出する問題について、特許文献3に記載される現行の解決方法は、選択的水素化処理からのガソリンを後処理して、チオールを激減させることからなる。多くの方法が想定される。例えば、本発明者らは、特許文献4を引用し得る。この文献には、吸着、水酸化ナトリウムによる抽出、熱処理等の種々の方法を用いてチオール含有量を低減させるように脱硫ガソリンを部分的に処理する方法が記載されている。しかしながら、これらの方法は、それらが、ガソリンを処理するための追加工程の使用を必要とするという不利な点を有し、ガソリンプールまたは中間留分プールのいずれかに所定の留分を送る柔軟性を有していない。
【0013】
特許文献5には、硫黄含有量を低減させるための種々の処理工程を包含するクラッキングガソリンを脱硫する方法が記載されている。当該方法は、ジオレフィン水素化工程と、増量化(weighting)により軽質硫黄含有化合物を変換する工程と、ガソリンを複数の留分に蒸留する工程と、生じたガソリンの重質フラクションの少なくとも一部を脱硫する少なくとも1回の工程とを包含する。しかしながら、当該特許には、脱硫ガソリン中のチオール含有量を最少にするようにいかにしてガソリンを処理するかも、水素化脱硫工程からの水素をいかにして処理するかも記載されていない。
【特許文献1】欧州特許出願第0725126号明細書
【特許文献2】米国特許第6596157号明細書
【特許文献3】米国特許第6960291号明細書
【特許文献4】国際公開第01/79391号パンフレット
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0042175号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、燃料中の硫黄含有量を低減させること、低硫黄ガソリン中のチオール含有量を制限すること、および、市場要求に応じたガソリン留分または中間留分に向けた燃料の製造の適応柔軟性の三重の課題を経済的に解決する新規解決方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は、硫黄およびチオール含有量が少ないガソリンを製造する方法であって、供給材料を構成するガソリンの2つの相異なる留分について並行して操作される少なくとも2つの水素化脱硫工程HDS1およびHDS2を包含し、該供給材料は、接触分解装置からのガソリンに対応し、3つのフラクション:
・100℃未満の沸点を有するガソリンフラクションに対応する軽質フラクション;
・180℃超の沸点を有するガソリンフラクションに対応する重質フラクションフラクション;および
・軽質フラクションと重質フラクションとの間の中間フラクションに対応するコアフラクション
に蒸留され、水素化脱留工程HDS2における水素流量は、水素流量(標準m/hで表示される)と処理されるべき供給材料の流量(標準条件下でのm/hで表示される)との比が水素化脱硫工程HDS1での脱硫のために利用される流量の比の80%未満であるようにされる、方法である。
【0016】
水素化脱硫工程HDS1およびHDS2からの過剰の水素を精製しかつこれを再循環させるための単一のセクションを含むことが好ましい。
【0017】
2つの水素化脱硫工程において起こる反応のために必要な水素の少なくとも全部が水素化脱硫工程の一方にのみ投入され、該水素化脱硫工程からパージされたガスは精製処理に送られ、該精製処理からの精製されたガス状産物は、他方の水素化脱硫装置にのみ再循環させられることが好ましい。
【0018】
2つの水素化脱硫工程において起こる反応のために必要な水素の少なくとも全部が、水素化脱硫工程HDS2に投入されることが好ましい。
【0019】
水素化脱硫工程HDS1が行われる装置における水素流量は、水素流量(標準m/hで表示される)と処理されるべき供給材料の流量(標準条件下でのm/hで表示される)との間の比が50〜1000Nm/mであるようにされ、水素化脱硫工程HDS2が行われる装置における水素流量は、水素流量(標準m/hで表示される)と処理されるべき供給材料の流量(標準条件下でのm/hで表示される)との間の比が30〜800Nm/mであるようにされることが好ましい。
【0020】
軽質ガソリンフラクションおよび中間フラクションによって構成される混合物または中間フラクション単独は水素化脱硫工程HDS1において処理され、該処理は、60%未満のモノオレフィン水素化度で選択的水素化脱硫を行うのに適した1種以上の触媒を含む直列の1以上の水素化脱硫反応器において、処理されるべきガソリンを水素と接触させることからなり、ガソリンの重質フラクションは水素化脱硫工程HDS2において処理され、該処理は、水素化脱硫を行うのに適した1種以上の触媒を含む直列の1以上の水素化脱硫反応器において、処理されるべきガソリンを水素と接触させることからなり、水素化脱硫は、選択的にまたは非選択的に行われ、モノオレフィンの水素化度は、選択的水素化脱硫の場合には90%未満であることが好ましい。
【0021】
供給材料は、
・ジオレフィンをモノオレフィンに選択的に水素化する;および
・モノオレフィンとの反応によって飽和軽質硫黄含有化合物をより重質のスルフィドまたはチオールに変換する
ように予備処理されることが好ましい。
【0022】
水素化脱硫工程HDS1およびHDS2において用いられる触媒は、担体および第VI族金属を含み、該第VI族金属は第VIII族金属によって促進されるまたは促進されない、22nm超の平均細孔径を有する1種の触媒または触媒の連結であることが好ましい。
【0023】
水素化脱硫工程HDS1およびHDS2において用いられる触媒は、無定型多孔質鉱物担体、少なくとも1種の第VI族金属および/または少なくとも1種の第VIII族金属を含み、硫化前の触媒の多孔度は、20nm超の平均細孔径を有するようにされ、第VI族金属の比表面積は、担体面積(m)当たり該金属の酸化物2×10−4〜4.0×10−3グラムであることが好ましい。
【0024】
第VI族金属はモリブデンまたはタングステンであり、第VIII族金属はニッケルまたはコバルトであることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、硫黄およびチオール含有量が少ないガソリンの製造のためのガソリン留分の水素化脱硫方法に関し、供給材料を構成するガソリンの2つの相異なる留分について並行して操作される、少なくとも2つの水素化脱硫工程HDS1およびHDS2を包含し、水素化脱硫工程HDS2における水素流量は、水素流量と処理されるべき供給材料の流量との間の比が、水素化脱硫工程HDS1において脱硫するために用いられる流量の比の80%未満であるようにされる。このことにより、燃料中の硫黄含有量を低減させること、低硫黄ガソリン中のチオール含有量を制限すること、および、市場要求に応じたガソリン留分または中間留分に向けた燃料の製造の適応柔軟性の三重の課題を経済的に解決する新規解決方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、ガソリン留分を構成する種々の留分の分別処理に基づいている。
【0027】
接触分解ガソリンにおいて、軽質フラクションは、モノオレフィンおよび飽和硫黄含有化合物、例えばチオール、スルフィド等を豊富に含むことが知られている。用語「軽質フラクション」は、沸点が100℃未満、好ましくは80℃未満、より好ましくは65℃未満であるガソリンフラクションを意味する。ガソリンの重質フラクションは、ベンゾチオフェンタイプの硫黄含有化合物、例えば、ベンゾチオフェン、アルキルベンゾチオフェンを豊富に含み、およびより少ない程度に、それは、アルキルチオフェンに富む。さらに、それは、芳香族化合物を豊富に含むが、オレフィン化合物には乏しい。ガソリンの重質フラクションは、沸点が160℃超、好ましくは180℃超、より好ましくは207℃超である炭化水素によって構成される。ガソリンの当該重質フラクションは、一般的に、最も多くの硫黄を含有するものである。ガソリンの重質フラクションは、ガソリンプール、または灯油または軽油を製造するための中間留分フラクションのいずれかに組み込まれ得る。コアフラクションは、軽質フラクションと重質フラクションの間の中間フラクションに対応する。ガソリンのコアフラクションは、モノオレフィンおよび硫黄含有チオフェンタイプの化合物(チオフェン、メチルチオフェンおよび他のアルキルチオフェンを含む)を豊富に含む。
【0028】
一般的に、ガソリンの種々のフラクションは、接触分解装置からの流出物を蒸留することによって得られる。
【0029】
ガソリンの軽質フラクションおよび中間フラクションによって構成される混合物または中間フラクション単独は、HDS1で表示される第1の水素化脱硫工程において処理される。この工程は、直列の1以上の水素化脱硫反応器において、処理されるべきガソリンを水素と接触させることからなる。該反応器は、選択的水素化脱硫(すなわち、モノオレフィン水素化度が60%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは40%未満である)を行うための1種以上の適切な触媒を含む。
【0030】
この工程における操作圧力は、一般的に0.5〜5MPa、好ましくは1〜3MPaである。温度は200〜400℃、好ましくは220〜380℃である。直列の複数の反応器において処理が行われる場合、各反応器の平均操作温度は、少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃、より好ましくは少なくとも15℃だけ先行する反応器の操作温度より高い。
【0031】
各反応器において用いられる触媒の量は、触媒の容積(m)当たりの処理されるべきガソリンの流量(標準条件下のm/hで表される)の比(毎時空間速度とも称される)は0.5〜20h−1、好ましくは1〜15h−1である。最も好ましくは、第1の反応器は、2〜8h−1の毎時空間速度で操作される。
【0032】
水素流量は、水素流量(標準m/h(Nm/h)で表される)と処理されるべき供給材料の流量(標準条件下のm/hで表される)との比が、50〜1000Nm/m、好ましくは70〜800Nm/mであるようにされる。
【0033】
HDS1工程の間に達成される脱硫度は、一般的に80%超、好ましくは90%超である。
【0034】
水素化脱硫工程の後、反応混合物は、炭化水素を凝結させるために60℃未満の温度に冷却される。気相および液相は、反応器において分離される。脱硫されたガソリンおよび溶解HSの一部を含有する液体フラクションは、ストリッピングセクションに送られ、主として水素によって構成され、大部分のHSを含有する気体フラクションは、精製セクションに送られる。
【0035】
ガソリンの重質フラクションは、HDS2で表示される相異なる水素化脱硫工程において処理される。この工程は、水素化脱硫を行うための1種以上の適切な触媒を含む直列の1以上の水素化脱硫反応器において、処理されるべきガソリンを水素と接触させることからなる。好ましくは、重質ガソリンの水素化脱硫は、単一反応器での単一工程において行われる。水素化脱硫は、選択的または非選択的に行われ得る。第1の場合、モノオレフィンの水素化度は90%未満、好ましくは80%未満、より好ましくは60%未満である。
【0036】
この工程における操作圧力は、一般的に0.5〜10MPa、好ましくは1〜8MPaである。温度は、220〜450℃、好ましくは250〜380℃である。直列の複数の反応器において処理が行われる場合、各反応器における平均操作温度は、少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃、より好ましくは少なくとも15℃まで先行する反応器の操作温度より高い。
【0037】
各反応器において用いられる触媒の量は、触媒の容積(m)当たりの処理されるべきガソリンの流量(標準条件下のm/hで表される)の比(毎時空間速度とも称される)が、0.3〜20h−1、好ましくは0.5〜15h−1であるようにされる。より好ましくは、第1の反応器は、1〜8h−1の毎時空間速度で操作される。
【0038】
水素流量は、水素流量(標準m/h(Nm/h)で表される)と処理されるべき供給材料の流量(標準条件下でのm/hで表される)との比が、30〜800Nm/m、好ましくは50〜500Nm/mであるようにされる。好ましくは、この比は、水素化脱硫工程HDS1における脱硫のために用いられる流量の比の80%未満、好ましくは60%未満、より好ましくは50%未満、一層より好ましくは40%未満である。
【0039】
水素化脱硫工程の後、反応混合物は、炭化水素を凝結させるために60℃未満の温度に冷却される。気相および液相が分離器において分離される。脱硫ガソリン並びに溶解HSの一部を含有する液体フラクションは、ストリッピングセクションに送られ、主として水素によって構成され、HSの大部分を含有する気体フラクションは、精製セクションに送られる。
【0040】
水素化脱硫反応に関して良好な選択性を有するあらゆる触媒が工程HDS1またはHDS2において用いられ得る。例えば、アルミナ、炭化ケイ素、シリカ、シリカ−アルミナ、酸化チタンおよび酸化マグネシウムによって構成される群から選択される無定型多孔質鉱物担体を含む触媒が用いられる。担体は、単独またはアルミナまたはシリカ−アルミナとの混合物として用いられる。担体は、好ましくは、シリカ、遷移アルミナの族、シリカ−アルミナによって構成される群から選択される。非常に好ましくは、担体は、本質的に、少なくとも1種の遷移アルミナによって構成される、すなわち、それは、少なくとも51重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、さらには少なくとも90重量%の遷移アルミナを含む。それは、場合によっては、遷移アルミナのみによって構成されてもよい。
【0041】
担体の比表面積は、一般的に200m/g以下、好ましくは150m/g未満である。硫化前の触媒の多孔度は、20nm超、好ましくは25nm超、さらには30nmの平均細孔径を有するが、通常は20〜140nm、好ましくは20〜100nm、非常に好ましくは25〜80nmである。細孔径は、ぬれ角140℃を用いるASTM D4284−92標準に従う水銀多孔度測定法によって測定される。
【0042】
水素化脱流触媒は、少なくとも1種の第VI族金属および/または少なくとも1種の第VIII族金属を担体上に含有する。第VI族金属は一般的にモリブデンまたはタングステンであり、第VIII族金属は一般的にニッケルまたはコバルトである。本発明によると、第VI族金属の表面密度は、担体面積(m)当たり該金属の酸化物2×10−4〜4.0×10−3グラムであり、好ましくは4×10−4〜1.6×10−3g/mである。
【0043】
非常に好ましくは、特許出願US200600751A1に記載されるような触媒または触媒の連結が用いられる。それらは、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、マグネシア等の耐火性酸化物から例えば選択される担体を含む触媒であり、該担体は、単独または混合物として用いられ、第VI族金属は、好ましくはモリブデンまたはタングステンであり、これは、第VIII族金属、好ましくはコバルトまたはニッケルによって促進されてもされなくてもよい。この触媒は、22nm超の平均細孔径を有する。任意の触媒の場合、本方法は、一連の水素化脱硫工程を包含し、工程(n+1)における触媒の活性は、工程nにおける触媒の活性の1〜90%であるようになっている。
【0044】
しかしながら、工程HDS2において非選択的な触媒を用いることが可能である。例えば、アルミナ、炭化ケイ素、シリカ、シリカ−アルミナ、酸化チタンおよび酸化マグネシウムによって構成される群から選択される無定型多孔質鉱物担体を含む触媒が用いられる。該担体は、単独またはアルミナまたはシリカ−アルミナとの混合物として用いられる。担体は、好ましくは、シリカ、遷移アルミナ族およびシリカ−アルミナによって構成される群から選択される。非常に好ましくは、担体は、本質的に、少なくとも1種の遷移アルミナによって構成される。すなわち、それは、少なくとも51重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、さらには少なくとも90重量%の遷移アルミナを含む。それは、場合によっては、遷移アルミナのみによって構成されてもよい。水素化脱硫触媒は、少なくとも1種の第VI族金属および/または少なくとも1種の第VIII族金属を担体上に含有する。第VI族金属は、一般的にモリブデンまたはタングステンであり、第VIII族金属は一般的にニッケルまたはコバルトである。本発明の記載において上記の規定されたような水素化脱硫触媒の選択的または非選択的な性質は、一般的に、前記触媒の組成および調製方法によって決まる。選択性を変動させる簡単な方法は、例えば、第VIII族および第VI族金属の量または場合によっては所与の担体についての第VIII族および第VI族金属の間のモル比を改変することまたは金属の一定量に対する担体の比表面積を変動させることからなる。
【0045】
本発明の好ましい実施形態において、水素化脱硫工程HDS1およびHDS2からの過剰の水素は、一緒にされて単一の精製セクションにおいて処理されてもよい。精製された水素は、次いで、本方法にわたる圧力降下を補填するために圧縮工程後に水素化脱硫工程HSD1およびHDS2の少なくとも一方に再循環させられる。新しい水素の補給は、水素化脱硫反応器における水素消費を補填するために、圧縮工程の前または後に行われる。
【0046】
両水素化脱硫工程うちの単一の工程、好ましくはHDS2を通じて2つの水素化脱硫工程において起こる反応に必要な水素の少なくとも全てを投入することを想定することが可能である。この目的のために、工程HDS1およびHDS2に必要な水素の全体的な供給は、それ故に、これらの工程のうちのたった1つ、好ましくHDS2に送られ、この工程からパージされたガスは精製処理に送られ、この精製処理から、精製されたガス産物は、他方の水素化精製工程にのみ再循環させられる。当該タイプの設計は、2つの水素化脱硫工程において消費される水素の全てが工程HDS2のための装置に送られ、この装置からパージされたガスが精製処理に送られて、ガス精製産物がHDS1工程にのみ再循環させられる場合にコンプレッサを介して通過する再循環水素の流量を最少にし得る。工程HDS1のための装置は、工程HDS2のための装置と比較してより少ない水素流量を必要とするので、より少ない水素がコンプレッサを介して再循環させられる必要があり、したがって、コンプレッサのエネルギー消費は低減させられる。
【0047】
各水素化脱硫工程を特定用途とする2つのストリッピング塔からの蒸気フラクションの統合処理(冷却すること、精製工程に送られるHS高含有ガスと組み合わせて、凝結させられた液体をストリッピングおよびパージ塔のそれぞれに再循環させること)を想定することが可能である。
【0048】
水素化脱硫工程HDS2からの産物がディーゼルプールに送られる場合、重質ガソリンを特定用途とするHDS2工程に提供するという事実は、このガソリンが、別の水素化処理工程における中間留分と同時に混合されず、それ故に、前記水素化処理工程における容量を解放し、その結果、精油製造容量を増加させ得ることを意味する。
【0049】
本発明の背景の範囲を維持しながら、供給材料の予備処理を行うことが可能であり、その主たる目的は、
・ジオレフィンをモノオレフィンに選択的に水素化すること;および
・モノオレフィンとの反応によって軽質飽和硫黄含有化合物、主としてチオールを、より重質のスルフィドまたはチオールに変換すること
にある。
【0050】
ジオレフィンのモノオレフィンへの水素化は、1,3−ペンタジエンの変換によって下記に図解される。1,3−ペンタジエンは、水素の付加によりペンタ−2−エンに容易にポリマー化する不安定な化合物である。しかしながら、二次的なモノオレフィンの水素化反応は制限されなければならない。下記例に示されるように、それらは、n−ペンタンの形成をもたらすからである。
【0051】
【化1】

【0052】
変換されるべき硫黄含有化合物は、主として、チオールおよびスルフィドである。主たるチオール変換反応は、モノオレフィンのチオールによるチオエーテル化からなる。この反応は、プロパン−2−チオールがペンタ−2−エンに付加してプロピルペンチルスルフィドを形成することによって下記に図解される。
【0053】
【化2】

【0054】
水素の存在下、硫黄含有化合物の変換はまた、硫化水素が中間的に形成され、次いで、これが供給材料中に存在する不飽和化合物に付加することによって行われてもよい。しかしながら、これは、好ましい反応条件下のマイナーな経路である。
【0055】
チオールに加えて、より重質の化合物に変換され得る化合物は、スルフィド、主としてジメチルスルフィド、メチルエチルスルフィドおよびジエチルスルフィド、CS、COS、チオファンおよびメチルチオファンである。
【0056】
所定の場合、軽質窒素含有化合物、主としてニトリル、ピロールおよびその誘導体を、より重質の化合物に変換する反応を観察することも可能である。
【0057】
この予備処理工程は、処理されるべき供給材料を、水素流および第VIB族(新周期律表表示における6族:Handbook of Chemistry and Physics,第76版,1995−1996)からの少なくとも1種の金属および少なくとも1種の第VIII族非貴金属(前記分類の8、9および10族)を多孔質担体上に担持されて含有する触媒と接触させることからなる。
【0058】
本発明の触媒は、当業者に知られるあらゆる技術を用いて、特に、第VIII族および第VIB族からの元素を選択された担体上に含浸させることによって調製され得る。前記含浸は、例えば、乾式含浸のような当業者に知られる調製技術を用いて行われ得る。乾式含浸では、正確に、所望量の元素が、選択された溶媒、例えば脱塩水に可溶である塩の形態で導入され、可及的に正確に担体の空隙率が満たされる。それまでに溶液により満たされた担体は、好ましくは、乾燥させられる。好ましい担体はアルミナであり、これは、当業者に知られたあらゆるタイプの前駆体および成形ツールから調製され得る。
【0059】
触媒は、通常、硫化水素(HS)を生じさせ得る分解可能な硫黄含有有機化合物と接触させるか、または、Hに希釈されたガス状HSの流れと直接的に接触させて温度処理した後に得られる硫化形態で用いられる。この工程は、現場または現場外(すなわち、水素化脱硫反応器の内側または外側)で行われ得、その際の温度は200〜600℃、より好ましくは300〜500℃である。
【0060】
処理されるべき供給材料は水素と混合され、その後に、触媒と接触させられる。注入される水素の量は、水素と水素化されるべきジオレフィンとの間のモル比が、1(化学量論量)超かつ10未満、好ましくは1〜5mol/molであるようにされる。水素が余りに過剰過ぎると、モノオレフィンの過剰の水素化が起こり、結果として、ガソリンのオクタン価が低減し得る。供給材料全体は、一般的に、反応器の入口に注入される。しかしながら、反応器内に配置される2つの連続する触媒床の間に供給材料の一部または全部を注入することが有利である場合もあり得る。この実施形態は、反応器への入口が供給材料中に存在するポリマー、粒子またはガム状物の堆積物により閉塞されても反応器が継続的に駆動することを可能にし得る。
【0061】
ガソリンおよび水素によって構成される混合物が触媒と接触させられる際の温度は、80〜220℃、好ましくは90〜200℃であり、毎時液空間速度(liquid hourly space velocity:LHSV)は1〜10h−1である(毎時液空間速度の単位は、1時間当たりかつ触媒の容積(リットル)当たりの供給材料の容積(リットル)(L/L・h)である)。圧力は、反応混合物が反応器内で主として液状であるように調節される。圧力は、0.5〜5MPa、好ましくは1〜4MPaである。
【0062】
上記条件下に処理されるガソリンは、低減させられたジオレフィンおよびチオール含有量を有する。一般的に、生じたガソリンのジオレフィン含有量は、1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満である。一般的に転化されるチオフェンの沸点(84℃)より低い沸点を有する軽質硫黄含有化合物の量は50%超である。それ故に、蒸留によってガソリンの軽質フラクションを分離することおよび補完的処理を行うことなくこのフラクションを直接的にガソリンプールに送ることが可能である。
【0063】
本発明の方法の好ましい実施形態は、図1、2および3において例示される。
【0064】
(図1の説明)
ライン(1)中を移動するコアのガソリン(ガソリンA)は、再循環コンプレッサP1からライン(20)を介して来る水素と混合される。このように形成された混合物は、反応セクションR1に注入される。ライン(4)を介して移動する流出物は、炭化水素を凝結させるために交換器セクションE1中で冷却され、次いで、混合物は、ライン(6)を介して分離セクションS1に注入される。分離セクションS1は、ライン(8)を介して抜き出される気体フラクションとライン(9)を介して抜き出される液体フラクションを生じさせる。気体フラクションは、本質的に、水素、HSおよび軽質炭化水素によって構成される。液体フラクションは、次いで、安定化セクションC2に注入される。安定化セクションC2は、炭化水素中に溶解させられたHSを、オーバーヘッドライン(15)を介して抜き出す。塔C2の底部からライン(16)を介して回収されたガソリンは、直接的にガソリンプールに送られ得る。
【0065】
ライン(3)中を移動する重質ガソリン(ガソリンB)は、ライン(2)を介して供給される新鮮な水素と混合される。このようにして構成された混合物は、反応セクションR2に注入される。ライン(5)を介して移動する流出物は、炭化水素を凝結させるように交換器セクションE2において冷却され、次いで、混合物は、ライン(7)を介して分離セクションS2に注入される。分離セクションS2は、気体フラクションおよび液体フラクションを生じさせる。気体フラクションは、ライン(10)をを介して抜き出され、本質的に、水素、HSおよび軽質炭化水素によって構成される。液体フラクションは、ライン(11)を介して抜き出される。液体フラクションは、次いで、安定化セクションC3に注入される。安定化セクションC3は、炭化水素に溶解させられたHSを、オーバーヘッドライン(17)を介して抜き出す。ライン(18)を介して回収される重質脱硫ガソリンは、ガソリンプールまたは中間留分プールのいずれかに送られ得る。
【0066】
安定化セクションC2およびC3は、それぞれ、蒸留塔を含む。操作コストおよび投資コストを制限するために、前記2つの塔からの蒸留液を混ぜ合わせてから、それらを凝結させるようにそれらを冷却し、それらを一緒に環流ドラムに送ることが有利である。次いで、2つの塔は、共通の環流セクションで操作され得る。
【0067】
それぞれライン(8)および(10)を介する分離器S1およびS2からの水素は混合され、その後に、共通の精製セクションC1において処理される。これは、周知技術を用いてアミン水溶液で洗浄することからなる。精製後、水素、フリーのHSは、ライン(13)中を移動し、再循環コンプレッサP1において圧縮され、次いで、ライン(20)を介してガソリンAと混合される。
【0068】
本発明のさらなる変形において、補給水素は、ライン(12)を介して、精製セクションC1の上流に注入される。ガソリンBの処理のために必要な水素は、次いで、ライン(19)を介して、反応セクションR2の水素化脱硫工程に注入される。
【0069】
(図2の説明)
この図において用いられた参照符号は、図1において用いられた参照符号に対応する。
【0070】
本発明のさらなる変形が図2に提示される。この変形において、分離セクションS1からライン(8)を介して来る水素の一部が、精製処理なく、ライン(21)を介して反応セクションR2に注入される。
【0071】
(図3の説明)
図3は、ジオレフィンの水素化、軽質硫黄含有化合物のより重質な化合物への変換および選択的水素化脱硫工程から主としてなる予備処理工程の連結を例示する。
【0072】
予備処理工程R3は、ライン(1)を介して注入された全ガソリンまたは塔C4の頂部からライン(3)を介して回収されたガソリンのいずれかについて行われ得る。後者の場合、ガソリンAは、予備処理を行わずに塔C4に直接的に送られる。
【0073】
ガソリンの全てに予備処理が適用される場合、ライン(10)を介して予備処理工程R3の上流に水素が注入される。予備処理工程R3は、選択的水素化および軽質飽和硫黄含有化合物のより重質な化合物への変換の工程に対応する。生じたガソリンは、次いで、塔C4において2つの留分−重質留分およびより軽質のフラクションに蒸留される。重質留分は、ライン(4)を介して抜き出され、これは、本明細書において記載される重質ガソリンに対応する。より軽質のフラクションは、ライン(3)を介して回収され、これは、コアガソリンおよび本明細書において記載される軽質ガソリンの混合物に対応する。軽質フラクションは、次いで、第2塔C5において蒸留される。この第2塔は、コアガソリンを軽質ガソリンから分離することができる。コアガソリンは、ライン(6)を介して排出され、軽質ガソリンは、ライン(7)を介して排出される。ライン(7)を介して回収された軽質ガソリンは、一般的に、硫黄が除去されており、補完的処理を行うことなく直接的にガソリンプールに送られ得る。
【0074】
ライン(6)および(4)を介してそれぞれ回収されたコアおよび重質ガソリンは、本発明による1以上の水素化脱硫セクションにおいて処理され、ライン(8)を介してガソリンHが、ライン(9)を介してガソリンJが回収され得、それぞれ、ガソリンプールおよび中間留分プールに送られる。
【0075】
コアガソリンが抜き出される側流取り出し(side stream take-off)を備える単一の塔において、記載された3種のガソリン留分を生じさせることが有利であり得る。本発明のさらなる実施形態において、ライン(1)を介して注入される全ガソリンの蒸留塔は、内壁を有する単一塔であり得る。
【0076】
予備処理工程R3がライン(3)からのガソリンに適用される場合、水素は、ライン(11)を介して注入される。この実施形態は、重質ガソリンを除去したフラクションに対応するガソリンのフラクションのみを予備処理工程R3に送り、処理されるべきガソリンの量、並びに一般的に重質ガソリンフラクションに濃縮される前記触媒の潜在的汚染物質、例えばヒ素またはケイ素の存在を低減させるという利点を有する。
【0077】
(実施例)
(供給材料の調製)
沸点が6〜236℃であり、接触分解装置に由来するガソリンaが、バッチ式蒸留塔において蒸留され、次の4つの留分を生じさせた:
6〜188℃フラクションに対応する留分a1;
188〜236℃フラクションに対応する留分a2;
6〜209℃フラクションに対応する留分a3;
209〜236℃フラクションに対応する留分a4。
【0078】
各留分の特徴は、表1に示される。
【0079】
【表1】

【0080】
(実施例1:比較)
Axensによって市販されている触媒HR806S(コバルトおよびモリブデンをベースとする硫黄含有触媒)の容積100mlが、パイロット装置の反応器に配置された。当該触媒は、現場外で予備硫化および予備活性化される能力を有していた。それ故に、補完的硫化工程の必要がなかった。
【0081】
ガソリンaが水素と混合され、その後、反応器に注入された。ガソリンの流量は400ml/hであり、水素流量は水素116標準リットル/hであった。水素流量は、水素(標準リットル)/供給材料(リットル)での比H/HCが290Nl/lであるようにされた。温度は260℃に調節され、圧力は2MPaに調節された。生じたガソリン(c1と称される)は冷却され、水素流によってストリッピングされ、溶解させられたHSが除去された。
【0082】
分析の後、このガソリンは、チオール形態の14.0ppmを含む38ppmの硫黄を含んでいた。そのオクタン価(RON)は90.60であり、そのモーター法オクタン価(MON)は79.40であった。
【0083】
(実施例2:本発明に合致する)
340ml/hのガソリンa1が98標準l/hの水素と混合され、HR806S触媒の容積85mlに注入された。水素流量は、水素(標準リットル)/供給材料(リットル)での比H/HCが300Nl/lであるようにされた。反応器の温度は260℃に調節され、圧力は2MPaに調節された。生じたガソリン(b1と称される)は、チオール形態の8ppmを含む19ppmの硫黄を含んでいた。
【0084】
60ml/hのガソリンa2が、14.4標準リットル/hの水素と混合され、HR806S触媒の容積15ml上に注入された。水素流量は、水素(標準リットル)/供給材料(リットル)での比H/HCが240Nl/lであるようにされた。反応器の温度は260℃に調節され、圧力は2MPaに調節された。生じたガソリン(b2と称される)は、チオールの形態の4ppmを含む90ppmの硫黄を含んでいた。
【0085】
総体的に、留分a1およびa2を処理するために、水素流量は、水素(標準リットル)/供給材料(リットル)での比H/HCが290Nl/lであるようにされた。
【0086】
ガソリンb1およびb2は、ガソリンb1が85重量%およびガソリンb2が15重量%の量で混合された。このようにして構成された混合物(c2で表される)が分析された。それは、チオール形態の8.0ppmを含む30ppmの硫黄を含んでいた。そのオクタン価(RON)は90.80であり、モーター法オクタン価(MON)は79.50であった。フラクションb2はまた、非常に低い硫黄含有量を有する中間留分プールに送られ得た。
【0087】
実施例1および2において生じさせられたガソリンc1およびc2を比較すると、全体的に同一の水素流量を維持しながらの2つの相異なる留分に分離されたガソリンの並行処理は、脱留ガソリンのオクタン価を改善することができ、特に、チオールの量を大幅に低減させることができるようである。
【0088】
(実施例3:本発明に合致する)
ガソリンb1は、実施例2に記載された調製法を用いて得られた。
【0089】
60ml/hのガソリンa2が、6.3標準リットル/hの水素と混合され、HR806S触媒の容積15ml上に注入された。水素流量は、水素(標準リットル)/供給材料(リットル)での比H/HCが105Nl/lであるようにされた。反応器の温度は260℃に調節され、圧力は2MPaに調節された。生じたガソリン(b5で表される)は、チオール形態の6ppmを含む135ppmの硫黄を含んでいた。
【0090】
ガソリンb1およびb5は、ガソリンb1が85重量%およびガソリンb5が15重量%の量で混合された。このようにして構成された混合物(c4で表される)が分析された。それは、チオールの形態の8.0ppmを含む36ppmの硫黄を含んでいた。そのオクタン価(RON)は90.90であり、そのモーター法オクタン価(MON)は79.60であった。フラクションb5はまた、非常に低い硫黄含有量を有する中間留分プールに送られ得た。
【0091】
総体的に、留分a1およびa2を処理するために、水素流量は、水素(標準リットル)/供給材料(リットル)での比H/HCが270Nl/lであるようにされた。
【0092】
(実施例4:本発明に合致する)
368ml/hのガソリンa3が108.2標準リットル/hの水素と混合され、HR806S触媒の容積92ml上に注入された。水素流量は、水素(標準リットル)/供給材料(リットル)での比H/HCが294Nl/lであるようにされた。反応器の温度は260℃に調節された。生じたガソリン(b3で表される)は、チオール形態の7ppmを含む20ppmの硫黄を含んでいた。
【0093】
32ml/hのガソリンa4が、7.5標準リットル/hの水素と混合され、HR806S触媒の容積8ml上に注入された。水素流量は、水素(標準リットル)/供給材料(リットル)での比H/HCが234Nl/lであるようにされた。
【0094】
反応器の温度は260℃に調節された。生じたガソリン(b4で表される)は、チオール形態の3ppmを含む140ppmの硫黄を含んでいた。
【0095】
ガソリンb3およびb4は、ガソリンb3が92重量%およびガソリンb4が8重量%の量で混合された。このようにして構成された混合物(c3と称される)が分析された。それは、チオールの形態の7.0ppmを含む30ppmの硫黄を含んでいた。そのオクタン価(RON)は91.00であり、そのモーター法オクタン価(MON)は79.70であった。フラクションb4はまた、非常に低い硫黄含有量を有する中間留分プールに送られ得た。
【0096】
総体的に、留分a3およびa4を処理するために、水素流量は、水素(標準リットル)/供給材料(リットル)での比H/HCが290Nl/lであるようにされた。
【0097】
実施例2および4を比較すると、209℃超の沸点を有する重質フラクションをガソリンから分離して別の水素化脱硫セクションでこれを処理することが、脱硫ガソリンのオクタン価を改善し、かつ、チオールの量を低減させることができるので有利であることは明らかである。
【0098】
(実施例5:比較)
340ml/hのガソリンa1が98.6標準リットル/hの水素と混合され、HR806S触媒の容積85ml上に注入された。水素流量は、水素(標準リットル)/供給材料(リットル)での比H/HCが290Nl/lであるようにされた。反応器の温度は260℃に調節され、圧力は2MPaに調節された。生じたガソリン(b6で表される)は、チオール形態の9ppmを含む22ppmの硫黄を含んでいた。
【0099】
60ml/hのガソリンa2が17.4標準リットル/hの水素と混合され、HR806S触媒の容積15ml上に注入された。水素流量は、水素(標準リットル)/供給材料(リットル)での比H/HCが290Nl/lであるようにされた。反応器の温度は260℃に調節され、圧力は2MPaに調節された。生じたガソリン(b7で表される)は、チオール形態の4ppmを含む80ppmの硫黄を含んでいた。
【0100】
総体的に、留分a1およびa2を処理するために、水素流量は、水素(標準リットル)/供給材料(リットル)での比H/HCが290Nl/lであるようにされた。
【0101】
ガソリンb6およびb7は、ガソリンb6が85重量%およびガソリンb7が15重量%の量で混合された。このようにして構成された混合物(c5と称する)が分析された。それは、チオール形態の8.3ppmを含む31ppmの硫黄を含んでいた。そのオクタン価(RON)は90.65であり、そのモーター法オクタン価(MON)は79.40であった。
【0102】
【表2】

【0103】
/HC(HDS1)と比較したH/HC(HDS2)(%):水素化脱硫工程HDS1における脱硫のために利用された流量の比の百分率としての、水素流量(標準m/hで表示される)と処理されるべき供給材料の流量(標準条件下でのm/hで表示される)との間の比。
【0104】
実施例1、2、4および5の比較により、総体的に同一の水素流量を維持しながらの2つの相異なる留分に分離されたガソリンの並行処理が、脱硫ガソリンのオクタン価を改善し、特に、硫黄およびチオールの量を大幅に低減させ得ることが示される。
【0105】
さらに、水素化脱硫工程HDS2における水素流量が、水素流量(標準m/hで表示される)と処理されるべき供給材料の流量(標準条件下でのm/hで表示される)との間の比が水素化脱硫工程HDS1における脱硫のために利用される流量の比の80%未満である場合(本発明の実施例2および4)、硫黄およびチオールの量の大幅な低減が、高いRONおよびMONのオクタン価のために想定される。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】図1は、本発明方法の一実施形態を説明するフローシートである。
【図2】図2は、本発明方法の他の実施形態を説明するフローシートである。
【図3】図3は、ジオレフィンの水素化、軽質硫黄含有化合物のより重質な化合物への変換および選択的水素化脱硫工程から主としてなる予備処理工程の連結を説明するフローシートである。
【符号の説明】
【0107】
1 ライン
2 ライン
3 ライン
4 ライン
5 ライン
6 ライン
7 ライン
8 ライン
9 ライン
10 ライン
11 ライン
12 ライン
13 ライン
15 オーバーヘッドライン
16 ライン
17 オーバーヘッドライン
18 ライン
19 ライン
20 ライン
A ガソリン
B ガソリン
H ガソリン
J ガソリン
R1 反応セクション
R2 反応セクション
E1 交換器セクション
E2 交換器セクション
P1 再循環コンプレッサ
S1 分離セクション
S2 分離セクション
C1 精製セクション
C2 安定化セクション
C3 安定化セクション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄およびチオール含有量が少ないガソリンを製造する方法であって、供給材料を構成するガソリンの2つの相異なる留分について並行して操作される少なくとも2つの水素化脱硫工程HDS1およびHDS2を包含し、該供給材料は、接触分解装置からのガソリンに対応し、3つのフラクション:
・100℃未満の沸点を有するガソリンフラクションに対応する軽質フラクション;
・180℃超の沸点を有するガソリンフラクションに対応する重質フラクションフラクション;および
・軽質フラクションと重質フラクションとの間の中間フラクションに対応するコアフラクション
に蒸留され、水素化脱留工程HDS2における水素流量は、水素流量(標準m/hで表示される)と処理されるべき供給材料の流量(標準条件下でのm/hで表示される)との比が水素化脱硫工程HDS1での脱硫のために利用される流量の比の80%未満であるようにされる、方法。
【請求項2】
水素化脱硫工程HDS1およびHDS2からの過剰の水素を精製しかつこれを再循環させるための単一のセクションを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2つの水素化脱硫工程において起こる反応のために必要な水素の少なくとも全部が水素化脱硫工程の一方にのみ投入され、該水素化脱硫工程からパージされたガスは精製処理に送られ、該精製処理からの精製されたガス状産物は、他方の水素化脱硫装置にのみ再循環させられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
2つの水素化脱硫工程において起こる反応のために必要な水素の少なくとも全部が、水素化脱硫工程HDS2に投入される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
水素化脱硫工程HDS1が行われる装置における水素流量は、水素流量(標準m/hで表示される)と処理されるべき供給材料の流量(標準条件下でのm/hで表示される)との間の比が50〜1000Nm/mであるようにされ、水素化脱硫工程HDS2が行われる装置における水素流量は、水素流量(標準m/hで表示される)と処理されるべき供給材料の流量(標準条件下でのm/hで表示される)との間の比が30〜800Nm/mであるようにされる、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
軽質ガソリンフラクションおよび中間フラクションによって構成される混合物または中間フラクション単独は水素化脱硫工程HDS1において処理され、該処理は、60%未満のモノオレフィン水素化度で選択的水素化脱硫を行うのに適した1種以上の触媒を含む直列の1以上の水素化脱硫反応器において、処理されるべきガソリンを水素と接触させることからなり、ガソリンの重質フラクションは水素化脱硫工程HDS2において処理され、該処理は、水素化脱硫を行うのに適した1種以上の触媒を含む直列の1以上の水素化脱硫反応器において、処理されるべきガソリンを水素と接触させることからなり、水素化脱硫は、選択的にまたは非選択的に行われ、モノオレフィンの水素化度は、選択的水素化脱硫の場合には90%未満である、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
供給材料は、
・ジオレフィンをモノオレフィンに選択的に水素化する;および
・モノオレフィンとの反応によって飽和軽質硫黄含有化合物をより重質のスルフィドまたはチオールに変換する
ように予備処理される、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
水素化脱硫工程HDS1およびHDS2において用いられる触媒は、担体および第VI族金属を含み、該第VI族金属は第VIII族金属によって促進されるまたは促進されない、22nm超の平均細孔径を有する1種の触媒または触媒の連結である、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
水素化脱硫工程HDS1およびHDS2において用いられる触媒は、無定型多孔質鉱物担体、少なくとも1種の第VI族金属および/または少なくとも1種の第VIII族金属を含み、硫化前の触媒の多孔度は、20nm超の平均細孔径を有するようにされ、第VI族金属の比表面積は、担体面積(m)当たり該金属の酸化物2×10−4〜4.0×10−3グラムである、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
第VI族金属はモリブデンまたはタングステンであり、第VIII族金属はニッケルまたはコバルトである、請求項8または9に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−291392(P2007−291392A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113784(P2007−113784)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)
【Fターム(参考)】