説明

尿石付着防止剤

【課題】適度な溶解性を有し、尿石の付着防止効果に優れ、かつ保形性が良好な尿石付着防止剤を提供すること。
【解決手段】ベヘニン酸(a)、塩化ベンザルコニウム(b)、ポリエチレングリコール(c)、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック共重合体(d)からなる尿石付着防止剤であって、該尿石付着防止剤中に、該(a)が5〜20質量%、該(b)が15〜30質量%、該(c)が35〜55質量%、該(d)が10〜35質量%含有され、かつ該(a)と該(b)と該(c)と該(d)との合計量が100質量%となるように含有され、そして溶解性試験における溶解率が10〜35%である、尿石付着防止剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿石付着防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
尿石は、尿中のカルシウム分を主成分とするスケールであり、トイレの便器や排水系に付着・生成し、排水管などを閉塞させることが知られている。さらに、尿石中には、尿などの有機物が含まれており、この有機物を微生物が分解することにより悪臭が発生するといった問題がある。
【0003】
このような尿石の除去方法として、塩酸などの無機強酸による溶解除去方法、スルファミン酸粉末と、ショ糖脂肪酸エステル粉末とを成形してなる固形成形体を用いる方法(特許文献1)が知られている。しかし、これらの方法は、強酸を用いているため、設備・配管の腐食、作業時の危険性などの問題がある。さらに一度付着した尿石を完全に除去することは極めて困難である。そのため、尿石の付着を防止することが重要である。
【0004】
尿石の付着防止を目的として、界面活性剤などの洗浄剤を含む水易溶性の固体製剤または液体製剤が用いられている。液体製剤の場合、設備が複雑となり、安定的な供給ができないため、固体製剤が好ましく用いられる。固体製剤は、簡便な設備でフラッシュ毎に一定量の洗浄剤が安定的に供給されるという利点を有している。例えば、特許文献2には、常温で固体の非イオン性界面活性剤と色素とを含む水洗トイレ洗浄用固形組成物が開示されている。特許文献3には、塩素系殺菌剤0.1〜80重量%、固形の酸0.1〜80重量%、および界面活性剤0.01〜80重量%を含有し、1重量%水溶液のpHが2〜12である固形殺菌洗浄剤が開示されている。そして特許文献4には、無機過酸化物5〜90重量%、カチオン系殺菌剤0.1〜30重量%、水溶性の炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩、珪酸塩、または水酸化物10〜95重量%、および水溶性界面活性剤0.5〜30重量%を含有する固形殺菌洗浄剤が開示されている。
【0005】
しかし、これらの固形組成物あるいは固形殺菌洗浄剤は、界面活性剤による洗浄性、抗菌性を有するものの、界面活性剤の水への溶解速度の制御、および固形製剤の固形性の維持(保形性)の点で問題がある。例えば、界面活性剤の溶出量が少ない場合は、十分な尿石防止効果が得られず、他方、界面活性剤の溶出量が多い場合は、短期間で洗浄効果が得られなくなるという問題がある。さらに、保形性が不十分である場合は、固体製剤が簡単に崩壊してしまい、十分な洗浄効果、抗菌効果が発揮されない。そのうえ、固体製剤の表面が溶け崩れを生じ、給排水管の入り口あるいは内部の管を閉塞するなどの問題がある。
【0006】
このため、固体製剤において、洗浄剤の溶出量の制御や保形性の改良が検討されている。特許文献5には、溶解調整剤としてイソプロピルトリオキサンを用い、消臭剤、常温で固体のポリエチレングリコール、およびパラオキシ安息香酸エステルを配合した固形洗浄剤が開示されている。
【0007】
特許文献6には、炭素数8〜22の脂肪酸のアルカリ金属塩5〜80重量%、融点が45℃以上である非イオン性界面活性剤1〜35重量%、カルボキシメチルセルロースアルカリ金属塩1〜35重量%、20℃で液状の疎水性物質0〜25重量%、および水溶性の無機または有機の充填剤0〜80重量%からなるトイレ用オンタンク固形洗浄剤が開示されている。この組成により溶解速度が水温に影響を受け難くなることが開示されている。
【0008】
特許文献7には、常温で固体のポリエチレングリコール、および溶解調整剤としてステアリルアルコールを配合して成り、かつ界面活性剤を含有しないことを特徴とする水に徐溶性の固形洗浄剤が開示されている。
【0009】
しかし、これらの溶解調整剤、あるいは界面活性剤の配合比により溶解速度を調整した固形洗浄剤は、溶解速度をある程度は調整できるものの不十分である。さらに保形性についても不十分である。このように、溶解速度を制御し、優れた洗浄効果を得ることと、保形性を有することとを両立させることは困難である。
【特許文献1】特開平7−26300号公報
【特許文献2】特開平8−81695号公報
【特許文献3】特開平11−148098号公報
【特許文献4】特開平11−124597号公報
【特許文献5】特開2003−128908号公報
【特許文献6】特開平11−92796号公報
【特許文献7】特開2004−166844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、適度な溶解性を有し、尿石の付着防止効果に優れ、かつ保形性が良好な尿石付着防止剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために、固形状の尿石付着防止剤について鋭意検討した結果、ベヘニン酸(a)、塩化ベンザルコニウム(b)、ポリエチレングリコール(c)、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック共重合体(d)を特定割合で、かつ、特定の溶解率を有するように組み合わせることによって、適度な溶解性を有し、尿石の付着防止効果をはじめとする汚れ防止効果(洗浄効果)に優れ、かつ保形性が良好な尿石付着防止剤が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明の尿石付着防止剤は、ベヘニン酸(a)を5〜20質量%、塩化ベンザルコニウム(b)を15〜30質量%、ポリエチレングリコール(c)を35〜55質量%、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック共重合体(d)を10〜35質量%含有し、該(a)と該(b)と該(c)と該(d)との合計量が100質量%であり、かつ溶解性試験における溶解率が10〜35%であり、
該ポリエチレングリコール(c)が以下の一般式(1):
HO−(CH2CH2O)n−H (1)
(式中、nは平均重合度を示し、90〜700である)で表され、そして
該エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック共重合体(d)が以下の一般式(2):
HO(CH2CH2O)x(CH(CH3)CH2O)y(CH2CH2O)zH (2)
(式中、x、y、およびzは平均付加モル数を示し、x+zが1〜300であり、yが5〜90である)で表される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の尿石付着防止剤は、適度な溶解性を有し、洗浄効果(特に尿石付着防止効果)に優れ、かつ保形性が良好である。すなわち、この尿石付着防止剤は、適度な溶解性を有するため、一定回数以上のフラッシュにおいて、安定に洗浄剤を供給でき、優れた洗浄効果を長期間維持することができる、さらに保形性が良好であるため、尿石付着防止剤の表面が溶け崩れを生じることも少なく、給排水管の入り口あるいは内部の管を閉塞させる恐れも少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に用いられるベヘニン酸(a)は、主に得られる尿石付着防止剤に適度な溶解性を付与するとともに、溶け崩れを防止して良好な保形性を付与する。ベヘニン酸以外の脂肪酸、例えば、ステアリン酸またはラウリン酸を用いる場合、得られる尿石付着防止剤の溶解性が高くなりすぎるため、洗浄剤(後述する塩化ベンザルコニウム(b)およびポリエチレングリコール(c))が短期間で溶出され、優れた洗浄効果を長期間維持することができない。さらに、溶け崩れも起こりやすい。
【0015】
本発明の尿石付着防止剤中のベヘニン酸(a)の含有量は、5〜20質量%である。ベヘニン酸(a)の含有量が5質量%未満の場合、得られる尿石付着防止剤の保形性が悪くなる。ベヘニン酸(a)の含有量が20質量%を超える場合、得られる尿石付着防止剤が溶解し難くなるため、洗浄剤が十分溶出されず、洗浄性が悪くなる。ベヘニン酸(a)の含有量は、使用する水温などに応じて設定される。例えば、夏場のような水温が高い場合、上記範囲内で、ベヘニン酸(a)量を多く設定することが好ましく、冬場のような水温が低い場合、ベヘニン酸(a)量を少なく設定することが好ましい。
【0016】
本発明に用いられる塩化ベンザルコニウム(b)は、便器の表面をカチオン膜で皮膜することによって、尿石、水垢などのいわゆる汚れの付着を防止する。さらに、抗菌剤として有効に機能する。固形の尿石付着防止剤を調製する観点から、塩化ベンザルコニウム(b)は、粉体、固体、フレーク状などの固形状のものが好ましく用いられる。
【0017】
本発明の尿石付着防止剤中の塩化ベンザルコニウム(b)の含有量は、15〜30質量%である。塩化ベンザルコニウムが15質量%未満の場合、汚れ付着防止効果(尿石付着防止効果)が十分に得られなくなる。さらに抗菌性を得る観点からも不十分となる。30質量%を超える場合、添加量に見合った効果が得られない。
【0018】
本発明に用いられるポリエチレングリコール(c)は、以下の一般式(1):
HO−(CH2CH2O)n−H (1)
(式中、nは平均重合度を示し、90〜700である)で表される。このポリエチレングリコール(c)は、主に洗浄剤としての機能を発揮し、尿などの汚れを洗浄する。
【0019】
上記一般式(1)において、nは平均重合度を示し、90〜700である。nの値が90未満の場合、得られる尿石付着剤の溶解速度が高くなりすぎるため、洗浄剤が短期間で溶出されてしまう。nの値が700を超える場合、得られる尿石付着防止剤の保形性は良好であるものの、ポリエチレングリコールが溶出し難くなる。さらに、尿石付着防止剤を溶融調製する際に、ポリエチレングリコールの溶融粘度が高くなることから、生産性や歩留まりが低下する場合がある。
【0020】
本発明の尿石付着防止剤中のポリエチレングリコール(c)の含有量は、優れた洗浄効果を得る観点から、35〜55質量%である。
【0021】
本発明に用いられるエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック共重合体(d)(以下、単にブロック共重合体(d)という場合がある)は、以下の一般式(2):
HO(CH2CH2O)x(CH(CH3)CH2O)y(CH2CH2O)zH (2)
(式中、x、y、およびzは平均付加モル数を示し、x+zが1〜300であり、yが5〜90である)で表される。このブロック共重合体(d)は、主に洗浄剤、特にポリエチレングリコール(c)の溶解性を調節する目的で含有される。ブロック共重合体(d)は、平均付加モル数に応じて、液状あるいは固形状であり得る。尿石付着防止剤中の洗浄剤を適度に溶出させる観点および得られる尿石付着防止剤の保形性の観点から、固形状のブロック共重合体(d)が特に好ましく用いられる。
【0022】
上記一般式(2)において、x、y、およびzは平均付加モル数を示し、x+zが1〜300であり、yが5〜90、好ましくは20〜70である。x+zが300を超える場合、得られる尿石付着防止剤の保形性が不十分となり、水に浸漬すると、膨潤して溶け崩れを生じやすい。他方、yが5未満の場合、得られる尿石付着防止剤の溶解性が高くなりすぎるため、洗浄剤が短期間で溶出され、優れた洗浄効果を長期間維持することができない。さらに、保形性も不十分となり、溶け崩れも起こりやすい。yが90を超える場合、得られる尿石付着防止剤の保形性が不十分となる。
【0023】
本発明の尿石付着防止剤中のブロック共重合体(d)の含有量は、10〜35質量%である。ブロック共重合体(d)が35質量%を超える場合、得られる尿石付着防止剤の保形性が不十分となり、水に浸漬すると、膨潤により溶け崩れが生じやすい。ブロック共重合体(d)の含有量は、ブロック共重合体のプロピレンオキシド基の平均付加モル数y、使用する水温などに応じて設定される。例えば、平均付加モル数yが小さい場合、あるいは夏場のような水温が高い場合、上記範囲内で、ブロック共重合体(d)量を少なくすることが好ましい。平均付加モル数yが大きい場合、あるいは冬場のような水温が低い場合、上記範囲内で、ブロック共重合体(d)量を多くすることが好ましい。
【0024】
本発明の尿石付着防止剤は、上記ベヘニン酸(a)、上記塩化ベンザルコニウム(b)、上記ポリエチレングリコール(c)、および上記ブロック共重合体(d)を上記の割合で含み、かつ該(a)と該(b)と該(c)と該(d)との合計量が100質量%となるように含有される。各成分が上記範囲を外れると、得られる尿石付着防止剤において、適度な溶解性が得られないため、一定回数以上のフラッシュにおいて洗浄剤を安定に供給されず、優れた洗浄効果を長期間維持することができない。さらに、保形性が不十分となり、溶け崩れが起こりやすい。
【0025】
本発明の尿石付着防止剤は、溶解試験における溶解率が10〜35%である。本明細書において、「溶解率」とは、20mm×40mm×15mmの試験片(尿石付着防止剤)を、25℃の水に24時間浸漬させたときの溶解量(%)である。具体的には、水に浸漬する前の尿石付着防止剤の質量をA、25℃の水に24時間浸漬した後に残存した尿石付着防止剤の質量をBとすると、以下の式:
溶解率(%)=(1−B/A)×100
で表される。溶解率が10%未満の場合、得られる尿石付着防止剤が溶解し難く、洗浄剤が十分溶出されないため、十分な洗浄効果が得られない。35%を超える場合、溶けすぎにより洗浄剤が短期間で溶出され、優れた洗浄効果を長期間維持することができない。さらには溶け崩れにより給排水管の入り口あるいは内部の管を閉塞するといった問題が生じる。
【0026】
本発明の尿石付着防止剤は、例えば、所定量の成分(a)〜(d)を、80〜90℃にて加熱溶融混合した後、室温まで放冷することにより調製される。調製に際して、水温による溶解性の変動を考慮することが好ましい。例えば、夏場のような水温が高い場合、ベヘニン酸(a)の含有量を高く設定し、得られる尿石付着防止剤の溶解率が10〜35%の範囲内で低くなるように調整する。他方、冬場のような水温が低い場合、例えば、ベヘニン酸(a)の含有量を低く設定し、得られる尿石付着防止剤の溶解率が10〜35%の範囲内で高くなるように調整する。
【0027】
本発明の尿石付着防止剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、当業者が尿石付着防止剤に通常用いる添加剤、例えば、消臭剤、着色料、金属封鎖剤、増量剤などを併用することができる。これらの添加剤は、例えば、尿石付着剤の調製時に適宜添加することができる。
【0028】
本発明の尿石付着防止剤は、適度な溶解性を有するため、一定回数以上のフラッシュにおいて、安定に洗浄剤を供給でき、優れた洗浄効果を長期間維持することができる。さらに保形性が良好であるため、尿石付着防止剤の表面が溶け崩れを生じることも少なく、給排水管の入り口あるいは内部の管を閉塞させる恐れも少ない。本発明の尿石付着防止剤は、水洗小便器に設置され、利用される。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、実施例中、%はいずれも質量%を意味する。
【0030】
(実施例1:尿石防止剤の調製および評価)
ベヘニン酸(a)、塩化ベンザルコニウム(b)、ポリエチレングリコール(c)、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック共重合体(d)を表1に示す所定量で、ステンレス製容器に量り取り、約90℃の水浴中で攪拌しながら溶融した後、紙製容器(20mm×40mmの四角柱)に流し込み、室温にて放冷して固化した。この固形物を20mm×40mm×15mmの大きさに切り出して試験用成形体とした。
【0031】
この試験用成形体の溶解性について、以下の試験方法で評価した。さらに試験用成形体をTOTO製男性用小便器の自動洗浄装置に設置して、尿石付着防止効果(洗浄効果)、および保形性について以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0032】
(1)溶解性試験
まず、試験用成形体の質量を測定した後、100mLビーカーに入れた。この質量をAとする。さらに精製水(25℃)60mLを加えて試験用成形体を浸漬させ、24時間静置した。その後、試験用成形体を取り出し、キムタオル(株式会社クレシア製)の上に置き、さらに2時間放置した後、質量を測定した。この質量をBとする。得られた質量AおよびBを用いて以下の式から溶解率を求めた。
溶解率(%)=(1−B/A)×100
【0033】
(2)尿石付着防止効果(洗浄効果)
男性用小便器に設置して2カ月後の小便器の汚れ具合を目視にて以下の基準により評価した。
【0034】
(評価基準)
汚れが目立たない・・・○
わずかに汚れている・・・△
明らかに汚れている・・・×
【0035】
(3)保形性
男性用小便器に設置して1カ月後の成形体の変形を目視にて以下の基準により評価した。
【0036】
(評価基準)
成形体が変形していない・・・○
成形体がわずかに変形している・・・△
成形体が明らかに変形している・・・×
【0037】
(実施例2〜9)
ベヘニン酸(a)、塩化ベンザルコニウム(b)、ポリエチレングリコール(c)、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック共重合体(d)を表1に示す所定量で用いたこと以外は、実施例1と同様にして、試験用成形体を調製し、(1)溶解性、(2)尿石付着防止効果(洗浄効果)、および(3)保形性について評価した。結果を表1に示す。
【0038】
(比較例1〜5)
脂肪酸(ベヘニン酸(a)、ステアリン酸、およびラウリン酸の少なくとも1種)、塩化ベンザルコニウム(b)、ポリエチレングリコール(c)、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック共重合体(d)を表1に示す所定量で用いたこと以外は、実施例1と同様にして、試験用成形体を調製し、(1)溶解性、(2)尿石付着防止効果(洗浄効果)、および(3)保形性について評価した。結果を表2に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
表1の結果から、実施例1〜9の試験用成形体は、いずれも適度な溶解性を有し、洗浄効果に優れ、かつ保形性が良好であった。
【0042】
これに対して、比較例1〜5の試験用成形体は、本発明の範囲を満たさず、尿石付着防止剤としての性能が十分得られていないことがわかる。すなわち、比較例1では、ベヘニン酸(a)の代わりにステアリン酸が用いられているため、溶解率が高く、保形性が不十分であった。比較例2では、ベヘニン酸(a)の代わりに、ベヘニン酸とステアリン酸との混合物が用いられているため、溶解率が高く、保形性が不十分であった。比較例3では、ベヘニン酸(a)の代わりに、ラウリン酸が用いられているため、溶解率が非常に高かった。したがって、洗浄剤が短期間で溶出されたため、洗浄効果が不十分であった。さらに保形性も不十分であった。比較例4では、ベヘニン酸(a)の含有量が高く、ポリエチレングリコールの含有量が低いため、溶解率が低かった。したがって、洗浄剤が十分に溶出されず、洗浄効果が不十分であった。そして比較例5では、ベヘニン酸(a)が含有されていないため、溶解率が非常に高かった。したがって、洗浄剤が短期間で溶出されたため、洗浄効果が不十分であった。さらに保形性も不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、適度な溶解性を有し、洗浄効果(特に尿石付着防止効果)に優れ、かつ保形性が良好な尿石付着防止剤が提供される。したがって、この尿石付着防止剤は、一定回数以上のフラッシュにおいて、安定に洗浄剤を供給できると共に、尿石付着防止剤の表面が溶け崩れを生じることも少なく、給排水管の入り口あるいは内部の管を閉塞させる恐れも少ない。本発明の尿石付着防止剤は、水洗小便器などに設置され、利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベヘニン酸(a)を5〜20質量%、塩化ベンザルコニウム(b)を15〜30質量%、ポリエチレングリコール(c)を35〜55質量%、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック共重合体(d)を10〜35質量%含有し、該(a)と該(b)と該(c)と該(d)との合計量が100質量%であり、かつ溶解性試験における溶解率が10〜35%である尿石付着防止剤であって、
該ポリエチレングリコール(c)が以下の一般式(1):
HO−(CH2CH2O)n−H (1)
(式中、nは平均重合度を示し、90〜700である)で表され、そして
該エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック共重合体(d)が以下の一般式(2):
HO(CH2CH2O)x(CH(CH3)CH2O)y(CH2CH2O)zH (2)
(式中、x、y、およびzは平均付加モル数を示し、x+zが1〜300であり、yが5〜90である)で表される、
尿石付着防止剤。

【公開番号】特開2008−247987(P2008−247987A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88243(P2007−88243)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】