説明

尿素含有水性流れの製造方法

本発明は、燃焼機関排ガス中のNOを低減するユニットでの使用に適した尿素含有水性流れの製造方法であって、尿素含有水性流れを、尿素製造プロセスの回収部から直接またはその後に分離し、その後、尿素含有水性流れが30〜35重量%の尿素を含むようになるまで水で希釈する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、燃焼機関排ガス中のNOを低減するユニットでの使用に適した尿素含有水性流れの製造方法に関する。
【0002】
排ガス触媒を備えた燃焼機関(例えば、ディーゼルエンジン)からのNOの排出は、排ガスがSCRまたはEGR触媒と接触する前に、これらのディーゼルエンジンの排気管内へ還元成分を注入することによって減少させることができる。この目的のための還元剤として、尿素含有水性流れを使用することは、特に、自動車およびトラックの動力源として使用されるディーゼルエンジンにおいて、極めて有利である。そのような尿素含有水性流れが満たすべき品質要件は、例えば、DIN Vornorm V70070から知られている。
【0003】
そのような尿素含有水性流れは、現在、商業的に入手可能な固体尿素を、加熱しながら清浄な水に溶解させることによって製造されている。固体尿素は、例えば、尿素粒子またはプリル尿素の形態で入手できる。
【0004】
直面される問題は、商業的に入手可能な固体尿素が、ホルムアルデヒドまたは他の添加物により汚染されていることである。これは、固体尿素の特性を改善し、また、尿素の粒状化またはプリル化を容易にするために、ホルムアルデヒドまたは他の添加物が添加されているからである。前述の暫定規格(Vornorm)においては、NO低減ユニットで使用される尿素含有水性流れに許容される汚染物質は、極めて微量である。固体尿素を溶解して得られる尿素含有水性流れは、暫定規格の品質要件を満たさない。
【0005】
現時点では、固体尿素、または、それから得られる尿素含有水性流れは、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドと尿素との反応生成物および他の添加物を、公知の分離技術を用いて除去することによって、精製している。しかしながら、この方法はコストがかかる。
【0006】
これらの欠点を除くことが、本発明の目的である。
【0007】
これは、尿素製造プロセスの回収部から直接またはその後に尿素含有水性流れを分離し、その後、尿素含有水性流れが30〜35重量%の尿素を含むようになるまで尿素含有水性流れを水で希釈することによって達成される。
【0008】
このようにして、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドと尿素との反応生成物または他の添加物を含有しない尿素含有水性流れが、直接得られる。
【0009】
さらなる利点は、尿素含有水性流れを得るために固体尿素を水に溶解する必要がない点である。
【0010】
通常、尿素の商業的製造は、例えば、従来の尿素プロセス、COストリッピングプロセス、サーマルストリッピングプロセスおよびACESプロセスなどの公知のプロセスにより、NHとCOを原料にして行われる。これらのプロセスはいずれも、尿素合成部および1つもしくはそれ以上の回収部からなり、尿素含量が50重量%を超える尿素含有水性流れが製造される。その後、尿素含有水性流れは、含水量が0.1〜5重量%になるまで、蒸発部または晶析部でさらに濃縮される。この含水量は、尿素製造プロセスにある造粒部の設定要件に依存する。造粒技術の例としては、プリル化および粒状化が挙げられる。造粒技術のために、そしてまた固体尿素の製品品質(輸送特性)の改善のために、蒸発/晶析工程の際、またはその後の工程で、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドと尿素との反応生成物および他の添加物が尿素含有水性流れに加えられる。
【0011】
尿素含有水性流れを、現存の尿素プロセスから分離することができる。尿素含有水性流れは、尿素プロセスから得られる尿素含有流れの全部であってもよく、あるいはその一部であってもよい。燃焼機関排ガス中のNOを低減するユニットで使用する尿素含有水性流れの製造に特に適した新規な尿素プロセスを設計することも可能である。新規な尿素プロセスを設計することの利点は、この新規なプロセスが蒸発または晶析部および造粒部を備える必要がない点である。
【0012】
尿素含有水性流れは、尿素製造プロセスの回収部から直接またはその後に分離される。尿素含有水性流れは、1つの回収部由来のものであってもよいし、あるいは、もし尿素製造プロセスが複数の回収部を含むなら、いくつかの回収部由来のものであってもよい。
【0013】
尿素含有水性流れは、尿素製造プロセスの1つの場所から分離した1つの流れであってもよいし、あるいは、尿素製造プロセスの各所から分離した複数の流れからなるものであってもよい。分離の後、尿素含有水性流れは水で希釈される。
【0014】
尿素製造プロセスの回収部で、尿素合成溶液中のカルバミン酸アンモニウム、遊離二酸化炭素および遊離アンモニア含量を減少させる。これは、溶液を、加熱するとともに、場合により減圧することによって行われる。この温度の上昇によって、また場合により行われる圧力の低減によっても、存在するカルバミン酸アンモニウムの遊離アンモニアと遊離二酸化炭素への解離が起こる。この遊離アンモニアと遊離二酸化炭素の相当部分が、気相へと移行し、気液分離器で、尿素含有水性流れの残りの部分から分離される。各種の尿素製造プロセスにおいて、回収部では種々の圧力および温度レベルが適用される。あるプロセスでは、解離プロセスを促進するために、1つもしくはそれ以上の解離工程でストリッピング媒体が加えられる。適切なストリッピング媒体の例としては、アンモニアガス、二酸化炭素ガス、空気および水蒸気が挙げられる。各種プロセスでは、また、排出されたアンモニアガスおよび二酸化炭素が異なる方法で処理される。尿素溶液が各種の解離工程を流れる間に、アルカリ度およびカルバミン酸アンモニウム含量が低減される。
【0015】
尿素含有水性流れは、少なくとも1つの回収部が解離ユニットを含み、解離がストリッピング媒体の添加によって促進される尿素製造プロセスの、解離ユニットの後で分離することが好ましい。
【0016】
尿素含有水性流れは、回収部の後で分離することが好ましい。
【0017】
尿素貯蔵タンクが、回収部の後で、かつ、造粒部が存在するときには、その造粒部の前に存在するような尿素プロセスでは、尿素含有水性流れは、尿素貯蔵タンクから分離することがより好ましい。
【0018】
尿素製造プロセスの回収部から直接またはその後で分離された尿素含有水性流れは、60〜90重量%の尿素を含むことが好ましい。
【0019】
燃焼機関排ガス中のNOを低減するためのユニットで尿素含有水性流れを使用するためには、尿素製造プロセスから直接分離した尿素含有水性流れを、尿素含有流れが30〜35重量%の尿素を含むようになるまで、希釈する必要がある。
【0020】
本発明の方法で尿素含有水性流れを尿素製造プロセスから分離することによって、通常、十分に低いアルカリ度および炭酸塩(CO含量として)を有し、これらの溶液を燃焼機関排ガス中のNOを低減するユニットでの使用に適するようにした尿素含有水性流れを得ることが達成される。
【0021】
そのようにならない稀なケースでは、水で希釈する前または希釈した後に尿素含有水性流れを解離に供することによって、容易に、尿素含有水性流れのアルカリ度(NH含量として)および炭酸塩(CO含量として)をさらに低減することができる。解離は、水による希釈の前に行うことが好ましい。なぜなら、その場合、解離に供される溶液の量が制限されるからである。しかしながら、水による希釈の後に解離を行うことがより好ましい場合がある。こうすることによって、解離プロセスの温度を、解離過程で固形分を生成しない、より低い温度とすることができるからである。温度を低くすることは、加水分解による尿素の損失量を最小にするためにも、解離過程で生ずるビウレットの量を最小にするためにも、有利である。
【0022】
解離は、場合により、加熱、および/または、適切なストリッピング媒体の添加、および/または、減圧により行うことができる。
【0023】
解離は、0.001〜0.2MPaの圧力で、水蒸気ストリッピングにより行うことが好ましい。ストリッピング媒体に水蒸気を使用することによって、ストリッピング過程で、溶液の輸送に問題となる固体物質が生成するのを防止することができる。解離過程で減圧することによって、尿素の加水分解を防ぐように、解離過程の温度を低く維持することができる。
【0024】
以下、図1および図2に基づいて本発明を説明するが、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0025】
図1に、尿素合成部(UP)、尿素回収部(UR)、尿素貯蔵タンク(S)、蒸発部(EV)および造粒部(US)を含む尿素製造プロセスを示す。この尿素製造プロセスの最終生成物は固体尿素(s)である。
【0026】
尿素貯蔵タンク(S)から、尿素を75重量%含有する尿素含有水性流れが分離される。この尿素含有水性流れ(U1)は、アルカリ度(NHとして)0.7%および炭酸塩含量(COとして)0.7%を有し、解離ユニットに流入され、そこで尿素含有水性流れが0.04MPaの圧力下、水蒸気によりストリップされる。
【0027】
解離後、尿素含有水性流れは、水で尿素含量31.5重量%にまで希釈される。
【0028】
尿素含量31.5重量%、アルカリ度(NHとして)300ppmおよび炭酸塩含量(COとして)300ppmの尿素含有水性流れ(U2)は、燃焼機関排ガス中のNOを低減するユニットでの使用に適した尿素含有水性流れ(AU)として貯蔵される。
【0029】
図2に、燃焼機関排ガス中のNOを低減するユニットでの使用に適した尿素含有水性流れを製造するために特別に開発された別の尿素製造プロセスを示す。この尿素製造プロセスは、尿素合成部(UP)、尿素回収部(UR)を含み、尿素回収部はストリッピング剤としてCOを添加することによって解離が促進される解離ユニットを備える。尿素含量が79重量%の尿素含有水性流れ(U1)が、この尿素回収部の解離ユニットから分離され、水で尿素含量31.5重量%にまで希釈される。この尿素含有水性流れ(U1)は、アルカリ度(NHとして)0.1%および炭酸塩含量(COとして)0.05%を有し、燃焼機関排ガス中のNOを低減するユニットでの使用に適した尿素含有水性流れ(AU)として貯蔵される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】尿素製造プロセスを示す。
【図2】別の尿素製造プロセスを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼機関排ガス中のNOを低減するユニットでの使用に適した尿素含有水性流れの製造方法であって、
尿素製造プロセスの回収部から直接またはその後に前記尿素含有水性流れを分離し、その後、前記尿素含有水性流れが30〜35重量%の尿素を含むようになるまで前記尿素含有水性流れを水で希釈することを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも1つの前記回収部が、解離がストリッピング媒体の添加によって促進される解離ユニットを備える方法であって、
前記解離ユニットの後で前記尿素含有水性流れが分離されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記尿素含有水性流れが、前記回収部の後で分離されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記尿素貯蔵タンクが、前記回収部の後で、かつ、造粒部が存在するときには、該造粒部の前に存在する方法であって、
前記尿素貯蔵タンクから前記尿素含有水性流れが分離されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記尿素含有水性流れが、60〜90重量%の尿素を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記尿素含有水性流れが、水による希釈の前または後に解離に供されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記解離が、0.001〜0.2MPaの圧力で、水蒸気ストリッピングにより行われることを特徴とする請求項2または6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−538133(P2008−538133A)
【公表日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500647(P2008−500647)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国際出願番号】PCT/NL2006/000097
【国際公開番号】WO2006/096048
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】