説明

尿pH検査用具

【課題】被検査液である尿の量の多少にかかわらず、尿のpH変化を簡便且つ確実に測定することができる尿pH検査用具を提供する。
【解決手段】溶媒に低溶解性の水溶性樹脂とpH指示薬とを溶解し、pH緩衝液にてpH3〜5の酸性に調整した溶液を、中性で且つ吸水性を有する基材に塗布又は含浸した後乾燥して得たことを特徴とする。かかる構成により、基材に担持させたpH指示薬の周囲が、低溶解性の水溶性樹脂からなる薄膜で覆われるようになる。このため、この水溶性樹脂からなる薄膜が乾燥遅延材として機能し、基材に付着させた尿が乾燥するのを遅延させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットや家畜或いは人の健康管理に使用する尿検査用具に関し、特に尿のpH変化を測定するものに関する。
【背景技術】
【0002】
人やペット或いは家畜と云った動物が排泄する尿のpHは、その動物の健康状態を示す重要なバロメーターの一つである。
【0003】
例えば、近年、住宅事情等により犬や猫などのペットを室内で飼育する所謂「室内飼い」が増えているが、室内飼いのペットはストレスや運動不足などによって尿路疾患に罹り易いと云われている。この尿路疾患の多くはストラバイト結晶(尿晶)による尿路閉塞であり、ストラバイト結晶が尿中に析出すると尿のpHは、正常時の6付近(弱酸性)から8付近(弱アルカリ性)にまで上昇することが知られている。特に、猫は、排尿回数及び量共に犬よりも少なく、ストラバイト結晶による尿路閉塞を起こし易い。
【0004】
ここで、ペットの排尿行動に異常が見られた場合には、動物病院で尿のpH検査を受けるか、或いは飼い主自らが市販のpH試験紙を用いて尿のpH測定をすることになるが、動物病院でペットの尿検査を頻繁に行った場合には、高額の診療費を負担しなければならないと云う問題がある。
【0005】
一方、飼い主自らが市販のpH試験紙を用いて尿のpH測定をする場合には、pH試験紙をペットの尿に浸して引き上げ、pH試験紙に吸収させた尿が乾燥してpH試験紙の色調が変化する前に、素早く標準色見本と対比して、微妙な色調の変化を判断しなければならないため、一般の人がペットの尿のpHを正確に測定するのが困難であると云う問題があった。
【0006】
そこで、上記のような問題を解決し得る技術として、pH試験紙と台紙との間に水や尿などの被検査液が流入する隙間を形成したpH検査用スティックが開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
かかる技術によれば、水や尿などの被検査液がpH試験紙と台紙との間に形成された隙間に流入して保持され、pH試験紙の乾燥を遅延させることができるので、pH試験紙の発色初期の状態をある程度の期間維持することができ、一般の人でもゆっくりと落ち着いて正確なpH値を測定することができるようになる。
【特許文献1】特許第3351518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のpH検査用スティックでは、被検査液の量が極めて少ない場合、pH試験紙と台紙との間に形成された隙間に被検査液を保持させることができず、pH試験紙に吸収させた被検査液が直ぐに乾燥するようになり、正確なpH値の測定が困難になると云う問題があった。
【0009】
また、pHの測定に市販のpH試験紙を使用しており、尿のpH値をある程度正確に測定することができるものの、微妙な色調の変化を判断しなければならず、一見して尿のpHの変化を把握できない点については従来のものと何ら変わりはなく、依然として一般の人には使い難いものであった。
【0010】
それゆえ、本発明の主たる課題は、被検査液である尿の量の多少にかかわらず、尿のpH変化を簡便且つ確実に測定することができる尿pH検査用具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載した発明は、「溶媒に低溶解性の水溶性樹脂とpH指示薬とを溶解し、pH緩衝液にてpH3〜5の酸性に調整した溶液を、中性で且つ吸水性を有する基材に塗布又は含浸させた後、乾燥して得た」ことを特徴とする尿pH検査用具である。
【0012】
この発明では、低溶解性の水溶性樹脂が乾燥固化して形成された薄膜が、基材に担持させたpH指示薬の周囲を覆うようになる。このため、この水溶性樹脂からなる薄膜が乾燥遅延材として機能し、基材(より具体的にはpH指示薬の周囲)に付着させた尿が乾燥するのを遅延させることができる。その結果、pH指示薬の色調変化を遅延させることができ、発色初期の状態を長い間維持することができる。
【0013】
なお、本発明において、「低溶解性の水溶性樹脂」とは、一旦乾燥固化させた水溶性樹脂に再度水を与えた際に、当該樹脂が簡単に再溶解して粘着性を帯びることがない性質のものを云う。
【0014】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の尿pH検査用具において、「水溶性樹脂がポリビニルアルコール,ポリアクリル酸,ポリアクリルアミド又はポリエチレンオキシドから選ばれる少なくとも1種である」ことを特徴とするもので、水溶性樹脂として上記のような合成樹脂を使用することによって、低溶解性のものを容易に得ることができると共に、天然由来の樹脂を用いた場合のように腐敗や変質の問題が生じず、長期に亘って安定したpH測定結果を得ることができる。
【0015】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載の尿pH検査用具において、「pH指示薬がフェノールレッド,ブロモチモールブルー又はアントシアニンから選ばれる1種である」ことを特徴とするもので、pH指示薬としてフェノールレッド,ブロモチモールブルー又はアントシアニンの何れかを使用することによって、従来の市販のpH試験紙のように標準色見本と対比して微妙な色調の変化を見極めてpH値を測定する必要がなく、ペットの尿のpHを、pH6前後の弱酸性,pH7前後の中性及びpH8前後の弱アルカリ性のそれぞれに対応した色調が大きく異なる3色で簡単に測定することができる。つまり、一見しただけで尿のpHの変化を把握することができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1又は2に記載の発明によれば、基材に担持させたpH指示薬の周囲が、低溶解性の水溶性樹脂からなる薄膜で覆われるようになり、この水溶性樹脂からなる薄膜が乾燥遅延材として機能する。このため、基材に付着させた尿が乾燥するのを遅延させることができ、pH指示薬の発色初期の状態を長い間維持することができる。又、被検査液である尿が極少量であっても、尿のpH変化を確実に測定することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、従来の市販のpH試験紙のように標準色見本を必要とせず、尿のpHを、pH6前後の弱酸性,pH7前後の中性及びpH8前後の弱アルカリ性のそれぞれに対応した色調が大きく異なる3色で簡単に測定することができる。
【0018】
したがって、被検査液である尿の量の多少にかかわらず、尿のpH変化を簡便且つ確実に測定することができる尿pH検査用具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0020】
本発明の尿pH検査用具は、溶媒に低溶解性の水溶性樹脂とpH指示薬とを溶解し、pH緩衝液にてpH3〜5の酸性に調整した溶液を、中性で且つ吸水性を有する基材に塗布又は含浸させた後乾燥して得たものである。
【0021】
本発明の尿pH検査用具において、低溶解性の水溶性樹脂やpH指示薬などを溶解した溶液を塗布又は含浸する基材としては、木材パルプやコットン(リンターを含む)と云ったセルロース繊維からなる中性で且つ吸水性を有するシート状部材(例えば、紙,不織布,ガーゼなど)或いは棒状部材(例えば、綿棒,濾紙スティックなど)等が挙げられる。
【0022】
このうち、基材として綿棒や濾紙スティックのような棒状部材を用いると共に、基材の先端部分にpH指示薬や水溶性樹脂を溶解した溶液を塗布又は含浸し、当該先端部分をpH測定部位とするのが好ましい。こうすることにより、使用者が手を汚すことなく尿のpHを測定(判定)することができ、又、pH測定に際し、尿を予め採取することなく、排尿中に基材の先端部分を直接尿に接触させるだけで簡単に尿のpHを測定することもできる。更に、被検査液がペットの尿の場合、とりわけ猫の尿pHを測定する場合には、何時排尿するか分からない猫の排尿時間に囚われることなく、排尿によって濡れた猫砂等に基材先端のpH測定部位をこすり付けるだけで簡単に尿のpHを測定することができる。
【0023】
この基材に塗布又は含浸させる溶液(以下、「pH指示薬混合溶液」という。)は、水などの溶媒に低溶解性の水溶性樹脂、pH指示薬及びpH緩衝液を溶解させたものである。
【0024】
pH指示薬混合溶液に溶解させた低溶解性の水溶性樹脂は、当該溶液を基材に含浸させて尿pH検査用具を作製した際に、pH指示薬の周囲を覆い乾燥遅延材として機能する薄膜を形成するためのものである。
【0025】
この水溶性樹脂としては、変性デンプンやセルロース誘導体等の天然由来の水溶性樹脂や、ポリビニルアルコール(PVA),ポリアクリル酸,ポリアクリルアミド(PAM),ポリエチレンオキシド(PEO)等の合成系水溶性樹脂などのうち、再湿時に樹脂が簡単に再溶解しない低溶解性のものが用いられる。このうち、特にPVA,ポリアクリル酸,PAM,PEOなどの合成系水溶性樹脂を用いるのが好ましい。これら合成系水溶性樹脂は、低溶解性のものを容易に得ることができると共に、天然由来の水溶性樹脂と異なり腐敗や変質の問題が生じず、長期に亘って安定したpH測定結果を得ることができるようになるからである。
【0026】
ここで、水溶性樹脂としてPVAを用いる際には、ケン化度が85mol%以上で且つ重合度が2000以上の部分ケン化型PVA若しくは重合度が500以上の完全ケン化型PVAを用いるのが好ましい。このようなPVAは水に対する溶解性が低い(低溶解性である)ため、尿pH検査用具に尿を吸収させた際、PVAによって形成された薄膜が再溶解して乾燥遅延効果が低下することがなく、又、PVAが再湿潤して粘着性を帯びるようになることもないからである。
【0027】
pH指示薬混合溶液に溶解させる水溶性樹脂の量は、当該溶液全体の重量に対して1〜10重量%の範囲内にするのが好ましい。水溶性樹脂の量が1重量%未満の場合には、十分な乾燥遅延効果を得ることができず、逆に、水溶性樹脂の量が10重量%より多い場合には、基材に形成したpH測定部位の表面全体が水溶性樹脂による薄膜で完全に覆われるようになる結果、当該部位の吸水性が阻害され、少ない尿量でpHを測定するのが困難になるからである。
【0028】
pH指示薬混合溶液に溶解させたpH指示薬は、当該指示薬の色調の変化に基づいて尿のpHを測定するものであり、本発明では、pH6付近の弱酸性からpH8付近の弱アルカリ性までのpH変化を判定できるものが用いられる。上述のように、ストラバイト結晶がペットの尿中に析出すると尿のpHが正常時の6付近から8付近にまで上昇することが知られているからである。又、家畜や人などにおいても健康状態の変化に伴って尿のpHが上記範囲(pH6〜8の範囲)で変動することが知られているからである。
【0029】
かかるpH指示薬としては、フェノールレッド,ブロモチモールブルー,又はアントシアニンから選ばれる1種を用いるのが好ましい。pH指示薬としてこれらのものを用いることによって、尿のpHを、pH6前後の弱酸性,pH7前後の中性及びpH8前後の弱アルカリ性のそれぞれに対応した発色の異なる3色で簡単に測定することができるからである。具体的には、フェノールレッドの場合、尿中のpHが6前後のときには薄い黄色、pHが7前後のときにはオレンジ色、pHが8前後のときは赤色を呈し、ブロモチモールブルーの場合、尿中のpHが6前後のときには黄色、pHが7前後のときには深緑色、pHが8前後のときは青色を呈する。又、アントシアニン(赤キャベツ色素)の場合、尿中のpHが6前後のときには薄い赤紫色、pHが7前後のときには薄い青紫色、pHが8前後のときは暗緑色を呈する。なお、植物由来のポリフェノールであるアントシアニンは、フェノールレッドやブロモチモールブルーに比べて発色性は若干劣るものの、安全性が極めて高い。
【0030】
ここで、pH指示薬混合溶液に溶解させるpH指示薬の量は、当該溶液全体の重量に対して0.01〜0.1重量%の範囲内にするのが好ましい。pH指示薬の量が0.01重量%未満の場合には、pH変化に伴って変色する指示薬の発色状態を判定するのが困難になり、逆に、pH指示薬の量が0.1重量%より多い場合には、pH変化に伴って変色する指示薬の発色状態を容易に判定することができるようになるが、これ以上pH指示薬の量を増やしても発色の変化の度合いが頭打ちとなり、経済的でなくなるからである。
【0031】
pH指示薬混合溶液に溶解させたpH緩衝液は、pH指示薬混合溶液のpHが変動し、当該溶液に溶解させたpH指示薬が不所望に呈色するのを防止するために添加するものである。本発明の尿pH検査用具の製造に用いるpH指示薬混合溶液では、pH緩衝液を添加して当該溶液のpHが3〜5の範囲となるように調製している。
【0032】
以上のように構成されたpH指示薬混合溶液には、必要に応じてエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤を添加するようにしてもよい。キレート剤を添加することにより、このキレート剤が尿中に含まれるカルシウムイオンや鉄イオンなどの金属イオンと結合して錯体を形成し、当該金属イオンによる発色妨害或いは不所望な発色を防ぐことができるからである。
【0033】
また、溶媒として水を使用する場合には、エタノール,メタノール,イソプロピルアルコール(IPA)及び変性アルコールなどのアルコールを添加するのが好ましい。水にこれらアルコールを添加して溶媒を構成することによって、基材を殺菌することができると共に、pH指示薬混合溶液を乾燥させる際の乾燥速度を向上させることができるからである。
【0034】
さらに、このpH指示薬混合溶液に、pH指示薬の呈色性を阻害しない範囲内で尿糖検出指示薬,尿蛋白検出指示薬又は尿潜血検出指示薬など他の指示薬を添加するようにしてもよい。
【0035】
本発明の尿pH検査用具を製造する際には、上記のようなpH指示薬混合溶液を調製し、pH測定部位を形成したい基材の所定位置に、当該pH指示薬混合溶液を公知の方法で塗布又は含浸する。そして、基材に担持させたpH指示薬混合溶液を風乾或いは加熱乾燥させることにより本発明の尿pH検査用具が完成する。
【0036】
なお、pH指示薬混合溶液を加熱乾燥させる際には、100℃未満の比較的低温で乾燥させるのが好ましい。pH指示薬混合溶液を100℃以上の高温で加熱乾燥させた場合、基材に担持させたpH指示薬が斑状に発色するようになり、pHの測定が困難になるからである。
【0037】
本発明の尿pH検査用具によれば、低溶解性の水溶性樹脂が乾燥固化して形成された薄膜が、基材に担持させたpH指示薬の周囲を覆うようになり、この水溶性樹脂からなる薄膜が乾燥遅延材として機能する。このため、基材に付着させた尿が乾燥するのを遅延させることができ、pH指示薬の発色初期の状態を長い間維持することができる。加えて、被検査液である尿が極少量であっても、尿のpH変化を確実に測定することができる。
【0038】
また、pH指示薬としてフェノールレッド,ブロモチモールブルー,又はアントシアニンの何れかを使用することによって、従来の市販のpH試験紙のように標準色見本と対比して微妙な色調の変化を見極めてpH値を測定する必要がなく、尿のpHを、pH6前後の弱酸性,pH7前後の中性及びpH8前後の弱アルカリ性のそれぞれに対応した発色の異なる3色で簡単に測定することができる。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例をあげて本発明の尿pH検査用具を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0040】
尿pH検査用具の作製
基材として市販の医療用6インチ綿棒を用意すると共に、下表1に示す条件でpH指示薬混合溶液を調製した。調製後のpH指示薬混合溶液のpHは概ね4であった。
【0041】
【表1】


そして、綿棒の先端部(綿球)をpH指示薬混合溶液に浸漬して当該溶液を綿球に含浸させた後、綿棒をpH指示薬混合溶液から引き上げ、80℃で20〜30分乾燥させて尿pH検査用具を完成させた。
【0042】
また、比較例として、下表2に示すようなpH指示薬混合溶液を調製し、上述の実施例と同様にして尿pH検査用具を作製した。上記実施例と比較例との違いは、pH指示薬混合溶液へのPVA添加の有無である。
【0043】
【表2】


尿pH検査用具の性能評価方法
上記実施例及び比較例の尿pH検査用具について、pHを6,7及び8の3段階に調製した人工尿を用いてこれらの性能を評価した。
【0044】
具体的には、下表3に示すような処方で人工尿ベースを作製し、これにpH4のリン酸塩緩衝液(和光純薬工業(株)製 特級)を加えて、pH6,7及び8の3段階の人工尿を調製した。
【0045】
【表3】


そして、尿pH検査用具の綿球すなわちpH測定部位を各人工尿に浸漬した後、引き上げて、以下の項目について評価を行った。
(1)色の見やすさ;色覚に異常のない5名のパネラーが、pH測定部位に担持させたpH指示薬の色調の変化を、◎=「非常に見やすい」,○=「見やすい」,△=「やや見にくい」,×=「見にくい」の4段階で官能評価した。そして、最もよい結果と最も悪い結果とを除いたデータの中から最も多い評価のものを採用した。
(2)色落ち;5名のパネラーが、尿pH検査用具を人工尿に漬けて引き上げた後、ティッシュペーパー上に載置し、3分経過後にpH指示薬の色がティッシュに染みているかどうかを、◎=「ほとんど色落ちなし」,○=「多少色落ちあり」,△=「色落ち有り」,×=「色落ちが激しい」の4段階で官能評価した。そして、最もよい結果と最も悪い結果とを除いたデータの中から最も多い評価のものを採用した。
(3)発色の持続性;5名のパネラーが、尿pH検査用具を人工尿に漬けて引き上げた後、初期の発色状態から明らかに色調が変化するまでの時間を計測した。そして、最もよい結果と最も悪い結果とを除いたデータの中から最も多い評価のものを採用した。
【0046】
尿pH検査用具の性能評価結果
本実施例及び比較例の尿pH検査用具に関する上記(1)〜(3)の評価結果を下表4に示す。
【0047】
【表4】


この表が示すように、pH指示薬混合溶液にPVAを添加した本実施例の尿pH検査用具は、pH指示薬混合用液にPVAを添加しない比較例のものに比べて、色調の変化が見やすく、又、ほとんど色落ちがなく、発色の持続性が極めて高いことがうかがえる。これらの結果は、pH指示薬混合溶液にPVAを添加することによって、PVAが基材に担持させたpH指示薬の周囲を覆う薄膜となり、この薄膜が乾燥遅延材として機能していることに因るものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒に低溶解性の水溶性樹脂とpH指示薬とを溶解し、pH緩衝液にてpH3〜5の酸性に調整した溶液を、中性で且つ吸水性を有する基材に塗布又は含浸させた後乾燥して得たことを特徴とする尿pH検査用具。
【請求項2】
前記水溶性樹脂がポリビニルアルコール,ポリアクリル酸,ポリアクリルアミド又はポリエチレンオキシドから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の尿pH検査用具。
【請求項3】
前記pH指示薬がフェノールレッド,ブロモチモールブルー又はアントシアニンから選ばれる1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の尿pH検査用具。

【公開番号】特開2009−42158(P2009−42158A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209488(P2007−209488)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(591230480)フジライト工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】