説明

局所用アシルグルタチオン製剤

S−アシルグルタチオン誘導体の有効量および担体を含む、皮膚の老化を予防および治療するための局所用組成物。皮膚の老化を予防および治療するための方法であって、皮膚科学的に許容される担体中のS−アシルグルタチオン誘導体を含有する組成物を、皮膚組織に適用することを含む方法。アシル基は飽和または不飽和脂肪族C12−C24基、好ましくは不飽和C16−C24基、最も好ましくは不飽和C18基である。特に好ましい実施態様では、アシル基はリノレオイル基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、皮膚の老化を予防および治療するための局所用組成物に関する。より具体的には、本発明は、皮膚の弾力性を増加させ、小皺の出現を減少させ、皮膚の血色を均一にし、かつ、老化の他の目に見える兆候を治療するための、グルタチオンのアシル誘導体を含む局所用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
還元型グルタチオンは、最も一般的にはグルタチオンまたはGSHと呼ばれており、動物および植物に見られる比較的小さな分子であり、下記の式を有する。
【化1】

グルタチオンは水相オルト分子(orthomolecule)である。それは最も小さな細胞内チオール分子である。それは、その有意な電子供与能のために、強力な還元性化合物である。グルタチオンは、細胞活性の制御に決定的な役割を果たす強力な抗酸化剤であり、かつ酵素補因子でもある。
【0003】
グルタチオンは、L−グルタミン、L−システイン、およびグリシンの直鎖状のトリペプチドである。技術的には、N−L−γ−グルタミル−システイニルグリシンまたはL−グルタチオンは、システイニル部分にスルフヒドリル(SH)基を有する分子であり、その部分がその強力な電子供与性の主な原因となる。電子が失われると、分子は酸化され、2つの酸化型グルタチオン分子がジスルフィド架橋によって結合し(二量体化し)、グルタチオンジスルフィドまたは酸化型グルタチオン(GSSG)を形成する。この結合は、再還元すると、可逆的に元に戻る。グルタチオンは、細胞内および細胞外の両方で、厳密な恒常性調節下にある。グルタチオン合成、GSSG/酸化型グルタチオンからのその再利用、およびその利用の間で、動釣合いが維持されている。
【0004】
グルタチオン合成は、2つの密接に関連した、ATPを利用する酵素的に制御された反応を含む。第一に、システインとグルタメートが、γ−グルタミルシステイニルシンテターゼによって結合される。第二に、グルタチオンシンテターゼがγ−グルタミルシステインとグリシンを結合し、グルタチオンを生成する。グルタチオンレベルが上昇するにつれて、それらはさらなるグルタチオン合成を自己制御する;その他の点では、システイン利用能が通常は律速要因となる。空腹、タンパク質エネルギー栄養障害、または他の食物由来のアミノ酸欠乏が、グルタチオン合成を制限する。
【0005】
グルタチオン再利用はグルタチオンジスルフィドレダクターゼによって触媒されるが、これはNADPH由来の還元当量を用い、GSSGを2GSHに再変換する。アスコルビン酸塩の還元力が、全身のグルタチオンの保存を助ける。グルタチオンは、(1)生体分子に対する酸素ラジカル攻撃から生成したペルオキシドを解毒するための、複数のペルオキシダーゼ酵素;(2)DNA、タンパク質、および他の生体分子の酸化中心を還元するための、トランスヒドロゲナーゼ;および(3)グルタチオンを内因性物質(例えば、エストロゲン)および外因性求電子試薬(例えば、アレーンオキシド、不飽和カルボニル、有機ハロゲン化合物)、ならびに多様な生体異物と抱合させるための、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、によって補因子として用いられる。
【0006】
フリーラジカルおよび他の酸化剤は、グルタチオンを枯渇させることができる。消費されている間、恒常性グルタチオン酸化還元サイクルはグルタチオンレベルを維持しようと試みる。食物から入手できる量は制限されており(150mg/日未満)、酸化的枯渇は合成を上回ることができる。
【0007】
肝臓は最大のグルタチオン貯蔵庫である。実質細胞は、P450抱合および多数の他の代謝要求のためにグルタチオンを合成し、その後、全身のSH/還元力の源としてグルタチオンを運び出す。グルタチオンは、胆汁中で腸管腔区画まで運ばれる。尿細管、腸の内層、および肺の上皮組織は、実質的なP450活性を有し、グルタチオンを運び出す中程度の能力を有する。
【0008】
グルタチオン等価物は、主にシステインの酸化型であって、より安定な形態であるシスチンとして血中を循環している。細胞は血液からシスチンを運び入れ、それをシステインに再変換し(おそらくアスコルビン酸塩を補因子として用いて)、それからグルタチオンを合成する。逆に、細胞内では、グルタチオンは、他の抗酸化剤、例えばアスコルビン酸塩およびα−トコフェロールの酸化型の再還元を助ける。
【0009】
グルタチオンは、非常に重要な細胞保護剤である。それは、反応性ヒドロキシルフリーラジカル、他の酸素中心フリーラジカル、ならびにDNAおよび他の生体分子上のラジカル中心を直接クエンチする。グルタチオンは、放射線障害に対して皮膚、水晶体、角膜、および網膜を保護し、肝臓、腎臓、肺、腸上皮、および他の臓器におけるP450解毒の生化学的基盤を保護する。
【0010】
グルタチオンは、チオール還元当量を必要とする多くの酵素のための必須の補因子であり、酵素の酸化還元感受性の活性部位を必要な還元状態に維持するのを助ける。高次チオール細胞系(Higher-order thiol cell systems)−メタロチオネイン、チオレドキシン、および他の酸化還元調節タンパク質−は、最終的にGSHレベルおよびGSH/GSSG酸化還元比によって調節される。
【0011】
グルタチオンおよびその代謝物は、いくつかの著名な代謝経路を通じて、エネルギー論(energetics)および神経伝達物質合成とも連動している。グルタチオン利用能は、ロイコトリエンおよび他のエイコサノイドの炎症誘発能を下方制御する。
【0012】
ヒト組織におけるグルタチオンレベルは通常、0.1〜10ミリモル(mM)の範囲にあり、肝臓(最大10mM)において最も濃縮しており、脾臓、腎臓、水晶体、赤血球、および白血球において濃縮している。血漿濃度は、マイクロモル範囲(およそ4.5μM)である。グルタチオンを枯渇させることができる酸化ストレス要因は、紫外線および他の放射線;ウイルス感染;環境有害物質、家庭用化学品、および重金属;手術、炎症、熱傷、敗血症ショック;ならびにグルタチオン前駆体および酵素補因子の食事での摂取不足を含む。
【0013】
多数の開示が、様々なグルタチオン誘導体の投与を通じてグルタチオンの細胞レベルを高めることを教示している。米国特許第5,464,825号(Anderson)は、AIDSおよび他のウイルス感染を治療するために肝臓および腎臓細胞における細胞レベルを増加させるための、N−アシルモノアルキルグルタチオンモノエステルの使用を開示している。米国特許第5,624,955号(Nagasawa)は、水晶体におけるグルタチオンレベルを高め、白内障発症を予防するための、グルタミルシステイン誘導体からなるグルタチオンプロドラッグを開示している。米国特許第7,029,695号(Redelmeier)は、造血調節において使用するための、グルタチオンの類似体のバイオアベイラビリティを高めるための脂質製剤を開示している。Neuroscience 138:1161-1170 (2006)(Perlugigら)は、アルツハイマー病を治療するために神経細胞におけるグルタチオンレベルの増加を達成するための、トリシクロデカン−9−イル−キサントゲネートの使用を開示している。WO2009/047728(Liguri)は、グルタチオンの親油性誘導体が、アルツハイマー病およびハンチントン舞踏病の治療に有用となりうることを開示している。
【0014】
グルタチオン誘導体の局所使用が開示されている。米国特許第3,948,569号(Kalopissis)は、様々な頭皮および毛髪に適用するための、過剰な皮脂分泌に効果的な、グルタチオンのS置換の直鎖状および分岐状のアルキルおよびアルケニル誘導体の使用を開示している。米国特許第5,516,507号(N'Guyen)は、皮膚の老化の局所治療のための、グルタチオンモノアルキルエステルを開示している。これらのグルタチオンモノアルキルエステルはグリシン残基で置換されており、1〜10個の炭素のみを有するアルキル鎖を利用している。米国特許出願2004/0147452(Yu)は、広範な状態について局所適用するための、非両性(non-amphoteric)N−アシルグルタチオン誘導体の使用を提案している。時間とともに急速に悪化するグルタチオンのモノおよびジエステルプロドラッグの水性医薬製剤の不安定性のために、グルタチオンの非両性(non-amphoteric)誘導体が提案されている。
【0015】
米国特許第6,011,067号(Hersh)は、剥離性炎症性疾患、例えば乾癬などの局所治療の補助としていくつかの相乗的な抗酸化剤を含む組成物であって、有効成分としてL−グルタチオンおよびセレン化合物を含有する組成物を開示している。Hershの開示は、特許請求の範囲に記載の組成物の抗乾癬効果に対する両成分の存在の重要性を強調している。
【0016】
公開された私の出願、米国特許公開第20050192229号、第20060063718号;および第20060069036号は、乾癬の治療における局所使用のための、高グルタチオン濃度を有する組成物を開示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の概略
本発明は、担体および下記の式:
【化2】

[式中、Rは飽和または不飽和脂肪族C12−C24基、好ましくは不飽和C16−24基、より好ましくは不飽和C18基、最も好ましくは、リノレオイル基からなり;かつ、Rは水素、脂肪族または芳香族アシル基、好ましくは水素である]のS−アシルグルタチオン誘導体の有効量を含む、皮膚の老化を予防および治療するための局所用組成物を提供する。
【0018】
皮膚の老化を予防および/または治療する方法は、皮膚科学的に許容される担体中のS−アシルグルタチオン誘導体の有効量を含有する組成物を、皮膚に適用することを含む。
【0019】
さらに、状態を改善し、閉経期の皮膚を予防または治療する方法は、皮膚科学的に許容される担体中のS−アシルグルタチオン誘導体の有効量を含有する組成物を、皮膚に適用することを含む。特に、本発明は、重篤な皮膚の乾燥、くすみ、弾力性の喪失、もしくは輝きの欠乏に対処するための、または過剰な(exaggerated)線(lines)および皺もしくはクモ状血管(spider vessels)もしくは赤斑(red blotchiness)、閉経前後の、閉経期の、もしくは閉経後の皮膚の全ての目に見える状態の出現を予防もしくは遅延するための、グルタチオンのアシル誘導体を含む局所用組成物および組成物を適用する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な記載
皮膚細胞の老化は、しばしば皮膚の細胞内のタンパク質の糖化と関連するが、これは皮膚の弾力性の喪失およびコラーゲンの分解の原因となる。糖化タンパク質は、炎症、皺、および茶褐色の斑点(brown spots)またはリポフスチンなどの状態を示す。本発明はこのプロセスを認識し、将来の、そして現在の老化状態を最小化するための組成物および方法を提供するものである。
【0021】
皮膚の老化は、しばしば閉経と関連するエストロゲン(estrogen)の喪失またはエストロゲン(oestrogen)の減少によっても引き起こされる。エストロゲン受容体は、顔、生殖器部および下肢の周囲に最も豊富に存在している。本発明はこのプロセスを認識し、閉経の間のエストロゲン(estrogen)およびエストロゲン(oestrogen)の喪失と関連する、将来の、そして現在の皮膚疾患を最小化するための組成物および方法を提供するものである。
【0022】
本発明は、局所用S−アシルグルタチオン(GSH)組成物を含む。特許請求の範囲に記載の組成物は、IUPAC命名法を用いて、S−アルカノイルグルタチオン組成物と呼ばれてもよい。本発明の組成物および方法は、皮膚の老化を予防し、または老化した皮膚を修復するために用いられる。組成物は、閉経と関連する皮膚状態、例えば、重篤な皮膚の乾燥、くすみ、弾力性の喪失、または輝きの欠乏、過剰な(exaggerated)線(lines)および皺もしくはクモ状血管(spider vessels)または赤斑(red blotchiness)に対処するために用いることもできる。用語「皮膚」は、ケラチン表皮(keratinous surfaces skin)、毛髪および爪を意味する。本明細書で用いられている用語「皮膚」は広い意味を有し、顔、体、および首、ならびに唇の皮膚を意味している。
【0023】
治療薬(treatments)は、式:
【化3】

[式中、Rは飽和または不飽和脂肪族C12−C24基、好ましくは不飽和C16−C24基、好ましくは不飽和C18基からなり;かつ、Rは水素、脂肪族または芳香族アシル基、最も好ましくは水素基である]のS−アシルグルタチオン誘導体からなる。特に好ましい実施態様では、Rはリノレオイルまたはオレオイル基からなる群から選択されるが、最も好ましくはリノレオイル基である。それゆえ、本発明の好ましい実施態様は、S−リノレオイルグルタチオンである。
【0024】
本発明の特定の目的は、皮膚の状態を改善するために皮膚透過および経皮吸収を高めるための、アシル基を有するS−アシルグルタチオン組成物を提供することである。グルタチオンチオール基に結合した無極性アシル基の炭化水素鎖の存在は、本発明の化合物を局所適用に効果的なものにすることができ、表皮および真皮細胞の細胞膜の脂質二重層を容易に通過させることができる。特にS−リノレオイルグルタチオンは、親油性構造を有するため、脂溶性であり、細胞膜を通過することができ、細胞に直接吸収される。
【0025】
本発明のS−アシルグルタチオン化合物は、当業者に周知の様々な手段によって製造されてよい。例えば、酵素的トランスチオエステル化は、グルタチオンを補酵素A(CoA)の適切なアシルエステルと反応させ、次いでHPLCによって水相から精製するか、またはグルタチオンを対応するハロゲン化アシルと化学的に反応させることによって達成することができる。上記WO2009/047728を参照のこと(参照することによって本明細書に援用される)。別の合成は、対応するカルボン酸のハロゲン化物をL−グルタチオンのトリフルオロ酢酸溶液と真空下で反応させ、酢酸エチルを加え、沈殿した塩を収集することによって実施されてよい。例えば、上記米国特許第3,984,569号を参照のこと(参照することによって本明細書に援用される)。
【0026】
本発明のS−アシルグルタチオンを含有する局所用組成物は、皮膚組織に局所的に適用され、皮膚組織によって吸収されることが意図されている。S−アシルグルタチオンはトランスケトラーゼを活性化し、その活性を300%増加させ、タンパク質糖化およびAGE形成を予防する。推奨される期間の治療後、皮膚の弾力性および柔軟性の増加と共に、皮膚の炎症、刺激、および紅斑の減少が観察されることが期待される。小皺および皺は減少し、皮膚の血色は均一になるであろう。それゆえ、本発明は、皮膚の老化を予防および治療し、皮膚の乾燥、くすみ、弾力性の喪失および輝きの欠乏に対処することが期待される。特に、治療は、閉経期の皮膚と関連するクモ状血管(spider vessels)または赤斑(red blotchiness)の出現を予防または遅延するために用いられてよい。別の実施態様では、治療は、過剰な(exaggerated)線(lines)および皺を予防または遅延するために用いられてよい。
【0027】
前述の利益を達成し、皮膚の老化の典型的な影響を予防するためには、S−アシルグルタチオンを含有する局所用組成物の有効量のみが必要とされる。一般的に、皮膚組織への局所適用は、皮膚科学的に許容される担体、特にS−アシルグルタチオン自体が溶解でき、または効果的に可溶化する(例えば、エマルションまたはマイクロエマルションとして)担体の協力によって達成される。利用される場合、担体は、グルタチオン由来の有効成分の非活性化または酸化をもたらさないという意味で、およびそれが適用される皮膚領域に有害作用をもたらさないという意味で不活性である。
【0028】
本発明の1つの好ましい実施では、1つ以上のS−アシルグルタチオン誘導体が皮膚科学的に許容される担体またはビヒクルと混合して適用され(例えば、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤、セッケン、またはスティック(stick)などとして)、局所適用を容易にし、場合によっては、例えば、罹患した皮膚領域を加湿することによってもたらされうる付加的な治療効果を提供する。局所用組成物のための担体は、比較的単純な溶媒または分散剤、例えば水からなっていてよいが、より局所適用の助けとなる成分を含む担体、特に、それが適用された皮膚にフィルムまたは層を形成し、適用を局在化させ、水中の浸漬もしくは発汗による洗い落とし(washing off)に何らかの抵抗力を提供し、および/または活性剤の経皮送達の補助を提供する担体が一般的に好ましい。多くの製剤が当該技術分野で周知であり、油および/またはアルコールを含有するローション剤および皮膚軟化剤 植物油、炭化水素油およびワックス、シリコーン油、動物または海産物の脂肪または油、グリセリド誘導体、脂肪酸もしくは脂肪酸エステル、またはアルコールもしくはアルコールエーテル、レシチン、ラノリンおよび誘導体、多価アルコールもしくはエステル、ワックスエステル、ステロール、ならびにリン脂質などを含み、一般的に乳化剤(非イオン性、カチオン性またはアニオン性)も含むが、いくつかの皮膚軟化剤は本質的に乳化性を有している。好ましい実施態様では、担体はレシチンである。
【0029】
示したように、これらの成分は、異なる割合の成分の利用によって、および/または増粘剤、例えばゴムもしくは他の形態の親水性コロイドの包含によって、クリーム剤、ローション剤、もしくはゲル剤、または固体スティック(solid stick)に製剤化されうる。1つの可能な実施態様は、患部を拭くために用いられるパッドを飽和させるのに用いられる溶液である;別の実施態様は、洗剤である;他の実施態様は、ローション剤、クリーム剤、およびゲル剤であり、本明細書で皮膚的に(dermally)または皮膚科学的に許容される担体と呼ばれ、当業者に周知の通常の技術を用いて製剤化される。本明細書で用いられている用語「局所用組成物」は、本明細書に記載されている、人間の皮膚に適用される、S−アシルグルタチオン有効成分、担体、およびいずれかのアジュバント、増粘剤、または賦形剤などを含む完成品(complete product)を意味する。
【0030】
担体中のS−アシルグルタチオン有効成分の量は、特定の適用、特定の化合物の効力または所望の濃度に依存して、広範に変動または調整されてよい。一般的に、S−アシルグルタチオン有効成分の量は、0.01重量%〜20重量%の局所用組成物、より好ましくは、0.1重量%〜5重量%の範囲であろう。いくつかの適用では、S−アシルグルタチオン有効成分の量は5重量%を超えるであろう。異なる実施態様では、S−アシルグルタチオンの重量パーセントは、0.01%〜0.025%;0.025%〜0.05%;0.05%〜0.10%;0.10%〜0.50%;0.50%〜1.0%;0.025%〜0.50%;0.025%〜1.0%;1.0%〜2.0%;2.0%〜5.0%;5.0%〜10.00%;1.0%〜5.0%;1.0%〜10.0%;10.0%〜20.0%;10.0%〜30.0%;10.0%〜40.0%;10.0%〜50.0%;10.0%〜98.0%;20.0%〜30.0%;20.0%〜40.0%;30.0%〜40.0%;30.0%〜60.0%;40.0%〜50.0%;40.0%〜70.0%;50.0%〜60.0%;50.0%〜70.0%;50.0%〜80.0%;60.0%〜70.0%;70.0%〜80.0%;80.0%〜90.0%;または90.0%〜98.0%の範囲であってよい。一般的に、適用計画(application regimen)ならびに利用される有効成分および補助成分に依存して、担体中のより低濃度のS−アシルグルタチオン有効成分が適切である。
【0031】
一般的に、本発明の方法の実施において、局所用組成物は皮膚領域、例えば顔の皮膚領域に局所的に、所定の間隔で、しばしば保湿剤、色付きファンデーション、洗剤、化粧液、ローション剤、クリーム剤、またはゲル剤として適用され、一般的な場合には、各連続的な適用によってゆっくりとした改善が示される。これまでの臨床研究に基づいて決定する限りにおいて、有害な副作用には遭遇していない。本発明の組成物が医薬的処方(pharmaceutical prescription)を必要としないことは、本発明の利点である。
【0032】
本発明の局所用組成物は、スキンケア組成物および化粧品に一般的に見られる付加的成分、例えば、着色剤(tinting agents)、皮膚軟化剤、皮膚調整剤、乳化剤、保湿剤、防腐剤、抗酸化剤、芳香剤、キレート化剤などを、それらが物理的および化学的に組成物の他の成分と適合する限り、含有することができる。防腐剤は、限定されるものではないが、C−Cアルキルパラベンおよびフェノキシエタノールを含み、典型的には全組成物に基づいて約0.1%〜約2.0重量%の範囲の量にて存在する。皮膚軟化剤は、典型的には全組成物の約0.01%〜5%の範囲の量にて存在し、限定されるものではないが、脂肪エステル、脂肪アルコール、鉱油、ポリエーテルシロキサンコポリマー、およびその混合物を含む。保湿剤は、典型的には全組成物の約0.1%〜約5重量%の範囲の量にて存在し、限定されるものではないが、多価アルコール、例えばグリセロール、ポリアルキレングリコール(例えば、ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリエチレングリコール)ならびにその誘導体、アルキレンポリオールおよびそれらの誘導体、ソルビトール、ヒドロキシソルビトール、ヘキシレングリコール、1,3−ジブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、エトキシ化グリセロール、プロポキシ化グリセロール、ならびにその混合物を含む。乳化剤は、典型的には組成物の約1%〜約10重量%の量にて存在し、限定されるものではないが、ステアリン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、steareth 2、steareth 20、アクリレート/C10−30アルキルアクリレートクロスポリマー、およびその混合物を含む。キレート化剤は、典型的には約0.01%〜約2重量%の範囲の量にて存在し、限定されるものではないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)ならびにその誘導体および塩、ジヒドロキシエチルグリシン、酒石酸、ならびにその混合物を含む。抗酸化剤は、典型的には組成物の約0.02%〜約0.5重量%の範囲の量にて存在し、限定されるものではないが、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT);ビタミンCおよび/またはビタミンC誘導体、例えばアスコルビン酸の脂肪酸エステル、特にパルミチン酸アスコルビル;ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA);フェニル−α−ナフチルアミン;ヒドロキノン;没食子酸プロピル;ノルジヒドロキアレチン酸(nordihydroquiaretic acid);ビタミンEおよび/またはビタミンEの誘導体、例えばトコトリエノールおよび/またはトコトリエノール誘導体;パントテン酸カルシウム;緑茶抽出物;混合ポリフェノール;ならびにこれらのいずれかの混合物を含む。上述したように、特に好ましい抗酸化剤は、皮膚に付加的利益を提供するものであり、例えばパルミチン酸アスコルビルである。
【0033】
緩衝剤は多くの組成物で利用される。好ましくは、緩衝剤の量は、約4.5〜約8.5、より好ましくは約5.5〜約8.5、最も好ましくは約6.5〜約8.0の範囲のpHを有する組成物をもたらす量である。典型的な緩衝剤は、化粧品に一般的に見られる化学的および物理的に安定な薬剤であり、補助成分でもある化合物、例えばクエン酸、リンゴ酸、およびグリコール酸緩衝剤を含むことができる。
【0034】
本発明のいくつかの実施態様は、S−アシルグルタチオンに加えて少なくとも1つの他の補助成分を含有する。補助成分は、限定されるものではないが:リポ酸;α−ヒドロキシ酸、例えばグリコール酸もしくは乳酸;アスコルビン酸およびその誘導体、特にアスコルビン酸の脂肪酸エステル;またはトコトリエノールおよびトコトリエノール誘導体ならびにトコトリエノールもしくはトコトリエノール誘導体で強化されたビタミンE組成物の1つ以上を含む。私の米国特許第5,376,361号;第5,409,693号;第5,545,398号;第5,554,647号;第5,574,063号;第5,643,586号;第5,709,868号;第5,879,690号;第6,191,121号;第6,296,861号;第6,437,004号;および第6,979,459号(参照することによって本明細書に援用される)に開示されている付加的な成分および方法も、用いられてよい。
【0035】
上記記載は当業者に本発明を実施する方法を教示する目的で提供されており、該記載を読んだ当業者であれば容易に理解できるであろうその全ての明らかな修正および変化を詳述することは意図されていない。しかしながら、そのような全ての明らかな修正および変化は、下記の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれることが意図されている。特許請求の範囲は、文脈において明確に反対の指示がない限り、意図されている目的を満たすために効果的な、特許請求の範囲に記載された成分およびいずれかの順序のステップを含むことが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(I)
[式中、Rは飽和または不飽和脂肪族C12−C24基からなり、かつ、Rは水素、脂肪族または芳香族アシル基である]のS−アシルグルタチオン誘導体の有効量;および
皮膚科学的に許容される担体
を含む、皮膚の老化を予防および修復するための局所用組成物。
【請求項2】
が不飽和C18基である、請求項1に記載の局所用組成物。
【請求項3】
がリノレオイルまたはオレオイル基である、請求項1または2に記載の局所用組成物。
【請求項4】
がリノレオイル基である、請求項1、2、または3に記載の局所用組成物。
【請求項5】
S−アシルグルタチオン誘導体がS−リノレオイルグルタチオンである、請求項1、2、3、または4に記載の局所用組成物。
【請求項6】
0.01重量%〜20重量%のS−アシルグルタチオン誘導体を含む、請求項1、2、3、4、または5に記載の局所用組成物。
【請求項7】
0.1重量%〜5重量%のS−アシルグルタチオン誘導体を含む、請求項6に記載の局所用組成物。
【請求項8】
該組成物が5重量%を超えるS−アシルグルタチオン誘導体を含む、請求項6に記載の局所用組成物。
【請求項9】
担体がレシチンを含む、請求項1、2、3、4、5、6、7または8に記載の局所用組成物。
【請求項10】
アスコルビン酸およびアスコルビン酸誘導体;リポ酸;α−ヒドロキシ酸;ならびにトコトリエノールおよびトコトリエノール誘導体ならびにトコトリエノールまたはトコトリエノール誘導体で強化されたビタミンE組成物からなる群から選択される1つ以上の付加的成分をさらに含む、請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9に記載の局所用組成物。
【請求項11】
皮膚の老化の予防および治療のための方法であって、式(I)
【化2】

(I)
[式中、Rは飽和または不飽和脂肪族C12−C24基からなり、かつ、Rは水素、脂肪族または芳香族アシル基である]のS−アシルグルタチオン誘導体;および皮膚科学的に許容される担体を含有する組成物を、皮膚組織に適用することを含む方法。
【請求項12】
閉経前後の、閉経期の、または閉経後の皮膚の外観(appearance)を改善する方法であって、そのような制御を必要としている哺乳類の皮膚組織に、式(I)
【化3】

(I)
[式中、Rは飽和または不飽和脂肪族C12−C24基からなり、かつ、Rは水素、脂肪族または芳香族アシル基である]のS−アシルグルタチオン誘導体;および皮膚科学的に許容される担体を含有する組成物の安全かつ有効な量を適用することを含む方法。
【請求項13】
閉経前後の、閉経期の、または閉経後の皮膚の過剰な(exaggerated)線(lines)および皺を予防または遅延する方法であって、そのような制御を必要としている哺乳類の皮膚組織に、式(I)
【化4】

(I)
[式中、Rは飽和または不飽和脂肪族C12−C24基からなり、かつ、Rは水素、脂肪族または芳香族アシル基である]のS−アシルグルタチオン誘導体;および皮膚科学的に許容される担体を含有する組成物の安全かつ有効な量を適用することを含む方法。
【請求項14】
閉経前後の、閉経期の、または閉経後の皮膚におけるクモ状血管(spider vessels)または赤斑(red blotchiness)の出現を予防または遅延する方法であって、そのような制御を必要としている哺乳類の皮膚組織に、式(I)
【化5】

(I)
[式中、Rは飽和または不飽和脂肪族C12−C24基からなり、かつ、Rは水素、脂肪族または芳香族アシル基である]のS−アシルグルタチオン誘導体;および皮膚科学的に許容される担体を含有する組成物の安全かつ有効な量を適用することを含む方法。
【請求項15】
閉経前後の、閉経期の、または閉経後の皮膚の外観(appearance)を改善する方法であって、そのような制御を必要としている哺乳類の皮膚組織に、皮膚科学的に許容される担体中のS−リノレオイルグルタチオンを含有する組成物の安全かつ有効な量を適用することを含む方法。
【請求項16】
が不飽和C18基である、請求項11、12、13、14、または15に記載の方法。
【請求項17】
がリノレオイルまたはオレオイル基である、請求項11、12、13、14、15または16に記載の方法。
【請求項18】
がリノレオイル基である、請求項11、12、13、14、15、16または17に記載の方法。
【請求項19】
S−アシルグルタチオン誘導体がS−リノレオイルグルタチオンである、請求項11、12、13、14、15、16、17または18に記載の方法。
【請求項20】
0.01重量%〜20重量%のS−アシルグルタチオン誘導体を含む、請求項11、12、13、14、15、16、17、18または19に記載の方法。
【請求項21】
0.1重量%〜5重量%のS−アシルグルタチオン誘導体を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
5重量%を超えるS−アシルグルタチオンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
担体がレシチンを含む、請求項11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22に記載の方法。
【請求項24】
該組成物がアスコルビン酸およびアスコルビン酸誘導体;リポ酸;α−ヒドロキシ酸;ならびにトコトリエノールおよびトコトリエノール誘導体ならびにトコトリエノールまたはトコトリエノール誘導体で強化されたビタミンE組成物からなる群から選択される1つ以上の付加的成分をさらに含む、請求項11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23に記載の方法。

【公表番号】特表2013−515771(P2013−515771A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547076(P2012−547076)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/055969
【国際公開番号】WO2011/081716
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512168917)エヌ・ブイ・ペリコーン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】N.V.PERRICONE LLC
【Fターム(参考)】