局所空調システム、その制御装置、プログラム
【課題】局所空調ユニットに何らかの異常があっても、アイル全体風量を所定値に維持する。
【解決手段】複数台の局所空調ユニット(1)〜(11)のうちの任意の1台(例えば局所空調ユニット(4))が故障して停止した場合、この故障ユニット(4)の通常時の風量を、残りの局所空調ユニットの台数(10台)で除算することで、風量増加量を求める。そして、求めた風量増加量を用いて、残りの全ての局所空調ユニット(1)〜(3)、(5)〜(11)の風量を均等に増加することで、アイル全体風量を所定値に維持する。
【解決手段】複数台の局所空調ユニット(1)〜(11)のうちの任意の1台(例えば局所空調ユニット(4))が故障して停止した場合、この故障ユニット(4)の通常時の風量を、残りの局所空調ユニットの台数(10台)で除算することで、風量増加量を求める。そして、求めた風量増加量を用いて、残りの全ての局所空調ユニット(1)〜(3)、(5)〜(11)の風量を均等に増加することで、アイル全体風量を所定値に維持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば多数の電算機を収容している電算機室(サーバルーム等)のような発熱密度が高い空間を冷却する為の空調システムに関しては、この空間全体を冷却する空調システムが考えられてきた。これ以外に、複数の局所空調ユニットを室内の各所、例えば各電算機収納ラックの近傍等に配置して、これら複数の局所空調ユニットによって比較的狭いエリア(局所エリアと呼ぶものとする)内の冷却を行う局所空調システムが知られている。
【0003】
各局所空調ユニットは、例えば、蒸発器、ファン(送風機)等を有する。各局所空調ユニットには、外部の冷媒ポンプユニットから冷媒管を介して冷媒が供給されている。冷媒ポンプユニットは、例えば凝縮器、冷媒ポンプ、冷媒タンク等を有する。
【0004】
また、例えば特許文献1には、アンビエント空調機に加えて、各ラック列に配設されるスポット空調機であるラック型空調機が複数台設けられ、ラック列の吸気面側にコールドアイル、排気面側にホットアイルが形成される構成が開示されている。各ラック型空調機は、分担する制御対象空間内において冷熱・風量収支バランスを維持するように冷気を供給する。すなわち、ゾーンZ1を例にすると、ゾーンZ1内のサーバ群の消費電力量Wtと、現時点の合計冷房出力Wpとを比較し、Wt>Wp+αのときはラック型空調機のファン風量を1段階アップして冷房出力を上げ、Wt<Wp−αのときはラック型空調機のファン風量を1段階ダウンして冷房出力を下げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−293851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記局所空調システムにおいては、何らかの異常でシステムが機能不十分な状態になる場合がある。例えば複数台の局所空調ユニットのうちの任意の局所空調ユニットが故障する等したために冷却能力不足となると、電算機の温度が上昇して熱暴走により破損あるいは故障し、計算不能に陥る。
【0007】
このため、異常が生じた局所空調ユニットをバックアップして、システムとして機能不十分な状態とならないように、冗長構成が採られている。すなわち、予備の局所空調ユニットを設けておき、異常が生じた局所空調ユニットの代わりに予備の局所空調ユニットを稼働させるようにしている。
【0008】
図12は、局所冷却ユニットの冗長構成の一例を示す図である。
尚、図12(a)は平面図、図12(b)は立面図であるので、以下の説明では(a)、(b)を区別せずにまとめて図12として説明する。
【0009】
図示の例では、まず、電算機室内に、各々が不図示のサーバ装置等の電算機を搭載しているサーバラック51が、複数台設けられている。これら複数のサーバラック51が列を成してラック列を形成し、図示の例ではラック列が2列となっている。これらラック列と後述するアイル区画手段54や局所冷却ユニット52、電算機室内の壁等によって、図示のように、空調対象空間(電算機室等の室内空間)が、コールドアイル(冷気空間)とホットアイル(暖気空間)とに分離(区画)されている。
【0010】
尚、図では、各ラック列の両端部分には、壁との間に隙間があるが、この隙間には不図示の板等があることで、コールドアイルとホットアイルとに分離されているものであってもよい。
【0011】
尚、上記分離とは、空間が完全に分断されているという意味ではなく、コールドアイルの空気はサーバラック51内を通ってホットアイルに流入するし、その逆にホットアイルの空気は局所冷却ユニット52内を通ってコールドアイル内に流入する。
【0012】
各サーバラック51の吸気面側にコールドアイル、排気面側にホットアイルが存在するように構成されており、各サーバラック51は、コールドアイルの冷気を吸気すると共に、暖気をホットアイルへと排出する。
【0013】
すなわち、各サーバラック51は、不図示の内蔵ファン等によって、その吸気面からコールドアイルの冷気を吸気して、搭載している電算機を冷気によって冷却する。冷気は、電算機を冷却することで温度上昇して暖気となり、この暖気はサーバラック51の排気面からホットアイルへと排出される。尚、電算機は、稼働中は発熱体と見做してよく、基本的には処理負荷が大きくなるほど発熱量が増大する。従って、風量が一定ならば冷却する電算機の発熱量が多いと、上記暖気の温度も高くなることになる。
【0014】
図示の例では、サーバラック51の上方に局所冷却ユニット52が設けられる。局所冷却ユニット52は複数台設けられる。図示の例では上記各ラック列毎に5台ずつ計10台の局所冷却ユニット52が設けられているが、更に予備の局所冷却ユニット52が設けられているので、合計11台の局所冷却ユニット52が設けられている。尚、以下の説明では、上記予備のユニットは局所冷却ユニット52(冗長機)等と記し、それ以外は局所冷却ユニット52(通常機)と記すことで、区別して記す場合がある。
【0015】
尚、図示していないが、上記冷媒ポンプユニットも存在している(例えば電算機室に隣接する不図示の機械室等に設置されている)。この不図示の冷媒ポンプユニットは、例えば、全ての局所冷却ユニット52に対して冷媒を供給している。但し、局所冷却ユニット52(冗長機)に対しては、通常時は実質的に冷媒は供給されていない。冗長機の手前にある不図示の弁(EEV)が閉じられている。異常時にはこの弁(EEV)が開くことで冷媒が供給される。
【0016】
各局所冷却ユニット52は、運転中は、上記ホットアイルの暖気を吸気して、これを内部の蒸発器によって冷却して冷気を生成し、生成した冷気を上記コールドアイルへと送出する。この吸気、送出の空気の流れは、不図示の内部ファンによって作り出される。
【0017】
ここで、基本的にはサーバラック51の列及び局所冷却ユニット52の列を境にして、上記のように空調対象空間がコールドアイルとホットアイルとに分離されるが、サーバラック51の上方の空間が大きく空いているので、分離が不十分である。この為、ここでは、サーバラック51の上方の空間に図示のアイル区画手段54(例えば板など)を設けることによって、上方の空間においても十分にコールドアイルとホットアイルとに分離されるようにしている。アイル区画手段54には局所冷却ユニット52の台数に応じた複数の開口部が設けられており、各開口部に局所冷却ユニット52がセットされる。これより、基本的に、ホットアイルの空気は、局所冷却ユニット52を通過して、コールドアイルに流入することになる。
【0018】
上記のように、局所空調システムは、各々が電算機を搭載した複数のサーバラック51が列を成し、該ラック列に応じた複数の局所空調ユニット52が設置され、対象空間(電算機室等の室内空間)が該ラック列及び局所空調ユニット列を境にしてコールドアイルとホットアイルとに分離された構成となっている。そして、各局所空調ユニット52が、任意のファン風量で、ホットアイルの暖気を吸気して冷却して該冷気をコールドアイルへ吹き出す構成となっている。
【0019】
局所冷却ユニット52は、基本的には、上記サーバラック群の全ての電算機の冷却に必要な台数が設けられるが、上記冗長構成の場合は当然「必要台数+α」の台数が設けられる。ここではα=1であるものとする。
【0020】
これより、図示の例では、局所冷却ユニット52の必要台数が10台であるものとし、これに1台の冗長機を加えた11台の局所冷却ユニット52が設置されている。当然、通常時は、冗長機は停止状態とし、他の10台(通常機)を運転させている。そして、通常機のうちの1台が故障したら、代わりに冗長機を運転させることで、必要台数(10台)での運転を維持する。すなわち、システム全体(アイル全体)として、必要な冷却能力や風量を維持する。
【0021】
ここで、各局所冷却ユニット52に図示の(1)〜(11)の符号を付すことで、以下の説明ではこれらを個別に区別して説明する場合もあるものとする。
本例では例えば、図示の局所冷却ユニット(1)、(2)、(3)、(4),(5),(6),(7),(8),(10),(11)の10台を通常機とし、局所冷却ユニット(9)を冗長機(待機用)とする。
【0022】
ここで、各局所冷却ユニット52の風量は、上記不図示の内部ファンの回転数等によって制御されるが、ここでは全ての局所冷却ユニット52(冗長機も含む)の風量設定値を同一にしている。これより、通常時は例えば図13(a)に示すように、局所冷却ユニット(9)を除く全ての局所冷却ユニット(1)〜(8),(10),(11)は、全て同一の風量で冷気をコールドアイルに供給する。
【0023】
そして、仮に局所冷却ユニット(4)が故障した場合、当然、待機していた局所冷却ユニット(9)(冗長機)を運転するが、上記のことから局所冷却ユニット(9)の風量も他ユニットと同じとなるので、図13(b)に示すように“アイル全体としての風量”(全局所ユニットによる風量のトータル値)は通常時(図13(a)のとき)と変わらないことになる。すなわち、“アイル全体としての風量”は、常に一定となるように制御している。このように、ある局所冷却ユニットが故障しても、冗長機として停止していた別の局所冷却ユニットが立ち上がり、上記必要台数を維持するが、更に“アイル全体として風量一定”を守るようにしている。
【0024】
尚、“アイル全体としての風量”とは、基本的に、全局所冷却ユニットを介してホットアイルからコールドアイルへと移動させる空気量(単位時間当たりの空気量)を意味する。また、“アイル全体としての風量一定”とは、全ラックを介して(ラック内のファンによって)コールドアイルからホットアイルへと移動させる空気量(単位時間当たりの空気量)が、常に一定であるものとし、上記“アイル全体としての風量”をこの一定値に維持することを意味する。
【0025】
“アイル全体としての風量一定”を守らなければならない理由は、コールドアイル空間とホットアイル空間とを十分に分離(区画)するアイル区画手段54があるため、アイル全体の風量が変わると、サーバ内部を通過する風量も変わってしまい、結果として風量不足によるサーバ損傷の可能性があるためである。
【0026】
あるいは、“アイル全体としての風量一定”が守られない場合、例えば図14に示すように、ホットアイル空間の暖気の一部が、コールドアイル空間に流入する為、コールドアイル空間の温度が上昇してしまう為である。これについて、以下、図14を参照して詳しく説明する。
【0027】
尚、図14では局所冷却ユニット52は省略して示している。また、既に述べたように、上記図12の構成では、基本的に、コールドアイルの空気(冷気)は各サーバラック51内を通ってホットアイルに流入し、その逆にホットアイルの空気(暖気)は各局所冷却ユニット52内を通ってコールドアイル内に流入する。その際、ホットアイルの空気(暖気)は、各局所冷却ユニット52内を通過する際に冷却されて冷気となるので、暖気がそのままコールドアイル内に流入するようなことは、基本的にはない(アイル区画手段54が無い場合には、ラック上方空間から暖気が流入することになる)。
【0028】
ここで、図14では、各ラック51内の不図示のファン等によって各ラック51内を通過してコールドアイル(COLD)からホットアイル(HOT)へと移動する空気の総量(全てのラック51による単位時間当たりの移動空気量)を仮に‘100’としている。一方、図示の例では、全局所冷却ユニット52によってホットアイル(HOT)からコールドアイル(COLD)へと移動する空気の総量(全てのユニット52による単位時間当たりの移動空気量)を仮に‘90’としている。
【0029】
この様なコールドアイル−ホットアイル間の空気の移動量にアンバランスが生じた場合、上記アイル区画手段54があるといってもコールドアイルとホットアイルとの間には隙間がある場合が多く、その隙間を通して差し引き‘10’(=100−90)の量の空気(暖気)が、ホットアイルからコールドアイルへと漏れ出すことになる。この為、コールドアイルの冷気の温度が上昇し、電算機の冷却に影響することになる。この為、“アイル全体としての風量”(全てのユニット52による単位時間当たりの移動空気量)は、常に一定(上記例では‘100’)となるようにすることで、コールドアイル−ホットアイル間の空気の移動量にアンバランスが生じないようにする必要がある。
【0030】
尚、上述した冗長化構成の例に限らず、冗長化構成ではない局所空調システムにおいても、“アイル全体としての風量一定”を守らなければならない。
また、上記の冗長化構成では、任意の通常機の故障の際には、冗長機である局所冷却ユニット(9)を停止状態から即座に運転開始しなければならないが、運転開始直後から冷気を生成・送出できるわけではないので、最初のうちは局所冷却ユニット(9)から高温の空気(ホットアイル空間の暖気等)が吹き出すことになり、その影響で比較的温度が高い空気が近傍のサーバラック51に吸い込まれ、内部の電算機の冷却に影響することになる、という問題があった。
【0031】
また、例えば従来において、各局所冷却ユニットの風量を一律に一定値に決めて、各局所冷却ユニットのON/OFF制御により、ON状態の局所冷却ユニットの台数によって全体の風量が決まるという全体風量調整方法が採られる場合があった。この方法の場合、全体風量を増やすときには(上記一定を維持する為に、減った分を増やす場合等)、運転台数を増やすことになり、その際、前述の冗長機である局所冷却ユニット(9)を停止状態から運転開始するときと同様に、最初のうちは高温の空気が吹き出すという問題があった。
【0032】
また、例えばある局所冷却ユニットの近傍のサーバ負荷が上昇して吸気側温度が上昇すると、通常は、冷媒の供給量を増やすことで吹出側温度を一定(設定値)に維持することになる。しかし、冷媒の供給量を増やすことで対応できる(吹出側温度を設定値に維持できる)場合はよいが、冷媒の供給量を上限一杯まで増やしても対応できない場合には、吹出側温度を一定(設定値)に維持できなくなり、吹出側温度が上昇することになり、比較的高温の空気が吹き出してサーバラック51に吸い込まれるという問題もあった。
【0033】
この様な問題に対しては、全ての局所冷却ユニットの風量を一律にするのではなく、個々に風量を調整できるようにすることが考えられる。つまり、一般に、風量を減少させることでも吹出側温度を下げることができる(吸気側温度及び冷媒の供給量が一定の状況下で、風量を増加させれば吹出側温度は上昇し、風量を減少させれば吹出側温度は低下する)。これより、吸気側温度が上昇した場合に、風量を減少させることで、吹出側温度を設定値に維持することも可能である。よって、上記のように冷媒の供給量を上限一杯まで増やしても対応できない場合には、風量を減少させることで、吹出側温度を設定値に維持することが可能である。
【0034】
そして、これより、例えば、サーバ負荷が各々違うことで、各局所冷却ユニットの吸気側温度が各々異なる場合に対して、各局所冷却ユニットの風量をその吸気側温度に応じて調整することで、吹出側温度を一定に維持できるものである。
【0035】
但し、このように、サーバ負荷が各々違うこと等で、それぞれの局所冷却ユニットの風量を変える必要があるときでも、“アイル全体としての風量一定”を守らなければならない。
【0036】
上述したように、停止状態の局所冷却ユニットを起動させること、高温の空気が吹き出すと言う問題がある。更に、様々な状況変化、例えば、局所冷却ユニットが故障した場合、吹出側温度を一定(設定値)に維持できなくなった場合等があっても、“アイル全体としての風量一定”を守らなければならない。
【0037】
本発明の課題は、複数台の局所冷却ユニットによって電算機室内における比較的狭いエリア内の冷却を行う局所空調システムにおいて、様々な状況に対してアイル全体としての風量一定を維持することができる局所空調システム、その制御装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明の局所空調システムは、各々が電算機を搭載した複数のサーバラックが列を成し、該ラック列に応じた列を成す複数の局所空調ユニットが設置され、対象空間が該ラック列及び局所空調ユニット列を境にしてコールドアイルとホットアイルとに区画されており、各局所空調ユニットが、任意のファン風量で、ホットアイルの暖気を吸気して冷却して該冷気をコールドアイルへ吹き出す構成の局所空調システムであって、制御装置を備え、該制御装置は、各局所空調ユニットの吹出側温度の計測データとその設定値を取得する第1のデータ取得手段と、各局所空調ユニットのファン風量を取得するファン風量取得手段と、通常時、全ての局所空調ユニットの前記ファン風量の合計値であるアイル全体風量が、予め設定される所定値となるように、各局所空調ユニットのファン風量を制御する通常時風量調整手段と、任意の局所空調ユニットに故障、または冷媒の供給量の調整では前記吹出側温度が前記設定値を維持できない異常が生じた場合、少なくとも該異常ユニット以外の他の1以上の局所空調ユニットのファン風量の変更または吹出温度の設定値の変更を行うことで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持する異常時対応手段とを有する。
【0039】
上記局所空調システムにおいて、例えば、前記異常時対応手段は、任意の局所空調ユニットが故障した場合、該異常ユニットの通常時のファン風量に応じて、他の1以上の局所空調ユニットのファン風量を増加させることで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持する。
【0040】
また、上記局所空調システムにおいて、例えば、前記異常時対応手段は、任意の局所空調ユニットに、冷媒の供給量を上限まで増やしても前記吹出側温度が前記設定値を維持できない異常が発生した場合、該異常ユニットの前記ファン風量を減少させることで前記吹出側温度を前記設定値とすると共に、該異常ユニットのファン風量の減少量分に応じて、他の1以上の局所空調ユニットのファン風量を増加させることで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持する。
【0041】
あるいは、上記局所空調システムにおいて、例えば、前記異常時対応手段は、任意の局所空調ユニットに、冷媒の供給量を上限まで増やしても前記吹出側温度が前記設定値を維持できない異常が発生した場合、該異常ユニットの前記ファン風量は変更しないことで前記アイル全体風量を前記所定値に維持すると共に、該異常ユニットの前記吹出側温度とその設定値との差分に応じて、他の1以上の局所空調ユニットの吹出側温度の設定値を下げることで、アイル全体としての冷却能力を維持する。
【0042】
上記のように様々な状況に対して、アイル全体としての風量一定を維持することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の局所空調システム、その制御装置等によれば、複数台の局所冷却ユニットによって電算機室内における比較的狭いエリア内の冷却を行う局所空調システムにおいて、様々な状況に対してアイル全体としての風量一定を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本例の局所空調システムの構成図である。
【図2】(a)、(b)は、実施例1に係る風量調整制御を説明する為の図である。
【図3】実施例2に係る風量調整制御の処理フローチャート図である。
【図4】(a)、(b)は、実施例2に係る他のユニットの風量増加を説明する一例(その1)である。
【図5】(a)、(b)は、実施例2に係る他のユニットの風量増加を説明する一例(その2)である。
【図6】(a)、(b)は、実施例2に係る他のユニットの風量増加を説明する一例(その3)である。
【図7】(a)、(b)は、実施例2に係る他のユニットの風量増加を説明する一例(その4)である。
【図8】実施例3に係る処理フローチャート図である。
【図9】(a)、(b)は、実施例3に係る温度制御の一例である。
【図10】(a)〜(c)は、サポートユニット選定に係る変形例を示す図である。
【図11】(a)、(b)は、他の構成例を示す図である。
【図12】局所冷却ユニットの冗長構成の一例を示す図である。
【図13】(a)、(b)は、アイル全体として風量一定を守る為の従来手法を示す図である。
【図14】アイル全体として風量一定を守る理由を説明する為の図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本例の局所空調システムの構成図である。
尚、ここでは特に図示しないが、本例の局所空調システムの物理的配置等は、例えば上述した図12の構成と略同様であってよい。
【0046】
すなわち、局所空調システムは、例えば、各々が電算機を搭載した複数のサーバラック51が列を成し、該ラック列に応じた複数の局所空調ユニット20が設置され、対象空間(電算機室等の室内空間)が該ラック列及び局所空調ユニット列を境にしてコールドアイルとホットアイルとに分離(区画)された構成となっている。そして、各局所空調ユニット20が、任意のファン風量で、ホットアイルの暖気を吸気して冷却して該冷気をコールドアイルへ吹き出す構成となっている。
【0047】
また、尚、既に述べた通り、本説明において“アイル全体としての風量”とは、基本的に、局所冷却ユニットを介してホットアイルからコールドアイルへと移動させる空気量(単位時間当たりの空気量)を意味する。また、“アイル全体としての風量一定”とは、ラック列を介して(ラック内のファンによって)コールドアイルからホットアイルへと移動させる空気量(単位時間当たりの空気量)が、常に一定であるものとし、上記“アイル全体としての風量”をこの一定値に維持することを意味する。“アイル全体としての風量一定”を維持できない場合の問題は、既に述べた通りである。
【0048】
図示の局所空調システムは、1台の冷媒ポンプユニット10と、複数台の局所空調ユニット20を有する。冷媒ポンプユニット10は、冷媒用配管(往路管1、復路管2)を介して、各局所空調ユニット20に冷媒を供給等する。すなわち、冷媒ポンプユニット10は、往路管1、復路管2を介して、各局所空調ユニット20に冷媒を供給する。この冷媒は、各局所空調ユニット20から復路管2を介して冷媒ポンプユニット10に戻される(回収される)。
【0049】
図12と略同様の構成とした場合、局所空調ユニット20は11台設けられることになり、ここでも各局所空調ユニット20を個別に区別して記す場合には局所空調ユニット(1)〜(11)と記すものとする。冷媒ポンプユニット10は、局所空調ユニット(1)〜(11)の全てに冷媒を供給する。但し、後述するように、本手法では、通常時、基本的に、局所空調ユニット(1)〜(11)の全てが運転状態となっている(よって、全てが通常機であり、冗長機は存在しない)。
【0050】
往路管1と各局所空調ユニット20との間には、それぞれ、EEV(冷媒流量制御弁)3が設けられている。EEV3は、例えばその弁開度を0%〜100%の間の任意の値に調整することができる弁である。これによって、各局所空調ユニット20個別に、そのユニット20への冷媒流入量を調整することができる。
【0051】
各局所空調ユニット20は、蒸発器21、ファン(送風機)22等を有する。また、局所空調ユニット20には、吸気側温度を計測する温度センサ23、吹出側温度を計測する温度センサ24等が備えられている。また、局所空調ユニット20は、不図示のコントローラ(局所コントローラと呼ぶものとする)を更に備えるものであってもよい。
【0052】
各局所空調ユニット20は、ここでは特に図示しないが、ファン22によって、上記従来で説明した上記ホットアイル空間の暖気を吸気して、この暖気が蒸発器21を通過することで冷却されて冷気となり、この冷気をコールドアイル空間へと吹き出す。
【0053】
上記温度センサ23は上記ホットアイル空間から吸気する暖気の温度を計測し、上記温度センサ24は上記コールドアイル空間へと吹き出す冷気の温度を計測することになる。
また、上記のことから、各局所空調ユニット20は、例えば従来技術で図示したラック列の上方に設置されるものである。既に説明したように、各ラックにはサーバ装置等の電算機が搭載されており、各局所空調ユニット20は、主に、自ユニット近傍のサーバ装置等に対して冷気を供給すると共に、このサーバ装置等による暖気を吸気することになる。
【0054】
ここで、吸気する暖気の温度は、近傍のサーバ装置の負荷変動に応じて変動する。すなわち、例えば、任意のサーバ装置の負荷が上昇した場合、このサーバ装置の発熱量が増加し、その近傍の局所空調ユニット20が吸気する暖気の温度(上記吸気側温度)が上昇する。この場合、そのままではこの局所空調ユニット20が生成する冷気の温度(上記吹出側温度)も上昇することになり、吹出側温度を設定温度に維持することができなくなる。これより、この様な場合には、この局所空調ユニット20に対応する上記EEV3の弁開度を大きくすることで、蒸発器による冷却能力を上げることで、吹出側温度を設定温度に維持することになる。
【0055】
但し、EEV3の弁開度が上限(例えば100%)に達しても、尚、吹出側温度を設定温度に維持できなくなる場合も有り得る。この場合には、既に述べたように、ファン22の回転数を減少させる(風量を減少させる)ことで対応できる。
【0056】
上記EEV3の弁開度の調整は、上記各局所空調ユニット20の不図示の局所コントローラが実行してもよいが、本例では後述する冷媒ポンプユニット10のアイルコントローラ14が、全体を統合制御するものとする。
【0057】
ここで、冷媒ポンプユニット10の構成について説明する。
図1に示す例では、冷媒ポンプユニット10は、凝縮器(熱交換器)11、冷媒タンク12、冷媒ポンプ13、アイルコントローラ14等を有する。
【0058】
凝縮器11には、上記復路管2を介して各局所空調ユニット20から回収した冷媒が通過すると共に、不図示の構成から供給される冷却液(冷水等)が通過している。これより、凝縮器11内において、冷媒と冷却液との間の熱交換によって、冷媒が冷却される。冷却された冷媒は、冷媒タンク12に貯留された後、冷媒ポンプ13によって往路管1上に圧送されて各局所空調ユニット20に供給される。
【0059】
アイルコントローラ14は、冷媒ポンプユニット10自体の制御(例えば冷媒ポンプ13の回転数を制御することで冷媒の供給量を調整する等)を行うだけでなく、局所空調システム全体の制御も行う制御装置である。
【0060】
すなわち、アイルコントローラ14は、例えば、不図示の通信線(ネットワーク)により上記各局所空調ユニット20に係る構成(不図示の局所コントローラやEEV3等、あるいは更に温度センサ23、24等)と接続している。これより、アイルコントローラ14は、例えば、上記各EEV3の弁開度の調整を行う。また、アイルコントローラ14は、例えば、上記各局所空調ユニット20の温度センサ23、温度センサ24等の計測データを、不図示のネットワーク等を介して取得する。また、アイルコントローラ14は、例えば、各局所空調ユニット20の不図示の局所コントローラに対して、風量(ファン22の回転数)や各種設定値等を指示する。また、アイルコントローラ14は、後述する図3,図8の処理を実行する。
【0061】
アイルコントローラ14は、例えばCPU/MPU等の演算処理プロセッサや、メモリ等の記憶装置を有している。記憶装置には、例えば各局所空調ユニット20の上記温度センサ23、温度センサ24等の計測データや各種設定値が記憶される。また、記憶装置には、予め所定のアプリケーションプログラムが記憶されている。上記演算処理プロセッサが、このアプリケーションプログラムを読出し・実行することにより、上記各種制御処理(特に図3,図8の処理を一例とする全体風量一定化処理)が実現される。
【0062】
上記全体風量一定化処理に係る実施例1、実施例2、実施例3について説明する。
全体風量一定化処理は、様々な状況変化に対して“アイル全体としての風量一定”を維持することができるようにする処理である。
【0063】
尚、図3は実施例2に係る処理フローであり、図8は実施例3に係る処理フローである。
また、風量は、ファン22の回転数に基づいて算出できる。この算出式は既存のものであり、ここでは特に示さないが、基本的には風量は回転数に比例する関係である。尚、これより、風量を算出しなくても本処理は実現可能である。すなわち、風量の代わりに回転数をそのまま用いても、本処理は実現可能である。
【0064】
本例では、風量を用いるものとするが、上記の通り、この例に限らない。
以下、まず、実施例1について説明する。
実施例1については、特に処理フローチャート図等を示すことなく、図2を参照して説明するものとする。尚、図2(a)、(b)は、実施例1に係る風量調整制御を説明する為の図である。
【0065】
実施例1では、まず、本例の局所空調システムを冗長化構成とするものである。
従って、局所空調ユニット20の台数は、従来と同様、必要台数よりも多くする。従来例では、必要台数が10台であるものとし、11台設けていた。本例でも、必要台数が10台であるものとし、例えば11台設けるものとする。
【0066】
但し、従来の冗長化構成では、上記の通り、通常機と冗長機(待機用)とに分けて、冗長機は通常時は停止させておき、任意の通常機が故障した場合に、冗長機を起動して運転させるものであったが、本例の冗長化構成では、冗長機は存在しない。従って、冗長機(通常時は停止状態の予備の局所冷却ユニット)を起動させることに伴う上述した問題(温度が高い空気が吹き出される等)が生じることはない。
【0067】
本例では、上記11台の例であれば、11台の局所空調ユニット20全てを運転状態とする。これは、“アイル全体としての風量”をγとした場合、各局所空調ユニット20のファン22による風量は、一律、γを11等分したものとする(風量=γ/11)。これによって、通常時の11台の各局所空調ユニット20の風量は、例えば図2(a)に示す状態となっている。尚、ここでも従来の説明と同様、11台の各局所空調ユニット20を(1)〜(11)によって区別して説明する場合もあるものとする。
【0068】
そして、任意のときに任意の局所空調ユニット20(ここではユニット(4)とする)が故障した場合、当然、故障した局所空調ユニット(4)は停止して、その風量はゼロとなる。この場合、例えば図2(b)に示すようにして、他の(正常な)局所空調ユニット20全ての風量を、故障した局所空調ユニット(4)の風量分を補うようにして均等に増加させることで、“アイル全体としての風量”を上記γのままとする(“アイル全体としての風量一定”を維持する)。
【0069】
尚、特に詳細には説明しないが、当然、他の(正常な)局所空調ユニット20に関して、風量増加することで吹出側温度が設定値より大きくなったならば、EEV3の弁開度を大きくすることで、吹出側温度が設定値を維持するように制御する。この制御自体は、各局所空調ユニット20毎にその不図示の局所コントローラが実行してもよいし、アイルコントローラ14が実行してもよい。
【0070】
上記処理を例えばアイルコントローラ14が一括管理して行う場合には、例えば以下の処理が実行される。
まず、アイルコントローラ14は、随時、現在の局所空調ユニット20の運転台数αを把握・管理している。また、アイルコントローラ14の上記記憶装置には、予め、上記“アイル全体としての風量”γの値が登録されている。このγの値は、例えば設計者等がラックの風量の実測値等に基づいて決定したものである。
【0071】
そして、アイルコントローラ14は、随時、局所空調ユニット20の風量=γ/αを算出する。例えば最初の風量算出時には、算出した風量を各局所空調ユニット20の不図示の局所コントローラに通知することで、各局所コントローラに自ユニットのファン22の風量を設定させる。また、このとき算出した風量を記憶しておく。その後は、風量算出する毎に、算出した風量が、“記憶した風量”と同じであるか否かをチェックし、同じである場合には何も行わない。一方、「算出した風量≠記憶した風量」である場合には、風量の値が変化したと判定する。風量の値が変化したときには、変化後の風量を各局所空調ユニット20の局所コントローラに通知することで、各局所コントローラに自ユニットのファン22の風量の設定の変更を行わせる。また、変化後の風量を上書き記憶することで新たな上記“記憶した風量”とする。
【0072】
上記の例では、最初に風量=γ/11が算出されて各局所コントローラに通知した後、局所空調ユニット(4)の故障時までは何も通知せず、局所空調ユニット(4)の故障によって運転台数が11台から10台になったことで、風量=γ/10が算出されることになり、風量の値が変化したので、この変化後の風量(=γ/10)を、各局所空調ユニット20の局所コントローラに通知することで、例えば図2(b)に示すように各局所空調ユニット20の風量を一律増加させることになる。
【0073】
以上説明したように、実施例1では、全ての局所冷却ユニット20の風量を一定に制御した状態で、ある局所冷却ユニット20に何らかの異常(故障等)が発生して停止した場合に、他の(正常な)局所冷却ユニットの風量を均等に増加して、アイル全体としては風量を一定に保つようにする。実施例1では、更に、冗長機(通常時は停止状態の予備の局所冷却ユニット)を起動させることに伴う上述した問題(温度が高い空気が吹き出される等)が生じることはない。
【0074】
尚、風量を増やすことで、吹出側温度が設定値より大きくなった場合には、EEV3の弁開度を大きくすることで対応すればよい。尚、図2に示すように他の(正常な)局所冷却ユニット全てで、均等に風量増加を行うことで(均等に負担を受け持つことで)、1台当たりの風量増加はそれほど大きくはならないので、EEV3の弁開度が上限値に達して吹出側温度が設定値以下とならないような事態が起こる可能性は、非常に低い。
【0075】
但し、この例に限らず、例えば他の(正常な)局所冷却ユニット20のうちの数台(例えば1台や3台や5台など)のみを、風量増加の対象としてもよい。これは、特に、吸気側温度を計測する温度センサ23の計測データに基づいて、吸気側温度が低い局所冷却ユニット20を、風量増加の対象とする。例えば風量増加の対象を5台とする場合を例にすると、吸気側温度が最も低いものから5番目に低いものまでの5台の局所冷却ユニット20を、風量増加の対象とする。この場合、風量=γ/5が算出されて、これら風量増加対象の各ユニット20に通知することになる。
【0076】
何れにしても、故障ユニットの通常時のファン風量に応じて、他の1以上の局所空調ユニットのファン風量を増加させることで、アイル全体風量(アイル全体としての風量)を所定値(一定)に維持するものである。
【0077】
次に、実施例2について、図3、図4、図5、図6、図7を参照して説明する。
尚、図4、図5、図6、図7や、後述する実施例3に係る図9では、上記図2と同様に局所空調ユニット20の台数が11台となっているが、これは必ずしも冗長化構成を意味するものではない。すなわち、図2では必要台数が10台であるが1台多くして11台とする(但し、従来のように冗長機として待機させるユニットは無い)冗長化構成であったが、図4、図5、図6、図7、図9等では、必要台数が11台である場合があっても構わない(勿論、必要台数より多い、冗長化構成であっても構わない。何れにしても、11台全てを運転状態(通常機)としている)。
【0078】
上記のように、アイルコントローラ14は、随時、各局所空調ユニット20の温度センサ23、温度センサ24等の計測データや吹出側温度の設定値等を、不図示のネットワーク等を介して取得している。尚、吹出側温度の設定値は、アイルコントローラ14側で決定・管理していてもよく、その場合には局所空調ユニット20から吹出側温度の設定値を取得する必要はない。
【0079】
そして、各局所空調ユニット20毎に定期的に(例えば計測データ取得毎に)図3の処理を実行する。
図3は、実施例2に係る風量調整制御の処理フローチャート図である。
【0080】
アイルコントローラ14は、まず、上記取得した計測データのうち温度センサ24の計測データすなわち吹出側温度の計測値が、上記吹出側温度の設定値以下であるか否かを判定する(ステップS11)。計測値が設定値以下であれば(ステップS11,YES)何も処理は行わない。
【0081】
一方、吹出側温度の計測値が吹出側温度設定値以下ではない場合には(計測値>設定値の場合)(ステップS11,NO)、処理対象の局所空調ユニット20に係る上記EEV3の現在の弁開度が、所定の上限値(例えば100%等)に達しているか否かを判定する(ステップS12)。そして、EEV3の現在の弁開度が未だ所定の上限値に達していないならば(ステップS12,NO)、このEEV3の弁開度を増加させる(ステップS13)。これは、アイルコントローラ14が直接EEV3を制御して弁開度を増加させてもよいし、処理対象の局所空調ユニット20の局所コントローラに指示して、局所コントローラに自ユニットに係るEEV3の弁開度の増加制御を行わせるようにしてもよい。
【0082】
ステップS13の処理は、例えば、EEV3の弁開度を、予め設定される所定の増加量(例えば5%)分、増加させるものであるが、この例に限らない。また、アイルコントローラ14は、増加後の弁開度を新たな上記「現在の弁開度」として記憶するようにしてもよい(この例では、「現在の弁開度」を逐一各局所コントローラから取得する必要がない)。
【0083】
一方、現在の弁開度が所定の上限値に達している場合には(ステップS12,YES)、処理対象の局所空調ユニット20の風量を減少させる。これは、当該ユニット20のファン22の回転数を減少させるものであり、予め設定される所定量Pの分だけ減少させるものである。更に、処理対象の局所空調ユニット20の風量を減少させた分だけ、他の局所空調ユニット20の風量を増加させることで、アイル全体としての風量を一定に保つようにする(上記γのままとする)(ステップS14)。
【0084】
尚、換言すれば、冷媒の供給量を上限一杯まで増やしても吹出側温度が設定値を維持できない状態(一種の異常と見做してもよい)が発生した場合に、ステップS12の判定がYESとなり、ステップS14の処理が実行されることになる。
【0085】
ここで、上記ステップS14における「他の局所空調ユニット20の風量を増加させる」ことに関して、例えば図4、図5、図6、図7に示すように幾つかのバリエーションが考えられる。すなわち、図4、図5、図6、図7は、他のユニットの風量増加に係る一例(その1)、(その2)、(その3)、(その4)である。
【0086】
まず、上記の通り、任意のユニット20の風量減少量はPであるものとする。
図4に示す例では、風量減少量Pを、他の局所空調ユニット20の台数で割ることで、他の局所空調ユニット20の風量を均等に一律増加させることになる。図示の例では、局所空調ユニット(4)の風量を減少させたものとし、他の局所空調ユニット20の台数は10台であるので、風量増加量=P/10が求められ、局所空調ユニット(1)〜(3)、(5)〜(11)の風量を、それぞれP/10ずつ増加させることになる。
【0087】
この様に、問題が生じた局所空調ユニット(4)の風量減少分を補うようにして、他の局所空調ユニット20の風量を均等に増加させることで、アイル全体としての風量を上記γのままとする(一定に維持する)。
【0088】
また、図5に示す例は、任意のユニット20の風量減少量Pを、他の1台のユニット20のみで補うものであって、特に他の局所空調ユニット20のなかで最も吸気側温度が低いユニット20の風量を、増加させるものである。この例では、風量増加量はPとなる。
【0089】
図5の例でも、局所空調ユニット(4)の風量をPだけ減少させたものとする。図5の例では、この場合、他の局所空調ユニット(1)〜(3)、(5)〜(11)それぞれの上記“吸気側温度を計測する温度センサ23”の計測データを取得して、これら計測データ同士を相互に比較することで、最も吸気側温度が低いユニット20が求められる。尚、図5に示す例では、他の局所空調ユニット(1)〜(3)、(5)〜(11)の中で、局所空調ユニット(9)が最も吸気側温度が低いものとしている。これより、図5に示すように、局所空調ユニット(9)の風量のみを増加量P分、増加させることになる。
【0090】
尚、上記のように風量を減少させれば吹出側温度が低下するのであるから、当然、その逆に風量を増加させれば吹出側温度が上昇することになる。しかしながら、最も吸気側温度が低いユニット20を選択して風量増加させているので、余力があるはずであり、EEV3の弁開度の増加で十分に対応可能であるはずである。
【0091】
また、図6に示す例は、任意のユニット20の風量減少量Pを、他の数台のユニット20で補うものであって、特に他の局所空調ユニット20のなかで最も吸気側温度が低いユニット20から順に数台のユニット20を、風量増加の対象とする。例えば他の局所空調ユニット20のなかで1〜3番目に吸気側温度が低い3台のユニット20の風量を、それぞれ均等に増加させるものである。
【0092】
但し、図6の例では、風量減少させるユニット20が、1台だけではなく複数台(ここでは2台)である例を示している。つまり、局所空調ユニット(2)、(4)の2台のユニット20の風量を、それぞれ、減少させるものである(また、風量減少量は、ユニット(2)がP1、ユニット(4)がP2であるものとする)。また、図示の例では、上記1番目〜3番目に吸気側温度が低い3台のユニット20は、局所空調ユニット(7)、(8)、(10)であるものとする。
【0093】
図6の例では、上記1番目〜3番目に吸気側温度が低い3台のユニット(7)、(8)、(10)の風量を、局所空調ユニット(2)、(4)の2台のユニット20のトータルの風量減少量(=P1+P2)を補うようにして、均等に増加させるものとする。よって、上記の例では、ユニット(7)、(8)、(10)の風量増加量は、全て、“(P1+P2)/3”となる。
【0094】
尚、実際には、ユニット(2)、(4)それぞれについて上記図3の処理を実行したことで、ユニット(7)、(8)、(10)の風量増加量が、全て、“(P1+P2)/3”となる。
【0095】
すなわち、仮にユニット(2)→ユニット(4)の順に風量減少が生じた場合、まず、ユニット(2)の風量減少量はP1であるので、ユニット(7)、(8)、(10)の風量増加量が、全て、“P1/3”となる。更に、ユニット(4)の風量減少量はP2であるので、ユニット(7)、(8)、(10)の風量は、更に一律“P2/3”ずつ増加されることになる。これより、合計して“(P1+P2)/3”ずつ、風量が増加されることになる。
【0096】
また、図7に示す例は、風量減少させるユニット20が、図6の例と同様に、1台だけではなく複数台(ここでは2台)である場合を示している。ここでは図6の例と同じく、局所空調ユニット(2)、(4)の2台のユニット20の風量を、吹出側温度が設定値を維持できる状態になるまで、それぞれ、減少させたものである(その結果、風量減少量は、ユニット(2)がP1、ユニット(4)がP2であるものとする)。
【0097】
そして、図7の例では、これら局所空調ユニット(2)、(4)の2台のユニット20によるトータルの風量減少量(=P1+P2)を補うため、他の(正常な)全ての局所空調ユニット20の風量を、均等に一律増加させる。すなわち、トータルの風量減少量(=P1+P2)を、他の局所空調ユニット20の台数で割ることで、他の局所空調ユニット20の風量を均等に一律増加させることになる。
【0098】
図示の例では、2台のユニット20の風量を減少させているので、他の局所空調ユニット20の台数は9台となるので、風量増加量=(P1+P2)/9が求められ、局所空調ユニット(1)、(3)、(5)〜(11)の風量を、それぞれ“(P1+P2)/9”ずつ増加させることになる。
【0099】
この様に、問題が生じた複数台の局所空調ユニット(2)、(4)の風量減少分を補うようにして、他の局所空調ユニット20の風量を均等に増加させることで、アイル全体としての風量を上記γのままとする(一定に維持する)。
【0100】
尚、図3の処理を、各局所空調ユニット20の局所コントローラがそれぞれ行うようにしてもよい。
以上説明したように、実施例2では、全局所冷却ユニット20のトータル風量(アイル全体としての風量)および吹出側温度をすべて一定(設定値)に制御するシステムにおいて、ある局所冷却ユニット20の吸気側温度が上昇して吹出側温度を一定(設定値)に維持できなくなったら、このユニットの吹出側温度一定を維持するために、このユニットの風量を減少させる。但し、これによって、アイル全体としての風量一定を保てなくなるので、他の局所冷却ユニットの風量を増加することで、アイル全体としての風量を一定に保つようにする。
【0101】
上記“他の局所冷却ユニットの風量を増加する”ことに関して、上述したように様々な手法を提案している。
すなわち、例えば、図4に示すように、ある局所冷却ユニットに関して下げた風量分を、他の全ての局所冷却ユニットで均等割りして、他の全ての局所冷却ユニットの風量を均等に増加させる。この場合も、上記実施例1と同様、風量を増やすことで、吹出側温度が設定値より大きくなった場合には、EEV3の弁開度を大きくすることで対応すればよい(多数の局所冷却ユニットで均等に負担しているので、EEV3の弁開度調整では対応できない可能性は、非常に低い)。また、残りの全てのユニットで均等に負担する方法は、以下の他の方法に比べて、省エネ効果が高い。
【0102】
あるいは、例えば、ある局所冷却ユニット20に関して下げた風量分を、他の局所冷却ユニット20のなかで最も吸気側温度の低い局所冷却ユニット20が負担する(風量増加する)。この場合も、吹出側温度が設定値より大きくなった場合には、EEV3の弁開度を大きくすることで対応すればよい。尚、この場合は1台で負担するために負担が大きいが、最も吸気側温度の低いものである為、余裕があるはずであるので、EEV3の弁開度調整では対応できない可能性は、非常に低い。
【0103】
但し、1台だけでは負担が大き過ぎることを考慮して、例えば、吸気側温度が比較的低い複数台のユニット20(例えば1番目〜3番目に吸気側温度が低い3台のユニット20)が、負担するようにしてもよい。尚、この場合、上記3台のユニット20で均等に負担するものとしたが、この例に限らず、例えば1番目に吸気側温度が低いユニット20の風量増加が最も多く、3番目に吸気側温度が低いユニット20の風量増加が最も少なくなるように、調整してもよい。
【0104】
次に、実施例3について、図8、図9を参照して説明する。
図8は、実施例3に係る処理フローチャート図である。
図9(a)、(b)は、実施例3に係る温度制御の一例である。
【0105】
実施例3では、任意の局所空調ユニット20においてEEV3の弁開度の調整では吹出側温度を設定値に維持できない状況になっても、このユニット20も他のユニット20も風量の変更は行わないので(風量一定を維持するので)、アイル全体としての風量を一定に維持することができる(上記γのままとする)。風量を変更しない代わりに、他のユニット20の吹出側温度の設定値を変更する(低下させる)。当該設定値を変更する他のユニット20は、ここでは例えば、上記1番目〜3番目に吸気側温度が低い3台のユニット20とするが、この例に限らない。例えば、最も吸気側温度が低いユニット20のみ、吹出側温度の設定値を変更する(低下させる)ようにしてもよい。
【0106】
ここで、図8について説明するが、図8におけるステップS21、S22、S23の処理は、上記図3のステップS11、S12、S13の処理と同様であってよく、ここでの説明は省略する。
【0107】
図8の処理では、任意の処理対象ユニット20に関して、ステップS22の判定がYESの場合、すなわちEEV3の弁開度が上限値に達しても、なお、吹出側温度が設定値を越えている場合には、当該処理対象ユニット20に関しては何も変更することなく、更に他の全てのユニット20についても風量に関しては変更することはない。そして、他のユニット20のうちの任意の1台以上のユニット20(本例では上記3台のユニット20)に関して、その吹出側温度の設定値を変更する(低下させる)。
【0108】
図8の処理例では、ステップS22がYESの場合、ステップS24の処理を実行する。そして、ステップS24の処理を実行したら、ステップS21に戻ることなく本処理を終了する。但し、この例に限らない。
【0109】
ステップS24の処理では、まず、当該処理対象ユニット20の吹出側温度に関して、測定値と設定値との差を求める。すなわち、上記吹出側温度を計測する温度センサ24の計測値と、設定値との差(設定値との温度差Q=計測値−設定値)を求める。そして、この温度差Qの分だけ、上記3台のユニット20の設定値を下げる。これは、例えば均等割りすることで、一律に設定値を下げる。すなわち、3台とも、新たな設定値=現在の設定値−“Q/3”とすることで、均等に設定値を下げる。この例に限らず、例えば最も吸気側温度が低い1台のユニット20のみ、その設定値を下げるようにしてもよく、この場合にはこのユニット20の新たな設定値は「新たな設定値=現在の設定値−Q」となる。
【0110】
図9の例では、上記1番目〜3番目に吸気側温度が低い3台のユニット20は、ユニット(7)、(8)、(10)であるものとする。更に、上記ステップS22の判定がYESとなったユニット20が、ユニット(2)とユニット(4)の2台あるものとし、それぞれの上記温度差Qは、1℃、2℃であるものとする。
【0111】
この例において3台のユニット20で均等に設定値を下げる処理例を適用する場合には、上記2台の温度差Qの合計である3℃に対して、図示のようにユニット(7)、(8)、(10)の設定温度を1℃ずつ下げることで(ここでは、実際の温度が設定温度通りになるものとする)、アイル全体としては一定の冷却能力を維持することになる。
【0112】
このようにして、EEV3の弁開度の調整では吹出側温度を設定値に維持できない状況になっても、アイル全体としての風量および冷却能力を、一定に維持することができる。
以上説明したように、実施例3では、基本的には複数台の局所冷却ユニット20の風量および吹出側温度を全て一定に制御することでアイル全体としての風量および冷却能力を一定に維持するシステムにおいて、ある局所冷却ユニット20の吸気側温度が上昇して吹出側温度を一定に維持できなくなっても、実施例2のようにこのユニット20の風量を下げるのではなく、このユニット20の風量一定を維持し、以ってアイル全体としての風量一定を維持する。但し、このままではアイル全体としての温度が上昇する(少なくともこのユニット近辺の温度は上昇する)ので、アイル全体としての冷却能力を、一定に維持できなくなる。この為、他の局所冷却ユニットの吹出側温度の設定値を下げることで、アイル全体として、風量一定のまま冷却能力を一定に保つことができる。
【0113】
また、実施例3の場合、全ての局所冷却ユニット20の風量が同じである状態、すなわち消費電力が少なくて済む状態を維持できるので、結果的に風量が均等にならないことになる実施例2の場合に比べると、省エネ効果が得られることになる。
【0114】
尚、アイル全体としての冷却能力は、全ての局所冷却ユニット20によるコールドアイル空間への冷気供給能力(冷熱供給能力)に相当するものと見做してよく、基本的には、吹出側温度と風量によって決まるものである。この為、任意の局所冷却ユニット20の吹出側温度が上昇したり風量が減少すると、アイル全体としての冷却能力が低下することになる。これに対して本手法では、任意の局所冷却ユニット20の吹出側温度が上昇することに対応して、他の1台以上の局所冷却ユニット20の吹出側温度を低下させることで、(アイル全体としての風量一定を維持しつつ)アイル全体としての冷却能力を一定に維持するものである。
【0115】
尚、実施例3に限らず、実施例1や実施例2においても、全ての局所冷却ユニットの吹出側温度を一定に維持したうえで、アイル全体としての風量を一定に維持するのであるから、アイル全体として、風量一定のまま冷却能力を一定に保つことができることになる。
【0116】
ここで、上述した一実施例では、例えば図2や図4の例では他の全てのユニットで均等に風量増加するものであった。また、例えば図5の例では「最も吸気側温度が低いユニット」、図6や図9の例では「吸気側温度が1〜3番目に低いユニット」を、風量増加または設定温度低下の対象ユニット(サポートユニットと言うものとする)としたが、これらの例に限らない。以下、他の例(変形例)について図10を参照して説明する。
【0117】
まず、図10(a)〜(c)の何れも、問題ユニット(故障ユニットまたは吹出側温度が維持できなくなったユニット)は、ユニット(4)であるものとしている。尚、ここではユニット(9)は存在しないものとし、ユニット(1)〜(8)、(10)、(11)の10台の局所冷却ユニット20が、図示のような配置で設けられているものとする。
【0118】
この例において、図10(a)の例では、問題ユニット(4)の対面のユニット(10)を、優先的に上記サポートユニットとする例を示している。これは、例えば、図2や図4の例のように均等に風量増加する例に関しては、例えばまず対面のユニット(10)のみで対応可能な場合、すなわち対面のユニット(10)の風量増加することでアイル全体としての風量一定を維持できるのであれば、対面のユニット(10)のみを風量増加する。
【0119】
一方、もし対面のユニット(10)だけでは対応できない場合には、対面のユニット(10)の風量を限界まで増加させると共に、不足分は例えば残りのユニット20で均等に負担させる(残りのユニット20も全てサポートユニットとする例)。あるいは、不足分は例えば「吸気側温度が1〜3番目に低いユニット」で均等に負担させる(これら3台のみを更にサポートユニットとする例)。尚、上記“限界まで”とは、吹出側温度を設定値に維持できる限界まであるいはファンの回転数の上限を意味する。
【0120】
尚、ここでは特に図示や詳細な説明は行わないが、例えばアイルコントローラ14内の不図示のメモリ等には、予め、全ての局所空調ユニット20について、その局所空調ユニット20のユニット識別IDに対応付けて、そのユニット20の対面のユニット20のユニット識別IDが登録されている。これによって、任意の局所空調ユニット20に問題が発生した場合、この登録内容を参照すれば、優先的にサポートユニットとすべきユニット20が分かることになる。尚、これは、以下に説明する図10(b)、(c)の例においても略同様である(その説明は省略する)。
【0121】
また、例えば、優先的にサポートユニットとすべきユニット20以外のユニット20を更にサポートユニットとする場合には、例えば上記「吸気側温度が1〜3番目に低いユニット」等のように、吸気側温度に基づいて決定する。
【0122】
また、例えば仮にサポートユニットを3台にするものと予め決められていた場合には、上記対面のユニット20と「吸気側温度が1〜2番目に低いユニット」との計3台を、サポートユニットに決定することになる。これについても、以下に説明する図10(b)、(c)の例においても略同様である。
【0123】
図10(b)に示す例では、問題ユニット(4)の両隣のユニット(3)、(5)を、優先的に上記サポートユニットとする例を示している。例えば、この場合も上記図10(a)の例と同様に、まずこれら優先的にサポートユニットとすべき2台のユニット20だけを用いて、アイル全体としての風量一定を維持することを試みる。そして、これら2台だけでは不足の場合には、更に残りのユニット20のなかから1台以上のユニット20を、サポートユニットとする。但し、この例に限らない。
【0124】
例えば、仮にサポートユニットを3台にするものと予め決められていた場合には、上記の両隣のユニット(3)、(5)に加えて更に例えば「最も吸気側温度が低いユニット」を、サポートユニットに決定することになる。尚、もし両隣のユニット(3)、(5)の何れかが「最も吸気側温度が低いユニット」であったならば、両隣のユニット(3)、(5)に加えて更に例えば「2番目に吸気側温度が低いユニット」を、サポートユニットに決定することになる。
【0125】
また、仮にサポートユニットは1台だけにするものと予め決められていた場合には、上記両隣のユニット(3)、(5)の何れか一方を、サポートユニットに決定することになるが、これは例えば、両隣のユニット(3)、(5)同士で比較して、より吸気側温度が低いユニット20を、サポートユニットに決定する。
【0126】
また、図10(c)に示す例では、問題ユニット(4)の周辺のユニット(3)、(5)、(8)、(10)、(11)の5台を、優先的に上記サポートユニットとする例を示している。例えば、この場合も上記図10(a)等の例と同様に、まずこれら優先的にサポートユニットとすべき5台のユニット20だけを用いて、アイル全体としての風量一定を維持することを試みる。そして、これら5台だけでは不足の場合には、更に残りのユニット20のなかから1台以上のユニット20を、サポートユニットとする。
【0127】
但し、このような例に限らない。
例えば、仮にサポートユニットは3台だけ若しくは1台だけにするものと予め決められていた場合には、上記周辺の5台のユニット20のなかで「吸気側温度が1〜3番目に低いユニット20」若しくは「最も吸気側温度が低いユニット20」を、サポートユニットに決定する。
【0128】
また、優先的にサポートユニットとすべきユニット20が複数台となる場合では、この複数台で均等に風量増加させるようにしてもよいし、サポートユニットの分担比率を、予め設定しておくようにしてもよい。これは、風量増加のケースに限らず、設定値低下のケースにおいても同様である。
【0129】
また、図11(a)、(b)には、他の構成例を示す。
図11(a)には、コールドアイル空間を左右2つに分けるための間仕切り板30を設けている。図10に示すような2列の局所空調ユニット20群より成る局所空調システムに対して、図11(a)に示すように間仕切り板30によって、左側の列の局所空調ユニット20群に係る空間(左側空間と呼ぶものとする)と、右側の列の局所空調ユニット20群に係る空間(右側空間と呼ぶものとする)とに分離している。
【0130】
これによって、左側空間の冷房状態と、右側空間の冷房状態とを、別々に制御することができる。例えば、左側空間と右側空間とで、設定温度を変えることが可能となる。あるいは、一方のみを省エネ運転することが可能となる。勿論、サーバ装置の発熱量に応じた冷房を行う必要があるので、サーバの負荷が小さい(つまり、発熱量が少ない)ときに、省エネ運転を行うことになる。これは。例えば、各ラック列毎に使用業者が異なる場合、任意のラック列の使用業者が、処理量が少ない状況にあるとき、このラック列に係る空間の省エネ運転を行うこと等が可能となる。
【0131】
また、例えば図11(b)に示すように、施工段階で、1列のラック列に対応したコンパクトな構成とするようにしてもよい。
ここで、上記アイルコントローラ14は、図1に示すシステム全体を制御する制御装置と見做すことができ、特に全体の風量を一定に維持する為の各種処理機能部、更に全体の冷却能力を一定に維持する為の各種処理機能部を有する制御装置と見做せる。これら各種処理機能部としては、例えば以下に記述するものがある。これら各種処理機能部は、例えばアイルコントローラ14が有する記憶装置に予め記憶されている所定のアプリケーションプログラムを、アイルコントローラ14が有する演算装置(CPU/MPU等)が読出し・実行することにより実現される。尚、本発明は、この様なアプリケーションプログラム自体として構成することもできる。
【0132】
上記制御装置は、例えば、各々が電算機を搭載した複数のサーバラックが列を成し、該ラック列に応じた列を成す複数の局所空調ユニットが設置され、対象空間が該ラック列及び局所空調ユニット列を境にしてコールドアイルとホットアイルとに区画されており、各局所空調ユニットが、任意のファン風量で、ホットアイルの暖気を吸気して冷却して該冷気をコールドアイルへ吹き出す構成の局所空調システムに設置されるものである。
【0133】
上記制御装置は、例えば、第1のデータ取得部、ファン風量取得部、通常時風量調整部、異常時対応部等の各種処理機能部を有する。更に、各局所空調ユニットの吸気側温度の計測データを取得する第2のデータ取得部を更に有するものであってもよい。
【0134】
上記第1のデータ取得部は、各局所空調ユニットの吹出側温度の計測データとその設定値を取得する。上記ファン風量取得部は、各局所空調ユニットのファン風量を取得する。
そして、上記通常時風量調整部は、例えば、通常時、全ての局所空調ユニットのファン風量の合計値であるアイル全体風量が、予め設定される所定値となるように、各局所空調ユニットのファン風量を制御する。
【0135】
上記通常時風量調整部は、例えば、図2(a)、図4(a)、図5(a)、図6(a)、図7(a)、図9(a)等に示すように、全ての局所空調ユニットのファン風量が均等になるようにして、アイル全体風量を所定値(上記γ等)に維持する。
【0136】
一方、上記異常時対応部は、任意の局所空調ユニットに故障、または冷媒の供給量の調整では吹出側温度が設定値を維持できない異常が生じた場合、少なくとも該異常ユニット以外の他の1以上の局所空調ユニットのファン風量の変更または吹出温度の設定値の変更を行うことで、アイル全体風量を所定値に維持するものである。
【0137】
例えば一例としては、上記異常時対応部は、任意の局所空調ユニットが故障した場合、該異常ユニットの通常時のファン風量に応じて、他の1以上の局所空調ユニットのファン風量を増加させることで、アイル全体風量を所定値に維持する(実施例1対応)。
【0138】
また、例えば一例としては、上記異常時対応部は、任意の局所空調ユニットが故障した場合、該異常ユニットの通常時のファン風量を他の局所空調ユニットの台数で除算することで風量増加量を求め、この風量増加量によって他の全ての局所空調ユニットのファン風量を均等に増加することで、アイル全体風量を所定値に維持する(実施例1対応)。
【0139】
また、例えば一例としては、上記異常時対応部は、任意の局所空調ユニットが故障した場合、他の局所空調ユニットのうちの1台以上を対象ユニットとし、該異常ユニットの通常時のファン風量を該対象ユニットの台数で除算することで風量増加量を求め、この風量増加量によって全ての対象ユニットのファン風量を均等に増加することで、アイル全体風量を前記所定値に維持する(実施例1対応)。
【0140】
また、例えば一例としては、上記異常時対応部は、任意の局所空調ユニットに、冷媒の供給量を上限まで増やしても吹出側温度が設定値を維持できない異常が発生した場合、該異常ユニットのファン風量を減少させることで吹出側温度を前記設定値とすると共に、該異常ユニットのファン風量の減少量分に応じて、他の1以上の局所空調ユニットのファン風量を増加させることで、アイル全体風量を所定値に維持する(実施例2対応)。
【0141】
これに関して例えば一例としては、上記異常時対応部は、異常ユニットのファン風量の減少量を他の局所空調ユニットの台数で除算することで風量増加量を求め、この風量増加量によって他の全ての局所空調ユニットのファン風量を均等に増加することで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持する(実施例2対応)。
【0142】
これに関して、例えば他の例としては、上記異常時対応部は、上記吸気側温度の計測データに基づいて、他の局所空調ユニットのなかで最も吸気側温度が低い局所空調ユニットを求めてこれを対象ユニットとし、該対象ユニットのファン風量を、異常ユニットのファン風量の減少量分、増加させることで、アイル全体風量を所定値に維持する(実施例2対応)。
【0143】
これに関して、例えば他の例としては、上記異常時対応部は、上記吸気側温度の計測データに基づいて、他の局所空調ユニットのなかで吸気側温度が低い複数台の局所空調ユニットを求めてこれら対象ユニットとし、異常ユニットのファン風量の減少量を該対象ユニットの台数で除算することで風量増加量を求め、この風量増加量によって全ての対象ユニットのファン風量を均等に増加することで、アイル全体風量を所定値に維持する(実施例2対応)。
【0144】
また、例えば一例としては、上記異常時対応部は、任意の局所空調ユニットに、冷媒の供給量を上限まで増やしても吹出側温度が設定値を維持できない異常が発生した場合、該異常ユニットのファン風量は変更しないことでアイル全体風量を所定値に維持すると共に、該異常ユニットの吹出側温度とその設定値との差分に応じて、他の1以上の局所空調ユニットの吹出側温度の設定値を下げることで、アイル全体としての冷却能力を維持する(実施例3対応)。
【0145】
上記異常時対応部は、何れにしても、アイル全体としての冷却能力を一定に維持しつつ、アイル全体風量を所定値に維持するものである。
以上説明したように、本例の局所空調システム、その制御装置等によれば、複数台の局所冷却ユニットの風量を一定に制御する等してアイル全体としての風量を所定値に保っている状態で、何らかの異常が生じた場合でも、アイル全体としての風量一定に保つようにする。また、アイル全体としての冷却能力を一定に維持するようにする。
【0146】
例えば、任意の局所冷却ユニットが故障等して停止した場合に、それによって減少する風量分を補うように、他の1台以上の局所冷却ユニットの風量を増やすことで、アイル全体としての風量一定に保つようにする。これによって、従来のような局所冷却ユニット(冗長機)を停止状態から運転開始する必要がなくなり、起動直後の冗長機から高温の空気が吹き出してサーバに吸い込まれるという問題は、起こり得ない。
【0147】
また、例えば複数台の局所冷却ユニットの風量および吹出側温度を全て一定(設定値)に制御した状態で、任意の局所冷却ユニットに関して、EEV開度調整では吹出側温度を一定(設定値)に維持できなくなったら(吹出側温度が設定値より高くなったら)、そのユニットの風量を減少させることで吹出側温度一定を維持する。更に、これによって生じる風量減少分は、他の局所冷却ユニットの風量を増加することで補い、アイル全体としての風量を一定に保つようにする。また、全ての局所冷却ユニットの吹出側温度を一定に維持するので、アイル全体としての風量一定に保つことにより、アイル全体としての冷却能力を一定に維持できる。
【0148】
また、例えば任意の局所冷却ユニットの近傍のサーバ負荷が上昇して、その局所冷却ユニットの吸気側温度が上昇しても、吹出側温度を一定に維持できるので、高温の空気が吹き出してサーバに吸い込まれるという問題を回避できる。
【0149】
あるいは、上記吸気側温度が上昇して吹出側温度を一定に維持できなくなったユニットの風量を下げることなく、風量一定は維持すると共に、他の局所冷却ユニットの吹出側温度の設定値を下げることで、アイル全体としては、風量一定且つ冷却能力一定に保つようにしてもよい。この方法は、局所冷却ユニットの風量は常に一定に維持できるので、結果として、アイル全体の風量も安定して一定に保つことができる。
【符号の説明】
【0150】
1 往路管
2 復路管
3 EEV(冷媒流量制御弁)
10 冷媒ポンプユニット
11 凝縮器(熱交換器)
12 冷媒タンク
13 冷媒ポンプ
14 アイルコントローラ
20 局所空調ユニット
21 蒸発器
22 ファン(送風機)
23 温度センサ
24 温度センサ
30 板
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば多数の電算機を収容している電算機室(サーバルーム等)のような発熱密度が高い空間を冷却する為の空調システムに関しては、この空間全体を冷却する空調システムが考えられてきた。これ以外に、複数の局所空調ユニットを室内の各所、例えば各電算機収納ラックの近傍等に配置して、これら複数の局所空調ユニットによって比較的狭いエリア(局所エリアと呼ぶものとする)内の冷却を行う局所空調システムが知られている。
【0003】
各局所空調ユニットは、例えば、蒸発器、ファン(送風機)等を有する。各局所空調ユニットには、外部の冷媒ポンプユニットから冷媒管を介して冷媒が供給されている。冷媒ポンプユニットは、例えば凝縮器、冷媒ポンプ、冷媒タンク等を有する。
【0004】
また、例えば特許文献1には、アンビエント空調機に加えて、各ラック列に配設されるスポット空調機であるラック型空調機が複数台設けられ、ラック列の吸気面側にコールドアイル、排気面側にホットアイルが形成される構成が開示されている。各ラック型空調機は、分担する制御対象空間内において冷熱・風量収支バランスを維持するように冷気を供給する。すなわち、ゾーンZ1を例にすると、ゾーンZ1内のサーバ群の消費電力量Wtと、現時点の合計冷房出力Wpとを比較し、Wt>Wp+αのときはラック型空調機のファン風量を1段階アップして冷房出力を上げ、Wt<Wp−αのときはラック型空調機のファン風量を1段階ダウンして冷房出力を下げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−293851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記局所空調システムにおいては、何らかの異常でシステムが機能不十分な状態になる場合がある。例えば複数台の局所空調ユニットのうちの任意の局所空調ユニットが故障する等したために冷却能力不足となると、電算機の温度が上昇して熱暴走により破損あるいは故障し、計算不能に陥る。
【0007】
このため、異常が生じた局所空調ユニットをバックアップして、システムとして機能不十分な状態とならないように、冗長構成が採られている。すなわち、予備の局所空調ユニットを設けておき、異常が生じた局所空調ユニットの代わりに予備の局所空調ユニットを稼働させるようにしている。
【0008】
図12は、局所冷却ユニットの冗長構成の一例を示す図である。
尚、図12(a)は平面図、図12(b)は立面図であるので、以下の説明では(a)、(b)を区別せずにまとめて図12として説明する。
【0009】
図示の例では、まず、電算機室内に、各々が不図示のサーバ装置等の電算機を搭載しているサーバラック51が、複数台設けられている。これら複数のサーバラック51が列を成してラック列を形成し、図示の例ではラック列が2列となっている。これらラック列と後述するアイル区画手段54や局所冷却ユニット52、電算機室内の壁等によって、図示のように、空調対象空間(電算機室等の室内空間)が、コールドアイル(冷気空間)とホットアイル(暖気空間)とに分離(区画)されている。
【0010】
尚、図では、各ラック列の両端部分には、壁との間に隙間があるが、この隙間には不図示の板等があることで、コールドアイルとホットアイルとに分離されているものであってもよい。
【0011】
尚、上記分離とは、空間が完全に分断されているという意味ではなく、コールドアイルの空気はサーバラック51内を通ってホットアイルに流入するし、その逆にホットアイルの空気は局所冷却ユニット52内を通ってコールドアイル内に流入する。
【0012】
各サーバラック51の吸気面側にコールドアイル、排気面側にホットアイルが存在するように構成されており、各サーバラック51は、コールドアイルの冷気を吸気すると共に、暖気をホットアイルへと排出する。
【0013】
すなわち、各サーバラック51は、不図示の内蔵ファン等によって、その吸気面からコールドアイルの冷気を吸気して、搭載している電算機を冷気によって冷却する。冷気は、電算機を冷却することで温度上昇して暖気となり、この暖気はサーバラック51の排気面からホットアイルへと排出される。尚、電算機は、稼働中は発熱体と見做してよく、基本的には処理負荷が大きくなるほど発熱量が増大する。従って、風量が一定ならば冷却する電算機の発熱量が多いと、上記暖気の温度も高くなることになる。
【0014】
図示の例では、サーバラック51の上方に局所冷却ユニット52が設けられる。局所冷却ユニット52は複数台設けられる。図示の例では上記各ラック列毎に5台ずつ計10台の局所冷却ユニット52が設けられているが、更に予備の局所冷却ユニット52が設けられているので、合計11台の局所冷却ユニット52が設けられている。尚、以下の説明では、上記予備のユニットは局所冷却ユニット52(冗長機)等と記し、それ以外は局所冷却ユニット52(通常機)と記すことで、区別して記す場合がある。
【0015】
尚、図示していないが、上記冷媒ポンプユニットも存在している(例えば電算機室に隣接する不図示の機械室等に設置されている)。この不図示の冷媒ポンプユニットは、例えば、全ての局所冷却ユニット52に対して冷媒を供給している。但し、局所冷却ユニット52(冗長機)に対しては、通常時は実質的に冷媒は供給されていない。冗長機の手前にある不図示の弁(EEV)が閉じられている。異常時にはこの弁(EEV)が開くことで冷媒が供給される。
【0016】
各局所冷却ユニット52は、運転中は、上記ホットアイルの暖気を吸気して、これを内部の蒸発器によって冷却して冷気を生成し、生成した冷気を上記コールドアイルへと送出する。この吸気、送出の空気の流れは、不図示の内部ファンによって作り出される。
【0017】
ここで、基本的にはサーバラック51の列及び局所冷却ユニット52の列を境にして、上記のように空調対象空間がコールドアイルとホットアイルとに分離されるが、サーバラック51の上方の空間が大きく空いているので、分離が不十分である。この為、ここでは、サーバラック51の上方の空間に図示のアイル区画手段54(例えば板など)を設けることによって、上方の空間においても十分にコールドアイルとホットアイルとに分離されるようにしている。アイル区画手段54には局所冷却ユニット52の台数に応じた複数の開口部が設けられており、各開口部に局所冷却ユニット52がセットされる。これより、基本的に、ホットアイルの空気は、局所冷却ユニット52を通過して、コールドアイルに流入することになる。
【0018】
上記のように、局所空調システムは、各々が電算機を搭載した複数のサーバラック51が列を成し、該ラック列に応じた複数の局所空調ユニット52が設置され、対象空間(電算機室等の室内空間)が該ラック列及び局所空調ユニット列を境にしてコールドアイルとホットアイルとに分離された構成となっている。そして、各局所空調ユニット52が、任意のファン風量で、ホットアイルの暖気を吸気して冷却して該冷気をコールドアイルへ吹き出す構成となっている。
【0019】
局所冷却ユニット52は、基本的には、上記サーバラック群の全ての電算機の冷却に必要な台数が設けられるが、上記冗長構成の場合は当然「必要台数+α」の台数が設けられる。ここではα=1であるものとする。
【0020】
これより、図示の例では、局所冷却ユニット52の必要台数が10台であるものとし、これに1台の冗長機を加えた11台の局所冷却ユニット52が設置されている。当然、通常時は、冗長機は停止状態とし、他の10台(通常機)を運転させている。そして、通常機のうちの1台が故障したら、代わりに冗長機を運転させることで、必要台数(10台)での運転を維持する。すなわち、システム全体(アイル全体)として、必要な冷却能力や風量を維持する。
【0021】
ここで、各局所冷却ユニット52に図示の(1)〜(11)の符号を付すことで、以下の説明ではこれらを個別に区別して説明する場合もあるものとする。
本例では例えば、図示の局所冷却ユニット(1)、(2)、(3)、(4),(5),(6),(7),(8),(10),(11)の10台を通常機とし、局所冷却ユニット(9)を冗長機(待機用)とする。
【0022】
ここで、各局所冷却ユニット52の風量は、上記不図示の内部ファンの回転数等によって制御されるが、ここでは全ての局所冷却ユニット52(冗長機も含む)の風量設定値を同一にしている。これより、通常時は例えば図13(a)に示すように、局所冷却ユニット(9)を除く全ての局所冷却ユニット(1)〜(8),(10),(11)は、全て同一の風量で冷気をコールドアイルに供給する。
【0023】
そして、仮に局所冷却ユニット(4)が故障した場合、当然、待機していた局所冷却ユニット(9)(冗長機)を運転するが、上記のことから局所冷却ユニット(9)の風量も他ユニットと同じとなるので、図13(b)に示すように“アイル全体としての風量”(全局所ユニットによる風量のトータル値)は通常時(図13(a)のとき)と変わらないことになる。すなわち、“アイル全体としての風量”は、常に一定となるように制御している。このように、ある局所冷却ユニットが故障しても、冗長機として停止していた別の局所冷却ユニットが立ち上がり、上記必要台数を維持するが、更に“アイル全体として風量一定”を守るようにしている。
【0024】
尚、“アイル全体としての風量”とは、基本的に、全局所冷却ユニットを介してホットアイルからコールドアイルへと移動させる空気量(単位時間当たりの空気量)を意味する。また、“アイル全体としての風量一定”とは、全ラックを介して(ラック内のファンによって)コールドアイルからホットアイルへと移動させる空気量(単位時間当たりの空気量)が、常に一定であるものとし、上記“アイル全体としての風量”をこの一定値に維持することを意味する。
【0025】
“アイル全体としての風量一定”を守らなければならない理由は、コールドアイル空間とホットアイル空間とを十分に分離(区画)するアイル区画手段54があるため、アイル全体の風量が変わると、サーバ内部を通過する風量も変わってしまい、結果として風量不足によるサーバ損傷の可能性があるためである。
【0026】
あるいは、“アイル全体としての風量一定”が守られない場合、例えば図14に示すように、ホットアイル空間の暖気の一部が、コールドアイル空間に流入する為、コールドアイル空間の温度が上昇してしまう為である。これについて、以下、図14を参照して詳しく説明する。
【0027】
尚、図14では局所冷却ユニット52は省略して示している。また、既に述べたように、上記図12の構成では、基本的に、コールドアイルの空気(冷気)は各サーバラック51内を通ってホットアイルに流入し、その逆にホットアイルの空気(暖気)は各局所冷却ユニット52内を通ってコールドアイル内に流入する。その際、ホットアイルの空気(暖気)は、各局所冷却ユニット52内を通過する際に冷却されて冷気となるので、暖気がそのままコールドアイル内に流入するようなことは、基本的にはない(アイル区画手段54が無い場合には、ラック上方空間から暖気が流入することになる)。
【0028】
ここで、図14では、各ラック51内の不図示のファン等によって各ラック51内を通過してコールドアイル(COLD)からホットアイル(HOT)へと移動する空気の総量(全てのラック51による単位時間当たりの移動空気量)を仮に‘100’としている。一方、図示の例では、全局所冷却ユニット52によってホットアイル(HOT)からコールドアイル(COLD)へと移動する空気の総量(全てのユニット52による単位時間当たりの移動空気量)を仮に‘90’としている。
【0029】
この様なコールドアイル−ホットアイル間の空気の移動量にアンバランスが生じた場合、上記アイル区画手段54があるといってもコールドアイルとホットアイルとの間には隙間がある場合が多く、その隙間を通して差し引き‘10’(=100−90)の量の空気(暖気)が、ホットアイルからコールドアイルへと漏れ出すことになる。この為、コールドアイルの冷気の温度が上昇し、電算機の冷却に影響することになる。この為、“アイル全体としての風量”(全てのユニット52による単位時間当たりの移動空気量)は、常に一定(上記例では‘100’)となるようにすることで、コールドアイル−ホットアイル間の空気の移動量にアンバランスが生じないようにする必要がある。
【0030】
尚、上述した冗長化構成の例に限らず、冗長化構成ではない局所空調システムにおいても、“アイル全体としての風量一定”を守らなければならない。
また、上記の冗長化構成では、任意の通常機の故障の際には、冗長機である局所冷却ユニット(9)を停止状態から即座に運転開始しなければならないが、運転開始直後から冷気を生成・送出できるわけではないので、最初のうちは局所冷却ユニット(9)から高温の空気(ホットアイル空間の暖気等)が吹き出すことになり、その影響で比較的温度が高い空気が近傍のサーバラック51に吸い込まれ、内部の電算機の冷却に影響することになる、という問題があった。
【0031】
また、例えば従来において、各局所冷却ユニットの風量を一律に一定値に決めて、各局所冷却ユニットのON/OFF制御により、ON状態の局所冷却ユニットの台数によって全体の風量が決まるという全体風量調整方法が採られる場合があった。この方法の場合、全体風量を増やすときには(上記一定を維持する為に、減った分を増やす場合等)、運転台数を増やすことになり、その際、前述の冗長機である局所冷却ユニット(9)を停止状態から運転開始するときと同様に、最初のうちは高温の空気が吹き出すという問題があった。
【0032】
また、例えばある局所冷却ユニットの近傍のサーバ負荷が上昇して吸気側温度が上昇すると、通常は、冷媒の供給量を増やすことで吹出側温度を一定(設定値)に維持することになる。しかし、冷媒の供給量を増やすことで対応できる(吹出側温度を設定値に維持できる)場合はよいが、冷媒の供給量を上限一杯まで増やしても対応できない場合には、吹出側温度を一定(設定値)に維持できなくなり、吹出側温度が上昇することになり、比較的高温の空気が吹き出してサーバラック51に吸い込まれるという問題もあった。
【0033】
この様な問題に対しては、全ての局所冷却ユニットの風量を一律にするのではなく、個々に風量を調整できるようにすることが考えられる。つまり、一般に、風量を減少させることでも吹出側温度を下げることができる(吸気側温度及び冷媒の供給量が一定の状況下で、風量を増加させれば吹出側温度は上昇し、風量を減少させれば吹出側温度は低下する)。これより、吸気側温度が上昇した場合に、風量を減少させることで、吹出側温度を設定値に維持することも可能である。よって、上記のように冷媒の供給量を上限一杯まで増やしても対応できない場合には、風量を減少させることで、吹出側温度を設定値に維持することが可能である。
【0034】
そして、これより、例えば、サーバ負荷が各々違うことで、各局所冷却ユニットの吸気側温度が各々異なる場合に対して、各局所冷却ユニットの風量をその吸気側温度に応じて調整することで、吹出側温度を一定に維持できるものである。
【0035】
但し、このように、サーバ負荷が各々違うこと等で、それぞれの局所冷却ユニットの風量を変える必要があるときでも、“アイル全体としての風量一定”を守らなければならない。
【0036】
上述したように、停止状態の局所冷却ユニットを起動させること、高温の空気が吹き出すと言う問題がある。更に、様々な状況変化、例えば、局所冷却ユニットが故障した場合、吹出側温度を一定(設定値)に維持できなくなった場合等があっても、“アイル全体としての風量一定”を守らなければならない。
【0037】
本発明の課題は、複数台の局所冷却ユニットによって電算機室内における比較的狭いエリア内の冷却を行う局所空調システムにおいて、様々な状況に対してアイル全体としての風量一定を維持することができる局所空調システム、その制御装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明の局所空調システムは、各々が電算機を搭載した複数のサーバラックが列を成し、該ラック列に応じた列を成す複数の局所空調ユニットが設置され、対象空間が該ラック列及び局所空調ユニット列を境にしてコールドアイルとホットアイルとに区画されており、各局所空調ユニットが、任意のファン風量で、ホットアイルの暖気を吸気して冷却して該冷気をコールドアイルへ吹き出す構成の局所空調システムであって、制御装置を備え、該制御装置は、各局所空調ユニットの吹出側温度の計測データとその設定値を取得する第1のデータ取得手段と、各局所空調ユニットのファン風量を取得するファン風量取得手段と、通常時、全ての局所空調ユニットの前記ファン風量の合計値であるアイル全体風量が、予め設定される所定値となるように、各局所空調ユニットのファン風量を制御する通常時風量調整手段と、任意の局所空調ユニットに故障、または冷媒の供給量の調整では前記吹出側温度が前記設定値を維持できない異常が生じた場合、少なくとも該異常ユニット以外の他の1以上の局所空調ユニットのファン風量の変更または吹出温度の設定値の変更を行うことで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持する異常時対応手段とを有する。
【0039】
上記局所空調システムにおいて、例えば、前記異常時対応手段は、任意の局所空調ユニットが故障した場合、該異常ユニットの通常時のファン風量に応じて、他の1以上の局所空調ユニットのファン風量を増加させることで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持する。
【0040】
また、上記局所空調システムにおいて、例えば、前記異常時対応手段は、任意の局所空調ユニットに、冷媒の供給量を上限まで増やしても前記吹出側温度が前記設定値を維持できない異常が発生した場合、該異常ユニットの前記ファン風量を減少させることで前記吹出側温度を前記設定値とすると共に、該異常ユニットのファン風量の減少量分に応じて、他の1以上の局所空調ユニットのファン風量を増加させることで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持する。
【0041】
あるいは、上記局所空調システムにおいて、例えば、前記異常時対応手段は、任意の局所空調ユニットに、冷媒の供給量を上限まで増やしても前記吹出側温度が前記設定値を維持できない異常が発生した場合、該異常ユニットの前記ファン風量は変更しないことで前記アイル全体風量を前記所定値に維持すると共に、該異常ユニットの前記吹出側温度とその設定値との差分に応じて、他の1以上の局所空調ユニットの吹出側温度の設定値を下げることで、アイル全体としての冷却能力を維持する。
【0042】
上記のように様々な状況に対して、アイル全体としての風量一定を維持することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の局所空調システム、その制御装置等によれば、複数台の局所冷却ユニットによって電算機室内における比較的狭いエリア内の冷却を行う局所空調システムにおいて、様々な状況に対してアイル全体としての風量一定を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本例の局所空調システムの構成図である。
【図2】(a)、(b)は、実施例1に係る風量調整制御を説明する為の図である。
【図3】実施例2に係る風量調整制御の処理フローチャート図である。
【図4】(a)、(b)は、実施例2に係る他のユニットの風量増加を説明する一例(その1)である。
【図5】(a)、(b)は、実施例2に係る他のユニットの風量増加を説明する一例(その2)である。
【図6】(a)、(b)は、実施例2に係る他のユニットの風量増加を説明する一例(その3)である。
【図7】(a)、(b)は、実施例2に係る他のユニットの風量増加を説明する一例(その4)である。
【図8】実施例3に係る処理フローチャート図である。
【図9】(a)、(b)は、実施例3に係る温度制御の一例である。
【図10】(a)〜(c)は、サポートユニット選定に係る変形例を示す図である。
【図11】(a)、(b)は、他の構成例を示す図である。
【図12】局所冷却ユニットの冗長構成の一例を示す図である。
【図13】(a)、(b)は、アイル全体として風量一定を守る為の従来手法を示す図である。
【図14】アイル全体として風量一定を守る理由を説明する為の図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本例の局所空調システムの構成図である。
尚、ここでは特に図示しないが、本例の局所空調システムの物理的配置等は、例えば上述した図12の構成と略同様であってよい。
【0046】
すなわち、局所空調システムは、例えば、各々が電算機を搭載した複数のサーバラック51が列を成し、該ラック列に応じた複数の局所空調ユニット20が設置され、対象空間(電算機室等の室内空間)が該ラック列及び局所空調ユニット列を境にしてコールドアイルとホットアイルとに分離(区画)された構成となっている。そして、各局所空調ユニット20が、任意のファン風量で、ホットアイルの暖気を吸気して冷却して該冷気をコールドアイルへ吹き出す構成となっている。
【0047】
また、尚、既に述べた通り、本説明において“アイル全体としての風量”とは、基本的に、局所冷却ユニットを介してホットアイルからコールドアイルへと移動させる空気量(単位時間当たりの空気量)を意味する。また、“アイル全体としての風量一定”とは、ラック列を介して(ラック内のファンによって)コールドアイルからホットアイルへと移動させる空気量(単位時間当たりの空気量)が、常に一定であるものとし、上記“アイル全体としての風量”をこの一定値に維持することを意味する。“アイル全体としての風量一定”を維持できない場合の問題は、既に述べた通りである。
【0048】
図示の局所空調システムは、1台の冷媒ポンプユニット10と、複数台の局所空調ユニット20を有する。冷媒ポンプユニット10は、冷媒用配管(往路管1、復路管2)を介して、各局所空調ユニット20に冷媒を供給等する。すなわち、冷媒ポンプユニット10は、往路管1、復路管2を介して、各局所空調ユニット20に冷媒を供給する。この冷媒は、各局所空調ユニット20から復路管2を介して冷媒ポンプユニット10に戻される(回収される)。
【0049】
図12と略同様の構成とした場合、局所空調ユニット20は11台設けられることになり、ここでも各局所空調ユニット20を個別に区別して記す場合には局所空調ユニット(1)〜(11)と記すものとする。冷媒ポンプユニット10は、局所空調ユニット(1)〜(11)の全てに冷媒を供給する。但し、後述するように、本手法では、通常時、基本的に、局所空調ユニット(1)〜(11)の全てが運転状態となっている(よって、全てが通常機であり、冗長機は存在しない)。
【0050】
往路管1と各局所空調ユニット20との間には、それぞれ、EEV(冷媒流量制御弁)3が設けられている。EEV3は、例えばその弁開度を0%〜100%の間の任意の値に調整することができる弁である。これによって、各局所空調ユニット20個別に、そのユニット20への冷媒流入量を調整することができる。
【0051】
各局所空調ユニット20は、蒸発器21、ファン(送風機)22等を有する。また、局所空調ユニット20には、吸気側温度を計測する温度センサ23、吹出側温度を計測する温度センサ24等が備えられている。また、局所空調ユニット20は、不図示のコントローラ(局所コントローラと呼ぶものとする)を更に備えるものであってもよい。
【0052】
各局所空調ユニット20は、ここでは特に図示しないが、ファン22によって、上記従来で説明した上記ホットアイル空間の暖気を吸気して、この暖気が蒸発器21を通過することで冷却されて冷気となり、この冷気をコールドアイル空間へと吹き出す。
【0053】
上記温度センサ23は上記ホットアイル空間から吸気する暖気の温度を計測し、上記温度センサ24は上記コールドアイル空間へと吹き出す冷気の温度を計測することになる。
また、上記のことから、各局所空調ユニット20は、例えば従来技術で図示したラック列の上方に設置されるものである。既に説明したように、各ラックにはサーバ装置等の電算機が搭載されており、各局所空調ユニット20は、主に、自ユニット近傍のサーバ装置等に対して冷気を供給すると共に、このサーバ装置等による暖気を吸気することになる。
【0054】
ここで、吸気する暖気の温度は、近傍のサーバ装置の負荷変動に応じて変動する。すなわち、例えば、任意のサーバ装置の負荷が上昇した場合、このサーバ装置の発熱量が増加し、その近傍の局所空調ユニット20が吸気する暖気の温度(上記吸気側温度)が上昇する。この場合、そのままではこの局所空調ユニット20が生成する冷気の温度(上記吹出側温度)も上昇することになり、吹出側温度を設定温度に維持することができなくなる。これより、この様な場合には、この局所空調ユニット20に対応する上記EEV3の弁開度を大きくすることで、蒸発器による冷却能力を上げることで、吹出側温度を設定温度に維持することになる。
【0055】
但し、EEV3の弁開度が上限(例えば100%)に達しても、尚、吹出側温度を設定温度に維持できなくなる場合も有り得る。この場合には、既に述べたように、ファン22の回転数を減少させる(風量を減少させる)ことで対応できる。
【0056】
上記EEV3の弁開度の調整は、上記各局所空調ユニット20の不図示の局所コントローラが実行してもよいが、本例では後述する冷媒ポンプユニット10のアイルコントローラ14が、全体を統合制御するものとする。
【0057】
ここで、冷媒ポンプユニット10の構成について説明する。
図1に示す例では、冷媒ポンプユニット10は、凝縮器(熱交換器)11、冷媒タンク12、冷媒ポンプ13、アイルコントローラ14等を有する。
【0058】
凝縮器11には、上記復路管2を介して各局所空調ユニット20から回収した冷媒が通過すると共に、不図示の構成から供給される冷却液(冷水等)が通過している。これより、凝縮器11内において、冷媒と冷却液との間の熱交換によって、冷媒が冷却される。冷却された冷媒は、冷媒タンク12に貯留された後、冷媒ポンプ13によって往路管1上に圧送されて各局所空調ユニット20に供給される。
【0059】
アイルコントローラ14は、冷媒ポンプユニット10自体の制御(例えば冷媒ポンプ13の回転数を制御することで冷媒の供給量を調整する等)を行うだけでなく、局所空調システム全体の制御も行う制御装置である。
【0060】
すなわち、アイルコントローラ14は、例えば、不図示の通信線(ネットワーク)により上記各局所空調ユニット20に係る構成(不図示の局所コントローラやEEV3等、あるいは更に温度センサ23、24等)と接続している。これより、アイルコントローラ14は、例えば、上記各EEV3の弁開度の調整を行う。また、アイルコントローラ14は、例えば、上記各局所空調ユニット20の温度センサ23、温度センサ24等の計測データを、不図示のネットワーク等を介して取得する。また、アイルコントローラ14は、例えば、各局所空調ユニット20の不図示の局所コントローラに対して、風量(ファン22の回転数)や各種設定値等を指示する。また、アイルコントローラ14は、後述する図3,図8の処理を実行する。
【0061】
アイルコントローラ14は、例えばCPU/MPU等の演算処理プロセッサや、メモリ等の記憶装置を有している。記憶装置には、例えば各局所空調ユニット20の上記温度センサ23、温度センサ24等の計測データや各種設定値が記憶される。また、記憶装置には、予め所定のアプリケーションプログラムが記憶されている。上記演算処理プロセッサが、このアプリケーションプログラムを読出し・実行することにより、上記各種制御処理(特に図3,図8の処理を一例とする全体風量一定化処理)が実現される。
【0062】
上記全体風量一定化処理に係る実施例1、実施例2、実施例3について説明する。
全体風量一定化処理は、様々な状況変化に対して“アイル全体としての風量一定”を維持することができるようにする処理である。
【0063】
尚、図3は実施例2に係る処理フローであり、図8は実施例3に係る処理フローである。
また、風量は、ファン22の回転数に基づいて算出できる。この算出式は既存のものであり、ここでは特に示さないが、基本的には風量は回転数に比例する関係である。尚、これより、風量を算出しなくても本処理は実現可能である。すなわち、風量の代わりに回転数をそのまま用いても、本処理は実現可能である。
【0064】
本例では、風量を用いるものとするが、上記の通り、この例に限らない。
以下、まず、実施例1について説明する。
実施例1については、特に処理フローチャート図等を示すことなく、図2を参照して説明するものとする。尚、図2(a)、(b)は、実施例1に係る風量調整制御を説明する為の図である。
【0065】
実施例1では、まず、本例の局所空調システムを冗長化構成とするものである。
従って、局所空調ユニット20の台数は、従来と同様、必要台数よりも多くする。従来例では、必要台数が10台であるものとし、11台設けていた。本例でも、必要台数が10台であるものとし、例えば11台設けるものとする。
【0066】
但し、従来の冗長化構成では、上記の通り、通常機と冗長機(待機用)とに分けて、冗長機は通常時は停止させておき、任意の通常機が故障した場合に、冗長機を起動して運転させるものであったが、本例の冗長化構成では、冗長機は存在しない。従って、冗長機(通常時は停止状態の予備の局所冷却ユニット)を起動させることに伴う上述した問題(温度が高い空気が吹き出される等)が生じることはない。
【0067】
本例では、上記11台の例であれば、11台の局所空調ユニット20全てを運転状態とする。これは、“アイル全体としての風量”をγとした場合、各局所空調ユニット20のファン22による風量は、一律、γを11等分したものとする(風量=γ/11)。これによって、通常時の11台の各局所空調ユニット20の風量は、例えば図2(a)に示す状態となっている。尚、ここでも従来の説明と同様、11台の各局所空調ユニット20を(1)〜(11)によって区別して説明する場合もあるものとする。
【0068】
そして、任意のときに任意の局所空調ユニット20(ここではユニット(4)とする)が故障した場合、当然、故障した局所空調ユニット(4)は停止して、その風量はゼロとなる。この場合、例えば図2(b)に示すようにして、他の(正常な)局所空調ユニット20全ての風量を、故障した局所空調ユニット(4)の風量分を補うようにして均等に増加させることで、“アイル全体としての風量”を上記γのままとする(“アイル全体としての風量一定”を維持する)。
【0069】
尚、特に詳細には説明しないが、当然、他の(正常な)局所空調ユニット20に関して、風量増加することで吹出側温度が設定値より大きくなったならば、EEV3の弁開度を大きくすることで、吹出側温度が設定値を維持するように制御する。この制御自体は、各局所空調ユニット20毎にその不図示の局所コントローラが実行してもよいし、アイルコントローラ14が実行してもよい。
【0070】
上記処理を例えばアイルコントローラ14が一括管理して行う場合には、例えば以下の処理が実行される。
まず、アイルコントローラ14は、随時、現在の局所空調ユニット20の運転台数αを把握・管理している。また、アイルコントローラ14の上記記憶装置には、予め、上記“アイル全体としての風量”γの値が登録されている。このγの値は、例えば設計者等がラックの風量の実測値等に基づいて決定したものである。
【0071】
そして、アイルコントローラ14は、随時、局所空調ユニット20の風量=γ/αを算出する。例えば最初の風量算出時には、算出した風量を各局所空調ユニット20の不図示の局所コントローラに通知することで、各局所コントローラに自ユニットのファン22の風量を設定させる。また、このとき算出した風量を記憶しておく。その後は、風量算出する毎に、算出した風量が、“記憶した風量”と同じであるか否かをチェックし、同じである場合には何も行わない。一方、「算出した風量≠記憶した風量」である場合には、風量の値が変化したと判定する。風量の値が変化したときには、変化後の風量を各局所空調ユニット20の局所コントローラに通知することで、各局所コントローラに自ユニットのファン22の風量の設定の変更を行わせる。また、変化後の風量を上書き記憶することで新たな上記“記憶した風量”とする。
【0072】
上記の例では、最初に風量=γ/11が算出されて各局所コントローラに通知した後、局所空調ユニット(4)の故障時までは何も通知せず、局所空調ユニット(4)の故障によって運転台数が11台から10台になったことで、風量=γ/10が算出されることになり、風量の値が変化したので、この変化後の風量(=γ/10)を、各局所空調ユニット20の局所コントローラに通知することで、例えば図2(b)に示すように各局所空調ユニット20の風量を一律増加させることになる。
【0073】
以上説明したように、実施例1では、全ての局所冷却ユニット20の風量を一定に制御した状態で、ある局所冷却ユニット20に何らかの異常(故障等)が発生して停止した場合に、他の(正常な)局所冷却ユニットの風量を均等に増加して、アイル全体としては風量を一定に保つようにする。実施例1では、更に、冗長機(通常時は停止状態の予備の局所冷却ユニット)を起動させることに伴う上述した問題(温度が高い空気が吹き出される等)が生じることはない。
【0074】
尚、風量を増やすことで、吹出側温度が設定値より大きくなった場合には、EEV3の弁開度を大きくすることで対応すればよい。尚、図2に示すように他の(正常な)局所冷却ユニット全てで、均等に風量増加を行うことで(均等に負担を受け持つことで)、1台当たりの風量増加はそれほど大きくはならないので、EEV3の弁開度が上限値に達して吹出側温度が設定値以下とならないような事態が起こる可能性は、非常に低い。
【0075】
但し、この例に限らず、例えば他の(正常な)局所冷却ユニット20のうちの数台(例えば1台や3台や5台など)のみを、風量増加の対象としてもよい。これは、特に、吸気側温度を計測する温度センサ23の計測データに基づいて、吸気側温度が低い局所冷却ユニット20を、風量増加の対象とする。例えば風量増加の対象を5台とする場合を例にすると、吸気側温度が最も低いものから5番目に低いものまでの5台の局所冷却ユニット20を、風量増加の対象とする。この場合、風量=γ/5が算出されて、これら風量増加対象の各ユニット20に通知することになる。
【0076】
何れにしても、故障ユニットの通常時のファン風量に応じて、他の1以上の局所空調ユニットのファン風量を増加させることで、アイル全体風量(アイル全体としての風量)を所定値(一定)に維持するものである。
【0077】
次に、実施例2について、図3、図4、図5、図6、図7を参照して説明する。
尚、図4、図5、図6、図7や、後述する実施例3に係る図9では、上記図2と同様に局所空調ユニット20の台数が11台となっているが、これは必ずしも冗長化構成を意味するものではない。すなわち、図2では必要台数が10台であるが1台多くして11台とする(但し、従来のように冗長機として待機させるユニットは無い)冗長化構成であったが、図4、図5、図6、図7、図9等では、必要台数が11台である場合があっても構わない(勿論、必要台数より多い、冗長化構成であっても構わない。何れにしても、11台全てを運転状態(通常機)としている)。
【0078】
上記のように、アイルコントローラ14は、随時、各局所空調ユニット20の温度センサ23、温度センサ24等の計測データや吹出側温度の設定値等を、不図示のネットワーク等を介して取得している。尚、吹出側温度の設定値は、アイルコントローラ14側で決定・管理していてもよく、その場合には局所空調ユニット20から吹出側温度の設定値を取得する必要はない。
【0079】
そして、各局所空調ユニット20毎に定期的に(例えば計測データ取得毎に)図3の処理を実行する。
図3は、実施例2に係る風量調整制御の処理フローチャート図である。
【0080】
アイルコントローラ14は、まず、上記取得した計測データのうち温度センサ24の計測データすなわち吹出側温度の計測値が、上記吹出側温度の設定値以下であるか否かを判定する(ステップS11)。計測値が設定値以下であれば(ステップS11,YES)何も処理は行わない。
【0081】
一方、吹出側温度の計測値が吹出側温度設定値以下ではない場合には(計測値>設定値の場合)(ステップS11,NO)、処理対象の局所空調ユニット20に係る上記EEV3の現在の弁開度が、所定の上限値(例えば100%等)に達しているか否かを判定する(ステップS12)。そして、EEV3の現在の弁開度が未だ所定の上限値に達していないならば(ステップS12,NO)、このEEV3の弁開度を増加させる(ステップS13)。これは、アイルコントローラ14が直接EEV3を制御して弁開度を増加させてもよいし、処理対象の局所空調ユニット20の局所コントローラに指示して、局所コントローラに自ユニットに係るEEV3の弁開度の増加制御を行わせるようにしてもよい。
【0082】
ステップS13の処理は、例えば、EEV3の弁開度を、予め設定される所定の増加量(例えば5%)分、増加させるものであるが、この例に限らない。また、アイルコントローラ14は、増加後の弁開度を新たな上記「現在の弁開度」として記憶するようにしてもよい(この例では、「現在の弁開度」を逐一各局所コントローラから取得する必要がない)。
【0083】
一方、現在の弁開度が所定の上限値に達している場合には(ステップS12,YES)、処理対象の局所空調ユニット20の風量を減少させる。これは、当該ユニット20のファン22の回転数を減少させるものであり、予め設定される所定量Pの分だけ減少させるものである。更に、処理対象の局所空調ユニット20の風量を減少させた分だけ、他の局所空調ユニット20の風量を増加させることで、アイル全体としての風量を一定に保つようにする(上記γのままとする)(ステップS14)。
【0084】
尚、換言すれば、冷媒の供給量を上限一杯まで増やしても吹出側温度が設定値を維持できない状態(一種の異常と見做してもよい)が発生した場合に、ステップS12の判定がYESとなり、ステップS14の処理が実行されることになる。
【0085】
ここで、上記ステップS14における「他の局所空調ユニット20の風量を増加させる」ことに関して、例えば図4、図5、図6、図7に示すように幾つかのバリエーションが考えられる。すなわち、図4、図5、図6、図7は、他のユニットの風量増加に係る一例(その1)、(その2)、(その3)、(その4)である。
【0086】
まず、上記の通り、任意のユニット20の風量減少量はPであるものとする。
図4に示す例では、風量減少量Pを、他の局所空調ユニット20の台数で割ることで、他の局所空調ユニット20の風量を均等に一律増加させることになる。図示の例では、局所空調ユニット(4)の風量を減少させたものとし、他の局所空調ユニット20の台数は10台であるので、風量増加量=P/10が求められ、局所空調ユニット(1)〜(3)、(5)〜(11)の風量を、それぞれP/10ずつ増加させることになる。
【0087】
この様に、問題が生じた局所空調ユニット(4)の風量減少分を補うようにして、他の局所空調ユニット20の風量を均等に増加させることで、アイル全体としての風量を上記γのままとする(一定に維持する)。
【0088】
また、図5に示す例は、任意のユニット20の風量減少量Pを、他の1台のユニット20のみで補うものであって、特に他の局所空調ユニット20のなかで最も吸気側温度が低いユニット20の風量を、増加させるものである。この例では、風量増加量はPとなる。
【0089】
図5の例でも、局所空調ユニット(4)の風量をPだけ減少させたものとする。図5の例では、この場合、他の局所空調ユニット(1)〜(3)、(5)〜(11)それぞれの上記“吸気側温度を計測する温度センサ23”の計測データを取得して、これら計測データ同士を相互に比較することで、最も吸気側温度が低いユニット20が求められる。尚、図5に示す例では、他の局所空調ユニット(1)〜(3)、(5)〜(11)の中で、局所空調ユニット(9)が最も吸気側温度が低いものとしている。これより、図5に示すように、局所空調ユニット(9)の風量のみを増加量P分、増加させることになる。
【0090】
尚、上記のように風量を減少させれば吹出側温度が低下するのであるから、当然、その逆に風量を増加させれば吹出側温度が上昇することになる。しかしながら、最も吸気側温度が低いユニット20を選択して風量増加させているので、余力があるはずであり、EEV3の弁開度の増加で十分に対応可能であるはずである。
【0091】
また、図6に示す例は、任意のユニット20の風量減少量Pを、他の数台のユニット20で補うものであって、特に他の局所空調ユニット20のなかで最も吸気側温度が低いユニット20から順に数台のユニット20を、風量増加の対象とする。例えば他の局所空調ユニット20のなかで1〜3番目に吸気側温度が低い3台のユニット20の風量を、それぞれ均等に増加させるものである。
【0092】
但し、図6の例では、風量減少させるユニット20が、1台だけではなく複数台(ここでは2台)である例を示している。つまり、局所空調ユニット(2)、(4)の2台のユニット20の風量を、それぞれ、減少させるものである(また、風量減少量は、ユニット(2)がP1、ユニット(4)がP2であるものとする)。また、図示の例では、上記1番目〜3番目に吸気側温度が低い3台のユニット20は、局所空調ユニット(7)、(8)、(10)であるものとする。
【0093】
図6の例では、上記1番目〜3番目に吸気側温度が低い3台のユニット(7)、(8)、(10)の風量を、局所空調ユニット(2)、(4)の2台のユニット20のトータルの風量減少量(=P1+P2)を補うようにして、均等に増加させるものとする。よって、上記の例では、ユニット(7)、(8)、(10)の風量増加量は、全て、“(P1+P2)/3”となる。
【0094】
尚、実際には、ユニット(2)、(4)それぞれについて上記図3の処理を実行したことで、ユニット(7)、(8)、(10)の風量増加量が、全て、“(P1+P2)/3”となる。
【0095】
すなわち、仮にユニット(2)→ユニット(4)の順に風量減少が生じた場合、まず、ユニット(2)の風量減少量はP1であるので、ユニット(7)、(8)、(10)の風量増加量が、全て、“P1/3”となる。更に、ユニット(4)の風量減少量はP2であるので、ユニット(7)、(8)、(10)の風量は、更に一律“P2/3”ずつ増加されることになる。これより、合計して“(P1+P2)/3”ずつ、風量が増加されることになる。
【0096】
また、図7に示す例は、風量減少させるユニット20が、図6の例と同様に、1台だけではなく複数台(ここでは2台)である場合を示している。ここでは図6の例と同じく、局所空調ユニット(2)、(4)の2台のユニット20の風量を、吹出側温度が設定値を維持できる状態になるまで、それぞれ、減少させたものである(その結果、風量減少量は、ユニット(2)がP1、ユニット(4)がP2であるものとする)。
【0097】
そして、図7の例では、これら局所空調ユニット(2)、(4)の2台のユニット20によるトータルの風量減少量(=P1+P2)を補うため、他の(正常な)全ての局所空調ユニット20の風量を、均等に一律増加させる。すなわち、トータルの風量減少量(=P1+P2)を、他の局所空調ユニット20の台数で割ることで、他の局所空調ユニット20の風量を均等に一律増加させることになる。
【0098】
図示の例では、2台のユニット20の風量を減少させているので、他の局所空調ユニット20の台数は9台となるので、風量増加量=(P1+P2)/9が求められ、局所空調ユニット(1)、(3)、(5)〜(11)の風量を、それぞれ“(P1+P2)/9”ずつ増加させることになる。
【0099】
この様に、問題が生じた複数台の局所空調ユニット(2)、(4)の風量減少分を補うようにして、他の局所空調ユニット20の風量を均等に増加させることで、アイル全体としての風量を上記γのままとする(一定に維持する)。
【0100】
尚、図3の処理を、各局所空調ユニット20の局所コントローラがそれぞれ行うようにしてもよい。
以上説明したように、実施例2では、全局所冷却ユニット20のトータル風量(アイル全体としての風量)および吹出側温度をすべて一定(設定値)に制御するシステムにおいて、ある局所冷却ユニット20の吸気側温度が上昇して吹出側温度を一定(設定値)に維持できなくなったら、このユニットの吹出側温度一定を維持するために、このユニットの風量を減少させる。但し、これによって、アイル全体としての風量一定を保てなくなるので、他の局所冷却ユニットの風量を増加することで、アイル全体としての風量を一定に保つようにする。
【0101】
上記“他の局所冷却ユニットの風量を増加する”ことに関して、上述したように様々な手法を提案している。
すなわち、例えば、図4に示すように、ある局所冷却ユニットに関して下げた風量分を、他の全ての局所冷却ユニットで均等割りして、他の全ての局所冷却ユニットの風量を均等に増加させる。この場合も、上記実施例1と同様、風量を増やすことで、吹出側温度が設定値より大きくなった場合には、EEV3の弁開度を大きくすることで対応すればよい(多数の局所冷却ユニットで均等に負担しているので、EEV3の弁開度調整では対応できない可能性は、非常に低い)。また、残りの全てのユニットで均等に負担する方法は、以下の他の方法に比べて、省エネ効果が高い。
【0102】
あるいは、例えば、ある局所冷却ユニット20に関して下げた風量分を、他の局所冷却ユニット20のなかで最も吸気側温度の低い局所冷却ユニット20が負担する(風量増加する)。この場合も、吹出側温度が設定値より大きくなった場合には、EEV3の弁開度を大きくすることで対応すればよい。尚、この場合は1台で負担するために負担が大きいが、最も吸気側温度の低いものである為、余裕があるはずであるので、EEV3の弁開度調整では対応できない可能性は、非常に低い。
【0103】
但し、1台だけでは負担が大き過ぎることを考慮して、例えば、吸気側温度が比較的低い複数台のユニット20(例えば1番目〜3番目に吸気側温度が低い3台のユニット20)が、負担するようにしてもよい。尚、この場合、上記3台のユニット20で均等に負担するものとしたが、この例に限らず、例えば1番目に吸気側温度が低いユニット20の風量増加が最も多く、3番目に吸気側温度が低いユニット20の風量増加が最も少なくなるように、調整してもよい。
【0104】
次に、実施例3について、図8、図9を参照して説明する。
図8は、実施例3に係る処理フローチャート図である。
図9(a)、(b)は、実施例3に係る温度制御の一例である。
【0105】
実施例3では、任意の局所空調ユニット20においてEEV3の弁開度の調整では吹出側温度を設定値に維持できない状況になっても、このユニット20も他のユニット20も風量の変更は行わないので(風量一定を維持するので)、アイル全体としての風量を一定に維持することができる(上記γのままとする)。風量を変更しない代わりに、他のユニット20の吹出側温度の設定値を変更する(低下させる)。当該設定値を変更する他のユニット20は、ここでは例えば、上記1番目〜3番目に吸気側温度が低い3台のユニット20とするが、この例に限らない。例えば、最も吸気側温度が低いユニット20のみ、吹出側温度の設定値を変更する(低下させる)ようにしてもよい。
【0106】
ここで、図8について説明するが、図8におけるステップS21、S22、S23の処理は、上記図3のステップS11、S12、S13の処理と同様であってよく、ここでの説明は省略する。
【0107】
図8の処理では、任意の処理対象ユニット20に関して、ステップS22の判定がYESの場合、すなわちEEV3の弁開度が上限値に達しても、なお、吹出側温度が設定値を越えている場合には、当該処理対象ユニット20に関しては何も変更することなく、更に他の全てのユニット20についても風量に関しては変更することはない。そして、他のユニット20のうちの任意の1台以上のユニット20(本例では上記3台のユニット20)に関して、その吹出側温度の設定値を変更する(低下させる)。
【0108】
図8の処理例では、ステップS22がYESの場合、ステップS24の処理を実行する。そして、ステップS24の処理を実行したら、ステップS21に戻ることなく本処理を終了する。但し、この例に限らない。
【0109】
ステップS24の処理では、まず、当該処理対象ユニット20の吹出側温度に関して、測定値と設定値との差を求める。すなわち、上記吹出側温度を計測する温度センサ24の計測値と、設定値との差(設定値との温度差Q=計測値−設定値)を求める。そして、この温度差Qの分だけ、上記3台のユニット20の設定値を下げる。これは、例えば均等割りすることで、一律に設定値を下げる。すなわち、3台とも、新たな設定値=現在の設定値−“Q/3”とすることで、均等に設定値を下げる。この例に限らず、例えば最も吸気側温度が低い1台のユニット20のみ、その設定値を下げるようにしてもよく、この場合にはこのユニット20の新たな設定値は「新たな設定値=現在の設定値−Q」となる。
【0110】
図9の例では、上記1番目〜3番目に吸気側温度が低い3台のユニット20は、ユニット(7)、(8)、(10)であるものとする。更に、上記ステップS22の判定がYESとなったユニット20が、ユニット(2)とユニット(4)の2台あるものとし、それぞれの上記温度差Qは、1℃、2℃であるものとする。
【0111】
この例において3台のユニット20で均等に設定値を下げる処理例を適用する場合には、上記2台の温度差Qの合計である3℃に対して、図示のようにユニット(7)、(8)、(10)の設定温度を1℃ずつ下げることで(ここでは、実際の温度が設定温度通りになるものとする)、アイル全体としては一定の冷却能力を維持することになる。
【0112】
このようにして、EEV3の弁開度の調整では吹出側温度を設定値に維持できない状況になっても、アイル全体としての風量および冷却能力を、一定に維持することができる。
以上説明したように、実施例3では、基本的には複数台の局所冷却ユニット20の風量および吹出側温度を全て一定に制御することでアイル全体としての風量および冷却能力を一定に維持するシステムにおいて、ある局所冷却ユニット20の吸気側温度が上昇して吹出側温度を一定に維持できなくなっても、実施例2のようにこのユニット20の風量を下げるのではなく、このユニット20の風量一定を維持し、以ってアイル全体としての風量一定を維持する。但し、このままではアイル全体としての温度が上昇する(少なくともこのユニット近辺の温度は上昇する)ので、アイル全体としての冷却能力を、一定に維持できなくなる。この為、他の局所冷却ユニットの吹出側温度の設定値を下げることで、アイル全体として、風量一定のまま冷却能力を一定に保つことができる。
【0113】
また、実施例3の場合、全ての局所冷却ユニット20の風量が同じである状態、すなわち消費電力が少なくて済む状態を維持できるので、結果的に風量が均等にならないことになる実施例2の場合に比べると、省エネ効果が得られることになる。
【0114】
尚、アイル全体としての冷却能力は、全ての局所冷却ユニット20によるコールドアイル空間への冷気供給能力(冷熱供給能力)に相当するものと見做してよく、基本的には、吹出側温度と風量によって決まるものである。この為、任意の局所冷却ユニット20の吹出側温度が上昇したり風量が減少すると、アイル全体としての冷却能力が低下することになる。これに対して本手法では、任意の局所冷却ユニット20の吹出側温度が上昇することに対応して、他の1台以上の局所冷却ユニット20の吹出側温度を低下させることで、(アイル全体としての風量一定を維持しつつ)アイル全体としての冷却能力を一定に維持するものである。
【0115】
尚、実施例3に限らず、実施例1や実施例2においても、全ての局所冷却ユニットの吹出側温度を一定に維持したうえで、アイル全体としての風量を一定に維持するのであるから、アイル全体として、風量一定のまま冷却能力を一定に保つことができることになる。
【0116】
ここで、上述した一実施例では、例えば図2や図4の例では他の全てのユニットで均等に風量増加するものであった。また、例えば図5の例では「最も吸気側温度が低いユニット」、図6や図9の例では「吸気側温度が1〜3番目に低いユニット」を、風量増加または設定温度低下の対象ユニット(サポートユニットと言うものとする)としたが、これらの例に限らない。以下、他の例(変形例)について図10を参照して説明する。
【0117】
まず、図10(a)〜(c)の何れも、問題ユニット(故障ユニットまたは吹出側温度が維持できなくなったユニット)は、ユニット(4)であるものとしている。尚、ここではユニット(9)は存在しないものとし、ユニット(1)〜(8)、(10)、(11)の10台の局所冷却ユニット20が、図示のような配置で設けられているものとする。
【0118】
この例において、図10(a)の例では、問題ユニット(4)の対面のユニット(10)を、優先的に上記サポートユニットとする例を示している。これは、例えば、図2や図4の例のように均等に風量増加する例に関しては、例えばまず対面のユニット(10)のみで対応可能な場合、すなわち対面のユニット(10)の風量増加することでアイル全体としての風量一定を維持できるのであれば、対面のユニット(10)のみを風量増加する。
【0119】
一方、もし対面のユニット(10)だけでは対応できない場合には、対面のユニット(10)の風量を限界まで増加させると共に、不足分は例えば残りのユニット20で均等に負担させる(残りのユニット20も全てサポートユニットとする例)。あるいは、不足分は例えば「吸気側温度が1〜3番目に低いユニット」で均等に負担させる(これら3台のみを更にサポートユニットとする例)。尚、上記“限界まで”とは、吹出側温度を設定値に維持できる限界まであるいはファンの回転数の上限を意味する。
【0120】
尚、ここでは特に図示や詳細な説明は行わないが、例えばアイルコントローラ14内の不図示のメモリ等には、予め、全ての局所空調ユニット20について、その局所空調ユニット20のユニット識別IDに対応付けて、そのユニット20の対面のユニット20のユニット識別IDが登録されている。これによって、任意の局所空調ユニット20に問題が発生した場合、この登録内容を参照すれば、優先的にサポートユニットとすべきユニット20が分かることになる。尚、これは、以下に説明する図10(b)、(c)の例においても略同様である(その説明は省略する)。
【0121】
また、例えば、優先的にサポートユニットとすべきユニット20以外のユニット20を更にサポートユニットとする場合には、例えば上記「吸気側温度が1〜3番目に低いユニット」等のように、吸気側温度に基づいて決定する。
【0122】
また、例えば仮にサポートユニットを3台にするものと予め決められていた場合には、上記対面のユニット20と「吸気側温度が1〜2番目に低いユニット」との計3台を、サポートユニットに決定することになる。これについても、以下に説明する図10(b)、(c)の例においても略同様である。
【0123】
図10(b)に示す例では、問題ユニット(4)の両隣のユニット(3)、(5)を、優先的に上記サポートユニットとする例を示している。例えば、この場合も上記図10(a)の例と同様に、まずこれら優先的にサポートユニットとすべき2台のユニット20だけを用いて、アイル全体としての風量一定を維持することを試みる。そして、これら2台だけでは不足の場合には、更に残りのユニット20のなかから1台以上のユニット20を、サポートユニットとする。但し、この例に限らない。
【0124】
例えば、仮にサポートユニットを3台にするものと予め決められていた場合には、上記の両隣のユニット(3)、(5)に加えて更に例えば「最も吸気側温度が低いユニット」を、サポートユニットに決定することになる。尚、もし両隣のユニット(3)、(5)の何れかが「最も吸気側温度が低いユニット」であったならば、両隣のユニット(3)、(5)に加えて更に例えば「2番目に吸気側温度が低いユニット」を、サポートユニットに決定することになる。
【0125】
また、仮にサポートユニットは1台だけにするものと予め決められていた場合には、上記両隣のユニット(3)、(5)の何れか一方を、サポートユニットに決定することになるが、これは例えば、両隣のユニット(3)、(5)同士で比較して、より吸気側温度が低いユニット20を、サポートユニットに決定する。
【0126】
また、図10(c)に示す例では、問題ユニット(4)の周辺のユニット(3)、(5)、(8)、(10)、(11)の5台を、優先的に上記サポートユニットとする例を示している。例えば、この場合も上記図10(a)等の例と同様に、まずこれら優先的にサポートユニットとすべき5台のユニット20だけを用いて、アイル全体としての風量一定を維持することを試みる。そして、これら5台だけでは不足の場合には、更に残りのユニット20のなかから1台以上のユニット20を、サポートユニットとする。
【0127】
但し、このような例に限らない。
例えば、仮にサポートユニットは3台だけ若しくは1台だけにするものと予め決められていた場合には、上記周辺の5台のユニット20のなかで「吸気側温度が1〜3番目に低いユニット20」若しくは「最も吸気側温度が低いユニット20」を、サポートユニットに決定する。
【0128】
また、優先的にサポートユニットとすべきユニット20が複数台となる場合では、この複数台で均等に風量増加させるようにしてもよいし、サポートユニットの分担比率を、予め設定しておくようにしてもよい。これは、風量増加のケースに限らず、設定値低下のケースにおいても同様である。
【0129】
また、図11(a)、(b)には、他の構成例を示す。
図11(a)には、コールドアイル空間を左右2つに分けるための間仕切り板30を設けている。図10に示すような2列の局所空調ユニット20群より成る局所空調システムに対して、図11(a)に示すように間仕切り板30によって、左側の列の局所空調ユニット20群に係る空間(左側空間と呼ぶものとする)と、右側の列の局所空調ユニット20群に係る空間(右側空間と呼ぶものとする)とに分離している。
【0130】
これによって、左側空間の冷房状態と、右側空間の冷房状態とを、別々に制御することができる。例えば、左側空間と右側空間とで、設定温度を変えることが可能となる。あるいは、一方のみを省エネ運転することが可能となる。勿論、サーバ装置の発熱量に応じた冷房を行う必要があるので、サーバの負荷が小さい(つまり、発熱量が少ない)ときに、省エネ運転を行うことになる。これは。例えば、各ラック列毎に使用業者が異なる場合、任意のラック列の使用業者が、処理量が少ない状況にあるとき、このラック列に係る空間の省エネ運転を行うこと等が可能となる。
【0131】
また、例えば図11(b)に示すように、施工段階で、1列のラック列に対応したコンパクトな構成とするようにしてもよい。
ここで、上記アイルコントローラ14は、図1に示すシステム全体を制御する制御装置と見做すことができ、特に全体の風量を一定に維持する為の各種処理機能部、更に全体の冷却能力を一定に維持する為の各種処理機能部を有する制御装置と見做せる。これら各種処理機能部としては、例えば以下に記述するものがある。これら各種処理機能部は、例えばアイルコントローラ14が有する記憶装置に予め記憶されている所定のアプリケーションプログラムを、アイルコントローラ14が有する演算装置(CPU/MPU等)が読出し・実行することにより実現される。尚、本発明は、この様なアプリケーションプログラム自体として構成することもできる。
【0132】
上記制御装置は、例えば、各々が電算機を搭載した複数のサーバラックが列を成し、該ラック列に応じた列を成す複数の局所空調ユニットが設置され、対象空間が該ラック列及び局所空調ユニット列を境にしてコールドアイルとホットアイルとに区画されており、各局所空調ユニットが、任意のファン風量で、ホットアイルの暖気を吸気して冷却して該冷気をコールドアイルへ吹き出す構成の局所空調システムに設置されるものである。
【0133】
上記制御装置は、例えば、第1のデータ取得部、ファン風量取得部、通常時風量調整部、異常時対応部等の各種処理機能部を有する。更に、各局所空調ユニットの吸気側温度の計測データを取得する第2のデータ取得部を更に有するものであってもよい。
【0134】
上記第1のデータ取得部は、各局所空調ユニットの吹出側温度の計測データとその設定値を取得する。上記ファン風量取得部は、各局所空調ユニットのファン風量を取得する。
そして、上記通常時風量調整部は、例えば、通常時、全ての局所空調ユニットのファン風量の合計値であるアイル全体風量が、予め設定される所定値となるように、各局所空調ユニットのファン風量を制御する。
【0135】
上記通常時風量調整部は、例えば、図2(a)、図4(a)、図5(a)、図6(a)、図7(a)、図9(a)等に示すように、全ての局所空調ユニットのファン風量が均等になるようにして、アイル全体風量を所定値(上記γ等)に維持する。
【0136】
一方、上記異常時対応部は、任意の局所空調ユニットに故障、または冷媒の供給量の調整では吹出側温度が設定値を維持できない異常が生じた場合、少なくとも該異常ユニット以外の他の1以上の局所空調ユニットのファン風量の変更または吹出温度の設定値の変更を行うことで、アイル全体風量を所定値に維持するものである。
【0137】
例えば一例としては、上記異常時対応部は、任意の局所空調ユニットが故障した場合、該異常ユニットの通常時のファン風量に応じて、他の1以上の局所空調ユニットのファン風量を増加させることで、アイル全体風量を所定値に維持する(実施例1対応)。
【0138】
また、例えば一例としては、上記異常時対応部は、任意の局所空調ユニットが故障した場合、該異常ユニットの通常時のファン風量を他の局所空調ユニットの台数で除算することで風量増加量を求め、この風量増加量によって他の全ての局所空調ユニットのファン風量を均等に増加することで、アイル全体風量を所定値に維持する(実施例1対応)。
【0139】
また、例えば一例としては、上記異常時対応部は、任意の局所空調ユニットが故障した場合、他の局所空調ユニットのうちの1台以上を対象ユニットとし、該異常ユニットの通常時のファン風量を該対象ユニットの台数で除算することで風量増加量を求め、この風量増加量によって全ての対象ユニットのファン風量を均等に増加することで、アイル全体風量を前記所定値に維持する(実施例1対応)。
【0140】
また、例えば一例としては、上記異常時対応部は、任意の局所空調ユニットに、冷媒の供給量を上限まで増やしても吹出側温度が設定値を維持できない異常が発生した場合、該異常ユニットのファン風量を減少させることで吹出側温度を前記設定値とすると共に、該異常ユニットのファン風量の減少量分に応じて、他の1以上の局所空調ユニットのファン風量を増加させることで、アイル全体風量を所定値に維持する(実施例2対応)。
【0141】
これに関して例えば一例としては、上記異常時対応部は、異常ユニットのファン風量の減少量を他の局所空調ユニットの台数で除算することで風量増加量を求め、この風量増加量によって他の全ての局所空調ユニットのファン風量を均等に増加することで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持する(実施例2対応)。
【0142】
これに関して、例えば他の例としては、上記異常時対応部は、上記吸気側温度の計測データに基づいて、他の局所空調ユニットのなかで最も吸気側温度が低い局所空調ユニットを求めてこれを対象ユニットとし、該対象ユニットのファン風量を、異常ユニットのファン風量の減少量分、増加させることで、アイル全体風量を所定値に維持する(実施例2対応)。
【0143】
これに関して、例えば他の例としては、上記異常時対応部は、上記吸気側温度の計測データに基づいて、他の局所空調ユニットのなかで吸気側温度が低い複数台の局所空調ユニットを求めてこれら対象ユニットとし、異常ユニットのファン風量の減少量を該対象ユニットの台数で除算することで風量増加量を求め、この風量増加量によって全ての対象ユニットのファン風量を均等に増加することで、アイル全体風量を所定値に維持する(実施例2対応)。
【0144】
また、例えば一例としては、上記異常時対応部は、任意の局所空調ユニットに、冷媒の供給量を上限まで増やしても吹出側温度が設定値を維持できない異常が発生した場合、該異常ユニットのファン風量は変更しないことでアイル全体風量を所定値に維持すると共に、該異常ユニットの吹出側温度とその設定値との差分に応じて、他の1以上の局所空調ユニットの吹出側温度の設定値を下げることで、アイル全体としての冷却能力を維持する(実施例3対応)。
【0145】
上記異常時対応部は、何れにしても、アイル全体としての冷却能力を一定に維持しつつ、アイル全体風量を所定値に維持するものである。
以上説明したように、本例の局所空調システム、その制御装置等によれば、複数台の局所冷却ユニットの風量を一定に制御する等してアイル全体としての風量を所定値に保っている状態で、何らかの異常が生じた場合でも、アイル全体としての風量一定に保つようにする。また、アイル全体としての冷却能力を一定に維持するようにする。
【0146】
例えば、任意の局所冷却ユニットが故障等して停止した場合に、それによって減少する風量分を補うように、他の1台以上の局所冷却ユニットの風量を増やすことで、アイル全体としての風量一定に保つようにする。これによって、従来のような局所冷却ユニット(冗長機)を停止状態から運転開始する必要がなくなり、起動直後の冗長機から高温の空気が吹き出してサーバに吸い込まれるという問題は、起こり得ない。
【0147】
また、例えば複数台の局所冷却ユニットの風量および吹出側温度を全て一定(設定値)に制御した状態で、任意の局所冷却ユニットに関して、EEV開度調整では吹出側温度を一定(設定値)に維持できなくなったら(吹出側温度が設定値より高くなったら)、そのユニットの風量を減少させることで吹出側温度一定を維持する。更に、これによって生じる風量減少分は、他の局所冷却ユニットの風量を増加することで補い、アイル全体としての風量を一定に保つようにする。また、全ての局所冷却ユニットの吹出側温度を一定に維持するので、アイル全体としての風量一定に保つことにより、アイル全体としての冷却能力を一定に維持できる。
【0148】
また、例えば任意の局所冷却ユニットの近傍のサーバ負荷が上昇して、その局所冷却ユニットの吸気側温度が上昇しても、吹出側温度を一定に維持できるので、高温の空気が吹き出してサーバに吸い込まれるという問題を回避できる。
【0149】
あるいは、上記吸気側温度が上昇して吹出側温度を一定に維持できなくなったユニットの風量を下げることなく、風量一定は維持すると共に、他の局所冷却ユニットの吹出側温度の設定値を下げることで、アイル全体としては、風量一定且つ冷却能力一定に保つようにしてもよい。この方法は、局所冷却ユニットの風量は常に一定に維持できるので、結果として、アイル全体の風量も安定して一定に保つことができる。
【符号の説明】
【0150】
1 往路管
2 復路管
3 EEV(冷媒流量制御弁)
10 冷媒ポンプユニット
11 凝縮器(熱交換器)
12 冷媒タンク
13 冷媒ポンプ
14 アイルコントローラ
20 局所空調ユニット
21 蒸発器
22 ファン(送風機)
23 温度センサ
24 温度センサ
30 板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が電算機を搭載した複数のサーバラックが列を成し、該ラック列に応じた列を成す複数の局所空調ユニットが設置され、対象空間が該ラック列及び局所空調ユニット列を境にしてコールドアイルとホットアイルとに区画されており、各局所空調ユニットが、任意のファン風量で、ホットアイルの暖気を吸気して冷却して該冷気をコールドアイルへ吹き出す構成の局所空調システムであって、
制御装置を備え、
該制御装置は、
各局所空調ユニットの吹出側温度の計測データとその設定値を取得する第1のデータ取得手段と、
各局所空調ユニットのファン風量を取得するファン風量取得手段と、
通常時、全ての局所空調ユニットの前記ファン風量の合計値であるアイル全体風量が、予め設定される所定値となるように、各局所空調ユニットのファン風量を制御する通常時風量調整手段と、
任意の局所空調ユニットに故障、または冷媒の供給量の調整では前記吹出側温度が前記設定値を維持できない異常が生じた場合、少なくとも該異常ユニット以外の他の1以上の局所空調ユニットのファン風量の変更または吹出温度の設定値の変更を行うことで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持する異常時対応手段と、
を有することを特徴とする局所空調システム。
【請求項2】
前記異常時対応手段は、任意の局所空調ユニットが故障した場合、該異常ユニットの通常時のファン風量に応じて、他の1以上の局所空調ユニットのファン風量を増加させることで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持することを特徴とする請求項1記載の局所空調システム。
【請求項3】
前記異常時対応手段は、任意の局所空調ユニットが故障した場合、該異常ユニットの通常時のファン風量を他の局所空調ユニットの台数で除算することで風量増加量を求め、この風量増加量によって他の全ての局所空調ユニットのファン風量を均等に増加することで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持することを特徴とする請求項1または2記載の局所空調システム。
【請求項4】
前記異常時対応手段は、任意の局所空調ユニットが故障した場合、他の局所空調ユニットのうちの1台以上を対象ユニットとし、該異常ユニットの通常時のファン風量を該対象ユニットの台数で除算することで風量増加量を求め、この風量増加量によって全ての対象ユニットのファン風量を均等に増加することで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持することを特徴とする請求項1または2記載の局所空調システム。
【請求項5】
前記異常時対応手段は、任意の局所空調ユニットに、冷媒の供給量を上限まで増やしても前記吹出側温度が前記設定値を維持できない異常が発生した場合、該異常ユニットの前記ファン風量を減少させることで前記吹出側温度を前記設定値とすると共に、該異常ユニットのファン風量の減少量分に応じて、他の1以上の局所空調ユニットのファン風量を増加させることで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持することを特徴とする請求項1記載の局所空調システム。
【請求項6】
前記異常時対応手段は、前記異常ユニットのファン風量の減少量を他の局所空調ユニットの台数で除算することで風量増加量を求め、この風量増加量によって他の全ての局所空調ユニットのファン風量を均等に増加することで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持することを特徴とする請求項5記載の局所空調システム。
【請求項7】
前記制御装置は、各局所空調ユニットの吸気側温度の計測データを取得する第2のデータ取得手段を更に有し、
前記異常時対応手段は、該吸気側温度の計測データに基づいて、他の局所空調ユニットのなかで最も吸気側温度が低い局所空調ユニットを求めてこれを対象ユニットとし、該対象ユニットのファン風量を、前記ファン風量の減少量分、増加させることで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持することを特徴とする請求項5記載の局所空調システム。
【請求項8】
前記制御装置は、各局所空調ユニットの吸気側温度の計測データを取得する第2のデータ取得手段を更に有し、
前記異常時対応手段は、該吸気側温度の計測データに基づいて、他の局所空調ユニットのなかで吸気側温度が低い複数台の局所空調ユニットを求めてこれら対象ユニットとし、前記ファン風量の減少量を該対象ユニットの台数で除算することで風量増加量を求め、この風量増加量によって全ての対象ユニットのファン風量を均等に増加することで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持することを特徴とする請求項5記載の局所空調システム。
【請求項9】
前記異常時対応手段は、任意の局所空調ユニットに、冷媒の供給量を上限まで増やしても前記吹出側温度が前記設定値を維持できない異常が発生した場合、該異常ユニットの前記ファン風量は変更しないことで前記アイル全体風量を前記所定値に維持すると共に、該異常ユニットの前記吹出側温度とその設定値との差分に応じて、他の1以上の局所空調ユニットの吹出側温度の設定値を下げることで、アイル全体としての冷却能力を維持することを特徴とする請求項1記載の局所空調システム。
【請求項10】
前記異常時対応手段は、アイル全体としての冷却能力を一定に維持しつつ、前記アイル全体風量を前記所定値に維持することを特徴とする請求項5〜8の何れかに記載の局所空調システム。
【請求項11】
各々が電算機を搭載した複数のサーバラックが列を成し、該ラック列に応じた列を成す複数の局所空調ユニットが設置され、対象空間が該ラック列及び局所空調ユニット列を境にしてコールドアイルとホットアイルとに区画されており、各局所空調ユニットが、任意のファン風量で、ホットアイルの暖気を吸気して冷却して該冷気をコールドアイルへ吹き出す構成の局所空調システムが備える制御装置であって、
各局所空調ユニットの吹出側温度の計測データとその設定値を取得する第1のデータ取得手段と、
各局所空調ユニットのファン風量を取得するファン風量取得手段と、
通常時、全ての局所空調ユニットの前記ファン風量の合計値であるアイル全体風量が、予め設定される所定値となるように、各局所空調ユニットのファン風量を制御する通常時風量調整手段と、
任意の局所空調ユニットに故障、または冷媒の供給量の調整では前記吹出側温度が前記設定値を維持できない異常が生じた場合、少なくとも該異常ユニット以外の他の1以上の局所空調ユニットのファン風量の変更または吹出温度の設定値の変更を行うことで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持する異常時対応手段と、
を有することを特徴とする局所空調システムの制御装置。
【請求項12】
各々が電算機を搭載した複数のサーバラックが列を成し、該ラック列に応じた列を成す複数の局所空調ユニットが設置され、対象空間が該ラック列及び局所空調ユニット列を境にしてコールドアイルとホットアイルとに区画されており、各局所空調ユニットが、任意のファン風量で、ホットアイルの暖気を吸気して冷却して該冷気をコールドアイルへ吹き出す構成の局所空調システムが備える制御装置のコンピュータを、
各局所空調ユニットの吹出側温度の計測データとその設定値を取得する第1のデータ取得手段と、
各局所空調ユニットのファン風量を取得するファン風量取得手段と、
通常時、全ての局所空調ユニットの前記ファン風量の合計値であるアイル全体風量が、予め設定される所定値となるように、各局所空調ユニットのファン風量を制御する通常時風量調整手段と、
任意の局所空調ユニットに故障、または冷媒の供給量の調整では前記吹出側温度が前記設定値を維持できない異常が生じた場合、少なくとも該異常ユニット以外の他の1以上の局所空調ユニットのファン風量の変更または吹出温度の設定値の変更を行うことで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持する異常時対応手段、
として機能させる為のプログラム。
【請求項1】
各々が電算機を搭載した複数のサーバラックが列を成し、該ラック列に応じた列を成す複数の局所空調ユニットが設置され、対象空間が該ラック列及び局所空調ユニット列を境にしてコールドアイルとホットアイルとに区画されており、各局所空調ユニットが、任意のファン風量で、ホットアイルの暖気を吸気して冷却して該冷気をコールドアイルへ吹き出す構成の局所空調システムであって、
制御装置を備え、
該制御装置は、
各局所空調ユニットの吹出側温度の計測データとその設定値を取得する第1のデータ取得手段と、
各局所空調ユニットのファン風量を取得するファン風量取得手段と、
通常時、全ての局所空調ユニットの前記ファン風量の合計値であるアイル全体風量が、予め設定される所定値となるように、各局所空調ユニットのファン風量を制御する通常時風量調整手段と、
任意の局所空調ユニットに故障、または冷媒の供給量の調整では前記吹出側温度が前記設定値を維持できない異常が生じた場合、少なくとも該異常ユニット以外の他の1以上の局所空調ユニットのファン風量の変更または吹出温度の設定値の変更を行うことで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持する異常時対応手段と、
を有することを特徴とする局所空調システム。
【請求項2】
前記異常時対応手段は、任意の局所空調ユニットが故障した場合、該異常ユニットの通常時のファン風量に応じて、他の1以上の局所空調ユニットのファン風量を増加させることで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持することを特徴とする請求項1記載の局所空調システム。
【請求項3】
前記異常時対応手段は、任意の局所空調ユニットが故障した場合、該異常ユニットの通常時のファン風量を他の局所空調ユニットの台数で除算することで風量増加量を求め、この風量増加量によって他の全ての局所空調ユニットのファン風量を均等に増加することで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持することを特徴とする請求項1または2記載の局所空調システム。
【請求項4】
前記異常時対応手段は、任意の局所空調ユニットが故障した場合、他の局所空調ユニットのうちの1台以上を対象ユニットとし、該異常ユニットの通常時のファン風量を該対象ユニットの台数で除算することで風量増加量を求め、この風量増加量によって全ての対象ユニットのファン風量を均等に増加することで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持することを特徴とする請求項1または2記載の局所空調システム。
【請求項5】
前記異常時対応手段は、任意の局所空調ユニットに、冷媒の供給量を上限まで増やしても前記吹出側温度が前記設定値を維持できない異常が発生した場合、該異常ユニットの前記ファン風量を減少させることで前記吹出側温度を前記設定値とすると共に、該異常ユニットのファン風量の減少量分に応じて、他の1以上の局所空調ユニットのファン風量を増加させることで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持することを特徴とする請求項1記載の局所空調システム。
【請求項6】
前記異常時対応手段は、前記異常ユニットのファン風量の減少量を他の局所空調ユニットの台数で除算することで風量増加量を求め、この風量増加量によって他の全ての局所空調ユニットのファン風量を均等に増加することで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持することを特徴とする請求項5記載の局所空調システム。
【請求項7】
前記制御装置は、各局所空調ユニットの吸気側温度の計測データを取得する第2のデータ取得手段を更に有し、
前記異常時対応手段は、該吸気側温度の計測データに基づいて、他の局所空調ユニットのなかで最も吸気側温度が低い局所空調ユニットを求めてこれを対象ユニットとし、該対象ユニットのファン風量を、前記ファン風量の減少量分、増加させることで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持することを特徴とする請求項5記載の局所空調システム。
【請求項8】
前記制御装置は、各局所空調ユニットの吸気側温度の計測データを取得する第2のデータ取得手段を更に有し、
前記異常時対応手段は、該吸気側温度の計測データに基づいて、他の局所空調ユニットのなかで吸気側温度が低い複数台の局所空調ユニットを求めてこれら対象ユニットとし、前記ファン風量の減少量を該対象ユニットの台数で除算することで風量増加量を求め、この風量増加量によって全ての対象ユニットのファン風量を均等に増加することで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持することを特徴とする請求項5記載の局所空調システム。
【請求項9】
前記異常時対応手段は、任意の局所空調ユニットに、冷媒の供給量を上限まで増やしても前記吹出側温度が前記設定値を維持できない異常が発生した場合、該異常ユニットの前記ファン風量は変更しないことで前記アイル全体風量を前記所定値に維持すると共に、該異常ユニットの前記吹出側温度とその設定値との差分に応じて、他の1以上の局所空調ユニットの吹出側温度の設定値を下げることで、アイル全体としての冷却能力を維持することを特徴とする請求項1記載の局所空調システム。
【請求項10】
前記異常時対応手段は、アイル全体としての冷却能力を一定に維持しつつ、前記アイル全体風量を前記所定値に維持することを特徴とする請求項5〜8の何れかに記載の局所空調システム。
【請求項11】
各々が電算機を搭載した複数のサーバラックが列を成し、該ラック列に応じた列を成す複数の局所空調ユニットが設置され、対象空間が該ラック列及び局所空調ユニット列を境にしてコールドアイルとホットアイルとに区画されており、各局所空調ユニットが、任意のファン風量で、ホットアイルの暖気を吸気して冷却して該冷気をコールドアイルへ吹き出す構成の局所空調システムが備える制御装置であって、
各局所空調ユニットの吹出側温度の計測データとその設定値を取得する第1のデータ取得手段と、
各局所空調ユニットのファン風量を取得するファン風量取得手段と、
通常時、全ての局所空調ユニットの前記ファン風量の合計値であるアイル全体風量が、予め設定される所定値となるように、各局所空調ユニットのファン風量を制御する通常時風量調整手段と、
任意の局所空調ユニットに故障、または冷媒の供給量の調整では前記吹出側温度が前記設定値を維持できない異常が生じた場合、少なくとも該異常ユニット以外の他の1以上の局所空調ユニットのファン風量の変更または吹出温度の設定値の変更を行うことで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持する異常時対応手段と、
を有することを特徴とする局所空調システムの制御装置。
【請求項12】
各々が電算機を搭載した複数のサーバラックが列を成し、該ラック列に応じた列を成す複数の局所空調ユニットが設置され、対象空間が該ラック列及び局所空調ユニット列を境にしてコールドアイルとホットアイルとに区画されており、各局所空調ユニットが、任意のファン風量で、ホットアイルの暖気を吸気して冷却して該冷気をコールドアイルへ吹き出す構成の局所空調システムが備える制御装置のコンピュータを、
各局所空調ユニットの吹出側温度の計測データとその設定値を取得する第1のデータ取得手段と、
各局所空調ユニットのファン風量を取得するファン風量取得手段と、
通常時、全ての局所空調ユニットの前記ファン風量の合計値であるアイル全体風量が、予め設定される所定値となるように、各局所空調ユニットのファン風量を制御する通常時風量調整手段と、
任意の局所空調ユニットに故障、または冷媒の供給量の調整では前記吹出側温度が前記設定値を維持できない異常が生じた場合、少なくとも該異常ユニット以外の他の1以上の局所空調ユニットのファン風量の変更または吹出温度の設定値の変更を行うことで、前記アイル全体風量を前記所定値に維持する異常時対応手段、
として機能させる為のプログラム。
【図1】
【図3】
【図8】
【図14】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図3】
【図8】
【図14】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−61096(P2013−61096A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198017(P2011−198017)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
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