説明

屈曲した形状のホースを製造する方法

【課題】本発明の方法は、未加硫のホース中間体H3を屈曲したマンドレル22へ挿入する作業を自動化することで工程を簡略化する。
【解決手段】本方法は、ホース中間体H3の外周部を掴むチャック25を有し、チャック25を駆動部24aによりマンドレル22の曲がった形状に沿って移動させる挿入ガイド装置24を用いる。ヘッド17の押出口17aに、マンドレル22の挿入端部22dを位置合わせし、ヘッド17の押出口17aからホース中間体H3を、マンドレル22の挿入端部22dに外装されるように押し出し、ホース中間体H3の外周端部を、チャック25により掴んでマンドレル22の曲げ形状に沿って移動することでホース中間体H3をマンドレル22に外装し、その後切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の温水配管、燃料配管、その他の機械に用いる屈曲した形状のホースを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の屈曲した形状のホースの製造方法は、以下の工程をとっている。すなわち、未加硫ゴムを押し出すことによりホース中間体を形成し、冷却しさらに離型剤を塗布した後に所定長さに切断し、さらにホース中間体を、曲がり形状の金属製のマンドレルに手作業で挿入して加硫することでホースを形成し、さらに該ホースを金属製のマンドレルから抜き取る。こうした金属製のマンドレルを用いる工程では、ホース中間体をマンドレルへ挿入する作業や、マンドレルから加硫後のホースを抜き取る作業が人手によるものであるために面倒であるという課題がある。
【0003】
こうした課題を解決するための手段として、特許文献1の技術が知られている。すなわち、従来の方法は、押出機から押し出された所定長さに切断した未加硫ゴムのホース中間体を準備し、続いてホース中間体の一端部をマンドレルに挿入し、他端側に挿入治具を配置してホース中間体の両端を閉塞し、挿入治具からホース中間体内に加圧気体を供給してホース中間体を拡径し、挿入治具によりホース中間体を長手方向に押圧してマンドレルの全長にわたって挿入する工程である。しかし、従来の方法では、挿入治具でホース中間体をマンドレルの全長へ押圧する準備段階として、押出されたホース中間体を所定長さに切断し、手作業でマンドレルの一端にセットする作業が必要であり、こうしたセットするための作業が面倒であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−155623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決することを踏まえ、押出機から押し出された未加硫のホース中間体を、屈曲したマンドレルへ連続して挿入することができ、生産性の高いホースを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
適用例1は、押出機のヘッドから押し出された未加硫ゴムのホース中間体を、屈曲したマンドレルに外装するホースの製造方法であって、
上記ホース中間体の外周部を掴むチャックと、該チャックを上記マンドレルの曲がった形状に沿って移動させる駆動部とを有する挿入ガイド装置を用い、
上記ヘッドの押出口に、上記マンドレルの挿入端部を位置合わせするセット工程と、
上記ヘッドの押出口から上記ホース中間体を、上記セット工程によりセットされたマンドレルの挿入端部に向け、かつ上記マンドレルの挿入端部に外装されるように押し出す押出工程と、
上記押出工程により上記挿入端部に外装されたホース中間体の外周端部を、上記チャックにより掴んで、該チャックを上記駆動部の駆動により上記マンドレルの曲げ形状に沿って移動することで、上記ホース中間体を上記マンドレルに外装する外装工程と、
上記ホース中間体を上記マンドレルに外装し終えたときに、上記マンドレルを上記ヘッドから離して、上記押出口から出された部分のホース中間体を切断する切断工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
適用例1において、未加硫ゴムのホース中間体を、屈曲したマンドレルに外装するには、挿入ガイド装置を用いる。挿入ガイド装置は、ホース中間体の外周部を掴むチャックと、該チャックをマンドレルの曲がった形状に沿って移動させる駆動部とを有している。まず、ヘッドの押出口に、マンドレルの挿入端部を位置合わせする。ヘッドの押出口からホース中間体を、セットされたマンドレルの挿入端部に向け、かつマンドレルの挿入端部に外装されるように押し出す。続いて、挿入端部に外装されたホース中間体の外周端部を、チャックにより掴んで、該チャックを駆動部の駆動によりマンドレルの曲げ形状に沿って移動することで、ホース中間体をマンドレルに外装する。そして、ホース中間体をマンドレルに外装し終えたときに、マンドレルをヘッドから離して、押出口から出された部分のホース中間体を切断する。そして、マンドレルに外装されたホース中間体を加硫することで、ホースが得られる。
【0009】
適用例1において、外層ゴム押出機から押し出されたホース中間体は、外層ゴム押出機の推力を利用して、マンドレルの挿入端部に挿入されるから、マンドレルの挿入端部に挿入するための手作業が不要となり、生産性に優れている。
【0010】
また、マンドレルの挿入端部に挿入されたホース中間体は、挿入ガイド装置のチャックにより掴まれて、屈曲したマンドレルに沿って引き出されるから、マンドレルの全長にわたる人力による挿入作業が不要となり、省力化を図ることができるとともに、作業環境を改善することができる。
【0011】
さらに、外層ゴム押出機から押し出されたホース中間体は、所定長さに切断された状態で工程が中断せず、従来の技術で説明したような、冷却工程やホース中間体の内壁への離型剤が不要となり、生産性に優れている。
【0012】
[他の適用例]
他の適用例として、チャックは、ホース中間体の外周部に倣って湾曲した爪を有する構成である。また、チャックは、空気圧で膨張・収縮することでホース中間体の外周部を把持する袋体を備えた構成である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例にかかる屈曲した形状のホースを一部破断して示す側面図である。
【図2】ホースの断面図である。
【図3】屈曲した形状のホースを製造する方法を説明する説明図である。
【図4】ホースが製造されるまでの各々の断面を説明する説明図である。
【図5】マンドレル装着装置を説明する説明図である。
【図6】チャックを説明する説明図である。
【図7】ホース中間体をマンドレルに挿入する工程を説明する説明図である。
【図8】図7に続く工程を説明する説明図である。
【図9】図8に続く工程を説明する説明図である。
【図10】図9に続く工程を説明する説明図である。
【図11】図10に続く工程を説明する説明図である。
【図12】図11に続く工程を説明する説明図である。
【図13】他の実施例にかかる挿入ガイド装置のチャックを説明する説明図である。
【図14】図13の挿入ガイド装置の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1) 屈曲した形状のホースHの概略構成
図1は本発明の一実施例にかかる屈曲した形状のホースを一部破断して示す側面図、図2はホースの断面図である。ホースHは、例えば、ラジエータとエンジンとの接続する箇所に使用されるゴム製のホースであり、エンジンルーム内における配策経路にしたがって所定の形状に曲げられている。ホースHは、通路を形成するゴム製の内層Haと、繊維補強層Hbと、ゴム製の外層Hcとを備え、これらを積層することにより形成されている。
【0015】
(2) ホースの製造方法
図3は屈曲した形状のホースを製造する方法を説明する説明図、図4はホースが形成されるまでの各断面を示す。まず、3層のゴム成形体を形成する工程を行なう。ゴム成形体は、内面ゴム層形成工程、補強層形成工程および外面ゴム層形成工程を経ることにより形成される。内面ゴム層形成工程は、内層ゴム押出機12により行なう。内層ゴム押出機12は、未加硫のゴム材料(EPDM)を円筒形状に押し出すことにより、内面ゴム層Ha−nv(図4(A))を形成してホース中間体H1を得る。
【0016】
補強層形成工程は、ブレーダ14により行なう。ブレーダ14は、内面ゴム層Ha−nvの外周に補強糸を巻回することにより、内面ゴム層Ha−nv上に繊維補強層Hb(図4(B))を形成してホース中間体H2を得る。外面ゴム層形成工程は、外層ゴム押出機16により行なう。外層ゴム押出機16は、繊維補強層Hbを覆うように未加硫のゴム材料(EPDM)を押し出すことにより、外面ゴム層Hc−nv(図4(C))を形成してホース中間体H3を得る。
【0017】
その後、外層ゴム押出機16から押し出されたホース中間体H3をマンドレルに挿入するマンドレル装着工程を行なう。マンドレル装着工程は、マンドレル装着装置20に行われる。マンドレル装着装置20は、マンドレル22と、挿入ガイド装置24とを備えている。図5はマンドレル装着装置20を説明する説明図である。外層ゴム押出機16のヘッド17には、ホース中間体H3が押し出される押出口17aと、押出口17aの内壁を形成するコア17bと、ヘッド17の端部に形成された有底孔である位置決め孔17cとを備えている。
【0018】
マンドレル22は、床に載置される基台22aと、基台22aから上方に伸び曲がった形状のマンドレル本体22bと、マンドレル本体22bの上端面から突設されたピン22cとを備え、マンドレル本体22bの上端部がホース中間体の端部を挿入するための挿入端部22dになっている。図3に示す挿入ガイド装置24は、駆動部24aにより多軸で駆動されるアーム機構であり、ホース中間体H3の端部を掴むチャック25を備え、チャック25をマンドレル22に沿って移動可能な構成である。図6に示すように、チャック25は、アーム25aと、アーム25aの端部に固定された支持板25bと、支持板25bの下面に装着された爪25cとを備えている。爪25cは、ホース中間体H3の外形に沿って湾曲し、ホース中間体H3の径方向、つまり拡径方向へ移動可能である。
【0019】
図7ないし図12はマンドレル装着装置20を用いてヘッド17から押し出されるホース中間体H3をマンドレル22に装着する一連の工程を説明する説明図である。まず、マンドレル22の外面に離型剤をスプレー(図示省略)で塗布する。次に、図7に示すように、ヘッド17の押出口17aに、マンドレル22の挿入端部22dを対向させ、さらに図8示すように、ピン22cを位置決め孔17cに挿入して、挿入端部22dを押出口17aに一致させる。続いて、図9に示すように、ヘッド17から、ホース中間体H3をマンドレル22の挿入端部22dに押し出す。押出口17aは挿入端部22dに一致しているから、ホース中間体H3は、挿入端部22dに外装される。続いて、図10に示すように、挿入ガイド装置24のチャック25が、マンドレル22の挿入端部22dに外装されたホース中間体H3の端部を掴み、そして、図11に示すように、マンドレル22の曲げ形状に沿って移動することで、ホース中間体H3をマンドレル22に外装する。そして、図12に示すように、ホース中間体H3をマンドレル22に外装し終えたときに、マンドレル22をヘッド17から離れるように移動し、その後、カッタ26でヘッド17の押出口17aの開口で、ホース中間体H3を切断する。
【0020】
続いて、マンドレル22に装着されたホース中間体H3を加硫する加硫工程を行なう。加硫工程は、加硫釜に入れて150〜170℃で30分蒸気加熱することにより行なう。これにより、加硫されたホース中間体が得られる。マンドレル22から抜くことにより図1および図2に示すホースHを得る。
【0021】
(3) 実施例の作用・効果
上記実施例の構成により、上述した効果のほか、以下の効果を奏する。
(3)−1 本方法において、外層ゴム押出機16から押し出されたホース中間体H3は、外層ゴム押出機16の推力を利用して、マンドレル22の挿入端部22dに挿入されるから、挿入するための作業が不要となり、生産性に優れている。
【0022】
(3)−2 マンドレル22の挿入端部22dに挿入されたホース中間体H3は、挿入ガイド装置24のチャック25により掴まれて、屈曲したマンドレル22に沿って引き出されるから、マンドレル22の全長にわたる人力による挿入作業が不要となり、省力化を図ることができるとともに、作業環境を改善することができる。
【0023】
(3)−3 外層ゴム押出機16から押し出されたホース中間体H3は、所定長さに切断された状態で工程が中断せず、従来の技術で説明したような、冷却工程やホース中間体H3の内壁への離型剤が不要となり、生産性に優れている。
【0024】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0025】
図13および図14を他の実施例にかかる挿入ガイド装置のチャックを説明する説明図である。本実施例は、ホース中間体を掴むチャック25Bの構成に特徴を有する。すなわち、チャック25Bは、アーム25Baの端部に固定された環状保持部25Bbと、環状保持部25Bbの内周壁に固定された袋体25Bcとを備えている。袋体25Bcは、ホース中間体H3の外周部を囲みかつホース中間体H3との間にギャップGpを形成するように配置されており、圧搾空気で膨らむように形成されている。このチャック25Bの構成により、袋体25Bcの内側のスペースにホース中間体H3を挿入して、袋体25Bc内に空気を圧送して膨張させると、ホース中間体H3を掴むことができる。この方法によるホース中間体H3の全周をわたって均一の力で掴むことができ、ホースへの傷をなくすことができる。
【符号の説明】
【0026】
12…内層ゴム押出機
14…ブレーダ
16…外層ゴム押出機
17…ヘッド
17a…押出口
17b…コア
17c…位置決め孔
20…マンドレル装着装置
22…マンドレル
22a…基台
22b…マンドレル本体
22c…ピン
22d…挿入端部
24…挿入ガイド装置
24a…駆動部
25…チャック
25B…チャック
25a…アーム
25b…支持板
25c…チャック爪
25B…チャック
25Ba…アーム
25Bb…環状保持部
25Bc…袋体
26…カッタ
Gp…ギャップ
H…ホース
Ha…内層
Ha−nv…内面ゴム層
Hb…繊維補強層
Hc…外層
Hc−nv…外面ゴム層
H1…ホース中間体
H2…ホース中間体
H3…ホース中間体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機のヘッド(17)から押し出された未加硫ゴムのホース中間体(H3)を、屈曲したマンドレル(22)に外装するホースの製造方法であって、
上記ホース中間体(H3)の外周部を掴むチャック(25)と、該チャック(25)を上記マンドレル(22)の曲がった形状に沿って移動させる駆動部(24a)とを有する挿入ガイド装置(24)を用い、
上記ヘッド(17)の押出口(17a)に、上記マンドレル(22)の挿入端部(22d)を位置合わせするセット工程と、
上記ヘッド(17)の押出口(17a)から上記ホース中間体(H3)を、上記セット工程によりセットされたマンドレル(22)の挿入端部(22d)に向け、かつ上記マンドレル(22)の挿入端部(22d)に外装されるように押し出す押出工程と、
上記押出工程により上記挿入端部(22d)に外装されたホース中間体(H3)の外周端部を、上記チャック(25)により掴んで、該チャック(25)を上記駆動部(24a)の駆動により上記マンドレル(22)の曲げ形状に沿って移動することで、上記ホース中間体(H3)を上記マンドレル(22)に外装する外装工程と、
上記ホース中間体(H3)を上記マンドレル(22)に外装し終えたときに、上記マンドレル(22)を上記ヘッド(17)から離して、上記押出口(17a)から出された部分のホース中間体(H3)を切断する切断工程と、
を備えたことを特徴とする屈曲した形状のホースを製造する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の屈曲した形状のホースを製造する方法において、
上記チャック(25)は、上記ホース中間体(H3)の外周部に倣って湾曲した爪(25c)を有する屈曲した形状のホースを製造する方法。
【請求項3】
請求項1に記載の屈曲した形状のホースを製造する方法において、
上記チャック(25B)は、空気圧で膨張・収縮することでホース中間体(H3)の外周部を把持する袋体(25Bb)を備えた屈曲した形状のホースを製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−221543(P2010−221543A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71720(P2009−71720)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】