説明

屋上緑化システム

【課題】 建物の重量構造に負担をかける土壌層を使用せず、コストの高い特殊加工の軽量土壌などを使用せず、台風などの強風時に緑化植物を容易に移動することができ、緑化植物の根の張り出しによる屋上の防水シートやコンクリートの亀裂、侵食などの問題がなく、緑化植物の定植までの灌水の手間がかからない、屋上緑化システムを提供することである。
【解決手段】 建物の屋上に浅い貯水プールを形成し、該貯水プール内に、植物が植え付けられた植物栽培容器を配置し、屋上に緑化部を形成し、該容器の底部から給水させるための水位調整手段が設けられていることを特徴とする屋上緑化システムとするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋上の緑化を効果的に行うための屋上緑化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市部のヒートアイランド現象の緩和やCO2排出量の低減化のための手段として、ビルなどの屋上の緑化が推奨されている。
【0003】
緑化植物は、夏季においては、ビル屋上の表面温度を30℃程度まで抑制可能であり、冷房に要するエネルギを大幅に節減することが可能となる。また、冬季においては、ビル屋上からの放射冷却を抑制し、暖房に要するエネルギを節減することが可能となる。
【0004】
このような屋上緑化により節減されるエネルギは、都市部全体となると、膨大なものとなり、結果的に、ヒートアイランド現象の緩和や排出CO2の低減に活用できるものとして注目されている。
【0005】
この屋上緑化対策として、様々な提案がなされており、屋上を防水処理したあとに薄層の植物生育基盤層を造成するなどが一般的である。この場合には植物生育基盤層に散水養生するため灌水装置を屋上に設置する必要がある。
【0006】
このような屋上緑化対策において問題となるのは、植物生育基盤層に土壌を使用するため、その土壌の重量によって建物に大きな負担が生じる問題がある。
【0007】
土壌を特殊加工した軽い土壌を使う方法も開発されているが、コストが高くなる問題がある。また、台風時などには、緑化植物を移動することができず、強風による植物の育成支障をきたしてしまう問題があった。さらに、植物の定植までに灌水の手間がかかるという問題もある。
【0008】
また、屋上の断熱効果の高い方法として、特開2004−159596号公報では、屋上にプールを設け、その上部に人工土壌を用いた植物育成基盤を設けて緑化を行うものも開発されている。

【特許文献1】特開2004−159596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の特開2004−159596号公報では、断熱効果は高いが、プールの上部に植物育成基盤を設けた構造を構築しなければならず、構造が複雑であり、重量構造となり、コストも高くなる。
【0010】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、建物の重量構造に負担をかける土壌層を使用せず、コストの高い特殊加工の軽量土壌などを使用せず、台風などの強風時に緑化植物を容易に移動することができ、緑化植物の根の張り出しによる屋上の防水シートやコンクリートの亀裂、侵食などの問題がなく、緑化植物の定植までの灌水の手間がかからない、屋上緑化システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の問題を解決するために、本発明のでは、建物の屋上に浅い貯水プールを形成し、該貯水プール内に、植物が植え付けられた植物栽培容器を配置し、屋上に緑化部を形成し、該容器の底部から給水させるための水位調整手段が設けられていることを特徴とする屋上緑化システムとしたものである。
【0012】
該屋上に形成される貯水プールは、浅い水位を確保できる貯水層を形成できるものであればいずれでも良く、ブロックなどの縁石に防水シートを張る簡易構造のものでも良く、軽量の樹脂製のプールなどを用いても良い。
【0013】
該貯水プールの水位は、そのプール内に植物栽培容器が設置した場合に、該容器の底部から植物に給水できる程度の深さを確保できるものであれば良く、例えば、水位は1cm〜30cm程度が好ましく、さらに好ましくは、3cm〜15cm程度が良く、この程度の水位であれば、建物への重量負荷は少ない。
【0014】
また、該水位調整手段は、プール内の水の自然蒸発や降雨などにより、水位が変化した場合に、緑化植物に適した水位に調整できるものであればいずれでも良く、増水した場合には、排水栓などを設けて排水でき、水位がさがった場合には、水道水などを供給できるものでも良い。また、水位計を設けて、水位を自動制御できるようにしても良い。また、絶えずプール内の水を循環させ、浄化装置を設けて浄水しながら循環させ、水位を調整できるものでも良い。
【0015】
また、植物の呼吸を活発にさせるために、夜間はプールの水位をに下げ、あるいは完全排水し、植物栽培容器の底面以下に下げ、人工的な水の干満を再現できるようにしても良い。特に親水性植物や湿地性植物などの育成に効果的である。
【0016】
また、本発明では、前記の植物栽培容器において、プール内に植物の根部が張り出すことを防止するための防根手段が設けられていることを特徴とする屋上緑化システムとしたものである。
【0017】
該防根手段は、植物栽培容器から植物の根が張り出し、プール内まで根が張り出すことを防止できるものであれば良い。プール内に根が張り出すと、プールの底部の防水シートや底面のコンクリートなどに損傷を与えてしまう場合があるためである。
【0018】
例えば、植物栽培容器の底部に根が突き破ることができない材料、例えば、樹脂材などによる植物栽培容器の設置台を設けたものでも良く、また、該植物栽培容器の底部構造を根が下方に伸びないように、底面を塞いで、側部に給水穴を設け、根が張り出さないようにし、穴部に布や網を設けた構造としたものでも良い。
【0019】
また、貯水プールの底面に植物栽培容器の受台を設けたものでも良い。例えば、プールが樹脂製などの場合、植物栽培容器の底部をセットできる受台を設けたプール構造としたものでも良い。
【0020】
また、本発明では、前記の植物栽培容器の転倒防止手段が設けられていることを特徴とする屋上緑化システムとしたものである。
【0021】
該転倒防止手段は、強風時などに植物栽培容器が転倒することを防止できるものであれば良く、植物栽培容器の底部に転倒防止用台を設け、その台に植物栽培容器を固定できるようにしても良く、植物栽培容器の底部構造を転倒しにくいように、広い底板形状の張り出しを形成した構造としても良い。
【0022】
また、貯水プールの底面に植物栽培容器の固定具を設けたものでも良い。例えば、プールが樹脂製などの場合、植物栽培容器の固定台を設けたプール構造としたものでも良い。
【発明の効果】
【0023】
本発明の屋上緑化システムは、以下のような効果を奏する。
【0024】
1)屋上にプールを形成するため、断熱効果が高い。
【0025】
2)土壌に比べて水の蒸発率が高いのでヒートアイランド現象を抑える効果が高い。
【0026】
3)プールの水位が浅いので建物への重量負担を少なくできる。
【0027】
4)貯水プールをブロックなどの縁石と防水シートなどによる簡易構造とすると、コストを大幅に低減でき、形状を自由に設計できる。
【0028】
5)植物栽培容器は容易に移動できるので、台風などの場合、影響のない場所に移動して植物の育成を保護できる。
【0029】
6)植物栽培容器は容易に移動できるので、緑化植物の変更が自由にでき、多種多様な植物を使用することができる。
【0030】
7)庭のデザインを自由に変更することが可能となる。
【0031】
8)雨水を活用できるので、維持管理コストが安い。
【0032】
9)プール式なので灌水の手間がかからない。
【0033】
10)防根手段が設けれているので、建物の屋上の床面を損傷さえる心配がない。
【0034】
11)水位調整手段が設けれており、緑化植物に適した水位に調整することができ、水を抜くことで容易に清掃できる。
【0035】
12)夜間水位を下げることで、植物の根の呼吸が土壌より良好となる。また、藻などの発生を防止できる。
【0036】
13)循環させる水に液肥を混合させることにより、施肥管理が容易となる。
【0037】
14)植物栽培容器及び底板の配列によって広告表示を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
次に本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0039】
図1は本発明による屋上緑化システムの一例を示す図である。
【0040】
本実施に示す屋上緑化システムは、図1に示すように、建築物1の屋上部に浅い貯水プール2が設けられており、該プールの中に植物が植栽された植物栽培容器(鉢、プランター)3が多数配置されている。
【0041】
植物は、鉢やプランターなどに植えられたものであれば、いずれでも良く、特にヒルギ類などのマングローブ植物や、柳、ヘゴ、あるいはオオタニワタリなどの浸水性植物や湿地性植物などが好ましい。
【0042】
本実施例では、(2)に示すように、貯水プール2内の水を循環させて使用するものの例を示す。地下に浄化装置(浄化槽)4が設けられ、ここで浄化された水をポンプ5でくみ上げて、給水配管6から貯水プール2に供給される。
【0043】
また、プール2内の水は、排水配管7を通り、浄化装置4に戻される。尚、通常は雨水により、水量は確保されるが、不足の場合には水道水を給水しても良い。
【0044】
また、プール2には(2)に示す水位計8が設けられ、制御盤9において、植物に適した水位を設定することにより、各バルブ10とポンプ5を制御して自動的に水位を調整することができる。
【0045】
また、太陽光発電システムを活用し、タイマー制御することにより、日没時に排水して、植物栽培容器の底面より水位を下げ、朝日とともに太陽光発電によりポンプを作動させて、水位を戻すことができるように制御することができ、完全に独立した自動化が可能となる。
【0046】
また、夜間においては、水位を植物栽培容器の底面より低い水位まで下げることで、人工的に干満を発生させ、植物の根呼吸を活発化させることができる。
【0047】
従来のプールを用いた屋上緑化システムでは、プールの上部に、土壌層による植栽基盤を設備しなければならないが、本発明では、土壌層を設ける必要がなく、特別な設備の必要もない。
【0048】
図2は本発明による屋上緑化システムの植物栽培容器の設置例を示す図である。
【0049】
図に示すように、植物栽培容器3の底部に根の張り出しを防止するための防根手段として、塩ビ製厚板11が設置されている。該塩ビ製厚板11は、植物栽培容器3の底面からの根の張り出しを抑えることができ、プール2内への根の張り出しによるプール底部の損傷などを防止できる。
【0050】
防根手段として使用する材料は、塩ビ製以外の樹脂材を使用しても良く、石材板を使用しても良い。金属板なども使用できるが防水処理を施す必要がある。
【0051】
また、本実施例では、植物栽培容器3の転倒防止手段として、植物栽培容器3をワイヤー12を用いて塩ビ製厚板11を固定している。塩ビ製厚板11は、植物栽培容器3の底面より、大きな面積を有しており、植物栽培容器3を固定することで、転倒防止を実現できるものである。
【0052】
また、厚板11は水中に設置されていることにより、絶えず厚板11は上部から水圧を受けており、急な強風によって植物栽培容器3が傾き、厚板11に浮き上がる力が作用しても、水圧により浮き上がりにくくなっている。
【0053】
また、台風などの強風時には、植物栽培容器3を移動して非難させることもできるが、貯水プール2内の水位を最高にして、植物栽培容器3の底部の塩ビ製厚板11にかかる水圧を強くすることで転倒防止能力を高めることもできる。
【0054】
本実施例では、植物栽培容器3を塩ビ製厚板11に固定する手段としてワイヤー12を用いたが、ワイヤー以外の固定手段を用いても良い。
【0055】
図3は本発明による屋上緑化システムの植物栽培容器の他の設置例を示す図である。
【0056】
この転倒防止手段は、植物栽培容器3を上部から嵌め込んで固定できるように、厚板13の上部に植物栽培容器を挿入して固定するための筒体14が設けられている。
【0057】
該筒体14は、側面に通水穴15が開けられており、外部の水は、筒体14内部に流入し、植物栽培容器3の底面から植物に供給される。
【0058】
筒体14内部の底部には、突起部16が設けられ、植物栽培容器3の底面を塞がないようになっており、側面の通水穴15から流入した水は、突起部16の周囲を通り、植物栽培容器3の底面から植物に供給される。
【0059】
本発明の屋上緑化システムは、植物栽培容器を自由に配置できるので、植物栽培容器及び底板の配色や配置により、文字や図形を表現でき、他の高い場所、例えば、高いビルや高架の電車などから見た場合に有効となる、宣伝用の広告としての機能を発揮させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の屋上緑化システムの実施例を示す図である。
【図2】本発明の屋上緑化システムの植物栽培容器の設置例を示す図である。
【図3】本発明の屋上緑化システムの植物栽培容器の他の設置例を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 建築物
2 貯水プール
3 植物栽培容器
4 浄化装置
5 ポンプ
6 給水配管
7 排水配管
8 水位計
9 制御盤
10 バルブ
11 塩ビ製厚板
12 ワイヤー
13 厚板
14 筒体
15 通水穴
16 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋上に浅い貯水プールを形成し、該貯水プール内に、植物が植え付けられた植物栽培容器を配置し、屋上に緑化部を形成し、該容器の底部から給水させるための水位調整手段が設けられていることを特徴とする屋上緑化システム。
【請求項2】
前記の植物栽培容器において、プール内に植物の根部が張り出すことを防止するための防根手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の屋上緑化システム。
【請求項3】
前記の植物栽培容器の転倒防止手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の屋上緑化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−100722(P2009−100722A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278177(P2007−278177)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(507353304)
【Fターム(参考)】