説明

屋根に積もった雪を溶かす融雪装置

【課題】屋根の上に積もった雪を可能な限り全面的に溶かすことができるとともに、自重によって雪を落とすことができるようにした融雪装置を提供する。
【解決手段】傾斜面を有する屋根9に積もった雪を溶かす融雪装置1において、屋根9の上に配置され、熱水もしくは水蒸気を噴出させる孔部6を有する流水管5と、当該流水管5の孔部6から噴出された熱水もしくは水蒸気の上下方向の拡散を防止する板状の拡散防止板8とを設ける。そして、流水管5を屋根9の傾斜方向に沿って設け、その流水管5から左右方向に熱水や水蒸気を噴出させる。また、屋根9の最上部に沿って流水管5を取り付け、そこから下方に向けて熱水や水蒸気を噴出させ、さらには、各流水管5から雪の積層方向に向けて水蒸気を噴出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根の上に積もった雪を溶かして、その屋根の傾斜面に沿って落下させるようにした融雪装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、雪の多い地方などでは、屋根の上に積もった雪を溶かして地上へ落下させるようにした融雪装置などが用いられている。このような融雪装置としては、例えば、ヒーターを内蔵した平面状の融雪パネルを屋根全面に敷設したものや、図8に示すように、屋根19の最上部に設けられる流水管59から熱水や水蒸気などを噴出させて雪を溶かし、その溶かした雪を地上へ滑らせて落下させるようにした装置などが提案されている(特許文献1や特許文献2など)。
【0003】
このような装置を用いれば、融雪パネルによる熱や流水管59の孔部から噴出させた熱水や水蒸気などによって屋根の雪を溶かすことができ、人間がわざわざ屋根の上に登って雪を落とすなどの作業を行う必要がなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−81225号公報
【特許文献2】特開平10−230191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような融雪装置を用いて屋根の上の雪を溶かす場合であっても、次のような問題を生じる。
【0006】
すなわち、前者のように、平面状の融雪パネルを屋根の全面に設けるようにしたものでは、屋根の全面に融雪パネルを取り付ける必要があり、コストがかかるばかりでなく、その取り付け作業に時間がかかってしまう。
【0007】
また、上記特許文献1や特許文献2に示すような融雪装置では、導入コストを大幅に低減させることができるものの、このような融雪装置では、流水管59に設けられた孔部から熱水や水蒸気を噴出させるため、その孔部の近傍の雪しか溶かすことができない。一方、このような装置を使って屋根に積もった雪を全面的に溶かす場合は、孔部のピッチを短くして可能な限り全面的に雪を溶かすようにしなければならないが、このようにピッチを短くすると、各孔部から噴出される熱水や水蒸気の圧力が小さくなってしまい、遠くの方の雪まで溶かすことができなくなってしまう。
【0008】
さらには、このような特許文献1や特許文献2などの装置において、屋根の最上部に配置した流水管から下方に熱水や水蒸気を噴出させる場合、その圧力により屋根の下端部近傍の雪までも溶かすことができず、その溶かしきれなかった下方の雪で上方の雪が堰き止められて、自重で雪を落下させることができなくなるとい問題も生じる。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に着目してなされたもので、屋根の上に積もった雪を可能な限り全面的に溶かすことができるとともに、自重によって雪を落とすことができるようにした融雪装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、傾斜面を有する屋根に積もった雪を溶かす融雪装置において、屋根の上に配置され、熱水もしくは水蒸気を噴出させる孔部を有する流水管と、当該流水管の孔部から噴出された熱水もしくは水蒸気の上下方向の拡散を防止して左右方向に拡散させるための板状の拡散防止板を設けるようにしたものである。
【0011】
このように構成すれば、拡散防止板によって熱水や水蒸気の上下方向の拡散を防止することができるため、拡散防止板の先端から左右方向に熱水や水蒸気を噴出させて雪を全面的に溶かすことができるようになる。また、その拡散防止板の上に積もった雪についても、その拡散防止板に伝わった熱によって溶かすことができ、その上の雪を落下させることができるようになる。
【0012】
また、このような発明において、流水管の上下面に拡散防止板を挟み込むように設けるようにする。
【0013】
このようにすれば、瓦などのように波打った部分に熱水や水蒸気を噴出させる場合であっても、流水管の下側にも拡散防止板を設けているので、均一に拡散防止板の先端部分から熱水や水蒸気を噴出させることができるようになる。
【0014】
さらに、流水管を、屋根の傾斜方向に沿って配置させるようにする。
【0015】
このようにすれば、屋根の傾斜方向(すなわち、上下方向)に沿って流水管を配置しているので、拡散防止板の近傍に積もった雪をすべて上下方向に沿って溶かすことができ、その部分から先に雪を落下させることができるようになる。
【0016】
加えて、流水管を、屋根の傾斜方向および屋根の最上部の左右方向に設けるとともに、屋根の左右方向及び傾斜方向に沿って熱水もしくは水蒸気を噴出させるようにする。
【0017】
このようにすれば、屋根に積もった雪を傾斜方向に沿ってすべて溶かすとともに、上方向から噴出された熱水や水蒸気によって、その溶けた雪を下方へ押し流すこともできるようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、傾斜面を有する屋根に積もった雪を溶かす融雪装置において、屋根の上に配置され、熱水もしくは水蒸気を噴出させる孔部を有する流水管と、当該流水管の孔部から噴出された熱水もしくは水蒸気の上下方向の拡散を防止して左右方向に拡散させるための板状の拡散防止板を設けるようにしたので、拡散防止板で熱水や水蒸気の上下方向の拡散を防止することができ、拡散防止板の先端から左右方向に熱水や水蒸気を噴出させて雪を全面的に溶かすことができるようになる。また、その拡散防止板の上に積もった雪についても、その拡散防止板に伝わった熱によって溶かすことができ、その雪を落下させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態における融雪装置を屋根に取り付けた状態を示す図
【図2】同形態における加熱装置を示す図
【図3】同形態における流水管と拡散防止板を示す斜視図
【図4】同形態における流水管と拡散防止板の断面図
【図5】他の実施の形態における融雪装置を屋根に取り付けた状態を示す図
【図6】他の実施の形態における融雪装置を屋根に取り付けた状態を示す図
【図7】図6における流水管と拡散防止板を示す図
【図8】従来例における融雪装置の概略図
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。この実施の形態における融雪装置1は、図1から図4に示すように、傾斜面を有する屋根9の上に着脱可能に取り付けられるものであって、水を加熱させる加熱装置2と、その加熱装置2で加熱された熱水や水蒸気を屋根9側へと導く流水管5と、屋根9の上に取り付けられた流水管5に間欠的に設けられた孔部6(図3参照)とを有してなるもので、特徴的には、その流水管5の上下に挟み込むように拡散防止板8を取り付けるようにしたものである。そして、このように上下に拡散防止板8を取り付けることによって、孔部6から放射状に拡散した熱水や水蒸気を拡散防止板8で左右方向に分散させ、その先端部分から均一に噴出させるようにしたものである。以下、本実施の形態における融雪装置1について詳細に説明する。
【0021】
まず、加熱装置2は、図2に示すように、オイル31を貯留するオイルタンク3と、そのオイルタンク3の内部に設けられたヒーター4とを設けて構成されている。このオイルタンク3には、家庭の水道管に接続された流水管5が通されており、ヒーター4によってオイル31を高温に加熱し、その熱によって間接的に流水管5内の水を加熱するようにしている。オイルタンク3によって流水管5の水を加熱する場合は、可能な限り効率的に水を熱水や水蒸気に加熱させるようにするべく、流水管5を細く形成するとともにオイル31の中で蛇行させるようにしておく。なお、ここで、流水管5の水を加熱させる場合、この実施の形態では、水蒸気になるまで高温に加熱させて、約1700倍にまで膨張させて水蒸気を排出させるようにしておくものとするが、熱水の状態で排出させてもよい。
【0022】
一方、流水管5は、家庭の水道管から通された水をオイルタンク3に導き、そこで加熱させて、屋根9の上側にまで水蒸気を導くことができるように構成されている。この流水管5における屋根9までの部分については、加熱した水蒸気が外気によって冷却されてしまわないように保温部材を巻き付けておくか、あるいは、その流水管5自体を断熱性素材で構成しておくようにする。また、屋根9の上に設けられた流水管5については、屋根9の傾斜方向である上下方向に沿って取り付けるようにしておく。このとき、その屋根9が瓦91で構成されていて凹凸が存在するような場合は、その凸部よりも上に流水管5を位置させるようにしておき、これによって遠くまで水蒸気を噴出させるようにしておく。この流水管5を屋根9に取り付ける場合は、屋根9の最上部で固定具7などを用いて上端部を固定しておき、これによって流水管5を屋根9から落下させないようにしておく。
【0023】
この屋根9上に設けられた流水管5の左右両側面には、図3や図4に示すように、水蒸気などを噴出させるための孔部6が間欠的に設けられており、そこから水蒸気を高圧で噴出させるようにしている。一般的に、高圧で水蒸気を噴出させると、孔部6から水蒸気が放射状(すなわち、上下左右方向)に拡散されてしまい、その孔部6の近傍に位置する雪しか溶かすことができなくなってしまう。そこで、この孔部6近傍以外の雪や孔部6から遠方の雪をも溶かすことができるように、板状の拡散防止板8を流水管5に取り付けるようにしている。
【0024】
この拡散防止板8は、流水管5の上下を挟み込むように取り付けられるものであって、孔部6から噴出された水蒸気の上下方向の拡散を防止し、その分だけ水蒸気を左右方向に拡散させて先端部分の隙間から噴出させるようにしたものである。この拡散防止板8を流水管5に取り付ける場合、板状の部材の中央に凹部81を設けてそこに流水管5を溶着させ、その流水管5の左右両側に板状の傘部82を位置させるようにする。この傘部82の先端部83については、流水管5の径よりも極端に大きいと、孔部6から噴出させた水蒸気を横方向に拡散させることができなくなるため、その先端部83から均一に水蒸気を噴出させることができるような隙間幅に設定しておく。このようにすると、孔部6から上下左右に拡散させた水蒸気については、上下の拡散防止板8で上下方向の拡散が防止されて左右方向に噴出させることができ、雪の下層部分を平面状に溶かすことができる。また、このとき拡散防止板8を熱伝導性の高い金属で構成しておけば、拡散防止板8を加熱させることができ、その上に積もった雪についても溶かすことができるようになる。しかも、この拡散防止板8は傾斜方向に沿って上下方向に設けられているため、その部分の雪を拡散防止板8の上から滑らせて落下させることができるようになる。
【0025】
また、この流水管5については、屋根9の上下方向に取り付けるだけでなく、図5に示すように、屋根9の最上部に沿って左右方向に取り付けるようにしてもよい。この最上部に取り付ける場合も同様に、屋根9の下方に向けて孔部6を設けるとともに、その流水管5の上下を挟み込むように拡散防止板8を設けるようにする。なお、この実施の形態などにおいても、図1などと同じ符号を示したものは同じ構成を有するものとし、屋根9の最上部に設けられた流水管5についても拡散防止板8を取り付けているものとする。
【0026】
このようにすると、傾斜方向に取り付けられた流水管5によって屋根9の傾斜方向に沿った雪を溶かすことができるとともに、最上部の左右方向に設けられた流水管5によって雪を下方に押し込むことができる。この場合、特に傾斜方向に設けられた左右の流水管5と最上部の流水管5で囲まれた領域については、上方および左右方向から雪を溶かすことができるため、より雪を落下させやすくすることができる。
【0027】
また、このように流水管5の側面から水蒸気を噴出させた場合、雪の最下層部分ではその雪を溶かすことができるが、それよりも上層側に積もった雪については溶かすことができないため、そこで凍り付いた部分によって雪を落下させることができなくなる可能性がある。そこで、図6や図7に示すように、傾斜方向に沿って設けられた流水管5の上面部にも孔部6を設けておき、そこから上方(雪の積層方向)に向けて水蒸気などを噴出させるようにすることもできる。このようにすれば、雪の最下層だけでなく、上方に噴出させた水蒸気によって雪を切断することができ、より雪を落下させやすくすることができるようになる。なお、この場合においても、上部に設けられた孔部6を挟み込むように拡散防止板8を設けるようにすると、より直線的に雪を切断させることができるようになる。なお、流水管5の上部に孔部6を形成する場合についても同様に、その孔部6を挟み込むように拡散防止板8を取り付け、これによって平面状に水蒸気を噴出させるようにしておくようにする。
【0028】
このように上記実施の形態によれば、傾斜面を有する屋根9に積もった雪を溶かす融雪装置1において、屋根9の上に配置され、熱水もしくは水蒸気を噴出させる孔部6を有する流水管5と、当該流水管5の孔部6から噴出された熱水もしくは水蒸気の上下方向の拡散を防止する板状の拡散防止板8とを設けるようにしたので、拡散防止板8によって熱水や水蒸気の上下方向の拡散を防止することができ、拡散防止板8の先端から平面状に熱水や水蒸気を噴出させて雪を全面的に溶かすことができるようになる。また、その拡散防止板8の上に積もった雪についても、その拡散防止板8の熱によって溶かして、その雪を落下させることができるようになる。
【0029】
また、流水管5を挟み込むように上下に拡散防止板8を設けるようにしたので、瓦91などの波打った部分に熱水や水蒸気を噴出させる場合であっても、上下に挟み込むように設けられた拡散防止板8によって、均一にその拡散防止板8の先端部分から熱水や水蒸気を噴出させることができるようになる。
【0030】
さらに、流水管5を屋根9の傾斜方向に沿って配置させるようにしたので、拡散防止板8の近傍に積もった雪については上下方向にすべて溶かすことができ、その部分から先に雪を落下させることができるようになる。しかも、その落下に伴って、隣接する雪も引き連れて同時に他の部分の雪も落とすことができるようになり、より多くの雪を落下させるようにすることができる。
【0031】
加えて、流水管5を屋根9の傾斜方向および屋根9の最上部のそれぞれに設けるとともに、屋根9の左右方向及び傾斜方向に沿って熱水もしくは水蒸気を噴出させるようにすれば、屋根9に積もった雪の一部を上下方向にすべて溶かすとともに、上方向から噴出する熱水や水蒸気によって、その溶けた雪を下方へ押し流すこともできるようになる。
【0032】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0033】
例えば、上記実施の形態では、水を加熱させて熱水や水蒸気にして噴出させるようにしたが、水分を含むものであればどのようなものであってもよく、例えば、凝固点降下剤として、例えば、塩化カルシウムなどを含ませるようにしてもよい。また、上記実施の形態では、水蒸気を噴出させるようにしたが、熱水を噴出させるようにしてもよい。
【0034】
また、上記実施の形態では、拡散防止板8として、流水管5の上下を挟み込むような板状を用いるようにしたが、流水管5の孔部6の上下から突出するように設けて構成するようにしてもよい。
【0035】
さらに、上記実施の形態では、流水管5から熱水や水蒸気を噴出させるようにしたが、噴出を一定時間以上停止させた場合、その内部の水が凍って孔部6などを塞いでしまう可能性がある。このため、その流水管5にヒーターを巻き付けておき、噴出前の一定時間をヒーターで加熱させるようにしてもよい。
【0036】
また、上記実施の形態では、上下の拡散防止板8を設けるようにしたが、上方の拡散防止板8だけを設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1・・・融雪装置
2・・・加熱装置
3・・・オイルタンク
31・・・オイル
4・・・ヒーター
5・・・流水管
6・・・孔部
7・・・固定具
8・・・拡散防止板
81・・・凹部
82・・・傘部
83・・・先端
9・・・屋根
91・・・瓦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜面を有する屋根に積もった雪を溶かす融雪装置において、
屋根の上に配置され、熱水もしくは水蒸気を噴出させる孔部を有する流水管と、
当該流水管の孔部から噴出された熱水もしくは水蒸気の上下方向の拡散を防止して左右方向に拡散させるための板状の拡散防止板と、
を設けるようにしことを特徴とする融雪装置。
【請求項2】
前記拡散防止板が、流水管の上下に挟み込むように設けたものである請求項1に記載の融雪装置。
【請求項3】
前記流水管が、屋根の傾斜方向に沿って配置されるものである請求項1に記載の融雪装置。
【請求項4】
前記流水管が、屋根の傾斜方向および屋根の最上部に設けられ、屋根の左右方向及び傾斜方向に沿って熱水もしくは水蒸気を噴出させるようにしたものである請求項1に記載の融雪装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−224977(P2012−224977A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90626(P2011−90626)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(507044088)クオリア株式会社 (6)
【Fターム(参考)】