屋根材および融雪式屋根構造
【課題】本発明の課題は、屋根の融雪構造を安価に提供することにある。
【解決手段】電気炉酸化スラグ8を含有する屋根材20を屋根に葺設し、その下段から電磁波照射手段39によって電磁波を照射し、該屋根材20に含まれている電気炉酸化スラグ8によって該電磁波を熱エネルギーに変換する。
【解決手段】電気炉酸化スラグ8を含有する屋根材20を屋根に葺設し、その下段から電磁波照射手段39によって電磁波を照射し、該屋根材20に含まれている電気炉酸化スラグ8によって該電磁波を熱エネルギーに変換する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁波を照射して加熱することが出来る屋根材および該屋根材を葺設した融雪式屋根構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積雪量が多い地方では建物の屋根の上に多量の雪が積り、その重量によって建物が圧壊されるおそれがあるので、屋根の上に積った雪を除去する必要がある。
人が屋根の上に登って除雪作業することは極めて危険な作業である。このような危険な除雪作業を解消するために、最近ではフェライト磁性体を取付けた融雪式屋根材が提供されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−41807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記屋根材を葺設した屋根にあっては、該屋根材の下側から電磁波を照射すると、上記屋根材に取付けたフェライト磁性体によって該電磁波が熱エネルギーに変換されて上記屋根材を加熱し、該屋根材上に積った雪が融けて除雪が行われる。
フェライト磁性体は非常に高価であり、これを取付けた屋根材はしたがって高価になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の融雪式屋根材の問題点を解消して融雪式屋根材を安価に提供することを目的とするものであり、電気炉酸化スラグを含有し、粘土を主体とした材料からなる屋根材を提供することを骨子とする。上記屋根材には、補強材を添加することが好ましい。また、上記屋根材の上面には電磁波遮蔽層が設けられることが好ましい。上記電気炉酸化スラグは、電気炉酸化スラグ溶融物に電磁波加熱性を向上させるための添加物を添加した上で空気または酸素を吹き込んで強制酸化処理を施し、その後急冷固化することによって得られる改質電気炉酸化スラグであることが好ましく、また上記屋根材には上記電気炉スラグが15〜30質量%の範囲で含有されていることが好ましい。上記屋根材中のスラグ含有量が15質量%に満たない場合には、該屋根材の発熱量が不足して充分な融雪効果が期待できず、スラグ含有量が30質量%を超えると、該屋根材の重量が大となるし、これ以上スラグ含有量を増やしても該屋根材の発熱量はあまり増大しない。
本発明にあっては、更に上記屋根材を野地面材上に葺設し、上記野地面材の下側に配置されている電磁波照射手段とからなる融雪式屋根構造を提供される。
通常、上記電磁波照射手段は電磁波出力装置と、上記電磁波出力装置に接続されたアンテナ線とからなり、上記アンテナ線が上記野地面材の下側に配置されている。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
電気炉酸化スラグの粒状物または破砕物は、他のフェライト系無機質に比べて非常に安価であり、かつ耐化学性があり殆ど変質しないので実用性が高い。そして電磁波を及ぼせば該電気炉酸化スラグは電磁波を吸収して熱エネルギーに変換する。したがって該電気炉酸化スラグを含有する屋根材は安価に提供出来、また非接触的に発熱させることが出来るから、配線、結線等が不要である。該電気炉スラグとして、電気炉スラグ溶融物に電磁波加熱性を向上させるための添加物を添加した上で空気または酸素を吹き込んで強制酸化処理を施し、そして急冷固化することによって得られた改質電気炉酸化スラグを使用すると、電磁波加熱性を更に向上し、小さな電力で高温度の加熱が可能になる。本発明の屋根材が電磁波の照射によって融雪に充分な熱エネルギーを放射するためには、該電気炉酸化スラグが屋根材中に15質量%以上の量で添加されていることが望ましいが、30質量%を越えると屋根材の重量が重くなり過ぎるし、また電磁波発熱性もこれ以上顕著には向上しない。
更に電磁波漏洩を防止する手段としては屋根材上面に電磁波遮蔽層を設ける手段がある。上記手段によれば電気炉酸化スラグの添加量を余り増やすことなく電磁波の漏洩を効率良く阻止することが出来る。
【0007】
〔効果〕
本発明では、従来は産業廃棄物とされていた電気炉酸化スラグを屋根材に添加するから、電磁波を照射して該電気炉酸化スラグに吸収させ、熱エネルギーに変換して発熱させ、融雪を行なうことが出来る屋根材が極めて安価に提供出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1は実施例の屋根材を示すものである。
図2〜図4は電気炉酸化スラグの一製造実施例に関するものである。
図5〜図11は本発明の屋根の一実施例を示すものである。
図14,15は他の実施例を示すものである。
図16は他の実施例として電磁波遮蔽層を設けた屋根材を示すものである。
【図1】粘土を主材料とする屋根材の一実施例を示す斜視図である。
【図2】電気炉スラグ粒状物製造装置の説明図。
【図3】電気炉スラグ粒状物の粒度分布を示すグラフ。
【図4】電気溶解炉説明図。
【図5】断熱材および野地面材の部分斜視図。
【図6】屋根パネルの横断面図。
【図7】屋根パネルを屋根骨格上に被着した状態の部分横断面図。
【図8】屋根パネルを屋根骨格上に被着した状態の部分縦断面図。
【図9】棟部の横断面図(水切り板取付け部分)。
【図10】棟部の横断面図(棟換気部材取付け部分)。
【図11】棟換気部材の正面図。
【図12】屋根躯体の平面図。
【図13】アンテナ線の説明図。
【図14】屋根パネルを屋根骨格上に被着した状態の部分横断面図。
【図15】野地面材を取り除いた屋根平面図。
【図16】粘土を主材料とする屋根材の一実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を以下に詳細に説明する。
〔電気炉酸化スラグ〕
本発明で使用する電気炉酸化スラグは、通常CaO:10〜26質量%、SiO2:8〜22質量%、MnO:4〜7質量%、MgO:2〜8質量%、FeO:13〜32質量%、Fe2O3:9〜45質量%、Al2O3:4〜16質量%、Cr2O3:1〜4質量%程度含み、更に微量成分としてBaO:0.05〜0.20質量%、TiO2:0.25〜0.70質量%、P2O5:0.15〜0.50質量%、S:0.005〜0.085質量%程度含み、安定な鉱物組成を得るためのFeを20〜45質量%程度含むものであり、天然骨材成分に含まれる粘土、有機不純物、塩分を全く含まず、不安定な遊離石灰、遊離マグネシアあるいは鉱物も殆ど含まない。該電気炉酸化スラグは粒状物または破砕物として提供される。
【0010】
〔電気炉酸化スラグ粒化法〕
上記電気炉酸化スラグを粒化して粒状物を製造するには、該電気炉酸化スラグの溶融物を高速回転する羽根付きドラムに注入し、該溶融物を該羽根付きドラムによって破砕粒状化し、粒状化した該溶融物を水ミスト雰囲気中で急冷処理する方法が採られる。該羽根付きドラムは複数個配置して複数段の破砕粒状化を行なってもよい。
このようにして得られる電気炉酸化スラグの粒状物は、再酸化が促進されるので、Fe2O3系の鉱物を多く含み、かつ急冷により、極微細な粒状物になるため、電磁波加熱性が非常に良好なものとなる。また通常5mm以下の粒径を有し、粒径2.5mm以下のものは略球状であり、比重は3.3〜4.1の範囲にあり、表面にはひび割れ等の欠陥はなく、微細な凹凸を有し、中空構造のものからなるか、または中空構造のものを含んでいる。
【0011】
〔電気炉酸化スラグ破砕法〕
上記電気炉酸化スラグ破砕物を製造するには、上記電気炉酸化スラグを溶融状態で耐熱容器中に所定の厚みに流し出し、上から水をかけることによって急冷改質処理が施される。この場合、耐熱容器中のスラグ溶融物の厚さが小さすぎると、水をかける前に自然冷却(徐冷)によって硬化し易くなり、所望の硬度が得られなくなるおそれがあり、また厚さが大きくなり過ぎると、水をかけた場合に水が急激に水蒸気となり、水蒸気爆発の危険がある。望ましいスラグ溶融物の厚さは80mm〜120mmである。
【0012】
水をかける場合には耐熱容器中のスラグ溶融物の表面に水が溜まらないようにすることが望ましく、水をかける量が多過ぎてスラグ溶融物の表面に水が溜まって水の蒸発潜熱による急冷効果が期待出来なくなる。
上記水をかける量は、スラグ溶融物1トン当たり毎秒200〜400リットル程度が望ましい。
上記急冷によってスラグ溶融物は急速に硬化するが、この際自己破砕によって容器中のスラグ溶融物の厚さ程度の径を有するスラグ原塊が得られる。
【0013】
該スラグ原塊は粗砕機で粗砕され、更に細砕機で細砕される。上記粉砕によって、スラグ塊はスラグ成分のマトリクスと鉱物相との境界で破断し、表面に微細な凹凸が形成される。所望なれば上記破砕物は粗篩機等によって粗分級され、更に細砕機等によって細分級して5〜25mm望ましくは5〜20mmの粗骨材、粒径5〜13mm望ましくは5〜10mmの粗骨材、および5mm以下の細骨材に分ける。
【0014】
上記粗砕および細砕はスラグ原塊が水で濡れたままで行ってもよいし、またスラグ原塊を乾燥して粗砕以後の工程を行ってもよいし、あるいはスラグ原塊を粗砕した後に乾燥して細砕以後の工程を行ってもよい。また上記分級工程において、篩を通過しない残分は破砕工程に戻されることが望ましい。
このようにして得られる破砕物は徐冷スラグに較べ、再酸化が促進されるので、Fe2O3系の鉱物を多く含み、かつ急冷により、微細な粒状物になるため、電磁波加熱性が非常に良好なものとなり、その比重は水砕品と同様3.3〜4.1の範囲にある。
【0015】
〔改質電気炉酸化スラグ〕
本発明において使用される改質電気炉酸化スラグには電磁波加熱性を向上させるための添加物を添加する。
上記電磁波加熱性を向上させるための添加物としては、Fe、Ba、Co、Ni、Cr、Cu、Mn、Sr、Zn等の金属あるいはこれら金属を含む合金あるいはこれらの金属の酸化物、水酸化物、塩化物、硫酸塩等の加熱により酸化物を与える化合物である。望ましい添加物としては鉄スクラップ、スケール、BaO屑、硫酸バリウムを含む重晶石等がある。
上記添加物は前記粒化法あるいは破砕法において、電気炉酸化スラグ溶融物に添加されるかあるいは電気炉酸化スラグに混合されて共に溶融される。上記溶融は通常電気溶解炉で行われるが、この時溶融物に空気または酸素を吹込み強制酸化処理を施す。上記強制酸化処理は特にFeO比率が高い破砕法によるスラグに対して有効であり、上記強制酸化処理によってFe2O3比率を高めて電磁波加熱性を向上せしめることが出来る。
該改質電気炉酸化スラグも粒状物または破砕物として提供される。
【0016】
〔屋根材〕
本発明における屋根材は、粘土を主材料としたものである。
上記粘土を主材料とした屋根材にあっては、石器土粘土、水ひ粘土、陶石質粘土、陶石等の粘土を普通3種類以上配合し、電気炉酸化スラグを水と混練して混練物とし、該混練物を真空押出機によって荒地を押出し、該荒地を所定形状にプレス成形し、成形品は乾燥後焼成する。所望なれば成形品にはフリット釉や長石質釉を施釉してから焼成する。焼成温度は通常1000℃〜1100℃である。焼成温度が1100℃を超えると、屋根材に含有されている電気炉酸化スラグが溶融発泡して屋根材としての外観、強度等を劣化させる。
更に本発明の屋根材には、木粉、木毛、木片、木質繊維、木質バルプ等の木質補強材、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ビスコース繊維、アセテート繊維、塩化ビニル繊維、塩化ビニリデン繊維、ビニロン繊維等の有機合成繊維補強材、アスベスト繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、ウィスカー繊維等の無機質補強材を添加することが望ましい。
【0017】
本発明の屋根材20を図1に示す。
更に本実施例では、電磁波の漏洩を防止するために図16に示すように屋根材20の上面に金網202を配し、金網202により構成される電磁波遮蔽層201を設けても良い。前記金網202は、孔眼サイズ5mm角以下で線直径0.2mm以上のステンレス・スチール製である。
上記電磁波遮蔽層201としては、例えば金属箔等としても良い。このように電磁波遮蔽層201,201として、孔眼サイズ5mm角以下で線直径0.2mm以上のステンレス・スチール製金網を使用した場合、電磁波遮蔽層201を使用してない屋根材20に比して電磁波が約60db低下する。
電磁波遮蔽層201を有する屋根材の製造方法としては、例えば金網202を屋根材20の上面に接着剤を用いて配設する。
【0018】
〔実施例1〕(電気炉スラグ粒状物の製造)
図2に本発明の電気炉スラグ粒状物(以下スラグ粒状物と略す8を製造する装置を示す。
即ち1500℃前後の電気炉酸化スラグ溶融物1は電気溶解炉から取鍋2に移され、該取鍋2からシューター3に移し、該シューター3から高速回転する羽根付きドラム4,5に注入する。該製鋼スラグ溶融物1は該羽根付きドラム4,5によって細破砕されて粒状化し、該電気炉酸化スラグ溶融物の粒化物1Aは急冷チャンバー6内にスプレー装置7からスプレーされる水ミストによって急冷される。そしてこのようにして得られたスラグ粒状物8は備蓄容器9内に備蓄される。
該スラグ粒状物8は略球状の中空体であり、表面にはひび割れ等の欠陥はなく、微細な凹凸が有り、高硬度(モース硬さでマトリックスが6程度、鉱物相が8程度であった。)を有し耐摩耗性に優れており、真比重は3.84、絶乾比重は3.52、耐火度は1100℃で、電磁波発熱性、透磁性、誘電性、耐酸性、耐アルカリ性等にも優れている。
該スラグ粒状物8の粒度分布を図3に示す。
【0019】
〔実施例2〕(電気炉スラグ破砕物の製造)
実施例1において電気溶解炉から取鍋2に移されたスラグの溶融物に鉄粉および酸化カルシウムと酸化ケイ素とを後添加して次の組成に調節する。
CaO 24.92重量%
SiO2 15.24重量%
Al2O3 6.72重量%
MnO 5.66重量%
MgO 4.25重量%
Cr2O3 1.97重量%
TiO2 0.42重量%
BaO 0.07重量%
総Fe 40.75重量%
CaO/SiO2=1.64
上記スラグ溶融物は約1350℃に加熱されているが、取鍋2から耐熱容器(皿型鋼鉄製)に約100mmの厚さに流し出され、直ちにスラグ溶融物1トン当たり毎秒300リットル、スプレーにより散水する。
【0020】
このようにして約100mm径のスラグ原塊が得られ、該スラグ原塊のモース硬さはマトリクスで6、鉱物相で8であった。該スラグ原塊は粗砕機で粗砕され、乾燥機で乾燥後細砕機で細砕される。細砕されたスラグ原塊は次いで粗篩機で粗分級され、更に細篩機で細分級されて、5〜20mm粒径の粗骨材または5〜13mm粒径の粗骨材、5mm以下の細骨材に分けられる。
【0021】
〔実施例3〕(改質電気炉スラグ破砕物の製造)
4.5トンの電気炉酸化スラグ1を図4に示す電気溶解炉Dに投入し、更に鉄スクラップとして1.5トンの銑ダライと125kgの重晶石を加えてランス管Rから酸素を吹精しつゝ加熱溶融し、得られた溶融物1Aを図2に示す取鍋2に移し、以後実施例2と同様にして改質電気炉酸化スラグ破砕物を得る。
上記改質電気炉酸化スラグ破砕物の化学組成の一例を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
〔実施例4〕
本発明の融雪式屋根構造を図5〜図11に示す一実施例によって以下に説明する。屋根パネル21は野地面材22と、該野地面材22の下面に接着剤によって接着されている断熱性板材23とからなる。該断熱性板材23は複数枚の断熱材23Aと、隣接する一対の該断熱材23A間を連結する細長の補強材23Bとからなり、該断熱材23A相互間には垂木嵌合溝25が形成され、該補強材23Bは隣接する一対の該断熱材23A相互に上側から差渡して貼着され、該断熱性板材23は該補強材23Bを介して該野地面材22に接着され、かくして該野地面材22と該断熱性板材23の断熱材23Aとの間には、該補強材23Bの厚み分の通気路24該形成されている。即ち該屋根材23Bは、該野地面材22と該断熱材23Aとの間のスペーサーとしても機能している。
上記断熱材23Aは、ポリスチレン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、半硬質ポリウレタン発泡体、フェノール樹脂発泡体、メラミン樹脂発泡体等のプラスチック発泡体や、特に半硬質発泡体やフェノール樹脂発泡体の上下両面にプラスチックフィルムが貼着されている複合発泡体、更にポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維等の合成繊維やガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、ロックウール等の無機繊維を合成樹脂によって結着した繊維板等の板状多孔質体からなる。
また上記補強材23Bは、木材、ハードボード、パーチクルボード、合板、上記繊維板の硬質なもの等の高強度材料からなる。
そして該屋根パネル21の両端においては、該断熱性板材23の補強材23Bと野地面材22とを共に断熱材23Aから延出せしめ、該延出部分23Cの下側と両端の垂木嵌合溝25Aとする。上記両端の嵌合溝25Aの巾はその他の嵌合溝25の巾の1/2に設定する。
【0024】
図7に示すように該屋根パネル21は屋根骨格の垂木26上に被着され、該垂木26を該屋根パネル21の断熱性板材23の垂木嵌合溝25,25Aに嵌合する。この状態で該断熱性板材23の補強材23Bが断熱材23Aを補強する。補強効果を高めるために該補強材23Bの厚みは20mm以上とすることが望ましい。
【0025】
図8に示すように該垂木26は下側において軒桁27A、母屋27B、棟木27Cによって支持されている。そして該屋根パネル21の横方向の相互接続部においては、図7に示すように該断熱性板材23の断熱材23Aと垂木26との間にシール材28を介在させて気密性を確保している。
【0026】
更に軒先部にあっては該屋根パネル21の通気路24軒先側端は外気に開放されており、また該断熱性板材23の断熱材23Aの下面は壁断熱材30の上端と当接しており、該屋根パネル21の断熱性板材23の断熱材23Aの下面と該壁断熱材30の上端との間に形成されている隙間には軟質ポリウレタン発泡体、軟質ポリ塩化ビニル発泡体、合成ゴムスポンジ等の軟質プラスチック発泡体や軟質繊維シートからなる断熱性シール材29を充填し、屋根の断熱性板材23と壁断熱材30との接合部において、断熱構造の連続性が断たれることを防止している。更に棟部にあっても左右の屋根パネル21,21の接合部の隙間にも、同様な断熱性シール材30が充填されて断熱構造の連続性が断たれることを防止しているが、該断熱性シール材30は該屋根パネル21の通気路24を閉塞しないように該屋根パネル21の断熱性板材23の断熱材23A間に充填され、棟に沿って左右の屋根パネル21,21間に形成される横通気路31に該屋根パネル21,21の各通気路24,24の棟側端が開放されるように設定されている。
【0027】
図9に示すように、該屋根パネル21の野地面材22の上面には、屋根材20が葺設される。そして棟部にあっては笠木33,33を介して水切り板34が被覆されている。そして棟部所定個所には図10および図11に示すような棟換気部材36が被着されており、屋根37の該横通気路31が該棟換気部材36を介して外気に開放されるように設定されている。該棟換気部材36はポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の硬質なプラスチックを材料とし、笠形水切り板36Aと、該水切り板36Aの下面両側に接着される通気性ブロック36Bとからなり、該通気性ブロック36Bには例えばハニカム状に多数の連通孔が設けられている。
【0028】
上記屋根37にあっては、軒先側の換気は屋根パネル21の通気路24の軒先端が直接外気に開放していることによって行なわれ、棟側換気は屋根パネル21の通気路24が横通気路31に開放され、該横通気路31が該棟換気部材36を介して外気に開放されることによって行なわれる。
【0029】
上記構造の屋根37において、図12に示すように軒桁27A,母屋27B,27B、棟木27Cの下側には吊環38を介してアンテナ線39が張設されている。図13に示すように、該アンテナ線39にあっては、導電線39aの外周面に電気絶縁層39bを介して金属メッシュからなる電磁波遮蔽層39cが被覆され、更に該電磁波遮蔽層39cの外周に電磁波吸収磁性層39dが被覆だれており、該電磁波遮蔽層39cと該電磁波吸収磁性層39dとは電磁波射出角度およぶ電磁波の周波数に対応した長さと巾とで切り欠かれている。なお図中39e,39fはケースである。
【0030】
上記アンテナ線39は屋根37の棟より左右に別かれて二組張設されており、電磁波出力装置40に接続されている。該電磁波出力装置40は電磁波発振装置41と、制御装置42とからなり、該制御装置42にはスイッチ43と熱電対等に屋根温度センサー44とが付設されている。
【0031】
上記電磁波発振装置41は上記スイッチ43をONするか、あるいは上記屋根温度センサー44によって屋根の温度が設定温度以下になった場合にはその信号に基づいて作動し、上記アンテナ39からは、1GHz〜10GHzの高周波数帯で、出力5〜100W程度の電磁波が出力され、上記屋根材20に含有されている電気炉酸化スラグが電磁波を熱エネルギーに変換し、屋根材20が加熱される。通常該屋根材20は30〜50℃に加熱され、例えば50℃になった時、上記屋根温度センサー44によって上記電磁波発振装置45の作動が停止するように設定されている。
このようにして該屋根材20は電磁波によって加熱され、該屋根材20に積った雪が融かされ、あるいは着雪が防止される。
上記電磁波発振装置45は例えば天井材上に設置されるが、室内に電磁波漏洩することを防止するために、例えば天井材の上面および/または下面に電磁波遮蔽層あるいは電磁波反射層を設けておくことが望ましい。
図14および図15には他の実施例が示されている。本実施例にあっては、アンテナ線39は屋根パネル21の通気路24内に配設される。該アンテナ線39は該通気路24内にあって九十九(つづら)折り状とされ、補強材23Bから差出されているガイドリング46によってガイドされている。
【0032】
〔発熱試験〕
屋根材
せっ器粘土に20質量%の改質電化炉酸化スラグ(実施例3)を添加し、水を加えて混練した荒地を図1bに示す形状に成形し、乾燥した後表面にフリット釉を施釉し、1100℃で焼成して厚み10mmの屋根材を製造した。
【0033】
上記屋根材の500mmの下側に図13に示すアンテナ線を配置して、2.45GHz900〜1000Wの高周波を照射し、発熱状態を調べた。結果を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
表2を参照すると、高周波照射後1分以内に上記屋根材は10℃以上の融雪温度に達していることが認められた。
〔スラグ含有量と発熱状態〕
前記〔発熱試験〕において作成した屋根材と同様にして、スラグ含有量を15質量%にした屋根材試料を屋根材B1、スラグ含有量を30質量%にした屋根材試料を屋根材B2、スラグ含有量を10質量%にした屋根材試料を屋根材B3、スラグ含有量を35質量%にした屋根材試料を屋根材B4として作成した(表3を参照)。
【0036】
【表3】
【0037】
上記屋根材B3、B1、B2、B4について前記〔発熱試験〕と同様にして発熱状態を調べた。その結果を表4に示す。
【0038】
【表4】
【0039】
表3を参照すると、スラグ含有量15質量%、30質量%のB1,B2は高周波照射後1分以内に15℃以上の融雪温度に達していることが認められた。しかし、スラグ含有量10質量%のB3は照射時間3分でようやく10℃以上の融雪温度に達し、スラグ含有量35質量%のB4は、スラグ含有量30質量%のB2に比較して発熱状況に余り変わりがないことが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明にあっては、屋根の融雪構造が極めて安価に提供される。
【符号の説明】
【0041】
8 電気炉酸化スラグ
20 屋根材
22 野地面材
39 アンテナ線
201 電磁波遮蔽層
202 金網
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁波を照射して加熱することが出来る屋根材および該屋根材を葺設した融雪式屋根構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積雪量が多い地方では建物の屋根の上に多量の雪が積り、その重量によって建物が圧壊されるおそれがあるので、屋根の上に積った雪を除去する必要がある。
人が屋根の上に登って除雪作業することは極めて危険な作業である。このような危険な除雪作業を解消するために、最近ではフェライト磁性体を取付けた融雪式屋根材が提供されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−41807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記屋根材を葺設した屋根にあっては、該屋根材の下側から電磁波を照射すると、上記屋根材に取付けたフェライト磁性体によって該電磁波が熱エネルギーに変換されて上記屋根材を加熱し、該屋根材上に積った雪が融けて除雪が行われる。
フェライト磁性体は非常に高価であり、これを取付けた屋根材はしたがって高価になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の融雪式屋根材の問題点を解消して融雪式屋根材を安価に提供することを目的とするものであり、電気炉酸化スラグを含有し、粘土を主体とした材料からなる屋根材を提供することを骨子とする。上記屋根材には、補強材を添加することが好ましい。また、上記屋根材の上面には電磁波遮蔽層が設けられることが好ましい。上記電気炉酸化スラグは、電気炉酸化スラグ溶融物に電磁波加熱性を向上させるための添加物を添加した上で空気または酸素を吹き込んで強制酸化処理を施し、その後急冷固化することによって得られる改質電気炉酸化スラグであることが好ましく、また上記屋根材には上記電気炉スラグが15〜30質量%の範囲で含有されていることが好ましい。上記屋根材中のスラグ含有量が15質量%に満たない場合には、該屋根材の発熱量が不足して充分な融雪効果が期待できず、スラグ含有量が30質量%を超えると、該屋根材の重量が大となるし、これ以上スラグ含有量を増やしても該屋根材の発熱量はあまり増大しない。
本発明にあっては、更に上記屋根材を野地面材上に葺設し、上記野地面材の下側に配置されている電磁波照射手段とからなる融雪式屋根構造を提供される。
通常、上記電磁波照射手段は電磁波出力装置と、上記電磁波出力装置に接続されたアンテナ線とからなり、上記アンテナ線が上記野地面材の下側に配置されている。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
電気炉酸化スラグの粒状物または破砕物は、他のフェライト系無機質に比べて非常に安価であり、かつ耐化学性があり殆ど変質しないので実用性が高い。そして電磁波を及ぼせば該電気炉酸化スラグは電磁波を吸収して熱エネルギーに変換する。したがって該電気炉酸化スラグを含有する屋根材は安価に提供出来、また非接触的に発熱させることが出来るから、配線、結線等が不要である。該電気炉スラグとして、電気炉スラグ溶融物に電磁波加熱性を向上させるための添加物を添加した上で空気または酸素を吹き込んで強制酸化処理を施し、そして急冷固化することによって得られた改質電気炉酸化スラグを使用すると、電磁波加熱性を更に向上し、小さな電力で高温度の加熱が可能になる。本発明の屋根材が電磁波の照射によって融雪に充分な熱エネルギーを放射するためには、該電気炉酸化スラグが屋根材中に15質量%以上の量で添加されていることが望ましいが、30質量%を越えると屋根材の重量が重くなり過ぎるし、また電磁波発熱性もこれ以上顕著には向上しない。
更に電磁波漏洩を防止する手段としては屋根材上面に電磁波遮蔽層を設ける手段がある。上記手段によれば電気炉酸化スラグの添加量を余り増やすことなく電磁波の漏洩を効率良く阻止することが出来る。
【0007】
〔効果〕
本発明では、従来は産業廃棄物とされていた電気炉酸化スラグを屋根材に添加するから、電磁波を照射して該電気炉酸化スラグに吸収させ、熱エネルギーに変換して発熱させ、融雪を行なうことが出来る屋根材が極めて安価に提供出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1は実施例の屋根材を示すものである。
図2〜図4は電気炉酸化スラグの一製造実施例に関するものである。
図5〜図11は本発明の屋根の一実施例を示すものである。
図14,15は他の実施例を示すものである。
図16は他の実施例として電磁波遮蔽層を設けた屋根材を示すものである。
【図1】粘土を主材料とする屋根材の一実施例を示す斜視図である。
【図2】電気炉スラグ粒状物製造装置の説明図。
【図3】電気炉スラグ粒状物の粒度分布を示すグラフ。
【図4】電気溶解炉説明図。
【図5】断熱材および野地面材の部分斜視図。
【図6】屋根パネルの横断面図。
【図7】屋根パネルを屋根骨格上に被着した状態の部分横断面図。
【図8】屋根パネルを屋根骨格上に被着した状態の部分縦断面図。
【図9】棟部の横断面図(水切り板取付け部分)。
【図10】棟部の横断面図(棟換気部材取付け部分)。
【図11】棟換気部材の正面図。
【図12】屋根躯体の平面図。
【図13】アンテナ線の説明図。
【図14】屋根パネルを屋根骨格上に被着した状態の部分横断面図。
【図15】野地面材を取り除いた屋根平面図。
【図16】粘土を主材料とする屋根材の一実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を以下に詳細に説明する。
〔電気炉酸化スラグ〕
本発明で使用する電気炉酸化スラグは、通常CaO:10〜26質量%、SiO2:8〜22質量%、MnO:4〜7質量%、MgO:2〜8質量%、FeO:13〜32質量%、Fe2O3:9〜45質量%、Al2O3:4〜16質量%、Cr2O3:1〜4質量%程度含み、更に微量成分としてBaO:0.05〜0.20質量%、TiO2:0.25〜0.70質量%、P2O5:0.15〜0.50質量%、S:0.005〜0.085質量%程度含み、安定な鉱物組成を得るためのFeを20〜45質量%程度含むものであり、天然骨材成分に含まれる粘土、有機不純物、塩分を全く含まず、不安定な遊離石灰、遊離マグネシアあるいは鉱物も殆ど含まない。該電気炉酸化スラグは粒状物または破砕物として提供される。
【0010】
〔電気炉酸化スラグ粒化法〕
上記電気炉酸化スラグを粒化して粒状物を製造するには、該電気炉酸化スラグの溶融物を高速回転する羽根付きドラムに注入し、該溶融物を該羽根付きドラムによって破砕粒状化し、粒状化した該溶融物を水ミスト雰囲気中で急冷処理する方法が採られる。該羽根付きドラムは複数個配置して複数段の破砕粒状化を行なってもよい。
このようにして得られる電気炉酸化スラグの粒状物は、再酸化が促進されるので、Fe2O3系の鉱物を多く含み、かつ急冷により、極微細な粒状物になるため、電磁波加熱性が非常に良好なものとなる。また通常5mm以下の粒径を有し、粒径2.5mm以下のものは略球状であり、比重は3.3〜4.1の範囲にあり、表面にはひび割れ等の欠陥はなく、微細な凹凸を有し、中空構造のものからなるか、または中空構造のものを含んでいる。
【0011】
〔電気炉酸化スラグ破砕法〕
上記電気炉酸化スラグ破砕物を製造するには、上記電気炉酸化スラグを溶融状態で耐熱容器中に所定の厚みに流し出し、上から水をかけることによって急冷改質処理が施される。この場合、耐熱容器中のスラグ溶融物の厚さが小さすぎると、水をかける前に自然冷却(徐冷)によって硬化し易くなり、所望の硬度が得られなくなるおそれがあり、また厚さが大きくなり過ぎると、水をかけた場合に水が急激に水蒸気となり、水蒸気爆発の危険がある。望ましいスラグ溶融物の厚さは80mm〜120mmである。
【0012】
水をかける場合には耐熱容器中のスラグ溶融物の表面に水が溜まらないようにすることが望ましく、水をかける量が多過ぎてスラグ溶融物の表面に水が溜まって水の蒸発潜熱による急冷効果が期待出来なくなる。
上記水をかける量は、スラグ溶融物1トン当たり毎秒200〜400リットル程度が望ましい。
上記急冷によってスラグ溶融物は急速に硬化するが、この際自己破砕によって容器中のスラグ溶融物の厚さ程度の径を有するスラグ原塊が得られる。
【0013】
該スラグ原塊は粗砕機で粗砕され、更に細砕機で細砕される。上記粉砕によって、スラグ塊はスラグ成分のマトリクスと鉱物相との境界で破断し、表面に微細な凹凸が形成される。所望なれば上記破砕物は粗篩機等によって粗分級され、更に細砕機等によって細分級して5〜25mm望ましくは5〜20mmの粗骨材、粒径5〜13mm望ましくは5〜10mmの粗骨材、および5mm以下の細骨材に分ける。
【0014】
上記粗砕および細砕はスラグ原塊が水で濡れたままで行ってもよいし、またスラグ原塊を乾燥して粗砕以後の工程を行ってもよいし、あるいはスラグ原塊を粗砕した後に乾燥して細砕以後の工程を行ってもよい。また上記分級工程において、篩を通過しない残分は破砕工程に戻されることが望ましい。
このようにして得られる破砕物は徐冷スラグに較べ、再酸化が促進されるので、Fe2O3系の鉱物を多く含み、かつ急冷により、微細な粒状物になるため、電磁波加熱性が非常に良好なものとなり、その比重は水砕品と同様3.3〜4.1の範囲にある。
【0015】
〔改質電気炉酸化スラグ〕
本発明において使用される改質電気炉酸化スラグには電磁波加熱性を向上させるための添加物を添加する。
上記電磁波加熱性を向上させるための添加物としては、Fe、Ba、Co、Ni、Cr、Cu、Mn、Sr、Zn等の金属あるいはこれら金属を含む合金あるいはこれらの金属の酸化物、水酸化物、塩化物、硫酸塩等の加熱により酸化物を与える化合物である。望ましい添加物としては鉄スクラップ、スケール、BaO屑、硫酸バリウムを含む重晶石等がある。
上記添加物は前記粒化法あるいは破砕法において、電気炉酸化スラグ溶融物に添加されるかあるいは電気炉酸化スラグに混合されて共に溶融される。上記溶融は通常電気溶解炉で行われるが、この時溶融物に空気または酸素を吹込み強制酸化処理を施す。上記強制酸化処理は特にFeO比率が高い破砕法によるスラグに対して有効であり、上記強制酸化処理によってFe2O3比率を高めて電磁波加熱性を向上せしめることが出来る。
該改質電気炉酸化スラグも粒状物または破砕物として提供される。
【0016】
〔屋根材〕
本発明における屋根材は、粘土を主材料としたものである。
上記粘土を主材料とした屋根材にあっては、石器土粘土、水ひ粘土、陶石質粘土、陶石等の粘土を普通3種類以上配合し、電気炉酸化スラグを水と混練して混練物とし、該混練物を真空押出機によって荒地を押出し、該荒地を所定形状にプレス成形し、成形品は乾燥後焼成する。所望なれば成形品にはフリット釉や長石質釉を施釉してから焼成する。焼成温度は通常1000℃〜1100℃である。焼成温度が1100℃を超えると、屋根材に含有されている電気炉酸化スラグが溶融発泡して屋根材としての外観、強度等を劣化させる。
更に本発明の屋根材には、木粉、木毛、木片、木質繊維、木質バルプ等の木質補強材、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ビスコース繊維、アセテート繊維、塩化ビニル繊維、塩化ビニリデン繊維、ビニロン繊維等の有機合成繊維補強材、アスベスト繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、ウィスカー繊維等の無機質補強材を添加することが望ましい。
【0017】
本発明の屋根材20を図1に示す。
更に本実施例では、電磁波の漏洩を防止するために図16に示すように屋根材20の上面に金網202を配し、金網202により構成される電磁波遮蔽層201を設けても良い。前記金網202は、孔眼サイズ5mm角以下で線直径0.2mm以上のステンレス・スチール製である。
上記電磁波遮蔽層201としては、例えば金属箔等としても良い。このように電磁波遮蔽層201,201として、孔眼サイズ5mm角以下で線直径0.2mm以上のステンレス・スチール製金網を使用した場合、電磁波遮蔽層201を使用してない屋根材20に比して電磁波が約60db低下する。
電磁波遮蔽層201を有する屋根材の製造方法としては、例えば金網202を屋根材20の上面に接着剤を用いて配設する。
【0018】
〔実施例1〕(電気炉スラグ粒状物の製造)
図2に本発明の電気炉スラグ粒状物(以下スラグ粒状物と略す8を製造する装置を示す。
即ち1500℃前後の電気炉酸化スラグ溶融物1は電気溶解炉から取鍋2に移され、該取鍋2からシューター3に移し、該シューター3から高速回転する羽根付きドラム4,5に注入する。該製鋼スラグ溶融物1は該羽根付きドラム4,5によって細破砕されて粒状化し、該電気炉酸化スラグ溶融物の粒化物1Aは急冷チャンバー6内にスプレー装置7からスプレーされる水ミストによって急冷される。そしてこのようにして得られたスラグ粒状物8は備蓄容器9内に備蓄される。
該スラグ粒状物8は略球状の中空体であり、表面にはひび割れ等の欠陥はなく、微細な凹凸が有り、高硬度(モース硬さでマトリックスが6程度、鉱物相が8程度であった。)を有し耐摩耗性に優れており、真比重は3.84、絶乾比重は3.52、耐火度は1100℃で、電磁波発熱性、透磁性、誘電性、耐酸性、耐アルカリ性等にも優れている。
該スラグ粒状物8の粒度分布を図3に示す。
【0019】
〔実施例2〕(電気炉スラグ破砕物の製造)
実施例1において電気溶解炉から取鍋2に移されたスラグの溶融物に鉄粉および酸化カルシウムと酸化ケイ素とを後添加して次の組成に調節する。
CaO 24.92重量%
SiO2 15.24重量%
Al2O3 6.72重量%
MnO 5.66重量%
MgO 4.25重量%
Cr2O3 1.97重量%
TiO2 0.42重量%
BaO 0.07重量%
総Fe 40.75重量%
CaO/SiO2=1.64
上記スラグ溶融物は約1350℃に加熱されているが、取鍋2から耐熱容器(皿型鋼鉄製)に約100mmの厚さに流し出され、直ちにスラグ溶融物1トン当たり毎秒300リットル、スプレーにより散水する。
【0020】
このようにして約100mm径のスラグ原塊が得られ、該スラグ原塊のモース硬さはマトリクスで6、鉱物相で8であった。該スラグ原塊は粗砕機で粗砕され、乾燥機で乾燥後細砕機で細砕される。細砕されたスラグ原塊は次いで粗篩機で粗分級され、更に細篩機で細分級されて、5〜20mm粒径の粗骨材または5〜13mm粒径の粗骨材、5mm以下の細骨材に分けられる。
【0021】
〔実施例3〕(改質電気炉スラグ破砕物の製造)
4.5トンの電気炉酸化スラグ1を図4に示す電気溶解炉Dに投入し、更に鉄スクラップとして1.5トンの銑ダライと125kgの重晶石を加えてランス管Rから酸素を吹精しつゝ加熱溶融し、得られた溶融物1Aを図2に示す取鍋2に移し、以後実施例2と同様にして改質電気炉酸化スラグ破砕物を得る。
上記改質電気炉酸化スラグ破砕物の化学組成の一例を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
〔実施例4〕
本発明の融雪式屋根構造を図5〜図11に示す一実施例によって以下に説明する。屋根パネル21は野地面材22と、該野地面材22の下面に接着剤によって接着されている断熱性板材23とからなる。該断熱性板材23は複数枚の断熱材23Aと、隣接する一対の該断熱材23A間を連結する細長の補強材23Bとからなり、該断熱材23A相互間には垂木嵌合溝25が形成され、該補強材23Bは隣接する一対の該断熱材23A相互に上側から差渡して貼着され、該断熱性板材23は該補強材23Bを介して該野地面材22に接着され、かくして該野地面材22と該断熱性板材23の断熱材23Aとの間には、該補強材23Bの厚み分の通気路24該形成されている。即ち該屋根材23Bは、該野地面材22と該断熱材23Aとの間のスペーサーとしても機能している。
上記断熱材23Aは、ポリスチレン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、半硬質ポリウレタン発泡体、フェノール樹脂発泡体、メラミン樹脂発泡体等のプラスチック発泡体や、特に半硬質発泡体やフェノール樹脂発泡体の上下両面にプラスチックフィルムが貼着されている複合発泡体、更にポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維等の合成繊維やガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、ロックウール等の無機繊維を合成樹脂によって結着した繊維板等の板状多孔質体からなる。
また上記補強材23Bは、木材、ハードボード、パーチクルボード、合板、上記繊維板の硬質なもの等の高強度材料からなる。
そして該屋根パネル21の両端においては、該断熱性板材23の補強材23Bと野地面材22とを共に断熱材23Aから延出せしめ、該延出部分23Cの下側と両端の垂木嵌合溝25Aとする。上記両端の嵌合溝25Aの巾はその他の嵌合溝25の巾の1/2に設定する。
【0024】
図7に示すように該屋根パネル21は屋根骨格の垂木26上に被着され、該垂木26を該屋根パネル21の断熱性板材23の垂木嵌合溝25,25Aに嵌合する。この状態で該断熱性板材23の補強材23Bが断熱材23Aを補強する。補強効果を高めるために該補強材23Bの厚みは20mm以上とすることが望ましい。
【0025】
図8に示すように該垂木26は下側において軒桁27A、母屋27B、棟木27Cによって支持されている。そして該屋根パネル21の横方向の相互接続部においては、図7に示すように該断熱性板材23の断熱材23Aと垂木26との間にシール材28を介在させて気密性を確保している。
【0026】
更に軒先部にあっては該屋根パネル21の通気路24軒先側端は外気に開放されており、また該断熱性板材23の断熱材23Aの下面は壁断熱材30の上端と当接しており、該屋根パネル21の断熱性板材23の断熱材23Aの下面と該壁断熱材30の上端との間に形成されている隙間には軟質ポリウレタン発泡体、軟質ポリ塩化ビニル発泡体、合成ゴムスポンジ等の軟質プラスチック発泡体や軟質繊維シートからなる断熱性シール材29を充填し、屋根の断熱性板材23と壁断熱材30との接合部において、断熱構造の連続性が断たれることを防止している。更に棟部にあっても左右の屋根パネル21,21の接合部の隙間にも、同様な断熱性シール材30が充填されて断熱構造の連続性が断たれることを防止しているが、該断熱性シール材30は該屋根パネル21の通気路24を閉塞しないように該屋根パネル21の断熱性板材23の断熱材23A間に充填され、棟に沿って左右の屋根パネル21,21間に形成される横通気路31に該屋根パネル21,21の各通気路24,24の棟側端が開放されるように設定されている。
【0027】
図9に示すように、該屋根パネル21の野地面材22の上面には、屋根材20が葺設される。そして棟部にあっては笠木33,33を介して水切り板34が被覆されている。そして棟部所定個所には図10および図11に示すような棟換気部材36が被着されており、屋根37の該横通気路31が該棟換気部材36を介して外気に開放されるように設定されている。該棟換気部材36はポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の硬質なプラスチックを材料とし、笠形水切り板36Aと、該水切り板36Aの下面両側に接着される通気性ブロック36Bとからなり、該通気性ブロック36Bには例えばハニカム状に多数の連通孔が設けられている。
【0028】
上記屋根37にあっては、軒先側の換気は屋根パネル21の通気路24の軒先端が直接外気に開放していることによって行なわれ、棟側換気は屋根パネル21の通気路24が横通気路31に開放され、該横通気路31が該棟換気部材36を介して外気に開放されることによって行なわれる。
【0029】
上記構造の屋根37において、図12に示すように軒桁27A,母屋27B,27B、棟木27Cの下側には吊環38を介してアンテナ線39が張設されている。図13に示すように、該アンテナ線39にあっては、導電線39aの外周面に電気絶縁層39bを介して金属メッシュからなる電磁波遮蔽層39cが被覆され、更に該電磁波遮蔽層39cの外周に電磁波吸収磁性層39dが被覆だれており、該電磁波遮蔽層39cと該電磁波吸収磁性層39dとは電磁波射出角度およぶ電磁波の周波数に対応した長さと巾とで切り欠かれている。なお図中39e,39fはケースである。
【0030】
上記アンテナ線39は屋根37の棟より左右に別かれて二組張設されており、電磁波出力装置40に接続されている。該電磁波出力装置40は電磁波発振装置41と、制御装置42とからなり、該制御装置42にはスイッチ43と熱電対等に屋根温度センサー44とが付設されている。
【0031】
上記電磁波発振装置41は上記スイッチ43をONするか、あるいは上記屋根温度センサー44によって屋根の温度が設定温度以下になった場合にはその信号に基づいて作動し、上記アンテナ39からは、1GHz〜10GHzの高周波数帯で、出力5〜100W程度の電磁波が出力され、上記屋根材20に含有されている電気炉酸化スラグが電磁波を熱エネルギーに変換し、屋根材20が加熱される。通常該屋根材20は30〜50℃に加熱され、例えば50℃になった時、上記屋根温度センサー44によって上記電磁波発振装置45の作動が停止するように設定されている。
このようにして該屋根材20は電磁波によって加熱され、該屋根材20に積った雪が融かされ、あるいは着雪が防止される。
上記電磁波発振装置45は例えば天井材上に設置されるが、室内に電磁波漏洩することを防止するために、例えば天井材の上面および/または下面に電磁波遮蔽層あるいは電磁波反射層を設けておくことが望ましい。
図14および図15には他の実施例が示されている。本実施例にあっては、アンテナ線39は屋根パネル21の通気路24内に配設される。該アンテナ線39は該通気路24内にあって九十九(つづら)折り状とされ、補強材23Bから差出されているガイドリング46によってガイドされている。
【0032】
〔発熱試験〕
屋根材
せっ器粘土に20質量%の改質電化炉酸化スラグ(実施例3)を添加し、水を加えて混練した荒地を図1bに示す形状に成形し、乾燥した後表面にフリット釉を施釉し、1100℃で焼成して厚み10mmの屋根材を製造した。
【0033】
上記屋根材の500mmの下側に図13に示すアンテナ線を配置して、2.45GHz900〜1000Wの高周波を照射し、発熱状態を調べた。結果を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
表2を参照すると、高周波照射後1分以内に上記屋根材は10℃以上の融雪温度に達していることが認められた。
〔スラグ含有量と発熱状態〕
前記〔発熱試験〕において作成した屋根材と同様にして、スラグ含有量を15質量%にした屋根材試料を屋根材B1、スラグ含有量を30質量%にした屋根材試料を屋根材B2、スラグ含有量を10質量%にした屋根材試料を屋根材B3、スラグ含有量を35質量%にした屋根材試料を屋根材B4として作成した(表3を参照)。
【0036】
【表3】
【0037】
上記屋根材B3、B1、B2、B4について前記〔発熱試験〕と同様にして発熱状態を調べた。その結果を表4に示す。
【0038】
【表4】
【0039】
表3を参照すると、スラグ含有量15質量%、30質量%のB1,B2は高周波照射後1分以内に15℃以上の融雪温度に達していることが認められた。しかし、スラグ含有量10質量%のB3は照射時間3分でようやく10℃以上の融雪温度に達し、スラグ含有量35質量%のB4は、スラグ含有量30質量%のB2に比較して発熱状況に余り変わりがないことが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明にあっては、屋根の融雪構造が極めて安価に提供される。
【符号の説明】
【0041】
8 電気炉酸化スラグ
20 屋根材
22 野地面材
39 アンテナ線
201 電磁波遮蔽層
202 金網
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気炉酸化スラグを含有し、粘土を主体とした材料からなることを特徴とする屋根材。
【請求項2】
上記屋根材には補強材が添加されている請求項1に記載の屋根材。
【請求項3】
上記屋根材の上面には電磁波遮蔽層が設けられている請求項1または請求項2に記載の屋根材。
【請求項4】
上記電気炉酸化スラグは、電気炉酸化スラグ溶融物に電磁波加熱性を向上させるための添加物を添加した上で空気または酸素を吹き込んで強制酸化処理を施し、その後急冷固化することによって得られる改質電気炉酸化スラグである請求項1から請求項3の何れか1項に記載の屋根材。
【請求項5】
上記屋根材には上記電気炉酸化スラグが15〜30質量%の範囲で含有されている請求項1から請求項4の何れか1項に記載の屋根材。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の屋根材を野地面材上に葺設し、上記野地面材の下側に配置されている電磁波照射手段とからなることを特徴する融雪式屋根構造。
【請求項7】
上記電磁波照射手段は電磁波出力装置と、上記電磁波出力装置に接続されたアンテナ線とからなり、上記アンテナ線が上記野地面材の下側に配置されている請求項6に記載の融雪式屋根構造。
【請求項1】
電気炉酸化スラグを含有し、粘土を主体とした材料からなることを特徴とする屋根材。
【請求項2】
上記屋根材には補強材が添加されている請求項1に記載の屋根材。
【請求項3】
上記屋根材の上面には電磁波遮蔽層が設けられている請求項1または請求項2に記載の屋根材。
【請求項4】
上記電気炉酸化スラグは、電気炉酸化スラグ溶融物に電磁波加熱性を向上させるための添加物を添加した上で空気または酸素を吹き込んで強制酸化処理を施し、その後急冷固化することによって得られる改質電気炉酸化スラグである請求項1から請求項3の何れか1項に記載の屋根材。
【請求項5】
上記屋根材には上記電気炉酸化スラグが15〜30質量%の範囲で含有されている請求項1から請求項4の何れか1項に記載の屋根材。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の屋根材を野地面材上に葺設し、上記野地面材の下側に配置されている電磁波照射手段とからなることを特徴する融雪式屋根構造。
【請求項7】
上記電磁波照射手段は電磁波出力装置と、上記電磁波出力装置に接続されたアンテナ線とからなり、上記アンテナ線が上記野地面材の下側に配置されている請求項6に記載の融雪式屋根構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−47275(P2011−47275A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271570(P2010−271570)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【分割の表示】特願2007−244124(P2007−244124)の分割
【原出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(394026079)株式会社星野産商 (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【分割の表示】特願2007−244124(P2007−244124)の分割
【原出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(394026079)株式会社星野産商 (12)
【Fターム(参考)】
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