屋根用遮断板
【課題】折板屋根への直射日光や雨を確実に遮断することができ、しかも、簡単な構造かつ折板屋根に容易に取り付けることのできる屋根用遮断板の提供。
【解決手段】屋根用遮断板3を平板状のアルミニウムとして、折板屋根2を構成するガルバリウム鋼板よりも熱放射率を高くする。折板屋根2の山部2aのハゼ部9に屋根用遮断板3の側縁部3aをカシメ固定する。屋根用遮断板3で折板屋根2を覆って、折板屋根2への直射日光や雨を遮断する。屋根用遮断板3を取り付けるための取付部材や、ねじ止め、孔加工が不要である。屋根用遮断板3が熱放射することにより、屋根用遮断板3からカシメ固定部を介して折板屋根2に伝導する熱を抑える。
【解決手段】屋根用遮断板3を平板状のアルミニウムとして、折板屋根2を構成するガルバリウム鋼板よりも熱放射率を高くする。折板屋根2の山部2aのハゼ部9に屋根用遮断板3の側縁部3aをカシメ固定する。屋根用遮断板3で折板屋根2を覆って、折板屋根2への直射日光や雨を遮断する。屋根用遮断板3を取り付けるための取付部材や、ねじ止め、孔加工が不要である。屋根用遮断板3が熱放射することにより、屋根用遮断板3からカシメ固定部を介して折板屋根2に伝導する熱を抑える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折板屋根を覆うように取り付けて、折板屋根への直射日光や雨を遮断するための金属製の屋根用遮断板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、家屋やビル、工場、倉庫などの種々の建築物のうち、特に、金属製の折板屋根を備えたものは、直射日光を受けた折板屋根が高温になることにより、その熱が室内に伝えられて室温が上昇しやすい。
【0003】
このような折板屋根から伝わる熱による室温の上昇に対して、通風を良くして屋根裏の空間を換気したり、折板屋根を断熱構造にしたりすることにより、折板屋根から室内に伝わる熱を遮断して室内温度の上昇を防ぐことが多い。また、折板屋根に日光を反射して熱吸収を低減する効果のある耐熱塗料を塗装することにより、折板屋根の温度上昇自体を抑えることもある。
【0004】
折板屋根の断熱構造としては、折板101の裏面に裏貼材102を貼り付けた一重折板構造(図10参照)、あるいは、二重の折板103、104の間に断熱材105を充填したW折板構造(図11参照)などが採用される。
【0005】
ただ、屋根裏の空間を換気する手法は、建築物の構造が複雑になる分、建築コストが高くなりやすく、しかも、換気用ファンなどのメンテナンスが必要になる。また、折板屋根を一重折板の断熱構造にする手法は、比較的に構造が簡単であるものの、その断熱性能が不十分になりやすい。また、折板屋根をW折板の断熱構造にする手法は、その断熱性能を十分に高めることができるものの、屋根構造が複雑な分、建築コストが高くなりやすく、特に、既設の屋根をW折板構造に改修する場合、屋根全体を改築することになる分、施工費用が高騰しやすい。また、耐熱塗料を塗装する手法は、折板屋根の表面積がその平面積と比較して大きい分、塗装費用が高くなりやすく、しかも、塗装直後には所定の熱吸収の低減効果が見込まれるものの、屋根表面の汚れや塗装の劣化によって、十分な熱吸収の低減効果を発揮できなくなる。
【0006】
これに対して、特許文献1は、折板屋根上に設置することにより、直射日光を遮断すると共に、折板の上の良好な空気の流れを保って、温度上昇を抑制するようにした折板屋根構造を開示している(図12参照)。特許文献1の折板屋根構造は、折板106から上向きに突出する軸部107にロッド部材108を螺合し、その上端に設けた枠部材109でルーバーアッセンブリーパネル110を支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−147918(段落番号0010、0015、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1の折板屋根構造は、直射日光を遮断できるものの、ルーバー間の隙間から浸入した雨が金属製の折板屋根を腐食損傷させるおそれがあり、しかも、その構造が複雑で部品点数が多い分、折板屋根への取り付けに手間がかかると共に、製品及び設置コストが高くなりやすい。
【0009】
本発明は、折板屋根への直射日光や雨を確実に遮断することができ、しかも、簡単な構造かつ折板屋根に容易に取り付けることのできる屋根用遮断板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る屋根用遮断板は、折板屋根を覆うように取り付けて、その折板屋根への直射日光や雨を遮断するための金属製の屋根用遮断板であり、折板屋根に側縁部をカシメ固定すると共に、折板屋根を構成する折板屋根材よりも熱放射率の高い素材から構成したものである。
【0011】
上記構成によれば、屋根用遮断板が折板屋根への直射日光や雨を遮断するので、折板屋根が高温になって室温を上昇させるのを抑えると共に、雨による折板屋根の腐食損傷を防止することができる。
【0012】
さらに、金属製の屋根用遮断板の側縁部を折板屋根にカシメ固定するので、折板屋根に取り付けるための取付部材や、ねじ止め、孔加工を不要にすることができ、屋根用遮断板の構造を簡単にすると共に、新設及び既設のいずれの折板屋根にも屋根用遮断板を容易に設置することができる。しかも、屋根用遮断板が熱放射することにより、直射日光を受けて過度の高温になるのを阻止するので、屋根用遮断板からカシメ固定部を介して折板屋根に伝導する熱を抑えることができ、折板屋根が高温になるのを防止することができる。
【0013】
また、折板屋根材として、通常用いられるガルバリウム鋼板を採用する場合、屋根用遮断板を平板状のアルミニウムから構成するのがよい。この構成によれば、日射反射率及び熱放射率の高い平板状のアルミニウムを用いるので、直射日光を反射して屋根用遮断板が吸収する熱を抑えると共に、吸収した熱を十分に放射することができ、屋根用遮断板が過度の高温になるのを阻止して、折板屋根が高温になるのをより効果的に防止することができる。
【0014】
また、折板屋根の山部に設けたハゼ部に上記の屋根用遮断板の側縁部をカシメ固定することにより、屋根用遮断板と折板屋根の谷部との間に山高さ分の空間を形成した屋根構造を提供する。
【0015】
この構成によれば、折板屋根から突出するハゼ部を利用して、折板屋根に屋根用遮断板の側縁部をカシメ固定するので、折板屋根が新設及び既設のいずれの場合であっても、専用の取付部材を設けることなく、折板屋根に屋根用遮断板を設置することができる。しかも、屋根用遮断板と折板屋根の谷部との間に山高さ分の空間を形成するので、別部材のロッドなどを用いて屋根用遮断板を折板屋根から離間させて配置することなく、折板屋根の上の良好な空気の流れを保つことができ、折板屋根の温度上昇を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のとおり、本発明によると、折板屋根に屋根用遮断板をカシメ固定するようにしているので、新設及び既設のいずれの建築物であっても、その折板屋根への直射日光や雨を簡単かつ確実に遮断することができる。さらに、屋根用遮断板をアルミニウムなどの熱放射率の高い素材から構成することにより、屋根用遮断板から折板屋根に伝導する熱を抑えて、折板屋根が高温になるのを防止することができる。
【0017】
これにより、折板屋根が高温になって室温を上昇させるのを抑えることができ、低コストで効率的に室温を下げることができる分、空調電力消費を低減させて省エネルギーや地球温暖化防止に寄与することができる。しかも、雨による折板屋根の腐食損傷を防止することができるので、折板屋根の防錆用塗装の数年に一度のメンテナンスを省略することができ、例えば2回分の塗装メンテナンスの費用で、屋根用遮断板の設置に要する費用を賄うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る屋根用遮断板を備えた屋根構造の断面図
【図2】屋根構造の投光試験を示す断面図
【図3】屋根構造の投光試験を示す平面図
【図4】投光試験による屋根構造の温度変化を示す図(試験体No.1:アルミニウム板の屋根用遮断板)
【図5】投光試験による屋根構造の温度変化を示す図(試験体No.2:ガルバリウム鋼板の屋根用遮断板)
【図6】投光試験による屋根用遮断板の温度変化を示す図(試験体No.3:ガルバリウム鋼板[シルバー])
【図7】投光試験による屋根用遮断板の温度変化を示す図(試験体No.4:ガルバリウム鋼板[グレー])
【図8】投光試験による屋根用遮断板の温度変化を示す図(試験体No.5:アルミニウム板[生地])
【図9】投光試験による屋根用遮断板の温度変化を示す図(試験体No.6:アルミニウム板[陽極酸化皮膜6μm])
【図10】従来の屋根構造の断面図
【図11】従来の別の屋根構造の断面図
【図12】従来のさらに別の屋根構造の断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る屋根用遮断板を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0020】
図1に示すように、屋根構造1は、倉庫などの屋根として用いられることの多い折板屋根2に、この折板屋根2を覆って直射日光や雨を遮断するための屋根用遮断板3を取り付けたものであり、折板屋根2の山部2aに屋根用遮断板3の側縁部3aがカシメ固定され、屋根用遮断板3と折板屋根2の谷部2bとの間に山高さ分の空間4が形成されている。
【0021】
折板屋根2は、例えばガルバリウム鋼板を逆台形状に折り曲げて形成した複数枚の折板屋根材5を並べてなり、各折板屋根材5が、屋根構造1を支持するよう所定の間隔で並設された鉄骨梁6に架け渡される。鉄骨梁6の上面には、複数の台形が連続した形状に折り曲げられた帯板状のタイトフレーム7が溶接固定され、このタイトフレーム7の谷形状に嵌めるように逆台形状の折板屋根材5が配置される。
【0022】
タイトフレーム7の山部には、折板屋根材5の側縁部5aを固定するための吊子8が上方に突出するようボルト締結されている。吊子8は、その先端がフック状に形成され、折板屋根材5の側縁部5aを折り曲げてカシメ固定するようになっており、隣接する折板屋根材5の側縁部5aを共通の吊子8にカシメ固定して噛み合わせることにより、ハゼ部9を構成している。吊子8のボルト締結部10は、折板屋根材5との干渉を回避するよう、タイトフレーム7の山部に形成された凹部11に設定される。
【0023】
屋根用遮断板3は、折板屋根材5を構成するガルバリウム鋼板などよりも熱放射率の高い例えばアルミニウム製の平板とされ、折板屋根2の谷部2aを跨ぐ程度の板幅に設定されている。この屋根用遮断板3は、側縁部3aを折り曲げることによってハゼ部9にカシメ固定され、隣接する屋根用遮断板3の側縁部3aを重ねるよう共通のハゼ部9にカシメ固定することにより、折板屋根2が屋根用遮断板3で隙間なく覆われている。
【0024】
次に、屋根構造に対して行った投光試験について説明する。まず、投光試験の試験手順について説明する。
【0025】
図2及び図3に示すように、折板屋根2及び屋根用遮断板3で構成される試験体12(NO.1〜NO.6)を屋内に設置し、その周囲及び下方を木製の囲い13で囲うと共に上方を防炎シート14で覆って、室内の対流風が試験体12に直接当たるのを阻止した。また、試験体12の下方には、段ボール15を敷くと共に、これを防炎シート16で覆って断熱した。なお、図3においては、折板屋根2の折板形状を示すよう屋根用遮断板3を除いて図示している。
【0026】
試験体NO.1〜NO.6は、いずれも長さが1.7m程度で幅が1m程度の大きさに設定され、その折板屋根2がクロムフリー表面処理のガルバリウム鋼板(厚さ:0.8mm)で構成されている。
【0027】
各試験体NO.1〜NO.6の屋根用遮断板3は、試験体NO.1が生地のままのアルミニウム板(厚さ:0.8mm)、試験体NO.2がシルバー色のポリエステル樹脂仕上塗装のガルバリウム鋼板(厚さ:0.8mm)、試験体NO.3がシルバー色のポリエステル樹脂仕上塗装のガルバリウム鋼板(厚さ:0.8mm)、試験体NO.4がグレー色のポリエステル樹脂仕上塗装のガルバリウム鋼板(厚さ:0.8mm)、試験体NO.5が生地のままのアルミニウム板(厚さ:0.8mm)、試験体NO.6が6μmの陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム板(厚さ:0.8mm)である。
【0028】
試験体NO.1、NO.2について、試験体12の上方を覆う防炎シート14の下側に各300Wの8つの投光機17を設置し、試験体12に上方から投光して、折板屋根2及び屋根用遮断板3のそれぞれの中央に設定した温度測定点18、19の温度を5分間隔で測定した。また、試験体NO.3〜NO.6について、試験体NO.1、NO.2と同様の手順で、屋根用遮断板3の温度測定点19の温度のみを測定した。
【0029】
次に、投光試験の試験結果について説明する。図4に示すように、試験体NO.1では、屋根用遮断板3及び折板屋根2が各々の最高温度と同程度の温度で平衡状態に達し、その最高温度は、屋根用遮断板3が61.6℃であったが、折板屋根2の最高温度は18.3℃に抑えられている。一方、図5に示すように、試験体NO.2では、屋根用遮断板3及び折板屋根2の温度が共に平衡状態まで達することなく、屋根用遮断板3の最高温度が93.4℃まで上昇し、折板屋根2の最高温度も44.0℃まで上昇している。
【0030】
また、図6及び図7に示すように、屋根用遮断板3がガルバリウム鋼板である試験体NO.3、NO.4では、その屋根用遮断板3の最高温度が110℃程度まで上昇し、図8及び図9に示すように、屋根用遮断板3がアルミニウム板である試験体NO.5、NO.6では、その屋根用遮断板3の最高温度が60℃程度に抑えられた。
【0031】
これにより、屋根用遮断板3を設置することによって折板屋根2の温度上昇を抑えることができ、特に、屋根用遮断板3として、熱放射率の高いアルミニウム板を用いることにより、折板屋根2の温度上昇をより低く抑えることができるということがわかる。
【0032】
上記構成によれば、特にアルミニウム製の屋根用遮断板3をハゼ部9にカシメ固定して折板屋根2に直接に取り付けるので、折板屋根2が新設及び既設のいずれであっても、屋根用遮断板3を簡単かつ低コストで設置することができる。
【0033】
これにより、日射反射率及び熱放射率の高いアルミニウム製の屋根用遮断板3で折板屋根2への直射日光を遮断して、ランニングコストを要することなく、室温の上昇を効率的に防止することができる。しかも、屋根用遮断板3が雨を遮断して折板屋根2の腐食損傷を防止するので、折板屋根2の防錆用塗装のメンテナンスを省略することができ、例えば2回の塗装費用で屋根用遮断板3の設置費用を賄うことができる。
【0034】
また、折板屋根2の山部2aに屋根用遮断板3を固定して、屋根用遮断板3と折板屋根2の谷部2bとの間に山高さ分の空間4を形成するので、この空間4が熱の伝達を抑えると共に、自然発生する気流によって空間4の内部を空気が流れることにより、温度上昇を抑制することができる。
【0035】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、屋根用遮断板は、アルミニウム製に限らず、カシメ固定のできるものであれば、あらゆる素材のものを用いることができる。また、折板屋根は、ガルバリウム鋼板で形成したものに限らず、いかなる素材のものであってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 屋根構造
2 折板屋根
2a 山部
2b 谷部
3 屋根用遮断板
3a 側縁部
4 空間
5 折板屋根材
5a 側縁部
6 鉄骨梁
7 タイトフレーム
8 吊子
9 ハゼ部
10 ボルト締結部
11 凹部
12 試験体
13 囲い
14、16 防炎シート
15 段ボール
17 投光機
18、19 温度測定点
【技術分野】
【0001】
本発明は、折板屋根を覆うように取り付けて、折板屋根への直射日光や雨を遮断するための金属製の屋根用遮断板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、家屋やビル、工場、倉庫などの種々の建築物のうち、特に、金属製の折板屋根を備えたものは、直射日光を受けた折板屋根が高温になることにより、その熱が室内に伝えられて室温が上昇しやすい。
【0003】
このような折板屋根から伝わる熱による室温の上昇に対して、通風を良くして屋根裏の空間を換気したり、折板屋根を断熱構造にしたりすることにより、折板屋根から室内に伝わる熱を遮断して室内温度の上昇を防ぐことが多い。また、折板屋根に日光を反射して熱吸収を低減する効果のある耐熱塗料を塗装することにより、折板屋根の温度上昇自体を抑えることもある。
【0004】
折板屋根の断熱構造としては、折板101の裏面に裏貼材102を貼り付けた一重折板構造(図10参照)、あるいは、二重の折板103、104の間に断熱材105を充填したW折板構造(図11参照)などが採用される。
【0005】
ただ、屋根裏の空間を換気する手法は、建築物の構造が複雑になる分、建築コストが高くなりやすく、しかも、換気用ファンなどのメンテナンスが必要になる。また、折板屋根を一重折板の断熱構造にする手法は、比較的に構造が簡単であるものの、その断熱性能が不十分になりやすい。また、折板屋根をW折板の断熱構造にする手法は、その断熱性能を十分に高めることができるものの、屋根構造が複雑な分、建築コストが高くなりやすく、特に、既設の屋根をW折板構造に改修する場合、屋根全体を改築することになる分、施工費用が高騰しやすい。また、耐熱塗料を塗装する手法は、折板屋根の表面積がその平面積と比較して大きい分、塗装費用が高くなりやすく、しかも、塗装直後には所定の熱吸収の低減効果が見込まれるものの、屋根表面の汚れや塗装の劣化によって、十分な熱吸収の低減効果を発揮できなくなる。
【0006】
これに対して、特許文献1は、折板屋根上に設置することにより、直射日光を遮断すると共に、折板の上の良好な空気の流れを保って、温度上昇を抑制するようにした折板屋根構造を開示している(図12参照)。特許文献1の折板屋根構造は、折板106から上向きに突出する軸部107にロッド部材108を螺合し、その上端に設けた枠部材109でルーバーアッセンブリーパネル110を支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−147918(段落番号0010、0015、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1の折板屋根構造は、直射日光を遮断できるものの、ルーバー間の隙間から浸入した雨が金属製の折板屋根を腐食損傷させるおそれがあり、しかも、その構造が複雑で部品点数が多い分、折板屋根への取り付けに手間がかかると共に、製品及び設置コストが高くなりやすい。
【0009】
本発明は、折板屋根への直射日光や雨を確実に遮断することができ、しかも、簡単な構造かつ折板屋根に容易に取り付けることのできる屋根用遮断板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る屋根用遮断板は、折板屋根を覆うように取り付けて、その折板屋根への直射日光や雨を遮断するための金属製の屋根用遮断板であり、折板屋根に側縁部をカシメ固定すると共に、折板屋根を構成する折板屋根材よりも熱放射率の高い素材から構成したものである。
【0011】
上記構成によれば、屋根用遮断板が折板屋根への直射日光や雨を遮断するので、折板屋根が高温になって室温を上昇させるのを抑えると共に、雨による折板屋根の腐食損傷を防止することができる。
【0012】
さらに、金属製の屋根用遮断板の側縁部を折板屋根にカシメ固定するので、折板屋根に取り付けるための取付部材や、ねじ止め、孔加工を不要にすることができ、屋根用遮断板の構造を簡単にすると共に、新設及び既設のいずれの折板屋根にも屋根用遮断板を容易に設置することができる。しかも、屋根用遮断板が熱放射することにより、直射日光を受けて過度の高温になるのを阻止するので、屋根用遮断板からカシメ固定部を介して折板屋根に伝導する熱を抑えることができ、折板屋根が高温になるのを防止することができる。
【0013】
また、折板屋根材として、通常用いられるガルバリウム鋼板を採用する場合、屋根用遮断板を平板状のアルミニウムから構成するのがよい。この構成によれば、日射反射率及び熱放射率の高い平板状のアルミニウムを用いるので、直射日光を反射して屋根用遮断板が吸収する熱を抑えると共に、吸収した熱を十分に放射することができ、屋根用遮断板が過度の高温になるのを阻止して、折板屋根が高温になるのをより効果的に防止することができる。
【0014】
また、折板屋根の山部に設けたハゼ部に上記の屋根用遮断板の側縁部をカシメ固定することにより、屋根用遮断板と折板屋根の谷部との間に山高さ分の空間を形成した屋根構造を提供する。
【0015】
この構成によれば、折板屋根から突出するハゼ部を利用して、折板屋根に屋根用遮断板の側縁部をカシメ固定するので、折板屋根が新設及び既設のいずれの場合であっても、専用の取付部材を設けることなく、折板屋根に屋根用遮断板を設置することができる。しかも、屋根用遮断板と折板屋根の谷部との間に山高さ分の空間を形成するので、別部材のロッドなどを用いて屋根用遮断板を折板屋根から離間させて配置することなく、折板屋根の上の良好な空気の流れを保つことができ、折板屋根の温度上昇を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のとおり、本発明によると、折板屋根に屋根用遮断板をカシメ固定するようにしているので、新設及び既設のいずれの建築物であっても、その折板屋根への直射日光や雨を簡単かつ確実に遮断することができる。さらに、屋根用遮断板をアルミニウムなどの熱放射率の高い素材から構成することにより、屋根用遮断板から折板屋根に伝導する熱を抑えて、折板屋根が高温になるのを防止することができる。
【0017】
これにより、折板屋根が高温になって室温を上昇させるのを抑えることができ、低コストで効率的に室温を下げることができる分、空調電力消費を低減させて省エネルギーや地球温暖化防止に寄与することができる。しかも、雨による折板屋根の腐食損傷を防止することができるので、折板屋根の防錆用塗装の数年に一度のメンテナンスを省略することができ、例えば2回分の塗装メンテナンスの費用で、屋根用遮断板の設置に要する費用を賄うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る屋根用遮断板を備えた屋根構造の断面図
【図2】屋根構造の投光試験を示す断面図
【図3】屋根構造の投光試験を示す平面図
【図4】投光試験による屋根構造の温度変化を示す図(試験体No.1:アルミニウム板の屋根用遮断板)
【図5】投光試験による屋根構造の温度変化を示す図(試験体No.2:ガルバリウム鋼板の屋根用遮断板)
【図6】投光試験による屋根用遮断板の温度変化を示す図(試験体No.3:ガルバリウム鋼板[シルバー])
【図7】投光試験による屋根用遮断板の温度変化を示す図(試験体No.4:ガルバリウム鋼板[グレー])
【図8】投光試験による屋根用遮断板の温度変化を示す図(試験体No.5:アルミニウム板[生地])
【図9】投光試験による屋根用遮断板の温度変化を示す図(試験体No.6:アルミニウム板[陽極酸化皮膜6μm])
【図10】従来の屋根構造の断面図
【図11】従来の別の屋根構造の断面図
【図12】従来のさらに別の屋根構造の断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る屋根用遮断板を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0020】
図1に示すように、屋根構造1は、倉庫などの屋根として用いられることの多い折板屋根2に、この折板屋根2を覆って直射日光や雨を遮断するための屋根用遮断板3を取り付けたものであり、折板屋根2の山部2aに屋根用遮断板3の側縁部3aがカシメ固定され、屋根用遮断板3と折板屋根2の谷部2bとの間に山高さ分の空間4が形成されている。
【0021】
折板屋根2は、例えばガルバリウム鋼板を逆台形状に折り曲げて形成した複数枚の折板屋根材5を並べてなり、各折板屋根材5が、屋根構造1を支持するよう所定の間隔で並設された鉄骨梁6に架け渡される。鉄骨梁6の上面には、複数の台形が連続した形状に折り曲げられた帯板状のタイトフレーム7が溶接固定され、このタイトフレーム7の谷形状に嵌めるように逆台形状の折板屋根材5が配置される。
【0022】
タイトフレーム7の山部には、折板屋根材5の側縁部5aを固定するための吊子8が上方に突出するようボルト締結されている。吊子8は、その先端がフック状に形成され、折板屋根材5の側縁部5aを折り曲げてカシメ固定するようになっており、隣接する折板屋根材5の側縁部5aを共通の吊子8にカシメ固定して噛み合わせることにより、ハゼ部9を構成している。吊子8のボルト締結部10は、折板屋根材5との干渉を回避するよう、タイトフレーム7の山部に形成された凹部11に設定される。
【0023】
屋根用遮断板3は、折板屋根材5を構成するガルバリウム鋼板などよりも熱放射率の高い例えばアルミニウム製の平板とされ、折板屋根2の谷部2aを跨ぐ程度の板幅に設定されている。この屋根用遮断板3は、側縁部3aを折り曲げることによってハゼ部9にカシメ固定され、隣接する屋根用遮断板3の側縁部3aを重ねるよう共通のハゼ部9にカシメ固定することにより、折板屋根2が屋根用遮断板3で隙間なく覆われている。
【0024】
次に、屋根構造に対して行った投光試験について説明する。まず、投光試験の試験手順について説明する。
【0025】
図2及び図3に示すように、折板屋根2及び屋根用遮断板3で構成される試験体12(NO.1〜NO.6)を屋内に設置し、その周囲及び下方を木製の囲い13で囲うと共に上方を防炎シート14で覆って、室内の対流風が試験体12に直接当たるのを阻止した。また、試験体12の下方には、段ボール15を敷くと共に、これを防炎シート16で覆って断熱した。なお、図3においては、折板屋根2の折板形状を示すよう屋根用遮断板3を除いて図示している。
【0026】
試験体NO.1〜NO.6は、いずれも長さが1.7m程度で幅が1m程度の大きさに設定され、その折板屋根2がクロムフリー表面処理のガルバリウム鋼板(厚さ:0.8mm)で構成されている。
【0027】
各試験体NO.1〜NO.6の屋根用遮断板3は、試験体NO.1が生地のままのアルミニウム板(厚さ:0.8mm)、試験体NO.2がシルバー色のポリエステル樹脂仕上塗装のガルバリウム鋼板(厚さ:0.8mm)、試験体NO.3がシルバー色のポリエステル樹脂仕上塗装のガルバリウム鋼板(厚さ:0.8mm)、試験体NO.4がグレー色のポリエステル樹脂仕上塗装のガルバリウム鋼板(厚さ:0.8mm)、試験体NO.5が生地のままのアルミニウム板(厚さ:0.8mm)、試験体NO.6が6μmの陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム板(厚さ:0.8mm)である。
【0028】
試験体NO.1、NO.2について、試験体12の上方を覆う防炎シート14の下側に各300Wの8つの投光機17を設置し、試験体12に上方から投光して、折板屋根2及び屋根用遮断板3のそれぞれの中央に設定した温度測定点18、19の温度を5分間隔で測定した。また、試験体NO.3〜NO.6について、試験体NO.1、NO.2と同様の手順で、屋根用遮断板3の温度測定点19の温度のみを測定した。
【0029】
次に、投光試験の試験結果について説明する。図4に示すように、試験体NO.1では、屋根用遮断板3及び折板屋根2が各々の最高温度と同程度の温度で平衡状態に達し、その最高温度は、屋根用遮断板3が61.6℃であったが、折板屋根2の最高温度は18.3℃に抑えられている。一方、図5に示すように、試験体NO.2では、屋根用遮断板3及び折板屋根2の温度が共に平衡状態まで達することなく、屋根用遮断板3の最高温度が93.4℃まで上昇し、折板屋根2の最高温度も44.0℃まで上昇している。
【0030】
また、図6及び図7に示すように、屋根用遮断板3がガルバリウム鋼板である試験体NO.3、NO.4では、その屋根用遮断板3の最高温度が110℃程度まで上昇し、図8及び図9に示すように、屋根用遮断板3がアルミニウム板である試験体NO.5、NO.6では、その屋根用遮断板3の最高温度が60℃程度に抑えられた。
【0031】
これにより、屋根用遮断板3を設置することによって折板屋根2の温度上昇を抑えることができ、特に、屋根用遮断板3として、熱放射率の高いアルミニウム板を用いることにより、折板屋根2の温度上昇をより低く抑えることができるということがわかる。
【0032】
上記構成によれば、特にアルミニウム製の屋根用遮断板3をハゼ部9にカシメ固定して折板屋根2に直接に取り付けるので、折板屋根2が新設及び既設のいずれであっても、屋根用遮断板3を簡単かつ低コストで設置することができる。
【0033】
これにより、日射反射率及び熱放射率の高いアルミニウム製の屋根用遮断板3で折板屋根2への直射日光を遮断して、ランニングコストを要することなく、室温の上昇を効率的に防止することができる。しかも、屋根用遮断板3が雨を遮断して折板屋根2の腐食損傷を防止するので、折板屋根2の防錆用塗装のメンテナンスを省略することができ、例えば2回の塗装費用で屋根用遮断板3の設置費用を賄うことができる。
【0034】
また、折板屋根2の山部2aに屋根用遮断板3を固定して、屋根用遮断板3と折板屋根2の谷部2bとの間に山高さ分の空間4を形成するので、この空間4が熱の伝達を抑えると共に、自然発生する気流によって空間4の内部を空気が流れることにより、温度上昇を抑制することができる。
【0035】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、屋根用遮断板は、アルミニウム製に限らず、カシメ固定のできるものであれば、あらゆる素材のものを用いることができる。また、折板屋根は、ガルバリウム鋼板で形成したものに限らず、いかなる素材のものであってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 屋根構造
2 折板屋根
2a 山部
2b 谷部
3 屋根用遮断板
3a 側縁部
4 空間
5 折板屋根材
5a 側縁部
6 鉄骨梁
7 タイトフレーム
8 吊子
9 ハゼ部
10 ボルト締結部
11 凹部
12 試験体
13 囲い
14、16 防炎シート
15 段ボール
17 投光機
18、19 温度測定点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折板屋根を覆うように取り付けられて前記折板屋根への直射日光や雨を遮断するための金属製の屋根用遮断板であって、前記折板屋根に側縁部がカシメ固定され、前記折板屋根を構成する折板屋根材よりも熱放射率の高い素材から構成されたことを特徴とする屋根用遮断板。
【請求項2】
前記折板屋根材がガルバリウム鋼板とされ、平板状のアルミニウムから構成されたことを特徴とする請求項1に記載の屋根用遮断板。
【請求項3】
折板屋根の山部に設けられたハゼ部に請求項1又は2に記載の屋根用遮断板の側縁部がカシメ固定され、前記屋根用遮断板と折板屋根の谷部との間に山高さ分の空間が形成されたことを特徴とする屋根構造。
【請求項1】
折板屋根を覆うように取り付けられて前記折板屋根への直射日光や雨を遮断するための金属製の屋根用遮断板であって、前記折板屋根に側縁部がカシメ固定され、前記折板屋根を構成する折板屋根材よりも熱放射率の高い素材から構成されたことを特徴とする屋根用遮断板。
【請求項2】
前記折板屋根材がガルバリウム鋼板とされ、平板状のアルミニウムから構成されたことを特徴とする請求項1に記載の屋根用遮断板。
【請求項3】
折板屋根の山部に設けられたハゼ部に請求項1又は2に記載の屋根用遮断板の側縁部がカシメ固定され、前記屋根用遮断板と折板屋根の谷部との間に山高さ分の空間が形成されたことを特徴とする屋根構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−47166(P2011−47166A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195381(P2009−195381)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(592131663)井上商事株式会社 (18)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(592131663)井上商事株式会社 (18)
【Fターム(参考)】
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