説明

屋根葺き構造

【課題】屋根支持材に設けた受け部に対する屋根材の保持力を高め、主板部の面積を広くして屋根材の敷設枚数を低減する。
【解決手段】屋根支持材20に設けた受け部21は、両側縁に上段受け部25c及び下段受け部23cがそれぞれ一対ずつ形成されている。屋根材22Bの一方の側縁のすくい側係止部27は、受け部の一方の側縁で係合し、受け部の一方の側縁の下段受け部に弾性的に係止するすくい側下段係止部30と、受け部の一方の側縁の上段受け部に弾性的に係止するすくい側上段係止部32とを備えている。屋根材22Aの他方の側縁のかぶせ側係止部28は、受け部の両側縁に係合する冠形状をなし、受け部の両側縁の一対の下段受け部に弾性的に係止する一対のかぶせ側下段係止部33,37と、受け部の両側縁の一対の上段受け部に弾性的に係止する一対のかぶせ側上段係止部34,36とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場や倉庫等の建造物に使用される金属製の折板屋根材を用いた屋根葺き構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場や倉庫等の柱や梁が少なく大きな空間を持つ建造物に、複数の金属製の折板屋根材を用いた屋根葺き構造が用いられている。
従来の屋根葺き構造として、例えば特許文献1の屋根葺き構造が知られている。
この屋根葺き構造は、図4に示すように、屋根の構造材1上に固定した受金具2と、連結ボルトを使用せずに受金具2に係合する屋根材3とで構成されている。
【0003】
受金具2は、一枚の帯板を折曲した側面視左右対称の略台形状部材であり、頂辺部4と、一対の上段受け部5と、これら上段受け部5の下部に形成した一対の下段受け部6と、これら一対の下段受け部6の下縁から垂下する脚部7とを備えている。
屋根材3は、金属板を折曲して一様な断面とした部材であり、幅方向の中央部分に形成される主板部8と、主板部8の一方の側縁に形成した冠状部9Aと、主板部8の他方の側縁に形成した冠状部9Bを有し、一方の冠状部9Aがすくい側、他方の冠状部9Bがかぶせ側とし、それら冠状部9A,9Bが受金具2上で順次重ね合わされるようになっている。
冠状部9A,9Bは、主板部8側に形成した内側係止部10A,10Bと、略水平に張り出した頂面部11A,11Bと、端部に形成した外端係止部12A,12Bとを備えている。
【0004】
そして、図4の破線で示すように、すくい側の冠状部9Aは、内側係止部10Aが受金具2の一方の下段受け部6に弾性変形しながら係合し、外端係止部12Aが受金具2の一方の上段受け部5に弾性変形しながら係合して受金具2の頂辺部4を覆って配置されている。また、かぶせ側の冠状部9Bは、外端係止部12Bが、すくい側の冠状部9Aの内側係止部10Aを介して受金具2の一方の下段受け部6に弾性変形しながら係合し、内側係止部10Bが受金具2の他方の下段受け部6に弾性変形しながら係合することで、すくい側の冠状部9Aを介して受金具2の頂辺部4を覆って配置されている。
【特許文献1】特許第3426548号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1の屋根葺き構造は、受金具2に対する屋根材3の保持力高めるため、すくい側の冠状部9A及びかぶせ側の冠状部9Bは受金具2の頂辺部4を覆う形状としており、屋根材3は、受金具2全体を覆う冠状部9A,9Bを形成するために大きな面積を必要とし、主板部8の面積が狭くなる。このため、主板部8の面積が狭い屋根材3を多数使用することで、施工コストが増大した屋根葺き構造となるおそれがある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、屋根構造材に設けた受け部に対する屋根材の保持力を高めることができるとともに、主板部の面積が広く、敷設枚数を少なくした屋根材を使用することで施工コストの低減化を図ることができる屋根葺き構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る請求項1の屋根葺き構造は、屋根支持材に設けた受け部と、金属板からなる屋根材の主板部の一方の側縁に折曲形成したすくい側係止部と、前記主板部の他方の側縁に折曲形成したかぶせ側係止部とを有し、前記受け部に、隣接配置した一対の屋根材の前記すくい側係止部及び前記かぶせ側係止部を被せて係止することで前記屋根材を葺く屋根葺き構造において、前記受け部は、屋根材の葺き方向の両側縁に上段受け部及び下段受け部がそれぞれ一対ずつ形成されており、前記すくい側係止部は、前記受け部の一方の側縁で係合し、前記受け部の一方の側縁の前記下段受け部に弾性的に係止するすくい側下段係止部と、前記受け部の一方の側縁の前記上段受け部に弾性的に係止するすくい側上段係止部とを備え、前記かぶせ側係止部は、前記受け部の両側縁に係合する冠形状をなし、前記受け部の両側縁の前記一対の下段受け部に弾性的に係止する一対のかぶせ側下段係止部と、前記受け部の両側縁の前記一対の上段受け部に弾性的に係止する一対のかぶせ側上段係止部とを備えている。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の屋根葺き構造において、前記受け部の前記一方の側縁で係合する前記かぶせ側下段係止部は、前記すくい側下段係止部を介して前記受け部の前記下段受け部に弾性的に係止しているとともに、前記受け部の前記一方の側縁で係合する前記かぶせ側上段係止部は、前記すくい側上段係止部を介して前記受け部の前記段受止部に弾性的に係止している。
【0008】
さらに、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の屋根葺き構造において、前記受け部は、略台形状の第1受け部と、この第1受け部の頂辺部に固定した第2受け部とで構成され、前記第1受け部は、前記頂辺部の両側縁から外側斜め下向きに迫り出した一対の斜辺部と、これら斜辺部の下縁を内側に折曲して形成された前記一対の下段受け部とを備え、前記第2受け部は、前記頂辺部に当接する当接板部と、この当接板部の両側縁から互いに上方に延在する一対の係合板部を備えた横断面略コ字形状の部材であり、前記一対の係合板部の端部を外側に折曲することで前記一対の上段受け部が形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る屋根葺き構造によると、従来構造のような屋根材の両側縁に冠形状の係止部を形成せず、屋根材の一方の側縁には、構造材の受け部の一方の側縁に係合するすくい側係止部を形成することで主板部の面積が広くなる。このため、主板部の面積が広い屋根材を使用することで屋根材の敷設枚数が少なくなり、施工コストの低減化を図ることができる。
また、屋根材の他方の縁部に形成したかぶせ側係止部は、受け部の両側縁に係合する冠形状をなし、受け部の両側縁の一対の下段受け部に弾性的に係止する一対のかぶせ側下段係止部と、受け部の両側縁の一対の上段受け部に弾性的に係止する一対のかぶせ側上段係止部とを備えているので、受け部に対する屋根材の保持力を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明に係る屋根葺き構造について図面を参照しながら説明する。
本実施形態の屋根葺き構造は、図1に示すように、梁、母屋等の屋根構造材上に固定されて桁行方向に延在している屋根支持材20に所定間隔をあけて形成した受け部21と、所定の受け部21に側縁を被せることで係止される複数枚の屋根材22A,22Bとを備えた構造である。
受け部21には、屋根材22Bのすくい側係止部27が係合し、その上に、屋根材22Aのかぶせ側係止部28が係合することで、受け部21を介して屋根材22A,22Bの側縁どうしが接続されている。
【0011】
以下に、本実施形態の屋根葺き構造を構成する受け部21及び屋根材22A,22Bについて詳細に説明する。
図2に示すように、受け部21は、略台形状に形成された第1受け部23と、この第1受け部23の頂辺部23aに固定ビス24を介して固定された第2受け部25とで構成されている。
第1受け部23は、頂辺部23aの両側縁から外側斜め下向きに迫り出した一対の斜辺部23bと、これら一対の斜辺部23bの下縁を内側に折曲して形成された一対の下段受け部23cとを備えている。
【0012】
第2受け部25は、第1受け部23の頂辺部23aに当接する当接板部25aと、この当接板部25aの両側縁から互いに上方に延在する一対の係合板部25bを備えた横断面略コ字形状の部材である。そして、一対の係合板部25bの上端部には、互いに離間する外側に折曲することで一対の上段受け部25cが形成されている。
一方、屋根材22A,22Bは、図3に示すように、長方形状の金属板を折曲形成した部材であり、主板部26の長手方向の一方の側縁に形成したすくい側係止部27と、主板部26の長手方向の他方の側縁に形成したかぶせ側係止部28と、主板部26の途中に形成したかぶせ側係止部28及び凸条29とを備えている。
【0013】
すなわち、図3に示すように、すくい側係止部27は、主板部26の一方側から外方斜め上方に立ち上がり、主板部26に対して外方に突出しているすくい側下段係止部30と、このすくい側下段係止部30から外方斜め上方に立ち上がり、主板部26に対して外方に屈曲した受け部当接部31と、この受け部当接部31から外方斜め上方に立ち上がり、先端部が主板部26側に折り返された略V字形状のすくい側上段係止部32とで構成されている。
【0014】
また、図3に示すように、かぶせ側係止部28は冠形状をなし、主板部26の他方側から外方斜め上方に立ち上がり、主板部26に対して外方に突出しているかぶせ側下段係止部33と、このかぶせ側下段係止部33から外方斜め上方に立ち上がり、主板部26に対して外方に突出しているかぶせ側上段係止部34と、このかぶせ側上段係止部34から主板部26に対して略平行となるように外方に延在している天板部35と、この天板部35から主板部26に対して外方斜め下方に下がり、主板部26に対して内方に突出しているかぶせ側上段係止部36と、このかぶせ側上段係止部36から主板部26に対して外方斜め下方に下がり、主板部26に対して内方に突出しているかぶせ側下段係止部37と、このかぶせ側下段係止部37から主板部26に対して外方斜め下方に下がり、先端部が主板部26側に折り返された略V字形状の主板係止部38とで構成されている。
【0015】
また、主板部26の途中に形成したかぶせ側係止部28は、図3に示すように、主板部26の長手方向の他方の側縁に形成したかぶせ側係止部28と、主板係止部38を除いた構造と同一形状に形成されている。
そして、図2に示すように、屋根材22Bの主板部26の長手方向の一方の側縁に形成したすくい側係止部27は、すくい側下段係止部30が受け部21の一方の側縁の下段受け部23cに弾性的に係止し、すくい側上段係止部32が受け部21の一方の側縁の上段受け部25cに弾性的に係止し、受け部当接部31が受け部21の頂辺部23aに接触可能に延在した状態で、受け部21の一方の側縁に係合されている。
【0016】
また、屋根材22Aの主板部26の長手方向の他方の側縁に形成されているかぶせ側係止部28は、図2に示すように、受け部21の一方の側縁に屋根材22Bのすくい側係止部27が係合された状態で、かぶせ側下段係止部33が受け部21の他方の側縁の下段受け部23cに弾性的に係止し、かぶせ側上段係止部34が受け部21の他方の側縁の上段受け部25cに弾性的に係止し、かぶせ側上段係止部36が、すくい側上段係止部32を介して受け部21の一方の側縁の上段受け部25cに弾性的に係止し、かぶせ側下段係止部37が、すくい側下段係止部30を介して受け部21の一方の側縁の下段受け部23cに弾性的に係止した状態で、受け部21の両側縁に係合して受け部21全体を覆って係合されている。
【0017】
また、屋根材22Aの主板部26の途中に形成されているかぶせ側係止部28は、図1に示すように、かぶせ側下段係止部33が受け部21の他方の側縁の下段受け部23cに弾性的に係止し、かぶせ側上段係止部34が受け部21の他方の側縁の上段受け部25cに弾性的に係止し、かぶせ側上段係止部36が受け部21の一方の側縁の上段受け部25cに弾性的に係止し、かぶせ側下段係止部37が受け部21の一方の側縁の下段受け部23cに弾性的に係止した状態で、受け部21の両側縁に係合して受け部21全体を覆って係合されている。
【0018】
次に、上記構成の屋根葺き構造の作用効果について説明する。
本実施形態の屋根葺き構造を構成する屋根材22A(22B)は、長手方向の一方の側縁に、受け部21の一方の側縁のみに係合するすくい側係止部27が形成され、長手方向の他方の側縁に、受け部21の両側縁に係合して受け部21全体を覆って係合するかぶせ側係止部28が形成されているので、受金具全体を覆うために両側縁に冠状部を形成した従来の屋根材と比較して、すくい側係止部27及びかぶせ側係止部28を形成するための面積を小さくし、主板部26の面積を広くとることができる。このため、主板部26の面積が広い屋根材22A(22B)を使用することで、屋根材22A(22B)の敷設枚数を少なくして施工コストの低減化を図ることができる。
【0019】
また、本実施形態の屋根材22A(22B)のかぶせ側係止部28は、一対のかぶせ側下段係止部33,37が,受け部21の両側縁の下段受け部23c,23cに弾性的に係止し、一対のかぶせ側上段係止部34,36が受け部21の両側縁の上段受け部25c,25cに弾性的に係止しており、従来の屋根葺き構造と比較して、受け部21に弾性的に係止する箇所が増大しているので、屋根支持材20(受け部21)に対する屋根材22A(22B)の長手方向の他方の側縁の保持力が高まる。また、かぶせ側上段係止部36は、すくい側上段係止部32を介して受け部21の一方の側縁の上段受け部25cに弾性的に係止し、かぶせ側下段係止部37は、すくい側下段係止部30を介して受け部21の一方の側縁の下段受け部23cに弾性的に係止しているので、屋根支持材20(受け部21)に対する屋根材22A(22B)の長手方向の一方の側縁の保持力も高まる。
【0020】
したがって、暴風時等に屋根材22A(22B)を押し上げる風圧が作用しても、屋根支持材20(受け部21)に対する屋根材22A(22B)の保持力を十分に高めた屋根葺き構造を提供することができる。
また、受け部21は、略台形状に形成された第1受け部23と、この第1受け部23の頂辺部23aに固定した第2受け部25とで構成されており、屋根支持材20に複雑な形状を施さなくても一対の下段受け部23c及び一対の上段受け部25cを形成することができるので、屋根支持材20の製造コストの低減化を図ることができる。
なお、受け部21(第1受け部23及び第2受け部25)は、必ずしも左右対称の形状でなくとも前記屋根葺き構造を構成することは可能であるが、特に受け部21を左右対称の形状とすることにより、屋根材22A(22B)を受け部21に係止する際、受け部21の方向性を気にせずに効率よく作業することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る屋根葺き構造を軒棟方向から示した図である。
【図2】本発明に係る屋根葺き構造において構造材に設けた受け部に隣接配置した屋根材の端部同士が係止している状態を示す図である。
【図3】本発明に係る屋根葺き構造を構成する屋根材を示す側面図である。
【図4】従来の屋根葺き構造の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
20…屋根支持材、21…受け部、22A,22B…屋根材、23…第1受け部、23a…頂辺部、23b …斜辺部、23c…下段受け部、24…固定ビス、25…第2受け部、25a…当接板部、25b…係合板部、25c…上段受け部、26…主板部、27…すくい側係止部、28…かぶせ側係止部、29…凸条、30…すくい側下段係止部、31…受け部当接部、32…すくい側上段係止部、33,37…かぶせ側下段係止部、34,36…かぶせ側上段係止部、35…天板部、38…主板係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根支持材に設けた受け部と、金属板からなる屋根材の主板部の一方の側縁に折曲形成したすくい側係止部と、前記主板部の他方の側縁に折曲形成したかぶせ側係止部とを有し、前記受け部に、隣接配置した一対の屋根材の前記すくい側係止部及び前記かぶせ側係止部を被せて係止することで前記屋根材を葺く屋根葺き構造において、
前記受け部は、屋根材の葺き方向の両側縁に上段受け部及び下段受け部がそれぞれ一対ずつ形成されており、
前記すくい側係止部は、前記受け部の一方の側縁で係合し、前記受け部の一方の側縁の前記下段受け部に弾性的に係止するすくい側下段係止部と、前記受け部の一方の側縁の前記上段受け部に弾性的に係止するすくい側上段係止部とを備え、
前記かぶせ側係止部は、前記受け部の両側縁に係合する冠形状をなし、前記受け部の両側縁の前記一対の下段受け部に弾性的に係止する一対のかぶせ側下段係止部と、前記受け部の両側縁の前記一対の上段受け部に弾性的に係止する一対のかぶせ側上段係止部とを備えていることを特徴とする屋根葺き構造。
【請求項2】
前記受け部の前記一方の側縁で係合する前記かぶせ側下段係止部は、前記すくい側下段係止部を介して前記受け部の前記下段受け部に弾性的に係止しているとともに、前記受け部の前記一方の側縁で係合する前記かぶせ側上段係止部は、前記すくい側上段係止部を介して前記受け部の前記段受止部に弾性的に係止していることを特徴とする請求項1記載の屋根葺き構造。
【請求項3】
前記受け部は、略台形状の第1受け部と、この第1受け部の頂辺部に固定した第2受け部とで構成され、
前記第1受け部は、前記頂辺部の両側縁から外側斜め下向きに迫り出した一対の斜辺部と、これら斜辺部の下縁を内側に折曲して形成された前記一対の下段受け部とを備え、
前記第2受け部は、前記頂辺部に当接する当接板部と、この当接板部の両側縁から互いに上方に延在する一対の係合板部を備えた横断面略コ字形状の部材であり、前記一対の係合板部の端部を外側に折曲することで前記一対の上段受け部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の屋根葺き構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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