説明

展示物説明システム

【課題】専用の携帯端末ではなく、閲覧者自身が所有するスマートフォンなどの携帯端末により携帯端末の位置推定を実現することのできる展示物説明システムを提供する。
【解決手段】展示物説明システム1は、展示会場において、閲覧者が携帯しているスマートフォンに展示物のガイダンスを実行させるためのアプリケーションを起動した携帯端末100と、展示物400の近傍に設置される基地局200(無線LANアクセスポイント)と、展示物400の説明情報を予め保存して各携帯端末100に配信する展示物説明情報配信サーバ300と、を有する。ここで、携帯端末100と基地局200は無線LANを介して通信を行い、各基地局200と展示物説明情報配信サーバ300とは有線LANを介して通信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LANネットワークを利用して閲覧者が携帯する携帯端末の位置を推定し、携帯端末近傍の展示物に対する文字、画像、音声などのガイダンス情報を、当該携帯端末に伝送する展示物説明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歴史博物展や美術展などの展示会場において、閲覧者に展示物のガイダンスを行うために、音声が記録された音声ガイダンス端末などが有料で貸し出されている。また、このような音声ガイダンス端末の代わりに、無線LANネットワーク経由でデータを転送して展示物のガイダンスを行うものとして、例えば、特許文献1に示されているように閲覧者に携帯端末を携帯してもらい、それぞれの展示物の近くにRFIDタグを貼り付けておき、RFIDタグに近づくことにより展示物の情報を携帯端末に効率良く伝送するシステムが提案されている。
【0003】
また、上記RFIDタグの代わりに無線LANネットワークを利用して携帯端末の位置を推定するシステムとしては、例えば、特許文献2に示されているように、複数の電波傍受部で取得した電波強度を比較し、最も近いと判断された電波傍受部の存在エリアを電波発信端末が存在するエリアと推定するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−143028号
【特許文献2】特許第4445951号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の展示物説明システムは、専用の携帯端末が必要であり、また、特許文献1のように、きめ細かい案内を可能にするには、無線LANネットワークの他にRFIDタグを利用するなどの必要があるため、低コストといいながらも、システム導入費が高価になるという課題があった。また、無線LANネットワークを利用して携帯端末の位置を推定する場合は、携帯端末の発信する電波を傍受するための専用機器が必要となり、市販されている携帯端末は無線LAN基地局(例えば、市販の無線LANアクセスポイント)の他に、位置を推定する装置が必要になるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明に係る展示物説明システムでは、専用の携帯端末ではなく、閲覧者自身が所有するスマートフォンなどの携帯端末により携帯端末の位置推定を実現することのできる展示物説明システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような目的を達成するために、本発明に係る展示物説明システムは、展示会場で使用される携帯端末に展示物の情報を配信することにより、説明サービスを提供する展示物説明システムにおいて、展示物と紐付けされて展示物の近傍に配置される複数の基地局と、各展示物の説明情報を各携帯端末に配信する展示物説明情報配信サーバと、携帯端末と基地局とを接続する無線LANネットワークと、を有し、各携帯端末は、各基地局が送信する送受信フレーム信号を受信してその電界強度を測定する電界強度測定手段と、電界強度測定手段により所定期間内に測定した各基地局の電界強度履歴を用いて当該携帯端末の近傍の基地局を推定する近傍基地局推定手段と、近傍基地局推定手段により推定した近傍基地局に紐付けされた展示物のリストを表示する近傍展示物リスト表示手段と、近傍展示物リスト表示手段が表示した近傍展示物リストについて表示要求を受け付けることにより、当該展示物の説明情報を展示物説明情報配信サーバに要求する展示物説明情報要求手段と、展示物説明情報配信サーバから配信された情報を表示する展示物説明情報表示手段と、を有し、近傍展示物リスト表示手段は、予め決められている展示物閲覧順序と、前記近傍基地局推定手段により推定した近傍基地局と、に基づいて近傍展示物リストを表示することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る展示物説明システムにおいて、電界強度測定手段は、基地局が送信するビーコンフレーム信号を受信して電界強度を測定することを特徴とする。なお、本発明では、電界強度だけでなく、閲覧状況及び展示物閲覧順序を用いることにより近傍基地局を推定することが可能となる。
【0009】
また、本発明に係る展示物説明システムにおいて、電界強度測定手段は、携帯端末が送信したプローブリクエストフレーム信号に対する各基地局からのプローブレスポンスフレーム信号を受信して電界強度を測定することを特徴とする。プローブレスポンスフレームには、自基地局のMACアドレスが含まれることから、基地局と電界強度の紐付けが容易となる。
【0010】
また、本発明に係る展示物説明システムにおいて、近傍基地局推定手段は、所定期間内のフレーム受信回数が一定値以上であり、かつ、所定期間内に測定した電界強度の平均値が大きい基地局の方が、平均値が小さい基地局よりも近傍にあると推定することを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明に係る展示物説明システムにおいて、携帯端末は携帯電話にパーソナルコンピュータ及び携帯情報端末の機能を有するスマートフォンであり、電界強度測定手段、近傍基地局推定手段、近傍展示物リスト表示手段、展示物説明情報要求手段、展示物説明情報表示手段がアプリケーションであり、当該アプリケーションは、インターネットを介してスマートフォンにダウンロードでき、展示物説明情報要求手段と展示物説明情報表示手段とは、無線LANネットワークを介して情報伝送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の展示物説明システムを用いることにより、携帯端末は専用機ではなく、閲覧者自身が所有するスマートフォンなどの携帯端末を利用でき、携帯端末の位置推定に関しては電波傍受用の専用機器は使用せずに、携帯端末と無線LAN基地局の間で簡易な手段により電界強度測定を実施して位置推定可能とすることにより、システム開発費、システム導入費を低減することができるという効果がある。なお、スマートフォンとは、携帯電話にパーソナルコンピュータやPDA(携帯情報端末)の機能を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る展示物説明システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した携帯端末の構成図である。
【図3】図1に示した基地局の構成図である。
【図4】図1に示した展示物説明情報配信サーバの構成図である。
【図5】本実施形態に係る展示物と基地局を紐付けした基地局・展示物紐付けリストを説明する説明図である。
【図6】本実施形態に係る携帯端末の表示画面の一例である。
【図7】本実施形態に係る携帯端末の表示画面の一例である。
【図8】本実施形態に係る携帯端末に表示した展示物の一例を説明する説明図である。
【図9】本実施形態に係る携帯端末の表示画面の一例である。
【図10】図1に示した展示物説明システムにおいて、携帯端末が閲覧者に対して展示物のガイダンス処理の流れを示したフローチャート図である。
【図11】第1の実施形態に係る電界強度測定手段の通信処理の流れを説明する説明図である。
【図12】第1の実施形態に係る電界強度測定手段と近傍基地局推定手段の実行状態を説明する説明図である。
【図13】第1の実施形態に係る電界強度測定履歴を説明する説明図である。
【図14】第2の実施形態に係る電界強度測定手段の通信処理の流れを説明する説明図である。
【図15】第2の実施形態に係る電界強度測定手段においてプローブリクエストフレームを利用した処理の流れを説明する説明図である。
【図16】図15による電界強度測定履歴の一例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0015】
最初に展示物説明システムの構成について説明する。図1は、展示物説明システム1を示すブロック図である。展示物説明システム1は、歴史博物館や美術館などの展示会場で利用するものである。この展示物説明システム1は、展示会場において、閲覧者が携帯しているスマートフォンに展示物のガイダンスを実行させるためのアプリケーションを起動した携帯端末100と、展示物400の近傍に設置される基地局200(無線LANアクセスポイント)と、展示物400の説明情報を予め保存して各携帯端末100に配信する展示物説明情報配信サーバ300と、を有する。ここで、携帯端末100と基地局200は無線LANを介して通信を行い、各基地局200と展示物説明情報配信サーバ300とは有線LANを介して通信を行う。
【0016】
次にスマートフォン等である携帯端末のブロック図について説明する。図2は、携帯端末100の構成例を示すブロック図である。この図において、携帯端末100は、制御を司るCPU103と、情報を記憶する記憶装置としてプログラムメモリ104,情報保存メモリ105,作業メモリ106と、閲覧者とのインターフェースとして表示制御部108,操作制御部109,表示・操作部110,音声出力制御部107と、通信機能である無線LAN制御部112と、スマートフォン特有の広域回線制御部111と、を備えている。
【0017】
次に各部の機能について詳説する。制御を司るCPU103は、プログラムメモリ104に格納されたプログラム(アプリケーション)により携帯端末100全体の制御を行う。作業メモリ106には、プログラムを記憶すると共にプログラムが動作する際に必要となるワークエリアや変数が格納され、情報保存メモリ105には、後述する基地局・展示紐付けリスト600や、展示物説明情報配信サーバ300から受信した説明情報などが格納されている。閲覧者とのインターフェースを制御する操作制御部109は、閲覧者が表示・操作部110を操作した操作内容をCPU103に通知すると共に、表示制御部108は、CPU103からの指令により表示・操作部110に、文字や画像を表示する。ここで、表示・操作部110はタッチパネルなどにより構成され、表示内容を表示すると共に、パネル操作が可能である。音声出力制御部107は、CPU103からの指令により音声をスピーカやイヤフォンなどに出力する。通信機能である無線LAN制御部112は、CPU103からの指令により無線LAN通信の制御を行い、各基地局と無線フレームの送受信を行う。また、スマートフォン特有の広域回線制御部111は、広域回線を介して他の携帯端末や携帯電話と通話やメールの送受信及びインターネットを介してデータ通信を行うものである。
【0018】
基地局200のブロック図について説明する。図3は、基地局200の構成例を示すブロック図である。この図において、基地局200は、CPU201,プログラムメモリ202,情報保存メモリ203,作業メモリ204,無線LAN制御部205,有線LAN制御部206を備えている。CPU201はプログラムメモリ202に格納されたプログラムに従って基地局200を制御する。情報を記憶する装置として、情報保存メモリ203には、ネットワークに関する情報(例えば、MACアドレスやIPアドレス、無線周波数など)が格納され、作業メモリ204には、プログラムが動作する際に必要となるワークエリアや変数が格納される。無線LAN制御部205はCPU201からの指令により無線LAN通信の制御を行い、各携帯端末と無線フレームの送受信を行う。有線LAN制御部206はCPU201からの指令により無線LAN通信の制御を行い、各携帯端末と無線フレームの送受信を行う。有線LAN制御部206はCPU201からの指令により有線LAN通信の制御を行い、展示物説明情報配信サーバ300や他の基地局200と有線フレームの送受信を行う。
【0019】
展示物説明情報配信サーバ300のブロック図について説明する。図4は、展示物説明情報配信サーバ300の構成例を示すブロック図である。この図において、展示物説明情報配信サーバ300は、CPU301,プログラムメモリ302、作業メモリ303、有線LAN制御部304、情報保存メモリ305を備えている。CPU301はプログラムメモリ302に格納されたプログラムに従って展示物説明情報配信サーバ300を制御する。作業メモリ303には、プログラムが動作する際に必要となるワークエリアや変数が格納される。有線LAN制御部304はCPU301からの指令により有線LAN通信の制御を行い、基地局200と有線フレームの送受信を行うとともに、基地局200を介して各携帯端末100と情報の送受信を行う。
【0020】
情報保存メモリ305には、各展示物に関する説明情報である文字、画像、音声データなどが保存される。後述する携帯端末100の展示物説明情報要求手段が、展示物説明情報配信サーバ300に展示物説明情報要求を送信したならば、展示物説明情報配信サーバ300は、情報保存メモリ305に保存されている当該展示物に関する文字、画像、音声データを、当該展示物情報を要求した携帯端末100に返送する。
【0021】
次に基地局・展示物紐付けリストについて説明する。図5は、基地局と展示物を紐付けした基地局・展示物紐付けリスト600の一例である。図1に示したように、基地局200と展示物400は1ペアとなり、展示物(例えば、真田幸村他)に対する基地局のMACアドレスが紐付けられている。この情報は、携帯端末100の情報保存メモリ105に格納され、後述する近傍展示物リスト表示手段で利用される。
【0022】
次に携帯端末での展示物情報表示について図6から図9を用いて説明する。本実施形態では、スマートフォンを使用することで、各種アプリケーションを実行させることができる。閲覧者は、歴史博物館の展示会場の閲覧を開始する前に、歴史博物館のURLにアクセスして、図6に示す「説明情報をロード」を実行する。「説明情報をロード」を実行すると、携帯端末を展示物説明システムとして機能させるアプリケーションと必要な展示物情報が携帯端末にインストールされる。アプリケーションを起動すると、図7に示すような展示順序に並んだ展示物のタイトルが表示される。ここで、展示順序トップの「真田幸村」をタップすると、図8に示す画面が表示される。
【0023】
図8は、携帯端末100に展示物情報を表示している例である。携帯端末100の表示部101に、展示物の内容が、画像や文字で表示され、また、その内容をイヤフォン102で聞くこともできる(図8は真田幸村の例)。ガイダンスが終了すると、図9に示すようにガイダンスが終了した「真田幸村」がグレーアウトされ、展示順序に並んだ展示物のタイトル表示となる。以後、閲覧者は順次ガイダンスを受けることになる。
【0024】
次に携帯端末が展示物説明情報を表示するまでの処理の流れについて概説する。図10は、携帯端末100が、閲覧者に対して展示物のガイダンス処理の流れを示したフロー図である。まず、携帯端末100は、近傍の基地局200が送信する無線フレームを受信して受信電界強度を測定する(電界強度測定手段S10)。S10が終了するとS12に移る。S12において、携帯端末100は、所定期間内に測定した近傍の基地局200の受信電界強度の履歴を用いて当該携帯端末100の近傍の基地局200を推定する(近傍基地局推定手段S12)。なお、電界強度測定手段S10と近傍基地局推定手段S12は、その実施形態が2つあるので最初に第1の実施形態を示し、第2の実施形態は後述する。
【0025】
携帯端末100は、近傍基地局推定手段S12により推定した近傍基地局のMACアドレスと基地局・展示物紐付けリスト600を参照してS14に移り、当該携帯端末100に近傍にある図8の展示物のリストを表示する(近傍展示物リスト表示手段S14)。携帯端末100の表示部101に表示された近傍展示物リストに対し、携帯端末100は、近傍展示物リストの中から情報説明を受けたい展示物を閲覧者から受け付ける(展示物リスト選択手段S16)。携帯端末100は、S16において、例えば、閲覧者が近傍展示物リストの当該展示物のパネル箇所をタップ(Yes)したことを受け付けることでS18に移る。なお、終了処理となった場合(No)には処理を終了することになる。
【0026】
携帯端末100は、S16にて閲覧者が展示物を選択すると、基地局200を介して閲覧者が選択した展示物の説明情報の転送を展示物説明情報配信サーバ300に要求する(展示物説明情報要求手段S18)。次に、展示物説明情報配信サーバ300は、基地局200を介して当該携帯端末100に当該展示物の説明情報を展示物説明情報配信サーバ300に要求する(展示物説明情報要求手段S18)。次に、展示物説明情報配信サーバ300は、当該携帯端末100に当該展示物の説明情報を返送する。そして、携帯端末100は、展示物説明情報表示手段S20により展示物説明情報配信サーバ300から返信された説明情報を図8のように表示する。以上の手順により、閲覧者は展示会場内の多くの展示物の中から、携帯する携帯端末近傍の展示物を即座に選択して、当該展示物の説明を受けることが可能となる。
【0027】
ここで、図10の電界強度測定手段S10、近傍基地局推定手段S12,近傍展示物リスト表示手段S14,展示物説明情報要求手段S18、展示物説明情報表示手段S20及びこれに付随する展示物説明システムの携帯端末100用のプログラムがスマートフォンのアプリケーションである。閲覧者が当該アプリケーションをインターネットを介してダウンロードするようにしておけば、展示会場に来場する不特定多数の閲覧者に展示物説明システムを提供することができ、また、展示物説明情報要求手段と展示物説明情報表示手段が無線LANと有線LANを介して説明情報伝送するようにすれば、閲覧者に対して無料で文字、画像や音声などの豊富な情報力によるガイダンスを提供することができ、従来の展示物説明システムに比べ、専用機器が不要で、システム導入費が低コストで済むという利便性の高い展示物説明システムを提供することができる。
【0028】
第1の実施形態:電界強度測定手段S10と近傍基地局推定手段S12について第1の実施形態を詳説する。図11,図12は、電界強度測定手段S10の第1の実施形態に関する図である。図11に示すように、無線LANの基地局200は、定期的(通常100msec)毎にビーコンフレームを送信しており、これにより携帯端末100などの無線LAN端末は基地局200の所在を把握できるようになっている。(IEEE802.11規格)。ビーコンフレームは、アクセスポイントである基地局200と携帯端末100や、端末同士で接続を確立するために送受信される情報であり、本発明の実施形態では、このビーコンフレームを携帯端末100が受信して受信電界強度測定を行う。なお、ビーコンフレームにはビーコンフレームを送信した基地局200のMACアドレスが含まれているので、携帯端末100は、近傍の基地局200のMACアドレスを判別できる。
【0029】
図12は、電界強度測定手段S10と近傍基地局推定手段S12を周期的に実施していることを示す図である。携帯端末100は、Tsの周期(例えば、Ts=500msec)で、電界強度測定手段S10と近傍基地局推定手段S12を実施する。電界強度測定手段S10は、複数の近傍の基地局200のビーコンフレームを受信できるように「Tw=100msec+α」の間、ビーコンフレームを受信して電界強度を測定する。そして、近傍基地局推定手段S12は、過去N個の受信電界強度測定履歴を利用して近傍の基地局200を推定する。
【0030】
例えば、図12において、N=10とした場合は、10回目の近傍基地局推定手段の702−10においては、1回目から10回目の電界強度測定手段で測定して受信電界強度測定履歴を利用して近傍の基地局200を推定することになり、11回目の電界測定手段で測定して受信電界強度測定履歴を利用して近傍の基地局200を推定することになり、11回目の近傍の基地局推定手段の702−11においては、2回目〜11回目の電界強度測定手段で測定した電界強度測定履歴を利用して近傍の基地局200を推定することになる。
【0031】
図13は、電界強度測定履歴とそれを利用した近傍の基地局200の推定方法の一例である。この例では、N=10として過去10回の電界強度測定結果を利用して近傍の基地局を推定している。本実施形態では、まず、過去10回の電界強度測定の中で、一定回数以上、ビーコンフレームを受信できた基地局を近傍の基地局200の候補とし(例えば4回以上)、次に、その中でその受信電界強度の平均値が大きい基地局200をより近傍の基地局として推定している。
【0032】
図13の例では、受信電界強度の平均値が高いMACアドレスA「00:00:00:00:00:03」(−62.8dB)とMACアドレスB「00:00:00:00:00:02」(−78.0dB)が近傍の基地局200の候補であり、その中でも、MACアドレスA(−62.8dB)の方がより近傍であると推定している。この推定結果を用いて図7の近傍展示物リストを周期的に表示することで、閲覧者は常に最新の近傍展示物リストを見ることができ、当該近傍物リストから容易に展示物を選択して、当該展示物のガイダンスを視聴することが可能になる。つまり、展示会場内の数多い展示物の中から閲覧者が視聴したい展示物を選択する煩わしさを低減できる。
【0033】
さらに、近傍の展示物を推定する際に、予め決められている展示物閲覧順序を用いて近傍展示物リストを更新することで近傍の基地局の推定が容易となる。本実施形態では、一定値以上の受信電界強度までは電界強度優先にて実行し、受信電界強度が一定値以上の基地局がなければ、「予め決められている展示物閲覧順序」を優先している。
【0034】
例えば、MACアドレスAからGまでの閲覧順序が「A→B→C→D→E→F→G」の場合、かつ、受信電界強度の平均値が−50dBm以上の場合が近傍であるとする場合において、測定された受信電界強度が「A:−75dBm,B:−60dBm,C:−65dBm,D:−67dBm」の場合で、かつ、A,Bをすでに説明済みならば、本実施形態では、「C→B→D」の順に近傍展示物リストに表示する。この処理は、−50dBm以上の基地局はなく、Bの近くにはいるが、Cに近づくであろうと推定するためである。
【0035】
その他の例としては、測定された受信電界強度が「D:−75dBm,E:−50dBm,F:−70dBm」の場合で、かつ、A,Bをすでに説明済みならば、「E→F→D」の順に近傍展示物リストに表示する。この処理は、C,Dは通過しただろうと推定するためである。なお、閲覧が進むに従い、離れた展示物を示す展示物リストとなった場合には、上記推定処理により、携帯端末100から明らかに遠いと推定した展示物は他の展示物と異なる表示にする(他の展示物と色を変える、遠いことを示すマークを表示する)。
【0036】
第2の実施形態:図14,図15は電界強度測定手段の第2の実施形態である。前述したように、無線LANの基地局200は、定期的にビーコンフレームを送信しているが、図14に示すように、携帯端末100からのプローブリクエストフレームを送信すると、それを受信した各基地局200は、自局のMACアドレスを含むプローブレスポンスフレームを応答するようになっている(IEEE802.11規格)。プローブリクエストとは、近傍に配置されたアクセスポイントである基地局200や携帯端末100の存在を調べるために、「もしこの要求を受信できたら、応答をするように依頼する」という内容のリクエストである。これを利用して、携帯端末100は、プローブリクエストを送信してからTrの間(例えば50msec)、近傍の基地局200からのプローブレスポンスを受信することにより、近傍の基地局200のMACアドレスと受信電界強度を測定することができる。
【0037】
図15は、プローブリクエストフレームを利用した電界強度測定手段の第2の実施形態である。例えば、通常、携帯端末100は、閲覧者に対して図6のような説明情報のダウンロードを促す画面を表示しており、閲覧者が説明情報のダウンロードを操作パネルから指示したことをトリガとして、携帯端末100は一定回数プローブリクエストフレームの送信とプローブリクエストフレームの受信を繰り返して、近傍の基地局200の受信電界強度を測定する。例えば、図15のように5回繰り返す。なお、図6はアプリケーションのダウンロードを例に説明したが、これに限らず、各展示物の情報のダウンロードで実行しても良い。
【0038】
図16は、図15による電界強度測定履歴の一例である。繰り返し測定した回数分の測定結果を利用して近傍の基地局200を推定している。本実施形態では、まず、5回の測定の中で一定回数受信できたもの(例えば3回以上)を、近傍の基地局200の候補として、その中で、その平均値が大きい基地局200を、より近傍の基地局200として推定している。図8は、この推定結果を用いた近傍展示物リストの表示例である。
【0039】
第2の本実施形態では、閲覧者による説明情報ダウンロードの指示が必要であり、また、その指示から近傍展示物リスト表示手段の完了までに、250msec(50msec×5回)+αの時間を要するが、第1の実施形態と比較すると、常にビーコンフレームを受信する必要がなく、通常は無線LANによる受信動作が不要なので、携帯端末を低消費電流化できる利点がある。
【0040】
以上、上述したように、本実施形態に係る展示物説明システムを用いることにより、携帯端末は専用機ではなく、閲覧者自身が所有するスマートフォンなどの携帯端末を利用することができる。使用できるスマートフォンとしては、i−phone(登録商標)携帯電話やAndroid(登録商標)携帯電話である。また、本実施形態では、携帯端末の位置推定のために電波傍受用の専用機器は使用せずに、携帯端末と無線LAN基地局の間で簡易な手段により電界強度測定を実施して位置推定可能とすることにより、システム開発費、システム導入費を低減することができる。なお、本実施形態では、携帯端末をスマートフォンとして説明したが、これに限らず、小型のPC、タブレット型PC又はウェアラブルPCであってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 展示物説明システム、100 携帯端末、101 表示部、102 イヤフォン、104,202,302 プログラムメモリ、105,203,303 情報保存メモリ、106,204 作業メモリ、107 音声出力制御部、108 表示制御部、109 操作制御部、110 表示・操作部、111 広域回線制御部、112,205 無線LAN制御部、200 基地局、206,304 有線LAN制御部、300 展示物説明情報配信サーバ、305 情報保存メモリ、400 展示物、600 基地局・展示紐付けリスト。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
展示会場で使用される携帯端末に展示物の情報を配信することにより、説明サービスを提供する展示物説明システムにおいて、
展示物と紐付けされて展示物の近傍に配置される複数の基地局と、
各展示物の説明情報を各携帯端末に配信する展示物説明情報配信サーバと、
携帯端末と基地局とを接続する無線LANネットワークと、
を有し、
各携帯端末は、
各基地局が送信する送受信フレーム信号を受信してその電界強度を測定する電界強度測定手段と、
電界強度測定手段により所定期間内に測定した各基地局の電界強度履歴を用いて当該携帯端末の近傍の基地局を推定する近傍基地局推定手段と、
近傍基地局推定手段により推定した近傍基地局に紐付けされた展示物のリストを表示する近傍展示物リスト表示手段と、
近傍展示物リスト表示手段が表示した近傍展示物リストについて表示要求を受け付けることにより、当該展示物の説明情報を展示物説明情報配信サーバに要求する展示物説明情報要求手段と、
展示物説明情報配信サーバから配信された情報を表示する展示物説明情報表示手段と、
を有し、
近傍展示物リスト表示手段は、予め決められている展示物閲覧順序と、前記近傍基地局推定手段により推定した近傍基地局と、に基づいて近傍展示物リストを表示することを特徴とする展示物説明システム。
【請求項2】
請求項1に記載の展示物説明システムにおいて、
電界強度測定手段は、基地局が送信するビーコンフレーム信号を受信して電界強度を測定することを特徴とする展示物説明システム。
【請求項3】
請求項1に記載の展示物説明システムにおいて、
電界強度測定手段は、携帯端末が送信したプローブリクエストフレーム信号に対する各基地局からのプローブレスポンスフレーム信号を受信して電界強度を測定することを特徴とする展示物説明システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の展示物説明システムにおいて、
近傍基地局推定手段は、所定期間内のフレーム受信回数が一定値以上であり、かつ、所定期間内に測定した電界強度の平均値が大きい基地局の方が、平均値が小さい基地局よりも近傍にあると推定することを特徴とする展示物説明システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の展示物説明システムにおいて、
携帯端末は携帯電話にパーソナルコンピュータ及び携帯情報端末の機能を有するスマートフォンであり、
電界強度測定手段、近傍基地局推定手段、近傍展示物リスト表示手段、展示物説明情報要求手段、展示物説明情報表示手段がアプリケーションであり、
当該アプリケーションは、インターネットを介してスマートフォンにダウンロードでき、展示物説明情報要求手段と展示物説明情報表示手段とは、無線LANネットワークを介して情報伝送することを特徴とする展示物説明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−26765(P2013−26765A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158707(P2011−158707)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000189486)上田日本無線株式会社 (29)
【Fターム(参考)】