説明

展開型反射鏡

【課題】本発明の課題は、ケーブルネットワークに張力を付与して支持する骨組みトラス構造の支持位置変位に対する、鏡面部分の変形感度を減らすことができる展開型反射鏡を提供することにある。
【解決手段】本発明は、展開状態で三角形を一つの要素とする多面体構造を形成する折り畳み可能なメッシュ鏡面に張力を付与して展開状態とする張力付与構造よりなる展開型反射鏡であって、サーフェスケーブル61を構成する内側サーフェスケーブル61aに剛性が高く、張力の変化による長さ変化が小さいケーブルを用い、外周サーフェスケーブル61bに前記内側サーフェスケーブル61aに比べて、剛性が低く、長さの変化による張力変化が小さいケーブルを用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星搭載用の大型アンテナなど、収納状態で専有する体積が小さく、展開状態で所定の形状を形成する展開型反射鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4(a)は従来の展開型反射鏡の一例を示す斜視図であり、図4(b)は従来の展開型反射鏡の一例を示す分解斜視図である。図において、1はメッシュアンテナ、2は金属メッシュが張られたケーブルネットワーク、3はスタンドオフ、4は骨組みトラス構造である。
【0003】
すなわち、金属メッシュが張られたケーブルネットワーク2は、スタンドオフ3を介して、骨組みトラス構造4に取り付けられ、メッシュアンテナ1の表面を所定のパラボラ形状となるように多面体で近似する。骨組みトラス構造4は展開および収納が可能であり、展開状態でスタンドオフ3を所定の位置に保つことで、ケーブルネットワーク2を張力状態として、所定の形状を形成する構成となっている。
【0004】
図5は図4のケーブルネットワークの詳細を示す分解斜視図である。図において、21はサーフェスケーブル、22は金属メッシュ、23はタイケーブル、24はバックケーブルである。すなわち、金属メッシュ22はサーフェスケーブル21に取り付けられ、サーフェスケーブル21の個々の接続点はタイケーブル23により図中下方向に引き下げられ、所定の多面体形状を形成する。また、タイケーブル23に張力を与えるため、バックケーブル24がタイケーブル23に対してサーフェスケーブル21と反対の位置に設置されている。
【0005】
所定の鏡面形状を得るために、製造時にサーフェスケーブル21が形成する形状を測りながらケーブルの長さを調整して製造し、スタンドオフが所定の位置にあるときに所望の形状を得る構成をとっている。
【0006】
図6は従来の展開型反射鏡の製造時に鏡面の形状を所定の精度で形成するための手順を説明する図である。図において、31はサーフェスケーブル、32はタイケーブル、33はバックケーブル、34はサーフェスケーブルの接続点である。
【0007】
すなわち、製造時に鏡面を所定の形状とするために、鏡面を張った状態で形状を計測し、ケーブル長を調整する作業を所定の形状精度となるまで繰り返していた。例えば、製造時に形状を測定し、サーフェスケーブル31がパラボラ面の上側にずれている場合、タイケーブル32を短くすることでサーフェスケーブル31を押し下げ、所定の形状に近づける。形状はケーブルの張力状態で決まるため、あるケーブルを短くすると張力状態が変わってしまい、一度、修整しただけでは、所定の形状にならない。そこで、形状計測によりずれを測定し、個々の接続点34ごとにタイケーブル32の長さを調整することを繰り返すことで、サーフェスケーブル31が所定の位置となるように調整をして、形状を確保していた。
【0008】
このとき、調整を容易にするため、タイケーブル長の調整量と鏡面形状との対応が大きくなるように、タイケーブル32はサーフェスケーブル31に対して横切る方向に配置していた。また、サーフェスケーブル31を剛性が低く、張力変化による長さ変化が比較的大きいケーブルで構成し、バックケーブル33を剛性が高く、張力変化による長さ変化が小さいケーブルで構成することで、図6に示すように、タイケーブル32の長さを変更した場合、タイケーブル32に接続したサーフェスケーブル31の位置が主として変更される構成をとっていた。
【0009】
図7は従来の展開型反射鏡の別の例を示す説明図である。図において、41は膨張型膜面、42はメッシュ鏡面、43はサポートケーブルである。すなわち、メッシュ鏡面42は剛性が高く、張力変化による長さ変化が小さいケーブルで構成され、剛性が低く、張力変化による長さ変化が比較的大きいサポートケーブル43で支持される。サポートケーブル43は膨張型膜面41に取り付けられ、膜面41が空気の導入等により膨張した状態でメッシュ鏡面42が張力状態となる構成をとっている。この場合、メッシュ鏡面42を所定の形状に保つことを目指したものであるが、反射鏡として用いる場合、鏡面部分はパラボラ形状を取り、焦点位置に給電部が設置され電波を送受する構成として用いられる。
【0010】
従来の先行技術文献として、非特許文献1,2がある。
【非特許文献1】安藤、三次、清水、第38回宇宙科学技術連合講演会講演集、1994、pp113−114
【非特許文献2】辻畑、安藤、秋葉、古川、第42回宇宙科学技術連合講演会講演集、1998、pp233−237
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の展開型反射鏡では、骨組みトラス構造の熱変形や、展開時の形状再現性などの要因により、ケーブルネットワークに張力を付与して支持するスタンドオフの位置が変位する。その結果、ケーブルネットワークの釣り合い状態が変わり、個々のケーブル長が変化してしまい形状が変化してしまう。そのため、支持部分の変形に対する感度が高く、支持構造を高精度に形成する必要があった。特に、調整のしやすさの観点から、バックケーブルに剛性が高く、張力変化による長さ変化が小さいケーブルを用いていることから、スタンドオフ位置のわずかな変化により、張力が大きく変化し、釣り合い状態での個々のケーブルの張力が変化するためサーフェスケーブルの長さ変化が生じ、結果としてサーフェスケーブルが形成する鏡面形状を大きく変化させてしまうという問題があった。
【0012】
一方、従来の膨張型膜面を用いた展開型反射鏡では、膨張型膜面が展開収納可能なように、薄い膜から構成される。そのため、鏡面を貼る張力により容易に変形し、さらに、膜状の構造物の挙動を予測するのは非常に困難であるため、離れたところに設置される給電部との位置の偏差がどの程度になるか予測がつきにくく、反射鏡として機能させるのが困難であるという問題があった。
【0013】
特に、膨張型膜面で反射鏡を構成した場合、膜面の膨張状態での鏡面部分の位置が正確に定まらない。また、地上では重力の影響を受けるため、衛星軌道上の無重力の状態など、解析的に形状を予測することが重要であるが、膜面の形状を高精度に予測するのは、現状の解析技術では非常に困難である。特に、展開型反射鏡自身を何らかの形で支える必要があるが、膜面を支持すると、支持位置と鏡面の位置関係が予測困難であるという問題がある。
【0014】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、ケーブルネットワークに張力を付与して支持する骨組みトラス構造の支持位置変位に対する、鏡面部分の変形感度を減らすことができ、またケーブルネットワークに張力を付与するために生じる、展開型構造物に加わる曲げモーメント力を軽減できる展開型反射鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明は、複数の三角形の各頂点を接続点とするケーブルネットワークよりなるサーフェスケーブルと、前記サーフェスケーブルに取り付けられる金属メッシュと、前記サーフェスケーブルに複数のタイケーブルで接続されたケーブルネットワークよりなるバックケーブルとよりなり、展開状態で三角形を一つの要素とする多面体構造を形成する折り畳み可能なメッシュ鏡面と、前記メッシュ鏡面に張力を付与して展開状態とする張力付与構造とよりなる展開型反射鏡であって、前記サーフェスケーブルを構成する内側サーフェスケーブルに剛性が高く、張力の変化による長さ変化が小さいケーブルを用い、外周サーフェスケーブルに前記内側サーフェスケーブルに比べて、剛性が低く、長さの変化による張力変化が小さいケーブルを用いることを特徴とするものであある。
【0016】
また本発明は、前記展開型反射鏡において、張力付与構造が金属メッシュの付いたサーフェスケーブルとバックケーブルとの間に設けられることを特徴とするものである。
【0017】
また本発明は、前記展開型反射鏡において、張力付与構造として、梁から構成される展開型骨組みトラス構造を用いることを特徴とするものである。
【0018】
また本発明は、前記展開型反射鏡において、タイケーブル及びバックケーブルとして、内側サーフェスケーブルに比べて、剛性が低く、長さの変化による張力変化が小さいケーブルを用いることを特徴とするものである。
【0019】
本発明は、展開型反射鏡の鏡面部分を複数の三角形の多面体近似により構成することで、個々の三角形を構成する3辺の長さに応じて、多面体形状はケーブルネットワークを構成する内側サーフェスケーブルの長さにより一意に決定される。そこで、鏡面部分を構成するケーブルネットワークの支持部の変位に対し張力が変化しても、内側サーフェスケーブルの長さ変化量が抑えられるように、鏡面部分の内側サーフェスケーブルに剛性が高く、張力変化による長さ変化が小さい(硬い)ケーブルを用いる。また、骨組みトラス構造は展開状態でケーブルネットワークを構成するサーフェスケーブルに十分な張力を与える構成とする。このとき、ケーブルネットワークを構成する外周サーフェスケーブルを剛性が低く、長さの変化による張力変化が小さい(柔らかい)ケーブルで構成する。
【0020】
展開型反射鏡の鏡面部分を構成するケーブルネットワークは張力状態にあれば内側サーフェスケーブルの個々の三角形を構成する3辺の長さによって一意に決まる多面体形状を取る。そこで、内側サーフェスケーブルの長さ変化を抑えることで、鏡面を近似する多面体形状の変形量を抑制でき、鏡面部分の変形量を抑えることが可能となる。
【0021】
特に、鏡面を構成する外周サーフェスケーブルを剛性が低く、長さの変化による張力変化が小さいケーブルで構成することで、支持位置の変位は周囲の剛性が低く、長さの変化による張力変化が小さい外周サーフェスケーブルで吸収され、鏡面部分の張力変化が抑えられ、その結果、支持変位に対し、さらに変形感度を低減可能となる。
【0022】
骨組みトラス構造は鏡面を構成するケーブルネットワークの支持位置を正確に保つ必要はなく、張力を与えられればよく、これまでより、設計に対する要求条件が緩和される。また、骨組みトラス構造は、膜と比較し挙動の予測が容易な梁から構成されるトラス構造であり、挙動の解析的な予測が容易である。従って、鏡面としての性能を決める上で不可欠なアンテナ給電部に対する位置精度が予測でき、設計時の信頼性が向上する。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、展開型反射鏡の鏡面部分を構成するケーブルネットワークに張力を付与して支持する骨組みトラス構造の支持位置変位に対する、鏡面部分の変形感度を減らすことができ、従来より鏡面精度の高い構造物を構成可能とする効果がある。
【0024】
また、目的とされる鏡面精度に対し、ケーブルネットワークから構成される鏡面部分の支持構造、例えば骨組みトラス構造などに要求される支持位置の要求精度が従来より軽減可能となるため、骨組みトラス構造を構成する部材の変形に対する許容範囲を広げることにつながり、部材剛性を下げることができ、部材寸法を小さいものあるいは、より薄いもので構成することが可能となり、より軽量な展開型反射鏡を構成可能とする効果がある。
【0025】
さらに、骨組みトラス構造を張力付与構造として用いることで、膨張型膜面と比較し、形状変形量の予測精度が向上することから、構造物に要求される形状精度を確保した構成を設計可能とする効果がある。
【0026】
また、上部ケーブルネットワークと下部ケーブルネットワークの間に展開型構造物を配することで、ケーブルネットワークに張力を付与するために生じる、構造物に加わる曲げモーメント力を軽減でき、部材への負荷が小さくなり、より軽量な部材を使用でき軽量な構造を設計可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下図面を参照して本発明の実施の形態例を詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態例1を示す斜視図である。図において、51はメッシュ鏡面、52はスタンドオフ、53は張力付与構造の一例で展開型骨組みトラス構造である。
【0028】
すなわち、通信衛星に搭載される大型のアンテナであって、展開型骨組みトラス構造53の上にメッシュ鏡面51がスタンドオフ52を介して張られることで、鏡面形状を形成する構成をとっている。展開型骨組みトラス構造53は6本の梁が放射状に配置されて構成され、中心部を回動点にして折り畳みまたは展開可能に構成される。折り畳んだ収納状態では専有体積が小さくなり、展開状態では所定の形状を形成する。展開型骨組みトラス構造53の各先端部にはスタンドオフ52が設けられ、このスタンドオフ52の先端部がメッシュ鏡面51の外周部に接続される。展開型骨組みトラス構造53は展開状態でメッシュ鏡面51を構成するサーフェスケーブルに張力を付与し、サーフェスケーブルにより形成される複数の三角形が所定の曲面を多面体近似する。これによりサーフェスケーブルは張力状態となるが、このときサーフェスケーブルは三角形を一つの要素とする多面体構造となっていることから、長さにより形状が決定される。
【0029】
メッシュ鏡面51を所定の形状で反射鏡として用いる場合、鏡面部分はパラボラ形状を取り、焦点位置に給電部が設置され電波を送受する構成として用いられる。
【0030】
図2は本発明に係るメッシュ鏡面部分を示す分解斜視図である。図において、61はサーフェスケーブル、62は金属メッシュ、63はタイケーブル、64はバックケーブルである。前記サーフェスケーブル61は、内側サーフェスケーブル61a、外周サーフェスケーブル61b、最外周の端部サーフェスケーブル61cより構成され、前記バックケーブル64は内側バックケーブル64a、外周バックケーブル64b、最外周の端部バックケーブル64cより構成される。前記サーフェスケーブルは複数の三角形の各頂点を接続するケーブルネットワークより構成され、展開状態で三角形を一つの要素とする多面体構造になる。この構成では、内側サーフェスケーブル61aには剛性が高く、張力の変化による長さ変化が小さい(硬い)ケーブルを用いている。剛性が高く、張力の変化による長さ変化が小さい(硬い)ケーブルとしては、例えば太さ(直径)2mm程度のケブラー線など、1mの長さのものを5kgf程度の力で引っ張ったときに、伸びる量が数mm程度からそれ以下の非常に伸びのないケーブルがある。前記内側サーフェスケーブル61aは外周サーフェスケーブル61bを介して、端部サーフェスケーブル61cと接続しており、外周サーフェスケーブル61bおよび、端部サーフェスケーブル61cは内側サーフェスケーブル61aに比べて、剛性の低い、張力の変化による長さ変化が大きい(柔らかい)ケーブル、すなわち長さの変化による張力変化が小さいケーブルを用いている。剛性の低い、張力の変化による長さ変化が大きい(柔らかい)ケーブルとしては、ゴム、バネなどのように、非常に伸びる素材のケーブルがあり、所定の張力で引っ張った時に、引っ張る量を変えても力の変化が無視できるケーブルである。
【0031】
前記サーフェスケーブル61の裏面には金属メッシュ62が取り付けられる。
前記金属メッシュ62の裏面にはケーブルネットワークよりなるバックケーブル64が配置され、このバックケーブル64は、内側バックケーブル64aが外周バックケーブル64bを介して端部バックケーブル64cに接続される。前記サーフェスケーブル61の複数の三角形の各頂点の接続点とバックケーブル64とはそれぞれ対応したタイケーブル63で接続される。前記タイケーブル63および、バックケーブル64には、前記外周サーフェスケーブル61bおよび、端部サーフェスケーブル61cと同様な剛性が低く、張力の変化による長さ変化が大きい(柔らかい)ケーブル、すなわち長さの変化による張力変化が小さいケーブルを用いている。ここでは、サーフェスケーブル61を引っ張るタイケーブル63はすべて反対側でバックケーブル64に接続するが、サーフェスケーブルを直接展開型骨組みトラス構造上の適当な点から引っ張る構成も可能である。
【0032】
本実施形態例ではサーフェスケーブルに剛性が高いケーブルを用いているため、張力の変化による長さ変化は小さく、張力が付与されていれば所定の形状を形成する。そこで、展開型骨組みトラス構造はスタンドオフの位置が所定の位置からずれても、張力を付与するように展開型骨組みトラス構造が突っ張りさえすれば、サーフェスケーブルは所定の形状を形成する。さらに、本実施形態例において、最外周(端部)および外周部分のサーフェスケーブルに剛性が低く、張力の変化による長さ変化が大きい(柔らかい)ケーブルを用いているため、スタンドオフに支持される際、スタンドオフ位置が変位したときの張力変化は従来よりも小さいものとなる。展開再現性や軌道上での熱変形などの要因により、展開状態でのスタンドオフの位置を一定に保つのは非常に困難であるが、本実施形態例により支持位置の変位に対する鏡面変形が抑制されるため、従来よりも高精度なパラボラ鏡面が構成可能となる。
【0033】
図3は本発明の実施形態例2を示す斜視図である。図において、71は金属メッシュ付きケーブルネットワーク、72はバックケーブルネットワーク、73はタイケーブル、74は張力付与構造で梁から構成される展開型骨組みトラス構造である。ここで、展開型骨組みトラス構造74は金属メッシュ付きケーブルネットワーク71とバックケーブルネットワーク72の間に配置され、金属メッシュ付きケーブルネットワーク71とバックケーブルネットワーク72の間に接続されたタイケーブル73に接続されて設けられ、展開状態で、張力を付与してケーブルネットワーク71,72を押し広げる構成をとっている。
【0034】
前記金属メッシュ付きケーブルネットワーク71は、複数の三角形の各頂点を接続点とするケーブルネットワークよりなるサーフェスケーブルの裏面に金属メッシュが取り付けられて構成され、前記バックケーブルネットワーク72は前記サーフェスケーブルに複数のタイケーブル73で接続されたケーブルネットワークより構成される。前記金属メッシュ付きケーブルネットワーク71は、展開状態で三角形を一つの要素とする多面体構造を形成する折り畳み可能なメッシュ鏡面を構成する。前記サーフェスケーブルを構成する内側サーフェスケーブルに剛性が高く、張力の変化による長さ変化が小さいケーブルを用い、外周サーフェスケーブルに前記内側サーフェスケーブルに比べて、剛性が低く、長さの変化による張力変化が小さいケーブルを用いる。また、前記バックケーブルネットワーク72およびタイケーブル73は、前記内側サーフェスケーブルに比べて、剛性が低く、長さの変化による張力変化が小さいケーブルを用いる。
【0035】
上記実施形態例1の場合はケーブルネットワークが展開型骨組みトラス構造の上部に配置されるため、サーフェスケーブルネットワークに張力を付加するための反力がスタンドオフを介して展開型骨組みトラス構造上部にかかることから、サーフェスケーブルネットワークを横方向に広げるための外側から中心方向に向かう圧縮力に加えて、図1において中心に対して上方向に曲げようとするモーメント力が働くこととなる。一方、図3のように構成することで、展開状態で、金属メッシュ付きケーブルネットワーク71とバックケーブルネットワーク72に張力を付与するため反力が働き、展開状態で展開型骨組みトラス構造74に対し、金属メッシュ付きケーブルネットワーク71が与える反力により生じるモーメントは中心に対し図中上方向に向かう方向であり、バックケーブルネットワーク72による反力は逆に中心に対し図中下向きに向かう方向となり、互いに打ち消しあうため、展開型骨組みトラス構造に生じる力は主として、外側から中心に向かう圧縮力となる。
【0036】
なお、本発明は、上記実施形態例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態例に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態例1を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るメッシュ鏡面部分を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態例2を示す斜視図である。
【図4】(a)は従来の展開型反射鏡の一例を示す斜視図であり、(b)は従来の展開型反射鏡の一例を示す分解斜視図である。
【図5】図4のケーブルネットワークの詳細を示す分解斜視図である。
【図6】従来の展開型反射鏡の製造時に鏡面の形状を所定の精度で形成するための手順を説明する図である。
【図7】従来の展開型反射鏡の別の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0038】
51…メッシュ鏡面、52…スタンドオフ、53…展開型骨組みトラス構造、61…サーフェスケーブル、62…金属メッシュ、63…タイケーブル、64…バックケーブル、61a…内側サーフェスケーブル、61b…外周サーフェスケーブル、61c…端部サーフェスケーブル、64a…内側バックケーブル、64b…外周バックケーブル、64c…端部バックケーブル、71…金属メッシュ付きケーブルネットワーク、72…バックケーブルネットワーク、73…タイケーブル、74…展開型骨組みトラス構造。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の三角形の各頂点を接続点とするケーブルネットワークよりなるサーフェスケーブルと、前記サーフェスケーブルに取り付けられる金属メッシュと、前記サーフェスケーブルに複数のタイケーブルで接続されたケーブルネットワークよりなるバックケーブルとよりなり、展開状態で三角形を一つの要素とする多面体構造を形成する折り畳み可能なメッシュ鏡面と、前記メッシュ鏡面に張力を付与して展開状態とする張力付与構造とよりなる展開型反射鏡であって、前記サーフェスケーブルを構成する内側サーフェスケーブルに剛性が高く、張力の変化による長さ変化が小さいケーブルを用い、外周サーフェスケーブルに前記内側サーフェスケーブルに比べて、剛性が低く、長さの変化による張力変化が小さいケーブルを用いることを特徴とする展開型反射鏡。
【請求項2】
請求項1に記載の展開型反射鏡において、張力付与構造が金属メッシュの付いたサーフェスケーブルとバックケーブルとの間に設けられることを特徴とする展開型反射鏡。
【請求項3】
張力付与構造として、梁から構成される展開型骨組みトラス構造を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の展開型反射鏡。
【請求項4】
タイケーブル及びバックケーブルとして、内側サーフェスケーブルに比べて、剛性が低く、長さの変化による張力変化が小さいケーブルを用いることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の展開型反射鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−80578(P2006−80578A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−318862(P2003−318862)
【出願日】平成15年9月10日(2003.9.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】