説明

展開構造物及び展開構造物の結合構造

【課題】複雑なヒンジ機構を用いたりすることなく、また、展開後にパネル間の段差を生じにくく展開後の平面形成にすぐれ、コンパクトに収納可能で、かつ展開信頼性が高く、軽量な二次元展開構造物及び展開構造物の結合構造を提供すること。さらに、展開後に変形や振動を制御できる展開構造物を提供すること
【解決手段】本発明に係る展開構造物の結合構造は、平面体からなる第1の展開物の端部に設けられ第1の展開物の平面方向に取り付けられた超音波モータヒンジとフレクシブルヒンジの組み合わせによるヒンジ機構を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人工衛星などに収納状態で搭載され、宇宙空間にて展開する太陽電池パネルやフェイズドアレイアンテナなどの基本構造体として用いられる2次元的に広がる平面を構成する展開構造物すなわち2次元展開構造物とその結合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人工衛星や宇宙船に搭載される太陽電池アレイやフェイズドアレイアンテナは、打ち上げ時にはコンパクトに折りたたまれてロケットフェアリング内に収納され、所定の宇宙空間に到達した後は、大面積を確保するために展開される展開構造物によって構築されることが多いが、機械的な要素が複雑となり、軌道上で展開に失敗する確率が高く問題が多かった。
【0003】
太陽電池アレイは大面積であるほど発生電力が大きく、またフェイズドアレイアンテナは大面積であるほど電波の指向性を高めたり感度を上げることが可能になるから、これらは、展開後により大きな面積を確保することが要求される。従って、二次元的に展開し、より大きな平面を構成することのできる二次元展開構造物(特許公開平11−91698参照)が求められる。一方、これらはロケットに収納されて打ち上げられるという制約条件から、よりコンパクトに折り畳み収納が可能で、展開信頼性が高く、軽量な構造であることが同時に要求される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複雑なヒンジ機構を用いたりすることなく、また、展開後にパネル間の段差を生じにくく展開後の平面形成にすぐれ、コンパクトに収納可能で、かつ展開信頼性が高く、軽量な二次元展開構造物及び展開構造物の結合構造を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る展開構造物の結合構造は、平面体からなる第1の展開物の端部に設けられ第1の展開物の平面方向に超音波モータヒンジと、フレキシブルヒンジを取り付けて展開物を結合する。そして展開を超音波モータの回動で行い、さらに展開後に発生する振動や変形をこの超音波モータの回動で抑制する。
【発明の効果】
【0006】
この発明にかかる展開構造物の結合構造は、超音波モータとフレキシブルヒンジの混成であるため、従来のように複雑な機械式ワイヤ同期ヒンジを用いたりすることなく、簡単な構成で、展開後の平面形成にすぐれ、コンパクトにおりたたみ収納可能で、かつ展開信頼性が高い二次元展開構造物を得ることができる。それだけでなく、平面の制御や振動の抑制が行える、世界でも初めてのものを提供することができる。
【0007】
また、結合部材の回転動作をさせる駆動力源を備えているので、外部からの補助力を加えることなく展開を自動的におこなうことが可能になり、全体として構造が簡素で展開信頼性の高い二次元展開構造物を得ることができる。
【0008】
さらに、プラスチックス製のフレクシブルヒンジを備えているので展開パネル相互間を接続して、構造の簡単な信頼性の高い、そして剛性の高い展開物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1はこの実施の形態の展開構造物の展開後の形状を示す図で、図1は展開後の形状を示す斜視図。図において、1、2、3、はヒンジによって結合されている平面体の展開物である展開パネルであり、1a,1b,1c,1dはそれぞれがヒンジで結合されている。以下、展開パネルの集合を展開パネル列1.2.3と呼ぶ。2a〜2d、3a〜3dも同様である。超小型ジャイロ素子8は展開パネルの中央部分など適切な位置に貼り付ける。
【0010】
4は展開パネル相互間を回転動作可能に結合する結合部材であるヒンジで、5は同じく結合部材であるフレクシブルヒンジ。6は展開物を衛星などに取り付ける取り付け部である。ヒンジ4は展開パネル1aと展開パネル1bおよび1cとを結合し、そして展開パネル列2と3に対しても結合する。フレクシブルヒンジ5は展開パネル列2と3の構成要素である展開パネル2aから2dおよび3aから3dにおいて、それぞれを結合する。
【0011】
図2はヒンジ4の構成を説明する図で、4aはヒンジシャーシ、4cは超音波モータ、4dは減速ギヤ、4eはトルクリミタであり、それぞれ公知の部品である。4fは回転軸。本発明において、超音波モータ4cが回転すると、減速ギヤ4dで回転数を適切な早さまで落とす。さらにトルクリミタ4eにより、回転トルクに制限を設定して、あるトルク値を超えると空回りするようになっている。回転軸4fに展開パネルの端を固定する。
【0012】
図3はヒンジ4が展開したときの形状を示す図であり、ヒンジパネル4bが回動して2枚の展開パネルを平面状態にする。
【0013】
図4はヒンジ4を折りたたんだときの形状を示す図であり、ヒンジパネル4bが回動して2枚の展開パネルを対向状態にする。
【0013】
図5はヒンジ4を2個直列に接続した二重ヒンジ7の構造を示す図。ヒンジパネル4bの長さだけ、折りたたみ時の厚さを包み込み展開パネルを折りたたむことが出来る。
【0014】
本実施の形態においては、フレクシブルヒンジ5を、柔軟性のあるプラスチックス、例えばポリプロピレンなどを用いて構成する。このフレクシブルヒンジ5を結合部材かつ回転動作部材として構成しているので、展開パネル相互の軸間のずれが仮にあったとしても、これが柔軟に変形することによって、上記軸ずれを吸収し、実現可能な共通軸を自ら形成するように働く。その結果、上記のごときパネルのスタック相互間の回転動作の確実性が増す。同様に、位置ずれの問題に対しても柔軟に変形することによって解消することができる。
【0015】
なお、本実施の形態ではヒンジを2種類用いているが、共通軸まわりに回転動作すべき複数個のヒンジの個数をNとすると、その中でフレキシブルに変形し軸ずれを吸収できるように構成すべきヒンジの個数はN−1個であれば良い。なぜならN個の中の1個は軸位置の変動を許さない強固なヒンジであったとしても、その他のN−1個が上記1個のヒンジの軸に合わせて柔軟に変形するので結果としてN個全てのヒンジはひとつの共通軸まわりに回転動作できるからである。
【0016】
また、本実施の形態では超音波モータ4cで回動力を得ているが、超音波モータは真空中でも問題なく動作するので宇宙環境において問題なく動作する。さらに、超小型ジャイロ素子8を展開パネルに取り付けておけば、展開パネルの振動や変形を抑制する制御を行うことが可能となる。この超小型ジャイロ素子8はIC程度の大きさで加速度を3軸方向において計測可能なもので、市販されており公知のため説明は省略する。このように展開構造物の変形を制御することは、本発明の利点として大きく、世界でも初めての方式である。
【0017】
図6は特許公開平11−91698に示されている従来例を説明する図。図中1、2,3は基本展開パネル、4はヒンジである。この従来例ではヒンジに板バネなどの機械的弾性物を用いているので、構造が複雑になっている。また展開中の制御や展開後の形状、振動制御が出来ない。また、展開パネルの間が結合されていないものが多く存在するので、全体の剛性が低くなる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
この発明に係わる展開構造物及び展開構造物の結合構造は、人工衛星の太陽電池パドルや剛性開口レーダのような平面アンテナ等に利用することが出来る。地上に於いては太陽発電パネルの展開などにも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る展開構造物及び展開構造物の結合構造の実施の形態を示す形状図である。
【図2】本発明に係るヒンジの構成例を示す形状図である。
【図3】本発明に係るヒンジの展開した形状を示す形状図である。
【図4】本発明に係るヒンジの折りたたんだ形状を示す形状図である。
【図5】本発明に係わる二重ヒンジの形状を示す形状図である。
【図6】従来例を示す形状図である。
【符号の説明】
【0020】
1、2,3…展開パネルアレイ、1a,1b,1c,1d、2a,2b,2c,2d,3a,3b,3c,3d…基本展開パネル 4…ヒンジ、4a…ヒンジシャーシ、4b…ヒンジパネル、4c…超音波モータ、4d…減速ギヤ 4e…トルクリミタ、4f…回転軸、5…フレクシブルヒンジ、6…取り付け部、7…二重ヒンジ、8…超小型ジャイロ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面体からなる第1の展開物の端部と第2の展開物の端部を、この第1の展開物の平面方向で展開物端部の間に取り付けられた超音波モータヒンジにより接続し、あるいはこれら展開物の間をフレキシブルヒンジで接続し、これらが混在した状態で超音波モータヒンジを回動することにより、展開物の2次元展開を行い、展開後にさらに超音波モータヒンジを回動することにより展開物の変形を抑止することを特徴とする展開構造物とその結合構造。
【請求項2】
結合部材の回転動作をさせる超音波モータヒンジにおいて、これを2個用いて、オフセットを可能とすることを特徴とする請求項1記載の展開構造物の結合構造。
【請求項3】
駆動力源は弾性バネ、モータ、形状記憶合金の少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項2記載の展開構造物の結合構造。
【請求項4】
結合部材のフレキシブルヒンジをポリプロピレンなどのプラスチックス材料で形成することを特徴とする請求項1記載の展開構造物の結合構造。
【請求項5】
展開物の加速度を検出するジャイロ素子を展開物に取り付け、その信号により展開物の運動を制御することを特徴とする請求項1記載の展開構造物とその結合構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−188201(P2006−188201A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28225(P2005−28225)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(505044015)スペースリンク株式会社 (3)
【Fターム(参考)】