説明

層別製造方法およびそれに用いる照明システム

【課題】有体物の層別製造に使用する照明システムを提供すること。
【解決手段】液溜(2)中の有体物の層別製造システム(1)に使用する照明システムは画像形成要素(21)、画像投影システム(22,23)およびマイクロレンズアレイ(7)を備える。照明システム(20)は、さらに、コントローラ(24)を備え、コントローラ(24)はマイクロレンズアレイを制御して画像投影システム(22,23)の少なくとも一部分に対して移動(9)を実行するとともに、画像形成要素(21)を制御して、移動(9;99)が形成中の有体物5に対してもなされる場合に、マイクロスポット(17)が液層(10)の所定の領域を描きかつ凝固するように、時間変動二次元画像をこの移動と同期して形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有体物の層別製造方法に関する。本発明はまた有体物の層別製造システムに用いる照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような方法を実施するための公知のシステムとしては、例えば、ドイツ国のエンビジョン・テクノロジーズ・ゲー・エム・ベー・ハー(EnvisionTechnologies GmbH)社により「パーファクトリ(Perfactory)(登録商標)」の商品名で販売されている装置がある。この公知の装置は、しばしばラピッド・プロトタイピング(rapid prototyping)(RP)またはラピッド・マニュファクチャリング(rapid manufacturing)(RM)と呼ばれる、有体物を製造する層別製造技術(LMT)の分野で使用されている。ラピッド・プロトタイピング(RP)およびラピッド・マニュファクチャリング(RM)が「ラピッド(rapid)」と呼ばれるのは型を設計・製造する必要がないからである。
【0003】
パーファクトリ(登録商標)の照明システムはデジタル・マイクロミラー・デバイス(digital micromirror Device)(DMD)を備える。パーファクトリ(登録商標)については、製造物体の作業領域は典型的には3cm×4cmのような大きさを有し、これに対してDMDは典型的には1280×1024ピクセルを使用する。それらの物体は比較的に小さい。より大きい物体を製造したい場合は、より大きな、例えば30cm×40cm程度の作業領域が必要とされる。さらに、大きい物体を小さい物体と同じ精度で製造したい場合は、それに応じた高画素数が必要とされる。しかしながら、そのような高画素数のDMDを使用することは現在まだ達成されていない。したがって、パーファクトリ(登録商標)を用いた場合、大きい物体に対して小さい物体の詳細を正確に製造することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、大きいサイズの製品を製造するために、高解像度で、かつ製造に使用される照明システムの画像形成要素の解像度を上げる必要なく、大きい作業領域の層を凝固できる解決手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明の第1の態様によれば、請求項1に記載の方法が提供される。
【0006】
本発明の第1の態様によるこの方法では、凝固は、所定の領域を照明システムにより照明することにより行われ、該照明システムは時間変動二次元画像を形成するように制御可能な画像形成要素と、画像投影システムと、個々のマイクロレンズを真っ直ぐな平面に二次元に配列してなるマイクロレンズアレイとを備え、該画像投影システムは、個々のマイクロレンズがそれぞれ入射放射線を、分離された対応する集中マイクロスポット群の形で、液層の所定の領域上に投影するように、マイクロレンズアレイに二次元画像を投影するように配置され、ここで、方法サイクルの少なくとも一つについてマイクロレンズアレイが画像投影システムの少なくとも一部に対しておよび形成中の物体に対して前記真っ直ぐな平面に平行な移動を行うように制御され、一方、同期して、画像形成要素は、マイクロレンズアレイの移動の間、マイクロスポットが液層の所定の領域を描きかつ凝固させるように、制御されて時間変動二次元画像を形成する。
【0007】
このようにして、マイクロスポットは液層の所定の領域を凝固するために液層の上に「書く(write)」。高解像度を得るために、これら分離した集中マイクロスポットを相互間に比較的大きな距離をおいて配置するとよいが、これはマイクロスポット間の中間の空間が「書くこと(writing)」の間に到達されることがあるからである。
【0008】
本発明の上述の目的は、マイクロレンズアレイを画像投影システムの少なくとも1つに対しておよび形成中の物体に対して移動する代わりに、画像形成要素および/または画像投影システムがマイクロレンズアレイと一緒に形成中の物体に対して制御可能に移動されるように適合された請求項1による方法を用いても達成される。従って、そのような適合された方法では、例えば照明システム全体が形成中の物体に対して制御可能に移動され、この移動は、例えば照明システム全体を環境に対して移動し、一方、形成中の物体は環境に対して固定したままにするか、あるいは形成中の物体を環境に対して移動し、一方、照明システム全体は環境に対して固定されたままにすることによってなされる。しかしながら、請求項1による方法はそのような適合された方法に対して、高精度で移動するのに質量が少ししか必要でない(すなわち、実質的にマイクロレンズの質量のみ)という利点を有する。これは、例えば照明システム全体の大きな質量を移動するよりも、あるいは形成中の物体を移動するよりも実現がより簡単でありかつエネルギー消費がより少ない。
【0009】
さらに、本発明の第2の態様によれば、請求項5に記載の照明システムが提供される。
【0010】
本発明による方法および本発明による照明システムは、(透明な)構造付形物(construction shape)を利用することによって適用することができ、ここで、液層の所定の領域の凝固は液層が構造付形物に隣接しているときに行われ、かつ、方法サイクルの間に、得られた固体層が該構造付形物から分離される。構造付形物は、例えば、液溜の透明底部であってもよく、ここで、方法サイクルの間、照明システムの光が下方から液層に入射し、製造中の物体の最下層が凝固される。あるいはまた、構造付形物は、例えば、製造中の物体の最下層ではなく最上層が方法サイクルの間に凝固されるように配置してもよい。その場合、例えば、垂直移動可能な製品ホルダが、例えば製造中の物体の下方に配置されてもよく、一方、例えば、照明システムは、照明システムの光が下方からではなく、上方から液層に入射するように配置されてもよい。実際、構造付形物が使用される場合は、本発明による方法および本発明による照明システムは重力に対して任意の向きに動作する層別製造に適用可能である。しかしながら、本発明による方法および本発明による照明システムは、構造付形物が使用されない場合、例えば液層の所定の領域がこの液層が液溜中の液の最上層を形成するときに凝固される場合にも適用することができる。
【0011】
本発明の具体的実施の形態は従属請求項に記載されている。
【0012】
本発明のこれらおよび他の態様は以下に説明する実施の形態から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明のさらなる詳細、態様、および実施の形態は単なる例示として添付の図面中の概略図を参照して説明される。
【0014】
【図1】本発明による方法の一実施の形態の一例において使用されるシステムに使用される本発明による照明システムの一実施の形態の一例を示す側断面図である。
【図2A】図1の照明システムのマイクロレンズアレイの一部分を示す概略平面図である。
【図2B】図2Aのマイクロレンズアレイの一部分を示す概略側断面図である。
【図3】図1の照明システムのマイクロレンズアレイのマイクロレンズの概略平面図であり、マイクロレンズアレイの移動経路を示す。
【図4A】図1の照明システムのマイクロレンズアレイのマイクロレンズの一例をマイクロレンズアレイの他のタイプの移動経路の視点において示す概略平面図である。
【図4B】再び図4Aのマイクロレンズアレイの概略図であるが、マイクロレンズアレイの移動経路の他のタイプの終点における図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、図1を参照する。図1は有体物5の層別製造のためのシステム1の一例を示す。システム1は本発明の有体物の層別製造方法の一例を実施することができる。有体物5は製造中の状態が示されている。有体物5は、例えば、製品のプロトタイプもしくはモデル、または他の適切なタイプの物体であってもよい。
【0016】
システム1は液3で充填されている液溜2を備える。システム1はさらに照明システム20を備える。照明システム20は液体3の液層10の所定の領域を照明するように配置され、その所定の領域を凝固して有体物5の凝固層14を得、従って、凝固層は所定の形状を有する。
【0017】
その目的で、図示の例では、液溜2は底板4を有し、底板4は照明システム20により出射された放射線18に対して透過性である。底板4は構造付形物としても機能し、液層の所定の領域の凝固はこの液層が構造付形物と隣接しているときに行われる。この実施例では、照明システムの放射線は下方から液層に入射するので、製造中の物体5の最下層が凝固される。
【0018】
本発明による方法の方法サイクルの間に、得られた凝固層は底板4から分離される。図示の実施例では、この分離は形成中の製品5を保持するキャリアプレート11を用いて実現される。図1の二重矢印15により示されるように、キャリアプレート11はキャリアプレートアクチュエータ12の動作により液溜2に対して上下に移動可能である。有体物5の最初に形成された凝固層はキャリアプレート11の下側に付着される。連続的に形成される凝固層はそれぞれ先に形成された凝固層に付着される。新しい層が凝固する毎に、キャリアプレート11はその上に付着された凝固層とともに上方に移動され、その結果、毎回最後に形成された凝固層が底板4から分離される。分離中に、液体3は分離された凝固層14と底板4の間に流入して新たな液層10をそれらの間に形成する。
【0019】
照明システム20は画像形成要素21と、画像投影システム22,23と、マイクロレンズアレイ7とを備える。画像形成要素21は制御可能であり、時間変動二次元画像を形成する。マイクロレンズアレイ7は真っ直ぐな平面の二次元に配置された個々のマイクロレンズ8を備える。画像投影システム22,23は二次元画像をマイクロレンズアレイ7上に投影し、マイクロレンズ8がそれぞれに入射した放射線18を分離した対応する集中マイクロスポットの形状で液層10の所定の領域に投影するように構成されている。画像形成要素、画像投影システムおよびマイクロレンズアレイは、それぞれ、種々のタイプのものであってよく、例えば、それ自体としては照明システムの当業界で知られている種々のタイプのものであってよい。
【0020】
本発明の特別の技術的特徴として、マイクロレンズアレイ7は制御可能であり、真っ直ぐな平面に対しておよび画像投影システム22,23の少なくとも一部分に対して平行な移動を行うよう。マイクロレンズアレイ7のそのような移動は図1に二重矢印9により示されている。
【0021】
本発明のさらなる特別の技術的特徴として、照明システム20はさらにコントローラ24を備え、このコントローラ24は、マイクロレンズアレイ7を制御してこの移動9を行いかつ画像形成要素21を制御して、この移動9が形成中の有体物5に対しても行われるときに、この移動9と同期して、マイクロスポット17が液層10の所定の領域を描き、凝固するようにして時間変動二次元画像を形成する。
【0022】
上述のことから分かるように、上述の照明システム20を備えた上述のシステム1は請求項1による方法に使用することができる。
【0023】
図2Aおよび図2Bを参照する。図2Aは照明中の現時点における図1のマイクロレンズアレイ7の一部分を示す平面図である。図示の部分は図2Aの中心に示されたマイクロレンズ8と、中心のマイクロレンズ8を包囲する8個のマイクロレンズ8の部分とを備える。図2Aの実施例では、参照符号18および19は画像形成要素21、例えばデジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)を用いて形成された時間変動二次元画像の「ピクセル」と一致する。図2Aの黒丸18は現時点において放射線が当該ピクセルに対して生成されているピクセルに対応し、図2Aの白丸19は現時点において放射線が当該ピクセルに対して生成されていないピクセルに対応する。図2Bには、中心のマイクロレンズ8がそれに入射した放射線18を相当する集中マイクロスポットの形で液層10の所定の領域に投影することが示されている。平面図では、集中マイクロスポット17は対応するマイクロレンズ8に対して実質的に集中される。
【0024】
上述のように、一方法サイクルの間に、マイクロレンズアレイは上述の移動9を行うように制御可能であり、一方、同期して画像形成要素21は、上述の移動9の間にマイクロスポット17が液層10の所定の領域を描きかつ凝固するように、時間変動二次元画像を形成するように制御される。そのような移動9の間、放射線がマイクロレンズアレイに到達する前の射出放射線の軌跡の部分は、図示の実施例では、液層10に対して固定されたままである。これは、そのような移動9の間、図2Aの黒丸18および白丸19はマイクロレンズアレイ7に対して移動することを意味する。しかしながら、これはまたマイクロスポット17が液層10に対して実際に移動することをも意味する。その理由は、マイクロスポット17はそれらの対応するマイクロレンズ8に対して実質的に集中されているからである。
【0025】
隣接するマイクロレンズ8間のクロストークを避けるために、上述の制御は、隣接するマイクロレンズ8間の移行部においてまたはその近傍において対応する放射線が入射されるピクセルに対する放射線の投影を時間依存的に停止することを含んでいてもよい。図2Aの白丸19はこれを説明するものである。
【0026】
そのような移動9についての多くの可能性の一つの例が図3に示されている。この例では、マイクロレンズ8ならびにその対応するマイクロスポット17はほぼ「スラローム(slalom)」状の移動経路30に沿って液層10に対して移動する。このようにして、マイクロスポット17は液層10のほぼ連続正方形様の二次元領域部分を描いてもよい。マイクロレンズアレイ7の他のマイクロレンズ8の他のマイクロスポット17と一緒に、マイクロスポット17は液層10の所定の領域を描き、かつ凝固することができる。
【0027】
好ましくは、しかし必須ではないが、この方法の実施は、方法サイクルの少なくとも1つについて、二次元画像に対応する放射線がマイクロレンズアレイ7に上述の真っ直ぐな平面に実質的に直交方向に入射するように、画像投影システムが二次元画像をマイクロレンズアレイに投影するようにして行なわれる。図示の実施例では、これは画像投影システムが追加のレンズ23をその趣旨で備えることで実現される。追加のレンズ23は、マイクロレンズアレイ7と一緒に移動するように配置してもよく、あるいは一緒に移動しないように配置してもよい。そのような実質的に直交入射する放射線の利点は、マイクロスポット17が対応するマイクロレンズ8に対して正確に集中し、それにより物体5の製造の精度が向上することである。
【0028】
好ましくは、この方法はマイクロレンズが相互に垂直な等間隔の行および等間隔の列に配置されているマイクロレンズアレイを用いて行われる。次いで、この方法は、上述の方法サイクルの少なくとも1つについて、マイクロレンズアレイの移動が行および列の方向に対して傾斜した直線移動であるように行われる。そのような状況が図4Aおよび図4Bに示されている。図4Aは、マイクロレンズ8が相互に垂直な等間隔の行および等間隔の列に配置されているマイクロレンズアレイ7を示す。参照符号40は液層10の作業領域を示す。凝固されるべき液層10の所定の領域はこの作業領域40からなる。行列の方向に対して傾斜した直線移動は図4Aの矢印99により示される。図4Aは方法サイクルの間の移動の開始点における状況を示し、図4Bは移動の終点における状況を示す。この場合、画像投影システム22,23は、二次元画像が作業領域40内だけに投影されるように配置されていてもよい。従って、図4Aおよび4Bでは、マイクロスポット17(黒丸で示されている)は作業領域40内だけに生じる。作業領域40外ではマイクロスポットは生じない。図示された白丸16はそれぞれ画像投影システム22,23が対応するマイクロレンズ8に放射線を投影したならばマイクロスポットが生じたであろう位置だけを参照する。図4Aおよび4Bでは、作業領域40内にあるすべての丸印は黒丸17である。これは説明の目的のためにだけ行なった。実際、作業領域内の特定の位置がマイクロスポットでなければならないか否かは製造されるべき物体5の所定の形状によって決まる。
【0029】
図4Bでは、参照符号33はマイクロレンズアレイ7の液層10に対する移動99による円16および17の移動経路を示す。マイクロスポット17の移動経路はそれらの移動経路33の部分を形成し、作業領域40に含まれる。移動99の方向が傾斜しているので、移動99を一回だけ行なうことにより、マイクロスポット17が作業領域40全体に到達可能である。種々の傾斜角度を選択することができる。マイクロスポットの表面積と移動99の傾斜度を選択することにより、かつこれらの表面積を傾斜度に合致させることにより、物体5の製造精度を調節することができる。また、作業領域の必要とされるサイズをこの方法で調節することができる。従って、この方法は、高精度並びに種々の物体のサイズを同一のマイクロレンズアレイを用いて実現することができるという意味で強力である。加えて、この方法は、傾斜移動は実現するのが簡単な移動であるため、実際的であり、かつ信頼性がある。
【0030】
より詳しくは、この方法は、マイクロレンズアレイ7が行方向に連続する列の所定整数値に相当する距離移動したときに、マイクロレンズアレイ7は列方向にも連続する行の所定整数値に相当する距離を移動しているように、上述の移動99の傾斜があらかじめ定められている。これは実際に図4Aおよび4Bの例において該当し、円16または17の個々の移動経路33が互いに一致してそのような移動経路33の直線のチェーンが形成される。このようにして、作業領域全体がそのような移動経路により覆われることが非常に効率的に実現される。すなわち、簡単かつ短い移動99を行なうだけでよい。
【0031】
非常に多くの可能性の一つの説明として、以下の実施例が示される。この実施例では、作業領域は480×360ミリメータの大きさを有する。画像形成要素はこの作業領域を覆う、1024×768ピクセルを有するDMDに基づいている。マイクロレンズアレイは280列×181行の等間隔レンズを有する。各レンズは2×2ミリメータの大きさを有する。従って、マイクロレンズアレイのレンズ領域は560×362mmの大きさである。マイクロレンズアレイの約240列×180行が作業領域を覆っている。各マイクロレンズはDMDの約4×4ピクセルに相当する。マイクロスポットの直径は約50マイクロメータである。上述の直線相対移動99の傾斜は、マイクロレンズアレイがその行方向に連続40列に相当する80ミリメータの距離移動したときに、マイクロレンズアレイはその列方向にも1行に相当する2ミリメータの距離移動しているように、あらかじめ定められている。
【0032】
図4Aおよび4Bを参照して説明したタイプの傾斜直線移動を行なう利点は、この方法がマイクロレンズアレイを画像投影システムの少なくとも一部分に対しておよび形成中の物体に対して移動する代わりに、画像形成要素および/または画像投影システムがマイクロレンズアレイと一緒に形成中の物体に対して制御可能に移動されるように適合された場合にも得られる。従って、そのような適合された方法では、例えば、全照明システムが形成中の物体に対して制御可能に移動される。例えば全照明システムを環境に対して移動する一方、形成中の物体は環境に対して固定したままにするか、あるいは形成中の物体を環境に対して移動する一方、全照明システムを環境に対して固定されたままにする。
【0033】
さらに、上述の照明システムは他の有体物の製造方法においても使用することができる。この他の方法は上述の方法に対して適合されている。そのような適合の一つは、上述の方法サイクルを繰り返し行なう代わりにそのような方法サイクルを一度だけ行なって物体の単一の層のみを製造することである。もう一つのそのような適合は、液体を入れた液溜を設ける代わりに、そして液層を形成する代わりに、フォイルを形成中の物体に適用し、このフォイルを部分的に照明することである。そのような照明の結果、フォイルの照明された部分が凝固されたものが直接得られる。あるいはまた、そのような照明の結果、フォイルの照明された部分が現像液(例えば、水)に不溶となるので、そのような現像液を照明されたフォイルに適用することにより物体の必要な層が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有体物(5)の層別製造方法であって、前記方法は
−液体(3)を収容する液溜(2)を用意すること、および
−方法サイクルを反復実行することを含み、各方法サイクルは下記の工程、すなわち、
−前記液体(3)の液層(10)の所定の領域を凝固して、前記有体物(5)の液層(14)を得ることにより前記凝固層が所定の形状を有するようにする工程、および
−前記凝固層(14)に平行にかつ隣接して前記液体(3)の次の液層(10)を形成して、前記次の液層の所定の領域を同様に凝固する次の方法サイクルを実行して前記凝固層(14)に付着した次の凝固層を得る工程、を備え、
−前記凝固は照明システム(20)により前記所定の領域を照明することにより行われ、前記照明システムは時間変動二次元画像を形成するように制御可能な画像形成要素(21)と、画像投影システム(22,23)と、個々のマイクロレンズ(8)を真っ直ぐな平面に二次元に配列してなるマイクロレンズアレイ(7)とを備え、前記画像投影システムは前記マイクロレンズ(8)の個々のマイクロレンズがそれぞれ、入射した放射線(18)を分離された対応する集中マイクロスポット群の形で、前記液層(10)の前記所定の領域上に投影するように、二次元画像を前記マイクロレンズアレイに投影するように配置され、かつ、
−前記方法サイクルの少なくとも一つについて、前記マイクロレンズアレイ(7)が画像投影システム(22,23)の少なくとも一部に対しておよび形成中の前記有体物(5)に対して前記真っ直ぐな平面に平行な移動を行うように制御され、一方、同期して、前記画像形成要素(21)は、前記マイクロレンズアレイ(7)の前記移動(9)の間、前記マイクロスポット(17)が前記液層(10)の前記所定の領域を描きかつ凝固させるように、制御されて前記時間変動二次元画像を形成することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記方法サイクルの少なくとも一つについて、前記画像投影システム(22,23)は、前記二次元画像に対応する放射線が前記真っ直ぐな平面に直交する方向に入射するように、前記マイクロレンズアレイ(7)に対して前記二次元画像を投影することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記マイクロレンズアレイ(7)の前記マイクロレンズ(8)は等間隔の行および等間隔の列に配置され、前記行および列は相互に垂直であり、かつ、前記方法サイクルの少なくとも一つについて、前記マイクロレンズアレイの前記移動(99)は直線移動であり、前記行および列の方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項1または2記載の方方。
【請求項4】
前記移動(99)の前記傾斜は、前記マイクロレンズアレイ(7)がその行方向に所定整数個の連続した列に相当する距離を移動したときに、前記マイクロレンズアレイ(7)はその列方向にも所定整数個の連続した行に相当する距離を移動しているように、あらかじめ決められていることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
液体(3)を収容する液溜(2)中に有体物(5)を層別に製造するためのシステム(1)に用いる照明システムであって、前記照明システム(20)は前記液体(3)の液層(10)の所定の領域を照明して前記所定の領域を凝固して前記有体物(5)の凝固層(14)を得るようにし、前記凝固層はそれにより所定の形状を有し、
−前記照明システム(20)は、
−時間変動二次元画像を形成するように制御可能な画像形成要素(21)と、
−画像投影システム(22,23)と、
−真っ直ぐな平面内に二次元に配置された個々のマイクロレンズ(8)を有するマイクロレンズアレイ(7)と、を備え、
−前記画像投影システム(22,23)は、前記マイクロレンズアレイ(7)上に前記二次元画像を投影するために、前記マイクロレンズ(8)の個々のマイクロレンズが、それぞれ、入射した放射線(18)を分離された対応する集中マイクロスポットの形で前記液層(10)の前記所定の領域上に投影するように、配置され、
−前記マイクロレンズアレイ(7)は画像投影システム(22,23)の少なくとも一部に対しておよび形成中の前記有体物(5)に対して前記真っ直ぐな平面に平行な移動を行うように制御可能であり、
−前記照明システム(20)は、さらに、コントローラ(24)を備え、前記コントローラは前記マイクロレンズアレイ(7)を制御して前記移動(9;99)を実行するとともに、前記画像形成要素(21)を制御して、前記移動(9;99)が形成中の前記有体物(5)に対してもなされる場合に、前記マイクロスポット(17)が前記液層(10)の前記所定の領域を描きかつ凝固するように、前記時間変動二次元画像を前記移動と同期して形成するとことを特徴とする照明システム。
【請求項6】
前記画像投影システム(22,23)は、前記二次元画像に対応する放射線が前記真っ直ぐな平面に実質的に直交する方向に前記マイクロレンズアレイに入射するように、前記二次元画像を前記マイクロレンズアレイ(7)に投影することを特徴とする請求項5記載の照明システム。
【請求項7】
有体物(5)の層別製造システムであって、
請求項5または6記載の照明システム(20)と、
液体(3)を収容するための液溜(2)と、前記形成中の製品(5)を保持するための製品ホルダ(11)と、
前記液溜(2)に対して前記製品ホルダ(11)を移動するアクチュエータ(12)と、を備えることを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2011−508690(P2011−508690A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540604(P2010−540604)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050853
【国際公開番号】WO2009/084957
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(506297485)ネーデルランデ オルガニサティー ヴール トゥーヘパストナツールウェテンスハペライク オンデルズーク テーエヌオー (30)
【Fターム(参考)】