説明

層状珪酸塩、およびそれを含む熱可塑性樹脂組成物

有機オニウムイオンによりイオン交換能対比50〜100%イオン交換され、比表面積が2.5〜100m/gであることを特徴とする層状珪酸塩。熱可塑性樹脂と該層状珪酸塩とからなる樹脂組成物であって、層状珪酸塩の含有量が熱可塑性樹脂100重量部に対し、無機灰分として0.01〜20重量部であり、熱可塑性樹脂中における該層状珪酸塩の平均層数が2〜8層であることを特徴とする樹脂組成物。また該樹脂組成物からなるフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、イオン交換された層状珪酸塩、その製造法、該層状珪酸塩と熱可塑性樹脂とからなる熱可塑性樹脂組成物、およびその樹脂組成物からなるフィルムに関する。さらに詳しくは、熱可塑性樹脂組成物に好適に分散可能なイオン交換された層状珪酸塩、熱可塑性樹脂中に該層状珪酸塩が好適に分散された熱可塑性樹脂組成物、およびその樹脂組成物からなるフィルムに関する。
従来技術
ポリエステルをはじめとする熱可塑性樹脂は、その優れた機械特性、成形性、耐熱性、耐侯性、耐光性、耐薬品性等の特性を生かし、様々な用途で使用されている。しかしながら、近年、技術の進展に伴い、使用される用途に応じて樹脂に対してより高度な特性が要求されるようになってきた。このような要求特性を満たす技術の一つとして、熱可塑性樹脂に層状化合物をナノスケールで分散させた組成物、所謂ナノコンポジットが最近注目されている。ナノコンポジットを形成することにより、高耐熱化、高弾性化、難燃化、ガスバリア性能の向上等、様々な特性の向上が実現している(例えば中条 澄 著 「ナノコンポジットの世界」、工業調査会、2000年)。ナノコンポジットを形成するためには、層状化合物をナノスケールで分散させる必要があり、様々な方法が試みられている。例えば、層状化合物が単層レベルで分散したポリエステルの複合材料を製造する際に、ポリエステルのモノマーとの反応性のある官能基を有する有機カチオンを層状化合物の有機変性体に使用することが開示されている(特開平9−48908号公報)。また、層間距離が15〜35Åである層状珪酸塩をポリエステル樹脂に溶融混合して5〜20層の層構造を保持しながら均一に分散させたポリエステル樹脂組成物の記載がある(特開平2001−261947号公報)。また特開2003−327851には膨潤性層状無機結晶体を凍結乾燥し、次いで溶融したポリマーを含浸させて層状無機結晶体−ポリマー複合体を製造する方法が記載されている。しかし特にポリエステルを使用したナノコンポジットではポリアミドと同程度に分散させることが困難であり、さらなる分散性の改善が望まれていた。
【発明の開示】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物に好適に分散可能なイオン交換された層状珪酸塩、その製造法、該層状珪酸塩と熱可塑性樹脂とからなる熱可塑性樹脂組成物、およびその樹脂組成物からなるフィルムを提供することを課題とする。
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、有機オニウムイオンによりイオン交換能対比50〜100%イオン交換され、比表面積が2.5〜100m/gであることを特徴とする層状珪酸塩によって達成される。
また、本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第2に、熱可塑性樹脂と上記の層状珪酸塩とからなる樹脂組成物であって、層状珪酸塩の含有量が熱可塑性樹脂100重量部に対し、無機灰分として0.01〜20重量部である樹脂組成物によって達成される。
【図面の簡単な説明】
図1は実施例7の樹脂組成物の電子顕微鏡写真である。
図2は比較例2の樹脂組成物の電子顕微鏡写真である。
発明の好ましい実施形態
以下、本発明について詳述する。
本発明で使用する層状珪酸塩は、Al,Mg,Li等を含む八面体シート構造を2枚のSiO4四面体シート構造が挟んだ形の2:1型が好適であり、具体的には、サポナイト,ヘクトライト、フッ素ヘクトライト、モンモリロナイト,バイデライト、スチブンサイト等のスメクタイト系粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性合成雲母、バーミキュライト、フッ素バーミキュライト、ハロサイト、膨潤性マイカ等を挙げることができる。またこれらは、天然のものでも、合成のものでも構わない。これらのうち、陽イオン交換容量などの点から、モンモリロナイト,ヘクトライト等のスメクタイト系粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母等を好適に使用することができる。
本発明の層状珪酸塩はこうした層状珪酸塩を有機オニウムイオンによりイオン交換能対比50〜100%イオン交換されたものである。
有機オニウムイオンとしては、ホスホニウム、アンモニウム等の4級オニウムイオン、またはヘテロ芳香族イオンが好ましい。有機オニウムイオンが下記式(1)で示されることがさらに好ましい。

(式中、Mは窒素原子またはリン原子である。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜30の炭化水素基またはヘテロ原子を含む炭化水素基、また任意のR、R、R及びRは環を形成していても良い。)
上記式(1)で表される有機オニウムイオンについて、Mがリン原子であってホスフォニウムイオンであるか、Mが窒素原子でかつ任意のR、R、R及びRが環を形成してヘテロ芳香族イオンであることが好ましい。
炭素数1〜30の炭化水素基としては、アルキル基、および芳香族基を挙げることができる。アルキル基としては、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、およびn−オクタデシルを好ましく例示することができる。また、芳香族基としては、フェニル基、ビフェニル基、ベンジル基、トシル基などを好ましく例示することができる。またこれらの芳香族基は、それらの熱安定性に影響を及ぼさないメチル、エチル、弗素、塩素などのような置換基を有してもよい。
Mが窒素原子である四級アンモニウムの具体例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、トリメチルデシルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム、トリブチルメチルアンモニウム、トリブチルドデシルアンモニウム、トリブチルオクタデシルアンモニウム、トリオクチルエチルアンモニウム、トリブチルヘキサデシルアンモニウム、メチルトリフェニルアンモニウム、およびエチルトリフェニルアンモニウム等の各種のテトラアルキルアンモニウムを好適なものとして挙げられる。
また、Mがリン原子である有機ホスホニウムの具体例としてはテトラエチルホスホニウム、トリエチルベンジルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、トリメチルデシルホスホニウム、トリメチルドデシルホスホニウム、トリメチルヘキサデシルホスホニウム、トリメチルオクタデシルホスホニウム、トリブチルメチルホスホニウム、トリブチルドデシルホスホニウム、トリブチルオクタデシルホスホニウム、トリオクチルエチルホスフォニウム、トリブチルヘキサデシルホスフォニウム、メチルトリフェニルホスホニウム、エチルトリフェニルホスホニウム、ジフェニルジオクチルホスホニウム、トリフェニルオクタデシルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、およびトリブチルアリルホスフォニウムなどが挙げられる。
さらに、上記式(1)がヘテロ原子を含む炭化水素基の場合、上述の炭素数1〜30の炭化水素基R、R、R及びRの少なくとも一部が、炭素数1〜30のヒドロキシ置換炭化水素基、アルコキシ置換炭化水素基、フェノキシ置換炭化水素基、およびイミド置換炭化水素基からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
以下にヘテロ原子を含む置換基を有する炭化水素基の例を列挙する。(ここで下記式中、aおよびbはそれぞれ独立に1以上29以下の整数であり、置換基中での炭素数が30以下になる整数である。)
ヒドロキシ置換炭化水素基

アルコキシ置換炭化水素基:

フェノキシ置換炭化水素基:

イミド置換炭化水素基:

さらにR、R、R及びRが環を形成しヘテロ芳香族イオンとなる場合にはピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、ジメチルピリジン、ヒドロキシピリジン、ジメチルアミノピリジン等のピリジン誘導体、イミダゾール、メチルイミダゾール、ジメチルイミダゾール、エチルイミダゾール、ベンズイミダゾール等のイミダゾール誘導体、ピラゾール、メチルピラゾール、ジメチルピラゾール、エチルピラゾール、ベンズピラゾール等のピラゾール誘導体からなる有機オニウムイオンを挙げることができる。
なかでもイミダゾール誘導体としては、N−メチルイミダゾリニウム、N−エチルイミダゾリニウム、N−ヘキシルイミダゾリニウム、N−オクチルイミダゾリニウム、N−ドデシルイミダゾリニウム、N−ヘキサデシルイミダゾリニウム等のアルキル置換イミダゾリウム、および上記のヘテロ原子を含む置換基を有する炭化水素基の例として示される構造でN置換されたイミダゾリウム及びそれらのアルキル置換体を例示することができる。
上述した有機オニウムイオンは、単独でも、組み合わせても、用いることができる。有機オニウムイオンとしては、層状珪酸塩の耐熱性の点からホスフォニウム、またはイミダゾリウム構造を有するものが好ましい。さらに好ましい有機オニウムイオンとして、具体的には、テトラブチルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、トリブチルドデシルホスホニウム、トリブチルヘキサデシルホスフォニウムなどのアルキルホスホニウムやN−メチルイミダゾリニウム、N−エチルイミダゾリニウム、N−ヘキシルイミダゾリニウム、N−オクチルイミダゾリニウム、N−ドデシルイミダゾリニウム、N−ヘキサデシルイミダゾリニウム等のアルキル置換イミダゾリウム、そしてアルキル基の一部がイミド置換炭化水素基で置換された以下のようなオニウムを例示することができる。


(ここで式中、aは1以上29以下の整数である。)
上述のような置換基において、分散させる層状珪酸塩や熱可塑性樹脂の種類、あるいは組み合わせにより好適なaの値が変わりうる。
本発明の層状珪酸塩は、こうした有機オニウムイオンにより、層状珪酸塩の陽イオン交換能に対して50〜100%イオン交換されている。
層状珪酸塩の陽イオン交換能は、従来公知の方法で測定可能であるが、本発明で使用される層状珪酸塩のイオン交換能としては、先述の層状珪酸塩のなかでも、0.2〜3meq/g程度のものが好適に使用可能である。陽イオン交換能が0.2meq/g以上であるほうが、有機オニウムイオンの導入率が高くなるために分散性の点で有利である。また3meq/g以下のものの方が、有機オニウムイオンの導入が容易となり、好ましい。陽イオン交換能が0.8〜1.5meq/gであることがさらに好ましい。
本発明の層状珪酸塩の陽イオン交換率は50〜100%であり、陽イオン交換率が50%以上であることが、層状珪酸塩に対する有機オニウムイオンの導入率が高くなるために分散性の点で有利である。陽イオン交換率は100%以下であることが、原料に使用したオニウム化合物の対イオンが存在しないために熱安定性の点で有利である。陽イオン交換率としては、55〜99%であることがより好ましく、60〜99%であることがさらに好ましい。
こうした陽イオンの交換率は、下記式(2)によって算出することができる。
陽イオン交換率(%)={Wf/(1−Wf)}/(Morg/Msi)×100 (2)
(Wfは20℃/minの昇温速度で120℃から800℃まで測定した層状珪酸塩の示差熱天秤による重量減少率、Morgは該ホスホニウムイオンの分子量、Msiは層状珪酸塩の陽イオン部分における1電荷あたりの分子量を表す。層状珪酸塩の陽イオン部分における1電荷あたりの分子量は、層状珪酸塩の陽イオン交換容量(単位:eq/g)の逆数で算出される値である。)(クニピアFの場合は109meq/100g)
さらに層状珪酸塩に対して陽イオン交換に関与しなかったオニウムイオンの有無は、蛍光X線や、原子吸光分析などの従来公知の方法で、原料に使用したオニウム化合物の対イオンの有無を測定することなどから確認することが可能である。
また本発明の層状珪酸塩を、窒素雰囲気下、20℃/minの昇温速度で示差熱天秤によって測定した際の5重量%重量減少時の温度が、310℃以上であることが好ましい。5重量%重量減少時の温度が310℃より低いと、熱可塑性樹脂と溶融混練する際の分解が大きく層状珪酸塩の再凝集が起ったり、分解ガスが発生するなど樹脂特性を低下させることがある。こうした点から5重量%重量減少時の温度は、高いほど好ましいが,本発明の層状珪酸塩では、良好な分散性を与える有機オニウムイオンの構造を勘案すると、好ましくは330℃以上、より好ましくは340℃以上、さらに好ましくは350℃以上である。
本発明の層状珪酸塩は、比表面積が2.5〜100m/gであることを特徴とする。比表面積は、窒素を使用したBET法で求めることができる。比表面積を2.5m/g以上とすることにより、樹脂と溶融混練する際の分散の効率が向上し、良好に均一分散した層状珪酸塩と熱可塑性樹脂との熱可塑性樹脂を得ることができる。逆に、比表面積が100m/gを超える場合は、余りにも比表面積が大きな微細な粒子となるために、かさ密度が高くなり粉体としての取扱いが困難となり好ましくない。比表面積としては、4〜80m/gがさらに好ましく、5〜50m/gがさらに好ましい。
有機オニウムイオンで層状珪酸塩の陽イオンを交換する方法としては、従来公知の方法が可能である。具体的には水、エタノール、メタノールなどの極性溶媒に層状珪酸塩を分散させておき、そこへ、有機オニウムイオンを添加する、あるいは、有機オニウムイオンを含む溶液を添加する方法が挙げられる。
該層状珪酸塩分散液における層状珪酸塩の好ましい濃度は0.1〜5重量%である。0.1重量%よりも濃度が低い場合には、溶液全体の量が多くなり過ぎ取り扱う上で好ましくない。5重量%を超える場合には、層状珪酸塩の分散液の粘度が高くなりすぎるため、陽イオン交換率が低下するため、好ましくない。層状珪酸塩の濃度としては、0.5〜4.5重量%がさらに好ましく、1〜4重量%がより好ましい。
反応時の温度としては、層状珪酸塩の分散液を攪拌するのに充分低い粘度を有すればよく、例えば、水の場合には、概略20〜80℃程度で陽イオン交換反応を行うことが好ましい。
本発明の層状珪酸塩は、このようにして有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩を、融点が−20℃以上100℃未満の媒体を用いて凍結乾燥させることにより製造することが可能である。凍結乾燥に使用する媒体は、融点−20℃以上の融点を有することが好ましい。媒体の融点が−20℃より低い場合には、媒体の凍結温度が低くなりすぎるために、凍結温度が低くなり、媒体の除去効率が低くなることがある。
凍結乾燥に使用する好ましい媒体として、水、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ベンジルアルコール、P−ジオキサン、クレゾール、P−キシレン、酢酸、シクロヘキサノールなどを例示することができる。
凍結乾燥に使用する媒体は、陽イオン交換反応の分散液に用いたものと同種のものを使用しても良いし、陽イオン交換反応後の層状珪酸塩が良好に分散する媒体を使用しても構わない。特に層状珪酸塩が良好に分散する媒体の場合には、層状珪酸塩のシリケート層が剥離した状態を維持したまま凍結乾燥を行なえるので、非常に比表面積を高める事ができる。
凍結乾燥は、層状珪酸塩と媒体からなる分散液を凍結させた後,減圧下で媒体を除去することによって実施する。凍結乾燥時の分散液における層状珪酸塩の濃度は通常約0.5〜70重量%であり、溶媒が良溶媒の場合には約0.1〜50重量%程度の濃度範囲とする事ができる。分散液における層状珪酸塩の濃度が高すぎるとゲル化して好ましくない。好ましくは0.5%〜30%、最も好ましいのは1%〜10重量%である。なお凍結乾燥機の種類は特に限定されず、市販されている凍結乾燥機を好適に用いることができる。
ここで良分散とは層状珪酸塩が良分散体中で剥離・膨潤している形態を指し、この事はShomerら(文献C.and Clay Minerals,Vol.26,135−138(1978))に準ずる方法でTEM測定を行なう方法、または広角X線測定など層間距離を測定する方法などで判断できる。良分散の程度としては良分散体中でX線測定で求められる層状珪酸塩の層間距離が少なくとも1nm以上あることが好ましい。
このように凍結乾燥を実施することにより、本発明の層状珪酸塩を製造することができる。
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と上述の層状珪酸塩とからなる樹脂組成物であって、層状珪酸塩の含有量が熱可塑性樹脂100重量部に対し、無機灰分として0.01〜20重量部であり、熱可塑性樹脂中において該層状珪酸塩が平均層数2〜8層であることを特徴とする樹脂組成物である。
無機成分とは、空気中で800℃までの熱重量分析を行った際の残渣である。無機成分としての含有量が0.1重量部以上であることが層状珪酸塩の添加効果を発現する上で好ましい。また、20重量部以下であることが、得られた熱可塑性樹脂組成物の溶融成形を行う上で好ましい。層状珪酸塩の含有量はこうした点から、熱可塑性樹脂100重量部に対して、無機成分として0.5〜12重量部であることがさらに好ましく、1〜8重量部であることがより好ましい。
本発明で使用する熱可塑性樹脂としては、溶融成形可能な熱可塑性樹脂であれば特に制限はないが,ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、およびポリオレフィン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なかでもポリエステルまたはポリカーボネートであることが好ましい。
ポリエステルとしては、ジカルボン酸及び/またはその誘導体とジオールを重縮合したもの、あるいは、ヒドロキシカルボン酸からなるもの、あるいは、さらにこれらの共重合体を指す。ポリエステルを構成するジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルフォンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、マレイン酸及びフマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの環状脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの脂肪族ジオールや、ヒドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA及び2,2−ビス(2’−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等のジフェノール類が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(ヒドロキシエトキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、7−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4’−ヒドロキシ−ビフェニル−4−カルボン酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。
好ましいポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート−テレフタレート共重合体、p−ヒドロキシ安息香酸−6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸共重合体などが挙げられる。
ポリアミドとしては、ジカルボン酸及び/またはその誘導体とジアミンを重縮合したもの、あるいは、アミノカルボン酸からなるもの、あるいは、さらにこれらの共重合体を指す。ポリアミドを構成するカルボン酸成分としては、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの環状脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルフォンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。ジアミンとしては、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、ヘプタンジアミン、ノナンジアミン、ドデカンジアミン等の脂肪族ジアミン、トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン等の置換基を有する脂肪族ジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、3,3’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)エタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン等の芳香族ジアミンが挙げられる。これらは単独で用いてもよいが複数用いてもよい。アミノカルボン酸としては、6−アミノヘキサン酸、12−アミノドデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸や、p−アミノ安息香酸、6−アミノ−2−ナフトエ酸、7−アミノ−2−ナフトエ酸等の芳香族アミノカルボン酸などが挙げられる。
好ましいポリアミドの具体例としては、ナイロン6,6、ナイロン6、ナイロン12等の脂肪族ポリアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド等の半芳香族ポリアミド、及びそれらの共重合体等を例示することができる。
ポリイミドとしては、テトラカルボン酸及び/またはその誘導体とジアミンを重縮合したもの、あるいは、アミノジカルボン酸からなるもの、あるいは、さらにこれらの共重合体を指す。ポリイミドを構成するテトラカルボン酸成分としては、ピロメリット酸、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3’,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、等が挙げられる。ジアミンとしては、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、ヘプタンジアミン、ノナンジアミン、ドデカンジアミン等の脂肪族ジアミン、イソホロンジアミン、トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン等の置換基を有する脂肪族ジアミンが挙げられる。これらは単独で用いてもよいが複数用いてもよい。アミノジカルボン酸としては、6−アミノヘキサン酸、12−アミノドデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸が挙げられる。
好ましいポリイミドの具体例としては、パラドデカメチレンピロメリットイミド、パラウンデカメチレンピロメリットイミド等を例示することができる。また、市販品としては、商品名ウルテム(ポリエーテルイミド)なども好ましいものとして例示することができる。
ポリカーボネートとしては、各種のビスフェノール類からなるポリカーボネートを例示することができる。ビスフェノール類としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシフェニル−1,1’−m−ジイソプロピルベンゼン、4,4’−ジヒドロキシフェニル−9,9−フルオレン、などのビス(4−ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−メチル−1−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−シクロヘキサン、4−[1−〔3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキシル〕−1−メチルエチル]−フェノール、4,4’−〔1−メチル−4−(1−メチルエチル)−1,3−シクロヘキサンジイル〕ビスフェノール、2,2,2’,2’−テトラヒドロ −3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビス−〔1H−インデン〕−6,6’−ジオール、などのビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル、などのジヒドロキシアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、などのジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、などのジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン、などのジヒドロキシジアリールスルホン類、が挙げられる。中でも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを用いたポリカーボネートが物性やコストの面で好ましい。
ポリフェニレンスルフィドとしては、芳香族環をスルフィド結合で重合体としたものであり、分岐型、あるいは直鎖型のポリフェニレンスルフィドおよびその共重合体を例示することができる。具体的には、パラフェニレンスルフィド、メタフェニレンスルフィドおよびこれらの重合体や、これらと共重合可能なエーテルユニット、スルホンユニット、ビフェニルユニット、ナフチルユニット、置換フェニルスルフィドユニット、三官能フェニルスルフィドユニットなどを分子中に有する共重合体を挙げることができる。これらのうちで、パラフェニレンスルフィドが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1などの非脂環式ポリオレフィン、ノルボルネン−αオレフィン共重合体、ジシクロペンタジエン−αオレフィン共重合体水素化物、ノルボルネン誘導体またはテトラシクロドデセン誘導体の開環重合体水素化物、水素化ポリスチレン系樹脂などの脂環式ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。具体的には、例えばティコナ社製TOPAS、三井化学製APEL等のノルボルネン誘導体−αオレフィン共重合体、日本ゼオン製ゼオネックス、ゼオノア、JSR製ARTON等のノルボルネン誘導体またはテトラシクロドデセン誘導体の開環重合体水素化物等を例示することができる。
さらに本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂中において層状珪酸塩の平均層数が2〜8層であることを特徴とする。層状珪酸塩の平均層数は、X線散乱により、層状珪酸塩の層間の散乱に起因する散乱ピークの散乱角と半価幅を使用して、層間距離と層厚を算出し,層厚を層間距離で除することにより求めることができる。
半価幅から層厚を求める方法としては、下記式(3)のScherrerの式を利用する。
D=K・λ/βcosθ (3)
D:結晶子の大きさ
λ:測定X線波長
β:半価幅
θ:回折線のブラッグ角
K:Scherrer定数
層状珪酸塩が単層にまで剥離している場合、本方法では検出されないことになるが、樹脂組成物において、平均層数が2〜8層であることが確認できれば、本発明の目的においては十分である。組成物の成形性、特に流動性が損なわれない限り、単層のものが組成物中に含まれていても構わないが、一般に層厚が薄くなるほど、曲げの弾性率は低下するために、本発明の樹脂組成物では、単層に剥離した層状珪酸塩は、層状珪酸塩の単層の全数量を基準として、全体の50%以下、さらに好ましくは30%以下であることが好ましい。こうした数量は透過型電子顕微鏡を使用して、平均的な数量比を求めることで見積もることができる。平均層数が少ない場合には先述のように、層厚が薄くなるほど、曲げの弾性率は低下する。他方、平均層数が8層を超える場合には、層状珪酸塩の分散が不十分であり、層状珪酸塩を分散させることによる物性向上効果が小さくなる。平均層数としては、3〜7層がより好ましく、3.5〜6層がさらに好ましく、4〜5層がさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物は、上記の有機オニウムイオンによりイオン交換された層状珪酸塩を熱可塑性樹脂に混合することによって製造可能である。層状珪酸塩を熱可塑性樹脂に混合する方法としては、1軸あるいは2軸押し出し機を使用して、層状珪酸塩を熱可塑性樹脂と共に溶融混練する方法、熱可塑性樹脂の重合反応時に熱可塑性樹脂の原料あるいは重合溶剤と共に層状珪酸塩を分散しておき組成物を得る方法などを例示することができる。いずれの方法でも良好な分散体を得ることが可能であるが、イオン交換された層状珪酸塩の熱履歴をできる限り少なくする上では、層状珪酸塩を熱可塑性樹脂と共に溶融混練する方法が好ましい。溶融混練する方法としては、例えば,熱可塑性樹脂の粉体あるいは粒状体と層状珪酸塩をあらかじめ混合しておき、一度に溶融混練する方法、あるいは、溶融した熱可塑性樹脂に対して、サイドフィーダなどの設備を利用して層状珪酸塩を添加して溶融混練する方法等が挙げられる。
溶融混練において、せん断速度250/s以上とすることが好ましい。剪断速度は下記式(4)で求められる。
γ = π ・ d・(N / 60)/ C (4)
(γ:剪断速度(/s)、d:スクリュー内径(mm)、N:スクリュー回転数(rpm)、C:スクリューとバレル間のクリアランス(mm))
こうした溶融混練は従来公知の方法が利用可能で、例えば1軸押し出し機、2軸押し出し機等の押し出し機等を利用することができる。その際の剪断速度250/s以下の場合、混練能力が不十分であり目的とするポリエステル組成物中での層状珪酸塩の分散性が不十分となるため好ましくない。より好ましくは280/s以上さらに好ましくは300/s以上である。
また溶融混練時の温度は、ポリエステルの流動開始温度(非晶性樹脂ではガラス転移温度、結晶性樹脂では融点)以上350℃以下が好ましく、(流動開始温度+5)℃以上330℃以下がより好ましく、(流動開始温度+10)℃以上320℃以下がさらに好ましい。温度が流動開始温度より低すぎると溶融成形が困難になるため好ましくなく、また、温度が350℃より高すぎるとイオン交換された層状ケイ酸塩の分解が激しくなり好ましくない。
このように1軸あるいは2軸押し出し機を使用して、該層状珪酸塩を熱可塑性樹脂と共に溶融混練することにより、層状珪酸塩が分散しにくい熱可塑性樹脂においても、層状珪酸塩が高度な分散した組成物を得ることが可能である。そのため表面性が問題となるような用途、例えば、繊維、フィルム等の各種成形用樹脂材料として好適に使用することが可能である。
本発明の樹脂組成物は、従来公知の方法に従って溶融成形することができる。溶融成形温度としては、熱可塑性樹脂の流動開始温度(非晶性樹脂ではガラス転移温度、結晶性樹脂では融点)以上350℃以下が好ましく、(流動開始温度+5)℃以上330℃以下がより好ましく、(流動開始温度+10)℃以上320℃以下がさらに好ましい。温度が流動開始温度より低すぎると溶融成形が困難になることがあり、また、温度が350℃より高すぎるとイオン交換された層状珪酸塩の分解が激しくなることがある。
以上の熱可塑性樹脂と層状珪酸塩とからなる樹脂組成物から、フィルムを好適に得ることができる。
本発明のフィルムは層状珪酸塩の分散性が高く、耐熱性、ガスバリア性、難燃性、弾性、靭性等に優れている。このように機械強度に優れたフィルムを得る目的において、組成物およびフィルムを構成する熱可塑性樹脂としてはポリエステルが好ましく、なかでもポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。
本発明で得られるフィルムの厚みは好ましくは3〜50μmである。本発明において、層状珪酸塩の分散性が高いことから薄くても(たとえば膜厚3〜20μmであっても)高強度のフィルムが製造可能である。
フィルムの製造する場合、熱可塑性樹脂と層状珪酸塩とからなる樹脂組成物を溶融成形し、延伸を行うことが好ましい。フィルムの延伸方法としては、好適には一軸または二軸方向に逐次または同時に延伸する方法を挙げることができる。より具体的に延伸温度は好ましくは樹脂組成物のガラス転移点以上ガラス転移点+90℃以下、より好ましくは樹脂組成物のガラス転移点以上ガラス転移点+70℃以下、さらに好ましくはガラス転移点以上ガラス転移点+60℃以下である。延伸温度が低すぎても高すぎても均一なフィルムを製造することが困難であり好ましくない。また、延伸倍率としては、面倍率として、好ましくは2倍以上100倍以下、より好ましくは4倍以上70倍以下、さらに好ましくは6倍以上50倍以下である。
また、本発明においては、熱可塑性樹脂が結晶性の場合にはフィルムの延伸配向後、熱処理により樹脂組成物の結晶化を促進し、固定することが好ましい。熱処理の温度としては樹脂のガラス転移点以上、融点以下が好ましい。さらに好適な温度は得られたフィルムの結晶化温度と得られたフィルムの物性などを勘案して決定される。
【発明の効果】
本発明のイオン交換された層状珪酸塩は熱可塑性樹脂組成物に好適に分散可能である。また本発明の熱可塑性樹脂組成物は、層状珪酸塩の分散性が高く、耐熱性、ガスバリア性、難燃性、弾性、靭性等に優れ、種々の成形体、繊維、フィルムとして使用できる。
【実施例】
以下に実施例により本発明を詳述する。但し、本発明はこれら実施例に何ら制限されるものではない。
以下に実施例により本発明を詳述する。但し、本発明はこれら実施例に何ら制限されるものではない。
(1)層状珪酸塩:
モンモリロナイト(クニミネ工業(株)製 クニピア(ナトリウム交換容量109meqv/100g)を使用した。層間距離は12.6Åだった。
フルオロマイカF(コープケミカル(株)製 ナトリウム交換容量120meqv/100g)を使用した。層間距離は9.8Åだった。
(2)カチオン交換率:(株)リガク製示差熱天秤TG8120を用いて空気雰囲気下20℃/minで800℃まで加熱した際の重量減少率から次式を用いて求めた。
リガク製示差熱天秤TG8120を用いて空気雰囲気下20℃/minで800℃まで加熱した際の重量減少率から次式を用いて求めた。
陽イオン交換率(%)={Wf/(1−Wf)}/(Morg/Msi)×100 (2)
(Wfは20℃/minの昇温速度で120℃から800℃まで測定した層状珪酸塩の示差熱天秤による重量減少率、Morgは該ホスホニウムイオンの分子量、Msiは層状珪酸塩の陽イオン部分における1電荷あたりの分子量を表す。層状珪酸塩の陽イオン部分における1電荷あたりの分子量は、層状珪酸塩の陽イオン交換容量(単立:eq/g)の逆数で算出される値である。)
(3)樹脂組成物中の熱可塑性樹脂と層状珪酸塩の無機成分との重量比:
(株)リガク製示差熱天秤TG8120を用いて空気雰囲気下20℃/minで800℃まで加熱した際の重量減少率から求めた。
(4)熱分解温度:(株)リガク製示差熱天秤TG8120を用いて窒素中で20℃/minで800℃まで加熱した際の5重量%重量減少した温度を求めた。
(5)層状珪酸塩の層間距離および平均層数:(株)リガク製粉末X線回折装置RAD−Bを用いて回折ピーク位置から算出した。また、Scherrer定数は、0.9として計算した。
(6)還元粘度(ηsp/C):還元粘度はフェノール/テトラクロロエタン(重量比4:6)の溶液を使用し、濃度 1.2g/dL 温度35℃で測定した。
(7)比表面積:比表面積は、QUANTUM CHROME社製NOVA1200においてNガスを用いて測定し、サンプルの重量で除して求める。
参考例1:10−ブロモデカメチレンフタルイミドの合成
フラスコにフタルイミドカリウム85重量部、1,10−ジブロモデカン1008重量部、ジメチルホルムアミド(十分脱水したもの)430重量部を入れ、攪拌し、100℃で20時間加熱した。加熱後、揮発性成分を全て除去し、残渣をキシレンで抽出した。抽出した溶液から揮発性成分を留去し、残渣を室温で放置することで10−ブロモデカメチレンフタルイミドの結晶を得た。
参考例2:N−フタルイミドデカメチレン−2−ヘプタデシルイミダゾールブロミドの合成
2−ヘプタデシルイミダゾール20重量部、参考例1で得られたフタルイミドデカメチレンイミダゾリウムブロミド24重量部を攪拌し、約100℃で8〜10h攪拌反応しN−フタルイミドデカメチレン−2−ヘプタデシルイミダゾールブロミドを得た。(下記式)

参考例3:N−フタルイミドデカメチレン−トリオクチルホスホニウムブロミドの合成
フラスコにトリオクチルホスフィン20重量部、参考例1で得られたフタルイミドデカメチレンイミダゾリウムブロミド20重量部を入れ攪拌し、約100℃で8−10h攪拌反応し、N−フタルイミドデカメチレン−トリオクチルホスホニウムブロミドを得た。(下記式)

[実施例1]:カチオン交換された層状珪酸塩の合成
フラスコにクニピアF100重量部、水3000重量部を入れ、80℃で加熱攪拌した。ここに日本化学製PX416(下記式)

を83重量部を水300重量部で溶解させた溶液を加え、さらに80℃で3時間攪拌した。混合物から固体を濾別し、メタノールで3回、水で3回洗浄したのち、凍結乾燥することによりカチオン交換された層状珪酸塩を得た。イオン交換率は92%であった。このようにして得られた層状珪酸塩の比表面積は5.5m/gであった。以下の表1に実施例1の結果を示す。
[実施例2]
さらに実施例1で得られたカチオン交換された層状ケイ酸塩20重量部をベンゼン400重量部に分散させ凍結乾燥を行った。このようにして得られた層状珪酸塩の比表面積は8.9m/gであった。以下の表1に実施例2の結果を示す。
[実施例3]
フラスコにクニピアF100重量部、水3000重量部、メタノール500重量部を入れ、80℃で加熱攪拌した。ここに参考例2で得られたN−フタルイミドデカメチレン−2−ヘプタデシルイミダゾールブロミド110重量部をメタノール300重量部で溶解させた溶液を加え、さらに80℃で3時間攪拌した。混合物から固体を濾別し、メタノールで3回、水で3回洗浄したのち、凍結乾燥することによりカチオン交換された層状珪酸塩を得た。イオン交換率は68%であった。このようにして得られた層状珪酸塩の比表面積は5.3m/gであった。以下の表1に実施例3の結果を示す。

[実施例4]
フラスコにクニピアF100重量部、水3000重量部、メタノール500重量部を入れ、80℃で加熱攪拌した。ここに参考例3で得られたN−フタルイミドデカメチレン−トリオクチルホスホニウムブロミド120重量部をメタノール300重量部で溶解させた溶液を加え、さらに80℃で3時間攪拌した。混合物から固体を濾別し、メタノールで3回、水で3回洗浄したのち、凍結乾燥することによりカチオン交換された層状珪酸塩を得た。イオン交換率は65%であった。このようにして得られた層状珪酸塩の比表面積は5.5m/gであった。以下の表2に実施例4の結果を示す。
[実施例5]
さらに実施例4で得られたカチオン交換された層状ケイ酸塩20重量部をシクロヘキサン400重量部に分散させ凍結乾燥を行った。このようにして得られた層状珪酸塩の比表面積は8.3m/gであった。以下の表2に実施例5の結果を示す。
[実施例6]
フラスコにフルオロマイカF(コープケミカル(株))100重量部、水3000重量部を80℃で加熱攪拌した。ここに日本化学製PX416を92重量部を水300重量部で溶解させた溶液を加え、さらに80℃で3時間攪拌した。混合物から固体を濾別し、メタノールで3回、水で3回洗浄したのち、凍結乾燥することによりカチオン交換された層状珪酸塩を得た。イオン交換率は90%であった。このようにして得られた層状珪酸塩の比表面積は5.9m/gであった。以下の表2に実施例6の結果を示す。

[実施例7]:樹脂組成物製造
ポリ(エチレンナフタレート)(還元粘度が0.78)のペレット、および実施例1で得られた層状珪酸塩を異方向型ニ軸混練押し出し機(東洋精機製、ラボプラストミル2D25S)を用いて押し出し温度280℃、スクリュー回転速度150rpmの条件下で混練後、吐出して水冷後ポリエステル樹脂組成物のストランド状ペレットを得た。この時に得られた樹脂組成物の結果を下記の表3に示す。また透過型電子顕微鏡で樹脂組成物を観察した(図1)。これに示すとおり、層状珪酸塩の分散状況は非常に高かった。また、層状珪酸塩の層は剥離していた。
[実施例8〜12]
層状珪酸塩をそれぞれ実施例2〜6で得られた層状珪酸塩に変えた他は同様な手法で樹脂組成物を得た。その結果を表3、4に示す。
[実施例13]
ポリカーボネート(帝人化成(株)L1250)のペレット、および実施例6で得られた層状珪酸塩をZSK−25(WERNER&PFLEIDERER)を用いて押し出し温度280℃、スクリュー回転速度280rpm、押出し速度10kg/時、剪断速度1800/secの条件下で混練後、吐出して水冷後ポリエステル樹脂組成物のストランド状ペレットを得た。この時に得られた樹脂組成物の結果を下記の表4に示す。


[実施例14、15]:フィルムの作成
実施例1で得られたストランド状チップを170℃で5時間乾燥後、押出機ホッパーに供給し、溶融温度300℃で溶融し、1.3mmのスリット状ダイを通して表面温度80℃の回転冷却ドラム上に押出し、未延伸フィルムを得た。このようにして得られた未延伸フィルムを温度150℃でMD×TD=3.0×3.0倍および4.0×4.0倍に延伸し続いて厚み15μmのニ軸延伸フィルムを得た。さらに得られたニ軸延伸フィルムを205℃で1分熱固定し、ポリエチレンナフタレート/層状珪酸塩コンポジットフィルムを得た。得られたフィルムのヤング率はMD方向でそれぞれ7.1GPaおよび8.7GPaであった。
比較例1
凍結乾燥を150℃で真空乾燥に変えた以外は実施例1と同様に層状珪酸塩を得た。このものの比表面積を測定したところ1.70m/gであった。
比較例2
ポリ(エチレンナフタレート)(還元粘度が0.78)のペレット、および比較例1で得られた層状珪酸塩を異方向型ニ軸混練押し出し機(東洋精機製、ラボプラストミル2D25S)を用いて押し出し温度280℃、スクリュー回転速度150rpmの条件下で混練後、吐出して水冷後ポリエステル樹脂組成物のストランド状ペレットを得た。得られたペレットの透過型電子顕微鏡で観察した(図2)。層状珪酸塩の分散性も低下した。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機オニウムイオンによりイオン交換能対比50〜100%イオン交換され、比表面積が2.5〜100m/gであることを特徴とする層状珪酸塩。
【請求項2】
有機オニウムイオンが下記式(1)

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜30の炭化水素基またはヘテロ原子を含む炭化水素基であり、Mは窒素原子またはリン原子である。また任意のR、R、R及びRは環を形成していても良い。)
で表せられる有機オニウムイオンである事を特徴とする請求項1に記載の層状珪酸塩。
【請求項3】
上記式(1)の有機オニウムイオンが、Mはリン原子であってホスフォニウムイオンであるか、Mは窒素原子でかつ任意のR、R、R及びRが環を形成してヘテロ芳香族イオンである事を特徴とする請求項2に記載の層状珪酸塩。
【請求項4】
有機オニウムイオンで交換した層状珪酸塩を、融点が−20℃以上100℃未満の媒体を用いて凍結乾燥させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の層状珪酸塩の製造方法。
【請求項5】
融点が−20℃以上100℃未満の媒体が該層状珪酸塩の良分散体である事を特徴とする請求項4記載の層状珪酸塩の製造方法。
【請求項6】
熱可塑性樹脂と請求項1〜3のいずれかに記載の層状珪酸塩とからなる樹脂組成物であって、層状珪酸塩の含有量が熱可塑性樹脂100重量部に対し、無機灰分として0.01〜20重量部であり、熱可塑性樹脂中における該層状珪酸塩の平均層数が2〜8層であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項7】
1軸あるいは2軸押し出し機を使用して、層状珪酸塩を熱可塑性樹脂と共に溶融混練することによる請求項6に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
熱可塑性樹脂がポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、およびポリオレフィン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項6記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項6記載の樹脂組成物からなるフィルム。

【国際公開番号】WO2005/028366
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【発行日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514119(P2005−514119)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013977
【国際出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】