説明

層状複合材料

本発明は、基体(12)、該基体(12)上に配置される多孔質層(14)、及び合成樹脂であるか又は合成樹脂を含み、そして該多孔質層(14)と付着接合される別の材料(16)を含み、そして更に、該別の材料(16)を該多孔質層(14)に接合させるために、該多孔質層(14)と該別の材料(16)との間の境界面(20)に配置されるフッ素系熱可塑性樹脂(22)を含む層状複合材料に関する。本発明は更に、層状複合材料の製造方法、並びに層状複合材料の多孔質層(14)を別の材料(16)と接合させるためのフッ素系熱可塑性樹脂(22)の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体、該基体上に配置される多孔質層及び、合成樹脂であるか又は合成樹脂を含み、そして該多孔質層に粘着により接合される別の材料を含む、層状複合材料に関する。更に、本発明は、その層状複合材料の該多孔質層を該別の材料を接合させるためのフッ素系熱可塑性樹脂(Fluorthermoplasten)の使用、並びに層状複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような層状複合材料は、とりわけ滑り軸受のための軸受材料として使用されている。その際、その層状複合材料は慣習的に基体を有しており、その上に多孔質の、大抵は金属製の層が施用される。該層は、別の材料で含浸されて、その材料で封止される。この別の材料は典型的に合成樹脂である。この場合に、主として二種類の合成樹脂が使用される。すなわち、PTFEベースの合成樹脂及び熱可塑性に加工可能な合成樹脂である。
【0003】
要求に応じて、滑り軸受中の層状複合材料を、無潤滑化方式で、最初に潤滑化される方式で、そして媒体で潤滑化される方式で使用できる。最初に潤滑される滑り軸受は、取り付け時に一回、例えば脂で潤滑される。その使用される材料は、それらの使用形態において様々な挙動を示す。媒体で潤滑化される使用での重要な材料特性とは、潤滑媒体との相溶性の他に、相当する層状複合材料の浸食耐性、層間剥離耐性及びキャビテーション耐性である。軸受け亀裂において、層状複合体を腐食したり、又は潤滑媒体がその層状複合体中へ侵入したりといった流動状態に至る可能性があり、それによって層が互いから剥離してしまう。同様に重要なのは、潤滑媒体との相互作用において生じる摩擦である。というのも、後者は、例えば、ショックアブゾーバーでのガイドブッシュのための使用における応答挙動に対して、あるいはポンプにおける作用効率に対して影響を及ぼすからである。
【0004】
媒体で潤滑される用途において使用される別の材料の特性は、次のように特徴付けできる。すなわち、熱可塑性の母材合成樹脂を使用する場合、より大きな強度及びそれに伴う多孔質層への向上された固着性のために、流動状態と関連した機械的損傷は生じることはほとんどない。しかし、媒体と関連して熱可塑性の母材合成樹脂の摩擦は、PTFEをベースとする材料の場合よりも明らかに大きい。後者は典型的に、媒体潤滑の場合、非常に小さい摩擦係数によって特徴付けられるが、一方でその流れ抵抗は、軟質のPTFE母材に起因して制限される。その他に、多孔質層でのPTFEをベースとする別の材料の固着は、熱可塑性プラスチックとは対照的に、接着力によっては全く支持されない。
【0005】
PTFEをベースとする別の材料を含む層状複合材料は、何年も前から、高い流れ負荷を伴う媒体潤滑用途において使用されている。この際、例えば、その別の材料のPTFEベースは、固形潤滑剤としてのMoSで改質される。この種の層状複合材料は、例えば、ショックアブゾーバーに使用され、その際、乗り心地に対する要求のために、可能な限り摩擦の小さい応答挙動が必要とされる。
【0006】
しかしながら、潤滑されていない又は乾式の及び媒体で潤滑される用途のためのそのような層状複合材料の負荷容量は制限される。そのことから、媒体で潤滑される用途のために、例えば、ドイツ国特許第19614105B4号(特許文献1)に記載されているような、PTFEをベースとする特別に摩耗性が最適化された層状複合材料が開発されている。この場合、鉄酸化物の添加によって高められた摩耗耐性及びキャビテーション耐性が達成されるが、使用条件に応じて摩擦値に若干の上昇が生ずる。
【0007】
ドイツ国特許第19808541C1号(特許文献2)は、粉末状ポリアラミドをPTFEに添加することによって滑り層の摩耗性を向上させることを開示しているが、流れ抵抗の向上は実現されていない。この目的のために、ドイツ国特許出願公開第3343697A1号(特許文献3)に記載されているように、フッ素系熱可塑性樹脂のPFA、FEP、ETFE、PVDF、PCTFEが材料にしばしば混合される。これは、材料の耐性に対して有利に作用する。というのも、それらプラスチックは、その化学構造に基づいて、滑り層のPTFEとより堅固に結合して、添加剤をより良好に結合させることができからであり、また、フッ素系熱可塑性樹脂がPTFEの抗接着特性を弱めるため、基板における粘着性を向上させることができるからである。しかしながら、これらの特性をより多く望むほど、より多くのフッ素系熱可塑性樹脂を混合しなければならず、しかしこれは摩擦係数の上昇という結果を招くことになる。
【0008】
国際公開第99/05425号パンフレット(特許文献4)には、PTFEをベースとする滑り層を有する層状複合材料の製造が開示されており、その際、フッ素系熱可塑性樹脂フィルムを使ってPTFEをベースとするフィルムが金属基板上に貼り付けられる。ただし、この構造は、多孔質の基板には適しておらず、それ故PTFEペーストを用いた該基板と組み合わせる製造方法には適していない。ドイツ国特許第19507045C号(特許文献5)中で説明されているように、介在しているフィルムがロール加工による浸透を妨げ、そしてロール加工プロセス時に該フィルムを再配置(nachgefuehrt)できないため、PTFE混合物を水性ペーストの形態で多孔質層の孔中へ含浸することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】ドイツ国特許第19614105B4号
【特許文献2】ドイツ国特許第19808541C1号
【特許文献3】ドイツ国特許出願公開第3343697A1号
【特許文献4】国際公開第99/05425号パンフレット
【特許文献5】ドイツ国特許第19507045C号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
それ故、本発明の課題は、多孔質層に対する別の材料の付着性を、その別の材料の望ましい表面特性に好ましくない影響を及ぼすことなく向上させることである。
【0011】
上記の課題は、多孔質層と別の材料との間の境界面に配置される、その別の材料を該多孔質層に接合させるフッ素系熱可塑性樹脂によって解決される。フッ素系熱可塑性樹脂は接着作用を有するため、別の材料が多孔質層に対してより良好に付着する。フッ素系熱可塑性樹脂は、専らあるいはほとんど専ら、多孔質層と別の材料との間の境界面に配置され、そしてその別の材料の表面には配置されないため、その別の材料の表面特性はフッ素系熱可塑性樹脂による影響を受けない。とりわけ、別の材料の表面の摩擦は高くならない。したがって、本発明によれば、別の材料を、要求される表面特性に応じて自由に選択することが可能となり、その際、その別の材料の表面特性に対するフッ素系熱可塑性樹脂の影響を考慮する必要がない。
【0012】
本発明の層状複合材料の好ましい一実施形態において、フッ素系熱可塑性樹脂は、PFA、FEP、ETFE、PVDF、PCTFE又はこれの混合物である。これらフッ素系熱可塑性樹脂は安価に入手可能であり、そして多孔質層に対してより向上した付着性をもって別の材料を取り付けるという点で非常に有利であることが判明している。更に、使用可能なフッ素系熱可塑性樹脂の選択肢が全く制約を受けないためにフレキシビリティが与えられ、使用される多孔質層及び別の材料の特性に応じて、付着性を最適化することが可能となる。好ましくは、使用されるフッ素系熱可塑性樹脂は溶融可能であり、そのため、多孔質層及び別の材料に対するその粘着作用は、熱処理によって活性化可能である。
【0013】
多孔質層が細孔容積を有する場合の本発明の好ましい一実施形態において、フッ素系熱可塑性樹脂の体積は、その細孔容積の5%〜50%、特に5%〜25%を占める。この範囲において、別の材料と多孔質層との間の付着性が最適化されることが判明した。特に、フッ素系熱可塑性樹脂の体積が、多孔質層の細孔容積5%〜25%である際に付着性が最大となる。更に、このことによって多孔質層の孔は閉じないことが確実となる。閉じた孔の割合がある量を超えると、層状複合材料の機械特性が悪くなる。
【0014】
好ましくは、フッ素系熱可塑性樹脂は粉末形態で存在する。フッ素系熱可塑性樹脂の多孔質層に対する施用は、製造技術的に簡単に実現できる。その際、フッ素系熱可塑性樹脂の粒子は、100μm又はそれより小さい粒度を有する。それにより、多孔質層の孔中にフッ素系熱可塑性樹脂の粒子が入り込むことができ、そしてそれらは(孔を)閉じないことが確実となる。閉じた孔は、層状複合材料の機械特性に対して不利な影響を及ぼす。
【0015】
本発明の好ましい一実施形態において、別の材料は滑り層として形成される。この実施形態では、層状複合材料は、特に滑り軸受に使用することが適しているが、その際、本発明のアイデアは滑り軸受に限定されない。
【0016】
好ましくは、上記の滑り層は、PTFEベース材料を含むか又はそれからなる。そのような材料は低い摩擦係数によって特徴付けられ、それ故、それらは軸受、例えば駆動回転軸の軸受を、非常に効率よくかつ摩擦損失を低減するように形成することができる。
【0017】
好ましくは、滑り層は、熱硬化性合成樹脂又は熱可塑性合成樹脂の添加剤を含む。滑り層の加工性は、これらの添加剤により向上され、そして機械特性を、特にPTFE材料と関連して、的確に変化させることができる。
【0018】
本発明の好ましい一実施形態では、熱可塑性合成樹脂又は熱硬化性合成樹脂は、PFA、FEP、ETFE、PVDF、PCTFE、PEEK、PPS、PA、PPA、LCP、PES、PSU、PEI、PPTA、PBA、PI、PAI又はPPSOあるいはこれの混合物である。これらの合成樹脂は、とりわけ滑り軸受での層状複合材料の使用に非常に有利であることが判明している。特に、PFA、FEP、ETFE、PVDF及びPCTFEは、滑り層のキャビテーション耐性を向上させる。
【0019】
好ましくは、滑り層は、固形潤滑剤、硬質粒子及び/又は繊維を追加的に含む。PTFEをベースとする滑り層の表面特性は、これらの添加物によって的確に変化させることができ、そしてそのときどきの用途に適合させることができる。
【0020】
好ましくは、固形潤滑剤は、MoS、WS、h−BN、Pb、Sn、PbO、Zn、ZnS、BaSO、SnS、黒鉛、CaF又は層状シリケートである。模範例として、MoSは、潤滑剤として、PTFEの低い摩擦係数に不利な影響を及ぼさないが、同時に、軟質のPTFE母材の摩耗性を低減させるという利点を有するため、滑り層の寿命の延長を達成できる。
【0021】
好ましくは、硬質粒子はSiC、Si、BC、c−BN又は金属酸化物である。硬質粒子は、層状複合材料の使用中における滑り層の摩滅を低減すると同時に、その層状複合材料で受けた構成部材、例えば、駆動回転軸に対するポリッシング効果を有する。
【0022】
好ましい一実施形態において、繊維は、ガラス繊維、炭素繊維又はアラミド繊維である。この実施形態の利点は高い温度耐性にあり、更に、ガラス繊維、炭素繊維又はアラミド繊維の取り扱いにおいて技術者は多くの経験値を有するため、それらの使用は技術的観点から制御可能である。
【0023】
より有利には、多孔質層は、アルミニウム及び/又は銅及び/又はそれの合金を含む。アルミニウム及び/又は銅及び/又はそれの合金を使用する際の利点とは、技術者が、本発明の目的に特に適していることが判明しているそれらの材料での大きな経験を有していることである。
【0024】
この場合、多孔質層は、焼結された粉末、金属発泡体、エキスパンドメタル、不織布又は織物材料を含むことができる。焼結された粉末、金属発泡体、エキスパンドメタル、不織布又は織物材料の使用の利点とは、大きな表面積及び開口構造が製造できる点であり、その結果、多孔質層と滑り層との間の境界面が大きくなる。この処置によって、滑り層と多孔質層との間の付着性もまた向上される。
【0025】
好ましくは、基体は、鋼、アルミニウム及び/又は銅及び/又はそれの合金を含む。この場合もまた、これらの材料が滑り軸受での使用に非常に適していることが判明しており、そのため、これらの材料から構成される滑り軸受けの製造の際しては大きな経験値が存在しており、有利にその経験値を参照することができる。
【0026】
本発明の更なるアスペクトは、上述の実施形態に従う層状複合材料の別の材料を多孔質層に接合させるためのフッ素系熱可塑性樹脂の使用に関し、その際、該フッ素系熱可塑性樹脂は、多孔質層と別の材料との間の境界面に配置される。
【0027】
本発明の更なるアスペクトは、上述の実施形態に従った層状複合材料を製造する方法に関し、該方法は次の工程を含む。
− フッ素系熱可塑性樹脂を多孔質層上に施用する工程、
− そのフッ素系熱可塑性樹脂を、熱処理を使って該多孔質層上に固着させる工程、
− 該多孔質層に別の材料を含浸させる工程、及び
− 該多孔質層にその別の材料を接着させる工程。
【0028】
本発明の方法は、上記で与えられた順序で実施するのが好ましいが、本発明の思想はこの順序に限定されない。
【0029】
多孔質層は、通常、テープ形状の基体上に配置される。熱処理によりフッ素系熱可塑性樹脂を多孔質層上に固着させる工程は、例えば、該テープ形状の基体を連続炉内に通すか、又は追加の加熱工程及び/又は冷却工程を設けることによって実現することができる。多孔質層の別の材料での含浸は、例えばロール加工によって行うことができる。それに続く多孔質層の、別の材料との接合は、通常、焼結プロセスを用いて実現され、好ましくは、350℃〜400℃で1〜3分間実施される。層状複合材料は、引き続いて、ロール加工によって所望の最終寸法にすることができる。
【0030】
好ましくは、本発明の方法は、粉末又は分散物としてのフッ素系熱可塑性樹脂を多孔質層上に施用することによって更に発展される。粉末は、分散物と比較して作業の間の取り扱い性がより簡単であるという点で利点を有する。引き続く焼結プロセスの際、分散物の場合には、まず、焼結プロセスを長引かせ、場合によっては気泡生成を招く恐れのある液体を層状複合材料から排除しなければならない。このことは、粉末形態のフッ素系熱可塑性樹脂を使用する場合には当てはまらない。
【0031】
フッ素系熱可塑性樹脂は元来分散物であることから、最初に適当な粉末を製造する必要はなく、それ故、層状複合材料の製造費用を低減することができる。分散物の形態のフッ素系熱可塑性樹脂の施用は、フッ素系熱可塑性樹脂を、付着に寄与するその表面を広くして、それでもって付着効果が高められるように多孔質層上に塗工できるという利点を有する。しかしながら、粉末を使用する場合もまた該方法は申し分の無い結果をもたらすため、粉末形態で又は分散物として入手可能な全てのフッ素系熱可塑性樹脂が良好に加工できる。
【0032】
粉末形態では、フッ素系熱可塑性樹脂は、例えば、篩又はドクターブレードを使って多孔質層上に施用することができる。フッ素系熱可塑性樹脂が分散物として存在する場合、ノズルを使った噴霧、ローラー面からの転写、スポンジの絞り(Ausdruecken eines Schwamms)による転写により、又は回転ディスクでの展延(Aufschleudern)を使って、多孔質層上に施用することができる。更に、分散物は、スクリーン印刷法を使って、刷毛、フェルト又は網のような毛細管計量添加システムとの接触を使って、多孔質層上に施用できる。
【0033】
本発明を、添付の図面に関連して好ましい実施例に基づいて、以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の一実施例による層状複合材料の原理的な構成を示す。 図1において、層状複合材料10は、原理的な略図に基づく実施例に従って示されている。層状複合材料10は基体12を含み、該基体上には多孔質層14が設けられる。該多孔質層14の周囲には別の材料16が配置され、該材料は図示されている実施例においては滑り層18として形成される。滑り層18として形成された別の材料16は、典型的に、PTFEベースの合成樹脂を含む。多孔質層14及び別の材料16は、境界面20で互いに接している。この境界面20上には、フッ素系熱可塑性樹脂22が配置され、そのフッ素系熱可塑性樹脂は粘着作用を有しており、多孔質層14と別の材料16とを互いに接合させる。図示される例において、フッ素系熱可塑性樹脂は粉末形態で施用される。別の材料16は、その他に、固形潤滑剤24、硬質粒子26、繊維28及び熱硬化性プラスチック粒子又は熱可塑性プラスチック粒子30を含み、これらは、所望の特性、特に、滑り層18の表面特性を調整するのに利用される。熱硬化性プラスチック又は熱可塑性プラスチック30、固形潤滑剤24、硬質粒子26並びに繊維28は、別の材料16中に無作為に導入される。優先的な配置又は配向は必要ではない。
【0035】
多孔質層14は細孔容積Vを有し、これは、多孔質層14が占める体積の全体と、多孔質層14が製造される材料の占める体積との差を意味する。この際、別の材料16の占める体積分はいずれの役割も果たさない。フッ素系熱可塑性樹脂22は体積Vを占める。
【0036】
すでに言及したように、図1においてフッ素系熱可塑性樹脂22は粉末形態で施用され、その際、その粒子は境界面20に散在して配置される。フッ素系熱可塑性樹脂22が分散形態で入手できる場合もまた、多孔質層14上に分散物として施用することもできる。この場合、フッ素系熱可塑性樹脂22は、境界面20に、その境界面20全体を占めることのできる、ある種のコーティングを形成する。
【0037】
【表1】

【0038】
表1: 本発明の層状複合材料と従来の層状複合材料の、摩擦係数(無次元)における比較
【0039】
摩擦は次のように測定される。すなわち、10mm径を有する円形の試料を、100mm径の回転ロール(表面における速度:0.5m/s)の表面上に所定の負荷(17.5MPa)で押しつける。その試料は、打ち抜き(Stanzen)時にローラー半径に適合した形状になる。試験レーンは油圧油で湿らされ、そして負荷された試料からもたらされる摩擦力を、駆動シャフトでトルクトランスミッタ(Drehmomentgeber)によって測定する。
【0040】
第一の欄には、層状複合材料についての摩擦の測定値が与えられており、その時、滑り層はフッ素系熱可塑性樹脂の添加物は含んでない。第二及び第三の欄には、層状複合材料についての摩擦の測定値が与えられており、その時、ここではPFAであるフッ素系熱可塑性樹脂は分散物として(欄2)又は粉末形態で(欄3)滑り層中へ導入され、そして引き続いてこの混合物を多孔質層と接合させた。次の欄4〜欄8では、本発明によりフッ素系熱可塑性樹脂、ここではPFA、FEP、ETFE及びPFDF、が、多孔質層上に施用され、そして引き続き滑り層が、境界面にフッ素系熱可塑性樹脂を有するこの多孔質層上に施用された。
【0041】
欄2及び欄3からわかるように、フッ素系熱可塑性樹脂を滑り層と混合し、そしてその後多孔質層上に施用する場合に増大する。冒頭で触れたように、フッ素系熱可塑性樹脂濃度が高くなるほど表面の摩擦は大きくなることは知られている。この効果は、欄2及び欄3に与えられた値と、欄1に与えられた比較値との比較時に反映されている。フッ素系熱可塑性樹脂を滑り層と混合し、そしてそこに無作為に分布されることによって所定の割合のフッ素系熱可塑性樹脂が滑り層の表面に配置され、そこでの摩擦を大きくする。欄4〜欄8に与えられた値との比較でわかるように、この効果は、本発明によれば全く、あるいはほんのわずかしか生じない。というのも、フッ素系熱可塑性樹脂は、本発明によれば多孔質層と滑り層との間の境界面にしか配置されない、つまり、滑り層の表面には配置されないからである。
【0042】
【表2】

【0043】
表2: MPaで測定した、本発明による層状複合材料の付着強さと、従来の層状複合材料の付着強さとの比較。
【0044】
付着強さは次のように測定する。すなわち、試料をナフタレン−ナトリウムでエッチングし、粗面化されたテストドリー(Pruefstempel)に貼り付け、そのテストドリーを、Zwickユニバーサル試験機Z050を用いて0.2mm/秒で、その接着面に対して垂直に引き剥がす。欄の順序は表1の欄に対応している。
【0045】
欄1からの付着強さの測定値と、欄2及び欄3からの付着強さの測定値との比較は、フッ素系熱可塑性樹脂の滑り層への混合によっては、顕著な付着強さの上昇は起こらないことを明白に示している。フッ素系熱可塑性樹脂の滑り層中での無作為の分布によって、フッ素系熱可塑性樹脂のほんの一部しか、多孔質層と滑り層との間の境界層には配置されない。その結果、その一部しか付着強さの上昇に寄与できない。それとは対照的に、欄4〜欄8に与えられた値が示すように、本発明の解法により付着強さが大きく向上する。本発明によれば、フッ素系熱可塑性樹脂は、ほとんど完全に境界面に配置され、その結果、付着強さは明らかにより大きく増大する。
【0046】
【表3】

【0047】
表3: 本発明の層状複合材料と、従来の層状複合材料との、[時]で測定した寿命の比較。
【0048】
寿命は、次のように測定される(ショックアブゾーバー試験キャビテーション)。すなわち、10mmの接触面幅(Laufflaechenbreite)を有するブッシュを、22mmのロッド径を有するツインチューブダンパー(Zweirohrdaempfern)で、2000Nの一定の横方向負荷で試験する。そのために、滑り層が破壊してダンパーの漏出に至るまで、20秒の長さで交互に、それぞれ0.5Hzの及び80mmの二重振幅の、傾斜運動及び正弦運動を実施する。最大120時間後に試験を中断する。欄の配置は、表1及び表2の欄に対応している。
【0049】
欄1からの寿命の測定値と、欄2及び欄3からの寿命の測定値との比較は、滑り層へのフッ素系熱可塑性樹脂の混合が、顕著に寿命を長めないことを明らかに示している。それとは対照的に、欄4〜欄8に与えられた値が示しように、本発明の解法により、寿命が著しく増大される。
【0050】
本発明を、好ましい実施例に基づいて説明した。上記の説明から当業者にとって容易に想到される変更及び補足は本発明に基礎を置く思想から逸脱することなく、そして以下の特許請求の範囲によって定義される保護範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
10 層状複合材料
12 基体
14 多孔質層
16 別の材料
18 滑り層
20 境界面
22 フッ素系熱可塑性樹脂
24 固形潤滑剤
26 硬質粒子
28 繊維
30 熱硬化性プラスチック粒子又は熱可塑性プラスチック粒子
細孔容積
フッ素系熱可塑性樹脂の体積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 基体(12)、
− 該基体(12)上に配置される、多孔質層(14)、及び
− 合成樹脂であるか又は合成樹脂を含み、そして該多孔質層(14)に付着接合される、別の材料(16)、
を含む層状複合材料であって、
前記別の材料(16)を前記多孔質層(14)に接合させるための、該多孔質層(14)と該別の材料(16)との間の境界面(20)に配置されるフッ素系熱可塑性樹脂(22)によって特徴付けられる、上記の層状複合材料。
【請求項2】
前記フッ素系熱可塑性樹脂(22)が、PFA、FEP、ETFE、PVDF、PCTFE又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の層状複合材料。
【請求項3】
前記多孔質層(14)が細孔容積(V)を有しており、
前記層状複合材料中の前記フッ素系熱可塑性樹脂の体積(V)が、該細孔容積(V)の5%〜50%、特に、5%〜25%を占めることを特徴とする、請求項1又は2に記載の層状複合材料。
【請求項4】
前記フッ素系熱可塑性樹脂(22)が粉末形態で存在することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の層状複合材料。
【請求項5】
前記フッ素系熱可塑性樹脂(22)の粒子が、100μm又はそれより小さい粒度を有することを特徴とする、請求項4に記載の層状複合材料。
【請求項6】
前記別の材料(16)が滑り層(18)として形成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の層状複合材料。
【請求項7】
前記滑り層(18)が、PTFE−ベース材料を含むか又はそれからなることを特徴とする、請求項6に記載の層状複合材料。
【請求項8】
前記滑り層(18)が、熱硬化性合成樹脂又は熱可塑性合成樹脂、特に、熱硬化性プラスチック粒子又は熱可塑性プラスチック粒子(30)の形態の添加物を含むことを特徴とする、請求項7に記載の層状複合材料。
【請求項9】
前記熱可塑性合成樹脂又は熱硬化性合成樹脂が、PFA、FEP、ETFE、PVDF、PCTFE、PEEK、PPS、PA、PPA、LCP、PES、PSU、PEI、PPTA、PBA、PI、PAI又はPPSO、又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項8に記載の層状複合材料。
【請求項10】
前記滑り層(18)が、固形潤滑剤(24)、硬質粒子(26)及び/又は繊維(28)を含むことを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一つに記載の層状複合材料。
【請求項11】
前記固形潤滑剤(24)が、MoS、WS、h−BN、Pb、Sn、PbO、Zn、ZnS、BaSO、SnS、黒鉛、CaF又は層状シリケートであることを特徴とする、請求項10に記載の層状複合材料。
【請求項12】
前記硬質粒子(26)が、SiC、Si、BC、c−BN又は金属酸化物であることを特徴とする、請求項10又は11に記載の層状複合材料。
【請求項13】
前記繊維(28)が、ガラス繊維、炭素繊維又はアラミド繊維であることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一つに記載の層状複合材料。
【請求項14】
前記多孔質層(14)が、アルミニウム及び/又は銅及び/又はこれらの合金を含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一つに記載の層状複合材料。
【請求項15】
前記多孔質層(14)が、焼結された粉末、金属発泡体、エキスパンドメタル(Streckmetall)、不織布又は織物材料を含むことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一つに記載の層状複合材料。
【請求項16】
前記基体(12)が、鋼、アルミニウム及び/又は銅及び/又はこれらの合金を含むことを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一つに記載の層状複合材料。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一つに記載の層状複合材料(10)の多孔質層(14)に別の材料(16)を接合させるためのフッ素系熱可塑性樹脂(22)の使用であって、その際、該フッ素系熱可塑性樹脂(22)は、該多孔質層(14)と別の材料(16)との間の境界面(20)に配置される、上記の使用。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれか一つに記載の層状複合材料(10)の製造方法であって、次の工程、
− フッ素系熱可塑性樹脂(22)を、多孔質層(14)上に施用する工程、
− 熱処理を用いて、該フッ素系熱可塑性樹脂(22)を該多孔質層(22)に固着させる工程、
− 該多孔質層(14)を、別の材料(16)で含浸する工程、そして
− 該多孔質層(14)を該別の材料(16)に接着させる工程、
を含む、上記の方法。
【請求項19】
前記フッ素系熱可塑性樹脂(22)が、前記多孔質層(14)上に粉末又は分散物として施用されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−515624(P2013−515624A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545245(P2012−545245)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069915
【国際公開番号】WO2011/076662
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(501014452)フエデラル―モーグル・ウイースバーデン・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング (21)
【Fターム(参考)】