岩石又はコンクリートの加工方法及びその装置
【課題】ドロス(ガラス状の析出物)の析出を防止しながら、レーザにより岩石又はコンクリートに剥離、破砕、穿孔などの加工を施す。
【解決手段】レーザ発振手段10と、レーザ走査手段30と、レーザ伝送手段20、21と、レーザ照射手段40とを備え、レーザビーム41によって岩石又はコンクリートを加工する装置1において、レーザ照射手段40から出射するレーザビーム41のレーザ強度及び岩石又はコンクリートへのレーザ照射時間を調整し、又は岩石又はコンクリートへのレーザ照射位置を移動させることにより、レーザから岩石又はコンクリートへの入熱量を適正化し、レーザ照射部の岩石又はコンクリートの溶融を防ぎながら岩石又はコンクリートにサーマルショックを与え、岩石又はコンクリートに部分的な破壊現象を生じさせ、岩石又はコンクリートの加工を行う。
【解決手段】レーザ発振手段10と、レーザ走査手段30と、レーザ伝送手段20、21と、レーザ照射手段40とを備え、レーザビーム41によって岩石又はコンクリートを加工する装置1において、レーザ照射手段40から出射するレーザビーム41のレーザ強度及び岩石又はコンクリートへのレーザ照射時間を調整し、又は岩石又はコンクリートへのレーザ照射位置を移動させることにより、レーザから岩石又はコンクリートへの入熱量を適正化し、レーザ照射部の岩石又はコンクリートの溶融を防ぎながら岩石又はコンクリートにサーマルショックを与え、岩石又はコンクリートに部分的な破壊現象を生じさせ、岩石又はコンクリートの加工を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木、建築、石油・ガス井の掘削、地下資源の開発等においてレーザ照射によって岩石又はコンクリートを加工する岩石又はコンクリートの加工方法及びその装置に関するものである。本発明において岩石又はコンクリートの加工とは、岩石又はコンクリートのアブレーションを云い、岩石又はコンクリートの破壊、粉砕、剥離、掘削、切取、削孔、穿孔、溝形成など岩石又はコンクリートに部分的な破壊現象を生じさせることを云う。本発明は特に、レーザによりドロスの析出を生じない範囲のレーザ照射を施して岩石又はコンクリートを加工する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザを照射して岩石又はコンクリートを穿孔、加工しようという試みは、従来から種々試みられている。その一つとしてレーザを用いた岩石の破砕法に関する基礎研究が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この基礎研究では、岩石の穿孔実験において、ドロスが滞留して穿孔加工の進展を妨げるのを防止するために、レーザ照射部位に、添加剤(アシストガス)を吹きつけてドロスの流出を促進する技術である。このように従来技術では、レーザを連続照射することにより岩石が溶融しドロスとなって岩石又はコンクリート穿孔を妨げている。
【0004】
岩石は、種類、成分、含水量その他によって、局部的に急速加熱したときに、破壊しやすいものと破壊しにくいものとがある。(例えば、非特許文献1、2参照。)。
【特許文献1】特開2001−170925号公報(第2−3頁、図1)
【非特許文献1】SPE71466 2001年10月発行、B.C.GAHAN他 LASER DRILLING:DETERMINATION OF ENERGY REQUIRED TO REMOVE ROCK
【非特許文献2】電気学会レーザブレーションとその産業応用調査委員会編: レーザブレーションとその応用:1999年11月発行:コロナ p1〜9、図1.1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に示す従来のレーザ照射による岩石の加工技術では、連続して岩石にレーザを照射し、岩石が溶融しドロス(ガラス状の析出物)が発生し、このドロスがレーザ光の照射を妨げ、レーザが岩石に到達せず、効果的な岩石の加工ができないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、ドロスの析出を防止しながら、レーザを岩石又はコンクリートに照射して、剥離、粉砕、穿孔等の加工ができる岩石又はコンクリートの加工技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の目的を達成するためになされたもので、次の技術手段から成るものである。すなわち、本発明は、加工対象の岩石又はコンクリートの局部急速加熱破壊特性を調査し、レーザ強度及びレーザと岩石又はコンクリートとの相互作用時間を調整して、ドロスを析出しない照射条件で該岩石又はコンクリートにレーザを照射し、前記破壊特性を利用して岩石又はコンクリートを加工することを特徴とする岩石又はコンクリートの加工方法である。
【0008】
この場合前記レーザは、連続波を断続的に照射するレーザ及び/又はパルスレーザを用いるとよい。本発明は、連続波を断続させたレーザ又はパルスレーザのような断続するレーザの何れか又は両方を用いる、対象岩石又はコンクリートの特性に応じて、岩石又はコンクリートが溶融せずドロスを析出しない適正照射条件で、レーザを照射して岩石又はコンクリートを加工することができる。従って、岩石又はコンクリートは、過度のエネルギーを受けることはなく、レーザがドロスに妨げられて岩石又はコンクリート面への進入が妨げられることはなく、レーザが減衰する量も少なくなる。
【0009】
また、本発明方法において、前記レーザとして連続波レーザを使用し、照射位置を順次変化させることによっても同様の効果を得ることができる。
【0010】
また、本発明ではドロスの流動性を増加するための添加剤等を使用する必要がないので、照射対象物である岩石又はコンクリートが遠方にあっても、穿孔作業を行うことが出来る。
【0011】
本発明の照射条件を実現する具体的手段は、特に限定されるものではない。例えば、レーザと岩石又はコンクリートとの相互作用時間を調整する手段として、照射点を移動させることとして、レーザ照射手段を回転させて移動照射してもよく、複数のファイバで構成されたレーザ照射手段を用い、レーザが射出するファイバを順次変更することにより、レーザ照射位置を移動させることでもよい。また、同一のファイバから照射される場合でも、レーザを断続的に照射するように構成することができる。
【0012】
上記本発明を好適に実施することができる本発明の装置は、
(a)連続波レーザ、連続波を断続したレーザ及びパルスレーザからなる群から選ばれた1又は複数のレーザを出力すると共に、連続波を断続的に照射するレーザ及び/又はパルスレーザを出力し、レーザパルスエネルギー、レーザビーム品質、レーザパルス幅、レーザ周波数及びレーザ波長からなる群から選ばれた1又は複数のパラメータを調整可能なレーザ発振手段、
(b)レーザ伝送手段、及び
(c)レーザ照射手段
を備えたことを特徴とする岩石又はコンクリートの加工装置である。
【0013】
さらに、この岩石又はコンクリートの加工装置に、レーザ波長変換手段を加えると、好適である。
【0014】
上記装置を用いて、対象岩石又はコンクリートの局部急速加熱破壊特性に応じて、例えば、適正なレーザ強度を有するレーザビームを断続的に岩石又はコンクリートに照射し、又はレーザの岩石又はコンクリートへの照射点を移動させる等のレーザ照射条件を設定することにより、岩石又はコンクリートを適切に剥離、粉砕、穿孔して、岩石又はコンクリートを加工することができる。
【0015】
本発明に用いるレーザとしては、各種レーザを用いることができるが、ファイバ伝送が可能なレーザを用いてファイバにより伝送すると、任意の岩石又はコンクリートの加工現場条件に適応させることが容易である。このようなレーザとして、例えば半導体レーザ、ファイバレーザ、YAGレーザ、ディスクレーザ等がある。
【0016】
前記レーザ伝送手段としては単一ファイバ、複数の単一ファイバ、多孔束ファイバ、又はこれらの組合せからなるファイバを用いることが好適である。単一ファイバと複数ファイバの組合せとする場合、その間に導光手段を設けるとよい。
【0017】
レーザ伝送手段として単一ファイバを用い、レーザを断続的に岩石又はコンクリートに照射するために、連続波レーザを使用する場合は、レーザ発振をオン、オフすることにより断続照射することができ、パルスレーザを使用する場合は、そのまま照射することにより岩石又はコンクリートへのレーザを断続照射することができる。
【0018】
岩石又はコンクリートに大きな径の孔を掘削するとき、前記レーザ伝送手段は、ファイバ数、多孔束ファイバ束数のそれぞれ又は両者を調整して岩石又はコンクリートの穿孔径に対応させた伝送手段とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、加工対象の岩石又はコンクリートの局部急速加熱破壊特性を調査し、ドロスを析出しない照射条件で岩石又はコンクリートにレーザを照射して岩石又はコンクリートを加工することが可能となった。
【0020】
上記方法を実現するための本発明の装置は、連続波を断続的に照射するレーザ及び/又はパルスレーザを出力し、レーザパルスエネルギー、レーザビーム品質、レーザパルス幅、レーザ周波数及びレーザ波長からなる群から選ばれた1又は複数のパラメータを調整可能なレーザ発振手段を備え、レーザ伝送手段と、レーザ照射手段とを備えた岩石又はコンクリートの加工装置であり、岩石又はコンクリートの特性に応じた照射条件を選定し、例えば、断続的にレーザを岩石又はコンクリートに照射することによって、岩石又はコンクリートに含まれるSiO2が溶融してドロスが析出するのを防ぎながら、岩石又はコンクリートの破壊、粉砕、剥離、掘削、切取、削孔、穿孔、拡孔、溝形成などの加工をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
まず、本発明の原理について説明する。従来、岩石にレーザを照射して岩石を穿孔する技術は、レーザのエネルギーによって岩石の一部を溶融させ、これをスラグとして流出させることによって行われていた。
【0022】
岩石又はコンクリートは、種類、成分、含水量その他によって、局部的に急速加熱したときに、それぞれ特有の破壊特性を有している。本発明は、この岩石又はコンクリートの特性を利用して岩石又はコンクリートを加工する技術を提供するものである。局部急速加熱によってアブレーション(破壊)特性を示す岩石又はコンクリートは、例えば、花こう岩、砂岩、石灰岩、安山岩等又はコンクリートであって、その成分、組織、含水量等によって異なる特性を示す。
【0023】
本発明では、まず、加工対象の岩石又はコンクリートの局部急速加熱破壊特性を調査する。この調査は、波長、照射強度、照射時間の異なる複数種類のレーザを、対象岩石又はコンクリートに施してその性状を把握する。その結果に基づき、ドロスを析出しないで岩石又はコンクリートを破壊する適切な照射条件を定める。この照射条件に適合するレーザを選定して岩石又はコンクリートにレーザを照射し、前記破壊特性を利用して岩石又はコンクリートを加工する。
【0024】
次に、レーザの強さを表すパラメータについて説明する。
【0025】
レーザ出力(平均出力)Pは1秒当たりのエネルギーである。したがって、繰り返し周波数とパルスエネルギーの乗数となる。
【0026】
P=E×ν ……(1)
ここで、Pはレーザ出力(W)、Eはパルスエネルギー(J)、νは繰り返し周波数である。
【0027】
レーザ出力Pを増加するためには、パルスエネルギーEを増加するか、繰り返し周波数νを増加するかいずれかの手段により達成することができる。
【0028】
次に、フルエンスFとは、パルスエネルギーを面積で除した値である。
【0029】
F=E/S ……(2)
ここで、Fはフルエンス(J/cm2)、Eはパルスエネルギー(J)、Sは面積(cm2)である。
【0030】
レーザ強度Iは、フルエンスFをパルス幅で除した値である。
【0031】
I=E/(S・t) ……(3)
ここで、Iはレーザ強度(W/cm2)、tはパルス幅(sec)である。
【0032】
次に、レーザ照射スポット径は、レンズを使用する場合、所望の集光径ω0は次の近似式から求められる。
【0033】
ω0=M2πf/(D0λ) ……(4)
ここで、D0はレンズ上のレーザビーム径(半径)、fはレンズの集光距離、λはレーザ波長、M2はビーム品質の評価に使用する特性値である。ファイバを用いる場合、レーザ照射スポット径は、ファイバコアの径に支配される。
【0034】
レーザと岩石又はコンクリートとの相互作用時間が熱緩和時間よりも短い場合には、レーザの吸収領域に相互作用を閉じこめることができ、断熱膨張を伴う機械的作用を岩石又はコンクリートに誘起することができる。一方、レーザと岩石又はコンクリートとの相互作用時間が熱緩和時間より長い場合には、熱伝導によって熱が広範囲に拡散し、温熱作用が顕著となる。この二面性はレーザ強度及びレーザと岩石又はコンクリートとの相互作用時間によって左右される。これらのパラメーター領域によって2つの相互作用に分類することができる。レーザと岩石又はコンクリートとの相互作用は「1μsルール」によって熱効果と非熱効果に大別される。熱効果には光化学作用(Photochemical interaction)と光熱作用(Photothermal interaction)がある。また、非熱効果は光衝撃作用(Photomechanical interraction)とも呼ばれ、光音響効果(Photoacoustic effect)、光アブレーション(Photoablation)、プラズマ誘起アブレーション(Plasma−induced ablation)、光破壊(Photodisruption)に分類される。ここで相互作用を決めるのはエネルギー密度ではなく、レーザ強度が重要である。
【0035】
以上から、レーザによる岩石又はコンクリートの加工速度、及び岩石又はコンクリートが粉砕するか溶融するかは、レーザ強度I(W/cm2)、フルエンスF(J/cm2)及びレーザ波長に依存する岩石又はコンクリートのレーザ吸収特性(局部急速加熱破壊特性)によってきまる。したがって、レーザ強度I(W/cm2)、フルエンスF(J/cm2)、レーザ波長、及びレーザと岩石又はコンクリートとの相互作用時間を適切に組合わせることによって、種々の対象岩石又はコンクリートに適合した破砕条件を選定することができる。
【0036】
次に、レーザ発振手段、レーザ波長変換手段、レーザ照射手段によりどのようにして、レーザ強度I(W/cm2)、フルエンスF(J/cm2)、及びレーザ波長を調整できるかについて説明する。
【0037】
レーザによる岩石又はコンクリート加工速度が粉砕破砕能に影響するパラメータは、(a)パルスエネルギー、(b)レーザビーム品質、(c)レーザパルス幅、(d)繰り返し周波数、(e)レーザ波長、(f)レンズ上のビーム径、(g)レンズの集光距離、(h)集光径ω0、及び(i)ファイバコア径である。
【0038】
このうち、レーザ発振手段が調整可能なパラメータは、(a)パルスエネルギー、(b)レーザビーム品質、(c)レーザパルス幅、(d)繰り返し周波数、及び(e)レーザ波長である。
【0039】
レーザ波長変換手段が調整可能なパラメータは、(e)レーザ波長である。
【0040】
レーザ照射手段において調整可能なパラメータは、照射手段としてレンズを使用する場合、(f)レンズ上のビーム径、(g)レンズの集光距離、(h)集光径ω0である。照射手段としてファイバを使用する場合、(i)ファイバコア径を調整することが可能である。
【0041】
以上により、本発明装置は、適切なレーザ発振手段、レーザ伝送手段、及びレーザ照射手段を備えておれば、本発明方法を好適に実施することができ、岩石又はコンクリートを溶融させることなく、粉砕により加工することができる。さらに、レーザ波長変換手段を付加すると、一層適切に実施することができる。
【0042】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0043】
図1は本発明の1実施例の岩石又はコンクリートの加工装置1を模式的に示した説明図である。
【0044】
この装置は、レーザ発振手段10と、レーザ伝送手段20と、レーザ照射手段30とを備えている。レーザ発振手段10は、連続波レーザ、連続波を断続したレーザ又はパルスレーザをそれぞれ単独又は2以上を同時に出力することができる。また、レーザパルスエネルギー、レーザビーム品質、レーザパルス幅、レーザ周波数及びレーザ波長等のパラメータを調整可能になっている。
【0045】
レーザ発振手段10で発振したレーザはレーザ伝送手段20を経て伝送される。次いでレーザ走査手段30によってレーザの走査が行われ、例えば多数本のガラスファイバーから成るレーザ伝送手段21の各ファイバを経てレーザ照射手段40に到達する。レーザ発振手段10及びレーザ照射手段40は、対象岩石又はコンクリートの特性に応じて、作動条件を調整することができる。
【0046】
レーザ伝送手段21(多孔束ファイバ)に順次レーザを入射するレーザ走査手段30は、オプティカルスキャナ等のレーザ走査手段を用いればよく、単一レーザ発振手段10から多孔束ファイバ(レーザ伝送手段21)へレーザを入射することが可能である。レーザ照射手段40はレーザ伝送手段21の先端からレーザビーム41を出射する。この場合、レーザ伝送手段21(多孔束ファイバ)に順次入射したレーザを岩石又はコンクリートに照射することにより、レーザ照射位置を移動させることが出来る。このようにすれば、レーザを断続的に岩石又はコンクリートに照射することができる。
【0047】
レーザ発振手段10は、電源(図示せず)に接続されている。レーザ発振手段10により発振されたレーザは、ファイバまたは光学系素子(例えばミラー)で構成されたレーザ伝送手段20によりレーザ走査手段30に到達する。到達したレーザは、レーザ走査手段30により、複数のファイバで構成されたファイバ束であるレーザ伝送手段21に入射される。レーザ伝送手段21を構成するファイバ束に入射したレーザは、レーザ照射手段40に到達して出射される。
【0048】
図1に示す装置によれば、岩石又はコンクリートに照射されるレーザ照射位置を移動させることにより、断続的にレーザを岩石又はコンクリートに照射して、ドロスの析出を防ぎながらサーマルショック(熱衝撃)による剥離、粉砕により岩石又はコンクリートを加工することが出来る。
【0049】
単一のレーザ発振手段10から単一ファイバ(レーザ伝送手段20)ヘ導光されたレーザを岩石又はコンクリートに照射する場合、レーザ伝送手段20に導光されたレーザが連続波である場合は、レーザ発振をオン・オフする手段とするか、または、電源をオン・オフする手段を用いて、断続的にレーザを岩石又はコンクリートに照射することができる。
【0050】
伝送手段21が多孔束ファイバである場合は、多孔束ファイバに順次レーザを入射する照射プロセス(レーザ走査手段30)により岩石又はコンクリートへのレーザ照射を断続的に行うことができる。
【0051】
パルスレーザを使用する場合、レーザ伝送手段21が単一ファイバである場合は何らの操作を必要とすることなく、岩石又はコンクリートにレーザを断続照射することができ、またレーザ伝送手段21が、多孔束ファイバである場合は、走査により伝送ファイバを変更しながらそのまま照射することによりレーザを岩石又はコンクリートに断続照射することができる。
【0052】
本発明の岩石又はコンクリートの加工装置1は、ファイバ数、多孔束ファイバ束数を調整して、例えば、岩石又はコンクリートの穿孔径を変化させることができる。連続波レーザを使用する場合に、レーザ伝送手段21が単一ファイバである場合は、単一ファイバ数を増加することにより、岩石又はコンクリートの穿孔径を大きくすることができる。また、レーザ伝送手段21が、多孔束ファイバである場合は、束数を増加させることにより、岩石又はコンクリートの穿孔径を大きくすることが可能となる。
【0053】
図2は図1に示す実施例にレーザ波長変換手段60を付加した実施例を示している。図1に示す実施例と異なる点は、レーザ波長変換手段60を付加したことであり、それ以外は図1に示す実施例と同様である。波長変換手段60は、レーザ発振手段10で発生したレーザをさらに対象岩石又はコンクリートの破壊に最適な波長に変換するもので、図1に示す装置よりも一層効率よく岩石又はコンクリートの破壊を行うことができる。
【0054】
以下述べる各実施例においては、レーザ波長変換手段を図示省略しているが、図2に示したのと同様に、レーザ発振手段10のあとにレーザ波長変換手段60を設けることは任意であり、各実施例にこれを補って考えればよい。
【0055】
図3は、図1の実施例において、レーザ発振手段10及びレーザ走査手段30を被加工物である岩石又はコンクリートに可能な限り近づけて加工する装置の概略構成図である。図3に示す実施例が図1に示す実施例と異なる点は、電源70から電源ケーブル71を延長して、レーザ発振手段10とレーザ走査手段30を対象岩石又はコンクリートに近づけ、レーザ伝送手段20を出来るだけ短くして、ファイバ伝送による損失を少なくした点である。その他の構成は図1に示す実施例と同様である。なお、図2に示すレーザ波長変換手段60をレーザ発振手段10の後流に備えてもよいことは上述した。
【0056】
レーザの伝送損失は、伝送距離が長くなると増加し、出力レーザが減衰する。伝送損失を少なくするため、図3に示すように電源ケーブル71を延長することにより、照射目的物である岩石又はコンクリートまでのレーザ伝送手段21の伝送距離を短くすることができる。これにより、電源70から遠方にある岩石又はコンクリートの破砕を効率的に行うことができる。
【0057】
図4〜図7は、レーザ走査手段30からファイバ束(レーザ伝送手段21)へのレーザ走査パターンを示す説明図である。図4はファイバ束の断面のY軸方向に順次レーザを走査してレーザ伝送手段21にレーザを入射している。図5はファイバ束のX軸方向、図6は円周方向、図7はジグザグにレーザを走査している例を示している。
【0058】
レーザ伝送手段21で伝送されたレーザは、レーザが入射した個々のファイバの順でレーザ照射手段40から出射する。従って、岩石又はコンクリートへのレーザ照射位置をレーザが入射したファイバの順に移動させることができる。またレーザ走査速度を変化させることにより、レーザ照射手段40から出射されるレーザの岩石又はコンクリートへの照射時間を調整することができる。
【0059】
このようにして、岩石又はコンクリートが溶融する温度に達する前に、レーザ照射位置を移動させレーザ照射位置での温度上昇を適正化することができる。
【0060】
図8および図9は、レーザ発振手段10、レーザ伝送手段20、レーザ走査手段30、レーザ照射手段40から構成された装置において、レーザ伝送手段21が多数の単一ファイバで構成されている実施例を示している。図8では、レーザ伝送手段21を構成するファイバ数が7本、図9では19本となっている。その他の構成は図1に示した実施例と同様である。図8、図9の例ではレーザ伝送手段21の径が大きく、より大きな穿孔径を得ることができる。
【0061】
次に図10は、複数のレーザ発振手段10a、10b、10cと、複数のレーザ伝送手段20a、20b、20cと、複数のレーザ走査手段30a、30b、30cとをそれぞれ組み合わせて一つのユニットとし、これらの複数のユニットを複数のレーザ伝送手段21a、21b、21cに結合して組合わせた例を示している。
【0062】
レーザ伝送手段21a、21b、21cはそれぞれファイバ束で構成されているが、それぞれのファイバ束が、さらに集合してレーザ照射手段40によりレーザビーム41を出射する。各レーザ走査手段30a、30b、30cのレーザ走査パターン、レーザ走査速度をそれぞれ調整することにより、レーザ照射手段40からの出射レーザ41のパターンに非常に多くの多様性をもたせることができ、対象岩石又はコンクリートの特性に対応した加工が可能となる。また、上記複数のユニットの数を増加することにより、岩石又はコンクリートの穿孔径をさらに大きくすることができる。
【0063】
図11はレーザ走査手段30を有しない単一ファイバからなるレーザ伝送手段22を用いた実施例の加工装置1の概略構成図を示したものである。この実施例では、レーザ電源70、レーザ発振手段10、レーザ伝送手段20、レーザ入射手段50、レーザ伝送手段22、及びレーザ照射手段40を備えている。
【0064】
レーザ発振手段10は、連続レーザ波を発振する。レーザ電源70をオンオフ操作することによりレーザ発振手段10を作動させる。したがってレーザ発振手段10から出力されるレーザはパルス化されたものではなく、連続波が断続的に発振される。レーザ伝送手段20によりレーザ入射手段50へ到達し、レーザ入射手段50によりレーザ伝送手段22(単一ファイバ)に入射してレーザ照射手段40より出射し、レーザビーム41は対象岩石又はコンクリートに断続的に照射される。レーザ照射手段40によりレーザ照射位置を変えることができる。
【0065】
図11に示す実施例装置の連続波による出射パターンを、時間変化と共に図12に示した。図12はレーザ伝送手段22(単一ファイバ)の時間t0、t1、t2における状態を示したものである。時間t0においてレーザビーム41を出射し、時間t1ではレーザビームを出射せず、時間t2でレーザビーム41を出射する。このようにして、岩石又はコンクリートが溶融する温度に達する前に、レーザビーム41を断続し、さらにレーザ照射位置を移動させ、レーザ照射位置での過度の温度上昇を押さえることができる。さらにレーザ電源70のオンオフ操作間隔を変化させることによりレーザ伝送手段22(単一ファイバ)を経て出射するレーザビーム41の岩石又はコンクリートへの照射時間を任意に調整することができる。
【0066】
図13は、レーザ走査手段30を有しない単一ファイバからなるレーザ伝送手段22を用いた実施例装置1の概略構成図を示したもので、図11と異なる点は、レーザ発振手段10により発振されたレーザがパルスレーザである点である。レーザ照射手段40により対象岩石又はコンクリートにレーザパルスビーム42が照射される。レーザ照射手段40によりレーザ照射位置を変えることができる。
【0067】
レーザパルスビーム42による出射パターンの時間変化の例を図14に示した。図14は図12と同様の表示で示したもので、時間t0においてレーザパルスビーム42が出射し、時間t1では出射せず、時間t2で出射する。レーザパルスビーム42のパルス間隔を調整することによりレーザ照射手段40から出射するレーザパルスビーム42の岩石又はコンクリートへの照射時間を調整することができる。
【0068】
次に、図15に、レーザ走査手段30のない単一ファイバからなるレーザ伝送手段50を備えた複数のユニットを組み合わせて、岩石又はコンクリート穿孔径を大きくした実施例装置1の例を示した。この実施例では、各電源70a、70b、70c、70dと各レーザ発振手段10a、10b、10c、10dと、各レーザ入射手段50a、50b、50c、50dとをそれぞれ組合わせたユニットに、それぞれ各レーザ伝送手段22a、22b、22c、22d(単一ファイバ)が組合わされている。各レーザ伝送手段22a、22b、22c、22dは、単一ファイバ専用のレーザ電源70a、70b、70c、70dとレーザ発振手段10a、10b、10c、10d及びレーザ入射手段50a、50b、50c、50dを持っている。
【0069】
各レーザ発振手段10a、10b、10c、10dは連続レーザ波を発生する。各レーザ発振電源70a、70b、70c、70dのオンオフ間隔を操作してレーザ発振間隔を調整することにより、レーザ照射手段40から出射される出射レーザ41のパターンに多様性をもたせることができ、対象岩石又はコンクリートの特性に対応した加工を行うことが可能となる。ユニット数を増加することにより岩石又はコンクリートの穿孔径をさらに大きくすることも可能となる。
【0070】
図16、図17は、ファイバの断面図であって、レーザ伝送手段22a、22b、22c、22dを伝送されるレーザビームの変化パターンの走査移動経路44の例を示すものである。
【0071】
図18は、図15と同様のレーザ走査手段30のないレーザ伝送手段22e、22f、22g、22h(単一ファイバ)を組み合わせて岩石又はコンクリート穿孔径を大きくする実施例装置の概略構成図である。この実施例では、レーザ発振手段10e、10f、10g、10hはパルス波を発生する。それぞれのレーザ伝送手段22a、22b、22c、22d(単一ファイバ)はそれぞれ専用のレーザ発振手段10e、10f、10g、10h及びレーザ入射手段50e、50f、50g、50hを備えている。
【0072】
図18に示す装置が図15に示す装置と異なる点は、レーザ発振手段10e、10f、10g、10hはパルス波を発生するので、1個の電源手段と結合する必要がなく、レーザ発振手段10e、10f、10g、10hとレーザ伝送手段50e、50f、50g、50hをそれぞれ組合わせて一つのユニットとして、該ユニットをそれぞれレーザ伝送手段(単一ファイバ)22e、22f、22g、22hとを結合している点であり、他の構成については図15に示す装置と同様である。
【0073】
レーザ発振手段10e、10f、10g、10hを操作してパルスレーザの発振間隔を任意に調整することにより、レーザ照射手段40からの出射レーザ42のパターンに多様性をもたせることができる。従って、対象岩石又はコンクリートの特性に対応した破砕を行うことが可能となる。またユニット数を増加することにより岩石又はコンクリートの穿孔径をさらに大きくすることも可能となる。
【0074】
図18に示す装置のレーザ出射パターンは図16,図17に示すものと同様に変化させることができる。岩石又はコンクリートが溶融する温度に達する前に、レーザ照射位置を移動させ、レーザ照射位置での温度上昇を押さえることができ、さらにパルス間隔を調整することにより1本のファイバから出射するレーザの岩石又はコンクリートへの照射時間を調整することができ、適切な条件で岩石又はコンクリートを加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施例の岩石又はコンクリートの加工装置の模式的説明図である。
【図2】実施例の岩石又はコンクリートの加工装置の模式的説明図である。
【図3】実施例の岩石又はコンクリートの加工装置の模式的説明図である。
【図4】レーザ走査パターンを示す説明図である。
【図5】レーザ走査パターンを示す説明図である。
【図6】レーザ走査パターンを示す説明図である。
【図7】レーザ走査パターンを示す説明図である。
【図8】他の実施例の岩石又はコンクリートの加工装置の図である。
【図9】他の実施例の岩石又はコンクリートの加工装置の図である。
【図10】他の実施例の岩石又はコンクリートの加工装置の図である。
【図11】他の実施例の岩石又はコンクリートの加工装置の図である。
【図12】連続波による出射パターンを示す図である。
【図13】他の実施例の岩石又はコンクリートの加工装置の図である。
【図14】パルス波による出射パターンを示す図である。
【図15】他の実施例の岩石又はコンクリートの加工装置の図である。
【図16】パルス波による出射パターンを示す図である。
【図17】パルス波による出射パターンを示す図である。
【図18】他の実施例の岩石又はコンクリートの加工装置の図である。
【符号の説明】
【0076】
1 岩石又はコンクリートの加工装置
10 レーザ発振手段
20、21、22 レーザ伝送手段
30 レーザ走査手段
31 レーザビーム
40 レーザ照射手段
41、42 レーザビーム
44 走査移動経路
50 レーザ入射手段
60 レーザ波長変換手段
70 電源
71 電源ケーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木、建築、石油・ガス井の掘削、地下資源の開発等においてレーザ照射によって岩石又はコンクリートを加工する岩石又はコンクリートの加工方法及びその装置に関するものである。本発明において岩石又はコンクリートの加工とは、岩石又はコンクリートのアブレーションを云い、岩石又はコンクリートの破壊、粉砕、剥離、掘削、切取、削孔、穿孔、溝形成など岩石又はコンクリートに部分的な破壊現象を生じさせることを云う。本発明は特に、レーザによりドロスの析出を生じない範囲のレーザ照射を施して岩石又はコンクリートを加工する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザを照射して岩石又はコンクリートを穿孔、加工しようという試みは、従来から種々試みられている。その一つとしてレーザを用いた岩石の破砕法に関する基礎研究が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この基礎研究では、岩石の穿孔実験において、ドロスが滞留して穿孔加工の進展を妨げるのを防止するために、レーザ照射部位に、添加剤(アシストガス)を吹きつけてドロスの流出を促進する技術である。このように従来技術では、レーザを連続照射することにより岩石が溶融しドロスとなって岩石又はコンクリート穿孔を妨げている。
【0004】
岩石は、種類、成分、含水量その他によって、局部的に急速加熱したときに、破壊しやすいものと破壊しにくいものとがある。(例えば、非特許文献1、2参照。)。
【特許文献1】特開2001−170925号公報(第2−3頁、図1)
【非特許文献1】SPE71466 2001年10月発行、B.C.GAHAN他 LASER DRILLING:DETERMINATION OF ENERGY REQUIRED TO REMOVE ROCK
【非特許文献2】電気学会レーザブレーションとその産業応用調査委員会編: レーザブレーションとその応用:1999年11月発行:コロナ p1〜9、図1.1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に示す従来のレーザ照射による岩石の加工技術では、連続して岩石にレーザを照射し、岩石が溶融しドロス(ガラス状の析出物)が発生し、このドロスがレーザ光の照射を妨げ、レーザが岩石に到達せず、効果的な岩石の加工ができないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、ドロスの析出を防止しながら、レーザを岩石又はコンクリートに照射して、剥離、粉砕、穿孔等の加工ができる岩石又はコンクリートの加工技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の目的を達成するためになされたもので、次の技術手段から成るものである。すなわち、本発明は、加工対象の岩石又はコンクリートの局部急速加熱破壊特性を調査し、レーザ強度及びレーザと岩石又はコンクリートとの相互作用時間を調整して、ドロスを析出しない照射条件で該岩石又はコンクリートにレーザを照射し、前記破壊特性を利用して岩石又はコンクリートを加工することを特徴とする岩石又はコンクリートの加工方法である。
【0008】
この場合前記レーザは、連続波を断続的に照射するレーザ及び/又はパルスレーザを用いるとよい。本発明は、連続波を断続させたレーザ又はパルスレーザのような断続するレーザの何れか又は両方を用いる、対象岩石又はコンクリートの特性に応じて、岩石又はコンクリートが溶融せずドロスを析出しない適正照射条件で、レーザを照射して岩石又はコンクリートを加工することができる。従って、岩石又はコンクリートは、過度のエネルギーを受けることはなく、レーザがドロスに妨げられて岩石又はコンクリート面への進入が妨げられることはなく、レーザが減衰する量も少なくなる。
【0009】
また、本発明方法において、前記レーザとして連続波レーザを使用し、照射位置を順次変化させることによっても同様の効果を得ることができる。
【0010】
また、本発明ではドロスの流動性を増加するための添加剤等を使用する必要がないので、照射対象物である岩石又はコンクリートが遠方にあっても、穿孔作業を行うことが出来る。
【0011】
本発明の照射条件を実現する具体的手段は、特に限定されるものではない。例えば、レーザと岩石又はコンクリートとの相互作用時間を調整する手段として、照射点を移動させることとして、レーザ照射手段を回転させて移動照射してもよく、複数のファイバで構成されたレーザ照射手段を用い、レーザが射出するファイバを順次変更することにより、レーザ照射位置を移動させることでもよい。また、同一のファイバから照射される場合でも、レーザを断続的に照射するように構成することができる。
【0012】
上記本発明を好適に実施することができる本発明の装置は、
(a)連続波レーザ、連続波を断続したレーザ及びパルスレーザからなる群から選ばれた1又は複数のレーザを出力すると共に、連続波を断続的に照射するレーザ及び/又はパルスレーザを出力し、レーザパルスエネルギー、レーザビーム品質、レーザパルス幅、レーザ周波数及びレーザ波長からなる群から選ばれた1又は複数のパラメータを調整可能なレーザ発振手段、
(b)レーザ伝送手段、及び
(c)レーザ照射手段
を備えたことを特徴とする岩石又はコンクリートの加工装置である。
【0013】
さらに、この岩石又はコンクリートの加工装置に、レーザ波長変換手段を加えると、好適である。
【0014】
上記装置を用いて、対象岩石又はコンクリートの局部急速加熱破壊特性に応じて、例えば、適正なレーザ強度を有するレーザビームを断続的に岩石又はコンクリートに照射し、又はレーザの岩石又はコンクリートへの照射点を移動させる等のレーザ照射条件を設定することにより、岩石又はコンクリートを適切に剥離、粉砕、穿孔して、岩石又はコンクリートを加工することができる。
【0015】
本発明に用いるレーザとしては、各種レーザを用いることができるが、ファイバ伝送が可能なレーザを用いてファイバにより伝送すると、任意の岩石又はコンクリートの加工現場条件に適応させることが容易である。このようなレーザとして、例えば半導体レーザ、ファイバレーザ、YAGレーザ、ディスクレーザ等がある。
【0016】
前記レーザ伝送手段としては単一ファイバ、複数の単一ファイバ、多孔束ファイバ、又はこれらの組合せからなるファイバを用いることが好適である。単一ファイバと複数ファイバの組合せとする場合、その間に導光手段を設けるとよい。
【0017】
レーザ伝送手段として単一ファイバを用い、レーザを断続的に岩石又はコンクリートに照射するために、連続波レーザを使用する場合は、レーザ発振をオン、オフすることにより断続照射することができ、パルスレーザを使用する場合は、そのまま照射することにより岩石又はコンクリートへのレーザを断続照射することができる。
【0018】
岩石又はコンクリートに大きな径の孔を掘削するとき、前記レーザ伝送手段は、ファイバ数、多孔束ファイバ束数のそれぞれ又は両者を調整して岩石又はコンクリートの穿孔径に対応させた伝送手段とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、加工対象の岩石又はコンクリートの局部急速加熱破壊特性を調査し、ドロスを析出しない照射条件で岩石又はコンクリートにレーザを照射して岩石又はコンクリートを加工することが可能となった。
【0020】
上記方法を実現するための本発明の装置は、連続波を断続的に照射するレーザ及び/又はパルスレーザを出力し、レーザパルスエネルギー、レーザビーム品質、レーザパルス幅、レーザ周波数及びレーザ波長からなる群から選ばれた1又は複数のパラメータを調整可能なレーザ発振手段を備え、レーザ伝送手段と、レーザ照射手段とを備えた岩石又はコンクリートの加工装置であり、岩石又はコンクリートの特性に応じた照射条件を選定し、例えば、断続的にレーザを岩石又はコンクリートに照射することによって、岩石又はコンクリートに含まれるSiO2が溶融してドロスが析出するのを防ぎながら、岩石又はコンクリートの破壊、粉砕、剥離、掘削、切取、削孔、穿孔、拡孔、溝形成などの加工をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
まず、本発明の原理について説明する。従来、岩石にレーザを照射して岩石を穿孔する技術は、レーザのエネルギーによって岩石の一部を溶融させ、これをスラグとして流出させることによって行われていた。
【0022】
岩石又はコンクリートは、種類、成分、含水量その他によって、局部的に急速加熱したときに、それぞれ特有の破壊特性を有している。本発明は、この岩石又はコンクリートの特性を利用して岩石又はコンクリートを加工する技術を提供するものである。局部急速加熱によってアブレーション(破壊)特性を示す岩石又はコンクリートは、例えば、花こう岩、砂岩、石灰岩、安山岩等又はコンクリートであって、その成分、組織、含水量等によって異なる特性を示す。
【0023】
本発明では、まず、加工対象の岩石又はコンクリートの局部急速加熱破壊特性を調査する。この調査は、波長、照射強度、照射時間の異なる複数種類のレーザを、対象岩石又はコンクリートに施してその性状を把握する。その結果に基づき、ドロスを析出しないで岩石又はコンクリートを破壊する適切な照射条件を定める。この照射条件に適合するレーザを選定して岩石又はコンクリートにレーザを照射し、前記破壊特性を利用して岩石又はコンクリートを加工する。
【0024】
次に、レーザの強さを表すパラメータについて説明する。
【0025】
レーザ出力(平均出力)Pは1秒当たりのエネルギーである。したがって、繰り返し周波数とパルスエネルギーの乗数となる。
【0026】
P=E×ν ……(1)
ここで、Pはレーザ出力(W)、Eはパルスエネルギー(J)、νは繰り返し周波数である。
【0027】
レーザ出力Pを増加するためには、パルスエネルギーEを増加するか、繰り返し周波数νを増加するかいずれかの手段により達成することができる。
【0028】
次に、フルエンスFとは、パルスエネルギーを面積で除した値である。
【0029】
F=E/S ……(2)
ここで、Fはフルエンス(J/cm2)、Eはパルスエネルギー(J)、Sは面積(cm2)である。
【0030】
レーザ強度Iは、フルエンスFをパルス幅で除した値である。
【0031】
I=E/(S・t) ……(3)
ここで、Iはレーザ強度(W/cm2)、tはパルス幅(sec)である。
【0032】
次に、レーザ照射スポット径は、レンズを使用する場合、所望の集光径ω0は次の近似式から求められる。
【0033】
ω0=M2πf/(D0λ) ……(4)
ここで、D0はレンズ上のレーザビーム径(半径)、fはレンズの集光距離、λはレーザ波長、M2はビーム品質の評価に使用する特性値である。ファイバを用いる場合、レーザ照射スポット径は、ファイバコアの径に支配される。
【0034】
レーザと岩石又はコンクリートとの相互作用時間が熱緩和時間よりも短い場合には、レーザの吸収領域に相互作用を閉じこめることができ、断熱膨張を伴う機械的作用を岩石又はコンクリートに誘起することができる。一方、レーザと岩石又はコンクリートとの相互作用時間が熱緩和時間より長い場合には、熱伝導によって熱が広範囲に拡散し、温熱作用が顕著となる。この二面性はレーザ強度及びレーザと岩石又はコンクリートとの相互作用時間によって左右される。これらのパラメーター領域によって2つの相互作用に分類することができる。レーザと岩石又はコンクリートとの相互作用は「1μsルール」によって熱効果と非熱効果に大別される。熱効果には光化学作用(Photochemical interaction)と光熱作用(Photothermal interaction)がある。また、非熱効果は光衝撃作用(Photomechanical interraction)とも呼ばれ、光音響効果(Photoacoustic effect)、光アブレーション(Photoablation)、プラズマ誘起アブレーション(Plasma−induced ablation)、光破壊(Photodisruption)に分類される。ここで相互作用を決めるのはエネルギー密度ではなく、レーザ強度が重要である。
【0035】
以上から、レーザによる岩石又はコンクリートの加工速度、及び岩石又はコンクリートが粉砕するか溶融するかは、レーザ強度I(W/cm2)、フルエンスF(J/cm2)及びレーザ波長に依存する岩石又はコンクリートのレーザ吸収特性(局部急速加熱破壊特性)によってきまる。したがって、レーザ強度I(W/cm2)、フルエンスF(J/cm2)、レーザ波長、及びレーザと岩石又はコンクリートとの相互作用時間を適切に組合わせることによって、種々の対象岩石又はコンクリートに適合した破砕条件を選定することができる。
【0036】
次に、レーザ発振手段、レーザ波長変換手段、レーザ照射手段によりどのようにして、レーザ強度I(W/cm2)、フルエンスF(J/cm2)、及びレーザ波長を調整できるかについて説明する。
【0037】
レーザによる岩石又はコンクリート加工速度が粉砕破砕能に影響するパラメータは、(a)パルスエネルギー、(b)レーザビーム品質、(c)レーザパルス幅、(d)繰り返し周波数、(e)レーザ波長、(f)レンズ上のビーム径、(g)レンズの集光距離、(h)集光径ω0、及び(i)ファイバコア径である。
【0038】
このうち、レーザ発振手段が調整可能なパラメータは、(a)パルスエネルギー、(b)レーザビーム品質、(c)レーザパルス幅、(d)繰り返し周波数、及び(e)レーザ波長である。
【0039】
レーザ波長変換手段が調整可能なパラメータは、(e)レーザ波長である。
【0040】
レーザ照射手段において調整可能なパラメータは、照射手段としてレンズを使用する場合、(f)レンズ上のビーム径、(g)レンズの集光距離、(h)集光径ω0である。照射手段としてファイバを使用する場合、(i)ファイバコア径を調整することが可能である。
【0041】
以上により、本発明装置は、適切なレーザ発振手段、レーザ伝送手段、及びレーザ照射手段を備えておれば、本発明方法を好適に実施することができ、岩石又はコンクリートを溶融させることなく、粉砕により加工することができる。さらに、レーザ波長変換手段を付加すると、一層適切に実施することができる。
【0042】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0043】
図1は本発明の1実施例の岩石又はコンクリートの加工装置1を模式的に示した説明図である。
【0044】
この装置は、レーザ発振手段10と、レーザ伝送手段20と、レーザ照射手段30とを備えている。レーザ発振手段10は、連続波レーザ、連続波を断続したレーザ又はパルスレーザをそれぞれ単独又は2以上を同時に出力することができる。また、レーザパルスエネルギー、レーザビーム品質、レーザパルス幅、レーザ周波数及びレーザ波長等のパラメータを調整可能になっている。
【0045】
レーザ発振手段10で発振したレーザはレーザ伝送手段20を経て伝送される。次いでレーザ走査手段30によってレーザの走査が行われ、例えば多数本のガラスファイバーから成るレーザ伝送手段21の各ファイバを経てレーザ照射手段40に到達する。レーザ発振手段10及びレーザ照射手段40は、対象岩石又はコンクリートの特性に応じて、作動条件を調整することができる。
【0046】
レーザ伝送手段21(多孔束ファイバ)に順次レーザを入射するレーザ走査手段30は、オプティカルスキャナ等のレーザ走査手段を用いればよく、単一レーザ発振手段10から多孔束ファイバ(レーザ伝送手段21)へレーザを入射することが可能である。レーザ照射手段40はレーザ伝送手段21の先端からレーザビーム41を出射する。この場合、レーザ伝送手段21(多孔束ファイバ)に順次入射したレーザを岩石又はコンクリートに照射することにより、レーザ照射位置を移動させることが出来る。このようにすれば、レーザを断続的に岩石又はコンクリートに照射することができる。
【0047】
レーザ発振手段10は、電源(図示せず)に接続されている。レーザ発振手段10により発振されたレーザは、ファイバまたは光学系素子(例えばミラー)で構成されたレーザ伝送手段20によりレーザ走査手段30に到達する。到達したレーザは、レーザ走査手段30により、複数のファイバで構成されたファイバ束であるレーザ伝送手段21に入射される。レーザ伝送手段21を構成するファイバ束に入射したレーザは、レーザ照射手段40に到達して出射される。
【0048】
図1に示す装置によれば、岩石又はコンクリートに照射されるレーザ照射位置を移動させることにより、断続的にレーザを岩石又はコンクリートに照射して、ドロスの析出を防ぎながらサーマルショック(熱衝撃)による剥離、粉砕により岩石又はコンクリートを加工することが出来る。
【0049】
単一のレーザ発振手段10から単一ファイバ(レーザ伝送手段20)ヘ導光されたレーザを岩石又はコンクリートに照射する場合、レーザ伝送手段20に導光されたレーザが連続波である場合は、レーザ発振をオン・オフする手段とするか、または、電源をオン・オフする手段を用いて、断続的にレーザを岩石又はコンクリートに照射することができる。
【0050】
伝送手段21が多孔束ファイバである場合は、多孔束ファイバに順次レーザを入射する照射プロセス(レーザ走査手段30)により岩石又はコンクリートへのレーザ照射を断続的に行うことができる。
【0051】
パルスレーザを使用する場合、レーザ伝送手段21が単一ファイバである場合は何らの操作を必要とすることなく、岩石又はコンクリートにレーザを断続照射することができ、またレーザ伝送手段21が、多孔束ファイバである場合は、走査により伝送ファイバを変更しながらそのまま照射することによりレーザを岩石又はコンクリートに断続照射することができる。
【0052】
本発明の岩石又はコンクリートの加工装置1は、ファイバ数、多孔束ファイバ束数を調整して、例えば、岩石又はコンクリートの穿孔径を変化させることができる。連続波レーザを使用する場合に、レーザ伝送手段21が単一ファイバである場合は、単一ファイバ数を増加することにより、岩石又はコンクリートの穿孔径を大きくすることができる。また、レーザ伝送手段21が、多孔束ファイバである場合は、束数を増加させることにより、岩石又はコンクリートの穿孔径を大きくすることが可能となる。
【0053】
図2は図1に示す実施例にレーザ波長変換手段60を付加した実施例を示している。図1に示す実施例と異なる点は、レーザ波長変換手段60を付加したことであり、それ以外は図1に示す実施例と同様である。波長変換手段60は、レーザ発振手段10で発生したレーザをさらに対象岩石又はコンクリートの破壊に最適な波長に変換するもので、図1に示す装置よりも一層効率よく岩石又はコンクリートの破壊を行うことができる。
【0054】
以下述べる各実施例においては、レーザ波長変換手段を図示省略しているが、図2に示したのと同様に、レーザ発振手段10のあとにレーザ波長変換手段60を設けることは任意であり、各実施例にこれを補って考えればよい。
【0055】
図3は、図1の実施例において、レーザ発振手段10及びレーザ走査手段30を被加工物である岩石又はコンクリートに可能な限り近づけて加工する装置の概略構成図である。図3に示す実施例が図1に示す実施例と異なる点は、電源70から電源ケーブル71を延長して、レーザ発振手段10とレーザ走査手段30を対象岩石又はコンクリートに近づけ、レーザ伝送手段20を出来るだけ短くして、ファイバ伝送による損失を少なくした点である。その他の構成は図1に示す実施例と同様である。なお、図2に示すレーザ波長変換手段60をレーザ発振手段10の後流に備えてもよいことは上述した。
【0056】
レーザの伝送損失は、伝送距離が長くなると増加し、出力レーザが減衰する。伝送損失を少なくするため、図3に示すように電源ケーブル71を延長することにより、照射目的物である岩石又はコンクリートまでのレーザ伝送手段21の伝送距離を短くすることができる。これにより、電源70から遠方にある岩石又はコンクリートの破砕を効率的に行うことができる。
【0057】
図4〜図7は、レーザ走査手段30からファイバ束(レーザ伝送手段21)へのレーザ走査パターンを示す説明図である。図4はファイバ束の断面のY軸方向に順次レーザを走査してレーザ伝送手段21にレーザを入射している。図5はファイバ束のX軸方向、図6は円周方向、図7はジグザグにレーザを走査している例を示している。
【0058】
レーザ伝送手段21で伝送されたレーザは、レーザが入射した個々のファイバの順でレーザ照射手段40から出射する。従って、岩石又はコンクリートへのレーザ照射位置をレーザが入射したファイバの順に移動させることができる。またレーザ走査速度を変化させることにより、レーザ照射手段40から出射されるレーザの岩石又はコンクリートへの照射時間を調整することができる。
【0059】
このようにして、岩石又はコンクリートが溶融する温度に達する前に、レーザ照射位置を移動させレーザ照射位置での温度上昇を適正化することができる。
【0060】
図8および図9は、レーザ発振手段10、レーザ伝送手段20、レーザ走査手段30、レーザ照射手段40から構成された装置において、レーザ伝送手段21が多数の単一ファイバで構成されている実施例を示している。図8では、レーザ伝送手段21を構成するファイバ数が7本、図9では19本となっている。その他の構成は図1に示した実施例と同様である。図8、図9の例ではレーザ伝送手段21の径が大きく、より大きな穿孔径を得ることができる。
【0061】
次に図10は、複数のレーザ発振手段10a、10b、10cと、複数のレーザ伝送手段20a、20b、20cと、複数のレーザ走査手段30a、30b、30cとをそれぞれ組み合わせて一つのユニットとし、これらの複数のユニットを複数のレーザ伝送手段21a、21b、21cに結合して組合わせた例を示している。
【0062】
レーザ伝送手段21a、21b、21cはそれぞれファイバ束で構成されているが、それぞれのファイバ束が、さらに集合してレーザ照射手段40によりレーザビーム41を出射する。各レーザ走査手段30a、30b、30cのレーザ走査パターン、レーザ走査速度をそれぞれ調整することにより、レーザ照射手段40からの出射レーザ41のパターンに非常に多くの多様性をもたせることができ、対象岩石又はコンクリートの特性に対応した加工が可能となる。また、上記複数のユニットの数を増加することにより、岩石又はコンクリートの穿孔径をさらに大きくすることができる。
【0063】
図11はレーザ走査手段30を有しない単一ファイバからなるレーザ伝送手段22を用いた実施例の加工装置1の概略構成図を示したものである。この実施例では、レーザ電源70、レーザ発振手段10、レーザ伝送手段20、レーザ入射手段50、レーザ伝送手段22、及びレーザ照射手段40を備えている。
【0064】
レーザ発振手段10は、連続レーザ波を発振する。レーザ電源70をオンオフ操作することによりレーザ発振手段10を作動させる。したがってレーザ発振手段10から出力されるレーザはパルス化されたものではなく、連続波が断続的に発振される。レーザ伝送手段20によりレーザ入射手段50へ到達し、レーザ入射手段50によりレーザ伝送手段22(単一ファイバ)に入射してレーザ照射手段40より出射し、レーザビーム41は対象岩石又はコンクリートに断続的に照射される。レーザ照射手段40によりレーザ照射位置を変えることができる。
【0065】
図11に示す実施例装置の連続波による出射パターンを、時間変化と共に図12に示した。図12はレーザ伝送手段22(単一ファイバ)の時間t0、t1、t2における状態を示したものである。時間t0においてレーザビーム41を出射し、時間t1ではレーザビームを出射せず、時間t2でレーザビーム41を出射する。このようにして、岩石又はコンクリートが溶融する温度に達する前に、レーザビーム41を断続し、さらにレーザ照射位置を移動させ、レーザ照射位置での過度の温度上昇を押さえることができる。さらにレーザ電源70のオンオフ操作間隔を変化させることによりレーザ伝送手段22(単一ファイバ)を経て出射するレーザビーム41の岩石又はコンクリートへの照射時間を任意に調整することができる。
【0066】
図13は、レーザ走査手段30を有しない単一ファイバからなるレーザ伝送手段22を用いた実施例装置1の概略構成図を示したもので、図11と異なる点は、レーザ発振手段10により発振されたレーザがパルスレーザである点である。レーザ照射手段40により対象岩石又はコンクリートにレーザパルスビーム42が照射される。レーザ照射手段40によりレーザ照射位置を変えることができる。
【0067】
レーザパルスビーム42による出射パターンの時間変化の例を図14に示した。図14は図12と同様の表示で示したもので、時間t0においてレーザパルスビーム42が出射し、時間t1では出射せず、時間t2で出射する。レーザパルスビーム42のパルス間隔を調整することによりレーザ照射手段40から出射するレーザパルスビーム42の岩石又はコンクリートへの照射時間を調整することができる。
【0068】
次に、図15に、レーザ走査手段30のない単一ファイバからなるレーザ伝送手段50を備えた複数のユニットを組み合わせて、岩石又はコンクリート穿孔径を大きくした実施例装置1の例を示した。この実施例では、各電源70a、70b、70c、70dと各レーザ発振手段10a、10b、10c、10dと、各レーザ入射手段50a、50b、50c、50dとをそれぞれ組合わせたユニットに、それぞれ各レーザ伝送手段22a、22b、22c、22d(単一ファイバ)が組合わされている。各レーザ伝送手段22a、22b、22c、22dは、単一ファイバ専用のレーザ電源70a、70b、70c、70dとレーザ発振手段10a、10b、10c、10d及びレーザ入射手段50a、50b、50c、50dを持っている。
【0069】
各レーザ発振手段10a、10b、10c、10dは連続レーザ波を発生する。各レーザ発振電源70a、70b、70c、70dのオンオフ間隔を操作してレーザ発振間隔を調整することにより、レーザ照射手段40から出射される出射レーザ41のパターンに多様性をもたせることができ、対象岩石又はコンクリートの特性に対応した加工を行うことが可能となる。ユニット数を増加することにより岩石又はコンクリートの穿孔径をさらに大きくすることも可能となる。
【0070】
図16、図17は、ファイバの断面図であって、レーザ伝送手段22a、22b、22c、22dを伝送されるレーザビームの変化パターンの走査移動経路44の例を示すものである。
【0071】
図18は、図15と同様のレーザ走査手段30のないレーザ伝送手段22e、22f、22g、22h(単一ファイバ)を組み合わせて岩石又はコンクリート穿孔径を大きくする実施例装置の概略構成図である。この実施例では、レーザ発振手段10e、10f、10g、10hはパルス波を発生する。それぞれのレーザ伝送手段22a、22b、22c、22d(単一ファイバ)はそれぞれ専用のレーザ発振手段10e、10f、10g、10h及びレーザ入射手段50e、50f、50g、50hを備えている。
【0072】
図18に示す装置が図15に示す装置と異なる点は、レーザ発振手段10e、10f、10g、10hはパルス波を発生するので、1個の電源手段と結合する必要がなく、レーザ発振手段10e、10f、10g、10hとレーザ伝送手段50e、50f、50g、50hをそれぞれ組合わせて一つのユニットとして、該ユニットをそれぞれレーザ伝送手段(単一ファイバ)22e、22f、22g、22hとを結合している点であり、他の構成については図15に示す装置と同様である。
【0073】
レーザ発振手段10e、10f、10g、10hを操作してパルスレーザの発振間隔を任意に調整することにより、レーザ照射手段40からの出射レーザ42のパターンに多様性をもたせることができる。従って、対象岩石又はコンクリートの特性に対応した破砕を行うことが可能となる。またユニット数を増加することにより岩石又はコンクリートの穿孔径をさらに大きくすることも可能となる。
【0074】
図18に示す装置のレーザ出射パターンは図16,図17に示すものと同様に変化させることができる。岩石又はコンクリートが溶融する温度に達する前に、レーザ照射位置を移動させ、レーザ照射位置での温度上昇を押さえることができ、さらにパルス間隔を調整することにより1本のファイバから出射するレーザの岩石又はコンクリートへの照射時間を調整することができ、適切な条件で岩石又はコンクリートを加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施例の岩石又はコンクリートの加工装置の模式的説明図である。
【図2】実施例の岩石又はコンクリートの加工装置の模式的説明図である。
【図3】実施例の岩石又はコンクリートの加工装置の模式的説明図である。
【図4】レーザ走査パターンを示す説明図である。
【図5】レーザ走査パターンを示す説明図である。
【図6】レーザ走査パターンを示す説明図である。
【図7】レーザ走査パターンを示す説明図である。
【図8】他の実施例の岩石又はコンクリートの加工装置の図である。
【図9】他の実施例の岩石又はコンクリートの加工装置の図である。
【図10】他の実施例の岩石又はコンクリートの加工装置の図である。
【図11】他の実施例の岩石又はコンクリートの加工装置の図である。
【図12】連続波による出射パターンを示す図である。
【図13】他の実施例の岩石又はコンクリートの加工装置の図である。
【図14】パルス波による出射パターンを示す図である。
【図15】他の実施例の岩石又はコンクリートの加工装置の図である。
【図16】パルス波による出射パターンを示す図である。
【図17】パルス波による出射パターンを示す図である。
【図18】他の実施例の岩石又はコンクリートの加工装置の図である。
【符号の説明】
【0076】
1 岩石又はコンクリートの加工装置
10 レーザ発振手段
20、21、22 レーザ伝送手段
30 レーザ走査手段
31 レーザビーム
40 レーザ照射手段
41、42 レーザビーム
44 走査移動経路
50 レーザ入射手段
60 レーザ波長変換手段
70 電源
71 電源ケーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象の岩石又はコンクリートの局部急速加熱破壊特性を調査し、レーザ強度及びレーザと岩石又はコンクリートとの相互作用時間を調整して、ドロスを析出しない照射条件で該岩石又はコンクリートにレーザを照射し、前記破壊特性を利用して岩石又はコンクリートを加工することを特徴とする岩石又はコンクリートの加工方法。
【請求項2】
前記レーザは、連続波を断続的に照射するレーザ及び/又はパルスレーザであることを特徴とする請求項1記載の岩石又はコンクリートの加工方法。
【請求項3】
前記レーザとして連続波レーザを使用し、照射位置を順次変更することを特徴とする請求項1記載の岩石又はコンクリートの加工方法。
【請求項4】
連続波レーザ、連続波を断続したレーザ及びパルスレーザからなる群から選ばれた1又は複数のレーザを出力し、レーザパルスエネルギー、レーザビーム品質、レーザパルス幅、レーザ周波数及びレーザ波長からなる群から選ばれた1又は複数のパラメータを調整可能なレーザ発振手段と、レーザ伝送手段と、レーザ照射手段とを備えたことを特徴とする岩石又はコンクリートの加工装置。
【請求項5】
さらにレーザ波長変換手段を加えたことを特徴とする請求項4記載の岩石又はコンクリートの加工装置。
【請求項6】
前記レーザ伝送手段が、単一ファイバ、複数の単一ファイバ、多孔束ファイバ、又はこれらの組合せからなるファイバであることを特徴とする請求項4又は5記載の岩石又はコンクリートの加工装置。
【請求項7】
前記レーザ伝送手段は、ファイバ数及び/又は多孔束ファイバ束数を調整して岩石又はコンクリートの穿孔径に対応させた伝送手段であることを特徴とする請求項4〜6の何れかに記載の岩石又はコンクリートの加工装置。
【請求項1】
加工対象の岩石又はコンクリートの局部急速加熱破壊特性を調査し、レーザ強度及びレーザと岩石又はコンクリートとの相互作用時間を調整して、ドロスを析出しない照射条件で該岩石又はコンクリートにレーザを照射し、前記破壊特性を利用して岩石又はコンクリートを加工することを特徴とする岩石又はコンクリートの加工方法。
【請求項2】
前記レーザは、連続波を断続的に照射するレーザ及び/又はパルスレーザであることを特徴とする請求項1記載の岩石又はコンクリートの加工方法。
【請求項3】
前記レーザとして連続波レーザを使用し、照射位置を順次変更することを特徴とする請求項1記載の岩石又はコンクリートの加工方法。
【請求項4】
連続波レーザ、連続波を断続したレーザ及びパルスレーザからなる群から選ばれた1又は複数のレーザを出力し、レーザパルスエネルギー、レーザビーム品質、レーザパルス幅、レーザ周波数及びレーザ波長からなる群から選ばれた1又は複数のパラメータを調整可能なレーザ発振手段と、レーザ伝送手段と、レーザ照射手段とを備えたことを特徴とする岩石又はコンクリートの加工装置。
【請求項5】
さらにレーザ波長変換手段を加えたことを特徴とする請求項4記載の岩石又はコンクリートの加工装置。
【請求項6】
前記レーザ伝送手段が、単一ファイバ、複数の単一ファイバ、多孔束ファイバ、又はこれらの組合せからなるファイバであることを特徴とする請求項4又は5記載の岩石又はコンクリートの加工装置。
【請求項7】
前記レーザ伝送手段は、ファイバ数及び/又は多孔束ファイバ束数を調整して岩石又はコンクリートの穿孔径に対応させた伝送手段であることを特徴とする請求項4〜6の何れかに記載の岩石又はコンクリートの加工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−305803(P2006−305803A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129337(P2005−129337)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構、「石油・天然ガス開発・利用促進型大型研究」に関する委託研究、研究課題「レーザ掘削・フラクチャリングシステムの開発」、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(395022018)日本海洋掘削株式会社 (10)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構、「石油・天然ガス開発・利用促進型大型研究」に関する委託研究、研究課題「レーザ掘削・フラクチャリングシステムの開発」、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(395022018)日本海洋掘削株式会社 (10)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
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