説明

嵌合部材

【課題】凹溝からの離脱防止効果をより高めることのできる嵌合部材を提供する。
【解決手段】嵌合部材10は、建築用内装部材12に設けられた凹溝16に嵌め込まれるものであり、凹溝16に収容される線状の基部18と、基部18の長手方向全長に亘って基部18の幅方向両側部から突出して形成され、凹溝16の内側面に弾性的に押圧される突出部20とを備えている。また、少なくとも突出部20は、軟質材料で形成されており、突出部20の突出方向先端部は、突出長さLが長手方向において変化するように波打って形成されている。したがって、突出部20の突出方向先端部が凹溝16の内側面に押圧された状態では、突出部20と凹溝16の内側面とが部分的に「点」で接触することになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質材料からなる突出部を備え、建築用内装部材に設けられた凹溝に嵌め込まれる嵌合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
階段の踏板、巾木または手摺等の「建築用内装部材」には、夜間における歩行の安全性を確保するための「発光部材」や、装飾性を確保するための「装飾部材」が取り付けられることがあり、これらのうち「建築用内装部材」に設けられた凹溝に嵌合されるものは「嵌合部材」と称されることがある。
【0003】
特許文献1に開示された従来の嵌合部材1は、図13に示すように、建築用内装部材2に取り付けられる線状部材であり、建築用内装部材2に設けられた凹溝3に収容される基部4と、基部4の幅方向両側部から突出して形成された突出部5とを備えている。したがって、凹溝3に嵌合部材1を嵌め込んだ状態では、突出部5の先端部が凹溝3の内側面に弾性的に押圧されることとなり、押圧箇所における摩擦抵抗によって凹溝3から嵌合部材1が離脱するのが防止される。
【特許文献1】特開2004−50480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の嵌合部材1(特許文献1)では、突出部5の先端部が長手方向において直線状に形成されていたので、凹溝3に嵌合部材1を嵌め込んだ状態では、突出部5の先端部が凹溝3の内側面に「直線」で接触していた。そのため、突出部5の先端部が凹溝3の内側面に押圧された状態では、突出部5の長手方向において押圧力が均等に分散されることとなり、「点」で接触する場合と比べて押圧箇所における摩擦抵抗が小さくなり、十分な離脱防止効果を得ることができなかった。
【0005】
それゆえに本発明の主たる課題は、凹溝からの離脱防止効果をより高めることのできる嵌合部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した発明は、「建築用内装部材12、26、28、30に設けられた凹溝16に嵌め込まれる嵌合部材10であって、前記凹溝16に収容される線状の基部18と、前記基部18の長手方向全長に亘って前記基部18の幅方向両側部から突出して形成され、前記凹溝16の内側面に弾性的に押圧される突出部20とを備えており、少なくとも前記突出部20は、軟質材料で形成されており、前記突出部20の突出方向先端部は、突出長さLが長手方向において変化するように波打って形成されている、嵌合部材10」である。
【0007】
この発明では、突出部20の突出方向先端部が波打って形成されているので、突出部20の突出方向先端部が凹溝16の内側面に押圧された状態では、突出部20と凹溝16の内側面とが部分的に「点」で接触することになり、その接触箇所では摩擦抵抗が大きくなる。
【0008】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した「嵌合部材10」において、「前記突出部20の突出方向先端部は、鋭角に尖って形成されている」ことを特徴とする。
【0009】
この発明では、突出部20の突出方向先端部が鋭角に尖って形成されているので、突出部20と凹溝16の内側面とが接触する面積が小さくなる。したがって、接触箇所では、押圧力が大きくなり、摩擦抵抗が大きくなる。
【0010】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した「嵌合部材10」において、「前記基部18は、前記凹溝16の底面に対向する凹部22を有している」ことを特徴とする。
【0011】
この発明では、凹部22が形成された箇所において基部18が弾性的に変形され得る。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜3に記載した発明によれば、突出部20と凹溝16の内側面とが部分的に「点」で接触するので、その接触箇所では、押圧力が集中して摩擦抵抗が大きくなる。したがって、「線」で接触していた従来技術に比べて、凹溝16からの離脱をより確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明が適用された嵌合部材10を示す斜視図であり、図2は、嵌合部材10を示す正面図であり、図3は、嵌合部材10を示す平面図である。この嵌合部材10(図1〜3)は、図4に示すように、「建築用内装部材」としての階段用の踏板12に「滑止め機能」および「夜間における歩行の安全性」を確保するために取り付けられるものであり、発光機能を備えている。
【0014】
ここで、踏板12(図4)は、階段14を構成する略長方形の板状部材であり、踏板12の上面には、所定の幅および深さを有する凹溝16が平面視略コ字状に形成されており、この凹溝16に嵌合部材10が嵌め込まれて固定される。
【0015】
嵌合部材10(図1〜3)は、線状の基部18と、基部18の幅方向両側部から突出して形成された突出部20とを備えた長尺部材であり、全体が合成樹脂の押出成形等によって一体に形成されている。
【0016】
基部18は、熱可塑性エラストマー(ポリウレタン系、スチレン系、ポリ塩化ビニル系、ポリエステル系等の任意のもの)といった熱可塑性の合成樹脂または合成ゴム等の軟質材料からなる断面略四角形の線状部分であり、基部18の底面には、凹溝16(図4)の底面に対向するU字状の凹部22が長手方向全長に亘って形成されている。そして、基部18の幅は、基部18の上端部において凹溝16の開口幅とほぼ同じかそれよりもやや広く設定されており、かつ、上端部から下端部へ向かうにつれて徐々に狭くなるように設定されている。
【0017】
なお、基部18の高さは、特に限定されるものではないが、塵埃の溜まりを防止する等の観点から、凹溝16の高さとほぼ同じかそれよりもやや高く設定されることが望ましい。また、凹部22の形状は、U字状の他、V字状またはコ字状等であってもよい。さらに、凹部22は、基部18の長手方向全長に亘って形成される他、長手方向において間欠的に形成されてもよい。
【0018】
突出部20は、熱可塑性エラストマー(ポリウレタン系、スチレン系、ポリ塩化ビニル系、ポリエステル系等の任意のもの)といった熱可塑性の合成樹脂または合成ゴム等の軟質材料からなる断面略三角形の線状部分であり、基部18の長手方向全長に亘って基部18と一体に形成されている。
【0019】
突出部20の突出方向は、基部18の幅方向両側部から略水平(すなわち、凹溝16の底面と略平行)に向けられており、突出部20の突出方向先端部は、突出長さL(図2)が長手方向において変化するように波打って形成されている。また、突出部20の突出方向先端部は、所定角度α(図2)に尖って形成されている。この角度αは、特に限定されるものではないが、凹溝16の内側面に対する十分な密着性を得るためには、鋭角であることが望ましく、特に、60度以下であることが望ましい。そして、2つの突出部20の先端部間の間隔は、突出部20が凹溝16の内側面に弾性的に押圧され得るように、凹溝16の幅よりも大きく設定されている。
【0020】
なお、「突出長さL」とは、図2に示すように、突出部20の基点Pから突出部20の先端までの長さを意味するものとし、「基点P」とは、突出部20の上側基点P1と下側基点P2とを結んだ直線aと、突出部20の中心を通る直線bとの交点を意味するものとする。
【0021】
嵌合部材10を踏板12の凹溝16に取り付ける際には、図5に示すように、嵌合部材10を凹溝16に嵌め込む。すると、突出部20および基部18が凹溝16の内側面に押されて弾性的に変形(圧縮)され、突出部20の突出方向先端部が凹溝16の内側面に押圧される。このとき、突出部20の突出方向先端部は波打って形成されているので、突出部20と凹溝16の内側面とは部分的に「点」で接触することになり、その接触箇所では、押圧力が集中して摩擦抵抗が大きくなる。したがって、この摩擦抵抗が嵌合部材10の「抜止め力」として有効に作用し、嵌合部材10の離脱が確実に防止される。
【0022】
なお、上述の実施例では、突出部20と凹溝16の内側面との摩擦抵抗によって嵌合部材10の離脱を防止しているが、嵌合部材10の離脱をより確実に防止するためには、基部18の底面または凹溝16の底面に接着剤を塗布して、嵌合部材10と踏板12とを接着するようにしてもよい。この場合には、余分な接着剤を凹部22に取り込むことができるので、余分な接着剤が凹溝16から外部へはみ出すことはない。
【0023】
また、基部18に弾性を持たせるために、基部18が軟質材料で形成されるとともに、基部18の底面に凹部22が形成されているが、突出部20の弾性だけで十分な押圧力を得られる場合や、接着剤を併用する場合等には、基部18が硬質合成樹脂等の硬質材料で形成されてもよいし、基部18の底面に凹部22が形成されなくてもよい。ただし、それらの場合でも、突出部20は、凹溝16の内側面へ押圧可能なように、軟質材料で形成される必要がある。
【0024】
また、基部18には、図6に示すように、発光性を有する発光部24が埋め込まれてもよいし、図示は省略するが、補強材(繊維等)、装飾材(金糸、銀糸、金属箔等)、抗菌材、防汚材または芳香材等が埋め込まれてもよい。なお、発光部24(図6)の材質としては、ABS樹脂またはポリプロピレン等の硬質合成樹脂に蓄光顔料を練り込んだもの等が用いられ得る。
【0025】
そして、上述の実施例では、嵌合部材10を踏板12に取り付ける場合について説明したが、嵌合部材10は、面材(床材、天井材、壁材、腰壁材等)、造作材(巾木、回り縁等)、手摺、扉、玄関上がり框、ドア枠材、ドア木口、開口部枠材または取手等のような踏板以外の「建築用内装部材」にも適用可能であり、その場合には、基部18または突出部20の形状または大きさ等が適宜変更されることになる。ただし、その場合でも、突出部20は、軟質材料で形成される必要があり、突出部20の突出方向先端部は、突出長さLが長手方向において変化するように波打って形成される必要がある。なお、図7には、嵌合部材10を丸棒状の手摺26に取り付けた状態を示しており、図8には、嵌合部材10を板状の巾木28に取り付けた状態を示しており、図9には、嵌合部材10を玄関収納部の扉30に取り付けた状態を示している。
【0026】
また、上述の実施例では、突出部20の突出方向が基部18の幅方向両側部から略水平に向けられているが、この突出方向は特に限定されるものではなく、基部18の幅方向両側部から斜め上方へ向けられてもよい。
【0027】
そして、突出部20の数は適宜変更可能であり、図10に示すように、基部18の一方側部および他方側部にそれぞれ複数(図10では2つ)の突出部20が形成されてもよい。この場合には、全ての突出部20の先端部が波打って形成されている必要はなく、各側部において、少なくとも1つの突出部20の先端部が波打って形成されていればよい。
【0028】
さらに、基部18の上部18aは、図11および図12に示すように、凹溝16の外部に突出して配置されてもよい。この場合、上部18aの形状は特に限定されるものではなく、図11に示すような断面略半円形であってもよいし、図12に示すような断面略四角形であってもよい。また、基部18の上部18aには、材料の節約等のために空洞32が設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】嵌合部材を示す斜視図
【図2】嵌合部材を示す正面図
【図3】嵌合部材を示す平面図
【図4】嵌合部材の使用態様(踏板)を示す斜視図
【図5】嵌合部材の使用状態を示す断面斜視図
【図6】他の嵌合部材を示す斜視図
【図7】嵌合部材の他の使用態様(手摺)を示す斜視図
【図8】嵌合部材の他の使用態様(巾木)を示す斜視図
【図9】嵌合部材の他の使用態様(扉)を示す斜視図
【図10】他の嵌合部材の使用状態(突出部が複数)を示す断面斜視図
【図11】他の嵌合部材の使用状態(基部が断面略半円形)を示す断面斜視図
【図12】他の嵌合部材の使用状態(基部が断面略四角形)を示す断面斜視図
【図13】従来の嵌合部材を示す斜視図
【符号の説明】
【0030】
10… 嵌合部材
12… 踏板
16… 凹溝
18… 基部
18a… 上部
20… 突出部
22… 凹部
24… 発光部
26… 手摺
28… 巾木
30… 扉
32… 空洞


【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築用内装部材に設けられた凹溝に嵌め込まれる嵌合部材であって、
前記凹溝に収容される線状の基部と、前記基部の長手方向全長に亘って前記基部の幅方向両側部から突出して形成され、前記凹溝の内側面に弾性的に押圧される突出部とを備えており、
少なくとも前記突出部は、軟質材料で形成されており、前記突出部の突出方向先端部は、突出長さが長手方向において変化するように波打って形成されている、嵌合部材。
【請求項2】
前記突出部の突出方向先端部は、鋭角に尖って形成されている、請求項1に記載の嵌合部材。
【請求項3】
前記基部は、前記凹溝の底面に対向する凹部を有している、請求項1または2に記載の嵌合部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−57120(P2008−57120A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232164(P2006−232164)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】